説明

塗装性改良剤

【課題】 従来、ポリプロピレン樹脂の塗装性(塗膜の密着性等)を改良するために、ポリオレフィン樹脂に極性官能基がグラフトされた変性ポリオレフィンを多量に練り込む方法が知られていたが、衝撃強度等の機械物性が大幅に低下するなど問題があり、少量の添加で樹脂物性を低下させることなく樹脂の塗装性を改良する塗装性改良剤は知られていなかった。
【解決手段】 数平均分子量1,500〜100,000のポリオレフィンからなる疎水基と、アミノ基を少なくとも1個含む親水基を有し、かつアミノ基1個当たりの数平均分子量が400〜50,000である変性ポリオレフィンからなる塗装性改良剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装性改良剤に関する。さらに詳しくは、ポリオレフィン等の樹脂への塗膜の密着性を向上させる塗装性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、主に射出成形用材料として、自動車の内外装部品、家電製品の部品に代表される工業部品分野で、幅広く使用されている。しかし、ポリプロピレンは無極性であるため、通常塗装性(ここにおいて塗装性には印刷性も含まれるものとする。以下同じ。)に劣り、塗膜(ここにおいて塗膜には印刷膜も含まれるものとする。以下同じ。)との密着性が悪い。このため、ポリプロピレンの表面にプライマーを塗布して、塗膜を密着させる工夫がなされている。しかしながら、プライマーは高価であることや、塗装工程数が多くなることから、塗装コストが高くなるという欠点がある。このため、ポリプロピレンに塗膜密着性を付与することにより、プライマー塗布工程を省略して、塗装コストを低減する試みがなされている。例えば、ポリオレフィンに極性官能基がグラフトされた変性ポリオレフィンを塗装性改良剤としてポリプロピレンに練り込み、プライマーを塗布することなく、塗膜を密着させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリプロピレンの染色性または耐衝撃性の改良を目的として、無水マレイン酸変性ポリプロピレンにジアミン化合物を反応させたものをポリプロピレンに加える方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−048885号公報
【特許文献2】特表平11−501069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの方法では、極性官能基の濃度が低く塗膜を密着させるために多量の変性ポリオレフィンを添加しなければならず、これに伴い衝撃強度等の機械物性が大幅に低下してしまう、また、ポリプロピレンベース樹脂のマトリックス内において、該極性官能基が架橋して塊状となり、充分な塗装性改良効果が得られない等の欠点を持っていた。
本発明の目的は、少量の添加で、樹脂の機械物性を低下させることなく樹脂の塗装性(塗膜密着性等、以下同じ。)を向上させる塗装性改良剤、該塗装性改良剤をポリオレフィン樹脂に含有させてなるポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、数平均分子量1,500〜100,000のポリオレフィン(a)からなる疎水基と、アミノ基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりの数平均分子量が400〜50,000である変性ポリオレフィンからなる塗装性改良剤(A);該(A)をポリオレフィン樹脂(B)に含有させてなるポリオレフィン樹脂組成物;並びに、該組成物を成形してなる成形品である。
【0005】
[ポリオレフィン(a)]
本発明におけるポリオレフィン(a)には、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体、およびオレフィンの1種以上と他の単量体の1種以上との共重合体が含まれる。以下において、%および比は、とくに規定しない限り、それぞれ重量%および重量比を表す。
上記オレフィンには、炭素数(以下、Cと略記)2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜4)のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−、2−およびイソブテン、並びにC5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1,1−デセン、1−ドデセン等);他の単量体には、オレフィンと共重合性の不飽和単量体、例えばスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸およびそのアルキル(C1〜30)エステルが含まれる。
【0006】
(a)の具体例には、エチレン系重合体、例えば高密度、中密度および低密度ポリエチレン、エチレンとC4〜30の不飽和単量体[ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸等]との共重合体[共重合比(重量比)30/70〜99/1、好ましくは50/50〜95/5]等;プロピレン系重合体、例えばポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(同上)との共重合体[共重合比(重量比)、同上];エチレン/プロピレン共重合体[共重合比(重量比)0.5/99.5〜30/70、好ましくは2/98〜20/80];C4以上のオレフィンの重合体、例えばポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1が含まれる。
これらのうち、後述のポリオレフィン樹脂への分散性の観点から好ましいのはポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/不飽和単量体(C4〜20)共重合体、およびとくに好ましくはポリプロピレンである。
【0007】
(a)の数平均分子量[以下、Mnと略記。高温GPC{(株)Waters製、カラム:PLgel MIX ED−B、ポリマーラボラトリーズ(株)製}を用いてGPC法により測定した値である。]は、下限が1,500、好ましくは2,000、さらに好ましくは2,500、上限が100,000、好ましくは50,000、さらに好ましくは15,000である。Mnが1,500未満では、後述する成形品の機械強度が悪化し、Mnが100,000を超えると、成形品への塗膜の密着性が悪化する。
【0008】
(a)の分子末端および/または分子内の炭素1,000個当たりの二重結合量は、(a)の変性のしやすさの観点から、好ましい下限は0.2個、さらに好ましくは0.3個、特に好ましくは0.5個、工業上の観点から好ましい上限は10個、さらに好ましくは6個、とくに好ましくは5個である。
【0009】
(a)には、重合法によるポリオレフィン、および減成されたポリオレフィン[高分子量ポリオレフィン(好ましくはMn50,000〜300,000)を機械的、熱的および化学的に減成してなるもの]が含まれる。塗装性の観点から好ましいのは減成されたポリオレフィン、さらに好ましいのは熱減成されたポリオレフィンである。熱減成されたポリオレフィンは特に限定されないが、高分子量ポリオレフィンを不活性ガス中で加熱する(通常300〜450℃で0.5〜10時間)ことにより熱減成されたもの(例えば特開平3−62804号公報記載のもの)が挙げられる。
【0010】
(a)は、本発明の塗装性改良剤(A)の疎水基を構成するに当たり、通常予めカルボキシ変性され、該カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)の残基[(ax)からカルボキシル基を除いた部分]が疎水基を構成する。該(ax)には、(a)を、後述するα,β−不飽和カルボン酸(無水物)(m1)等でカルボキシ変性してなるポリオレフィン(ax1)、および(ax1)をさらにカルボキシ変性剤(m2)で変性(2次変性)してなるポリオレフィン(ax2)、並びにこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0011】
(ax1)には、(i):(a)を(m1)と反応させて変性したもの、および(ii):(a)を酸化剤(例えば酸素および/またはオゾン)で酸化してカルボキシル基を導入したものが含まれる。
α,β−不飽和カルボン酸(無水物)(m1)には、不飽和モノ−およびジカルボン酸、並びにそれらの無水物が含まれる。
不飽和モノカルボン酸には、C3〜18(好ましくは3〜15とくに3〜10)の脂肪族、脂環式および芳香環含有のモノカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、(イソ)クロトン酸、シクロヘキセンモノカルボン酸、ケイ皮酸等が含まれる。
ジカルボン酸(無水物)には、脂肪族のもの(C4〜18、好ましくはC4〜15とくに好ましくはC4〜12)、例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、メサコン酸、アリルマロン酸等;脂環式のもの(C7〜24、好ましくはC8〜16)、例えば4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等;芳香環含有のもの(C8〜24、好ましくはC8〜16)、例えばフェニルマレイン酸等が含まれる。(a)との相溶性および反応性の観点から、好ましいのは不飽和ジカルボン酸(とくに脂肪族ジカルボン酸)の無水物、とくに無水マレイン酸(以下、MAと略記)である。
変性に用いる(m1)の量は、(a)の重量に基づいて通常0.5〜40%、後述する塗装性および(a)との反応性の観点から好ましくは1〜30%である。
【0012】
変性の方法および条件は特に限定されるものではないが、(a)に含まれる二重結合に溶融法または溶液法で(m1)を熱的に付加させることができる。例えば(1)溶融状態の(a)に(m1)を混合した後、必要により有機過酸化物の存在下に、加熱する方法、(2)(a)、(m1)および溶剤を混合した後、必要により有機過酸化物の存在下に加熱する方法、および(3)(a)と(m1)を二軸押出機で加熱混練中に有機過酸化物を添加する方法が挙げられる。
【0013】
上記(1)〜(3)の方法で用いる有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられ、その使用量は、(a)と(m1)の合計重量に基づいて通常0.1〜10%、(m1)の付加効率の観点から好ましくは0.5〜5%である。
反応温度は、広範囲(例えば80〜260℃)に変えることができ、方法に応じ適宜採択され、方法(1)では通常100〜220℃、好ましくは140〜200℃、方法(2)では通常80〜180℃、好ましくは110〜150℃、方法(3)では通常80〜260℃、好ましくは120〜240℃、さらに好ましくは140〜220℃である。方法(2)の溶剤としては例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
