説明

変速機の油圧制御装置

【課題】ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことのできる変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】第2ソレノイド圧Pslsに対する第1シーブ圧Pinの比(Pin/Psls)が上記ゲインα以下のときには、第2ソレノイド圧Pslsに応じて、そうでないときには、第1シーブ圧Pinに応じて、それぞれライン圧Plの調整を行うようにした。そしてこれにより、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαとを個別設定しながらも、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いにベルトが架け渡されたドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧に応じてそれらプーリのベルト巻き掛け半径を変更して変速を行う変速機に適用されて、そのシーブ圧の調整に係る油圧制御を行う変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、車載等の変速機として、ベルト式無段変速機が実用されている。こうした無段変速機では、図11に示すように、プーリ幅をそれぞれ変更可能なドライブプーリ100及びドリブンプーリ101と、これらのプーリ間に掛け渡される金属製のベルト102とを備えて構成されている。そしてドライブプーリ100及びドリブンプーリ101のプーリ幅を変更し、それらにおけるベルト102の巻き掛け半径を変更することで、無段階に変速が行われるようになっている。こうしたベルト式無段変速機におけるドライブプーリ100及びドリブンプーリ101のプーリ幅の変更は、それらプーリにそれぞれ設けられたシリンダ室103,104に印加される油圧(シーブ圧Pin,Pout)の調整を通じて行われる。そのため、こうしたベルト式無段変速機には、シーブ圧の調整に係る油圧制御を行うための油圧制御装置110が設けられている。
【0003】
従来、そうしたベルト式無段変速機の油圧制御装置として、特許文献1に記載のものが知られている。同文献1に記載の油圧制御装置では、図12に示すように、ポンプから供給される作動油を、第1レギュレータバルブ111及び第2レギュレータバルブ112にて調圧し、制御元圧となるライン圧Plを作り出すようにしている。またこのライン圧Plをモジュレータバルブ113にて減圧することで、一定のモジュレータ圧Pmを作り出すようにもしている。
【0004】
モジュレータバルブ113の出力したモジュレータ圧Pmは、第1及び第2ソレノイドバルブ114,115に供給される。そして第1及び第2ソレノイドバルブ114,115は、内蔵されたリニアソレノイドに対する通電制御を通じて、モジュレータ圧Pmを調整して、所望の第1ソレノイド圧Pslp及び第2ソレノイド圧Pslsをそれぞれ作り出して出力するようにしている。
【0005】
第1ソレノイドバルブ114の出力した第1ソレノイド圧Pslpは、第1シーブ圧調整バルブ116に送られる。そして第1シーブ圧調整バルブ116は、この第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plを調整して、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧Pinを作り出す。一方、第2ソレノイドバルブ115の出力した第2ソレノイド圧Pslsは、第2シーブ圧調整バルブ117に送られる。そして第2シーブ圧調整バルブ117は、この第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plを調整して、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧Poutを作り出す。このように、この油圧制御装置では、第1及び第2ソレノイドバルブ114,115のリニアソレノイドの通電制御により、ドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加される第1及び第2シーブ圧Pin,Poutを制御してそれらプーリのプーリ幅を可変設定することで、変速機の変速制御を行うようにしている。
【0006】
さて、こうした特許文献1の油圧制御装置では、上記第1及び第2ソレノイドバルブ114,115の出力する第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsは、第2レギュレータバルブ112にも送られるようになっている。第2レギュレータバルブ112では、供給された第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsのうち、より高い方のソレノイド圧を用いてライン圧制御油圧Psrvを作り出して出力する。そして第1レギュレータバルブ111は、そのライン圧制御油圧Psrvに応じてライン圧Plを調整する。したがって、この油圧制御装置では、第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsのうち、より高い方のソレノイド圧に応じてライン圧Plが調整されることになる。
【0007】
こうした油圧制御装置での第1及び第2シーブ圧Pin,Poutはそれぞれ、下式(1),(2)で示されるものとなる。またライン圧Plは、下式(3)で示されるものとなる。なお下式(1)〜(3)における「β1」、「β2」及び「β」は、各バルブの機械的構成、寸法及びスプリング荷重によって決定される定数である。
【0008】

Pin=α×Pslp+β1 …(1)
Pout=α×Psls+β2 …(2)
Pl=α×MAX(Pslp,Psls)+β …(3)

