説明

壁厚検査方法、タービン翼、校正用具および渦電流検出システム

【課題】タービン翼に設けられた孔の位置の検査をより簡単に行えるようにする。
【解決手段】タービン翼900の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して、タービン翼900の表面から渦電流プローブの走査を施して渦電流検出を行う渦電流検出工程の前に、棒状磁性体200を溝に挿入してタービン翼900の壁厚判定基準厚みを有する板材320を介して棒状磁性体200に対して渦電流検出を行うことにより、渦電流プローブ120の校正を行う。これにより、検査者は、渦電流検出を行って容易な判定を行うことで、冷却孔910の位置の検査をより簡単に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁厚検査方法、タービン翼、校正用具および渦電流検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、一般に、出力および効率を向上させるために高い入口温度で運転される。かかる高温での運転においてタービン翼を保護するために、翼内部に複数の冷却孔を穿設し、その冷却孔に低温流体を流すことにより、タービン翼の冷却が行われている。
ここで、製造誤差により冷却孔の位置が設計位置よりも翼表面側に位置すると、充分な冷却を行えないなどの不都合が生じるおそれがあるため、冷却孔が適正な位置に設けられているか確認する検査が行われている。冷却孔位置の確認方法としては、例えば、放射線透過試験によって冷却孔の位置を確認する方法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−151501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線透過試験によって冷却孔の位置を確認する方法では、翼に設けられた複数の冷却孔が線源から放射線照射経路上に重複し、所望の冷却孔の像に他の冷却孔の像が重なってしまうことを回避するため、線源と翼との相対位置を変更して像が重ならない位置を探す、あるいは、他の冷却孔に翼と同材料かつ冷却孔と同径の金属棒を挿入するなどの処置が必要となる。より簡単に検査を行うことが出来れば、検査を行う者の負担を軽減させることができる。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、孔の位置の検査をより簡単に行うことのできる壁厚検査方法、タービン翼、校正用具および渦電流検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による壁厚検査方法は、タービン翼の冷却孔に棒状磁性体を挿入して、前記タービン翼の表面から渦電流プローブの走査を施して渦電流検出を行う渦電流検出工程を備えて、前記棒状磁性体と前記タービン翼の表面との距離である壁厚の検査を行う壁厚検査方法あって、前記渦電流検出工程の前に、前記棒状磁性体を溝に挿入して前記タービン翼の壁厚判定基準厚みを有する板材を介して前記棒状磁性体に対して渦電流検出を行うことにより、前記渦電流プローブの校正を行う校正工程を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すデータを予め取得して、前記渦電流検出工程にて得られた測定値から前記壁厚値を求める壁厚値取得工程を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、前記タービン翼の複数の冷却孔に前記棒状磁性体を挿入して前記渦電流検出工程を実施することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、前記渦電流検出工程の後に、前記壁厚についてさらに精密な検査を行う精密検査工程を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、渦電流プローブの位置情報を取得する位置情報取得装置を用いて、前記渦電流検出工程にて前記渦電流プローブの位置と前記渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、前記渦電流検出工程にて前記冷却孔に前記棒状磁性体を挿入する際に、径の大きい前記棒状磁性体から挿入を試みることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様による壁厚検査方法は、上述の壁厚検査方法であって、前記渦電流検出工程にて、前記冷却孔の延在方向に向かうにしたがって該冷却孔を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように前記渦電流プローブを走査することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様によるタービン翼は、上述の壁厚検査方法のいずれかを用いて壁厚を測定されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による校正用具は、径の異なる複数の棒状磁性体の径に応じた幅および深さの複数の溝を有する台と、既知の厚みを有する板材とを具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による渦電流検出システムは、径の異なる複数の棒状磁性体と、上述の校正用具と、前記棒状磁性体に渦電流を誘導し、当該渦電流による信号を検出する渦電流検出装置とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タービン翼に設けられた孔の位置の検査をより簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態における壁厚検査システムの概略構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態で渦電流検出装置を用いて行う渦電流検出工程にて、タービン翼に渦電流プローブを近づけた状態の例を示す斜視図である。
