説明

基準信号発生装置及び方法

【課題】 GPS信号の受信障害が発生しても、内蔵オシレータよりも高い周波数安定度の基準信号を発生することと、受信障害の発生前後で連続性の高い基準信号を出力することとを両立した基準信号発生装置を提供する。
【解決手段】 GPS受信機にて取得したGPS受信時刻と、そのGPS受信時刻の直前或いはその直後に標準電波受信機にて取得した標準電波受信時刻との時刻差を、予め定められた時間間隔毎に算出し、算出した時刻差と日時とを関連づけた時刻差データベースを構築する。GPS受信障害の発生を未検出のときGPS受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御して基準信号を発生し、GPS受信障害の発生を検出中は、時刻差データベースから取得した現在の日時に対応する時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正して電圧制御発振器を制御して基準信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基準信号発生装置に関し、特に、GPS(Global Positioning System)信号に基づいて電圧制御発振器が発生する基準信号のタイミングを補正する基準信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS信号に基づいてオシレータが発生する基準信号のタイミングを補正する基準信号発生装置は例えば図8のような構成を有する。GPS受信機901が受信したGPS信号を元に生成した1pps(パルス/秒)信号と、OCVCXO(oven-controlled voltage controlled crystal oscillator)803が出力する基準信号を分周回路805にて1ppsに分周しつつフィードバックした信号とをTI(タイムインターバル)カウンタ802にて比較し、その差に応じた制御電圧をデジタルループフィードバックフィルタ804がOCVCXO803に出力する。この種の基準信号発生装置はGPS信号の周波数安定度に準じた周波数安定度を有する基準信号を出力することができる。
【0003】
この種のGPS信号を参照して基準信号を生成する基準信号発生装置(以下、この種の基準信号発生装置をGPSオシレータと呼ぶこともある)によれば、GPS信号が受信できないときの周波数安定度はOCVCXO803の周波数安定度に依存するが、これはGPS信号の周波数安定度に劣る。このため、この種の基準信号発生装置では、GPS信号の受信障害が発生したときに出力する基準信号の周波数安定度を改善することがひとつの課題となっている。
【0004】
この課題を解決しようとする技術の一例が特許文献1に記載されている。同文献には、ホールドオーバー発生時、予め用意した周辺温度と制御データの対応関係を示す温度データと、周辺温度を測定する温度センサの出力に基づいて、内蔵オシレータの出力を補正することが記載されている。
【0005】
また、他の技術の一例が特許文献2に記載されている。この種の基準信号発生装置は、図9に示すように標準電波受信機を備え、GPS信号が受信できないときはGPS信号の代わりに標準電波受信時刻に基づいてOCVCXO803を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−217722号公報
【特許文献2】特開2002−71854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の基準信号発生装置には、GPS信号の受信障害が発生し、所謂ホールドオーバーが発生したとき、オシレータの出力から入力にフィードバックする信号を補正することにより、ホールドオーバー発生時の基準信号の精度を向上するものがあった。この種の基準信号発生装置では、ホールドオーバー発生時における基準信号の周波数安定度は、オシレータの周波数安定度に依存し、これ以上の周波数安定度を得ることができなかった。
【0008】
また、別の従来の基準信号発生装置では、標準電波のようにGPS信号とは別経路で外部から供給される信号に基づいて基準信号を発生していた。この種の技術では、別経路の外部信号に基づいて基準信号を生成するため、ホールドオーバー発生時の基準信号の周波数安定度は、その別経路の外部信号の周波数安定度に依存する。別経路の外部信号として標準電波を用いる場合は標準電波受信時刻の周波数安定度に依存し、通常はオシレータの周波数安定度に依存する場合よりも高くなる。