これらの方法のうち、副生物が少なく均一な反応が可能であるとの観点から好ましいのは方法(2)である。酸化によるカルボキシル基の導入は、例えば米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。
【0014】
(ax2)の製造に用いるカルボキシ変性剤(m2)には、(m20)後述の(m21)の前駆体[(m21)を形成しうる化合物、以下同様]たるラクタムおよびラクトン、(m21)アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸、(m22)カルボキシ反応性のカップリング剤とポリカルボン酸類(酸もしくはそのエステル形成性誘導体を指す。以下同様)との組合せ、並びにこれらの2種以上の組合せが含まれる。(ax1)の2次変性は、(m20)の開環付加(重合)、(m21)の(重)縮合、または(m22)のカップリング反応によって行うことができる。
【0015】
(m21)のアミノカルボン酸には、C2〜12のもの、例えばアミノ酸[グリシン、アラニン、バリン、(イソ)ロイシン、フェニルアラニン等]、ω−アミノアルカン酸(例えばω−アミノカプロン、ω−アミノエナント、ω−アミノカプリル、ω−アミノペルゴン、ω−アミノカプリン、11−アミノウンデカン、12−アミノドデカン酸等)、芳香族アミノカルボン酸(例えばo−、m−およびp−アミノ安息香酸等)等が挙げられ;
(m20)のラクタムには、C4〜15(好ましくは6〜12)のもの、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタム等;ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には、上記ラクタムおよびアミノカルボン酸に相当する(NHがOに置換った)もの(例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ω−ヒドロキシカプロン酸、サリチル酸、p−およびm−ヒドロキシ安息香酸等)、グリコール酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、ベンジル酸等が含まれる。好ましいのはカプロラクタムおよび12−アミノドデカン酸である。
(m20)または(m21)の量は、(ax1)の不飽和ジカルボン酸(無水物)基またはカルボキシル基1個当たり1〜10モルまたはそれ以上、好ましくは1〜2モルである。
【0016】
(m22)のカルボキシ反応性のカップリング剤には、ポリカルボン酸類のカルボキシル基と反応性の基を2個またはそれ以上有する化合物、例えばポリオール、有機ポリイソシアネート(以下PIと略記)、ポリアミン(以下PAと略記)、ポリエポキシドおよびエポキシアルコールが含まれる。これらのポリカルボン酸類、ポリオール、PI、PAおよびポリエポキシドには後述のもの、エポキシアルコールにはグリシドール等が含まれる。
【0017】
(ax2)は、(ax1)のカルボキシル基(カルボン酸基またはカルボン酸無水物基、以下同様)の少なくとも一部が、例えば下記一般式で示されるカルボキシ含有基に変換された構造を有する。
−E−(G−L−E)−G−L−E−OH
(−E−)G−L[−G−(E−L−E−G−L−G)−E−L−E−OH]
(−E−)G−L[−G−E−(L−G−E)−L−(E−G−L)−E−OH]
【0018】
式中、Eは−CO−(カルボニル基);nは0または1以上(好ましくは1〜9またはそれ以上)の整数;Lは、アミノカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸の残基(アミノ基もしくはヒドロキシル基とカルボキシル基が除かれた)、またはラクタムもしくはラクトンの残基(アミドもしくはエステル結合が除かれた);Lはポリカルボン酸の残基(2個のカルボキシル基が除かれた);Lはジアミンもしくはジオールの残基(アミノ基もしくはヒドロキシル基が除かれた);fは0または1以上の整数;Lは、(1+f)価のPA、ポリオールもしくはPIの残基(アミノ基、ヒドロキシル基もしくはイソシアネート基が除かれた)、又はエポキシ開環基(エポキシドの開環により形成される基);pは1または2;Gは、−O−(Lがヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの残基、Lがジオールの残基、Lがポリオールの残基もしくはエポキシ開環基のとき)または−NH−(Lがアミノカルボン酸もしくはラクタムの残基、Lがジアミンの残基、LがPAもしくはPIの残基のとき)[LがPAの残基でpが2のときは(−E−)pに結合したGは>N−][すなわち(−E−)G−は、エステル結合、アミド結合またはイミド結合]を表す。上記および以下において、複数個存在する場合の各記号は同一でも異なっていてもよい。
エポキシ開環基には、−CH−CH(OH)−CH−、およびポリエポキシ開環基、例えば式−CR−CR−J−(CR−CR−)で示される基が含まれる[式中、Jはポリエポキシドの残基(エポキシ基が除かれた);RおよびRの、一方(例えばR)はOHであり、他方(例えばR)はHであるか、またはそれら(例えば2個のR)が互いに若しくはJと結合して環を形成していてもよい(Jが脂環式ポリエポキシドの残基の場合)]。
カルボキシ変性ポリオレフィン(ax)のうちで好ましいのは(ax1)、とくに不飽和ジカルボン酸(無水物)で変性されたものである。
【0019】
(ax)のカルボキシ変性度は特に限定されるものではないが、塗装性および工業上の観点から、(ax)の酸価は好ましくは2〜100(mgKOH/g、以下同様)、さらに好ましくは8〜90とくに好ましくは15〜70である。
【0020】
(m22)の上記ポリオールには、2価〜8価またはそれ以上の、高分子ポリオール(250以上のOH当量を有する)、低分子ポリオール(250未満のOH当量を有する)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。上記OH当量とは、OH価に基づく、OH1個当りの分子量を意味する。低分子ポリオールには、多価アルコール、低分子OH末端ポリマー[ポリエーテルポリオール(以下、PTポリオールと略記)、ポリエステルポリオール(以下、PSポリオールと略記)等]等が含まれる。
【0021】
多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下、それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]、C6〜10の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]等;
【0022】
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール(以下、それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えば蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、グルコシド(メチルグルコシド等)等]、含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオール):例えば含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および芳香族1級モノアミン[メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、(イソ)アミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、1−,2−および3−アミノヘプタン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等]のビスヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等、例えば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート等)による4級化物]、例えば上記米国特許明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;3価〜8価またはそれ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環PA[後述のもの、例えばエチレンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペラジン等]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ポリ(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等:例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンおよびペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン]、およびこれらの上記と同様の4級化物。
【0023】
低分子OH末端ポリマーには、後述のような、PTポリオール、PSポリオールおよびポリウレタン(以下PUと略記)ポリオール[PIと過剰(イソシアネート基1個当り1モル)の多価アルコールとの反応生成物]で250未満のOH当量を有するものが含まれる。例えば低重合度のアルキレンオキシド(以下、AOと略記)開環重合物および活性水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えば後述のポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールAのEO2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合PSポリオールおよびポリオールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のPUポリオール(例えばTDI1モルとEG2モルとの反応生成物)が挙げられる。
【0024】
高分子ポリオールは、通常250〜3,000またはそれ以上のOH当量を有する。該ポリオールは、通常500〜5,000またはそれ以上、好ましくは700〜4,500のMnを有し;好ましくは500〜6,000、とくに好ましくは700〜4,000の重量平均分子量(測定はGPC法による。以下、Mwと略記)を有する。その例には、OH末端のポリマー[PT、PS、ポリアミド(以下PDと略記)、PU、ビニル系ポリマー(以下VPと略記)、ポリマーポリオール(以下P/Pと略記)等]、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
