説明

壁構造

【課題】塗膜の下に水が浸入することを防止し、且つ、水が浸入しても塗膜に膨れを生じさせない、新規な壁構造を提供する。
【解決手段】基板2と、この基板上に形成される防水層3と、この防水層上に形成されるセメント混合物層4と、このセメント混合物層上に形成される軽量セメント層5とを有する建築用板1同士の目地部に目地材6を充填し、軽量セメント層および目地部の表面に、防水・透湿性塗膜7を形成してなる壁構造10である。目地材6は透湿性を有することがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に建築物の外壁などに適用される壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような壁構造に用いられる建築用板としては、たとえば下記特許文献1に示されるように、合板などの基板の上に防水層を介してセメント混合物層を形成し、この上にセメント、骨材、補強繊維などを混合した軽量セメント層を設けたものが知られている。
【特許文献1】特開2000−313088号公報
【0003】
上記建築用板を外壁などの壁構造に使用する場合、目地部にコーキング用の目地材を充填した後、軽量セメント層および目地材の上に塗膜を設けて仕上げとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の壁構造において、何らかの原因で塗膜の下に水が浸入すると、その水が軽量セメント層内に浸透すると共に、直射日光などによる温度上昇によって浸透した水が蒸発して、水蒸気として軽量セメント層内を移動する。
【0005】
このため、軽量セメント層と塗膜との密着の不十分な箇所、コーキング用の目地材と建築用板の木口との間や、コーキング目地材と塗膜との間に僅かな隙間があると、これらの箇所や隙間に上記水蒸気が浸入し、該箇所、隙間をさらに大きくして、塗膜に膨れを生じさせることがあった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、塗膜の下に水が浸入することを防止し、且つ、水が浸入しても塗膜に膨れを生じさせない、新規な壁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る発明は、基板と、この基板上に形成される防水層と、この防水層上に形成されるセメント混合物層と、このセメント混合物層上に形成される軽量セメント層とを備える基材を用い、これら基材同士の目地部に目地材が充填され、軽量セメント層および目地部の表面に防水性および透湿性を有する塗膜が塗布形成されてなることを特徴とする壁構造である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の壁構造において、目地材が透湿性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、建築用板の軽量セメント層および目地部の表面に防水性および透湿性を有する塗膜が形成された壁構造が提供されるので、まず、塗膜の防水性により雨水などが塗膜の下に浸入することを防止する。何らかの原因で塗膜の下に水が浸入した場合、その水は軽量セメント層中に浸透し、直射日光などによる温度上昇を受けると気化して水蒸気となって軽量セメント層内を移動するが、塗膜は透湿性を有するので、該水蒸気は塗膜を通って外に放散される。このため、軽量セメント層内の水蒸気量が減少し、その水蒸気圧も小さくなるので、軽量セメント層上の塗膜の膨れ現象を防止する。また、目地材と建築用板の木口との間にわずかな隙間があっても、水蒸気量および水蒸気圧が小さいことからこれらの隙間を大きくせず、これも塗膜の膨れ現象を防止することに寄与する。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、建築用板の軽量セメント層および目地部の表面に防水性および透湿性を有する塗膜が形成された壁構造が提供されるので、まず、塗膜の防水性により雨水などが塗膜の下に浸入することを防止する。何らかの原因で塗膜の下に水が浸入した場合、その水は軽量セメント層中に浸透し、直射日光などによる温度上昇を受けると気化して水蒸気となって軽量セメント層内を移動するが、塗膜は透湿性を有するので、該水蒸気は塗膜を通って外に放散される。このため、軽量セメント層内の水蒸気量が減少し、その水蒸気圧も小さくなるので、軽量セメント層上の塗膜の膨れ現象を防止する。また、塗膜と目地材との間や目地材と建築用板の木口との間にわずかな隙間があっても、水蒸気量および水蒸気圧が小さいことからこれらの隙間を大きくせず、これも塗膜の膨れ現象を防止することに寄与する。