【0009】
しかしながら、この場合、ホールドオーバーの発生の前後において、基準信号を生成するためにオシレータが参照するタイミング信号は、GPS信号から標準電波等に切り替わる。別系統のタイミング信号に切り替わるため、ホールドオーバー発生の前後でタイミング信号の連続性が低下し、結果として基準信号発生装置が出力する基準信号の連続性も低下することとなる。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、GPS信号の受信障害等が発生し、ホールドオーバーが発生する場合であっても、内蔵オシレータよりも高い周波数安定度の基準信号を発生することと、ホールドオーバーの発生前後で出力する基準信号の連続性が高いこととを両立した基準信号発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明は、その一態様として、GPS(Global Positioning System)受信機と、標準電波受信機と、GPS受信機にて取得したGPS受信時刻と、そのGPS受信時刻の直前或いはその直後に標準電波受信機にて取得した標準電波受信時刻との時刻差を、予め定められた時間間隔毎に算出する演算手段と、算出した時刻差と日時とを関連づけた時刻差データベースを記憶する記憶手段と、GPS受信障害の発生を検出する手段と、GPS受信障害の発生を検出しているとき、現在の日時に対応する時刻差を時刻差データベースから取得し、取得した時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する標準電波受信時刻補正手段と、補正した標準電波受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御する手段と、基準信号を発生する電圧制御発信器とを備えることを特徴とする基準信号発生装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、他の一態様として、GPS(Global Positioning System)受信機及び標準電波受信機を所定の場所に設置する段階と、GPS受信機にて取得したGPS受信時刻と、そのGPS受信時刻の直前或いはその直後に標準電波受信機にて取得した標準電波受信時刻との時刻差を予め定められた時間間隔毎に算出し、日時と関連づけて記憶して、設置場所における時刻差データベースを構築する段階と、GPS受信障害の発生を検出する段階と、現在の日時に対応する時刻差を時刻差データベースから取得する段階と、取得した時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する段階と、補正した標準電波受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御して基準信号を発生する段階とを含むことを特徴とする基準信号発生方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、GPS受信時刻と標準電波受信時刻の時刻差とその日時を関連づけて記憶した時刻差データベースを予め用意し、GPS受信障害の発生を未検出のとき、GPS受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御し、GPS受信障害の発生を検出すると、時刻差データベースにおいて現在時刻に相当する過去の日時の時刻差(例えば昨年の同月同日同時刻の時刻差)を取得して、この時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正し、補正した標準電波受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御する。
【0014】
GPS受信障害発生時には標準電波時計に基づいて電圧制御発振器を制御するので、標準電波受信時刻に準じた周波数案程度の基準信号を発生することができる。
【0015】
また、その際に標準電波受信時刻をそのまま用いるのではなく、過去にその基準信号発生装置がその設置場所で過去に収集したGPS受信時刻と標準電波受信時刻との時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正し、言うなれば擬似的なGPS受信時刻を生成し、これを用いて電圧制御発振器を制御する。つまり、電圧制御発振器が基準信号を発生する際に参照する時刻を、GPS受信障害の発生に応じて、GPS受信時刻から擬似的なGPS受信時刻に切り替える。このため、参照する時刻をGPS受信時刻から標準電波受信時刻にそのまま切り替える場合と比べて、電圧制御発振器が参照する時刻情報の連続性が高く、従って、発生する基準信号の連続性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態であるGPSオシレータ1のブロック図である。
