説明

基板適合性が改善されたアンモニア不含アルカリ性マイクロエレクトロニクス洗浄組成物の使用

【課題】マイクロエレクトロニクス基板洗浄のためのアンモニア不含洗浄組成物、特に高感度多孔性誘電体、低κまたは高κの誘電体並びに銅金属被覆を特徴とするマイクロエレクトロニクス基板の洗浄方法を提供すること。フォトレジストのストリッピング、プラズマ生成有機、有機金属および無機化合物由来の残渣の洗浄方法、および平坦化工程由来の残渣の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】非求核性、正荷電対イオンを含有する1種またはそれ以上の非アンモニア産生強塩基および1種またはそれ以上の腐食阻害溶媒化合物(該腐食阻害溶媒化合物は、金属と錯体形成できる少なくとも2つの部位を有する)を含有する洗浄組成物の使用により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロエレクトロニクス基板洗浄のためのアンモニア不含洗浄組成物、特に、高感度低κおよび高κの誘電体並びに銅金属被覆を特徴とするマイクロエレクトロニクス基板に有用であり、それらとの適合性が改善されたような洗浄組成物に関する。本発明はまた、フォトレジストのストリッピング、プラズマ生成有機、有機金属および無機化合物由来の残渣の洗浄、および化学機械研磨(CMP)などの平坦化工程由来の残渣、並びに平坦化スラリー残渣中の添加物の洗浄のための、かかる洗浄組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
製造ラインの下流または後端の洗浄剤として、マイクロエレクトロニクス分野で使用するための多数のフォトレジストストリッパーおよび残渣除去剤が提唱されてきた。製造工程では、フォトレジストの薄膜をウエーハー基板に堆積させ、回路設計を薄膜上で画像化する。焼付けに続き、非重合レジストをフォトレジスト現像剤で除去する。次いで、生じる画像を、反応性プラズマエッチングガスまたは化学腐食液により、一般的に誘電性または金属である下層の材料に転写する。腐食ガスまたは化学腐食液は、基板のフォトレジスト非保護領域を選択的に攻撃する。プラズマエッチング工程の結果、フォトレジスト、エッチングガスおよびエッチングされた材料の副産物は、基板のエッチングされた開口部の側壁周辺または側壁上に残渣として堆積する。
【0003】
加えて、エッチング段階の終了に続き、レジストマスクをウエーハーの保護領域から除去し、最終仕上げ操作を実施できるようにしなければならない。これは、適するプラズマ灰化ガスまたは湿式化学ストリッパーを使用して、プラズマ灰化段階で達成できる。金属回路構成は、悪影響(例えば、腐食、溶出または鈍化)を与えずにこのレジストマスク材料を除去するのに適する洗浄組成物を見出しつつ、問題も明らかにしてきた。
【0004】
マイクロエレクトロニクス製造の集積化レベルが高まり、パターン化されたマイクロエレクトロニクス素子の大きさが小さくなるにつれて、銅金属被覆、低κおよび高κの誘電体を採用することが当分野でますます一般的になってきた。これらの材料は、許容し得る洗浄組成物を見出すというさらなる挑戦を提起した。Al/SiOまたはAl(Cu)/SiO構造を含有する「伝統的」または「常套の」半導体素子のために以前に開発されてきた多数の工程技法組成物は、銅金属被覆された低κまたは高κ誘電体構造には採用できない。例えば、ヒドロキシルアミンベースのストリッパーまたは残渣除去組成物は、Al金属被覆素子の洗浄に成功裏に使用されるが、銅金属被覆のものには実用上適さない。同様に、多数の銅金属被覆/低κストリッパーは、組成物に有意な調整が為されなければ、Al金属被覆素子に適さない。
【0005】
エッチングおよび/または灰化工程に続くこれらのエッチングおよび/または灰化残渣の除去には、問題があることがわかってきた。これらの残渣の完全な除去または中性化の失敗は、水分の吸着と、金属構造の腐食を引き起こし得る望まざる材料の形成を招き得る。回路構成材料は望まざる材料によって腐食され、回路構成配線中の非連続と、望まざる電気抵抗の増大をもたらす。
【0006】
現在の後端洗浄剤は、ある種の高感度誘電体および金属被覆に、総合的に許容できないものからわずかに満足なものまで範囲に渡る、広範囲の適合性を示す。多数の現在のストリッパーまたは残渣洗浄剤は、多孔性および低κの誘電体並びに銅金属被覆などの進歩した相互接続材料には許容され得ない。加えて、典型的に採用されるアルカリ性洗浄液は、多孔性および低κおよび高κの誘電体並びに/または銅金属被覆に対して過剰に攻撃的である。その上、これらのアルカリ性洗浄組成物の多くは、特に高pH範囲および高い工程温度で乏しい製品安定性を示す有機溶媒を含有する。
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
従って、後端洗浄操作に適するマイクロエレクトロニクス洗浄組成物に対する要望がある。その組成物は、有効な洗浄剤であり、かつフォトレジストのストリッピング、プラズマ工程で生成された有機、有機金属および無機材料に由来する残渣の洗浄、および化学機械研磨などの平坦化工程由来の残渣の洗浄などに適用可能である。本発明は、多孔性および低κおよび高κ誘電体などの進歩した相互接続材料および銅金属被覆に良好な適合性を有する、フォトレジストのストリッピング、半導体表面および構造の調製/洗浄に有効な組成物に関する。
【0008】
アンモニア(NH)および水酸化アンモニウムおよび他の塩(NHX、X=OH、炭酸塩など)などのアンモニア由来塩基が、錯体形成を通して銅などの金属を溶出/腐食できることがわかってきた。従って、低κ誘電体(即ち、κ値3またはそれ以下)または高κ誘電体(即ち、κ値20またはそれ以上)および銅金属被覆との適合性が必要とされる場合、それらは半導体洗浄製剤に使用されるには劣等な選択肢である。これらの化合物は、平衡過程を通してアンモニアを生成できる。アンモニアは銅などの金属と錯体を形成でき、以下の式に記載のように金属腐食/溶出をもたらす。
【化1】

