説明

変位量検出装置

【課題】いわゆる回転円盤とFBG方式の光ファイバセンサを有して伸縮計等の変位量検出装置を構成することにより、広域にわたる同時計測の場合であっても、例えば敷設する伝送ケーブル本数を少なくでき、伝送最大距離をも容易に延長することができ、敷設コストを安価にして構成できる変位量検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】一端が揺動する被検出部材に接続され、他端側は回転円盤外周面に巻回され、被検出部材の揺動を円盤の回転量に変換するひも状回転変換部材と、軸心部に接続取り付けされ円盤の回転量を軸心方向への移動に変換する移動変換部材と、一端側が移動変換部材に取り付けられ、他端側は基部として固定された、移動変換部材長手方向と略直角方向に延出して設置された揺動検出部材とを備え、揺動検出部材には表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位量検出装置にかかり、特にFBG光ファイバセンサを検出部材として用い斜面の挙動などの地表面変位量を検知する地盤伸縮計などの変位量検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤伸縮計は、例えば、地すべりの予測される斜面に設置され、固定杭(地すべりにより動かない杭)と移動杭(地すべりにより動く杭)の間に張るワイヤー長の変化量を計測することによって、地盤の伸縮量を計測するものであった。その中にあって、地盤の変位量を高精度に計測し、かつ自動的に記録できるものとしては、以下の地すべり計測装置があった。
固定杭と移動杭の間に張られたワイヤーの一端(固定杭側)を回転式記録計の回転部材に張力を保って巻き付け、記録紙が外周に取り付けられたドラムに回転部材を接続してワイヤー長の距離変化をドラムの回転に変換すると共に、ドラムの長手方向に一定速度で移動するペンをドラム上の記録紙に接触させることにより、地盤伸縮量の変化を記録するものであって、特にドラムの回転を電気信号に変換する変換手段を設置し、当該電気信号の変化量から地盤伸縮量を計算する地すべり計測装置。
しかし、当該地すべり計測装置の場合、電気式であるため、設置場所の環境などによっては、電磁波や雷などにより出力に影響を受ける場合があった。
また、地表面変位計測は、主に山間部等で行われることが多く、その際 広範囲にわたって地盤伸縮計を複数設置する必要が発生する。
このような場合、当該地すべり計測装置にあっては、以下の課題があった。
(1)電磁波、雷等の自然環境からの外部ノイズ等によって計器出力に影響を受ける場合がある。
(2)信号伝送にあたって、1つの伸縮計に対し1本のケーブルが必要となることから、複数伸縮計を同時に使用する場合、ケーブル材料費、施工費用が多大になる。
(3)信号増幅器を使用しない場合には、信号伝送最長距離が約1kmに制限される。したがって信号伝送距離が1km以上に及ぶ場合には、信号増幅器を設置する必要が生じ、その結果、機器費用、設置費用が多大となる。
【特許文献1】特許第2880077号公報
【特許文献2】特開2005−164390号公報
【特許文献3】特開平9−257527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであり、いわゆる回転円盤とFBG方式(ファイバブラッググレーティング方式)の光ファイバセンサを有して伸縮計等の変位量検出装置を構成することにより、広域にわたる同時計測の場合であっても、例えば敷設する伝送ケーブル本数を少なくでき、かつ伝送最大距離をも容易に延長することができ、さらに敷設コストを安価にして構成できる変位量検出装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による変位量検出装置は、
一端が揺動する被検出部材に接続され、他端側は回転可能な回転円盤外周面に巻回され、前記被検出部材の揺動を前記回転円盤の回転量に変換するひも状回転変換部材と、
前記回転円盤の軸心方向に延出した状態で軸心部に接続取り付けされ、前記回転円盤の回転量を軸心方向への移動に変換する移動変換部材と、
一端側が前記移動変換部材に揺動可能に取り付けられ、他端側は基部として固定された、前記移動変換部材長手方向と略直角方向に延出して設置された揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置における揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とし、