【図3】同実施形態で校正用具を用いて行う校正工程にて、厚みが既知の板材を挟んだ棒状磁性体による渦電流検出を行っている状態の例を示す斜視図である。
【図4】同実施形態における渦電流検出装置が検出する電圧値と壁厚値との関係を示すデータとしての評価曲線の例を示すグラフである。
【図5】同実施形態にて、渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すマトリックスの例を示す説明図である。
【図6】同実施形態にて、棒状磁性体の径と当該棒状磁性体からコイルまでの距離との関係の例を示す説明図である。
【図7】同実施形態にて、渦電流プローブの位置と渦電流プローブから棒状磁性体までの距離との関係を示す説明図である。
【図8】同実施形態にて、棒状磁性体を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐ走査の例を示す説明図である。
【図9】同実施形態にて、壁厚検査システムを用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態にて、複数の冷却孔に棒状磁性体を挿入して渦電流検出工程を実施する様子の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における壁厚検査システムの概略構成を示す構成図である。
【図12】同実施形態において、記録装置が、渦電流検出工程にて渦電流プローブの位置と渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録する様子の例を示す斜視図である。
【図13】同実施形態にて、壁厚検査システムを用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、タービン翼に設けられた冷却孔の検査に本発明を適用する場合について説明するが、本発明の適用範囲はこれに限らず、様々な孔の位置(検査対象物の表面から孔までの距離)の検査に本発明を適用し得る。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における壁厚検査システム1の概略構成を示す構成図である。同図において、壁厚検査システム1は、渦電流検出装置100と、棒状磁性体200と、校正用具300とを具備して、タービン翼900の検査を行う。渦電流検出装置100は、渦電流検出装置本体110と、渦電流プローブ120とを具備する。渦電流検出装置本体110は、励磁部111と、渦電流検出部112とを具備する。渦電流プローブ120は、励磁用コイル121と、渦電流検出用コイル122とを具備する。校正用具300は、台310と、板材320とを具備する。
【0020】
タービン翼900は、例えばガスタービンの動翼である。タービン翼900には複数の冷却孔910が設けられており、検査者は、壁厚検査システム1を用いてタービン翼900の表面と冷却孔910との距離を検査する。
なお、以下では、タービン翼900の表面と冷却孔910との距離を「壁厚」称する。
なお、壁厚検査システム1を用いて行う壁厚の検査は、壁厚値の測定であってもよいし、壁厚が基準厚以上か否かの判定であってもよい。
【0021】
棒状磁性体200は、タービン翼900の材料とは異なる渦電流特性を有し、壁厚検査システム1を用いた壁厚の検査に際してタービン翼900の冷却孔910に挿入される。例えば、タービン翼900が非磁性体で構成されるのに対し、棒状磁性体200は強磁性体で構成される。これにより、タービン翼900が磁界の変化に対して渦電流を発生させないのに対し、棒状磁性体200では、磁界が時間的に変化すると棒状磁性体200の内部に起電力が発生し、この起電力により電流(渦電流)が流れる。
なお、後述するように、壁厚をより正確に検出するため、棒状磁性体200を冷却孔910に隙間無く挿入することが望ましい。そこで、壁厚検査システム1は複数の径の棒状磁性体200を具備する。これら複数の棒状磁性体200の中から冷却孔910の口径に応じた棒状磁性体200を選んで挿入することで、隙間を無くす、あるいは検査に支障のない小さな隙間とし得る。
【0022】
渦電流検出装置100は、渦電流探傷(Eddy Current Testing;ECT)に用いられる探傷装置と同様、検査対象物(棒状磁性体200を挿入されたタービン翼900)を貫く磁界を変化させ、タービン翼900に挿入された棒状磁性体200における渦電流を検出することにより、壁厚の検査を行う。
渦電流プローブ120は、壁厚検査に際してタービン翼900に表面に配置される。渦電流プローブ120において、励磁用コイル121は、励磁部111から供給される電圧により棒状磁性体200を貫く磁界を変化させる。渦電流検出用コイル122は、励磁用コイル121が磁界を変化させたことによって棒状磁性体200に渦電流が発生すると、当該渦電流による電磁誘導を受けて渦電流に応じた電圧を発生させる(すなわち、渦電流検出用コイル122の導線の両端に、電圧が生じる)。