【0009】
従って、水酸化アンモニウムおよびアンモニウム塩は、式1に記載の平衡過程を介して、特にアミンやアルカノールアミンなどの他の塩基が添加された場合、求核性かつ金属キレート性のアンモニア(NH)を提供できる。酸素の存在下では、銅などの金属は、式2に記載のようにアンモニアとの錯体形成を介して溶出/腐食され得る。かかる錯体形成は、さらに平衡(式1)を右に移行させることができ、さらなるアンモニアを提供し、高い金属溶出/腐食を導く。
【0010】
一般に、高感度低κ誘電体は、強アルカリ性条件下で有意に分解する。アンモニアおよびアンモニア誘導塩基も、水素シルセスキオキサン(HSQ)やメチルシルセスキオキサン(MSQ)などの高感度誘電体と乏しい適合性を示す。再度、それらはアンモニアおよび/または他の求核種を提供でき、従って高感度誘電体の反応/分解を導く。
【0011】
少なくとも1つの腐食阻害腕または部分を含有する溶媒中の、非求核性、正荷電対イオン(テトラアルキルアンモニウムなど)を含有する非アンモニア産生強塩基アルカリ性洗浄製剤が、高感度多孔性もしくは低κの誘電体および/または銅金属被覆と、より改善された適合性を示すことがわかってきた。好ましい溶媒マトリックスは、立体障害効果および/または(水酸化物イオンなどの求核種に関する)求核反応に対する低または無反応性のために、強アルカリ性条件に耐性である。誘電体適合性の改善は、部分的には、組成物中に望まざる求核種が不在であるために達成される。銅金属被覆との良好な適合性は、ある種の銅適合性または"腐食阻害性"溶媒の選択的使用により達成される。これらの化合物は、半水性から実際的に非水性(有機溶媒ベース)の洗浄液またはスラリーに製剤できる。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の新規後端洗浄組成物は、非求核性、正荷電対イオンを含有する任意の適切な非アンモニア産生強塩基の1種またはそれ以上、および強アルカリ性条件下で安定であり、かつ溶媒化合物中に金属腐食阻害腕を有する任意の適する溶媒の1種またはそれ以上を含む。本発明の洗浄組成物における使用に適する、非求核性、正荷電対イオンを含有する適切な非アンモニア産生強塩基の中で、式[(R)[X−q](式中、各Rは、独立して置換または非置換アルキル、好ましくは、炭素数1ないし22、より好ましくは炭素数1ないし6のアルキルである(R≠H);そして、X=OH、または炭酸塩などの適する塩陰イオン;pおよびqは等しく、1ないし3の整数である。)のテトラアルキルアンモニウム水酸化物が言及され得る。適する強塩基には、KOHおよびNaOHも含まれる。非求核性、正荷電対イオンを含有する非アンモニア産生強塩基を含有する洗浄組成物は、多孔性および低κ誘電体並びに銅金属被覆と、大きく改善された適合性を示す。アンモニア不含テトラアルキルアンモニウム水酸化物(TAAH)は、非常に強い塩基であるが、それらは、水酸化アンモニウムを有する洗浄組成物と比較して、驚異的に改善された多孔性および低κの誘電体との適合性をもたらすとわかった。特に好ましいのは、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物および水酸化コリンである。
【0013】
金属腐食を制御または阻害するという以前の試みは、注意深いpHの制御および/または重量で<2%の比較的低濃度でのベンゾトリアゾール(BT)などの腐食阻害化合物の使用を包含してきたが、1種またはそれ以上の"腐食阻害溶媒"、即ち、金属と錯体形成できる少なくとも2つの部位を有する溶媒化合物、を採用すると、本発明の洗浄組成物に銅金属腐食の制御において予想外の有意な改善がもたらされ得るとわかった。
【0014】
かかる腐食阻害溶媒として好ましいのは、金属と錯体形成できる2つまたはそれ以上の部位を有し、そして以下の2つの一般式の一方を有する化合物である:
W−(CRn1−X−[(CRn2−Y]
または
T−[(CR−Z]
式中、WおよびYは、=O、−OR、−O−C(O)−R、−C(O)−、−C(O)−R、−S、−S(O)−R、−SR、−S−C(O)−R、−S(O)−R、−S(O)、−N、−NH−R、−NR、−N−C(O)−R、−NR−C(O)−R、−P(O)、−P(O)−ORおよび−P(O)−(OR)から各々独立して選択され;Xは、アルキレン、シクロアルキレンまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するシクロアルキレン、アリーレンまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するアリーレンであり;各R、RおよびRは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するシクロアルキル、およびアリールまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するアリールから各々独立して選択され;n1およびn2の各々は、独立して0ないし6の整数であり;そして、Xがアルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレンであるとき、zは1ないし6の整数であり;XがO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するシクロアルキレンまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するアリーレンであるとき、zは0ないし5の整数であり;Tは、−O、−S、−Nおよび−Pから選択され;Zは、水素、−OR、−N(Rおよび−SRから選択され;R、RおよびRの各々は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するシクロアルキル、およびアリールまたはO、S、NおよびP原子から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するアリールから各々独立して選択され;mは0ないし6の整数であり、そしてyは1ないし6の整数である。
【0015】
上記定義において、アルキルおよびアルキレンは、好ましくは炭素数1ないし6、より好ましくは炭素数1ないし3であり、シクロアルキルおよびシクロアルキレンは、好ましくは炭素数3ないし6であり、アリールおよびアリーレンは、好ましくは炭素数約3ないし14、より好ましくは炭素数約3ないし10である。アルキルは、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルであり;アルキレンは、好ましくはメチレン、エチレンまたはプロピレンであり;アリールは、好ましくはフェニルであり;アリーレンは、好ましくはフェニレンであり;ヘテロ置換シクロアルキルは、好ましくはジオキシル、モルホリニルおよびピロリジニルであり;ヘテロ置換アリールは、好ましくはピリジニルである。
【0016】
かかる腐食阻害溶媒の適する例には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)−エタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミドおよび3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオールが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