図13は、こうした特許文献1の油圧制御装置における変速比γと各油圧との関係を示したものである。同図に示すように、ライン圧Plは、第1及び第2シーブ圧Pin,Poutのうち、より高い方のシーブ圧よりも若干高い圧力に設定される。そのため、ライン圧Plは、必要最小限に抑えられるようになっている。
【特許文献1】特開平11−247981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、上記従来の変速機の油圧制御装置では、ライン圧Plを必要最小限に抑え、燃費の低下や油温の上昇を抑えることができる。しかしながら、こうした従来の変速機の油圧制御装置では、以下に述べるような問題があり、未だ改善の余地がある。
【0010】
すなわち、上記のように第1ソレノイド圧Pslp及び第2ソレノイド圧Pslsのうちのより高い方のソレノイド圧を用いてライン圧Plを設定する構成の油圧制御装置では、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインを、ドライブ側とドリブン側とで等しく揃える必要があり、油圧制御の自由度が制限されてしまっている。
【0011】
図14は、第1シーブ圧調整バルブ116での第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと、第2シーブ圧調整バルブ117での第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαとを異ならせた場合の変速比γと各油圧との関係を示したものである。同図では、第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηは、第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαよりも小さく設定されている(η<α)。この場合には、ライン圧Plが第1ソレノイド圧Pslpに応じて設定される領域、すなわち、第1ソレノイド圧Pslpが第2ソレノイド圧Pslsよりも高い領域では、必要な油圧(第1シーブ圧Pin)に対してライン圧Plが著しく高くなってしまう。すなわち、そうした領域では、ライン圧Plが過剰設定されてしまっている。したがって、ライン圧Plを必要最小限に抑えるには、上記ゲインを、ドライブ側とドリブン側とで等しく揃えなければならないことになる。
【0012】
ちなみに、多くのベルト式無段変速機では、増速側の速比域でのシーブ圧を低く抑えるため、ドライブ側のシリンダ面積をドリブン側のシリンダ面積よりも大きくするようにしている。この場合、本来であれば、第1シーブ圧Pinの最大値は、第2シーブ圧Poutの最大値よりも小さくすることができる。しかしながら、上記従来の油圧制御装置では、ドライブ側、ドリブン側の上記ゲインを等しくしなければならず、第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsの最大圧が同じとすれば、第1シーブ圧Pinの最大圧は、本来必要とされるよりも著しく高くなることになる。そのため、第1ソレノイドバルブ114のフェール時や始動時のサージ圧により、第1ソレノイド圧Pslpがその最大圧付近まで上昇してしまったときには、ドライブプーリに過大な推力が印加されてしまい、ベルトの耐久性を低下させる虞がある。
【0013】
またドライブ側のシリンダ面積がドリブン側のシリンダ面積よりも大きくされている場合には、本来であれば、ドライブ側の上記ゲインをより小さくすることが可能である。すなわち、この場合には、ドライブ側の上記ゲインは、本来必要とされるよりも過大な値に設定されることになる。そしてソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインが大きくなれば、ソレノイド圧の誤差分がより大きく増幅されてシーブ圧に反映されるようになることから、制御性が低下してシーブ圧のばらつきが大きくなる。したがって、上記のような場合には、本来であればより小さく抑えることが可能であるにも関わらず、ドライブ側のシーブ圧(第1シーブ圧Pin)のばらつきが不必要に大きくなってしまうことになる。こうしたシーブ圧のばらつきが大きくなると、そのばらつきに対する余裕代を持たせるためにライン圧Plを高く設定しなければならなくなり、その分、燃費の向上効果が損なわれてしまうことにもなる。
【0014】
このように上記従来の変速機の油圧制御装置では、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側とドリブン側とで等しく揃えなければならず、シーブ圧制御の最適化が阻まれてしまっている。そしてその結果、上述したような、無段変速機のベルトの耐久性の低下や、燃費向上効果の制限などの不具合を招いてしまっている。
【0015】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことのできる変速機の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果を記載する。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、互いにベルトが架け渡されたドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧に応じてそれらプーリの前記ベルトの巻き掛け半径を変更して変速を行う変速機に適用されて、前記シーブ圧の調整に係る油圧制御を行う変速機の油圧制御装置において、前記ドライブプーリに印加される第1シーブ圧を調整するための第1ソレノイド圧を作り出す第1ソレノイドバルブと、前記ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧を調整するための第2ソレノイド圧を作り出す第2ソレノイドバルブと、制御元圧となるライン圧を前記第1ソレノイド圧に応じて調整して、前記第1シーブ圧を作り出す第1シーブ圧調整バルブと、前記ライン圧を前記第2ソレノイド圧に応じて調整して、前記第2シーブ圧を作り出す第2シーブ圧調整バルブと、前記第1シーブ圧と前記第2ソレノイド圧とに基づいて前記ライン圧を調整するライン圧調整手段と、を備えることをその要旨としている。
【0017】
上記構成では、第1ソレノイドバルブによって作り出される第1ソレノイド圧を調整することで、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧が変更され、第2ソレノイドバルブによって作り出される第2ソレノイド圧を調整することで、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧が変更される。そしてこれらシーブ圧の変更を通じて各プーリのベルト巻き掛け半径が、ひいては変速機の変速比が変更されるようになる。
【0018】
ここで上記構成では、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧と、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧の設定に使用される第2ソレノイド圧とに基づいてライン圧の調整が行われる。このときの第2ソレノイド圧からは、それにより設定される第2シーブ圧を把握することができる。よってこれら第1シーブ圧と第2ソレノイド圧とに基づくことで、第1シーブ圧及び第2シーブ圧に応じたライン圧を設定することができるようになる。そして、こうした第1シーブ圧と第2ソレノイド圧とに基づくライン圧調整は、シーブ圧に対するソレノイド圧のゲインがドライブ側とドリブン側とで等しく揃えられていなくとも、好適に行うことができる。したがって上記構成によれば、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことができるようになる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の変速機の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第2ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧の比が、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲイン以下のときには、前記第2ソレノイド圧に応じて前記ライン圧の調整を行い、そうでないときには、前記第1シーブ圧に応じて前記ライン圧の調整を行うことをその要旨とするものである。
【0020】
第2ソレノイド圧に対する第1シーブ圧の比が、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧に対する第2シーブ圧のゲイン以下のときには、第2シーブ圧が第1シーブ圧以上となるとの概算が可能である。一方、上記比が上記ゲインよりも大きいときには、第2シーブ圧よりも第1シーブ圧が大きくなると概算することができる。そのため、このときの上記構成の如くライン圧を調整すれば、必要なシーブ圧を確保可能にライン圧を好適に調整することができるようになる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインにて前記第1シーブ圧を除算したものと、前記第2ソレノイド圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いて前記ライン圧の調整を行うことをその要旨としている。
【0022】
第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧に対する第2シーブ圧のゲインにて第1シーブ圧を除算したものが第2ソレノイド圧よりも高ければ、第1シーブ圧は第2シーブ圧よりも高くなり、そうでなければ、第2シーブ圧の方が第1シーブ圧よりも高くなることになるとの概算が可能である。よって上記構成の如くライン圧調整を行えば、ドライブ側、ドリンブン側のうち、よりシーブ圧の高い側に応じてライン圧が調整されるようになり、必要なシーブ圧を確保可能にライン圧を好適に調整することができるようになる。
【0023】
ちなみに、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧に対する第2シーブ圧のゲインを第2ソレノイド圧に乗算したものと、第1シーブ圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧の調整を行うようにライン圧調整手段を構成した場合にも、これと同様のライン圧調整を行うことが可能である。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインよりも、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインが大きく設定されてなることをその要旨としている。
【0025】
上記構成では、第1及び第2ソレノイドバルブを共通の構成としながらも、すなわち第1及び第2ソレノイド圧の最大値を同じとしながらも、第1シーブ圧の最大値を、第2シーブ圧の最大値よりも低く抑えることができ、シーブ圧制御の最適化を図ることができる。なお、こうした構成は、ドライブ側のシリンダ面積がドリブン側よりも大きくされており、ドライブ側の最大シーブ圧(第1シーブ圧の最大値)をドリブン側よりも小さくすることの可能な変速機への適用が好適である。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第1シーブ圧と前記第2ソレノイド圧とに基づいてライン圧制御油圧を作り出す第2レギュレータバルブと、そのライン圧制御油圧を用いて前記ライン圧を調整する第1レギュレータバルブとを備えてなることをその要旨としている。
【0027】
上記構成では、第1シーブ圧と第2ソレノイド圧とに基づいて第2レギュレータバルブにより作り出されたライン圧制御油圧を用いて、第1レギュレータバルブにてライン圧の調整が行われるようになる。こうした第1及び第2レギュレータバルブを採用することで、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことの可能なライン圧調整手段を、比較的簡易な構成で具現とすることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2レギュレータバルブにおいて、前記第1シーブ圧の作用する部分の正味のプランジャ面積に対する前記第2ソレノイド圧の作用する部分の正味のプランジャ面積の比は、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインと等しくされてなることをその要旨としている。
【0029】
ここで第1シーブ圧を「Pin」、第2ソレノイド圧を「Psls」、第1シーブ圧の作用する部分の正味のプランジャ面積を「A1」、第2ソレノイド圧の作用する部分の正味のプランジャ面積を「A2」と置くと、第2レギュレータバルブにおける第1シーブ圧の作用力F1及び第2ソレノイド圧の作用力F2は、それぞれ下式(a),(b)にて表すことができる。
【0030】

F1=A1×Pin …(a)
F2=A2×Psls …(b)

ここで上記構成では、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧に対する第2シーブ圧のゲインを「α」と置くと「A2/A1=α」となるように、各プランジャ面積が設定されている。よって、上記作用力F1は、下式(c)にて表わすことができる。
【0031】

F1=A2×Pin/α …(c)

よって上記の如く構成された第2レギュレータバルブでは、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧のゲインαにて第1シーブ圧Pinを除算したもの(Pin/α)と、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力の比較を行うことが可能となる。そして例えば、それら2つの圧力のうちのより高い方を出力するように第2レギュレータバルブを構成すれば、請求項3に記載のようなライン圧調整手段を構成することができるようになる。このように上記構成によれば、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことの可能なライン圧調整手段を、比較的簡易な構成で具現とすることができるようになる。
【0032】
なお、ここでの正味のプランジャ面積とは、第2レギュレータバルブにおける各圧力の有効作用面積を意味している。すなわち、上記正味のプランジャ面積A1は、第2レギュレータバルブにおける第1シーブ圧Pinの有効作用面積を、上記正味のプランジャ面積A2は、第2レギュレータバルブにおける第2ソレノイド圧Pslsの有効作用面積をそれぞれ意味している。
【0033】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2レギュレータバルブは、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインにて前記第1シーブ圧を除算したものと、前記第2ソレノイド圧との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に応じて前記ライン圧制御油圧を作り出し、前記より高い方の圧力に対する前記ライン圧のゲインは、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインと等しくされてなることをその要旨としている。
【0034】
ここで第2ソレノイド圧を「Psls」、第2シーブ圧を「Pout」、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインを「α」と置くと、第2シーブ圧Poutは、下式(d)にて表わすことができる。なお下式(d)での「β2」は、第2シーブ圧調整バルブの機械的構成や寸法、スプリング荷重により定まる定数である。
【0035】

Pout=α×Psls+β2 …(d)