なお、渦電流プローブ120が具備するコイルは1つであってもよい。この場合、当該コイルが励磁用コイル121と励磁部111を兼ねる。具体的には、当該コイルは、励磁部111から供給される電圧により棒状磁性体200を貫く磁界を変化させ、また、棒状磁性体200に渦電流が発生すると、当該渦電流による電磁誘導を受けて渦電流に応じた電圧(励磁部111から供給される電圧を打ち消す電圧)を発生させる。
【0023】
渦電流検出装置本体110において、励磁部111は、渦電流プローブ120に対して励磁用電圧を供給する。また、渦電流検出部112は、渦電流検出用コイル122に生じる電圧の大きさ(電圧値)を検出する。
なお、渦電流検出部112が測定する値は、棒状磁性体200に生じる渦電流の大きさを示す値であればよい。例えば、渦電流検出部112が、渦電流検出用コイル122における電圧値に代えて、電流値または電力値を測定するようにしてもよい。
【0024】
また、渦電流検出部112が測定した値は、壁厚検査システム1が具備する表示装置によって表示される。この表示装置は、渦電流検出装置本体110に設けられていても良いし、渦電流検出装置本体110とは別に設けられていても良い。例えば、渦電流検出装置本体110が、表示装置として液晶ディスプレイ等の表示画面を具備し、渦電流検出部112が測定した値を数値にて表示画面に表示する。
【0025】
校正用具300は、渦電流プローブ120を校正する際に用いられる。台310と板材320とは、例えばタービン翼900と同じ材料で構成されるなどタービン翼900と同様の渦電流特性を有する。また、台310には棒状磁性体200の径に応じた幅および深さの複数の溝311を有する。また、板材320は、既知の厚みを有する(例えば、検査者が板材320の厚みを予め測定しておく)。
校正用具300を用いて行う渦電流プローブ120の校正については後述する。
【0026】
次に、図2〜図9を参照して、壁厚検査システム1を用いた壁厚検査について説明する。
図2は、渦電流検出装置100を用いて行う渦電流検出工程にて、タービン翼900に渦電流プローブ120を近づけた状態の例を示す斜視図である。同図に示すように、渦電流検出工程では、タービン翼900の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して、タービン翼900の表面から渦電流プローブ120の走査を施す。これにより、渦電流検出装置100は、棒状磁性体200に対する渦電流検出を行う。なお、ここでいう走査(Scan)は、タービン翼900の表面を渦電流プローブ120でなぞる、すなわち、タービン翼900の表面に渦電流プローブ120が接した状態のまま渦電流プローブ120の位置を変化させる操作である。
【0027】
渦電流検出工程において、渦電流検出装置100は、棒状磁性体200を貫く磁界を変化させ、磁界変化に応じて棒状磁性体200に発生する渦電流による電磁誘導を受けて渦電流検出用コイル122に生じる電圧を検出する。一方、タービン翼900は非磁性体で構成されており、タービン翼900には渦電流は発生せず、従って、タービン翼900を貫く磁界を変化させたことによっては、渦電流検出用コイル122には電圧は生じない。
これにより、渦電流検出用コイル122には、棒状磁性体200の径およびリフトオフ(渦電流プローブ120と棒状磁性体200との距離)に応じた大きさの電圧が生じる。そして、棒状磁性体200を冷却孔910に隙間無く挿入しておくことで、このリフトオフは壁厚と等しくなる。
【0028】
そこで、渦電流検出工程の前に、タービン翼900に挿入する棒状磁性体200(と同じ径の棒状磁性体200)を溝に挿入し、タービン翼900の壁厚判定基準厚みを有する板材320を介して棒状磁性体200に対して渦電流検出を行うことにより、渦電流プローブの校正を行う校正工程を実行しておく。この校正工程を実行しておくことにより、定められた一定の感度で測定を実施し得る。この校正工程について図3を参照して説明する。
【0029】
図3は、校正用具300を用いて行う校正工程にて、厚みが既知の板材を挟んだ棒状磁性体200による渦電流検出を行っている状態の例を示す斜視図である。同図に示すように、校正工程では、溝311に棒状磁性体200を挿入し、板材320を介して渦電流プローブ120を近づける。その際、棒状磁性体200の径に応じた幅および深さの溝311に棒状磁性体200を挿入して棒状磁性体200と板材320とが接する状態とすることで、リフトオフを板材320の厚みと等しくすることができる。
【0030】
従って、この状態で渦電流検出装置100が検出する電圧値は、渦電流検出工程において壁厚が壁厚判定基準厚みと同じである場合の電圧値に等しい。そこで、この状態において渦電流検出装置100が検出する電圧値が所定の電圧値になるように、励磁用コイル121に供給する励磁用電圧を校正しておく。これにより、検査者は、定められた一定の感度で測定を実施し得る。
【0031】
例えば、校正条件の一例として、径(φ)が2.6ミリメートルの棒状磁性体200を用いて、厚みが0.9ミリメートルの板材320を介した際に渦電流検出装置100が検出する電圧値が5.0Vとなるよう励磁電圧を設定しておく。これにより、渦電流プローブ120が何らかの理由で損傷するなどして当該渦電流プローブ120を交換した場合でも、交換後の渦電流プローブ120を同じ基準で校正することで、交換前と同じ感度(従って、同じ基準)で壁厚の評価・判定を実施し得る。壁厚の判定・評価については後述する。