OH末端のPTには、AOの開環重合物、少なくとも2個(2個〜8個またはそれ以上)の活性水素原子を有する開始剤[前記の多価アルコール、ヒドロキシルアミン、アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸;多価フェノール;並びにポリカルボン酸(後述)等]に1種または2種以上のAOを付加させた構造を有するPTポリオール(AO付加物)、およびそれら(同一または異なる)の2分子またはそれ以上をカップリング剤(ポリハライド、エピハロヒドリン、ポリエポキシド等)でカップリングさせてなるPTポリオールが含まれる。
上記AOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくは2〜4)のAO、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO、PO、BO、THFおよびMTHFと略記)、1,3−プロピレンオキシド、イソBO、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加および/またはブロック付加)が含まれる。
【0025】
OH末端のPTの例には、PTジオール、例えばポリアルキレングリコール(以下PAGと略記)[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下それぞれPEG、PPGおよびPTMGと略記)、ポリ−3−メチルテトラメチレンエーテルグリコール]、共重合ポリオキシアルキレンジオール〔EO/PO共重合ジオール、THF/EO共重合ジオール、THF/MTHF共重合ジオール等(重量比例えば1/9〜9/1)〕、芳香環含有ポリオキシアルキレンジオール[ポリオキシアルキレンビスフェノールA(ビスフェノールAのEOおよび/またはPO付加物等)];および3官能以上のPTポリオール、例えばポリオキシプロピレントリオール(GRのPO付加物等);並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが含まれる。
【0026】
OH末端のPSには、縮合PSポリオール、ポリラクトン(以下PLと略記)ポリオール、ヒマシ油系ポリオール[ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)およびそのポリオール変性物]、ポリカーボネートポリオール等が含まれる。
縮合PSポリオールは、ポリオールとポリカルボン酸類(および必要によりヒドロキシカルボン酸)との重縮合またはポリオールとポリカルボン酸無水物およびAOとの反応により、PLポリオールはポリオールを開始剤とするラクトンの開環付加(またはポリオールとヒドロキシカルボン酸との重縮合)により、ヒマシ油系ポリオール変性物はヒマシ油とポリオールとのエステル交換反応により、そしてポリカーボネートポリオールは、(1)ポリオールを開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合、(2)ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)、または(3)ポリオールもしくは2価フェノール(ビスフェノールA等)のホスゲン化により、製造することができる。
PSの製造に用いるポリオールは、通常1,000以下、好ましくは30〜500のOH当量を有する。その例には、上記の多価アルコール[ジオール(例えばEG、1,4−BD、NPG、HDおよびDEG)、3価以上のポリオール(GR、TMP、PE等)]、上記PTポリオール(PEG、PPG、PTMG等)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジオール、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価以上のポリオールとの併用である。
【0027】
ポリカルボン酸類には、ジカルボン酸および3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸が含まれる。それらの例には、C2〜30またはそれ以上(好ましくはC2〜12)の飽和および不飽和の脂肪族ポリカルボン酸、例えばC2〜15ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、C6〜20トリカルボン酸(例えばトリカルバリル酸、ヘキサントリカルボン酸等)];C8〜15の芳香族ポリカルボン酸、例えばジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等)、トリ−およびテトラ−カルボン酸(例えばトリメリット酸、ピロメリット酸等);C6〜40の脂環式ポリカルボン酸(ダイマー酸等);スルホ基含有ポリカルボン酸〔上記ポリカルボン酸にスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホコハク酸、スルホマロン酸、スルホグルタル酸、スルホアジピン酸、スルホイソフタル酸、およびそれらの塩[金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)及びIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩及び4級アンモニウム塩等]〕;並びにカルボキシ末端のポリマーが含まれる。
【0028】
カルボキシ末端のポリマーには、PTポリカルボン酸、例えばポリオール[上記の多価アルコール、PTポリオール等]のカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られる);PD、PSおよび/またはPUポリカルボン酸、例えば上記ポリカルボン酸を開始剤としてラクタムもしくはラクトン(前記)を開環重合させてなるポリラクタムポリカルボン酸およびPLポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸類の2分子またはそれ以上をポリオール(上記)またはPAもしくはPI(後述)でカップリング(エステル化またはアミド化)させてなる縮合PSポリカルボン酸および縮合PDポリカルボン酸、上記のポリカルボン酸類およびポリオールとPIを反応(ウレタン化およびエステル化もしくはアミド化)させてなるPUポリカルボン酸が含まれる。
【0029】
ポリカルボン酸類のエステル形成性誘導体には、酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステル、酸ハライド、例えばコハク酸、マレイン酸、イタコン酸およびフタル酸の無水物、テレフタル酸ジメチル、マロニルジクロライド等が含まれる。
【0030】
縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジカルボン酸類、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸類との併用である。
ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には前掲のものが含まれる。
アルキレンカーボネートには、C2〜6のアルキレン基を有するもの、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が含まれる。
ジアルキルカーボネートには、C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネートが含まれる。
【0031】
OH末端のPSの具体例には、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリブチレン/ヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が含まれる。
OH末端のPDには、ポリカルボン酸類(上記)を、ヒドロキシルアミン(前記)またはポリオール(上記)およびPA(後述)と重縮合させてなる、ポリ(エステル)アミドポリオールが含まれる。
【0032】
OH末端のPUには、ポリオールをPIで変性してなるOH末端ウレタンプレポリマーが含まれる。ポリオールには、前掲の、多価アルコール、高分子ポリオール(上記OH末端のPTおよびPS、並びに後述のOH末端のVPおよびP/P)、並びにこれらの2種以上の併用が含まれる。好ましいのは高分子ポリオール(とくにOH末端のPSおよびとくにPT)およびこれと低分子ポリオール(とくに多価アルコール)との併用である。併用する低分子ポリオールの量は、用途および要求される性能に応じて適宜変えることができるが、一般に、高分子ポリオール1当量に対して、0.01〜0.5当量、さらに0.02〜0.4当量が好ましく、とくに0.1〜0.2当量が好ましい。
OH末端ウレタンプレポリマー製造に当り、ポリオールとPIとの当量比(OH/NCO比)は、通常1.1〜10、好ましくは1.4〜4、とくに好ましくは1.4〜2である。ポリオールとPIとは、1段で反応させても、多段で反応(例えばポリオールもしくはPIの一部を反応させたのち残部を反応)させてもよい。
【0033】
PIには、2〜6個またはそれ以上(好ましくは2〜3個、とくに好ましくは2個)のイソシアネート基を有する、下記のPI、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族PI:ジイソシアネート(以下DIと略記)、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等;3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等);
【0034】
C4〜15の脂環式PI:DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI;3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート;
C8〜15の芳香脂肪族PI:m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDI、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
【0035】
C6〜20の芳香族PI:DI、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI等;3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート);
【0036】
