説明

塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置

【課題】基板上に塗布液を塗布する際に、塗布液の供給量を少量に抑えつつ、基板面内で均一に塗布液を塗布する。
【解決手段】回転中のウェハ上に溶剤を供給し、ウェハを第6の回転数で回転させて溶剤を拡散させる(工程S1)。ウェハの回転を第1の回転数まで加速させ、第1の回転数でウェハを回転させる(工程S2)。ウェハの回転を第2の回転数まで減速させ、ウェハWを第2の回転数で回転させる(工程S3)。ウェハの回転を第3の回転数までさらに加速し、第3の回転数でウェハを回転させる(工程S4)。ウェハの回転を第4の回転数である0rpm超500rpm以下まで減速させ、第4の回転数で1〜10秒間ウェハを回転させる(工程S5)。ウェハの回転を第5の回転数まで加速し、第5の回転数でウェハを回転させる(工程S6)。工程S2から工程S3の途中まで、あるいは工程S2の間ウェハの中心にレジスト液を連続的に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布処理方法、プログラム、コンピュータ記憶媒体及び塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、当該レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。
【0003】
上述したレジスト塗布処理では、回転中のウェハの中心部にノズルからレジスト液を供給し、遠心力によりウェハ上でレジスト液を拡散することよってウェハ上にレジスト液を塗布する、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。このようなレジスト塗布を行うにあたっては、高い面内均一性をもってレジスト液をウェハ上に塗布することが必要である。またスピン塗布法は、ウェハ上に供給されたレジスト液の大部分が振り切られてしまい、そしてレジスト液は高価であることから、ウェハ上へのレジスト液の供給量を少なくすることも重要である。
【0004】
このようなスピン塗布法において、レジスト液を少量で均一に塗布する方法として、次の第1の工程から第3の工程までを実行する塗布処理方法が提案されている。先ず、第1の工程において、高速の第1の回転数で回転中のウェハの中心部にレジスト液を供給し、ウェハ上にレジスト液を拡散させる。この第1の工程では、ウェハ上に供給されるレジスト液が少量であるため、レジスト液はウェハの端まで拡散するに至っていない。続いて、第2の工程において、ウェハの回転を第2の回転数まで一旦減速すると共に、ウェハ上のレジスト液の流動性を向上させるため、第1の工程におけるレジスト液の供給を継続して行う。その後、第2の工程におけるレジスト液の供給を停止した後、第3の工程において、ウェハの回転を第3の回転まで加速し、レジスト液をウェハの表面の全面に拡散させると共に拡散させたレジスト液の乾燥を行い、ウェハ上に均一な膜厚のレジスト液を塗布する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−71960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らによれば、上述した従来の方法を用いた場合であっても、レジスト液の供給量をさらに減少させると面内均一性が低下し、特に基板の外周縁部におけるレジスト液の膜厚の低下が顕著なものとなることが分かった。この点について本発明者らが検証したところによれば、上述の方法を用いてレジスト液をウェハ端部まで均一に塗布するためには、例えば直径300mmのウェハの場合、供給するレジスト液は0.5ml(ミリリットル)程度が必要であり、供給するレジスト液の量を、例えば半分の0.25mlとした場合は、外周縁部におけるレジスト液の膜厚の低下が確認された。このため、従来の方法では、ウェハ面内でレジスト液を均一に塗布するにあたり、減少させることができるレジスト液の供給量には限界があり、所定の値よりも少量に抑えることはできなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板上に塗布液を塗布する際に、塗布液の供給量を少量に抑えつつ、基板面内で均一に塗布液を塗布することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板上に塗布液を塗布する方法であって、第1の回転数で基板を回転させる第1の工程と、その後、基板の回転を減速し、第1の回転数より遅い第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板の回転を加速し、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、その後、基板の回転を減速し、第3の回転数より遅い第4の回転数で基板を回転させる第4の工程と、その後、基板の回転を加速し、第4の回転数より速い第5の回転数で基板を回転させる第5の工程と、を有し、基板の中心部への塗布液の供給を前記第1の工程から前記第2の工程の途中まで、あるいは前記第1の工程の間連続して行い、前記第4の回転数は0rpm超500rpm以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明者らが鋭意調査したところ、レジスト液の供給量を従来の半分程度とした場合は、第3の工程においてレジスト液が基板の外周へ広がる過程で乾燥が進み流動性が低下するので、レジスト液が基板外周の端部まで到達したとしてもそのまま乾燥してしまい、それにより外周縁部におけるレジスト液の膜厚の低下が生じることが確認された。
【0010】
そして、発明者らが更に調査したところ、第3の工程においてレジスト液が基板端部に到達した時点で基板の回転数を減速し、第3の回転数より遅い0rpm超500rpm以下で回転させることで、レジスト液の乾燥を抑えつつ基板中心部のレジスト液を基板の外周へ広げること、即ち基板面内において基板の中心部と基板の外周部との間で膜厚のバランスを整えることが可能であることが判った。したがって、第3の回転数で回転させレジスト液が基板の端部に到達した後に第4の回転数で回転させることで、レジスト液の供給量を従来よりも少量に抑えた場合であっても、外周縁部におけるレジスト液の膜厚の低下を発生させることなく塗布液を塗布し、基板面内で均一に塗布液を塗布することができることが分かった。
【0011】
そこで、本発明では、先ず、第1の工程において第1の回転数で基板を回転させながら基板の中心部に塗布液を供給しているので、基板への塗布液の供給量が少量の場合でも、当該塗布液を均一に拡散させることができる。その後、第2の工程において第2の回転数で基板を回転させるので、第1の工程で供給された塗布液は、その乾燥が抑えられつつ基板上を拡散する。その後、第3の工程において、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数で基板を回転させるので、基板上の塗布液は基板表面の全面に拡散される。そして、後続の第4の工程において、第3の回転数より遅い第4の回転数で基板を回転させているので、レジスト液の乾燥を抑えつつ基板中心部のレジスト液が基板の外周へ広げられ基板上の塗布液は均されて平坦化される。以上のように、本発明の塗布処理方法によれば、塗布液の供給量を少量に抑えつつ、基板面内で均一に塗布液を塗布することができる。