なお、壁厚が壁厚判定基準厚み以上か否かの判定は、検査者が渦電流検出装置100の検出する電圧値を読み取って行うようにしてもよいし、あるいは、渦電流検出装置100が、検出した電圧値と所定の電圧値と比較することにより自動で行うようにしてもよい。
【0032】
なお、校正工程において棒状磁性体200と板材320とが接する状態にする方法は、上述した棒状磁性体200の径に応じた幅および深さの溝311に棒状磁性体200を挿入する方法に限らない。例えば、台310が、深さ可変の溝と、この溝の底を押し上げる手段とを有し、この溝に棒状磁性体200が挿入された状態で溝の底を押し上げて棒状磁性体200を板材320に接触させるようにしてもよい。
【0033】
また、渦電流検出における測定値(渦電流検出装置100が検出する電圧値)と壁厚値との関係を示すデータを予め取得おくことで、渦電流検出工程にて得られた測定値から壁厚値を求めることができる。この点について、図4および図5を参照して説明する。
【0034】
図4は、渦電流検出装置100が検出する電圧値と壁厚値との関係を示すデータとしての評価曲線の例を示すグラフである。ここでいう評価曲線は、渦電流検出装置100の検出する電圧値と壁厚値との関係を示す曲線である。
同図において、評価曲線L101は、比較的大きい径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。また、評価曲線L103は、比較的小さい径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。また、評価曲線L102は、両者の中間の径の棒状磁性体200を用いる場合の評価曲線を示す。
【0035】
この評価曲線を用いて、渦電流検出装置100の検出する電圧値を壁厚値に換算することができる。例えば、評価曲線L102の棒状磁性体200を用いて渦電流検出を行い、渦電流検出装置100が電圧値V101を検出した場合、評価曲線L102において電圧値V101に対応する壁厚値を読み取ることで、壁厚値D101を得ることができる。また、評価曲線L101の棒状磁性体200を用いて渦電流検出を行い、渦電流検出装置100が電圧値V102を検出した場合、評価曲線L101において電圧値V102に対応する壁厚値を読み取ることで、壁厚値D102を得ることができる。
【0036】
ここで、渦電流検出における測定値(渦電流検出装置100が検出する電圧値)と壁厚値との関係を示すデータの形式としては、様々なものを用いることができる。例えば、図4のように、当該データをグラフ表示しておいてもよい。あるいは、評価曲線を示す関数を予め求めて渦電流検出装置100に記憶させておき、渦電流検出装置100が、検出した電圧値をこの関数に代入して壁厚値を取得するようにしてもよい。
【0037】
あるいは、当該データを示すマトリックスを予め求めておいてもよい。
図5は、渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すマトリックスの例を示す説明図である。同図に示すマトリックスの各行は壁厚値と対応付けられており、各列は棒状磁性体200の径と対応付けられている。そして、マトリックスの各欄には、当該列に対応付けられた径の棒状磁性体200を用いて、当該行に対応付けられた壁厚値について渦電流検出を行った場合に、渦電流検出装置100が検出する電圧値が格納されている。
【0038】
このマトリックスを用いて、渦電流検出装置100が検出する電圧値を壁厚値に換算することができる。例えば、径が2.4ミリメートルの棒状磁性体200を用いて渦電流検出工程を実施し、渦電流検出装置100が検出した電圧値が2.9ボルト(V)であった場合、まず、棒状磁性体200の径に応じて列C201を選択し、この列C201において電圧値2.9ボルトを示す欄(無い場合は、最も近い値の欄)を選択する。そして、この欄の行R201に対応付けられた壁厚値0.5ミリメートルを読み取ることで、壁厚値を得られる。
なお、この電圧値から壁厚値への換算は、検査者がマトリックスを参照して行うようにしてもよいし、あるいは、渦電流検出装置100が予めマトリックスを記憶しておいて自動で行うようにしてもよい。
【0039】
次に、図6を参照して、壁厚検査システム1が具備する棒状磁性体200の径について説明する。
図6は、棒状磁性体200の径と当該棒状磁性体200からコイルまでの距離(リフトオフ)との関係の例を示す説明図である。同図(a)は、棒状磁性体200の径が冷却孔910の口径よりも大きい場合の例を示している。この場合、棒状磁性体200を冷却孔910に挿入することができず、渦電流検出工程を適切に実施することができない。
一方、図6(b)は、冷却孔910の口径に応じた(ほぼ等しい)径を有する棒状磁性体200を挿入した場合の例を示している。この場合、リフトオフD301は、壁厚と等しくなり、渦電流検出工程を実施することで、壁厚を適切に検査し得る。
一方、図6(c)は、冷却孔910の口径よりも小さい径を有する棒状磁性体200を挿入した場合の例を示している。この場合、棒状磁性体200とタービン翼900との間に隙間が有り、この隙間によりリフトオフD302は、壁厚よりも大きく(長く)なっている。この状態で渦電流検出工程を実施すると、実際の壁厚よりも厚く判定してしまい、壁厚不足の検出漏れが生じるおそれがある。
【0040】