【図2】GPSオシレータ1における時刻差データベースを生成する動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】時刻差ΔT、GPS受信時刻tG及び標準電波受信時刻tSの関係を説明するための図である。
【図4】時刻差ΔTを1時間分プロットした経時変化特性の例を示す図である。
【図5】1日分の時間平均ΔThをプロットした経日変化特性の例を示す図である。
【図6】1年間分の日平均ΔTdをプロットした経年変化特性の例を示す図である。
【図7】GPSオシレータ1におけるOCVCXO103を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】従来の基準信号発生装置を説明するためのブロック図である。
【図9】従来の基準信号発生装置を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態であるGPSオシレータ1について説明する。GPSオシレータ1はGPS受信機を備える基準信号発生装置であり、図1を参照すると、GPSオシレータ1は、GPS受信機101、TIカウンタ102、OCVCXO103、デジタルループフィルタ104、分周回路105、標準電波受信機106、時刻情報コンパレータ107を備える。
【0018】
GPS(Global positioning system)受信機101は、GPS衛星が発信するGPS信号を受信する受信機である。GPS信号はGPS衛星に搭載の原子時計が生成する時刻を含んでいる。GPS信号を介して取得した時刻をGPS受信時刻と呼ぶものとする。GPS受信機101はGPS信号からGPS受信時刻を取得して、時刻情報コンパレータ107に出力する。また、GPS受信時刻から1pps(パルス/秒)の信号を生成してTIカウンタ102に出力する。GPS受信障害が発生しGPS信号が受信できないとき、GPS受信機101は、TIカウンタ102及び時刻情報コンパレータ107への出力を止める。
【0019】
TIカウンタ102はタイムインターバルカウンタであり、GPS受信機101が出力する1pps(パルス/秒)の信号をリファレンスとしてデジタルPLL回路を構成する。GPS受信障害が発生しGPS信号が受信できないとき、TIカウンタ102はデジタルループフィルタ104への出力を止める。
【0020】
OCVCXO103はoven-controlled voltage-controlled crystal oscillator、或いは恒温槽付電圧制御水晶発振器であり、デジタルループフィルタ104の出力に基づいて10MHzの基準信号を生成する。
【0021】
デジタルループフィルタ104は、TIカウンタ102または時刻情報コンパレータ107の出力に基づいて制御電圧値Δvを生成、出力し、OCVCXO103を制御する。
【0022】
分周回路105は、OCVCXO103が出力する10MHzの基準信号を分周して1Hz即ち1ppsの信号を生成し、TIカウンタ102に対して出力する。
【0023】
標準電波受信機106は、例えば情報通信研究機構が開設運用するJJYのような標準周波数報時局が送信する標準電波を受信する受信機である。標準電波を介して取得した時刻を標準電波受信時刻と呼ぶものとする。
【0024】
時刻情報コンパレータ107は、GPS受信機101から取得したあるGPS受信時刻(tG)と、そのGPS受信時刻tGの直前、或いはその直後に、標準電波受信機106から取得した標準電波受信時刻(tS)とに基づいて、時刻差ΔT=tS−tGを所定の時間間隔毎に算出し、時刻差ΔTと、その時刻差を算出した日時、即ち月、日、時、分とを関連づけた時刻差データベースを生成する。より詳しくは、時刻情報コンパレータ107は時刻差算出部107a、記憶部107b、平均算出部107c、補正量算出部107d及び標準電波受信時刻補正部107eを備える。
【0025】
時刻差算出部107aは、GPS受信時刻tGと標準電波受信時刻tSとの時刻差ΔT=tS−tGを所定の時間間隔毎に算出する。
【0026】