一方、上記構成では、第2レギュレータバルブは、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαにて第1シーブ圧を除算したものと、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力のうち、より高い方に応じてライン圧制御油圧を作り出すように構成されている。こうした第2レギュレータバルブにおける上記2つの圧力のうちのより高い方(MAX(Pin/α,Psls)に対するライン圧制御油圧Psrvのゲインを「ν」とし、第1シーブ圧を「Pin」と置くと、上記構成でのライン圧制御油圧Psrvは、下式(e)にて表すことができる。
【0036】

Psrv=ν×MAX(Pin/α,Psls) …(e)

さらに上記構成では、上記2つの圧力のうちのより高い方(MAX(Pin/α,Psls)に対するライン圧のゲインが、第2シーブ圧調整バルブにおける第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくされている。すなわち、第1レギュレータバルブにおけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインが「α/ν」に設定されるようになっている。こうした上記構成でのライン圧Plは、下式(f)の通りに調整されることとなる。なお下式(f)での「β」は、第1レギュレータバルブの機械的構成や寸法、スプリング荷重により定まる定数である。
【0037】

Pl=α/ν×Psrv+β
=MAX(Pin,α×Psls)+β
=MAX(Pin,Pout−β2)+β …(f)

こうした上式(f)から明かなように、上記構成によれば、必要なシーブ圧が確保されるように、ライン圧を好適に調整することができる。例えば「β>β2」となるように第1レギュレータバルブを構成すれば、ライン圧を常時、第1シーブ圧Pin、第2シーブ圧Poutのうちのより高い方の圧力以上に維持すること(Pl≧MAX(Pin,Pout))が可能となる。
【0038】
請求項8に記載の発明は、請求項5又は6に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第1レギュレータバルブにおける前記ライン圧制御油圧に対する前記ライン圧のゲインは、前記ライン圧制御油圧が所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さく設定されてなることをその要旨としている。
【0039】
上記構成によれば、必要最小限のライン圧を常時確保しながらも、制御領域全体においてライン圧が過剰に設定されないようにすることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2シーブ圧調整バルブのスプールには、前記第2ソレノイド圧に対する抗力として、常時一定の油圧が印加されてなることをその要旨としている。
【0040】
上記構成によれば、第2ソレノイド圧によりライン圧が設定されるときのライン圧と第2シーブ圧との差圧をより大きく確保することができる。そしてこれにより、第1シーブ圧によりライン圧が直接設定され、故にライン圧の制御精度がより高いときのライン圧の余裕代を、すなわちライン圧と第1シーブ圧との差圧を、結果的により小さく設定することが可能となる。
【0041】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2シーブ圧調整バルブのスプールは、前記第2ソレノイド圧に対する抗力を発生するスプリングによって付勢されてなることをその要旨としている。
【0042】
上記構成によっても、第2ソレノイド圧によりライン圧が設定されるときのライン圧と第2シーブ圧との差圧をより大きく確保することができる。そしてこれにより、第1シーブ圧によりライン圧が直接設定され、故にライン圧の制御精度がより高いときのライン圧の余裕代を、すなわちライン圧と第1シーブ圧との差圧を、結果的により小さく設定することが可能となる。
【0043】
さらに上記課題を解決するため、請求項11に記載の発明では、互いにベルトが架け渡されたドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧に応じてそれらプーリの前記ベルトの巻き掛け半径を変更して変速を行う変速機に適用されて、前記シーブ圧の調整に係る油圧制御を行う変速機の油圧制御装置において、前記ドライブプーリに印加される第1シーブ圧を調整するための第1ソレノイド圧を作り出す第1ソレノイドバルブと、前記ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧を調整するための第2ソレノイド圧を作り出す第2ソレノイドバルブと、制御元圧となるライン圧を前記第1ソレノイド圧に応じて調整して、前記第1シーブ圧を作り出す第1シーブ圧調整バルブと、前記ライン圧を前記第2ソレノイド圧に応じて調整して、前記第2シーブ圧を作り出す第2シーブ圧調整バルブと、前記第2シーブ圧と前記第1ソレノイド圧とに基づいて前記ライン圧を調整する前記ライン圧調整手段と、を備えることをその要旨としている。
【0044】
上記構成においても、第1ソレノイドバルブによって作り出される第1ソレノイド圧を調整することで、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧が変更され、第2ソレノイドバルブによって作り出される第2ソレノイド圧を調整することで、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧が変更される。そしてこれらシーブ圧の変更を通じて各プーリのベルト巻き掛け半径が、ひいては変速機の変速比が変更されるようになる。
【0045】
ここで上記構成では、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧と、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧の設定に使用される第1ソレノイド圧とに基づいてライン圧の調整が行われる。このときの第1ソレノイド圧からは、それにより設定される第1シーブ圧を把握することができる。よってこれら第2シーブ圧と第1ソレノイド圧とに基づくことで、第1シーブ圧及び第2シーブ圧に応じたライン圧を設定することができるようになる。そして、こうした第2シーブ圧と第1ソレノイド圧とに基づくライン圧調整は、シーブ圧に対するソレノイド圧のゲインがドライブ側とドリブン側とで等しく揃えられていなくとも、好適に行うことができる。したがって上記構成によれば、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことができるようになる。
【0046】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の変速機の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第1ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧の比が、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲイン以下のときには、前記第1ソレノイド圧に応じて前記ライン圧の調整を行い、そうでないときには、前記第2シーブ圧に応じて前記ライン圧の調整を行うことをその要旨としている。
【0047】
第1ソレノイド圧に対する第2シーブ圧の比が、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧に対する第1シーブ圧のゲイン以下のときには、第1シーブ圧が第2シーブ圧以上となるとの概算が可能である。一方、上記比が上記ゲインよりも大きいときには、第1シーブ圧よりも第2シーブ圧が大きくなると概算することができる。そのため、このときの上記構成の如くライン圧を調整すれば、必要なシーブ圧を確保可能にライン圧を好適に調整することができるようになる。
【0048】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の変速機の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインにて前記第2シーブ圧を除算したものと、前記第1ソレノイド圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いて前記ライン圧の調整を行うことをその要旨としている。
【0049】
第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧に対する第1シーブ圧のゲインにて第2シーブ圧を除算したものが第1ソレノイド圧よりも高ければ、第2シーブ圧は第1シーブ圧よりも高くなり、そうでなければ、第1シーブ圧の方が第2シーブ圧よりも高くなることになるとの概算が可能である。よって上記構成の如くライン圧調整を行えば、ドライブ側、ドリンブン側のうち、よりシーブ圧の高い側に応じてライン圧が調整されるようになり、必要なシーブ圧を確保可能にライン圧を好適に調整することができるようになる。
【0050】
ちなみに、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧に対する第1シーブ圧のゲインを第1ソレノイド圧に乗算したものと、第2シーブ圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧の調整を行うようにライン圧調整手段を構成した場合にも、これと同様のライン圧調整を行うことが可能である。
【0051】
請求項14に記載の発明は、請求項11〜13のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインよりも、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインが大きく設定されてなることをその要旨としている。
【0052】
上記構成では、第1及び第2ソレノイドバルブを共通の構成としながらも、すなわち第1及び第2ソレノイド圧の最大値を同じとしながらも、第1シーブ圧の最大値を、第2シーブ圧の最大値よりも低く抑えることができ、シーブ圧制御の最適化を図ることができる。ドリブン側のシリンダ面積がドライブ側よりも大きくされており、ドリブン側の最大シーブ圧(第2シーブ圧の最大値)をドライブ側よりも小さくすることの可能な変速機への適用が好適である。
【0053】
請求項15に記載の発明は、請求項11〜14のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記ライン圧調整手段は、前記第2シーブ圧と前記第1ソレノイド圧とに基づいてライン圧制御油圧を作り出す第2レギュレータバルブと、そのライン圧制御油圧を用いて前記ライン圧を調整する第1レギュレータバルブとを備えてなることをその要旨としている。
【0054】
上記構成では、第2レギュレータバルブによって第2シーブ圧と第1ソレノイド圧とに基づいて作り出されたライン圧制御油圧を用いて、第1レギュレータバルブにてライン圧の調整が行われるようになる。こうした第1及び第2レギュレータバルブを採用することで、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことの可能なライン圧調整手段を、比較的簡易な構成で具現とすることができる。
【0055】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2レギュレータバルブにおいて、前記第2シーブ圧の作用する部分の正味のプランジャ面積に対する前記第1ソレノイド圧の作用される部分の正味のプランジャ面積の比は、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインと等しくされてなることをその要旨としている。
【0056】
ここで第2シーブ圧を「Pout」、第1ソレノイド圧を「Pslp」、第2シーブ圧の作用される部分の正味のプランジャ面積を「A3」、第1ソレノイド圧の作用される部分の正味のプランジャ面積を「A4」と置くと、第2レギュレータバルブにおける第2シーブ圧の作用力F3及び第1ソレノイド圧の作用力F4は、それぞれ下式(g),(h)にて表すことができる。
【0057】