【0012】
前記第4の工程において、第4の回転数での基板の回転を1〜10秒間行うことが好ましい。
【0013】
前記第1の工程の前に、第1の回転数より遅い第6の回転数で基板を回転させる第6の工程をさらに有していてもよい。
【0014】
前記第1の工程において、基板の回転の加速度を第1の加速度、前記第1の加速度よりも大きい第2の加速度、前記第2の加速度よりも小さい第3の加速度の順に変化させ、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させてもよい。
【0015】
前記第1の工程において、開始前に第6の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に加速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に減少させて、基板の回転を第1の回転数に収束させてもよい。
【0016】
前記第1の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させてもよい。
【0017】
前記第6の工程の前に、第6の回転数より速い回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布してもよく、あるいは、前記第6の工程において、第6の回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布してもよい。
【0018】
前記第1の工程において、第1の回転数で基板を回転させる前に、第1の回転数より速い第7の回転数で基板を回転させてもよい。かかる場合、前記第7の回転数は4000rpm以下が好ましく、前記第1の工程において当該第7の回転数での基板の回転を0.1秒〜0.5秒間行ってもよい。
【0019】
前記第1の工程と前記第2の工程の間に、第1の回転数より遅く、且つ第2の回転数より速い第8の回転数で基板を回転させる第7の工程を有し、前記第8の回転数は1500rpm〜2000rpmであってもよい。
【0020】
前記第7の工程において、基板の回転の加速度を第4の加速度、前記第4の加速度よりも大きい第5の加速度の順に変化させ、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させてもよい。
【0021】
前記第7の工程において、開始前に第1の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に減速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に増加させて、基板の回転を第8の回転数に収束させてもよい。
【0022】
前記第7の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させてよい。
【0023】
別な観点による本発明によれば、前記塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0024】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【0025】
さらに別な観点による本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板を保持して回転させる回転保持部と、基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、第1の回転数で基板を回転させる第1の工程と、その後、基板の回転を減速し、第1の回転数より遅い第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板の回転を加速し、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、その後、基板の回転を減速し、第3の回転数より遅い0rpm超500rpm以下である第4の回転数で基板を回転させる第4の工程と、その後、基板の回転を加速し、第4の回転数より速い第5の回転数で基板を回転させる第5の工程と、を実行するように前記回転保持部を制御し、かつ基板の中心部への塗布液の供給を前記第1の工程から前記第2の工程の途中まで、あるいは前記第1の工程の間連続して行うように前記塗布液ノズルを制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0026】
前記制御部は、前記第4の工程において、第4の回転数での基板の回転を1〜10秒間行うように前記回転保持部を制御することが好ましい。
【0027】
前記制御部は、前記第1の工程の前に、第1の回転数より遅い第6の回転数で基板を回転させる第6の工程をさらに実行するように前記回転保持部を制御してもよい。
【0028】
前記制御部は、基板の回転の加速度を第1の加速度、前記第1の加速度よりも大きい第2の加速度、前記第2の加速度よりも小さい第3の加速度の順に変化させ、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0029】
前記制御部は、前記第1の工程において、開始前に第6の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に加速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に減少させて、基板の回転を第1の回転数に収束させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0030】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0031】
基板に塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルをさらに有し、前記制御部は、前記第6の工程の前に、第6の回転数より速い回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布するように前記回転保持部及び前記溶剤ノズルを制御してもよい。
【0032】
基板に塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルをさらに有し、前記制御部は、前記第6の工程において、第6の回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布するように前記回転保持部及び前記溶剤ノズルを制御してもよい。
【0033】
前記制御部は、前記第1の工程において、第1の回転数で基板を回転させる前に、第1の回転数より速い第7の回転数で基板を回転させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0034】
前記制御部は、前記第7の回転数は4000rpm以下であり、前記第1の工程において当該第7の回転数での基板の回転を0.1秒〜0.5秒間行うように前記回転保持部を制御してもよい。
【0035】
前記制御部は、前記第1の工程と前記第2の工程の間に、第1の回転数より遅く、且つ第2の回転数より速い1500rpm〜2000rpmである第8の回転数で基板を回転させる第7の工程をさらに実行するように前記回転保持部を制御してもよい。