または、
検出装置ボックスの一側面から外側に突設された回転円盤と、
該回転円盤の軸心部から軸心方向に延出して設けられ前記検出装置ボックス内に配置された、回転円盤の回転量を軸心方向への移動量に変換する雄ねじ状をなす移動変換第1部材と、該移動変換第1部材が螺挿し、長手方向へ揺動する移動変換第2部材とを有する移動変換部材と、
幅方向を垂直方向に向けて立設配置され、先端側は前記移動変換第2部材に接続され、他端側は前記先端側における移動変換第2部材による水平方向への揺動を許容すべく前記基部により片持ち固定された略帯板状部材からなる揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置における揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とし、
または、
略方形状をなす検出装置ボックスの一側面から間隔をおいて外側に前記検出装置ボックスの一側面と略平行方向に張り出して配置されたプーリー状をなす回転円盤と、
該回転円盤の軸心部から軸心方向に延出して前記検出装置ボックス内両側面に設けられた、回転円盤の回転量を軸心方向への移動量に変換する雄ねじ状をなす移動変換第1部材と、前記移動変換第1部材に螺挿し、該移動変換第1部材の長手方向へ移動する直線移動をなす移動変換第2部材部材と、を有する移動変換部材と、
幅方向を垂直方向に向けて立設配置され、先端側は前記直線移動をなす移動変換第2部材に把持され、他端側は前記先端側における移動変換第2部材の移動を許容すべく基部により片持ち固定された略帯板状部材からなる揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置に存する揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とし、
または、
前記移動変換第1部材は、ボールネジにより構成された、
ことを特徴とし、
または、
前記回転円盤は、径の異なる回転円盤に交換可能とされた、
ことを特徴とするものである。

【発明の効果】
【0005】
本発明による変位量検出装置であれば、広域にわたる同時計測の場合であっても、例えば敷設する伝送ケーブル本数を少なくでき、かつ伝送最大距離をも容易に延長することができ、もって敷設コストを安価にして構成できるとの優れた効果を奏する。
さらに、回転円盤の径幅を変えることで曲げひずみ量を変化させることができ、もって被計測物の計測範囲が大幅に変化しても迅速容易に対応でき、また構造が簡単なため取り扱いやすく、設置まで含めたトータルコストが低コストでありながら高信頼性の計測を可能とするとの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0007】
まず、ファイバブラッググレーティング型光ファイバセンサ、すなわちファイバブラッググレーティング(以下「FBG」という)をセンサとして使用するタイプのセンサ原理につき、若干説明する。
【0008】
まず、図4に示すように、光ファイバ17のコア21内に複数のブラッグ回折格子22が形成されている。
【0009】
そして、ブラッグ回折格子22に入射光23が入射されると、ブラッグ回折格子22の間隔xとコア21の屈折率の積に比例する周波数を持つ反射光24が発生する。
【0010】
しかして、光ファイバ17にひずみが生じると、ブラッグ回析格子22の間隔xが変化するため、反射光24の数長λも変化する。そして、FBGを利用したセンサ、すなわちファイバブラッググレーティングセンサは、この変化量をもとにひずみを計算するものとなる。
【0011】
今、長さLの光ファイバ17が張力を受けてΔLだけ伸張したとき、歪み率をεとして
【0012】
【数1】

と定義し、ファイバブラッグ回折格子22の格子間隔xも同じ比率でのびると仮定すれば、温度が一定のもとでは波長λも同じ比率
【0013】
【数2】

で変化することとなる。
従って、反射光24の波長を計測することで歪み率εが得られることとなる。
【0014】
しかして、ファイバブラッグ回折格子22を被測定物体に取り付けておけば、その物体の歪みをFBGの歪みとして検出することができるのである。
また、ファイバブラッグ回折格子22の透過光20は反射成分が欠落したスペクトルとなるので、欠落した波長を計測しても同様の計測が可能となる。
【0015】
このように、FBGは、光ファイバ17のコア21内の屈折率を周期的に変化させたブラッグ回折格子22を有して構成されており、該ファイバーブラッググレーティング波長選択性をひずみ測定に応用したものと言える。
