説明

塗布装置、塗布方法及び記憶媒体

【課題】
レジスト液をスピンコーティングにより塗布する工程において、回転している基板の遠心力により飛散したレジストミストを排気流から効率良く分離し、レジストミストが排気路側へ回り込むことを抑えること。
【解決手段】
基板の回転による遠心力よりレジスト液が飛散する前に、カップ内部表面にカップ内部の表面を濡らすためのミストを吹き付ける。この工程によりカップの内部表面に液膜(親水性)をつくり、この液膜にレジストミストが接触し当該レジストミストは吸着される。
そして、基板の回転による遠心力によりレジストミストが飛散しているときにミスト供給ノズルより捕捉用のミストをカップ内部へ供給し、当該捕捉用のミストがレジストミストを捕捉する。その結果、レジストミストの質量が増加しレジストミストは廃液路へ落ちていくとともにウエハの回転により生じた気流は排気路へ流れていく。この結果、効率的な気液分離が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板に塗布液を塗布するための塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては塗布液を基板上にスピンコーティングにより塗布する工程があり、塗布液としてはレジスト液が代表的であるが、その他例えば酸化シリコンの前駆物質を含む絶縁膜用の薬液などが挙げられる。スピンコーティング法は半導体ウエハやLCD用のガラス基板などの基板をスピンチャックに吸着し、基板の中心部に塗布液を供給すると共に基板を高速で回転させて塗布液を基板表面に展伸させる手法である。この種の塗布装置は、スピンチャック上の基板を囲むようにカップが設けられると共にこのカップの下方に吸引路が接続され、この吸引路の吸引により排気流が形成される。
【0003】
一方基板に供給された塗布液の大部分は基板の回転初期時にこぼれ落ち、こぼれ落ちた塗布液はカップの内壁及びカップ内のガイド部材の表面を伝って下方へ流れていく。続いて塗布液のミストが基板から飛散するが、このミストは前記排気流に乗って下方へ運ばれていく。従ってカップ内には排気流と塗布液のミストとが混在するが、排気流は工場内の排気ダクトを介して大気に放出され、塗布液は廃液として回収されるので、気液分離を行う必要がある。この気液分離はカップ内に屈曲路を設け、液体は自重により屈曲路の部位で気体から分離されてカップの底部の廃液口から回収され、また気体は屈曲路を通って廃液口とは別の排気口から回収されることによって行われる。またカップ内で気液分離を行わず、カップからは気液両方を吸引し、その排出路の途中に気液分離部を設ける場合もある。
【0004】
このような気液分離が完全に行われず、塗布液である薬液のミストが排気路中に回り込むと、環境汚染の要因になるし、また排気路の内壁や排気路に設けられたダンパに付着しメンテナンスの頻度を高くしてしまう。このためカップの下部壁面に傾斜をつけて薬液が廃液口に流れ込みやすいようにするなどの工夫が行われているが、気液分離が十分に行われているとは言い難い。そこで排気路中にケミカルフィルタを設けることも行われているが、その使用寿命が短いため交換頻度が多いという問題がある。
【0005】
なお、特許文献1には、レジスト塗布装置のカップに接続された排気路中にミストを噴射し、ここを流れる薬液ミストを巨大化させてその下方に位置する液溜め槽に取り込む手法が記載されている。しかしながら薬液ミストはカップ内に多く存在するため、先ずこのカップ内にて薬液ミストを除去することが効果的であるが、この点について特許文献1には何ら記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−236445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塗布液をスピンコーティング法により塗布するにあたって、回転している基板から飛散する塗布液のミストが排気路側に混入することを抑えることのできる塗布装置、塗布方法及びこの方法を実施するためのプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布装置は、基板を水平に保持する基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板に塗布液を供給する塗布ノズルと、
前記基板保持部を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に保持された基板を囲むように設けられ、底部に排気路が設けられたカップと、
基板の中心部に前記塗布ノズルから吐出された塗布液が基板の回転による遠心力により飛散する前に、カップ内部表面に液を供給して当該表面を濡らすためのカップ内前処理用の液供給部と、
前記塗布液が前記基板の回転による遠心力により飛散しているときに、飛散した塗布液のミストを捕捉するための捕捉用のミストをカップの内部に供給するためのミスト供給部と、を備えたことを特徴とする。