【0036】
前記制御部は、前記第7の工程において、基板の回転の加速度を第4の加速度、前記第4の加速度よりも大きい第5の加速度の順に変化させ、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0037】
前記制御部は、前記第7の工程において、開始前に第1の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に減速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に増加させて、基板の回転を第8の回転数に収束させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【0038】
前記制御部は、前記第7の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させるように前記回転保持部を制御してもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、基板上に塗布液を塗布する際に、塗布液の供給量を少量に抑えつつ、基板面内で均一に塗布液を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】本実施の形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図3】塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図4】塗布処理プロセスの主な工程におけるウェハ上の液膜の状態を模式的に示した説明図であり、(a)は第1の回転数で回転中のウェハ上をレジスト液が拡散する様子を示し、(b)は第3の回転数で回転中のウェハ上をレジスト液が拡散する様子を示し、(c)はウェハ上にレジスト膜が形成された様子を示している。
【図5】本実施の形態と比較例について、ウェハ上のレジスト膜の膜厚を示したグラフである。
【図6】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図7】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図8】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図9】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図10】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図11】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図12】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図13】他の実施の形態と比較例について、ウェハの外周部上のレジスト膜の膜厚を示したグラフである。
【図14】従来の塗布処理方法を用いた場合において、ウェハ上をレジスト液が拡散する様子を示す説明図である。
【図15】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図16】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【図17】他の実施の形態にかかる塗布処理プロセスの各工程におけるウェハの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布処理装置としてのレジスト塗布装置1の構成の概略を示す縦断面図である。図2は、レジスト塗布装置1の構成の概略を示す横断面図である。なお、本実施の形態では、塗布液としてレジスト液が用いられる。また、本実施の形態において、基板として用いられるウェハWの径は300mmである。
【0042】
レジスト塗布装置1は、図1に示すように処理容器10を有している。処理容器10内の中央部には、ウェハWを保持して回転させる回転保持部としてのスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック20上に吸着保持できる。
【0043】
スピンチャック20は、例えばモータなどを備えたチャック駆動機構21を有し、そのチャック駆動機構21により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構21には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック20は上下動可能になっている。
【0044】
スピンチャック20の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ22が設けられている。カップ22の下面には、回収した液体を排出する排出管23と、カップ22内の雰囲気を排気する排気管24が接続されている。
【0045】
図2に示すようにカップ22のX方向負方向(図2の下方向)側には、Y方向(図2の左右方向)に沿って延伸するレール30が形成されている。レール30は、例えばカップ22のY方向負方向(図2の左方向)側の外方からY方向正方向(図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール30には、例えば二本のアーム31、32が取り付けられている。
【0046】
第1のアーム31には、図1及び図2に示すようにウェハWにレジスト液を供給する塗布液ノズルとしてのレジスト液ノズル33が支持されている。第1のアーム31は、図2に示すノズル駆動部34により、レール30上を移動自在である。これにより、レジスト液ノズル33は、カップ22のY方向正方向側の外方に設置された待機部35からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム31は、ノズル駆動部34によって昇降自在であり、レジスト液ノズル33の高さを調整できる。
【0047】
レジスト液ノズル33には、図1に示すように、レジスト液供給源36に連通する供給管37が接続されている。レジスト液供給源36内には、レジスト液が貯留されている。供給管37には、レジスト液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群38が設けられている。
【0048】
第2のアーム32には、レジスト液の溶剤、例えばシンナーを供給する溶剤ノズル40が支持されている。第2のアーム32は、図2に示すノズル駆動部41によってレール30上を移動自在であり、溶剤ノズル40を、カップ22のY方向負方向側の外方に設けられた待機部42からカップ22内のウェハWの中心部上方まで移動させることができる。また、ノズル駆動部41によって、第2のアーム32は昇降自在であり、溶剤ノズル40の高さを調節できる。
【0049】
溶剤ノズル40には、図1に示すように溶剤供給源43に連通する供給管44が接続されている。溶剤供給源43内には、溶剤が貯留されている。供給管44には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群45が設けられている。なお、以上の構成では、レジスト液を供給するレジスト液ノズル33と溶剤を供給する溶剤ノズル40が別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、レジスト液ノズル33と溶剤ノズル40の移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0050】