【0016】
次に、本発明を図に基づき説明する。
図1は、本発明による変位量検出装置の基本的な概略構成の一例を示したものである。
図1において、符号1は、例えば変動する地盤4上に立設された検出杭など地盤の変動量測定を行う被検出部材を示す。
そして、該検出杭などの被検出部材1には、例えばその上部にワイヤーなどで構成されたひも状回転変換部材2を結束させて接続する。
【0017】
また、符号3は、例えば変動しない地盤4上に立設された変位量検出装置であり、該変位量検出装置3は、略方形状をなす装置ボックス5内に設けた移動変換部材6、曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサ8、揺動検出部材7並びに前記略方形状をなす装置ボックス5の一側面近傍位置に取り付けられプーリー等で構成された回転円盤9などを有して構成されている。
【0018】
しかして、例えばワイヤーなどで構成されるひも状回転変換部材2は、前記プーリー等で構成された回転円盤9の外周面上に巻回されており、これにより被検出部材1が地盤変動によって揺動すると、すなわち変位量検出装置3と対向する側へ揺動すると、前記ひも状回転変換部材2が被検出部材1側へ引っ張られるものとなる。
【0019】
なお、被検出部材1と接続していないひも状回転変換部材2の一端側には例えば錘18を取り付けておき、たえずひも状回転変換部材2にテンションを与えておくものとする。
【0020】
ここで、例えば地盤4が水平方向に変動すると、ひも状回転変換部材2が引っ張られ、あるいは間隔が狭まって巻き戻され、錘18側に移動する。
このようにひも状回転変換部材2の長手方向における揺動(進退動作)によって、回転円盤9が回転する。
回転円盤9が回転すると、該回転円盤9の軸心部11と連結して取り付けられ、その軸心方向に例えばボールナットなどで構成された移動変換第1部材10が同様の回転量で回転するものとなる。
【0021】
ここで、前記移動変換第1部材10の外周面には長手方向に亘って雄ねじ部が螺刻されており、該雄ねじ部は、略方体状をなす移動変換第2部材19の幅方向略中央を貫通して設けられた雌ねじ部12を螺挿するものとされる。
もって移動変換第1部材10の雄ねじ部が回転すると、該雄ねじ部が螺合する移動変換第2部材19は前記雄ねじ部の長手方向へ移動する構成となっている。
【0022】
このように、移動変換部材6は、ボールナットなどで構成された移動変換第1部材10と、該移動変換第1部材10が螺挿する雌ねじ部12が形成された移動変換第2部材19とによって構成されている。
【0023】
なお、前記の回転円盤9及びこれに接続されているボールナットなどで構成された移動変換第1部材10は交換可能であり、例えば変位量が比較的大きい地盤4では大きな径の回転円盤9を用いる選択が出来る。これにより、大径の回転円盤9と同等に回転する移動変換第1部材の回転量をひも状回転変換部材2の移動量に比較して少なくすることが出来、もって、大なる変位量の地盤4に適している。
【0024】
逆に、変位量が比較的小さな地盤4では小径の回転円盤9を用いることが好ましい。すなわち、ひも状回転変換部材2の移動量が小さな場合でも、移動変換第1部材10には充分な回転量を付与することが出来るからである。
【0025】
なお、回転円盤9とこれに接続された移動変換第1部材10との間に変速用のギヤを付加するか、あるいは移動変換第1部材10外周面に設けられた雄ねじ部の螺刻幅を変えたものを交換可能とすることにより、ひも状回転変換部材2の移動量と、移動変換第1部材10の直線移動量との関係を縷々変換することが出来る。
【0026】
また、移動変換第2部材19における先端側、すなわち被検出部材1側には把持部13が形成されており、該把持部13により後述する帯板状をなす揺動検出部材7の先端部が把持可能とされる。
すなわち、移動変換第2部材19の長手方向先端側、換言すれば被検出部材1側において、その幅方向両側からは幅方向中央に向かってボルト状をなす締結具14、14が螺挿されており、この締結具14,14の締め付けにより、揺動検出部材7の先端部が前記締結具14,14により把持されることになる。
【0027】
ここで、揺動検出部材7は図から理解されるように、移動変換部材6の長手方向と略直角方向に延出して設置されており、その基端は基部15として固定部材16により固定されている。
従って、当該揺動検出部材7は前記基部15を支点としてその先端側が左右に揺動できる、いわゆる片持ち構造になっている。