F3=A3×Pout …(g)
F4=A4×Pslp …(h)

ここで上記構成では、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧に対する第1シーブ圧のゲインを「η」と置くと「A4/A3=η」となるように、各プランジャ面積が設定されている。よって、上記作用力F3は、下式(i)にて表わすことができる。
【0058】

F3=A4×Pout/η …(i)

よって上記の如く構成された第2レギュレータバルブでは、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧のゲインηにて第2シーブ圧Poutを除算したもの(Pout/η)と、第1ソレノイド圧Pslpとの2つの圧力の比較を行うことが可能となる。そして例えば、それら2つの圧力のうちのより高い方を出力するように第2レギュレータバルブを構成すれば、請求項13に記載のようなライン圧調整手段を構成することができるようになる。このように上記構成によれば、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことの可能なライン圧調整手段を、比較的簡易な構成で具現とすることができるようになる。
【0059】
なお、ここでの正味のプランジャ面積とは、第2レギュレータバルブにおける各圧力の有効作用面積を意味している。すなわち、上記正味のプランジャ面積A3は、第2レギュレータバルブにおける第2シーブ圧Poutの有効作用面積を、上記正味のプランジャ面積A4は、第2レギュレータバルブにおける第1ソレノイド圧Pslpの有効作用面積をそれぞれ意味している。
【0060】
請求項17に記載の発明は、請求項15又は16に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第2レギュレータバルブは、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインにて前記第2シーブ圧を除算したものと、前記第1ソレノイド圧との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に応じて前記ライン圧制御油圧を作り出し、前記より高い方の圧力に対する前記ライン圧のゲインは、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインと等しくされてなることをその要旨としている。
【0061】
ここで第1ソレノイド圧を「Pslp」、第1シーブ圧を「Pin」、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインを「η」と置くと、第1シーブ圧Pinは、下式(j)にて表わすことができる。なお下式(j)での「β1」は、第1シーブ圧調整バルブの機械的構成や寸法、スプリング荷重により定まる定数である。
【0062】

Pin=η×Pslp+β1 …(j)

一方、上記構成では、第2レギュレータバルブは、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηにて第2シーブ圧を除算したものと、第1ソレノイド圧Pslpとの2つの圧力のうち、より高い方に応じてライン圧制御油圧を作り出すように構成されている。したがって、こうした第2レギュレータバルブでの、上記2つの圧力のうちのより高い方(MAX(Pout/η,Pslp))に対するライン圧制御油圧Psrvのゲインを「ν」とし、また第2シーブ圧を「Pout」と置くと、上記構成でのライン圧制御油圧Psrvは、下式(k)にて表すことができる。
【0063】

Psrv=ν×MAX(Pout/η,Pslp) …(k)

さらに上記構成では、上記2つの圧力のうちのより高い方(MAX(Pout/η,Pslp))に対するライン圧Plのゲインは、第1シーブ圧調整バルブにおける第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧のゲインηと等しくされている。すなわち、第1レギュレータバルブにおけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインが「η/ν」に設定されるようになっている。よって、上記構成でのライン圧Plは、下式(l)の通りに調整されることとなる。なお下式(l)での「β」は、第1レギュレータバルブの機械的構成や寸法、スプリング荷重により定まる定数である。
【0064】

Pl=η/ν×Psrv+β
=MAX(Pout,η×Pslp)+β
=MAX(Pout,Pin−β1)+β …(l)

こうした上式(l)から明かなように、上記構成によれば、必要なシーブ圧が確保されるように、ライン圧を好適に調整することができる。例えば「β>β1」となるように第1レギュレータバルブを構成すれば、ライン圧を常時、第1シーブ圧Pin、第2シーブ圧Poutのうちのより高い方の圧力以上に維持すること(Pl≧MAX(Pin,Pout))が可能となる。
【0065】
請求項18に記載の発明は、請求項15又は16に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第1レギュレータバルブにおける前記ライン圧制御油圧に対する前記ライン圧のゲインは、前記ライン圧制御油圧が所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さく設定されてなることをその要旨としている。
【0066】
上記構成によれば、必要最小限のライン圧を常時確保しながらも、制御領域全体においてライン圧が過剰に設定されないようにすることができる。
請求項19に記載の発明は、請求項11〜18のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第1シーブ圧調整バルブのスプールには、前記第1ソレノイド圧に対する抗力として、常時一定の油圧が印加されてなることをその要旨としている。
【0067】
上記構成によれば、第1ソレノイド圧によりライン圧が設定されるときのライン圧と第1シーブ圧との差圧をより大きく確保することができる。そしてこれにより、第2シーブ圧によりライン圧が直接設定され、故にライン圧の制御精度がより高いときのライン圧の余裕代を、すなわちライン圧と第2シーブ圧との差圧を、結果的により小さく設定することが可能となる。
【0068】
請求項20に記載の発明は、請求項11〜18のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置において、前記第1シーブ圧調整バルブのスプールは、前記第1ソレノイド圧に対する抗力を発生するスプリングによって常時付勢されてなることをその要旨としている。
【0069】
上記構成によっても、第1ソレノイド圧によりライン圧が設定されるときのライン圧と第1シーブ圧との差圧をより大きく確保することができる。そしてこれにより、第2シーブ圧によりライン圧が直接設定され、故にライン圧の制御精度がより高いときのライン圧の余裕代を、すなわちライン圧と第2シーブ圧との差圧を、結果的により小さく設定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
(第1実施形態)
以下、本発明の変速機の油圧制御装置を具体化した第1実施形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。本実施形態の油圧制御装置は、図11に例示したようなベルト式無段変速機のドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧を制御することで両プーリのプーリ幅を変更し、無段変速機の変速比を制御するものとなっている。
【0071】
なお本実施形態の油圧制御装置の適用される無段変速機では、ドライブプーリ及びドリブンプーリは、印加されるシーブ圧が高められることで、そのプーリ幅が狭まってベルト巻き掛け半径が増大されるように構成されている。よってドライブプーリに印加されるシーブ圧(第1シーブ圧Pin)を高めるとともにドリブンプーリに印加されるシーブ圧(第2シーブ圧Pout)を低めることで変速比γを増速側(ハイ側)に、逆に第1シーブ圧Pinを低めるとともに第2シーブ圧Poutを高めることで変速比γを減速側(ロー側)に変更するようにしている。
【0072】
またこの無段変速機では、ドライブ側のシリンダ面積がドリブン側のシリンダ面積に比して大きく設定されている。そのため、ドライブプーリのプーリ幅の変更は、ドリブンプーリに比して、より低いシーブ圧で行うことができるようになっている。
【0073】
図1に、そうした本実施形態の変速機の油圧制御装置の主要部の構成を示す。この油圧制御装置には、不純物を取り除くためのオイルストレーナ10を介してオイルポンプ11の汲み出した作動油を調圧して、制御元圧となるライン圧Plを作り出す第1レギュレータバルブ12が設けられている。またこの油圧制御装置には、ライン圧Plを減圧して、一定のモジュレータ圧Pmを作り出すモジュレータバルブ13が設けられてもいる。
【0074】
モジュレータバルブ13の出力するモジュレータ圧Pmは、第1ソレノイドバルブ14及び第2ソレノイドバルブ15に供給される。第1及び第2ソレノイドバルブ14,15では、内蔵されたリニアソレノイドに対する通電制御を通じてモジュレータ圧Pmを調圧し、所望の第1ソレノイド圧Pslp及び第2ソレノイド圧Pslsがそれぞれ作り出されるようになっている。なお、本実施形態の変速機の油圧制御装置では、これら第1及び第2ソレノイドバルブ14,15は共通の構成となっている。
【0075】
第1ソレノイドバルブ14の出力する第1ソレノイド圧Pslpは、第1シーブ圧調整バルブ16に送られる。そして第1シーブ圧調整バルブ16は、この第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plを調整し、ドライブプーリに印加される第1シーブ圧Pinを作り出して出力する。なお、ここでの第1ソレノイド圧Pslpと第1シーブ圧Pinとの関係は、次式(4)に示される通りとなる。下式(4)の「η」は、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインを、「β1」は定数をそれぞれ示している。これらゲインη及び定数β1の値は、第1シーブ圧調整バルブ16の機械的構成や寸法、スプリング荷重により決定されるものとなっている。
【0076】