上述のスピンチャック20の回転動作と上下動作、ノズル駆動部34によるレジスト液ノズル33の移動動作、供給機器群38によるレジスト液ノズル33のレジスト液の供給動作、ノズル駆動部41による溶剤ノズル40の移動動作、供給機器群45による溶剤ノズル40の溶剤の供給動作などの駆動系の動作は、制御部50により制御されている。制御部50は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、レジスト塗布装置1におけるレジスト塗布処理を実現できる。なお、レジスト塗布装置1におけるレジスト塗布処理を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部50にインストールされたものが用いられている。
【0051】
次に、以上のように構成されたレジスト塗布装置1で行われる塗布処理プロセスについて説明する。図3は、塗布処理プロセスの各工程におけるウェハWの回転数と、レジスト液及び溶剤の供給タイミングを示すグラフである。図4は、塗布処理プロセスの主な工程におけるウェハW上の液膜の状態を模式的に示している。なお、図3におけるプロセスの時間の長さは、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の時間の長さに対応していない。
【0052】
レジスト塗布装置1に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック20に吸着保持される。続いて第2のアーム32により待機部42の溶剤ノズル40がウェハWの中心部の上方まで移動する。次に、図3に示すようにウェハWが停止している状態で、溶剤ノズル40からウェハWの中心部に所定量の溶剤が供給される。その後、チャック駆動機構21を制御してスピンチャック20によりウェハWを回転させ、その回転数を第6の回転数である、例えば500rpmまで上昇させる。この500rpmの回転数でウェハWを例えば1秒間回転させることにより、ウェハWの中心部に供給された溶剤は外周部に向かって拡散し、すなわちプリウェットが行われ、ウェハWの表面が溶剤で濡れた状態になる(図3の工程S1)。その後、溶剤がウェハWの表面の全面に拡散すると、溶剤ノズル40がウェハWの中心部上方から移動すると共に、第1のアーム31により待機部35のレジスト液ノズル33がウェハWの中心部上方まで移動する。
【0053】
その後、図3に示すようにウェハWの回転を第1の回転数である例えば2000rpm〜3500rpm、本実施の形態においては3000rpmまで加速させ、その後ウェハWを第1の回転数で例えば0.8秒間回転させる。そして、このウェハWの加速回転中及び第1の回転数での回転中において、レジスト液ノズル33からレジスト液Rが連続して供給される(図3の工程S2)。ノズル33から供給されたレジスト液Rは、図4(a)に示すようにウェハWの回転によりウェハW上を拡散する。この工程S2では、レジスト液Rの供給量を少量にしているため、レジスト液RはウェハWの端まで拡散していない。また、ウェハWは第1の回転数で高速回転しているが、その第1の回転数でのウェハWの回転は0.8秒間と短時間であるため、ウェハW上のレジスト液Rは完全に乾燥するには至っていない。
【0054】
その後、図3に示すようにウェハWの回転を第2の回転数である例えば100rpm〜500rpm、本実施の形態においては100rpmまで減速させ、その後ウェハWを第2の回転数で例えば0.4秒間回転させる。そして、このウェハWの減速回転中及び第2の回転数での回転の途中までにおいて、レジスト液ノズル33からレジスト液Rが連続して供給される。すなわち、第2の回転数でのウェハWの回転開始から例えば0.2秒後に、工程S1から連続して行われていたレジスト液Rの供給を停止する(図3の工程S3)。この工程S3では、ウェハWが第2の回転数で低速回転しているため、例えばウェハWの外周部のレジスト液Rに中央部へ引き寄せられる力が作用し、ウェハW上のレジスト液Rは均されて平坦化される。
【0055】
その後、ウェハWの回転を第3の回転数である例えば1000rpm〜2500rpm、本実施の形態においては1500rpmまで加速させ、その後ウェハWを第3の回転数で例えば2.5秒間回転させる(図3の工程S4)。この工程S4では、図4(b)に示すようにレジスト液RはウェハWの表面の全面に拡散し、ウェハWの端部に到達する。
【0056】
次いで、図4(b)に示すようにレジスト液RがウェハWの端部に到達すると、ウェハWの回転を第4の回転数である例えば0rpm超500rpm以下、本実施の形態においては100rpmまで減速させ、その後ウェハWを第4の回転数で例えば1〜10秒、本実施の形態においては2秒間回転させる(図3の工程S5)。このように第4の回転数で回転させることで、ウェハW上のレジスト液Rの乾燥を抑えつつウェハ中心部のレジスト液Rを基板の外周へ広げることができる。そうすると、レジスト液Rの供給量を従来よりも少量に抑えた場合であっても、ウェハW中心部のレジスト液RがウェハWの外周へ広げられ、結果としてウェハWの外周縁部における膜厚の低下を発生させることなくウェハWの面内で均一にレジスト液Rが塗布される。
【0057】
その後、ウェハWの回転数を第5の回転数である、800rpm〜1800rpm、本実施の形態においては1500rpmまで加速させ、その後ウェハWを第5の回転数で例えば10秒間回転させる(図3の工程S6)。この工程S6では、図4(c)に示すようにウェハWの表面の全面に拡散されたレジスト液Rは乾燥され、ウェハW上にレジスト膜Fが形成される。
【0058】
その後、ウェハWの裏面が洗浄され、レジスト塗布装置1における一連の塗布処理が終了する。
【0059】
ここで、上述した工程S5において、ウェハWの回転数を第4の回転数である0rpm超500rpm以下にした場合、当該第4の回転数で回転中のウェハW上のレジスト液Rの乾燥を抑えつつウェハ中心部のレジスト液Rを基板の外周へ広げることで、ウェハW面内で均一にレジスト液Rを塗布することができることについて検証する。
【0060】
発明者らは、300mmの径を有するウェハWにレジスト液Rを塗布するにあたり、第4の回転数でウェハWを回転させる時間を1〜5秒で変化させた場合と、従来の方法、即ちウェハWを第4の回転数で回転させることなく、工程S4において第3の回転数で回転させる時間をレジスト液Rが完全に乾燥するまでの時間とした場合とで、ウェハW上のレジスト液Rの膜厚がどのように変化するかの比較検証を行った。なお、いずれの場合においても、ウェハWへのレジスト液Rの供給量はそれぞれ0.25mlとした。
【0061】
この検証の結果を図5に示す。図5の縦軸は、レジスト液Rの膜厚を、横軸は、ウェハWにおけるレジスト液Rの膜厚の測定点を示している。先ず、比較例として従来の方法を用いた場合の結果について説明する。図5を参照すると、従来の方法を用いてレジスト液Rを塗布した場合は、ウェハWの外周縁部においてレジスト液Rの膜厚の低下が確認された。具体的には、ウェハWの端部から30mm程度ウェハWの中心側に入った領域において膜厚が低下した。