この場合、前記捕捉用のミストの供給開始のタイミングは、塗布液が基板から飛散する前である。
【0009】
前記ミスト供給部は、前記カップ内前処理用の液供給部を兼用することを特徴とする。
【0010】
以上において、前記ミスト供給部は、前記カップの内部にカップの周方向に沿って形成されたミスト吐出孔を備えていることを特徴とする。
この場合、前記ミスト供給部は、カップの周方向に沿って環状に形成された環状流路にミスト吐出孔が形成されて構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の塗布方法は、基板を基板保持部に水平に保持する工程と、
次いで基板の中心部に塗布液を供給すると共に基板保持部を鉛直軸周りに回転させて基板の表面に塗布液を塗布する工程と、
塗布液が基板の回転による遠心力により飛散する前に、カップ内部表面に液を供給して当該表面を濡らす工程と、
前記塗布液が基板の回転による遠心力により飛散しているときに、捕捉用のミストを前記基板を囲むカップの内部に供給して、飛散した塗布液のミストを捕捉する工程と、を含むことを特徴とする。
この場合、前記塗布液のミストを捕捉するためのミストの供給開始のタイミングは、塗布液が基板から飛散する前である。
【0012】
前記ミスト供給部は、前記カップの内部にカップの周方向に沿って形成されたミスト吐出孔を備えていることを特徴とする。
この場合において、前記ミスト供給部は、カップの周方向に沿って環状に形成された環状流路にミスト吐出孔が形成されて構成されていることを特徴とする。
更に他の発明は、回転する基板に塗布液を供給して塗布する塗布装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、本発明の上記の塗布方法を実施するためのステップ群が組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布液が基板の回転による遠心力により飛散する前に液をカップ内部に供給することによりカップ内部表面に液膜を形成しているので、スピンコーティング時に基板から飛散する塗布液のミストがこの液膜に吸着される。
そして、スピンコーティングにより基板から塗布液のミストが飛散しているときにミストをカップ内部に供給して塗布液のミストを捕捉し、これより、ミストを増大させ慣性力を大きくしている。従って既述のように塗布液のミストが液膜に吸着されることと相俟って、塗布液のミストが排気路側に混入することが抑えられ、その結果高い効率で気液分離を行うことができる。従って環境汚染の低減やメンテナンスの負荷の軽減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のレジスト塗布装置に係る実施形態について、図1を参照しながら説明する。このレジスト塗布装置は基板であるウエハWを処理する処理容器をなすカップ体10を備え、このカップ体10内には基板保持部をなすスピンチャック20が設けられている。このスピンチャック20では真空吸着によりウエハWを水平に保持できるように構成されており、下方にある駆動部21により鉛直回りに回転することができ、さらに昇降することが可能となっている。このカップ体10の内側には、スピンチャック20上のウエハWの裏面周縁部の下方側に縦断面形状が山形のガイド部11が環状に設けられており、山形の外側部位は斜め下方かつ外方に向かって傾斜する傾斜面12として形成され、この傾斜面12の下端は折れ曲がって垂直下方に伸びる垂直壁13として形成される。
【0015】
一方、前記カップ体10の上部の開口部はウエハWの受け渡しが行えるようにウエハWよりも一回り大きく形成されている。そして、この開口部の周囲部分14(開口縁部分)には、その内周面から水平に外方側に向けて切り欠かれて形成された環状凹部15が形成されており、この凹部15の底面は、スピンコーティング時のウエハWの表面と略同じ高さに設定されている。当該底面は高速回転するウエハWにより生じた気流を制御し、ウエハ周縁部のレジスト膜厚を均一にする役割を持っている。カップ体10の内周面における凹部15の下方側部位は、前記傾斜面12と対向する傾斜面16として形成され、更にこの傾斜面16の下端は、折れ曲がって前記垂直壁13と対向する垂直面17をなしている。傾斜面12、16の間及び垂直壁13と垂直面17との間に形成される環状空間18は気液を含む排気流の通流空間を構成している。前記凹部15の底面における外縁側部位と環状空間18との間には、連通路15aが形成されている。
【0016】
カップ体10の底面には、廃液路22が接続されていると共に、この廃液路22に対してカップ体10の中心を介して直径方向に対向した位置であってかつ垂直壁13よりもカップ体10の中心寄りにおいて排気路をなす排気管23が突入して設けられている。排気管23の上端は例えば垂直壁13の下端よりも少し高い箇所に位置しており、排気管23の下流側は図示しないダンパを介して工場内の排気ダクトに接続されている。従ってこの排気管23はダンパを開けることにより吸引が行われ、後述のプロセス時にカップ内に排気流が形成されることとなる。