非アンモニア産生強塩基を含有する本発明の洗浄組成物は、水性、半水性または有機溶媒ベースの組成物に製剤できる。非求核性、正荷電対イオンを含有する非アンモニア産生強塩基を、腐食阻害溶媒単独と共に、または、他の安定な溶媒、好ましくは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン(SFL)およびジメチルピペリドンなどの、強塩基耐性であり、かつ非妨害求核種を含有しない1つまたはそれ以上の極性有機溶媒と組合せて、使用できる。洗浄組成物はまた、有機または無機酸、好ましくは弱い有機または無機酸、障害アミン、障害アルカノールアミンおよび障害ヒドロキシルアミンも、場合により含有し得る。洗浄組成物は、ベンゾトリアゾール、および2つまたはそれ以上のOHまたはOR基(Rはアルキルまたはアリールである)を含有するアリール化合物、例えば、カテコール、ピロガロール、レゾルシノールなどの他の金属腐食阻害剤も含有できる。洗浄組成物は、例えば、ジメチルヘキシノール(hexynol)(サーフィノール(Surfynol)−61)、エトキシル化テトラメチルデシンジオール(サーフィノール−465)、ポリテトラフルオロエチレンセトキシ(cetoxy)プロピルベタイン(ゾニール(Zonyl)FSK)、(ゾニールFSH)などの、いかなる適する界面活性剤も含有し得る。
【0018】
いかなる適する金属イオン不含珪酸塩も、本発明の組成物で使用し得る。珪酸塩は、好ましくは、テトラアルキルアンモニウム珪酸塩(アルキルまたはアルコキシ基には、一般に炭素数1ないし4のヒドロキシおよびアルコキシ含有アルキル基が含まれる)などの第四珪酸アンモニウムである。最も好ましい金属イオン不含珪酸塩成分は、テトラメチルアンモニウム珪酸塩である。本発明のための他の適する金属イオン不含珪酸塩供給源は、高度にアルカリ性の洗浄剤の中で任意の1つまたはそれ以上の次の材料を溶解させることにより、その場で生成され得る。洗浄剤中で珪酸塩を生成させるのに有用な適する金属イオン不含材料は、固体シリコンウエーハー、珪酸、コロイダル・シリカ、ヒュームド・シリカまたは任意の他の適する形態のシリコンまたはシリカである。メタ珪酸ナトリウムなどの金属珪酸塩を使用し得るが、集積回路に対する金属汚染の有害な効果のために推奨されない。珪酸塩は、約0ないし10重量%の量で、好ましくは約0.1ないし約5重量%の量で、組成物中に存在し得る。
【0019】
本発明の組成物は、製剤が溶液中に金属を保持する受容量を増大させ、ウエーハー基板上の金属残渣の分解を高めるために、適する金属キレート剤とも製剤し得る。一般的に、キレート剤は、約0ないし5重量%の量で、好ましくは約0.1ないし2重量%の量で、組成物中に存在する。この目的のために有用な典型的なキレート剤の例は、以下の有機酸およびそれらの異性体および塩である:(エチレンジニトリロ)テトラ酢酸(EDTA)、ブチレンジアミンテトラ酢酸、(1,2−シクロヘキシレンジニトリロ)テトラ酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DETPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、N,N,N',N'−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N',N'−テトラ酢酸(DHPTA)、メチルイミノジ酢酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸、ニトロロトリ酢酸(NTA)、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、糖酸、グリセリン酸、蓚酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、カテコール、没食子酸、プロピル没食子酸塩、ピロガロール、8−ヒドロキシキノリンおよびシステイン。好ましいキレート剤は、EDTA、CyDTAなどのアミノカルボン酸、およびEDTMPなどのアミノホスホン酸である。
【0020】
洗浄組成物は、例えば、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウムおよびフッ化アンモニウムなどのフッ化化合物を洗浄組成物中に場合により含有し得る。他の適するフッ化物には、例えば、フッ化ホウ酸塩、テトラブチルアンモニウムフッ化ホウ酸塩、アルミニウム六フッ化物、アンチモンフッ化物などが含まれる。フッ化物成分は、0ないし10重量%、好ましくは約0.1ないし5重量%の量で存在する。
【0021】
従って、フォトレジスト、プラズマエッチング/灰化後の残渣、犠牲的吸光材料および反射防止膜(ARC)を効果的に除去および洗浄するにあたり、幅広い加工/操作pHおよび温度を使用できる。このタイプの製剤のいくつかが、タンタル(Ta)または窒化タンタル境界層および酸化タンタルなどのタンタルを構造中に含有する非常に困難なサンプルを洗浄するのに特に効果的であることもわかった。
【0022】
本発明の洗浄組成物は、約0.05ないし約30重量%の非アンモニア産生強塩基;約0.5ないし約99.95重量%の腐食阻害溶媒成分;約0ないし約95.45重量%の水または他の有機共溶媒;約0ないし40重量%の立体障害アミン、アルカノールアミンまたはヒドロキシルアミン;約0ないし40重量%の有機または無機酸;約0ないし40重量%の、ベンゾトリアゾール、カテコールなどの金属腐食阻害化合物;約0ないし5重量%の界面活性剤;約0ないし10重量%の珪酸塩;約0ないし5重量%のキレート剤;および約0ないし10重量%のフッ化化合物を一般的に含む。
【実施例】
【0023】
本願の以下の部分では、指定された化合物を明示するのに以下の略語を採用する。
HEP=1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン
TMAH=25%テトラメチルアンモニウム水酸化物
BT=ベンゾトリアゾール
DMSO=ジメチルスルホキシド
TEA=トリエタノールアミン
CyDTA=トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸
SFL=スルホラン
EG=エチレングリコール
CAT=カテコール
EDTMP=エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
DMPD=ジメチルピペリドン
TMAF=25%テトラメチルアンモニウムフッ化物
BSA=ベンゼンスルホン酸
TMAS=10%テトラメチルアンモニウム珪酸塩
【0024】
これらのタイプの製剤の例を、以下の表1A、1Bおよび1Cに記載する。表中、成分の量は、重量による割合で示す。
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表1Cには、さらに添加された任意の成分を有する表1Aの組成物DおよびFの変形物を記載する。
【表3】