【0062】
そこで、発明者らは、レジスト液RをウェハW上に供給した後、ウェハWを第3の回転数で回転させ、次いで第4の回転数で回転させる時間を変化させてウェハWの外周縁部におけるレジスト液Rの膜厚の低下が発生しないようにレジスト液Rを塗布できる第4の回転数の保持時間について調べた。図5を参照すると、第4の回転数の保持時間を1秒、2秒、3秒、5秒のいずれとした場合においても、ウェハWの外周縁部でのレジスト液Rの膜厚の低下が発生しないことが分かった。したがって、本実施の形態のようにウェハWを所定の時間第4の回転数で回転させることで、ウェハW中心部のレジスト液RがウェハWの外周へ広げられ、その結果ウェハW面内で均一にレジスト液Rを塗布することができることが分かった。
【0063】
以上の実施の形態によれば、先ず、工程S2において第1の回転数でウェハWを回転させながら、ウェハWの中心部にレジスト液Rを供給しているので、ウェハWへのレジスト液Rの供給量が少量の場合でも、レジスト液Rを均一に拡散させることができる。その後、工程S3において第2の回転数でウェハWを回転させるので、第1の工程で供給された塗布液は、その乾燥が抑えられつつウェハW上を拡散する。その後、工程S4において、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数でウェハWを回転させるので、ウェハW上のレジスト液RはウェハW表面の全面に拡散される。そして、後続の工程S5において、第3の回転数より遅い第4の回転数でウェハWを回転させているので、レジスト液Rの乾燥を抑えつつウェハ中心部のレジスト液が基板の外周へ広げられ、ウェハW上のレジスト液Rは均されて平坦化される。したがって本発明の塗布処理方法によれば、レジスト液Rの供給量を少量に抑えつつ、ウェハWの面内で均一にレジスト液Rを塗布することができる。
【0064】
なお、発明者らが調べたところ、本実施の形態の塗布処理方法を用いた場合、ウェハWの外周縁部におけるレジスト液Rの膜厚の低下を発生させることなくレジスト液Rを塗布するために必要なレジスト液Rの供給量は0.25mlであった。これに対し、上述した従来の塗布処理方法を用いた場合、必要なレジスト液Rの供給量は0.5mlであった。したがって、本実施の形態によれば、レジスト液Rの供給量を飛躍的に低減できることが分かった。
【0065】
また、工程S3において、ウェハW上にレジスト液Rを供給しているので、ウェハW上のレジスト液Rの流動性を向上させることができる。これによって、後続の工程S4において、レジスト液Rを円滑にウェハWの端まで拡散させることができる。
【0066】
さらに、工程S1において、ウェハW上をレジスト液Rの溶剤でプリウェットしているので、その後の工程でウェハW上に供給されたレジスト液Rを円滑に拡散させることができる。
【0067】
以上の実施の形態では、工程S1において、ウェハWの表面に溶剤を塗布した後にウェハWを回転させて、第6の回転数として例えば500rpmの回転数で一定時間回転させ、その後ウェハWの回転を第1の回転数に加速していたが、図6に示すように溶剤を塗布した後にウェハWを例えば2000rpmまでの加速し、一定時間、例えば0.3秒間2000rpmの回転数で回転させた後にウェハWの回転を第6の回転数である500rpmまで減速させ(図8の工程S1−1)、一定時間ウェハWの回転を500rpmで保持した後に(図8の工程S1−2)、ウェハWの回転数を第1の回転数まで上昇させてもよい。
【0068】
かかる場合、工程S1−1において溶剤を塗布した後にウェハWを2000rpmで回転させるので、500rpmで回転させた場合と比較して、短時間で溶剤のウェハW上への拡散を行うことができる。したがって、工程S1−1及び工程S1−2の所要時間を工程S1の所要時間よりも短縮することができる。
【0069】
また、上記のように工程S1においてウェハWを例えば2000rpmの回転数で回転させて溶剤の塗布を行う場合、例えば図7に示すようにウェハWの回転を減速させずに、すなわち上述した工程S1−2を経ずに工程S2を開始してもよい。かかる場合、ウェハWの回転を例えば2000rpmに維持した状態で工程S2が開始される。すなわち、本実施の形態においては、この2000rpmが第6の回転数となる。その後、工程S2において、ウェハWの回転を第1の回転数まで加速させ、その後ウェハWを第1の回転数で回転させる。そして、工程S2が開始すると同時にレジスト液ノズル33からのレジスト液Rの供給が開始され、このレジスト液Rの供給は工程S3の途中まで連続して行われる。なお、その他の工程S4、S5、S6については、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0070】
かかる場合、工程S1でウェハWの表面に溶剤を塗布した後、ウェハWの回転を減速せずに工程S2を開始しているので、工程S2におけるウェハWの回転が、前記実施の形態に比して比較的高速に維持される。このため、ウェハW上のレジスト液Rに比較的強い遠心力が作用し、ウェハ面内におけるレジスト液Rの膜厚均一性をより向上させることができる。また、工程S1の所要時間も短縮することができる。
【0071】
以上の実施の形態の工程S2において、図8に示すように第1の回転数でウェハWを回転させる前に、第1の回転数より速い第7の回転数でウェハWを回転させてもよい。
【0072】
例えば工程S1の後、ウェハWの回転を第7の回転数である例えば4000rpm以下、本実施の形態においては4000rpmまで加速させ、その後第7の回転数でウェハWを回転させる。第7の回転数でのウェハWの回転は0.1秒〜0.5秒間、本実施の形態においては0.2秒間行われる(図8の工程S2−1)。その後、ウェハWの回転を第1の回転数まで減速させ、その後ウェハWを第1の回転数で例えば0.6秒間回転させる(図8の工程S2−2)。なお、工程S2−1及び工程S2−2においても、レジスト液ノズル33からウェハWの中心部にレジスト液Rが連続して供給される。また、その他の工程S1、S3、S4、S5、S6については、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0073】
かかる場合、工程S2−1において高速の第7の回転数でウェハWを回転させながら、ウェハW上にレジスト液Rを供給しているので、レジスト液Rをより円滑にかつ均一に拡散させることができる。したがって、ウェハW上へのレジスト液Rの供給量をより少量にすることができる。また、本実施の形態では、工程S2−1及び工程S2−2の所要時間は、前記実施の形態の工程S2の所要時間とほぼ同じ場合について説明したが、上述のようにレジスト液Rを円滑に拡散させることができるため、工程S2−1及び工程S2−2の所要時間を短縮することもできる。例えば発明者らが調べたところ、第7の回転数でのウェハWの回転を0.1秒〜0.5秒間行うと、上述したレジスト液Rの供給量を少量にできる効果を十分に得られることが分かったため、この第7の回転数でのウェハWの回転を0.2秒以下にすることができる。
【0074】