Pin=η×Pslp+β1 …(4)

一方、第2ソレノイドバルブ15の出力する第2ソレノイド圧Pslsは、第2シーブ圧調整バルブ17に送られる。そして第2シーブ圧調整バルブ17は、この第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plを調整して、ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧Poutを作り出して出力する。なお、ここでの第2ソレノイド圧Pslsと第2シーブ圧Poutとの関係は、次式(5)に示される通りとなる。下式(5)の「α」は、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインを、「β2」は定数をそれぞれ示しており、それらの値はやはり、第2シーブ圧調整バルブ17の機械的構成や寸法、スプリング荷重により決定されるものとなっている。
【0077】

Pout=α×Psls+β2 …(5)

なお上述したように、本実施形態の適用されるベルト式無段変速機では、ドライブ側のシリンダ面積がドリブン側のシリンダ面積に比して大きく設定されており、ドライブ側に印加される第1シーブ圧Pinの最大値を、ドリブン側に比して低くすることができる。そのため、本実施形態では、上記第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηよりも、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαを大きく設定するようにしている(η<α)。そしてこれにより、第1及び第2ソレノイドバルブ14,15を共通の構成として、第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsの最大値が同じでありながらも、第1シーブ圧Pinの最大値を、第2シーブ圧Poutの最大値よりも低く抑えるようにしている。
【0078】
以上のように本実施形態の油圧制御装置では、第1及び第2ソレノイドバルブ14,15のリニアソレノイドの通電制御により、ドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加される第1及び第2シーブ圧Pin,Poutを制御してそれらプーリのプーリ幅を可変設定することで、変速機の変速制御を行うようにしている。
【0079】
さて、本実施形態の変速機の油圧制御装置では、上記第1シーブ圧調整バルブ16の出力する第1シーブ圧Pinと、上記第2ソレノイドバルブ15の出力する第2ソレノイド圧Pslsとが第2レギュレータバルブ18に送られる。第2レギュレータバルブ18は、これら第1シーブ圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに応じてモジュレータ圧Pmを調整し、ライン圧制御油圧Psrvを作り出す。このライン圧制御油圧Psrvは、上記第1レギュレータバルブ12に送られ、ライン圧Plの調整に使用されるようになっている。すなわち、本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1シーブ圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに基づいてライン圧Plが調整されるようになっている。
【0080】
続いて、上記のような第2レギュレータバルブ18の詳細を、図2を参照して説明する。なお第2レギュレータバルブ18は、油圧の導入ポートによって、スプールに対する油圧の作用面積、すなわちプランジャ面積が異なるように構成された、スプール型減圧バルブとして構成されている。
【0081】
図2に示されるように、第2レギュレータバルブ18には、第1〜第4の4つのポート(20〜23)が設けられている。そしてその第1ポート20には、第1シーブ圧調整バルブ16の出力した第1シーブ圧Pinが、第2ポート21には、第2ソレノイドバルブ15の出力した第2ソレノイド圧Pslsが、第3ポート22には、モジュレータバルブ13の出力するモジュレータ圧Pmがそれぞれ導入されるようになっている。一方、第4ポート23は、第1レギュレータバルブ12に接続され、この第4ポート23を通じて上記ライン圧制御油圧Psrvが出力されるようになっている。なお、第4ポート23を通じて出力されるライン圧制御油圧Psrvは、第2レギュレータバルブ18の背圧としてフィードバックされるようにもなっている。
【0082】
また第2レギュレータバルブ18の内部には、それぞれ独立して図中上下方向に移動可能に設置された第1スプール24と第2スプール25とが設けられている。第1スプール24は、スプリング26により図中上方に付勢されるとともに、上記第2ポート21に導入された第2ソレノイド圧Pslsにて図中下方に押圧されるようになっている。一方、第2スプール25は、上記第1ポート20に導入された第1シーブ圧Pinにて図中下方に押圧されるとともに、第2ポート21に導入された第2ソレノイド圧Pslsにて図中上方に押圧されるようになっている。そして第1スプール24に作用する図中下方への押圧力に基づいて、第3ポート22から導入されるモジュレータ圧Pmを調圧して、ライン圧制御油圧Psrvを作り出すようにしている。
【0083】
ここで、第2レギュレータバルブ18の各プランジャ面積A1〜A3は、下式(6)に示されるような関係に設定されている。ここでプランジャ面積A1は、第1スプール24における第2ソレノイド圧Pslsの作用する部分の正味のプランジャ面積となっており、プランジャ面積A2は、第2スプール25の第2ソレノイド圧Pslsの作用する部分の正味のプランジャ面積となっている。またプランジャ面積A3は、同じく第2スプール25の第1シーブ圧Pinの作用する部分の正味のプランジャ面積となっている。すなわち、この第2レギュレータバルブ18において、第1シーブ圧Pinの作用される部分の正味のプランジャ面積A3に対する第2ソレノイド圧Pslsの作用される部分の正味のプランジャ面積A1,A2の比は、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくされている。
【0084】

A1:A2:A3=1:1:1/α …(6)

図2(a)は、第2スプール25において、第1シーブ圧Pinの作用による図中下方への押圧力が、第2ソレノイド圧Pslsの作用による図中上方への押圧力に勝るとき(Pin/α>Psls)の第2レギュレータバルブ18の動作態様を示している。同図に示すように、このときの第2スプール25は、より大きい第1シーブ圧Pinの作用による押圧力によって図中下方に移動され、第1スプール24の上端に当接する。そして、第1シーブ圧Pinが第2スプール25を介して第1スプール24に作用するようになる。静的な状態を考えると、このときの第1スプール24には、図中下方への押圧力として、第2スプール25に作用する第1シーブ圧Pinの押圧力から上記スプリング26の付勢力を減じた分の力が印加される。なお、この第2レギュレータバルブ18の第1スプール24では、第3ポート22を通じて導入された調圧後の出力圧(ライン圧制御油圧Psrv)の作用面積であるフィードバックポートの面積A4が、上記プランジャ面積A1,A2と等しくされている。よって、このときの第2レギュレータバルブ18から出力されるライン圧制御油圧Psrvは、下式(7)に示される通りとなる。なお、下式における「ΔP」は、スプリング26の付勢力に基づくライン圧制御油圧Psrvの減圧分を、「ν」は同第2レギュレータバルブ18における出力圧(ライン圧制御油圧Psrv)に対するゲインをそれぞれ示している。
【0085】