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、建築用板同士の目地部に透湿性を備えた目地材が充填された壁構造が提供されるので、何らかの原因で塗膜の下に浸入した水が気化して水蒸気となって軽量セメント層内を移動した場合、透湿性の目地部を通って隣接する建築用板の軽量セメント層間で水蒸気が流動するので、水蒸気が局部的に集中することがなく、その水蒸気圧や濃度が略一定となる。したがって、目地材の剥離を防止し、塗膜の膨れについてもより効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による壁構造の好適な実施形態について、図1を参照して詳述する。
【0013】
まず、建築用板1は、基板2と、基板2上に形成される防水層3と、防水層3上に形成されるセメント混合物層4と、セメント混合物層4上に形成される軽量セメント層5とを有する。
【0014】
基板2としては合板、木質繊維板、木削片板、石こう板、木片セメント板等を用いることができる。
【0015】
基板2の表面に、合成樹脂、ラテックス、瀝青質物質またはそれらのエマルジョンをロールコーターやフローコーター等の塗布装置にて均一に塗布し、乾燥させて、防水層3を形成する。ここで合成樹脂としては酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができ、ラテックスとしてはニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることができ、瀝青質物質としてはタール、アスファルト等を用いることができる。防水層を形成するための塗料にはクレー、タルク、炭酸カルシウム等の増量剤や分散剤等の助剤を添加混合してもよい。
【0016】
防水層3の表面に、セメントと合成樹脂、ラテックスまたは瀝青質物質、骨材、成形助剤および水の混合物をロールコータ等の塗布装置にて層状に塗布し、乾燥させてセメント混合物層4を形成する。このセメント混合物層4に混合される合成樹脂、ラテックスまたは瀝青質物質は、上記防水層3に用いたものと同系のものを用いることが好ましい。これにより、防水層3中の物質とセメント混合物層4中の物質との間で分子間引力が働き、それらの密着強度を増大させることができる。セメント、骨材および成形助剤については後述する軽量セメント層5を形成するために用いられるものと同様のものであってよい。
【0017】
以上により、基板2表面に防水層3を介してセメント混合物層4が形成された基材が得られる。このような基材は、柱に木ずりと呼ばれる下板を固定してこの木ずりに防水紙およびラス網をタッカーステープル等で留めた後にラス網上にモルタルを塗布して下地層としていた在来の下地工法に代えて、柱にこの基材を釘打ちした後に直ちにモルタル施工することができるものであって、大幅な工期短縮およびコストダウンを図ることができる工法として近年注目されている。この基材は予め工場にて大量生産が可能であるため、その用途に応じた構成のものを均一な品質で低コストにて提供することができるので、この基材を柱に釘打ちした後、軽量セメント層5および塗膜7を現場で施工して壁構造としてもよい。
【0018】
なお、セメント混合物層4の表面は凹凸状にすることが好ましい。これにより、後述する軽量セメント層(軽量セメント成形板)5が投錨的に密着するため結合強度(剥離強度)が増大するだけでなく、ロールプレスによって一体化する際に軽量セメント成形板が下地板の搬送方向と逆方向(ロールプレスよりも上流側)に逃げようとする動きを抑制することができる。凹凸の山の高さhは2〜3mm程度とする。
【0019】
次に、本発明の他の実施形態として、軽量セメント層5までを予め工場にて形成する建築用板の基材を用いる壁構造について説明する(図2)。軽量セメント層5は、セメント、合成樹脂発泡粒、骨材、補強繊維、成形助剤および混練水を主体とする軽量セメント混合物により形成され、硬化後の比重が0.2〜1.2、好ましくは0.6〜0.7である。ここでセメントとしては普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、天然セメント、アルミナセメント等の任意のセメントを用いることができる。セメント硬化時の収縮を抑制して建築用板の反りを防止するため、セメントの配合量は上記軽量セメント混合物から水を除いた全体重量の35重量%以下とすることが好ましい。また、同全体重量の20重量%以上のセメント配合量としないと硬化が不十分となり必要な強度が得られない。
【0020】