記憶部107bは、算出した時刻差ΔTと、後述する平均算出部107cが算出する所定期間における時刻差ΔTの平均を、それぞれ該当する日時と関連づけて格納する時刻差データベースを記憶する。
【0027】
平均算出部107cは予め定められた期間における時刻差ΔTの平均を算出する。
【0028】
補正量算出部107dは時刻差ΔT及びその期間平均に基づいて標準電波受信時刻の補正量ΔTcを算出する。
【0029】
標準電波受信時刻補正部107eは補正量算出部107dが算出した補正量により標準電波受信時刻を補正してデジタルループフィルタ104に渡す。
【0030】
次に、GPSオシレータ1における動作について説明する。
【0031】
GPSオシレータ1は、GPS受信障害が発生していないとき、時刻差ΔTと所定期間内の平均時刻差とをその算出した日時と関連づけた時刻差データベースを生成する。GPS受信障害が発生している期間においては、時刻差ΔTを算出することができないので、この期間の時刻差ΔT、平均時刻差は時刻差データベースに格納されない。
【0032】
また、GPSオシレータ1は、GPS受信障害が発生していないときは、一般的なGPSオシレータと同様、GPS信号に基づいてOCVCXO103の制御電圧を制御し、OCVCXO103にて基準信号を生成する一方、GPS受信障害が発生すると、時刻差データベースから現在の日時に対応する時刻差、平均時刻差を取得し、これらを元に時刻の補正量ΔTcを求め、これに基づいて標準電波受信時刻を補正して、謂わば擬似的なGPS受信時刻を生成する。この補正した標準電波受信時刻に基づいてOCVCXO103を制御して基準信号を生成する。以下、GPS受信障害が発生した状態をホールドオーバーと呼ぶこともある。
【0033】
GPS受信時刻と標準電波受信時刻はその生成元の原子時計が異なり、また、両者の伝達経路も異なる。このため、GPSオシレータ1が、同じ時刻を示すGPS受信時刻と標準電波受信時刻とを同時に受信することは通常はなく、ほとんどの場合、これらのGPS受信時刻と標準電波受信時刻の受信タイミングにはずれがある。このため、ホールドオーバーが発生したとき、内蔵オシレータに入力するタイミング信号をGPS受信時刻から標準電波受信時刻に切り替える従来の技術では、切替時に内蔵オシレータへの入力信号の連続性に悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、上述のように、ホールドオーバー発生時に過去の統計量を元に擬似的なGPS受信時刻を生成して内蔵オシレータに入力することにより、ホールドオーバーの前後で、内蔵オシレータOCVCXO103への入力信号の連続性を維持することが可能となる。しかも、標準電波受信時刻を補正して疑似GPS受信時刻を生成しているため、例えば内蔵オシレータ出力のフィードバックを補正する場合と比較して高い精度を得ることができる。
【0034】
時刻差データベースの生成について図2を参照して時刻情報コンパレータ107を中心に説明する。GPS受信機101からGPS受信時刻tGを受け取り(ステップS201)、標準電波受信機106から標準電波受信時刻tSを受け取る(ステップS202)と、時刻情報コンパレータ107は、これら時刻の差ΔTを算出する(ステップS203)。時刻差ΔT、GPS受信時刻tG及び標準電波受信時刻tSの関係を図3に示す。
【0035】
時刻情報コンパレータ107は、標準電波受信機106から毎分1回ずつ標準電波受信時刻tSを取得する。時刻差算出部107aは、標準電波受信時刻tSとGPS受信時刻tGとの時刻差ΔTを毎分1回ずつ算出し、算出した月、日、時、分と関連づけて、時刻差データベースとして記憶部107bに格納する(ステップS203)。ここでは、月、日、時、分と関連づけた1年間の時刻差ΔTを記憶部107bに格納するものとする。時刻差データベースに格納した時刻差ΔTを1時間分プロットした経時変化特性は例えば図4のようになる。
【0036】
記憶部107bに格納した時刻差ΔTに基づいて、平均算出部107cは所定期間内における時刻差ΔTの平均値を求め、その日時と関連づけて記憶部107bの時刻差データベースに格納していく(ステップS204)。
【0037】
より詳しくは、1時間分の時刻差ΔTを記憶部107bに格納すると、即ち、連続して取得した60個の時刻差ΔTを記憶部107bに格納すると、平均算出部107cは、この60個の時刻差ΔTの平均値である時間平均ΔThを算出し、その月、日、時と関連づけて1年間分を記憶部107bに格納していく。1日分の時間平均ΔThをプロットした経日変化特性は例えば図5のようになる。