【0017】
またレジスト塗布装置は、ウエハWの中心部にレジスト液を供給するためのレジスト液ノズル30とウエハWの中心部に溶剤(シンナー)を供給するための溶剤ノズル40とを備えている。レジスト液ノズル30はレジスト液供給管31を介してレジスト液を供給するレジスト液供給源32に接続されている。また、溶剤ノズル40は溶剤供給管41を介して溶剤供給源42に接続されている。これらレジスト液ノズル30と溶剤ノズル40は図示しない移動機構によりカップ体10の上方位置と待機位置との間で移動できるように構成されている。
【0018】
このレジスト塗布装置はカップ内における上段、中段、下段に各々カップ体10の全周に亘って環状に形成されたミスト供給部をなすミスト供給ノズル5、6、7が設けられている。上段のミスト供給ノズル5はカップ体10の上部の環状凹部15の天井部に形成された環状溝部5a内に収まるように設けられ、下方側にミストを吐出する吐出孔群が形成されている。この吐出孔の孔径は例えば0.1mm程度とされる。中段のミスト供給ノズル6は、カップ10の内周面である既述の傾斜面16の上部に形成された環状溝部6a内に収まるように設けられ、斜め下方側に向けミストを吐出するように吐出孔群が形成されている。このようにミスト供給ノズル5、6を環状溝部5a、6a内に収めておくことにより、これらノズル5、6による旋回気流の流れを乱す作用が抑えられる。なお、カップ体は複数の部材が組み合わされて構成されており、ノズル5、6はカップ体10に対して着脱できるようになっている。また、ノズル5,6は可撓性の部材例えばフレキシブルな樹脂性のチューブにより構成し、カップ体10で囲まれる空間から環状溝部5a、6aに嵌め込むようにしてもよい。このようにノズル5、6を着脱可能とすることにより、汚れが付着して洗浄する場合に便利である。更に下段のミスト供給ノズル7は、垂直壁13の下端に設けられ、概ね下方側にミストを吐出するように吐出孔群が形成されている。また、ミスト供給ノズル5、6、7の表面は撥水処理が施されており、ミストの供給中にミスト同士がぶつかり水玉になって当該表面に溜まらない様にしてある。
【0019】
図2は中段のミスト供給ノズル6を示しており、60はミストの吐出孔である。上段、下段のミスト供給ノズル5、7についても吐出孔の位置が若干異なるだけで、構造については概ね同じである。各ミスト供給ノズル5、6,7は供給路51、61、71を介して液体供給源例えば純水供給源52に接続され、各供給路51、61、71には、供給制御機器群53が介設されている。供給制御機器群53においてはポンプ、流量調整部、バルブが上流側からこの順に設けられ、各供給路51、61、71における純水の供給、停止、及び供給量を独立して制御できるように構成されている。
なお、図1では供給路51、61、71はカップ体10の内壁を貫通してその外へ引き出される構成としているが、ミスト供給ノズル5、6、7の供給ポートにチューブを接続し、そのチューブを既述の環状空間18を介してカップ体10の底面に引き回し、当該底面を貫通させて外部へ引き出すようにしてもよい。
【0020】
また、図1中100はコンピュータからなる制御部を示し、この制御部100はコンピュータプログラムに基づいて駆動部21、供給制御機器群53、レジスト液供給源32、溶剤供給源42等を制御するように構成されている。このコンピュータプログラムは、フレキシブルディスク、ハードディスク、MD、メモリーカード、コンパクトディスクなどの記憶媒体を介して制御部100にインストールされる。
【0021】
次に上述の実施形態の作用について説明する。図3はウエハの回転数及び各ミスト供給ノズルのオン、オフのタイムチャートを示す図である。先ず基板であるウエハWをカップ体10に搬入する前に上段、中段のミスト供給ノズル5、6から水ミストを例えば2秒間吐出し、図4(a)に示すように前記環状凹部15の底面、ガイド部材11の傾斜面12及び垂直壁13、カップ体10の内面16、17に水の液膜54が形成される。次いで時刻tにて外部から図示しない搬送アームによりウエハWをカップ体10
の内部に搬入してスピンチャック20の昇降動作を介して当該スピンチャック20に吸着保持させる。その後時刻tにて溶剤供給ノズル40よりウエハWの中心部に溶剤を供給し、時刻tにて中段ミスト供給ノズル6及び下段ミスト供給ノズル7から水ミストの吐出を開始する。
【0022】
そして、時刻tにてスピンチャック20を回転させ、その回転数を2500rpmまで上げて時刻tにてレジスト供給ノズル30によりウエハWの中心部に塗布液であるレジスト液を吐出する。ウエハWの表面は予め溶剤が回転により広がっているためレジスト液の濡れ性が良好になっており、この状態で回転しているウエハWの遠心力によりレジスト液が広げられてレジスト液の液膜がウエハWの全面に形成される。
【0023】