【0027】
表1Aの組成物DおよびF、並びに表1Cの組成物MないしSについて、様々な誘電体に対する層間誘電体(ILD)エッチング率を以下の試験方法により評価した。
ルドルフ干渉計を使用してウエーハー小片の薄膜の厚さを測定した。ウエーハー小片を(シリコンウエーハーに堆積したILD材料と共に)、指示された温度で30分間、明示した洗浄組成物に浸し、続いて蒸留水ですすぎ、窒素流/気流下で乾燥させた。処理に続いて厚さを再度測定し、指示された処理によりもたらされた薄膜の厚さの変化に基づいてエッチング率を算出した。結果を表2、3、4および5に示す。
【0028】
【表4】

【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【0032】
表2、3、4および5において、誘電体は以下の通りである。
CDO=炭素ドープ酸化物;
Black Diamond登録商標=炭素ドープ酸化物の銘柄;
SiLKTM=有機ポリマー;
Coral登録商標=炭素ドープ酸化物の銘柄;
FSG=フッ素化珪酸塩ガラス;
TEOS=テトラエチルオルト珪酸塩;
Fox-16登録商標=流動酸化物(HSQ型);および
SiN=シリコン窒化物
【0033】
以下の実施例は、比較的乏しい本発明の組成物のAl適合性と比較して、素晴らしいCu適合性を例証する。表1Aの組成物DおよびF、並びに表1Bの組成物Lについてデータを提示する。
【0034】
本発明の洗浄組成物について、銅およびアルミニウムエッチング率を、以下の表6および7のエッチング率データにより立証する。エッチング率は、以下の試験方法を利用して判定した。約13x50mmのアルミニウムまたは銅の薄片小片を採用した。薄片小片の重量を測定した。薄片小片を2−プロパノール、蒸留水およびアセトンで洗浄した後、薄片小片を乾燥オーブン中で乾燥させた。次いで、洗浄、乾燥された薄片小片を、予熱した本発明の洗浄組成物が入ったゆるく栓をした容器に入れ、2ないし24時間の期間、指示された温度で真空オーブン中に置いた。処理並びにオーブンおよび容器からの取出しに続き、洗浄された薄片を大多量の蒸留水ですすぎ、乾燥オーブン中で約1時間乾燥させ、室温に冷却させ、重量減損または重量変化に基づきエッチング率を判定した。
【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
組成物中に存在する本発明の腐食阻害溶媒を有する利点を、様々な腐食阻害溶媒を利用する以下の実施例により、腐食阻害溶媒が存在しない比較実施例と共に、立証する。Cuエッチング率試験は前記と同様の方法で実行し、結果を表8に示す。
【0038】
【表10】