以上の実施の形態の工程S2において、図9に示すようにウェハWを常に加速回転させてもよい。工程S2では、ウェハWの回転が500rpmから例えば550rpmに加速される(図9の工程S2−1)。この工程S2−1では、ウェハWの回転の加速度は、例えば500rpm/s以下、より好ましくは100rpm/sの第1の加速度である。このようにレジスト液RがウェハWの中心部に吐出された直後には、ウェハWの回転速度が低速であるので、ウェハW上のレジスト液Rに強い遠心力がかからない。しかも、このときのウェハWの回転の第1の加速度も小さいので、ウェハW上のレジスト液Rにかかる遠心力を抑えられる。このため、レジスト液Rが外側方向に均等に拡げられる。
【0075】
続いて、ウェハWの回転が550rpmから例えば2800rpmに加速される(図9の工程S2−2)。この工程S2−2では、ウェハの回転の加速度は、第1の加速度よりも大きく、例えば5000rpm/s〜30000rpm/s、より好ましくは10000rpm/sの第2の加速度である。このように第1の加速度よりも大きい第2の加速度でウェハWを加速回転させているので、ウェハW上のレジスト液Rが滑らかに且つ迅速に拡げられる。
【0076】
続いて、ウェハWの回転が2800rpmから第1の回転数に加速される(図9の工程S2−3)。この工程S2−3では、ウェハWの回転の加速度は、第2の加速度よりも小さい例えば500rpm/s以下、より好ましくは100rpm/sの第3の加速度である。なお、その他の工程S1、S2、S4、S5、S6については、前記実施の形態と同様であるので説明を省略する。このように第2の加速度よりも小さい第3の加速度でウェハWを加速回転させているので、レジスト液RをウェハW上で滑らかに拡げることができる。このため、レジスト液RをウェハWの面内で均一に塗布することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においても、図7に示したように工程S1でウェハWの回転を、例えば500rpmに減速させることなく工程S2を開始してもよい。すなわち、図10に示すように工程S2−1において第1の加速度でウェハWの回転が2000rpmから例えば2200rpmに加速され、続いて工程S2−2において第2の加速度でウェハWの回転が2200rpmから例えば2800rpmに加速され、続いて工程S2−3において第3の加速度でウェハWの回転が2800rpmから第1の回転数に加速される。かかる場合でも、上述したようにレジスト液Rの供給量を少量に抑えつつ、レジスト液Rをウェハ面内で均一に塗布することができる。
【0078】
以上の実施の形態では、工程S2において、ウェハWを常に加速回転させていたが、かかるウェハWの加速回転の方法は図9及び図10に示した方法に限定されない。例えば図11に示すように、工程S2において、ウェハWの回転数を例えば2000rpmから第1の回転数にS字状に変動させるように、ウェハWを加速回転させてもよい。すなわち、工程S2の開始前に2000rpmであったウェハWの回転数は、その後その回転数が連続的に滑らかに変動するように徐々に加速される。このとき、ウェハWの回転の加速度は、例えばゼロから次第に増加する。そして、工程S2の終了時には、ウェハWの回転の加速度が次第に減少され、ウェハWの回転数が第1の回転数に滑らかに収束する。
【0079】
また、例えば図12に示すように、工程S2において、ウェハWの回転数を例えば第6の回転数から第1の回転数に直線状に変動させるように、ウェハWを加速回転させてもよい。このとき、ウェハWの回転の加速度は一定である。
【0080】
このように図11及び図12に示したいずれの場合においても、工程S2において、ウェハWの回転数を常に加速回転させているので、上述したようにレジスト液Rの供給量を少量に抑えつつ、レジスト液Rをウェハ面内でより均一に塗布することができる。
【0081】
以上の実施の形態においては、第1の回転数から第2の回転数に減速させていたが、例えば図13に示すように、工程S2と工程S3との間に、第1の回転数より遅く且つ第2の回転数より速い第8の回転数として、例えば1500rpm〜2000rpmでウェハWを回転させる工程S7を行ってもよい。
【0082】
発明者らによれば、工程S2においては、レジスト液R中の添加剤の影響によりウェハW表面上でのレジスト液Rの接触角は大きくなる。また、ウェハWを第1の回転数で高速回転させるため、ウェハW上のレジスト液Rが乾燥し、当該レジスト液表面の流動性が低下する。このため、その後行われる工程S3において、第2の回転数で低速回転中のウェハWにレジスト液Rを供給した場合、先に第1の工程でウェハW上に供給されたレジスト液Rは、第2の工程でウェハW上に供給されたレジスト液Rと馴染まない。そうすると、後続の工程S4において、ウェハWを第3の回転数で回転させてレジスト液RをウェハW上に拡散させた場合、図14に示すようにレジスト液RがウェハWの外側方向に向かって不規則にスジ状に拡散し、先鋭化した長い塗布斑Lが放射状に出現する場合があることが確認された。
【0083】
この点について発明者らが鋭意調査したところ、第8の回転数である1500rpm〜2000rpmで回転中のウェハWにレジスト液Rを供給すると、レジスト液Rの乾燥を抑えつつ、ウェハW上にレジスト液Rを拡散させられることが分かった。したがって、ウェハWを第2の回転数で回転させた場合、レジスト液RがウェハWの同心円状に拡散し、基板上に塗布斑を発生させることなくレジスト液Rを塗布することができる。
【0084】
そこで、本実施の形態においては、ウェハWを第1の回転数で回転させた後、図13に示すようにウェハWの回転を第8の回転数である例えば1500rpm〜2000rpm、本実施の形態においては1500rpmまで減速させ、その後第8の回転数でウェハWを回転させる。第8の回転数でのウェハWの回転は、0.4秒以上、本実施の形態においては0.5秒間行われる。そして、このウェハWの減速回転中及び第8の回転数での回転中において、レジスト液ノズル33からレジスト液Rが連続して供給される(図13の工程S7)。供給されたレジスト液Rは、ウェハWの回転によりウェハW上を拡散する。この工程S7では、ウェハWの回転数を第8の回転数に減速させているので、ウェハW上のレジスト液Rの乾燥を抑制することができる。そうすると、先に工程S2で供給されたレジスト液Rと工程S3で供給されるレジスト液Rが馴染み易くなるため、レジスト液RはウェハWの同心円状に拡散する。なお、この工程S7では、レジスト液RはウェハWの外周部まで拡散するものの、レジスト液RはウェハWの端まで拡散していない。また、発明者らが調べたところ、第2の回転数でのウェハWの回転を0.4秒以上行うと、ウェハW上のレジスト液Rの乾燥を十分に抑制できることが分かった。
【0085】
なお、以上の実施の形態の実施の形態の工程S7においては、図15に示すようにウェハWを常に減速回転させてもよい。工程S7では、ウェハWの回転が第1の回転数から例えば1800rpmに減速される(図15の工程S7−1)。この工程S7−1では、ウェハWの回転の加速度は、例えば(−30000rpm/s)〜(−5000rpm/s)、より好ましくは(−10000rpm/s)の第4の加速度である。続いて、ウェハWの回転が1800rpmから第8の回転数に減速回転される(図15の工程S7−2)。この工程S7−2では、ウェハの回転の加速度は、第4の加速度よりも大きい例えば(−500rpm/s)以上かつゼロrpm/s未満、より好ましくは(−100rpm/s)の第5の加速度である。
【0086】