Psrv=ν×(Pin/α−ΔP) …(7)

一方、図2(b)は、第2スプール25において、第2ソレノイド圧Pslsの作用による図中上方への押圧力が、第1シーブ圧Pinの作用による図中下方への押圧力に勝るとき(Pin/α<Psls)の第2レギュレータバルブ18の動作態様を示している。同図に示すように、このときの第2スプール25は、より大きい第2ソレノイド圧Pslsの作用による押圧力によって図中上方に移動される。そのため、このときの第1スプール24は、第2スプール25と離間され、同第1スプール24に作用する図中下方への押圧力としては、第2ソレノイド圧Pslsの作用による押圧力のみが印加されるようになる。静的な状態を考えると、このときの第1スプール24には、図中下方への押圧力として、第2ソレノイド圧Pslsの作用による押圧力から上記スプリング26の付勢力を減じた分の力が印加される。よって、このときの第2レギュレータバルブ18から出力されるライン圧制御油圧Psrvは、下式(8)に示される通りとなる。
【0086】

Psrv=ν×(Psls−ΔP) …(8)

なお「Pin/α」及び「Psls」が共に上記「ΔP」よりも小さい場合には、スプール24,25が共に図中上方に移動するため、第2レギュレータバルブ18からは油圧が出力されず、ライン圧制御油圧Psrvは「0」となる。以上を総合すると、こうした第2レギュレータバルブ18の出力するライン圧制御油圧Psrvは、次式(9)に示される通りとなる。
【0087】

Psrv=MAX(0,ν×(MAX(Pin/α,Psls)−ΔP)) …(9)

上述したように、第2レギュレータバルブ18の出力するライン圧制御油圧Psrvは、第1レギュレータバルブ12(図1)に導入される。そしてその第1レギュレータバルブ12では、このライン圧制御油圧Psrvに応じてライン圧Plを調整する。こうした第1レギュレータバルブ12での調整後のライン圧Plとその調整に使用されるライン圧制御油圧Psrvとの関係は、下式(10)に示される通りとなる。なお下式における「β」は定数であり、本実施形態ではその値をライン圧の許容最低値Plminとしている。また、第1レギュレータバルブ12でのライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインは、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαを、上記第2レギュレータバルブ18における出力圧に対するゲインνによって除算した値(α/ν)と等しくされている。ちなみに、こうした定数βやゲイン「α/ν」は、第1レギュレータバルブ12の機械的構成や寸法、スプリング荷重により決定される値となっている。
【0088】

Pl=α/ν×Psrv+β
=α×MAX(0,MAX(Pin/α,Psls)−ΔP)+β …(10)

以上のように、本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαにて第1シーブ圧Pinを除算したもの(Pin/α)と、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧Plの調整が行われる。すなわち、本実施形態では、第2ソレノイド圧Pslsに対する第1シーブ圧Pinの比(Pin/Psls)が、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインα以下のときには、第2ソレノイド圧Pslsに応じたライン圧Plの調整が行われる。一方、そうでないとき、すなわち上記比(Pin/Psls)が上記ゲインαよりも大きいときには、第1シーブ圧Pinに応じてライン圧Plの調整が行われる。
【0089】
図3に、こうした本実施形態における第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsに対する第1及び第2シーブ圧Pin,Pout並びにライン圧Plの変化態様を示す。同図に示される一点鎖線P1は、ライン圧Plが第1シーブ圧Pinに応じて決定されるとしたときのライン圧の値を、同じく一点鎖線P2は、ライン圧Plが第2ソレノイド圧Pslsに応じて決定されるとしたときのライン圧の値を、それぞれ示している。このときの一点鎖線P1,P2は、下式(11),(12)のように表わすことができる。そして実際に設定されるライン圧Plは、「P1」,「P2」のうち、いずれか高い方となる(Pl=MAX(P1,P2))。
【0090】

P1=MAX(Pin−αΔP+Plmin,Plmin) …(11)
P2=MAX(Pout−β2−αΔP+Plmin,Plmin) …(12)