このように、壁厚をより正確に検出するため、棒状磁性体200を冷却孔910に隙間無く挿入することが望ましい。そこで、壁厚検査システム1は複数の径の棒状磁性体200を具備する。そして、検査者は、渦電流検出工程にて冷却孔910に棒状磁性体200を挿入する際に、径の大きい棒状磁性体200から挿入を試みる。そして、冷却孔910に挿入可能な棒状磁性体200のうち、径の最も大きい棒状磁性体200を挿入した状態で渦電流検出工程を実施する。これにより、複数の棒状磁性体200の中から冷却孔910の口径に応じた棒状磁性体200を選んで挿入することができ、棒状磁性体200とタービン翼900との隙間を無くす、あるいは検査に支障のない小さな隙間とし得る。
【0041】
次に、図7および図8を参照して渦電流プローブ120の走査について説明する。
図7は、渦電流プローブ120の位置と渦電流プローブ120から棒状磁性体200までの距離との関係を示す説明図である。同図に示すように、渦電流プローブ120を棒状磁性体200の延在方向に直交する方向(図7のDIRの方向)に走査すると、渦電流プローブ120の位置に応じて棒状磁性体200までの距離が変化し、この距離に応じて渦電流検出装置100の検出する電圧値が変化する。そして、渦電流プローブ120から棒状磁性体200までの距離が極小(図7の距離D401)となったときに、渦電流検出装置100の検出する電圧値が最大となる。この距離D401が、壁厚の極小値(すなわち、検査対象の壁厚)である。
【0042】
そこで、渦電流プローブ120を棒状磁性体200の延在方向に直交する方向に走査し、渦電流検出装置100の検出する電圧値の最大値を取得し、この最大値を用いて壁厚の検査を行うことで、適切に検査を行うことができる。すなわち、この最大値を壁厚値に換算することで、より正確な壁厚値を得ることがきる。あるいは、この最大値と所定の電圧値とを比較して壁厚が壁厚判定基準厚み以上か否かを判定することでより正確に判定を行うことができる。
【0043】
かかる棒状磁性体200の延在方向に直交する方向への走査を行うために、渦電流検出工程にて、棒状磁性体200(冷却孔910)の延在方向に向かうにしたがって棒状磁性体200(冷却孔910)を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように渦電流プローブ120を走査する。
図8は、棒状磁性体200を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐ走査の例を示す説明図である。同図に示す線L501のように、渦電流プローブ120が、棒状磁性体200(冷却孔910)の延在方向(図8の例では、図の上から下)に向かうに従って、棒状磁性体200(冷却孔910)を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように走査することで、棒状磁性体200(冷却孔910)の各部において壁厚が極小となる位置を検出することができる。
【0044】
ここで、冷却孔910を穿孔する際に冷却孔910に異物が入った場合や、工具が斜めに入って冷却孔910が斜めに開けられた場合など、冷却孔910の一部において壁厚が壁厚判定基準厚み以上であっても他の部分では壁厚が壁厚判定基準厚み未満となる可能性がある。そこで、渦電流プローブ120が図8に示すように走査し、渦電流検出装置100が、棒状磁性体200(冷却孔910)の(一部分のみでなく)各部分について壁厚を示すことで、検査者は、より正確に検査を行うことができる。
なお、渦電流プローブ120の走査方向が棒状磁性体200の延在方向と正確に直交する必要は無く、渦電流プローブ120の走査方向と棒状磁性体200の延在方向とがずれていれば壁厚が変化し、当該走査線上において壁厚が極小となる位置を検出することができる。
【0045】
次に、図9を参照して壁厚検査の手順について説明する。
図9は、壁厚検査システム1を用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、検査者は、まず、検査対象となっているタービン翼900における壁厚判定基準厚みを取得し、また、径の大きい棒状磁性体200から順に冷却孔910への挿入を試みて挿入可能な径を取得するなど、渦電流検出工程を実施するに際しての条件を確認する(ステップS101)。
【0046】
次に、検査者は、ステップS101で得られた径の棒状磁性体200を、当該径に応じた幅および深さを有する冷却孔910に挿入し、ステップS101で得られた壁厚判定基準厚みを有する板材320を介して棒状磁性体200に対して渦電流検出を行うことにより、図3を参照して説明したように渦電流プローブ120の校正を行う(ステップS102)。
次に、検査者は、棒状磁性体200を冷却孔910に挿入するなど、渦電流検出を行うための準備を行う(ステップS103)。
【0047】
そして、壁厚検査システム1は、検査者の操作に従って渦電流検出工程における渦電流検出を行う(ステップS104)。より具体的には、検査者の操作に従って、渦電流プローブ120が、図8で説明したように走査を行う。そして、壁厚検査システム1(例えば、渦電流検出装置本体110)は、棒状磁性体200における渦電流の大きさに応じて渦電流検出装置100が検出した電圧を表示する。
【0048】
次に、検査者は、渦電流検出装置100の検出した電圧値(渦電流の大きさ)が、判定基準以上の電圧値となっている部分があるか否か(すなわち、壁厚判定基準厚み未満の壁厚となっている部分があるか否か)を判定する(ステップS111)。例えば、図3を参照して説明したように判定基準の電圧が5.0Vに設定されている場合、検査者は、渦電流検出装置100の検出電圧が5.0V以上の箇所があるか否かを判定する。あるいは、図4および図5を参照して説明したように、検査者は、渦電流検出装置100の検出した電圧値から壁圧を求め、当該壁厚が壁厚判定基準厚み未満となっている箇所の有無を判定する。