合成樹脂発泡粒としては、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・エチレン共重合体等の共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル樹脂等の合成樹脂を発泡させて球形または略球形のビーズ状に形成したもの、あるいはこれら合成樹脂発泡体廃材を粉砕したものを用いることができる。中でもポリスチレンの発泡粒が強度が大きく安価であることから好ましい。合成樹脂発泡粒の平均粒径は0.1〜10.0mm、平均比重は0.03〜0.2、発泡倍率は5〜30倍であることが好ましく、このような合成樹脂発泡粒をセメント重量に対して6〜21重量%混合することが好ましい。
【0021】
補強繊維としてはワラストナイト、セピオライト、セラミック繊維等の無機繊維、パルプ、ポリプロピレン繊維等の有機繊維を単独または併用して用いることができる。軽量セメント中に補強繊維を混合することは該繊維同士の結合力を介して強度を増大させるが、反面、補強繊維の混入量が多くなりすぎるとセメント硬化時の収縮力が過大となって建築用板として製造したときに反りを生じやすくなることから、補強繊維はセメント重量に対して2〜9重量%混合することが好ましい。
【0022】
骨材としてはケイ石粉、フライアッシュ、スラグ、再生粉等を用いることができ、セメント重量に対して150〜250重量%を混合させる。このように軽量セメント層における骨材の配合割合を高めることにより、軽量セメント層の硬化時の収縮を減少させて反りを防止することができる。
【0023】
成形助剤としてはメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体を用いることができ、セメント、合成樹脂発泡粒、骨材および補強繊維の合計重量に対して0.1〜10重量%添加する。
【0024】
これらの材料にさらに混練水を加えて十分に混練して軽量セメント混合物を得る。混練水量はセメント重量に対して140〜210重量%とすることが好ましい。この混練水量は、水を除いた軽量セメント混合物の全体重量に対して20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%である。
【0025】
得られた軽量セメント混合物を押し出し成形機に投入して、前記下地板と略同一の平面寸法を有する軽量セメント成形板とした後、直ちにこの成形板を下地板のセメント混合物層の上に載置し、ロールプレス等によりその表面を加圧した後、ドライヤーにより加熱乾燥硬化させる。軽量セメント成形板は押し出し直後であって未硬化状態にあり、これをセメント混合物層の上に積層した状態で加圧することで表面平滑な建築用板が得られる。前述のように下地板のセメント混合物層は好ましくは凹凸表面を有するものであるが、未硬化状態の軽量セメント成形板がその上に載置されてプレスされることから、軽量セメント成形板の裏面部分はセメント混合物層の凹凸表面に投錨的に入り込み、大きな密着強度が得られると共に、プレス時に下地板と軽量セメント成形板との間に位置ずれが生ずることを防止する。
【0026】
基板2上に防水層3、セメント混合物層4および軽量セメント層5を順次に形成した建築用板1,1の木口同士を付き合わせた目地部(継目部)に目地材6が充填される。本発明で用いる目地材6は柔軟性のある材質からなり、ウレタン樹脂のような非透湿性材料でも良いが、透湿性を備えることが好ましく、より好ましくは透湿性と共に防水性を備えるものである。その成分としては、(a)合成樹脂エマルジョンに透湿剤を配合したもの、(b)合成樹脂エマルジョンに粉末骨材を添加したもの、(c)無機セメントに粉末骨材および合成樹脂エマルジョンを添加したもの(モルタル系)、(d)パテに粉末骨材を添加したもの(パテ系)などである。
【0027】
上記(a)において、合成樹脂エマルジョンとしては、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、エポキシ系、(メタ)アクリレート系、アクリル系、シリコン系、アクリルシリコン系、フッ素系、ウレタン系、スチレン系、架橋反応型系、これら複数の樹脂含有系などが用いられる。
【0028】
また、上記(a)において、透湿剤としては、ソルビットなどの多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール誘導体、多価アルコールとグリコール誘導体の併用物、アルコキシシランの変性縮合物などが用いられる。透湿剤の配合量は、合成樹脂エマルジョン固形分100重量部に対して5〜30重量部が好ましい。
【0029】