並びに、PIの変性体:これらのPIの変性体〔例えばカルボジイミド、ウレタン、ウレア、イソシアヌレート、ウレトイミン、アロファネート、ビウレット、オキサゾリドンおよび/またはウレトジオン基を有する変性体〕、例えばMDI、TDI、HDI、IPDI等のウレタン変性物(ポリオールと過剰のPIとを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー)、ビウレット変性物、イソシアヌレート変性物、トリヒドロカルビルホスフェート変性物、およびこれらの混合物。
【0037】
PIのうちで、耐光性の観点から好ましいのは、芳香族PI以外の脂肪族PI、脂環式PIおよび芳香脂肪族PI、とくに脂肪族PI、脂環式PIおよびこれらの併用である。
【0038】
OH末端のVPには、ポリブタジエン系ポリオール、例えばOH末端のブタジエンホモポリマーおよびコポリマー(スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー等)[1,2−ビニル構造を有するもの、1,4−トランス構造を有するもの、1,4−シス構造を有するもの、およびこれらの2種以上を有するもの(1,2−ビニル/1,4−トランス/1,4−シスのモル比が100〜0/100〜0/100〜0、好ましくは10〜30/50〜70/10〜30)、並びにこれらの水素添加物(水素添加率:例えば20〜100%);アクリルポリオール、例えばアクリル共重合体[アルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート、またはこれらと他のモノマー(スチレン、アクリル酸等)との共重合体]にヒドロキシル基を導入したもの[ヒドロキシル基の導入は主としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレートによる];部分鹸化エチレン/酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
【0039】
P/Pは、ポリオール(前述のOH末端のPTおよび/またはPS、またはこれと前述の多価アルコールとの混合物)中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させることにより得られる。エチレン性不飽和モノマーには、アクリル系モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、アルキル(C1〜20またはそれ以上)(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート等);炭化水素(以下HCと略記)系モノマー、例えば芳香族不飽和HC(スチレン等)、脂肪族不飽和HC(C2〜20またはそれ以上のアルケン、アルカジエン等、例えばα−オレフィン、ブタジエン等);並びにこれらの2種以上の併用[例えばアクリロニトリル/スチレンの併用(重量比100/0〜80/20)]が含まれる。
P/Pは、例えば5〜80%またはそれ以上、好ましくは30〜70%の重合体含量を有する。
(m22)のポリオールの高分子ポリオールのうちで好ましいのはPTポリオールおよびPSポリオールである。
【0040】
PAには、1級および/または2級PA、例えば前記PIに相当する(NCOがNHに置き換った)、脂肪族(C2〜18)、脂環式(C4〜15)、芳香脂肪族(C8〜15)および芳香族(C6〜20)のPA;ポリアルキレン(C2〜6)PA(重合度2〜10またはそれ以上)、例えばポリエチレンPA(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等)、および相当するポリプロピレンPA;重合脂肪酸PA[脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等)の重合体(ダイマー酸等)から誘導される(そのアミドもしくはニトリルを水素化してなる)PA];アミノ末端ポリマー(下記);これらのPAの部分アルキル(C1〜10)化および/またはヒドロキシアルキル(C2〜4)化物(N−アルキルジアミン、N,N’−ジアルキルジアミン、N−ヒドロキシアルキルジアミン、N,N’−ジヒドロキシアルキルジアミン等);並びに複素環PA、例えばピペラジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン等、並びにそれらのN−アミノアルキル−およびN,N’−ジアミノアルキル置換体(アミノエチルピペラジン等)が含まれる。
【0041】
アミノ末端ポリマーには、アミノ末端PT、例えば前記ポリオール(多価アルコール、PTポリオール等)のC3〜10(好ましくはC3)アミノアルキルエーテル[シアノアルキル化物(シアノエチル化物等)の水素化物];アミノ末端PD、例えばアミノ末端縮合PD[上記PAとポリカルボン酸類(前掲)との重縮合により得られる]、アミノ末端ポリラクタム[上記PAを開始剤としてラクタムもしくはアミノカルボン酸(前掲)との開環付加もしくは重縮合により得られる]が含まれる。
好ましいPAは、ジアミン(以下DAと略記)、とくに脂肪族DAである。さらに好ましいのは、C2〜12のもの[エチレンDA(以下EDAと略記)、ヘキサメチレンDA、ヘプタメチレンDA、オクタメチレンDAおよびデカメチレンDA]、とくにEDAである。
【0042】
ポリエポキシドには、下記のものが含まれる。
(1)脂肪族ポリエポキシド:脂肪族ポリオール[前記2価〜8価またはそれ以上の多価アルコールおよびPTポリオール]のポリグリシジルエーテル(グリシジルエーテルは以下GEと略記):ジGE[例えばEG、PG、1,4−BD、HD、MPD、DEG、NPG、PEG(Mn150〜200,000)およびPPG(Mn134〜200,000)のジGE]、トリGE[例えばGRおよびTMPのトリGE等]、および4価またはそれ以上のGE[例えばPEテトラGEおよびSOヘキサGE];脂肪族ポリカルボン酸(前記PS製造用に挙げた2価〜3価またはそれ以上の脂肪族ポリカルボン酸)のポリグリシジルエステル(グリシジルエステルは以下GSと略記)[例えばシュウ酸およびアジピン酸ジGS、トリカルバリルトリGS等]、グリシジル(メタ)アクリレート重合体およびグリシジル(メタ)アクリレートと他のモノマー〔例えば不飽和HC(脂肪族HC、脂環式HC、芳香族HC等)、アルキル(メタ)アクリレート[C1〜50のアルキル基を有するもの、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびエイコシル(メタ)アクリレート等]、カルボニル、エーテルおよび/またはイオウ含有不飽和モノマー[例えば不飽和エステル、不飽和エーテル、ビニルケトン、サルファイド結合含有モノマー、スルホン基含有モノマー等]等、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート〕との共重合体(Mnは好ましくは300〜10,000、とくに500〜5,000;共重合比〔グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマー〕は好ましくは2/98〜80/20、とくに5/95〜50/50);エポキシ化動植物油(例えばエポキシ化大豆油);
【0043】
(2)脂環式ポリエポキシド:C8〜20のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EGビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、および後述の芳香環含有ポリエポキシドの核水添化物;
(3)複素環含有ポリエポキシド:C5〜20、例えばトリスグリシジルメラミン等;
【0044】
(4)芳香環含有ポリエポキシド:多価フェノール(前記の2価〜3価またはそれ以上多価フェノール)もしくはそのAO付加物のポリGE:2価フェノールのジGE(ビスフェノールF、A、B、ADおよびSのジGE、カテコールジGE、レゾルシノールジGE、ハイドロキノンジGE、1,5−ジヒドロキシナフタリンジGE、ジヒドロキシビフェニルジGE、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応により得られるジGE等);3価フェノールのトリGE(ピロガロールトリGE等);および4価以上のポリフェノールのポリGE(フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂のGE、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒドもしくはホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリGE、レゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリGE等)等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、(ax1)との反応性の観点から好ましいのは、脂肪族ポリエポキシドおよび芳香環含有ポリエポキシド、とくにTMPトリGE、グリシジル(メタ)アクリレートの重合体[グリシジル(メタ)アクリレート10〜100%と他のモノマー[前記のアルキル(メタ)アクリレート、とくにドデシルメタアクリレート]0〜90%の(共)重合体、Mn500〜5,000]およびビスフェノールAジGEである。
また、上記ポリエポキシドのうちさらに好ましいのは、50〜500とくに60〜200のエポキシ当量を有するものである。
【0046】
[親水基]
本発明における、アミノ基(b)を少なくとも1個含む親水基は、分子中にカルボキシル基と反応しうる官能基(1級もしくは2級アミノ基、水酸基、不飽和基等)とアミノ基(b)を有する化合物(b01)から構成される。アミノ基(b)としては、1級、2級又は3級アミノ基が挙げられる。
【0047】
(b01)には、1級もしくは2級アミノ基と、別の1、2または3級アミノ基を有するもの[C2〜69、例えばエチレンジアミン、N−メチル−および−エチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N−メチル−、−エチル−および−ブチル−1,3−プロパンジアミン、p−フェニレンジアミン、N−メチル−および−エチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−、−ジエチル−および−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン];水酸基とアミノ基を有するもの[C4〜69、例えば2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、m−ジメチルアミノフェノール、N−メチルジエタノールアミン];不飽和基とアミノ基を有するもの[C2〜51、例えばビニルアミン、N−メチルおよび−エチルビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、アリルアミン、N−メチルおよび−エチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0048】