【0049】
判定基準以上の電圧値となっている部分があると判定した場合(ステップS111:YES)、検査者は、壁厚検査の結果を不合格とする(ステップS121)。その後、同図の処理を終了する。
一方、判定基準以上の電圧値となっている部分が無いと判定した場合(ステップS111:NO)、検査者は、壁厚検査の結果を合格とする(ステップS131)。その後、同図の処理を終了する。
【0050】
以上のように、検査者は、棒状磁性体200を溝311に挿入してタービン翼900の壁厚判定基準厚みを有する板材320を介して棒状磁性体200に対して渦電流検出を行うことにより、渦電流プローブの校正を行う。この校正工程により、検査者は、渦電流検出装置100の検出する電圧値が所定の電圧値以下か否かを判定するという容易な判定によって、壁厚が壁厚判定基準厚み以上か否かを判定することができる。従って、検査者は、渦電流検出を行って容易な判定を行うことで、冷却孔910の位置の検査をより簡単に行うことができる。
【0051】
また、検査者または壁厚検査システム1は、渦電流検出における測定値(渦電流検出用コイル122に生じた電圧値)と壁厚値との関係を示すデータを予め取得して、渦電流検出工程にて得られた測定値から壁厚値を求める。従って、検査者は、壁厚値を容易に得ることができる。
【0052】
また、検査者は、渦電流検出工程にて冷却孔910に棒状磁性体200を挿入する際に、径の大きい棒状磁性体200から挿入を試みる。これにより、棒状磁性体200とタービン翼900との隙間をなくして、あるいは小さくして、より正確に壁厚の検査を行うことができる。
【0053】
また、検査者または壁厚検査システム1は、渦電流検出工程にて、冷却孔910の延在方向に向かうにしたがって冷却孔910を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように渦電流プローブ120を走査する。これにより、冷却孔910の各部分について壁厚の検査を行うことができ、より正確に検査を行うことができる。
【0054】
なお、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施するようにしてもよい。この点について、図10を参照して説明する。
図10は、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施する様子の例を示す斜視図である。同図に示すように、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施することで、複数の冷却孔910について纏めて壁厚の検査を行うことができ、検査に要する時間を削減することができる。
【0055】
図10の例では、タービン翼900の各部分のうち、領域A611では渦電流検出装置100の検出する電圧値が基準値以下であるのに対し、領域A612では渦電流検出装置100の検出する電圧値が基準値を超えている。かかる結果に基づいて、検査者は、領域A612における壁厚が薄いことを把握することができる。
【0056】
複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して纏めて壁厚の検査を行う場合、渦電流プローブ120が複数の棒状磁性体200からの励磁電圧を同時に拾う可能性がある。かかる場合、渦電流検出装置100が検出する電圧は強くなる、すなわち、壁厚が薄いほうに作用するので、複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して纏めて壁厚の検査を行う場合に、壁厚が薄い部分を見落とすおそれの増大を回避できる。
【0057】
すなわち、検査者は、図10に示すように複数の冷却孔910に棒状磁性体200を挿入して渦電流検出工程を実施することで、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄い可能性のある箇所を検出することが出来る。そして、検査者は、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄い可能性のある箇所について、例えば超音波測定装置等を用いてより精密な検査を行うことで、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄い箇所を、迅速かつ正確に検出し得る。
【0058】
<第2の実施形態>
図11は、本発明の第2の実施形態における壁厚検査システム2の概略構成を示す構成図である。同図において、壁厚検査システム2は、渦電流検出装置100と、棒状磁性体200と、校正用具300と、位置情報取得装置400と、記録装置500と、超音波測定装置600とを具備して、タービン翼900の検査を行う。渦電流検出装置100は、渦電流検出装置本体110と、渦電流プローブ120とを具備する。渦電流検出装置本体110は、励磁部111と、渦電流検出部112とを具備する。渦電流プローブ120は、励磁用コイル121と、渦電流検出用コイル122とを具備する。校正用具300は、台310と、板材320とを具備する。位置情報取得装置400は、駆動部410と、位置情報取得部420とを具備する。
【0059】