かかる場合、工程S7において第8の回転数でウェハWを回転させているので、工程S2でウェハW上に供給されたレジスト液Rを、その乾燥を押さえつつ拡散させることができる。そうすると、工程S2で供給されたレジスト液Rと工程S7で供給されたレジスト液Rが馴染み易くなるため、レジスト液RをウェハW上で同心円状に拡散させることができる。したがって、レジスト液Rの塗布班の発生を防止し、ウェハ面内で均一にレジスト液Rを塗布することができる。
【0087】
以上の実施の形態では、工程S7において、ウェハWを常に減速回転させていたが、かかるウェハWの減速回転の方法は図15に示した方法に限定されない。例えば図16に示すように、工程S7において、ウェハWの回転数を第1の回転数から第8の回転数にS字状に変動させるように、ウェハWを減速回転させてもよい。すなわち、第1の回転数であったウェハWの回転は、その後その回転数が連続的に滑らかに変動するように徐々に減速される。このとき、ウェハWの回転の加速度は、例えばゼロから次第に減少する。そして、工程S7の終了時には、ウェハWの回転の加速度が次第に増加され、ウェハWの回転数が第8の回転数に滑らかに収束する。
【0088】
また、例えば図17に示すように、工程S7において、ウェハWの回転数を第1の回転数から第8の回転数に直線状に変動させるように、ウェハWを減速回転させてもよい。このとき、ウェハWの回転の加速度は一定である。
【0089】
このように図16及び図17に示したいずれの場合においても、工程S7において第8の回転数でウェハWを回転させているので、上述したようにレジスト液Rの塗布班の発生を防止し、ウェハ面内で均一にレジスト液Rを塗布することができる。
【0090】
なお、以上の実施の形態においては、レジスト液Rの供給を工程S2から工程S3の途中まで行っていたが、工程S2の終了時にレジスト液Rの供給を停止してもよい。かかる場合においても、工程S5において第4の回転数でウェハWを回転させることにより、レジスト液Rの乾燥を抑えつつウェハ中心部のレジスト液Rを基板の外周へ広げることができるので、ウェハW上のレジスト液Rは均されて平坦化される。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば上述した実施の形態では、レジスト液の塗布処理を例に採って説明したが、本発明は、レジスト液以外の他の塗布液、例えば反射防止膜、SOG(Spin On Glass)膜、SOD(Spin On Dielectric)膜などを形成する塗布液の塗布処理にも適用できる。また、上述した実施の形態は、ウェハに塗布処理を行う例であったが、本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板上に塗布液を塗布する際に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 レジスト塗布装置
20 スピンチャック
33 レジスト液ノズル
40 溶剤ノズル
50 制御部
F レジスト膜
R レジスト液
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布液を塗布する方法であって、
第1の回転数で基板を回転させる第1の工程と、
その後、基板の回転を減速し、第1の回転数より遅い第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、
その後、基板の回転を加速し、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、
その後、基板の回転を減速し、第3の回転数より遅い第4の回転数で基板を回転させる第4の工程と、
その後、基板の回転を加速し、第4の回転数より速い第5の回転数で基板を回転させる第5の工程と、を有し、
基板の中心部への塗布液の供給を前記第1の工程から前記第2の工程の途中まで、あるいは前記第1の工程の間連続して行い、前記第4の回転数は0rpm超500rpm以下であることを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項2】
前記第4の工程において、第4の回転数での基板の回転を1〜10秒間行うことを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理方法。
【請求項3】
前記第1の工程の前に、第1の回転数より遅い第6の回転数で基板を回転させる第6の工程をさらに有することを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、基板の回転の加速度を第1の加速度、前記第1の加速度よりも大きい第2の加速度、前記第2の加速度よりも小さい第3の加速度の順に変化させ、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させることを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理方法。
【請求項5】
前記第1の工程において、開始前に第6の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に加速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に減少させて、基板の回転を第1の回転数に収束させることを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理方法。
【請求項6】
前記第1の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させることを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理方法。
【請求項7】
前記第6の工程の前に、第6の回転数より速い回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項8】
前記第6の工程において、第6の回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項9】
前記第1の工程において、第1の回転数で基板を回転させる前に、第1の回転数より速い第7の回転数で基板を回転させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項10】
前記第7の回転数は4000rpm以下であり、
前記第1の工程において当該第7の回転数での基板の回転を0.1秒〜0.5秒間行うことを特徴とする、請求項9に記載の塗布処理方法。
【請求項11】
前記第1の工程と前記第2の工程の間に、第1の回転数より遅く、且つ第2の回転数より速い第8の回転数で基板を回転させる第7の工程を有し、
前記第8の回転数は1500rpm〜2000rpmであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項12】
前記第7の工程において、基板の回転の加速度を第4の加速度、前記第4の加速度よりも大きい第5の加速度の順に変化させ、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させることを特徴とする、請求項11に記載の塗布処理方法。
【請求項13】