一方ウエハからは溶剤がミストとなってその外方に飛散し、続いてレジスト液がミストとなってその外方に飛散する。このとき、ウエハWの回転によること及び排気管23内の吸引によりカップ体10の開口部から環状空間18を介して排気流Gが形成される。排気流GはウエハWの回転により図6に示すように螺旋状に流れていく。また、カップ体10の上部の環状凹部15内にも連通路15aを介して吸引されるのでわずかに気流が形成されるが、排気流Gはほとんど環状空間18に形成されることになる。
【0024】
溶剤ミストとレジストミストとの捕捉作用は同じであるため、説明の簡略化のためにレジストミストの捕捉について述べる。ウエハWにレジスト液を吐出した直後は、ウエハWから大きなレジストミストが飛散する。それらの大部分はウエハWの真横に位置する環状凹部15の底面に沿って飛散するが、ここには既述のように水膜54が形成されているのでレジストミストがこの水膜54に吸収(吸着)される。その後はウエハ上のレジスト液が少なくなるので、レジストミストが細粒化し、ウエハWの裏面周縁部から下方に伸びる環状空間18内を流れていくが、図4(b)に示すようにこの空間18を取り囲む壁面には、水膜54が形成されているのでレジストミストの一部が吸着される。なお図4は、便宜上、廃液路22と排気管23とを近づけて描いている。また、ミスト供給ノズル6、7からは捕捉用の水ミストMが夫々環状空間18及び垂直壁13の下方側に吐出されているので図5(a)〜(c)に示すように壁面に付着されなかったレジストミストRに水ミストMが付着し、レジストミストRが増大する。このためミストの質量が大きくなり、慣性力が大きくなってカップ体10の底面に衝突し、廃液路22に流れ込む。環状空間18は排気流Gによって気流が乱れているので、前記捕捉用の水ミストMの運動量は増加している、これにより捕捉用の水ミストMがレジストミストRに付着する確率が上がることになる。図5はレジストミストR及び捕捉用の水ミストMの群の一部の移動についてのみ記載している。なお図6には排気流Gの形成と水のミストMの供給とを模式的に描いている。
【0025】
一方環状空間18を通ってきた排気流Gは垂直壁13より上に向けられ、その後排気管23内に吸引されるが、既述のようにレジストミストRが液膜54への吸着や水ミストMによる捕捉によりほとんど気流から分離されているので、この排気流中にはレジストミストRはほとんど含まれない。ここでプロセスのシーケンスに戻ると、レジスト液をウエハW上に吐出して数秒後にウエハWの回転数を1500rpmに落し、振り切り乾燥ステップを行う。そして時刻tにおいて水ミストの吐出を停止し、ウエハWは乾燥ステップを終えた後、カップ体10から搬出され一連の工程を終了する。
【0026】
以上説明した本発明の実施形態によれば、レジスト液がウエハWの回転による遠心力により飛散する前にミスト供給ノズル5,6から水のミストをカップ体10の内部に供給することによりカップ体10の内部表面に液膜54を形成しているので、スピンコーティング時にウエハWから飛散するレジスト液あるいはレジストミストがこの液膜54に吸着される。
【0027】
そして、ウエハWの回転による遠心力によりレジストミストが飛散しているときにミスト供給ノズル6,7により捕捉用の水ミストをカップ内部に供給し、次にこの水のミストが当該レジストミストを捕捉する。これによって、レジストミストは質量が増加してカップ底部の廃液路22へ落下するととも排気流Gはレジストミストの含有率が低い状態で排気管23へ流れていくため気液分離の効率が上がることとなる。この結果、排気側へのレジストミストの回り込みを抑制することができ、カップ体10、排気管23、ダンパー等への汚れとしてのレジストの付着を低減できる、このためレジスト塗布装置のメンテナンス頻度を少なくすることに寄与できる。さらに、排気管23から外部へ排気される気体は当該気体の量に対するレジストミストの混入比率が低下していることにより、従来のレジスト塗布装置に比べレジストミストが排気管23より外部へ出ることは少なくなり環境への悪影響を抑えることができる。なお、カップ体10内に予め水の液膜を形成するための手段(カップ内前処理用の液供給部)はミスト供給部と兼用しない場合も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
次に本実施形態の各疎水化処理装置が組み込まれた一例であるレジストパターン形成装置8について簡単に説明する。図7は、本実施形態のレジストパターン形成装置8の概略を示す平面図であり、図8は、レジストパターン形成装置8の概略を示す側方断面図である。図7に示すように、本実施形態のレジストパターン形成装置8は、キャリアブロック8a、処理ブロック8b、インターフェイスブロック8c、露光装置8dを備えており、それぞれのブロックが接続されている。キャリアブロック8aは、載置部80上に載置された密閉型のキャリア81から第1受け渡しアーム82がウェハWを取り出して、当該ブロックに隣接配置された処理ブロック8bに受け渡すと共に、第1受け渡しアーム82によって処理ブロックにて処理された処理済みのウェハWを受け取りキャリア81に戻すように構成されている。