【0039】
同様のCuエッチング率試験を、腐食阻害溶媒を含む、および含まない、TMAH、DMSOおよびHO含有製剤で実行した。エッチング率データを表9に提示する。
【表11】

【0040】
組成物中に存在する腐食阻害溶媒を有する、および有さない、SFLとTMAHの製剤で、他の系列のCuエッチング率試験を実行した。かかる試験のデータを表10に提示する。
【表12】

【0041】
以下の実施例は、アンモニウム塩基(例えば水酸化アンモニウム(NHOH))と比較して、本発明の非アンモニウム強塩基(例えばTMAF)の、高感度低κ誘電体(水素シルセスキオキサン(HSQ)型FOx−15登録商標流動酸化物など)との優れた適合性を立証する。試験方法は以下の通りである。誘電体薄膜で被覆されたウエーハーサンプルを磁気攪拌(攪拌速度300rpm)された湿式化学溶液に、続いてイソプロパノールに浸し、蒸留水ですすいだ。IR分析の前に窒素流でサンプルを乾燥させた。
【0042】
重水素化トリグリシン硫酸塩(DTGS)検出器を使用して、Nicolet 740 FTIR 分光計により透過IRスペクトルを得た。スペクトルを4cm-1の解像度で捕捉し、32回のスキャンを平均した。フーリエ変換赤外(FTIR)分析は、HSQ誘電体の構造変化のモニタリング手段を提供する。典型的な堆積HSQ薄膜の赤外吸光バンドの割当(assignment)は、以下の通りである。
【表13】