同図において、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(100、110、111、112、120、121、122、200、300、310、311、320、900、910)を付して説明を省略する。壁厚検査システム2は、位置情報取得装置400と、記録装置500と、超音波測定装置600とを具備する点で、壁厚検査システム1と異なる。
【0060】
位置情報取得装置400は、渦電流プローブ120の位置情報を取得する。位置情報取得装置400において、駆動部410は、渦電流プローブ120を設置可能なアームと、このアームを駆動するモータとを具備して、アームを動作させることにより渦電流プローブ120を動作させる。例えば、駆動部410は、渦電流プローブ120を左右に動かす左右アームと、左右アームを上下に動かすことにより渦電流プローブ120を上下に動かす上下アームとを具備する。
位置情報取得部420は、渦電流プローブ120の位置情報を取得する。例えば、位置情報取得部420は、駆動部410の具備する左右アームおよび上下アームの状態を検出することにより渦電流プローブ120の位置を検出する。
【0061】
記録装置500は、位置情報取得装置400の取得した位置情報と渦電流検出用コイル122に生じた電圧の大きさを示す測定値とを対応付けて記録する。
超音波測定装置600は、渦電流検出装置100を用いた壁厚の検査にて壁厚が薄い(要精密検査)と判定された部分の壁厚をさらに精密に検査するための装置である。
【0062】
次に図12を参照して、記録装置500が行う記録について説明する。
図12は、記録装置500が、渦電流検出工程にて渦電流プローブ120の位置と渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録する様子の例を示す斜視図である。同図において、位置情報取得装置400(駆動部410)は、左右アーム411と上下アーム412とを動作させることにより渦電流プローブ120を動作させる。そして、位置情報取得装置400(位置情報取得部420)は、左右アーム411および上下アーム412の状態を検出することにより渦電流プローブ120の位置を検出し、検出した渦電流プローブ120の位置を記録装置500に出力する。また、渦電流検出装置100は、渦電流検出で得られた測定値、すなわち、棒状磁性体200における渦電流によって渦電流検出用コイル122に生じた電圧値を記録装置500に出力する。そして、記録装置500は、渦電流プローブ120の位置と渦電流検出装置100の検出した電圧値とを対応付けて記録する。
【0063】
記録装置500が、渦電流プローブ120の位置と渦電流検出装置100の検出した電圧値とを対応付けて記録することにより、検査者は、当該記録を参照して、タービン翼900において壁厚の薄い部分を容易に把握することができる。
例えば、記録装置500が、渦電流プローブ120の位置に対応する二次元座標上において、渦電流検出装置100の検出した電圧値が所定の電圧値(例えば、壁厚判定基準厚みに対応する電圧値から壁厚不足検出漏れを防止するための余裕分を減算した電圧値)より高い部分を表示する。これにより、検査者は、タービン翼900において壁厚を再検査するべき部分を容易に把握し、超音波測定装置600を用いて該当部分の壁厚をより精密に検査することができる。
【0064】
次に、図13を参照して壁厚検査の手順について説明する。
図13は、壁厚検査システム2を用いて壁厚検査を行う処理手順を示すフローチャートである。同図の処理において、ステップS201〜S202は、図9のステップS101〜S102と同様である。
【0065】
ステップS202の後、検査者は、棒状磁性体200を冷却孔910に挿入し、渦電流プローブ120を位置情報取得装置400のアームに設置するなど、渦電流検出を行うための準備を行う(ステップS103)。
【0066】
そして、壁厚検査システム2は、検査者の操作に従って渦電流検出工程における渦電流検出を行う(ステップS204)。より具体的には、位置情報取得装置400がアームを動作させて、図8で説明したように渦電流プローブ120を動作させる。そして、記録装置500は、渦電流プローブ120の位置と渦電流検出工程で渦電流検出装置100が検出する電圧値とを対応付けて記憶する。
【0067】
次に、検査者は、記録装置500が記録したデータを参照して、渦電流検出装置100の検出した電圧値が判定基準(例えば、上記のように壁厚判定基準厚みに対応する電圧値から壁厚不足検出漏れを防止するための余裕分を減算した電圧値)以上の電圧値となっている部分があるか否かを判定する(ステップS211)。
【0068】
判定基準以上の電圧値となっている部分があると判定した場合(ステップS211:YES)、タービン翼900における該当部分の位置を特定する(ステップS221)。
そして、検査者は、該当部分について、超音波測定装置600を用いて壁厚についてさらに精密な検査を行う(ステップS222)。
そして、検査者は、ステップS222で行った、超音波測定装置600を用いた壁厚検査に基づいて、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄くなっている部分があるか否かを判定する(ステップS223)。