上記(b01)のうち、塗装性および(ax)と(b01)の反応性の観点から好ましいのは1級もしくは2級アミノ基と、別の1、2または3級アミノ基を有するもの、および、不飽和基とアミノ基を有するもの、さらに好ましいのは1級もしくは2級アミノ基と、別の1、2または3級アミノ基を有するもの、特に好ましいのは1級もしくは2級アミノ基と別の2級アミノ基を有するものである。
【0049】
本発明における上記親水基のうち、後述する成形品の機械強度および塗装性の観点から好ましいのは下記一般式(1)で示されるものである。
【0050】
【化1】

【0051】
[式中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれH、または水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;Xは水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基;Zはアミド基もしくはイミド基を構成するNを表す。]
【0052】
、Rにおける炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられる。
Xにおける炭素数1〜20の2価の炭化水素としては、アルキレン基、2価の芳香族基等が挙げられ、例えばエチレン基、プロピレン基、フェニレン基等が挙げられる。
式中、RおよびRが炭化水素基の場合は、成形品の機械強度および塗装性の観点から好ましくはC1〜15、さらに好ましくはC1〜4である。これらのR、Rの組み合わせのうち成形品の塗装性の観点から好ましいのはRがH、RがHまたはアルキル基、さらに好ましいのはRがH、Rがアルキル基の組み合わせである。
Xで表される2価の炭化水素基は、成形品の機械強度および塗装性の観点から好ましくはC1〜15、さらに好ましくはC1〜4である。これらの炭化水素基のうち成形品の機械強度の観点から好ましいのは置換基を有しない炭化水素基である。
また、Zで表されるアミド基もしくはイミド基を構成するNは、成形品の塗装性の観点から好ましいのはイミド基を構成するNである。
【0053】
[変性ポリオレフィン]
本発明における変性ポリオレフィンは、前記ポリオレフィン(a)からなる疎水基と、アミノ基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たり400〜50,000、好ましくは450〜20,000、さらに好ましくは550〜12,000、特に好ましくは650〜6,000のMnを有する。該Mnが400未満では成形品の機械強度が低下し、50,000を超えると塗装性が悪くなる。
なお、変性ポリオレフィンの、(b)1個当たりのMnは、変性ポリオレフィンのアミン価とKOHの式量から、〔(KOHの式量)×10/アミン価〕の式により求めることができる。
【0054】
該変性ポリオレフィンは、例えばカルボキシ変性ポリオレフィン(ax)と(b01)を反応させて製造することができる。
上記製造方法において、(ax)と(b01)との反応における官能基当量比[COOH/(1級又は2級アミノ基、水酸基および/または不飽和基)]は、成形品の塗装性および機械強度の観点から好ましくは1/0.2〜1/8、さらに好ましくは1/0.5〜1/4である。
【0055】
変性ポリオレフィンのアミン価は、通常1〜140、後述する成形品の塗装性および機械物性の観点から、好ましくは5〜120、さらに好ましくは10〜100、とくに好ましくは15〜80である。ここにおいて、アミン価は、試料1g中に含まれるアミンを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、試料をキシレンに溶解し、ブロムクレゾールグリーンを指示薬とし、塩化水素のメタノール溶液にて中和滴定して得られる値(単位:mgKOH/g、本明細書中では数値のみで示す)である。
【0056】
本発明の塗装性改良剤(A)は、該変性ポリオレフィンからなる。
【0057】
[ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の塗装性改良剤(A)をポリオレフィン樹脂(B)に含有させてなる。該樹脂組成物中の(A)の使用量は、(B)の重量に基づいて、塗装性および(B)の機械物性保持の観点から好ましくは0.01〜30%、さらに好ましくは0.1〜25%、とくに好ましくは1〜20%である。
【0058】
(B)としては、エチレン、プロピレンおよびC4〜12のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合させてなるポリオレフィン樹脂が挙げられる。C4〜12のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
(B)のMnは、成形品の機械強度の観点から好ましくは10,000〜1,000,000、さらに好ましくは50,000〜500,000である。
【0059】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(C)を含有させてもよい。
(C)としては、可塑剤(C1)、滑剤(C2)、密着性、分散性および/または相溶性付与剤(C3)、酸化防止剤(C4)、紫外線吸収剤(C5)、着色剤(C6)、充填剤(C7)、難燃剤(C8)および帯電防止剤(C9)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤等が挙げられる。
【0060】
可塑剤(C1)としては、下記のものが挙げられる。
(C11)モノカルボン酸エステル
脂肪族カルボン酸エステル[C10〜96、例えばステアリン酸ブチル(BS)、オレイン酸メトキシエチル(MEO)、アセチルリシノール酸メチル(MAR)、アセチルリシノール酸エチル(EAR)、アセチルリシノール酸メトキシエチル(MEAR)、グリセリントリヘプタン酸エステル等]、芳香(脂肪)族カルボン酸エステル[C7〜96、例えば安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、フェニル酢酸ブチル、フェニル酢酸ヘキシル等]、脂環式カルボン酸エステル[C5〜96、例えばシクロプロパンカルボン酸メチル、シクロプロパンカルボン酸ブチル、シクロブタンカルボン酸メトキシエチル、シクロペンタンカルボン酸エチル、シクロペンタンカルボン酸ブチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メトキシエチル、シクロヘキサンカルボン酸オクチル等];
【0061】
(C12)ジカルボン酸エステル
脂肪族ジカルボン酸エステル〔C10〜96、例えばアジピン酸エステル[例えばアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ(メチルシクロヘキシル)等]、アゼライン酸エステル[例えばアゼライン酸ジ−n−ヘキシル(DNHZ)、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)等]、セバシン酸エステル[例えばセバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)等]〕、芳香(脂肪)族ジカルボン酸エステル〔C10〜96、例えばフタル酸エステル[例えばフタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ヘプチルノニル(HNP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ−n−オクチル(DNOP)、フタル酸ジ−i−オクチル(DIOP)、フタル酸ジ−s−オクチル(DCapP)、フタル酸ジ(79アルキル)(D79P)、フタル酸−i−デシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)等]〕;
【0062】
(C13)トリカルボン酸エステル
脂肪族トリカルボン酸エステル〔C5〜96、例えばクエン酸エステル[例えばクエン酸トリエチル(TEC)、クエン酸トリブチル(TBC)、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリシクロヘキシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリ(オクチルデシル)等]〕、芳香(脂肪)族トリカルボン酸エステル[C10〜96、例えばベンゼントリカルボン酸エチル、ベンゼントリカルボン酸オクチル等];
(C14)エポキシ系
C10〜96、例えばエポキシ化大豆油(ESO)、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(E−PS)等;
【0063】
(C15)リン酸エステル
C3〜96、例えばリン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸ジフェニルモノクレジル、リン酸−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリプロピレングリコール、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリクロルエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリキシリル等;
(C16)含塩素系炭化水素
C10〜96、例えば塩素化パラフィン、塩素化芳香族炭化水素(例えば塩素化ナフタリン、塩素化ビフェニル等)等。
【0064】
これらのうち(A)および(C1)の機能発現の観点から好ましいのは(C11)〜(C13)、さらに好ましいのは脂肪族ジ−およびトリカルボン酸エステル並びに芳香族ジカルボン酸エステル、とくに好ましいのはアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、クエン酸エステルおよびフタル酸エステルである。
【0065】
滑剤(C2)としては、炭化水素[例えば流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス(Mn100〜10,000)等];高級脂肪酸[C8〜48、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エシル酸等];高級脂肪酸アミド[C8〜48、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアロアミド等];高級脂肪酸エステル[C8〜48、例えばステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、エチレングリコールモノオクチレート、エチレングリコールモノステアレートなど];高級アルコール[C8〜48、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等];金属石鹸〔C8〜48、例えば高級脂肪酸(上記のもの)の金属[例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウム等)、鉛、アルミニウム等]〕が挙げられる。これらのうち(A)との相溶性、(A)の機能発現および(C2)の滑剤としての機能発現の観点から好ましいのは高級脂肪酸、高級脂肪酸アミドおよび高級脂肪酸エステルである。