【0028】
また、図において符号8は曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサであり、該光FBGファイバセンサ8は揺動検出部材7における基部15の近傍位置で、その表裏面に対向して設けられている。
なお、前記揺動検出部材7は例えば長尺な略帯板状部材で形成されており、その幅方向を上下方向に向けて立設した状態で設置されている。
従って、その先端が移動変換第2部材19に把持され、当該移動変換第2部材19と共に左右に揺動すると、FBG光ファイバセンサ8が設置されている基部15近傍位置において左右方向に曲げひずみが発生し、該曲げによるひずみが前記FBG光ファイバセンサ8で検出できるものとなるのである。
【0029】
次に、図5は、被検出部材1が揺動した場合の移動変換第2部材19、揺動検出部材7等の挙動を示すものであり、本発明の変位量検出装置3の機能を説明するものである。
まず、図5(a)は、被検出部材1と変位量検出装置3がひも状回転変換部材2により接続され、被検出部材1が変動する地盤4上に、変位量検出装置3が変動しない地盤4上に設置された状態を示すものである。
すなわち、図5(a)は設置の初期状態を示しており、変位量検出装置3におけるひも状回転変換部材2が、例えば錘14によってテンションを与えられつつ、静止していて、その結果、回転円盤9、移動変換第1部材10、移動変換部材6及び揺動検出部材7のそれぞれが、一定の位置で静止している。
【0030】
次に図5(b)は、被検出部材1が変位量検出装置3の方向(図5の右側)に揺動した場合を示すものである。この時ひも状回転変換部材2の長手方向における搖動によって、回転円盤9が回転する。回転円盤9が回転すると、該回転円盤9の軸心部11と連結して取り付けられた移動変換第1部材10が同様に回転する。そして前記したように、移動変換第2部材19が、移動変換第1部材10の回転に応じて、移動変換第1部材10の長手方向へ移動することになる。
【0031】
この結果、移動変換第2部材19の把持部13によって把持されている搖動検出部材7の先端部が移動することになる。そうすると図5(b)に図示されているように揺動検出部材7が大きくひずみ、搖動検出部材7に発生するひずみは、初期値から大きく変化することになる。
つまり揺動検出部材7に設置されたFBG光ファイバセンサ8の一方(図5(b)下側のセンサ、以下右面FBG光ファイバセンサという)が計測するひずみは、引張ひずみとなり、他方(図5(b)上側のセンサ、以下左面FBG光ファイバセンサという)が計測するひずみは、圧縮ひずみとなる。
【0032】
しかして、これらひずみにより各光ファイバセンサ8のひずみ量が計測されることから、ひずみ変位換算が算出可能となり、移動変換第2部材19の移動量が算出され、もって被検出部材1の搖動量が算出できるものである。
ところで、FBG素子は、温度変化の影響を受けて出力が変化する。そのため一般的には別途温度補正用ファイバグレーティング部を設け補正を行うことが行われる。しかし本発明においては、以下の理由からこのような温度補正用ファイバグレーティング部の設置を必要としない。
【0033】
図6乃至図7は、本発明による変位量検出装置の他の実施例の一例を示したものである。
図6においても、図1に示す実施例と同様に検出杭などの被検出部材1には、例えばその上部にワイヤーなどで構成されたひも状回転変換部材2を結束させて接続する。
また、符号3は、やはり図1の実施例と同様に例えば変動しない地盤4上に立設された変位量検出装置を示すものであり、該変位量検出装置3は、略方形状をなす装置ボックス5内に設けた移動変換部材6、曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサ8、揺動検出部材7並びに前記略方形状をなす装置ボックス5の一側面近傍位置に取り付けられプーリー等で構成された回転円盤9などを有して構成されている。
【0034】
しかして、図6から理解されるように例えばワイヤーなどで構成されるひも状回転変換部材2は、前記プーリー等で構成された回転円盤9の外周面上に巻回されており、これにより被検出部材1が地盤変動によって揺動すると、すなわち変位量検出装置3と対向する側へ揺動すると、前記ひも状回転変換部材2が被検出部材1側へ引っ張られるものとなる。
【0035】
なお、被検出部材1と接続していないひも状回転変換部材2の一端側には例えば定張力バネ(コンストンバネ)が内設されたテンション付与部材25が取り付けられており、たえずひも状回転変換部材2にテンションを与えているものとされる。