【0038】
また、平均算出部107cは、1日分の時間平均ΔTh、即ち、連続した24個の時間平均ΔThの平均である日平均ΔTdを算出し、その月、日と関連づけて1年間分を記憶部107cに格納する。1年間分の日平均ΔTdをプロットした経年変化特性は例えば図6のようになる。
【0039】
次に、GPSオシレータ1による基準信号の生成について図7を参照して説明する。尚、記憶部107bの時刻差データベースには過去1年間分の時刻差ΔT、時間平均ΔTh、日平均ΔTdが予め格納されているものとする。
【0040】
ホールドオーバーが発生していない(ステップS701)とき、GPS受信機101、TIカウンタ102、デジタルループフィルタ104、OCVCXO103、分周回路105は、図9に示した従来のGPSオシレータと同様に動作する。即ち、TIカウンタ102は、GPS受信機101が出力する1ppsの信号と、分周回路105経由でフィードバックされたOCVCXO103の出力信号との間のタイミングのずれを測定(ステップS702)し、このずれに応じてデジタルループフィルタ104はOCVCXO103の制御電圧を求め(ステップS703)、その制御電圧でOCVCXO103を制御する(ステップS704)。
【0041】
ホールドオーバーが発生すると、GPS受信機101はGPS信号の受信ができなくなり、時刻情報コンパレータ107はGPS受信時刻を取得することができなくなる。GPS受信時刻を取得できない時間が予め定められた長さを超えると、時刻情報コンパレータ107はホールドオーバーが発生していると判定(ステップS701)し、補正量算出部107dは、現在の日時、即ち、月、日、時、分に対応する時刻差ΔT、時間平均ΔTh、日平均ΔTdを、記憶部107bに格納した時刻差データベースから取得し、これらの値を元に補正量ΔTcを算出する(ステップS705)。補正量ΔTcの算出は次のような式1で行なう。
ΔTc=(AΔT+AΔTh+AΔTd)/3…式1
、A、Aはそれぞれ予め定められた定数である。
【0042】
標準時刻補正部107eは補正量ΔTcにて標準電波受信時刻tSを次の式2のように補正して疑似GPS受信時刻tPを生成し、デジタルループフィルタ104に渡す。
tP=tS−ΔTc・・・式2
【0043】
デジタルループフィルタ104は、疑似GPS受信時刻tPに基づいてOCVCXO103の制御電圧値Δvを算出(ステップS703)し、この値を用いてOCVCXO103の制御電圧を制御する(ステップS704)。
【0044】
ホールドオーバーの発生を検出している間、時刻情報コンパレータ107は上述の動作を繰り返し、標準電波受信時刻tSを時刻差データベースにて補正して得られる疑似GSP受信時刻tPに基づいて、デジタルループフィルタ104はOCVCXO103を制御することになる。
【0045】
上述の実施形態では1分毎に算出した時刻差ΔTに基づいて補正を行うため、ある1分間の標準電波受信時刻tSを補正する際には同じ時刻差ΔTを用いる。次の1分間の標準電波受信時刻tSを補正する際に用いる時刻差ΔTは、時刻差データベースに格納されている次の時刻差ΔTとなる。尚、本実施形態では、時刻差算出部107aは1分毎に時刻差ΔTを算出したが、より短い或いは長い時間間隔にて時刻差ΔTを算出して時刻差データベースを作成することとしてもよい。
【0046】
本実施形態によれば、あらかじめ、ホールドオーバーが発生していないときにGPS受信時刻と標準電波受信時刻との経時偏差を、例えば一年間、時刻差データベースに記録し、その上で、ホールドオーバーが発生していないときは、GPS受信時刻tGに基づいてOCVCXO103の制御電圧を制御する一方、ホールドオーバーが所定時間以上継続すると、現在時刻に該当する日、時、分における日平均ΔTd、時間平均ΔTh及び時刻差ΔT、例えば昨年の同日同時同分の日平均ΔTd、時間平均ΔTh及び時刻差ΔTを時刻差データベースより取得し、これらに基づいて算出した補正量ΔTcを用いて標準電波受信時刻tSを補正して擬似的なGPS受信時刻tPを求め、これに基づいてOCVCXO103の制御電圧を制御する。
【0047】