【0066】
密着性、分散性および/または相溶性付与剤(C3)としては、Mn1,000〜100,000のポリマー、例えばビニル樹脂{例えばポリオレフィン〔例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜99/1〜99]、プロピレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜99/1〜99]、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜98/1〜98/1〜98]、変性ポリオレフィン(上記本発明の変性ポリオレフィンを除く)[例えば酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)、酸化ポリプロピレン(上記酸化ポリエチレンにおいてポリエチレンをポリプロピレンに代えて同様に得られるもの)、エポキシ変性ポリエチレン(エポキシ当量100〜20,000)、エポキシ変性ポリプロピレン(エポキシ当量100〜20,000)、ヒドロキシル変性ポリエチレン(水酸基価0.1〜60)、ヒドロキシル変性ポリプロピレン(水酸基価0.1〜60)、ヒドロキシル変性エチレン/ブテン共重合体(水酸基価0.1〜60、共重合重量比1〜99/99〜1)、ヒドロキシル変性プロピレン/ブテン共重合体(水酸基価0.1〜60、共重合重量比1〜99/99〜1)等]〕、上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔例えばポリハロゲン化ビニル[例えばポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリヨウ化ビニル等]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[例えばポリ(メタ)アクリル酸−メチル、−エチル、−n−およびi−プロピルおよび−n−およびt−ブチル]、スチレン樹脂[例えばポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等]〕};
【0067】
ポリエステル樹脂〔例えばポリアルキレン(C2〜24)テレフタレート[例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等]、ポリアルキレン(C2〜24)イソフタレート[例えばポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート等]、ポリ−p−フェニレンエステル[例えばポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペート、ポリ−p−フェニレンテレフタレート等]〕;ポリアミド樹脂[例えばポリカプラミド(6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(6,6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10−ナイロン)、ポリウンデカンアミド(11−ナイロン)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(7−ナイロン)、ポリ−ω−アミノノナン酸(9−ナイロン)等];ポリエーテル樹脂[例えばポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレン、ポリ−1,3−ジオキソラン等];ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレン樹脂(PPO);およびそれらのブロック共重合体が挙げられる。
これらのうち(A)と(C3)の相溶性、(A)の機能発現および(C3)の密着性、分散性および/または相溶性付与剤としての機能発現の観点から好ましいのは変性ポリオレフィンおよびポリエステル樹脂である。
【0068】
酸化防止剤(C4)としては、例えばヒンダードフェノール系〔例えばp−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ビス(1−メチルヘプタデシル)−p−クレゾール、ブチル化クレゾール、スチレン化クレゾール、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、2(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシナメート、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール、1,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等〕;
【0069】
含イオウ系〔例えばN,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ジステアリルチオジプロピオネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)等〕;含リン系〔例えば2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ホスファイトエステル樹脂、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等〕が挙げられる。
【0070】
紫外線吸収剤(C5)としては、例えばサリチレート系[例えばフェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等];ベンゾフェノン系[例えば2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン(トリヒドレート)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロー2−ヒドロキシベンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系[例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0071】
着色剤(C6)としては、白色顔料(例えば酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、黒色顔料(例えばカーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック等)、黄色顔料(例えば黄鉛、カドミイエロー、酸化鉄イエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、オイルイエロー2G等)、橙色顔料(例えば赤口黄鉛、クロムバーミリオン、カドミオレンジ、ピラゾロンオレンジ等)、赤色顔料(例えばベンガラ、カドミレッド、パーマネントレッド、レーキレッドC、カーミン6B、ピグメントスカーレット3B、パーマネントレッドF5R、キナクリドンレッド、チオインジゴマルーン等)、紫色顔料(例えばコバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等)、青色染顔料(例えば群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー等)、緑色顔料(例えばフタロシアニングリーン、クロムグリーン等)、金属粉末顔料(例えばアルミ粉、ブロンズ粉、パールエッセンス等)等が挙げられる。
【0072】
充填剤(C7)としては、例えば金属粉(例えばアルミニウム粉等)、金属酸化物(例えばアルミナ、ケイ灰石、シリカ、タルク、マイカ、カオリンクレー、焼成カオリン等)、金属水酸化物(例えば水酸化アルミニウム等)、金属塩(例えば炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[例えば無機繊維(炭素繊維、繊維素、α−繊維素、ガラス繊維、アスベスト等)および有機繊維(例えばコットン繊維、ジュート繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等)]、マイクロバルーン(例えばガラス、シラス、フェノール樹脂等)、カーボン(例えばカーボンブラック、石墨等)、金属硫化物(例えば二硫化モリブデン等)、有機粉(例えば木粉等)、無機粉(例えば石炭粉等)等が挙げられる。
【0073】
難燃剤(C8)としては、有機系〔例えば含リン系[例えばリン酸エステル(例えばトリクレジルホスフェート等)]、含臭素系(例えばテトラブロモビスフェノ−ルA、デカブロモビフェニルエーテル等)、含塩素系(例えば塩素化パラフィン、無水ヘット酸等)〕および無機系〔例えば三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム等〕が挙げられる。
【0074】
帯電防止剤(C9)としては、下記並びに米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
1)非イオン性界面活性剤:
AO付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)、高級脂肪酸(C8〜24)等:例えばアルキルもしくはアルケニル(ドデシル、ステアリル、オレイル等)アルコールおよびアミン、アルカン酸もしくはアルケン酸(ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体(分子量150以上、かつMn30,000以下)等;多価アルコール(前記のもの、例えばGR、PE、ソルビタン等)の高級脂肪酸(上記)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(分子量320以上、かつMn30,000以下;例えばツイーン型ノニオニックス等);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(分子量330以上、かつMn30,000以下);多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(分子量180以上、かつMn30,000以下);ポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコール(上記)およびポリアミン(前記PA)のポリオキシプロピレン誘導体]のポリオキシエチレン誘導体(Mn1,000〜30,000)[例えばプルロニック型、テトロニック型ノニオニックス等];多価アルコール(C3〜60)型ノニオニックス、例えば多価アルコール(上記)の高級脂肪酸(上記)エステル、多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテル、高級脂肪酸(上記)アルカノールアミド等;アミンオキシド型ノニオニックス、例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18)、ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3)アミンオキシド等。