前記第7の工程において、開始前に第1の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に減速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に増加させて、基板の回転を第8の回転数に収束させることを特徴とする、請求項11に記載の塗布処理方法。
【請求項14】
前記第7の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させることを特徴とする、請求項11のいずれかに記載の塗布処理方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項17】
基板上に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板を保持して回転させる回転保持部と、基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、第1の回転数で基板を回転させる第1の工程と、その後、基板の回転を減速し、第1の回転数より遅い第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板の回転を加速し、第2の回転数より速く且つ第1の回転数より遅い第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、その後、基板の回転を減速し、第3の回転数より遅い0rpm超500rpm以下である第4の回転数で基板を回転させる第4の工程と、その後、基板の回転を加速し、第4の回転数より速い第5の回転数で基板を回転させる第5の工程と、を実行するように前記回転保持部を制御し、かつ基板の中心部への塗布液の供給を前記第1の工程から前記第2の工程の途中まで、あるいは前記第1の工程の間連続して行うように前記塗布液ノズルを制御する制御部と、を有することを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記第4の工程において、第4の回転数での基板の回転を1〜10秒間行うように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項17に記載の塗布処理装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記第1の工程の前に、第1の回転数より遅い第6の回転数で基板を回転させる第6の工程をさらに実行するように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項17又は18に記載の塗布処理装置。
【請求項20】
前記制御部は、基板の回転の加速度を第1の加速度、前記第1の加速度よりも大きい第2の加速度、前記第2の加速度よりも小さい第3の加速度の順に変化させ、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項19に記載の塗布処理装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記第1の工程において、開始前に第6の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に加速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に減少させて、基板の回転を第1の回転数に収束させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項19に記載の塗布処理装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記第1の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第6の回転数から第1の回転数まで加速回転させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項19に記載の塗布処理装置。
【請求項23】
基板に塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルをさらに有し、前記制御部は、前記第6の工程の前に、第6の回転数より速い回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布するように前記回転保持部及び前記溶剤ノズルを制御することを特徴とする、請求項19〜22のいずれかに記載の塗布処理装置。
【請求項24】
基板に塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルをさらに有し、前記制御部は、前記第6の工程において、第6の回転数で基板を回転させながら基板上に溶剤を塗布するように前記回転保持部及び前記溶剤ノズルを制御することを特徴とする、請求項19〜22のいずれかに記載の塗布処理装置。
【請求項25】
前記制御部は、前記第1の工程において、第1の回転数で基板を回転させる前に、第1の回転数より速い第7の回転数で基板を回転させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項17〜19のいずれかに記載の塗布処理装置。
【請求項26】
前記制御部は、前記第7の回転数は4000rpm以下であり、前記第1の工程において当該第7の回転数での基板の回転を0.1秒〜0.5秒間行うように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項25に記載の塗布処理装置。
【請求項27】
前記制御部は、前記第1の工程と前記第2の工程の間に、第1の回転数より遅く、且つ第2の回転数より速い1500rpm〜2000rpmである第8の回転数で基板を回転させる第7の工程をさらに実行するように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項17〜26のいずれかに記載の塗布処理装置。
【請求項28】
前記制御部は、前記第7の工程において、基板の回転の加速度を第4の加速度、前記第4の加速度よりも大きい第5の加速度の順に変化させ、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項27に記載の塗布処理装置。
【請求項29】
前記制御部は、前記第7の工程において、開始前に第1の回転数であった基板の回転を、開始後にその回転数が連続的に変動するように次第に減速させ、終了時には、基板の回転の加速度を次第に増加させて、基板の回転を第8の回転数に収束させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項27に記載の塗布処理装置。
【請求項30】
前記制御部は、前記第7の工程において、基板の回転の加速度を一定にして、当該基板を第1の回転数から第8の回転数まで減速回転させるように前記回転保持部を制御することを特徴とする、請求項27に記載の塗布処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−24705(P2012−24705A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166243(P2010−166243)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】