昨年1年間におけるGPS受信時刻と標準電波受信時刻の間の経時偏差に基づいて標準電波受信時刻を補正することにより、そのGPSオシレータ1を設置した場所での昨年1年間における季節的な傾向、昼夜の別等の一日の中の時間帯における傾向を加味した偏差を用いて標準電波受信時刻を補正することとなる。このため、ホールドオーバー発生前後におけるGPS受信時刻とGPS受信時刻tPの間の連続性は、同じくホールドオーバー発生前後におけるGPS受信時刻と標準電波受信時刻tSの間の連続性よりも高くなる。その結果、ホールドオーバー発生時にデジタルループフィルタに入力する時間情報をGPS受信時刻から標準電波受信時刻に切り替える場合と比較して、本実施形態のGPSオシレータ1が生成する基準信号はホールドオーバー発生の前後でも高い連続性を維持することができる。
【0048】
また、疑似GPS受信時刻tPは標準電波受信時刻tSを補正量ΔTcで補正したものなので、疑似GPS受信時刻tP、及びこれに基づいてホールドオーバー発生中にGPSオシレータ1が生成する基準信号の周波数安定度は、標準電波の周波数安定度と同程度になる。標準電波の周波数安定度は24時間平均で約1×10^−11レベルであるため、ホールドオーバー発生時のGPSオシレータ1が生成する疑似GPS受信時刻tP、基準信号の周波数安定度も約1×10^−11レベルとなる。これは24時間に約846n秒のホールドオーバー特性となる。
【0049】
本実施形態は本発明の実施形態のひとつであり、これに限定されるものではない。例えば、時刻差算出部107aは1分毎に時刻差ΔTを求めたが、より長い或いはより短い周期で時刻差ΔTを求めることとしてもよい。
【0050】
また、時刻差データベースに1年間の日平均ΔTd、時間平均ΔTh及び時刻差ΔTを格納し、これらに基づいて補正量ΔTcを生成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、平均算出部107cを省略し、時刻差ΔTとその算出日時とを関連づけて時刻差データベースに格納することとしてもよい。この場合、ホールドオーバー発生時には、補正量算出部107dは現在の日付及び時刻に対応する日付及び時刻の時刻差ΔTを時刻差データベースから取得する。標準時刻補正部107eは取得した時刻差ΔTにて標準電波受信時刻を補正する。このようにすれば、時刻情報コンパレータ107の構成を簡素化することができる。
【0051】
また、時刻差データベースに複数年分の日平均ΔTd、時間平均ΔTh及び時刻差ΔTを格納し、ホールドオーバー発生時、補正量算出部107dは、現在時刻に対応する複数年分の日平均ΔTd、時間平均ΔTh及び時刻差ΔTを元に補正量ΔTcを算出することとしてもよい。
【0052】
また、GPSオシレータ1の設置場所に予め設置された別の機器にて生成した、その設置場所におけるGPS受信時刻tGと標準電波受信時刻tSの間の偏差の経時変化を記録した時間差データベースを、GPSオシレータ1の設置に先立って記憶部107bに格納することとしてもよい。このためには、記憶部107bにデータを外部から入力するためのインタフェースを、GPSオシレータ1は更に備えることになる。このようにすれば、GPSオシレータ1は設置直後からその設置場所におけるGPS受信時刻tGと標準電波受信時刻tSの偏差の経時変化に基づいて、疑似GPS受信時刻tPを生成することができる。時間差データベースを予め構築する別機器としては、例えば別のGPSオシレータ1がある。このように他のGPSオシレータ1に時間差データベースを提供するには、GPSオシレータ1は、記憶部107bからデータを外部に出力するためのインタフェースを更に備えることになる。
【符号の説明】
【0053】
1 GPSオシレータ
101 GPS受信機
102 TIカウンタ
103 OCVCXO
104 デジタルループフィルタ
105 分周回路
106 標準電波受信機
107 時刻情報コンパレータ
107a 時刻差算出部
107b 記憶部
107c 平均算出部
107d 補正量算出部
107e 標準電波受信時刻補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS(Global Positioning System)受信機と、
標準電波受信機と、
GPS受信機にて取得したGPS受信時刻と、標準電波受信機にて取得した標準電波受信時刻との時刻差を、予め定められた時間間隔毎に算出する演算手段と、
算出した時刻差と日時とを関連づけた時刻差データベースを記憶する記憶手段と、
GPS受信障害の発生を検出する手段と、
GPS受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御する第1の制御手段と、
現在の日時に対応する時刻差を時刻差データベースから取得し、取得した時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する標準電波受信時刻補正手段と、