【0036】
ここで、例えば地盤4が水平方向に変動すると、ひも状回転変換部材2が引っ張られ、あるいは間隔が狭まって巻き戻されてテンション付与部材25側に移動する。
このようにひも状回転変換部材2の長手方向における揺動(進退動作)によって、回転円盤9が回転する。
回転円盤9が回転すると、該回転円盤9の軸心部11と連結して取り付けられ、その軸心方向に延出して構成された移動変換第1部材10が同様の回転量で回転するものとなる。
【0037】
ここで、前記移動変換第1部材10の外周面には長手方向に亘って雄ねじ部が螺刻されており、該雄ねじ部は、略円柱状をなす移動変換第2部材19の略中央に設けられた雌ねじ部12に螺合するものとされる。
【0038】
符号26は前記移動変換第2部材19を摺動可能に収納する略凹型をなす収納部材であり、該収納部材26は装置ボックス5に固定されている。
【0039】
前述した様に収納部材26の凹部内には略円柱状をなす移動変換第2部材19が摺動可能に収納されており、かつその略中央に設けられた雌ねじ部12に雄ねじ部として構成された移動変換第1部材10が螺合し、移動変換第1部材10が回転すると、前記移動変換第2部材19が上下方向に揺動するものとされている。
【0040】
ここで、図6に示すように、収納部材26の底面と、該収納部材26内に収納されている移動変換第2部材19との間にはバネ部材27が取り付けられており、収納されている移動変換第2部材19に対し、たえず上方向に付勢力を与えるものとされている。これにより、前記両ねじ部の螺合状態に多少のガタが生じていたとしても、前記バネ部材27による付勢力によりそのガタを吸収できるものとなる。そしてこのガタが吸収されることにより、図1の実施例に示すように、精度の高いボールナットを使用しなくとも、ひすみ検出の精度を上げることができるのである。
【0041】
しかして、移動変換第1部材10の雄ねじ部が回転すると、該雄ねじ部が螺合する移動変換第2部材19は前記雄ねじ部の長手方向、すなわち収納部材26内において凹部の深さ方向へ移動する構成となっている。
【0042】
ここで、移動変換第1部材10である雄ねじ部が回転すると、略円柱状をなす移動変換第2部材19も一緒に回転してしまう場合があるため、図7に示すように回転止め突起28,28が各々設けられ、該回転止め突起28,28が前記移動変換第2部材の頂面29に挿入されて回転を阻止するものとなっている。
【0043】
さらに、略円柱状をなす移動変換第2部材19における頂面29には帯板状をなす揺動検出部材7の先端部が当接している。
ここで、揺動検出部材7は図6及び図7から理解されるように、移動変換第2部材19の設置方向と略直角方向に延出して設置されており、その基端は基部15として固定部材16により固定されている。
従って、当該揺動検出部材7は前記基部15を支点としてその先端側が左右に揺動できる、いわゆる片持ち構造になっている。
また、図6において符号8は曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサであり、該光FBGファイバセンサ8は揺動検出部材7における基部15の近傍位置で、その表裏面に対向して設けられている。
なお、前記揺動検出部材7は例えば長尺な略帯板状部材で形成されており、その幅方向を上下方向に向けて立設した状態で設置されていること図1に示す実施例のものと同様である。
【0044】
従って、その先端部が移動変換第2部材19の頂面29に当接され、当該移動変換第1部材10の凹部内深さ方向への揺動と共に該移動変換第2部材19も左右に揺動する。そして、移動変換第2部材19も左右に揺動すると、FBG光ファイバセンサ8が設置されている基部15近傍位置において左右方向に曲げひずみが発生し、該曲げによるひずみが前記FBG光ファイバセンサ8で検出できるものとなるのである。
【0045】
なお、本実施例において、移動変換第2部材19は収納部材26の円筒状凹部内に収納されるべく、円柱状をなしており、そのため周方向へ回転しないよう回転止め突起28が設けられているが、前記凹部を方体状に、また移動変換第2部材19も方体状に形成すれば、前記回転止め突起28を必要としない。
ところで、揺動検出部材7の左右両面(表裏面)にFBG光ファイバセンサ8、8が設置されていること前記の通りであるが、該各FBG光ファイバセンサ8、8で検知されるひずみは、曲げにより生じるひずみと、温度変化により生じるひずみを合成したものとなる。
そして、この合成されたひずみのうち曲げによるひずみは、数3の式により算出することができる。