上記(b)において、合成樹脂エマルジョンは上記(a)に用いられると同様のものであって良い。また、合成樹脂エマルジョンに添加する粉末骨材としては、硅砂、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、アルミナ、フライアッシュ、その他の無機粉末などが用いられる。粉末骨材の大きさは直径数十μm程度である。粉末骨材の添加量は、合成樹脂エマルジョン100固形分重量部に対して30〜300重量部が好ましい。
【0030】
上記(c)において、無機セメントに添加する粉末骨材は、上記(b)に用いられると同様のものであって良い。また、無機セメントに添加する合成樹脂エマルジョンは、上記(a)に用いられるものと同様であって良い。無機セメント100重量部に対して、粉末骨材30〜300重量部、合成樹脂エマルジョン1〜15重量部の添加量とすることが好ましい。
【0031】
上記(d)において、パテは、亜鉛華、炭酸カルシウムなどの固体粉末を乾性油で捏ねたものであり、これに上記(b)に用いられると同様の粉末骨材を添加して目地材6とする。
【0032】
目地材6の透湿性に関しては、透湿抵抗が0.19m・s・Pa/μg以下(JIS A 1324:1995 建築材料の透湿性測定方法による)であることが好ましい。目地材6の透湿抵抗が0.19m・s・Pa/μg以下である場合には、軽量セメント層5に浸透し気化した水蒸気が局部的に集中することなく、その濃度が軽量セメント層5および目地部を問わずに略均一となるので、目地材6の剥離や目地材6表面の塗膜7の膨れなどの現象を実質的に生じさせない。
【0033】
目地材6の防水性に関しては、透水性A法が20.0mm以下(JIS A 6909:2003 建築用仕上塗材による)であることが好ましい。目地材6の防水性が透水性A法で20.0mm以下である場合には、何らかの原因により塗膜7の外から塗膜7の下に浸入した水が目地材6に浸入する量がほとんど無いので、目地材6の剥離や目地材6表面の塗膜7の膨れなどをより効果的に防止することができる。
【0034】
目地材6を目地部に充填する際は、目地材6の密着を良くするために、予め目地表面および軽量セメント層5の目地周辺部分に透湿性が低い溶剤、塩化ゴム系または透湿性のあるアクリル系(水性弾性)のシーラー(またはプライマー)を塗布しておく。
【0035】
因みに、水滴・雨滴の大きさは100〜7000μm(=0.1〜7mm、平均2mm程度)、水蒸気分子の大きさは0.0002〜0.0004μm(=2〜4Å)である。したがって、目地材6内の空間の隙間は、水滴・雨滴より小さく且つ水蒸気分子の大きさより大きく、たとえば数μm程度である。
【0036】
目地材6を目地部に充填した後、軽量セメント層5および目地材6の表面に、アクリル系(水性弾性)などの透湿性のシーラーを塗布した後、塗料を塗布して塗膜7を形成する。シーラーは塗料の密着性を向上させる。
【0037】
塗膜7は、防水性と透湿性を兼ね備えた塗膜であって、その成分は、(a)合成樹脂エマルジョン系に透湿剤を配合したもの、(b)合成樹脂エマルジョンに粉末骨材を添加したもの、などである。
【0038】
上記(a)の塗膜における合成樹脂エマルジョンとしては、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、アクリル系、エポキシ系、(メタ)アクリレート系、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステルなどの多元共重合体系、シリコン系、アクリルシリコン系、フッ素系、ウレタン系、スチレン系、架橋反応型系、これら複数の樹脂含有系などが用いられる。透湿剤としては、ソルビットなどの多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール誘導体、多価アルコールとグリコール誘導体の併用物、アルコキシシランの変性縮合物などが用いられる。透湿剤の配合量は、合成樹脂エマルジョン固形分100重量部に対して5〜30重量部程度とする。
【0039】
上記(b)の塗膜における合成樹脂エマルジョンは、(a)と同様のものを使用することができる。粉末骨材としては、硅砂、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、アルミナ、フライアッシュ、その他の無機粉末などが用いられる。粉末骨材の大きさは直径数十μm程度である。粉末骨材の添加量は、合成樹脂エマルジョン100固形分重量部に対して30〜300重量部が好ましい。
【0040】
塗膜7の透湿性に関しては、透湿抵抗が0.19m・s・Pa/μg以下(JIS A 1324:1995 建築材料の透湿性測定方法による)であることが好ましい。塗膜7の透湿性が0.19m・s・Pa/μg以下である場合には、軽量セメント層5に浸透し気化した水蒸気が塗膜7を通じて外に円滑に放散されるので、塗膜7の膨れや目地材6の剥離などの現象を防止する。