補正した標準電波受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御する第2の制御手段と、
基準信号を発生する電圧制御発振器とを備え、
GPS受信障害の発生を未検出のとき、第1の制御手段により電圧制御発振器を制御し、GPS受信障害の発生を検出すると、第2の制御手段により電圧制御発振器を制御する
ことを特徴とする基準信号発生装置。
【請求項2】
GPS受信障害により算出できない時刻差を含む、少なくとも1年間分の時刻差を日時と関連づけて時刻差データベースに記憶し、
前記1年間分の中で現在の日時と同月同日同時刻に関連づけられた時刻差を時刻差データベースから取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の基準信号発生装置。
【請求項3】
記憶した時刻差に基づいて、予め定められた期間内における平均時刻差を算出する演算手段を更に備え、
記憶手段は、平均時刻差の期間を示す日時と関連づけて時刻差データベースに記憶し、
標準電波受信時刻補正手段は、現在の日時に対応する時刻差及び平均時刻差を時刻差データベースから取得し、取得した時刻差及び平均時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する
ことを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の基準信号発生装置。
【請求項4】
時刻差を算出する時間間隔は1分であり、
平均時刻差を算出する演算手段は、平均時刻差として、1時間の時刻差の平均である時間平均と、1日の時刻差の平均である日平均を算出し、
記憶手段は、時間平均及び日平均に対応する日時と関連づけて時刻差データベースに記憶し、
標準電波受信時刻補正手段は、現在の日時に対応する時刻差、時間平均及び日平均を時刻差データベースから取得する
ことを特徴とする請求項3に記載の基準信号発生装置。
【請求項5】
GPS(Global Positioning System)受信機及び標準電波受信機を所定の場所に設置する段階と、
GPS受信機にて取得したGPS受信時刻と標準電波受信機にて取得した標準電波受信時刻との時刻差を予め定められた時間間隔毎に算出し、日時と関連づけて記憶して、設置場所における時刻差データベースを構築する段階と、
GPS受信障害の発生を検出する段階と、
現在の日時に対応する時刻差を時刻差データベースから取得する段階と、
取得した時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する段階と、
補正した標準電波受信時刻に基づいて電圧制御発振器を制御して基準信号を発生する段階と
を含むことを特徴とする基準信号発生方法。
【請求項6】
GPS受信障害により算出できない時刻差を含む、少なくとも1年間分の時刻差を日時と関連づけて時刻差データベースに記憶し、
前記1年間分の中で現在の日時と同月同日同時刻に関連づけられた時刻差を時刻差データベースから取得する
ことを特徴とする請求項5に記載の基準信号発生方法。
【請求項7】
記憶した時刻差に基づいて、予め定められた期間内における平均時刻差を算出し、その期間を示す日時と関連づけて時刻差データベースに記憶する段階を更に含み、
現在の日時に対応する時刻差及び平均時刻差を時刻差データベースから取得し、
取得した時刻差及び平均時刻差に基づいて標準電波受信時刻を補正する
ことを特徴とする請求項5及び6のいずれかに記載の基準信号発生方法。
【請求項8】
時刻差を算出する時間間隔は1分であり、
平均時刻差として、1時間の時刻差の平均である時間平均と、1日の時刻差の平均である日平均を算出し、時間平均及び日平均に対応する日時と関連づけて時刻差データベースに記憶し、
現在の日時に対応する時刻差、時間平均及び日平均を時刻差データベースから取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の基準信号発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−182099(P2011−182099A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42777(P2010−42777)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】