時刻t1における左面FBG光ファイバセンサ8と右面FBG光ファイバセンサ8に検知されるひずみをε11,ε21とし、これらの平均ひずみをεt1とした場合、この各FBG光ファイバセンサ8,8に検知されるひずみのうち曲げによるひずみε’11,ε’21 が、当該式により算出することができる。
【0046】
また、時刻t1からΔt後の時刻t2における左面FBG光ファイバセンサ8と右面フFBG光ファイバセンサ8に検知されるひずみをε12,ε22とし、これらの平均をεt2とすると、数4の式により同様に各FBG光ファイバセンサ8,8に検知されるひずみのうち曲げによるひずみε’12,ε’22が算出できる。
一方温度変化は、数5の式により算出することができる。つまり、時刻t1から時刻t2の間の温度変化(温度差)を各時刻における平均ひずみεtiの差分に温度校正係数αを乗じることによって算出するものである。
以上の結果より、温度差算出が可能となりもって計測信号の温度補正が可能となるものである。
したがって温度補正用ファイバグレーティング部を設けなくとも、曲げ計測用の左面FBGファイバセンサ8と右面FBG光ファイバセンサ8の計測信号の演算により温度補正が可能となる。
【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

時刻t1から時刻t2の間に変化した温度変化(温度差)K12は以下のように示される。
【0049】
【数5】

β:温度校正係数
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の基本原理を説明すると、本発明は主に地盤のすべり量、移動量を検出するもので、地滑りなどが起こりうる地盤上に検出杭など被検出部材1を立設し、該被検出部材1にワイヤーロープ等の一端側を接続して繋ぎ、フリーとなっている他端側には、プーリー等の回転円盤外周面に巻回させ、かつワイヤーロープの終端には錘を取り付けてワイヤーロープにテンションを与える。
この状態から前記地盤に地滑りなどの変動が生じると、前記ワイヤーロープが引っ張られるなどの揺動(長手方向の進退)が生じる。
しかして、本発明ではワイヤーロープが引っ張られるなどの揺動(長手方向の進退)を回転円盤の回転にまず変換する。
次に、回転円盤の回転に伴い、その軸心方向に向かい取り付け固定されたボールナットを回転させる。
このボールナットには雌ねじ部を有し、ボールナット長手方向へ移動可能とされた移動変換第2部材が螺挿されている。
【0051】
そして、この移動変換第2部材の移動により、片持ち取り付けされた帯板状の揺動検出部材の先端部を左右に揺らし、その揺れにより基部近傍位置では曲げによりひずみ(ひずみ)が発生する。
その曲げひずみ(ひずみ)を揺動検出部材の基部近傍位置における表裏面に対向して設けたFBG光ファイバーセンサにより検出するのである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明実施例の概略構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明実施例の概略構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】本発明実施例の概略構成を説明する構成説明図(その3)である。
【図4】ファイバブラッググレーティングセンサの原理を説明する説明図である
【図5】本発明による計測原理を説明する説明図である。
【図6】本発明による他の実施例の概略構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図7】本発明による他の実施例の概略構成を説明する構成説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0053】
1 被検出部材
2 ひも状回転変換部材
3 変位量検出装置
4 地盤
5 装置ボックス
6 移動変換部材
7 揺動検出部材
8 FBG光ファイバセンサ
9 回転円盤
10 移動変換第1部材
11 軸心部
12 雌ねじ部
13 把持部
14 締結具
15 基部
16 固定部材
17 光ファイバ
18 錘
19 移動変換第2部材
20 透過光
21 コア
22 ブラッグ回折格子
23 入射光
24 反射光
25 テンション付与部材
26 収納部材
27 バネ部材
28 回転止め突起
29 頂面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が揺動する被検出部材に接続され、他端側は回転可能な回転円盤外周面に巻回され、前記被検出部材の揺動を前記回転円盤の回転量に変換するひも状回転変換部材と、