壁厚が壁厚判定基準厚みより薄くなっている部分があると判定した場合(ステップS223:YES)、検査者は、壁厚検査の結果を不合格とする(ステップS231)。その後、同図の処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS211において、判定基準以上の電圧値となっている部分がないと判定した場合(ステップS211:NO)や、ステップS223において、壁厚が壁厚判定基準厚みより薄くなっている部分がないと判定した場合(ステップS223:NO)、検査者は、壁厚検査の結果を合格とする(ステップS241)。その後、同図の処理を終了する。
【0070】
以上のように、検査者は、渦電流検出装置100を用いた渦電流検出工程の後に、超音波測定装置600を用いて壁厚についてさらに精密な検査を行う。ここで、超音波測定装置600を用いた壁厚の検査では、渦電流検出装置100の場合のようにプローブを動かしながら測定を行うのではなく、測定値を得られるまでプローブを静止させておく必要がある。従って、超音波測定装置600を用いてタービン翼900全体について壁厚の検査を行うと多大な時間を要する。これに対して、渦電流検出装置100を用いた渦電流検出工程で壁厚が小さい部分として検出された部分についてのみ超音波測定装置600を用いて壁厚を検査することで、超音波測定装置600を用いた検査で検査の精度を高めつつ、所要時間の増大を抑えることができる。
【0071】
また、記録装置500が、渦電流検出工程にて渦電流プローブ120の位置と渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録する。これにより、検査者は、タービン翼900において壁厚の薄い部分を容易に把握することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 壁厚検査システム
100 渦電流検出装置
110 渦電流検出装置本体
111 励磁部
112 渦電流検出部
120 渦電流プローブ
121 励磁用コイル
122 渦電流検出用コイル
200 棒状磁性体
300 校正用具
310 台
311 溝
320 板材
400 位置情報取得装置
410 駆動部
420 位置情報取得部
500 記録装置
600 超音波測定装置
900 タービン翼
910 冷却孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼の冷却孔に棒状磁性体を挿入して、前記タービン翼の表面から渦電流プローブの走査を施して渦電流検出を行う渦電流検出工程を備えて、前記棒状磁性体と前記タービン翼の表面との距離である壁厚の検査を行う壁厚検査方法あって、
前記渦電流検出工程の前に、前記棒状磁性体を溝に挿入して前記タービン翼の壁厚判定基準厚みを有する板材を介して前記棒状磁性体に対して渦電流検出を行うことにより、前記渦電流プローブの校正を行う校正工程を備えることを特徴とする壁厚検査方法。
【請求項2】
渦電流検出における測定値と壁厚値との関係を示すデータを予め取得して、前記渦電流検出工程にて得られた測定値から前記壁厚値を求める壁厚値取得工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の壁厚検査方法。
【請求項3】
前記タービン翼の複数の冷却孔に前記棒状磁性体を挿入して前記渦電流検出工程を実施することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁厚検査方法。
【請求項4】
前記渦電流検出工程の後に、前記壁厚についてさらに精密な検査を行う精密検査工程を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の壁厚検査方法
【請求項5】
渦電流プローブの位置情報を取得する位置情報取得装置を用いて、前記渦電流検出工程にて前記渦電流プローブの位置と前記渦電流検出で得られた測定値とを対応付けて記録することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
【請求項6】
前記渦電流検出工程にて前記冷却孔に前記棒状磁性体を挿入する際に、径の大きい前記棒状磁性体から挿入を試みることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の壁厚測定方法。
【請求項7】
前記渦電流検出工程にて、前記冷却孔の延在方向に向かうにしたがって該冷却孔を延在方向に直交する方向に交互に跨ぐように前記渦電流プローブを走査することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の壁厚検査方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の壁厚検査方法を用いて壁厚を測定されたことを特徴とするタービン翼。
【請求項9】
径の異なる複数の棒状磁性体の径に応じた幅および深さの複数の溝を有する台と、既知の厚みを有する板材とを具備することを特徴とする校正用具。
【請求項10】
径の異なる複数の棒状磁性体と、
請求項9に記載の校正用具と、
前記棒状磁性体に渦電流を誘導し、当該渦電流による信号を検出する渦電流検出装置と
を具備することを特徴とする渦電流検出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−113771(P2013−113771A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261890(P2011−261890)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】