【0041】
塗膜7の防水性に関しては、透水性A法が20.0mm以下(JIS A 6909:2003 建築用仕上塗材による)であることが好ましく、これにより塗膜7の外からの水の浸入を防止する。
【0042】
本発明による壁構造について、塗膜の膨れの有無を確認するため、次の試験を行った。
【0043】
1.試験体
本発明実施例および比較例ともに、図3に示す形状・構成の試験体10を用いた。試験体10の大きさは、幅W=340mm、長さL=200mmである。
本発明実施例の試験体は、合板基板2、防水層3、セメント混合物層4、軽量セメント層5からなる既述および図1または2に示す建築用板1であり、目地材6にはウレタン樹脂(実施例1、透湿性が低い)および、無機セメント100重量部に硅砂(粉末骨材)100重量部および酢酸ビニル(合成樹脂エマルジョン)3重量部を添加した透湿性モルタル系目地材(実施例2)を用い、軽量セメント層5および目地材6の表面に透湿性のアクリル系水性弾性シーラーを塗布した後に、防水・透湿性塗膜7を形成した。防水・透湿性塗膜7は、酢酸ビニル樹脂からなる合成樹脂エマルジョンに透湿剤としてソルビットなどの多価アルコールを、合成樹脂エマルジョン固形分100重量部に対して10重量部の割合で配合したものを、前記シーラー上に塗布・乾燥することにより形成した。
比較例の試験体は、塗膜7を透湿性の低い水性アクリルゴム系の塗膜とした他は、本発明実施例の試験体と同じ構成・材質・層厚とした。
これら試験体10において、目地材6の両側の軽量セメント層5に、左右各々3箇所に凹み11を形成し、各凹み11に氷12を入れて塗膜7で覆った。凹み11は、直径15mm、最大深さd=1.5mmの断面円弧状のものとした。
【0044】
2.試験条件
各試験体10を40℃、90%の恒温恒湿槽に入れ、24時間後に取り出して、目地部表面を目視観察した。
【0045】
3.試験結果
本発明実施例1,2の試験体には塗膜の膨れが見られなかったが、比較例の試験体では目地の長さ方向に沿って局部的に若干の凹凸が発生し、凹み部分において塗膜に小さな膨れが見られた。これは、凹み11に入れた氷12が溶けて水となり、さらに気化して水蒸気となって軽量セメント層内を移動したが、本発明実施例1,2の試験体では塗膜が透湿性を有することから水蒸気が該塗膜を通って外に放散された結果、塗膜の膨れが発生しなかったのに対し、比較例の試験体では塗膜の透湿性が低いものであったために水蒸気が軽量セメント層内に閉じ込められてしまい、これが塗膜を下から押し上げた結果として塗膜に膨れが生じたものと推測された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による壁構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明による壁構造の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の効果を確認するための試験に用いた試験体の平面図(a)および側面図(b)である。
【符号の説明】
【0047】
1 建築用板
2 基板
3 防水層
4 セメント混合物層
5 軽量セメント層
6 目地材
7 防水・透湿性塗膜
10 試験体
11 凹み
12 氷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成される防水層と、この防水層上に形成されるセメント混合物層とを備える基材を用い、これら基材同士の目地部に目地材が充填され、前記セメント混合物層および目地部の表面に軽量セメント層が形成され、さらに該軽量セメント層の表面に防水性および透湿性を有する塗膜が塗布形成されてなることを特徴とする壁構造。
【請求項2】
基板と、この基板上に形成される防水層と、この防水層上に形成されるセメント混合物層と、このセメント混合物層上に形成される軽量セメント層とを備える基材を用い、これら基材同士の目地部に目地材が充填され、軽量セメント層および目地部の表面に防水性および透湿性を有する塗膜が塗布形成されてなることを特徴とする壁構造。
【請求項3】
目地材が透湿性を有することを特徴とする、請求項1または2記載の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−115532(P2008−115532A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296889(P2006−296889)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】