ちなみにライン圧Plは、変速機のプーリ幅の変更以外の用途にも使用されるため、常に一定以上の圧力を確保する必要がある。ここで、第1レギュレータバルブ12におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを全領域において一定の値とすると、ライン圧Plをその許容最低値Plmin以上確保する都合上、そのときの「P1」,「P2」は、同図に点線にて示される通りとなり、低シーブ圧の領域においてライン圧Plが過剰に設定されるようになる。その点、本実施形態では、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくする一方で、ライン圧Plがその許容最低値Plmin以上に維持されるように下限ガードを掛けている。
【0091】
ここで第1レギュレータバルブ12におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを制御領域全体で一定の値「α/ν」としたときに、ライン圧Plがその許容最低値Plminとなるライン圧制御油圧Psrvの値を所定値δとする。このときのライン圧制御油圧Psrvが所定値δ以上の領域では、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインは上記値「α/ν」に設定される。一方、ライン圧制御油圧Psrvがその所定値δ未満の領域では、ライン圧Plはライン圧制御油圧Psrvに関わらず、一律の値(Plmin)に設定される。すなわち、このときのライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインは「0」となっている。したがって、本実施形態の油圧制御装置では、第1レギュレータバルブ12におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、ライン圧制御油圧Psrvが所定値δ未満の領域では、所定値δ以上の領域よりもその値が小さく設定されると言うことができる。
【0092】
こうした本実施形態の変速機の油圧制御装置における変速比γと各油圧(Pl,Pin,Pout,Pslp,Psls等)との関係は、図4に示す通りとなる。同図に示すように、ライン圧Plは、第1シーブ圧Pin及び第2シーブ圧Poutのうち、より高い方のシーブ圧より若干高い圧力に設定される。このように、本実施形態の変速機の油圧制御装置では、ドライブ側とドリブン側とで、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインが相違されているにも関わらず、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができるようになっている。
【0093】
なお、ここで上式(5)での定数β2が正の値となるように第2シーブ圧調整バルブ17が構成されている場合を考える。この場合、第1シーブ圧Pinによりライン圧Plが決定される変速比増速側の領域でのライン圧Plと第1シーブ圧Pinとの差(β−αΔP)は、第2ソレノイド圧Pslsによりライン圧Plが決定される変速比減速側の領域でのライン圧Plと第2シーブ圧Poutとの差(β−αΔP−β2)よりも若干大きくなる。このことは、以下のように制御性の向上に寄与するものとなっている。
【0094】
「Pin/α>Psls」となる上記変速比増速側の領域では、以下の4つの行程(a1)〜(a4)を経てライン圧Plが変更される。
(a1)第1ソレノイドバルブ14にて第1ソレノイド圧Pslpが変更される。
(a2)その第1ソレノイド圧Pslpの変更に応じて第1シーブ圧調整バルブ16にて第1シーブ圧Pinが変更される。
(a3)その第1シーブ圧Pinの変更に応じて第2レギュレータバルブ18にてライン圧制御油圧Psrvが変更される。
(a4)そのライン圧制御油圧Psrvの変更に応じて第1レギュレータバルブ12にてライン圧Plが変更される。
【0095】
一方、「Pin/α<Psls」となる上記変速比減速側の領域では、以下の3つの行程(b1)〜(b3)だけでライン圧Plを変更することができる。
(b1)第2ソレノイドバルブ15にて第2ソレノイド圧Pslsが変更される。
(b2)その第2ソレノイド圧Pslsの変更に応じて第2レギュレータバルブ18にてライン圧制御油圧Psrvが変更される。
(b3)そのライン圧制御油圧Psrvの変更に応じて第1レギュレータバルブ12にてライン圧Plが変更される。
【0096】
以上のように、上記変速比増速側の領域では、ライン圧Plの変更に要する行程が1行程多く、その分、ソレノイド圧の変更に対するライン圧Plの応答性が低くなっている。その点、本実施形態では上記のように、変速比増速側の領域では、第1シーブ圧Pinに対してライン圧Plが、より大きい余裕を持って設定されるため、第1シーブ圧Pinを急速に変更しようとしたときに、ライン圧Plの応答が遅れて第1シーブ圧Pinの変更が遅れてしまうような事態は、生じ難くなっている。なお変速比減速側の領域では、ソレノイド圧の変更に対するライン圧Plの応答性が高いため、第2シーブ圧Poutに対するライン圧Plの余裕代がより少なくても、制御性を好適に確保することが可能である。
【0097】
ちなみに、以上説明した本実施形態では、第1レギュレータバルブ12及び第2レギュレータバルブ18が、上記ライン圧調整手段に相当する構成となっている。
以上説明した本実施形態の変速機の油圧制御装置によれば、次の効果を奏することができる。
【0098】
(1)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1レギュレータバルブ12及び第2レギュレータバルブ18によって、第1シーブ圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに基づいてライン圧Plが調整されている。より具体的には、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαにて第1シーブ圧Pinを除算したもの(Pin/α)と、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧Plを調整するようにしている。すなわち、本実施形態では、第2ソレノイド圧Pslsに対する第1シーブ圧Pinの比(Pin/Psls)が上記ゲインα以下のときには、第2ソレノイド圧Pslsに応じて、そうでないときには、第1シーブ圧Pinに応じて、それぞれライン圧Plの調整が行われる。そのため、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαとを個別設定しながらも、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができる。
【0099】
(2)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηよりも、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαを大きく設定している。そのため、第1及び第2ソレノイドバルブ14,15を共通の構成としながらも、すなわち第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsの最大値を同じとしながらも、第1シーブ圧Pinの最大値を、第2シーブ圧Poutの最大値よりも低く抑えることができ、シーブ圧制御の最適化を図ることができる。
【0100】
(3)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1シーブ圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに基づいてライン圧制御油圧Psrvを作り出す第2レギュレータバルブ18と、そのライン圧制御油圧Psrvを用いてライン圧Plを調整する第1レギュレータバルブ12とを備えている。そしてそれら第1レギュレータバルブ12及び第2レギュレータバルブ18により、上述のような第1シーブ圧Pinと第2ソレノイド圧Pslsとに基づくライン圧Plの調整を行うようにしている。そのため、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことのできる変速機の油圧制御装置を比較的簡易な構成で具現とすることができる。
【0101】
(4)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、その第2レギュレータバルブ18において、第1シーブ圧Pinの作用される部分の正味のプランジャ面積A3に対する第2ソレノイド圧Pslsの作用される部分の正味のプランジャ面積A1,A2の比を上記ゲインαと等しくしている。すなわち、上記面積の比を、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくしている。そのため、上述したようなゲインαにて第1シーブ圧Pinを除算したもの(Pin/α)と、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力のうちのより高い方を用いたライン圧Plの調整を、比較的簡易な構成で実現することができる。
【0102】
(5)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、ライン圧Plがその許容最低値Plmin以上に維持される範囲内で、「Pin/α」と「Psls」との2つの圧力のうちのより高い方のものに対するライン圧Plのゲインを、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくしている。そのため、制御領域全体においてほぼ必要最小限となるようなライン圧Plの調整を的確に行うことができる。
【0103】
(6)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1レギュレータバルブ12におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、ライン圧制御油圧Psrvが所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さくなるように設定している。より具体的には、上記ゲインを一定とした場合にライン圧Plがその許容最低値Plmin未満となってしまう領域では、ライン圧Plが許容最低値Plminとなるように下限ガードを行っている。そのため、制御領域全体においてライン圧Plが過剰に設定されないようにすることができる。
【0104】
(7)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、ライン圧Plの調整用の専用のソレノイドバルブを備えることなく、好適なライン圧制御が可能である。そのため、油圧制御装置のコストを低く抑えることができる。
【0105】
(8)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、変速比増速側の領域では、第1シーブ圧Pinに対してライン圧Plが、より大きい余裕を持って設定されるため、第1シーブ圧Pinの急変に対してライン圧Plが不足するような事態は生じ難くなっている。一方、変速比減速側の領域では、シーブ圧の変更に対するライン圧Plの応答性が高いため、第2シーブ圧Poutに対するライン圧Plの余裕代を小さく設定して、燃費の向上や燃費のばらつきの抑制を図ることができる。
【0106】
(9)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、変速比減速側では、第2ソレノイドバルブ15の出力する第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plを調整するようにしている。そのため、このときには、より少ない行程でライン圧Plを変更可能となり、車両減速中等の減速側への変速比γの移行に際して、ライン圧Plの上昇速度を確保して、速やかな第2シーブ圧Poutの上昇を許容することができるようになる。
【0107】
以上説明した本発明の第1実施形態は、次のように変更して実施することもできる。
(変形例1)
上記実施形態では、「Pin/α」と「Psls」との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に対するライン圧Plのゲインを、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しく設定してライン圧Plの調整を行うようにしていた。このようにゲインを設定した場合には、ライン圧Plの過剰設定を効果的に防止することができる。
【0108】
もっとも、ライン圧Plの過剰設定が顕著とならない限りにおいて、上記より高い方の圧力(MAX(Pin/α,Psls))に対するライン圧Plのゲインεを上記ゲインαよりも若干小さい値に設定することも可能である。図5は、そうしたゲイン設定を行った場合の第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Pout及びライン圧Plの変化態様の一例を示している。
【0109】
ただし、こうした場合には、ライン圧制御油圧Psrvが低い領域では、ライン圧Plが過剰となる。そこで、同図に一点鎖線にて示すように、ライン圧制御油圧Psrvが所定値未満の領域Aでは、所定値以上の領域Bよりも上記ゲインεの値を小さく設定して、ライン圧Plの過剰設定を低減することが望ましい。
【0110】
(変形例2)
上記実施形態では、ライン圧Plが第1シーブ圧Pinにより決定される変速比増速側の領域でのライン圧Plの余裕代(ライン圧Plと第1シーブ圧Pinとの差)を、変速比減速側の領域におけるライン圧Plの余裕代(ライン圧Plと第2シーブ圧Poutとの差)よりも大きく取るようにしていた。この場合、ライン圧Plの応答性のより低い変速比増速側の領域においては、ライン圧Plの余裕代をより大きく取って制御性を確保し、ライン圧Plの応答性のより高い変速比減速側の領域においては、余裕代を切り詰めてライン圧Plをより低く設定することが可能となる。
【0111】
こうした場合、第1シーブ圧Pinに応じてライン圧Plを直接調整する変速比増速側の領域では、第1シーブ圧Pinとライン圧Plとの差圧のばらつきは比較的小さく抑えることが可能である。しかしながら、こうした場合には、第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plを調整する変速比減速側の領域では、第2シーブ圧Poutとライン圧Plとの差圧のばらつきは、より大きくなってしまう。したがって、こうした差圧のばらつきを考慮した場合には、上記変速比減速側の領域でのライン圧Plの余裕代を、変速比増速側の領域におけるライン圧Plの余裕代よりも大きく取るようにすることが望ましい。
【0112】
そうした設定は、上式(5)における定数β2が負の値となるように、第2シーブ圧調整バルブ17を構成することで実現することができる。この場合の変速比γと各油圧との関係は、図6に示す通りとなり、変速比減速側の領域でのライン圧Plの余裕代を、すなわちライン圧Plと第2シーブ圧Poutとの差圧をより大きく確保することができる。そしてこの場合には、ライン圧Plの制御精度の高い、変速比増速側の領域でのライン圧Plの余裕代を、すなわちライン圧Plと第1シーブ圧Pinとの差圧を小さく設定することができる。そのため、変速比増速側の領域では、ライン圧Plをより低く設定することが可能となり、ひいては燃費を向上することや燃費のばらつきを小さくすることができるようになる。
【0113】
図7(a),(b)は、上式(5)における定数β2が負の値となるような第2シーブ圧調整バルブの構成例をそれぞれ示している。図7(a)に示される第2シーブ圧調整バルブの構成例では、そのスプール30に、第2ソレノイド圧Pslsに対する抗力となる一定の油圧Paが常時印加されるように構成されている。一方、図7(b)に示される第2シーブ圧調整バルブの別の構成例では、そのスプール31が、第2ソレノイド圧Pslsに対する抗力を発生するように配置されたスプリング32により常時付勢されるように構成されている。いずれの構成例においても、一定の油圧Paやスプリング32により発生される抗力によって、上式(5)における定数β2が負の値となるようになる。
【0114】
さらに第1実施形態は、以下に列記するように変更して実施することも可能である。
・上記実施形態では、ライン圧Plがその許容最低値Plmin以上に維持される範囲内で、第1レギュレータバルブ12におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを「α/ν」とするようにしていた。ただし、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインはこれに限らず、任意の適宜な値を設定することが可能である。もっとも、ライン圧Plの過剰設定を回避するためには、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、上記ゲイン「α/ν」と同じか、それよりも若干小さい値に設定することが望ましい。
【0115】
・上記実施形態では、第1シーブ圧Pinの作用される部分のプランジャ面積に対する第2ソレノイド圧Pslsの作用される部分のプランジャ面積の比が、第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαと等しくなるように、第2レギュレータバルブ18を構成するようにしていた。そしてこれにより、「Pin/α」及び「Psls」のうち、より高い方を選択して、ライン圧Plの調整に供するようにしていた。もっとも、上記プランジャ面積の比の設定を行わずとも、適宜な減圧機構を備えてそれにより上記と同様の選択が可能であれば、同様のライン圧調整を行うことができる。
【0116】
・上記実施形態では、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαにて第1シーブ圧Pinを除算したものと、第2ソレノイド圧Pslsとの2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧Plの調整を行うようにしていた。そしてこれにより、ドライブ側とドリブン側とでソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインを個別設定しながらも、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができるようにしていた。もっとも、そうした効果は、次の(イ)、(ロ)に示される態様でライン圧Plの調整を行えば、得ることができる。(イ)第2ソレノイド圧Pslsに対する第1シーブ圧Pinの比(Pin/Psls)が、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインα以下のときには、第2ソレノイド圧Pslsに応じてライン圧Plの調整を行う。(ロ)そうでないとき、すなわち上記比(Pin/Psls)が上記ゲインαよりも大きいときには、第1シーブ圧Pinに応じてライン圧Plの調整を行う。例えば、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαを第2ソレノイド圧Pslsに乗算したものと、第1シーブ圧Pinとの2つの圧力のうち、より高い方(MAX(α×Psls,Pin))を用いてライン圧Plの調整を行うようにしても良い。この場合にも、上記実施形態と同様のライン圧調整を行うことができる。
【0117】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の変速機の油圧制御装置を具体化した第2実施形態を、図8及び図9を併せ参照して、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。なお本実施形態において第1実施形態のものと共通、或いはそれに順じた構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0118】
第1実施形態の変速機の油圧制御装置では、変速比増速側の領域では第1シーブ圧Pinに、変速比減速側の領域では第2ソレノイド圧Pslsに、それぞれ応じてライン圧Plを調整するようにしている。そしてこれにより、ライン圧Plの応答性の低い変速比増速側の領域では、ライン圧Plの余裕代を大きく取って制御性を確保し、車両減速中などの変速比減速側の領域では、ライン圧Plの応答性を高くして変速比γの変更速度を確保するようにしていた。もっとも、適用される車両によっては、変速比減速側での制御性の確保や、変速比増速側での変速比γの変更速度の確保が要求されることもある。
【0119】
本実施形態の変速機の油圧制御装置は、そうした要求に応えるようにしたものであり、具体的には、第2シーブ圧Poutと第1ソレノイド圧Pslpとに基づいてライン圧Plを調整するように構成されている。
【0120】
図8は、こうした本実施形態の変速機の油圧制御装置の構成を示したものである。本実施形態の油圧制御装置は、その第1レギュレータバルブ40及び第2レギュレータバルブ41を除いては、第1実施形態のものと共通する構成となっている。ちなみに、本実施形態の油圧制御装置の適用される無段変速機では、ドリブン側のシリンダ面積がドライブ側のシリンダ面積に比して大きく設定されている。そのため、ドリブンプーリのプーリ幅の変更は、ドライブプーリのプーリ幅の変更に比して、より低い油圧で行うことができるようになっている。
【0121】
こうした本実施形態の油圧制御装置に採用される第2レギュレータバルブ41は、第2シーブ圧Poutと第1ソレノイド圧Pslpとに応じてライン圧制御油圧Psrvを作り出し、第1レギュレータバルブ40に出力するように構成されている。なお本実施形態の第2レギュレータバルブ41では、第2シーブ圧Poutの作用される部分の正味のプランジャ面積に対する第1ソレノイド圧Pslpの作用される部分の正味のプランジャ面積の比が、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと等しくされている。なお本実施形態の油圧制御装置では、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηは、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαよりも大きく設定されている。
【0122】
このように構成された第2レギュレータバルブ41の出力するライン圧制御油圧Psrvは、次式(13)に示される通りとなる。なお、本実施形態の第2レギュレータバルブ41においても、その出力するライン圧制御油圧Psrvが「0」未満とならないように下限ガードが施されている。すなわち、「Pout/η」と「Pslp」とが共に「ΔP」よりも小さいときには、第2レギュレータバルブ41からは油圧が出力されず、ライン圧制御油圧Psrvは「0」となる。
【0123】