【0075】
2)カチオン性界面活性剤:
第4級アンモニウム塩型カチオニックス、例えばテトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100);トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80);アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩;(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4、重合度1〜100またはそれ以上)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100);アシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)、有機酸(下記)の塩等が含まれる];アミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミン、高級脂肪族アミン(上記)のポリオキシアルキレン誘導体(上記;EO付加物等)、アシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン]の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等)塩又は有機酸(C2〜22:酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、オレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、安息香酸等)塩。
【0076】
3)アニオン性界面活性剤:
カルボン酸(塩)、例えば高級脂肪酸(上記)、エーテルカルボン酸[高級アルコール(上記)またはそのAO付加物]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールまたはそのAO付加物の硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン(C12〜18のオレフィンを硫酸化して中和した塩);スルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等);リン酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールもしくはそのAO付加物またはアルキル(C4〜60)フェノールのAO付加物(同上)のリン酸エステル塩等。
【0077】
4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアミノ酸型アンフォテリックス、ベタイン型アンフォテリックス等;硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばヒドロキシアルキル(C2〜4)イミダゾリン硫酸エステル(塩);スルホン酸(塩)型アンフォテリックス;リン酸エステル(塩)型アンフォテリックス等。
【0078】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、IIB族金属(亜鉛等)の塩等;アンモニウム塩;アミン塩;4級アンモニウム塩等が含まれる。
塩を構成するアミンには、C1〜20のアミン、例えばヒドロキシルアミン、3級アミノ基含有ジオール、1級モノアミン、2級モノアミン、並びにそれらのアルキル化(C1〜4)および/またはヒドロキシアルキル化(C2〜4)物(AO付加物):例えばモノ−、ジ−およびトリ−(ヒドロキシ)アルキル(アミン)(モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミンおよびエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン等)が含まれる。4級アンモニウム塩には、これらのアミンの4級化物[米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(前記)による4級化物等]が含まれる。
【0079】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の(C)の合計使用量は、(B)の重量に基づいて通常30%以下、(C)の効果および経済性の観点から好ましくは0.01〜25%、さらに好ましくは0.1〜20%である。
(B)の重量に基づく(C1)〜(C9)のそれぞれの使用量は、通常(C1)、(C2)、(C3)及び(C9)は15%以下、(C)の効果および経済性の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%;(C4)、(C5)および(C8)は通常10%以下、同様の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.1〜3%;(C6)および(C7)は通常30%以下、同様の観点から好ましくは0.01〜25%、さらに好ましくは0.1〜20%である。
【0080】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法には、(1)(A)と(B)および必要により(C)とをそれぞれ全量溶融混合する方法、(2)(A)と少量の(B)および必要により(C)の一部もしくは全部を溶融混合して、マスターバッチ樹脂組成物を作成した後、残りの(B)および必要により残りの(C)を加えて溶融混合する方法、および、(3)(A)の一部と少量の(B)および必要により(C)の一部もしくは全部を溶融混合して、マスターバッチ樹脂組成物を作成した後、残りの(B)、残りの(A)および必要により残りの(C)を加えて溶融混合する方法[(2)および(3)はマスターバッチ法]が含まれる。溶融温度は(A)および(B)の溶融温度および分解温度の観点から好ましくは40〜300℃、さらに好ましくは90〜280℃である。
上記の方法のうち、塗装性の観点から好ましいのは(2)の方法である。
溶融混合装置としては、例えばバッチ混練機〔例えばバンバリー[商品名、Farrel(株)製]、ニーダー等〕、連続混練機〔例えばFCM[商品名、Farrel(株)製]、LCM[商品名、(株)神戸製鋼所製]、CIM[商品名、(株)日本製鋼所製]等〕、単軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。
【0081】
上記マスターバッチ樹脂組成物も本発明の一つである。
本発明のマスターバッチ樹脂組成物中の(A)と(B)の合計重量に基づく(A)の割合は、塗装性、(B)の機械物性保持および作業性の観点から1〜95%、好ましくは10〜80%である。
【0082】
本発明の成形品は、上記ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法としては、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形、スラッシュ成形、回転成形、トランスファー成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、積層成形、カレンダー成形、発泡成形等が挙げられる。発泡成形の際に用いられる発泡剤としては、例えば無機発泡剤(例えば窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、水、炭酸アンモニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸ソーダ、亜硝酸ソーダ、塩化アンモニウム、ニトロユリア等)および有機発泡剤[ニトロソ系発泡剤(例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’ジメチルN,N’ジニトロソテレフタールアミド等)、スルホヒドラジド系発泡剤(例えばベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p−p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、3−3’ジスルホンヒドラジドジフェニルスルホン、トルエンジスルホニルヒドラジド等)、スルホヒドラゾン系発泡剤(p−トルエンスルホニルヒドラゾン等)、アジド系発泡剤(例えばp−トルエンスルホニルアジド等)、アゾ系発泡剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジエチルアゾジカルボキシレート等)]等が挙げられ、その使用量は、ポリオレフィン樹脂組成物の全重量に基づいて通常20%以下、好ましくは1〜15%である。
【0083】
本発明の成形品は、上記ポリオレフィン樹脂組成物を成形することにより得られる。該
成形品は、優れた機械物性を有するとともに良好な塗装性を有し、塗装および/または印刷を施して成形物品とすることができる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばスプレー塗装(エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー塗装等)、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられる。
塗料としては、例えばポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。塗装膜厚(乾燥後膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常5〜100μm、塗装性および経済性の観点から好ましくは10〜50μmである。
また、該成形品に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられる印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキ、オフセットインキ等が使用できる。