【0029】
処理ブロック8bには、現像処理を行うための第1ブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2ブロック(BCT層)B2、レジスト液の塗布処理を行うための第3ブロック(COT層)B3、レジスト膜の上層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第4ブロック(TCT層)B4が設けられており、この処理ブロック8bは下部から順に各ブロックを積層することによって構成されている。また各ブロックには、加熱部や冷却部等を積層することによって構成された処理ユニット群83が設けられており、第3ブロックB3の処理ユニット群83に本実施形態の各疎水化処理装置が組み込まれている。
【0030】
また処理ブロック8bには、キャリアブロック8a側に第1棚ユニット84が設けられ、インターフェイスブロック8c側に第2棚ユニット85が設けられており、第1棚ユニット84の各部間でウェハWを搬送するために、この第1棚ユニット84の近傍には、昇降自在な第2受け渡しアーム86が設けられている。この第1棚ユニット84、第2棚ユニット85には複数の受け渡しユニットが設けられており、この受け渡しユニットのうち、図8にて図番としてCPLが付されている受け渡しユニットには温度調節用の冷却ユニットが備えられており、BFが付されている受け渡しユニットには複数枚のウェハWを載置可能となるようにバッファユニットが備えられている。インターフェイスブロック8cは、インターフェイスアーム87を備えており、このインターフェイスアーム87によって第2棚ユニットと露光装置8dとの間でウェハWの受け渡しを行う。露光装置8dは、インターフェイスアーム8dから搬送されたウェハWに対して所定の露光処理を行う。
【0031】
第1ブロックB1は、現像ユニット88が例えば2段に積層されており、この2段の現像ユニット88にウェハWを搬送するための搬送アーム89aが設けられている。第2ブロックB2と第4ブロックB4は、各々反射防止膜を形成するための薬液をスピンコーティングにより塗布する塗布ユニットと、この塗布ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための加熱、冷却系の処理ユニット群と、塗布ユニットと処理ユニット群との間に設けられ、これらの間でウェハWの受け渡しを行う搬送アーム89b、89dとを備えている。第3ブロックB3においては、薬液をレジスト液に変更し、本実施形態の疎水化処理装置が組み込まれている点以外は、第2、4ブロックB2、B4と同様の構成である。
【0032】
このレジストパターン形成装置8では、ウェハWにレジストパターンを形成する場合、まずキャリアブロック8aからウェハWを第1棚ユニット84の受け渡しユニット、例えば第2ブロックB2に対応する受け渡しユニットCPL2に第1受け渡しアーム82によって順次搬送し、このウェハWを受け渡しユニットCPL3及び搬送アーム89cを介して第3ブロックB3に搬入し、疎水化処理装置でウェハWの表面を疎水化した後、レジスト膜を形成する。その後ウェハWは、搬送アーム89cにより第1棚ユニット84の受け渡しユニットBF3へと受け渡される。受け渡しユニットBF3に受け渡されたウェハWは、第2受け渡しアーム86により受け渡しユニットCPL4へと受け渡され、搬送アーム89dによって第4ブロックB4へと搬送される。そして、第4ブロックB4にて、ウェハWのレジスト膜の上に反射防止膜を形成して、受け渡しユニットTR4に受け渡される。尚このレジストパターン形成装置8では、求められる仕様等に応じてレジスト膜の上に反射防止膜を形成しない場合や、ウェハWに対して疎水化処理を行う代わりに、第2ブロックB2にてウェハWに直接反射防止膜が形成される場合もある。
【0033】
また第1ブロックB1内の上部には、第1棚ユニット84の受け渡しユニットCPL11から第2棚ユニット85の受け渡しユニットCPL12にウェハWを直接搬送するための専用の搬送手段であるシャトルアーム90が設けられている。レジスト膜や反射防止膜が形成されたウェハWは、第2受け渡しアーム86により、受け渡しユニットBF2、BF3、及びTRS4からCPL11へと受け渡され、シャトルアーム90によって受け渡しユニットCPL12に搬送される。
【0034】
シャトルアーム90を介して受け渡しユニットCPL12に受け渡されたウェハWは、インターフェイスブロック8cのインターフェイスアーム87によってインターフェイスブロック8cへと取り込まれ、露光装置8dへと搬送される。そして露光装置8dによってウェハWに所定の露光処理が行われた後、インターフェイスアーム87によってウェハWは第2棚ユニット85の受け渡しユニットTRS6へと受け渡される。そして搬送アーム89aにて第1ブロックB1に搬送され現像処理が行われた後、搬送アーム89aにより第1棚ユニットの内、第1受け渡しアーム82のアクセス可能範囲の受け渡しユニットに受け渡され、第1受け渡しアーム82によってキャリア81へと搬送される。これにより本実施形態のレジストパターン形成装置8では、ウェハWにレジストパターンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るミスト供給ノズルの構造を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態において、ウエハの回転数及び各ミスト供給ノズルのオン、オフのタイムチャートの一例を示す説明図である。