【0043】
HSQ薄膜中のSi−H結合含量は、2,250cm-1のSi−H吸光バンドのピーク面積を測定することにより判定できる。シリコンウエーハー本来の650−525cm-1の吸光(Si−Siの格子様結合およびSi−C不純物に由来する)を内部標準/参照として使用して、良好な精度(相対的標準偏差:2−5%)の定量的IR分析に至った。
【0044】
【表14】

【0045】
以下の試験において、本発明の組成物の洗浄能力を例証する。試験では、以下のバイア構造、即ちフォトレジスト/炭素ドープ酸化物/シリコン窒化物/銅の、シリコン窒化物に穴があけられて銅を露出しているウエーハーを含むマイクロエレクトロニクス構造を、指示された温度と時間で洗浄液に浸し、水ですすぎ、乾燥させ、SEM検分により洗浄を判定した。結果を表12に示す。
【0046】
【表15】

【0047】
同じ洗浄試験を、以下のライン構造、即ち、フォトレジスト/窒化タンタル/FSG/銅のウエーハーを含むマイクロエレクトロニクス基板に対して実行した。比較の目的で、2つの先行技術の市販洗浄製品も試験した。洗浄結果を表13に記載する。
【表16】

【0048】
同様の洗浄試験を、以下のバイア構造、即ち、フォトレジスト/炭素ドープ酸化物/窒化シリコン/銅の、シリコン窒化物に穴があけられず、銅が露出していないウエーハーを含むマイクロエレクトロニクス構造に対して実行した。結果を表14に記載する。
【表17】

【0049】
同様の洗浄試験を、以下のバイア構造、即ち、pTEOS/Coral/SiN/Coral/SiN/銅のウエーハーを含むマイクロエレクトロニクス構造に対して実行した。結果を表15に記載する。
【表18】

【0050】
前述の本発明の説明で、本発明に対してその精神と範囲を逸脱することなく改変を為し得ることを、当業者は理解するであろう。従って、本発明の範囲が、例示および記載された特定の実施態様に限定されることは企図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性誘電体、低κまたは高κの誘電体の少なくとも1つおよび銅金属被覆を有するマイクロエレクトロニクス基板の洗浄方法であって、該方法が、基板を洗浄するのに十分な時間、基板を水性洗浄組成物と接触させることを含み、該水性洗浄組成物が、
重量で0.05%ないし30%の、非求核性、正荷電対イオンを含有し、かつ、式:
[(R)[X−q
(式中、各Rは、独立して置換または非置換アルキル基であり;XはOHまたは塩陰イオンであり;そしてpおよびqは等しく、1ないし3の整数である)
のテトラアルキルアンモニウム水酸化物または塩である、1種またはそれ以上の非アンモニア産生強塩基;
重量で0.5ないし99.95%の、1種またはそれ以上の腐食阻害溶媒化合物、該腐食阻害溶媒化合物は、金属と錯体形成できる少なくとも2つの部位を有し、かつ、エチレングリコール、トリエタノールアミンおよび1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノンからなる群から選択される;
重量で0より多く、99.45%までの、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびジメチルピペリドンからなる群から選択される少なくとも1種の他の有機共溶媒;
重量で0ないし5%の、アミノカルボン酸およびアミノホスホン酸からなる群から選択される金属キレート剤;および
重量で0ないし99.45%までの水
からなる洗浄組成物である、方法。
【請求項2】
Rが炭素数1ないし22のアルキル基であり、XがOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが炭素数1ないし6のアルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
腐食阻害溶媒がトリエタノールアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
洗浄組成物が、テトラメチルアンモニウム水酸化物、トリエタノールアミン、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、スルホランおよび水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
洗浄組成物が、テトラメチルアンモニウム水酸化物、ジメチルスルホキシド、トリエタノールアミンおよび水を含む、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2009−81445(P2009−81445A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280900(P2008−280900)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2003−512357(P2003−512357)の分割
【原出願日】平成14年7月8日(2002.7.8)
【出願人】(503077143)マリンクロッド・ベイカー・インコーポレイテッド (21)
【氏名又は名称原語表記】MALLINCKRODT BAKER, INC.
【Fターム(参考)】