【発明の効果】
【0084】
本発明の、変性ポリオレフィンからなる塗装性改良剤は、ポリオレフィン樹脂の塗装性向上効果に優れることから、少量の添加で、ポリオレフィン樹脂の機械物性を損なうことなく、塗装性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、性能評価は後述の試験法により行い、成形品試験片は射出成形した成形品から切り出したものを用いた。
なお、変性ポリオレフィンのMnは、高温GPC{(株)Waters製、カラム:PLgel MIX ED−B、ポリマーラボラトリーズ(株)製}を用いてGPC法により測定した値である。
【0086】
実施例1
窒素導入管、排ガス留出管、撹拌装置および冷却管を備えた4ツ口フラスコに、市販のポリプロピレン(ペレット状)[ノーブレンH501、住友化学(株)製、Mn120,000]100部を窒素雰囲気下に入れ、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら360℃で70分間熱減成を行った。得られた熱減成物の炭素1,000個当たりの二重結合量は2.7であった。
該熱減成物90部、無水マレイン酸10部およびキシレン100部を入れ、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにジクミルパーオキサイド0.5部をキシレン10部に溶解した溶液を滴下した後、キシレン還流温度まで昇温し、3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去して生成物(1)を得た。
得られた生成物(1)90部、キシレン150部、デカヒドロナフタリン80部を入れ、130℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにN−メチル−1,3−プロパンジアミン80部とキシレン150部の混合溶液を滴下し、還流温度で10時間撹拌を続けた。その後、減圧下で未反応のN−メチル−1,3−プロパンジアミン、キシレンおよびデカヒドロナフタリンを留去して変性ポリオレフィン(P1)を得た。(P1)は、アミン価51、Mn5,000、熱軟化点143℃であった。(P1)は、後述の実施例3において塗装性改良剤(A1)として用いた。
【0087】
実施例2
実施例1において、ポリプロピレン(ペレット状)に代えて、プロピレン・αオレフィンコポリマー(ペレット状)[タフマーXR107L、三井化学(株)製、Mn90,000]を用いた以外は実施例1と同様に行い、熱減成物さらに変性ポリオレフィン(P2)を得た。該熱減成物は、炭素1,000個当たりの二重結合量が2.8であり、(P2)は、アミン価49、Mn5,100、熱軟化点111℃であった。(P2)は後述の実施例4において塗装性改良剤(A2)として用いた。
【0088】
比較例1
実施例1と同様の4ツ口フラスコに、ポリプロピレン(ペレット状)[ノーブレンH501、住友化学(株)製、Mn120,000、炭素1,000個当たりの二重結合量0]95部、無水マレイン酸5部およびキシレン1,000部を入れ、窒素置換後、窒素通気下に135℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにジクミルパーオキサイド0.3部をキシレン5部に溶解した溶液を滴下した後、キシレン還流温度まで昇温し、3時間撹拌を続けた。その後、常圧下でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を300部留去後、130℃まで冷却し離型紙を敷いたトレーに取り出した。150℃の減圧乾燥機にて残存するキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去した。
窒素導入管、撹拌装置および冷却管を備えた別の4ツ口フラスコに、得られた生成物97部、キシレン500部、デカヒドロナフタリン800部を入れ、140℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにN−メチル−1,3−プロパンジアミン30部とキシレン150部の混合溶液を滴下し、還流温度で10時間撹拌を続けた。その後、常圧下で未反応のN−メチル−1,3−プロパンジアミン、キシレンおよびデカヒドロナフタリンを留去後、150℃まで冷却し離型紙を敷いたトレーに取り出した。190℃の減圧乾燥機にて残留するキシレン、デカヒドロナフタリンおよび未反応のN−メチル−1,3−プロパンジアミンを留去して変性ポリオレフィン(比P1)を得た。(比P1)は、アミン価8、Mn120,000、熱軟化点は200℃以上であった。(比P1)は後述の比較例3において塗装性改良剤(比A1)として用いた。
【0089】
比較例2
実施例1と同様の4ツ口フラスコに、実施例1と同様にして得られた生成物(1)80部とモノエタノールアミン20部を入れ、180℃で2時間撹拌を続けた。その後、減圧下で未反応のモノエタノールアミンを留去して変性ポリオレフィン(比P2)を得た。(比P2)は、アミン価0、水酸基価(単位:mgKOH/g)52、Mn4,900、熱軟化点145℃であった。(比P2)は後述の比較例4において塗装性改良剤(比A2)として用いた。
【0090】
実施例3、4、比較例3、4
市販のポリプロピレン[商品名:チッソポリプロK1011、チッソ(株)製]100部と、塗装性改良剤(A1)、(A2)、(比A1)および(比A2)の各6部をそれぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間20分の条件で溶融混練して4種のポリオレフィン樹脂組成物を得た。各組成物について射出成形機[PS40E5ASE、日精樹脂工業(株)製]を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃で成形して所定の試験片を作成後、下記の試験方法に従い成形品の機械物性および塗装性を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
<試験方法>
(1)衝撃強度
成形品試験片(厚み3.2mm)について、ASTM D256(ノッチ付、厚み3.2mm)に基づき、Method Aにて測定した(単位:kgf・cm/cm)。
(2)曲げ弾性率
成形品試験片(100×10×4mm)について、ASTM D790に基づき、支点間距離60mmにて測定した(単位:kgf/cm)。
(3)塗装性試験
成形品試験片(150×70×2mm)の表面に、市販のメラミンアルキッド系上塗り塗料[商品名:フレキセン♯101、日本ビーケミカル(株)製]をシンナー[商品名:♯101−10、日本ビーケミカル(株)製]にて希釈(塗料/シンナー重量比=2/1)したものを、スプレー機を用いてスプレー塗装した後、室温で15分間静置し、循風乾燥機で120℃、20分間焼き付けを行った(乾燥後膜厚約40μm)。得られた塗装面についてJIS K5400に準拠した碁盤目テープ法による付着性試験を行った。碁盤目100のうち、塗膜が剥離しなかった部分の数を0〜100で表した。
【0092】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の塗装性改良剤(A)は、ポリオレフィン樹脂(B)に少量添加することでポリオレフィン樹脂(B)の機械物性を損なうことなくその塗装性(塗膜密着性等)を向上させることができることから、該(A)を含有するポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品は、各産業分野、とくに自動車分野における内外装材料や家庭電化製品分野において幅広く好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量1,500〜100,000のポリオレフィン(a)からなる疎水基と、アミノ基(b)を少なくとも1個含む親水基を有し、かつ(b)1個当たりの数平均分子量が400〜50,000である変性ポリオレフィンからなる塗装性改良剤(A)。
【請求項2】
(a)が、分子末端および/または分子内に炭素1,000個当たり0.2〜10個の二重結合を有するポリオレフィンである請求項1記載の塗装性改良剤(A)。
【請求項3】
(a)が、ポリオレフィンの熱減成物である請求項1または2記載の塗装性改良剤(A)。
【請求項4】
親水基が下記一般式(1)で示される請求項1〜3のいずれか1項記載の塗装性改良剤(A)。
【化1】

[式中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれH、または水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;Xは水酸基およびアミノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基;Zはアミド基もしくはイミド基を構成するNを表す。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装性改良剤(A)をポリオレフィン樹脂(B)に含有させてなるポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
(B)の重量に基づく(A)の割合が0.01〜30%である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
さらに、可塑剤、滑剤、密着性、分散性および/または相溶性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、難燃剤並びに帯電防止剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(C)を含有させてなる請求項5または6記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装性改良剤(A)とポリオレフィン樹脂(B)からなり、(A)と(B)の合計重量に基づく(A)の割合が1〜95%であるマスターバッチ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項記載の組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
請求項9記載の成形品に塗装及び/又は印刷を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2007−84688(P2007−84688A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275242(P2005−275242)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】