【図4】塗布装置の内部に設けられたミスト供給ノズル及び気液分離部を模式的に示す説明図である。
【図5】飛散したレジストミストが捕捉用のミストに捕捉される様子を模式的に示す説明図である。
【図6】カップ内部において、排気流の流れとミストの供給されている様子を模式的に示す説明図である。
【図7】レジストパターン形成装置の概略を示す平面図である。
【図8】レジストパターン形成装置の概略を示す側方断面図である。
【符号の説明】
【0036】
W ウエハ
5 上段のミスト供給ノズル
6 中段のミスト供給ノズル
7 下段のミスト供給ノズル
10 カップ体
20 スピンチャック
21 駆動部
30 レジストノズル
32 レジスト液供給源
40 溶剤ノズル
42 溶剤供給源
52 液体供給源
53 供給制御機器群
60 ミスト吐出孔
R レジストミスト
M 水ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板に塗布液を供給する塗布ノズルと、
前記基板保持部を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に保持された基板を囲むように設けられ、底部に排気路が設けられたカップと、
基板の中心部に前記塗布ノズルから吐出された塗布液が基板の回転による遠心力により飛散する前に、カップ内部表面に液を供給して当該表面を濡らすためのカップ内前処理用の液供給部と、
前記塗布液が前記基板の回転による遠心力により飛散しているときに、飛散した塗布液のミストを捕捉するための捕捉用のミストをカップの内部に供給するためのミスト供給部と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記捕捉用のミストの供給開始のタイミングは、塗布液が基板から飛散する前であることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ミスト供給部は、前記カップ内前処理用の液供給部を兼用することを特徴とする請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記ミスト供給部は、前記カップの内部にカップの周方向に沿って形成されたミスト吐出孔を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記ミスト供給部は、カップの周方向に沿って環状に形成された環状流路にミスト吐出孔が形成されて構成されている請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
基板を基板保持部に水平に保持する工程と、
次いで基板の中心部に塗布液を供給すると共に基板保持部を鉛直軸周りに回転させて基板の表面に塗布液を塗布する工程と、
塗布液が基板の回転による遠心力により飛散する前に、カップ内部表面に液を供給して当該表面を濡らす工程と、
前記塗布液が基板の回転による遠心力により飛散しているときに、捕捉用のミストを前記基板を囲むカップの内部に供給して、飛散した塗布液のミストを捕捉する工程と、を含むことを特徴とする塗布方法。
【請求項7】
前記塗布液のミストを捕捉するためのミストの供給開始のタイミングは、塗布液が基板から飛散する前であることを特徴とする請求項6記載の塗布方法。
【請求項8】
前記ミスト供給部は、前記カップの内部にカップの周方向に沿って形成されたミスト吐出孔を備えていることを特徴とする請求項6または7に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記ミスト供給部は、カップの周方向に沿って環状に形成された環状流路にミスト吐出孔が形成されて構成されていることを特徴とする請求項8記載の塗布方法。
【請求項10】
回転する基板に塗布液を供給して塗布する塗布装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項6ないし9のいずれか一つに記載の塗布方法を実施するためのステップ群が組み込まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−214052(P2009−214052A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61713(P2008−61713)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】