前記回転円盤の軸心方向に延出した状態で軸心部に接続取り付けされ、前記回転円盤の回転量を軸心方向への移動に変換する移動変換部材と、
一端側が前記移動変換部材に揺動可能に取り付けられ、他端側は基部として固定された、前記移動変換部材長手方向と略直角方向に延出して設置された揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置における揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とする変位量検出装置。
【請求項2】
検出装置ボックスの一側面から外側に突設された回転円盤と、
該回転円盤の軸心部から軸心方向に延出して設けられ前記検出装置ボックス内に配置された、回転円盤の回転量を軸心方向への移動量に変換する雄ねじ状をなす移動変換第1部材と、該移動変換第1部材が螺挿し、長手方向へ揺動する移動変換第2部材とを有する移動変換部材と、
幅方向を垂直方向に向けて立設配置され、先端側は前記移動変換第2部材に接続され、他端側は前記先端側における移動変換第2部材による水平方向への揺動を許容すべく前記基部により片持ち固定された略帯板状部材からなる揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置における揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とする変位量検出装置。
【請求項3】
略方形状をなす検出装置ボックスの一側面から間隔をおいて外側に前記検出装置ボックスの一側面と略平行方向に張り出して配置されたプーリー状をなす回転円盤と、
該回転円盤の軸心部から軸心方向に延出して前記検出装置ボックス内両側面に架設された、回転円盤の回転量を軸心方向への移動量に変換する雄ねじ状をなす移動変換第1部材と、前記移動変換第1部材に螺挿する雌ねじ部を有し、該移動変換第1部材の長手方向へ直線移動をなす移動変換第2部材部材と、を有する移動変換部材と、
幅方向を垂直方向に向けて立設配置され、先端側は前記直線移動をなす移動変換第2部材に把持され、他端側は前記先端側における移動変換第2部材の移動を許容すべく基部により片持ち固定された略帯板状部材からなる揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置に存する揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とする変位量検出装置。
【請求項4】
前記移動変換第1部材は、ボールネジにより構成された、
ことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3記載の変位量検出装置。
【請求項5】
検出装置ボックスの一側面から間隔をおいて外側に前記検出装置ボックスの一側面と略平行方向に張り出して配置されたプーリー状をなす回転円盤と、
該回転円盤の軸心部から軸心方向に延出して前記検出装置ボックス内に設けられた、回転円盤の回転量を軸心方向への移動量に変換する雄ねじ状をなす移動変換第1部材と、前記移動変換第1部材が螺挿する雌ねじ部を有し、該移動変換第1部材の長手方向へ直線移動をなす移動変換第2部材部材と、を有する移動変換部材と、
幅方向を垂直方向に向けて立設配置され、先端側は前記直線移動をなす移動変換第2部材の頂面に当接し、他端側は前記先端側における移動変換第2部材の移動を許容すべく基部により片持ち固定された略帯板状部材からなる揺動検出部材と、
を備え、
前記揺動検出部材には、前記基部近傍位置に存する揺動検出部材の表裏面に曲げひずみを検出するFBG光ファイバセンサが各々設けられた、
ことを特徴とする変位量検出装置。
【請求項6】
前記回転円盤は、径の異なる回転円盤に交換可能とされた、
ことを特徴とする請求項1,請求項2、請求項3または請求項4記載の変位量検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−26204(P2008−26204A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200469(P2006−200469)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(391005950)株式会社東横エルメス (10)
【Fターム(参考)】