Psrv=MAX(0,ν×(MAX(Pout/η,Pslp)−ΔP))
…(13)

また本実施形態の油圧制御装置においてその第1レギュレータバルブ40での調整後のライン圧Plとその調整に使用されるライン圧制御油圧Psrvとの関係は、下式(14)に示される通りとなる。なお本実施形態の第1レギュレータバルブ40でのライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインは、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηを、上記第2レギュレータバルブ41におけるライン圧制御油圧Psrvに対するゲインνにて除算した値(η/ν)と等しくされている。ちなみに、上記ライン圧制御油圧Psrvに対する下限ガードにより、第1レギュレータバルブ40により調整されるライン圧Plは、その許容最低値Plmin未満にはならないように設定される。すなわち、本実施形態の油圧制御装置でも、第1レギュレータバルブ40におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインは、ライン圧制御油圧Psrvが所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さく設定されるようになっている。
【0124】

Pl=η/ν×Psrv+β
=η×MAX(0,MAX(Pout/η,Pslp)−ΔP)+β …(14)

図9は、こうした本実施形態の変速機の油圧制御装置における変速比γと各油圧(Pl,Pin,Pout,Pslp,Psls等)との関係を示したものである。同図に示すように、本実施形態においてもライン圧Plは、第1シーブ圧Pin及び第2シーブ圧Poutのうち、より高い方のシーブ圧より若干高い圧力に設定されており、ドライブ側とドリブン側とで、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインが異ならされているにも関わらず、ライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができるようになっている。
【0125】
なお、ここで上式(4)での定数β1が正の値となるように、第1シーブ圧調整バルブ16を構成したとする。この場合には、第2シーブ圧Poutによりライン圧Plが決定される変速比減速側の領域でのライン圧Plと第1シーブ圧Pinとの差(β−αΔP)は、第1ソレノイド圧Pslpによりライン圧Plが決定される変速比増速側の領域でのライン圧Plと第1シーブ圧Pinとの差(β−αΔP−β1)よりも上記定数β1の分だけ大きくなる。そのため、この場合には、ライン圧Plの変更に掛かる行程がより多く、ライン圧Plの応答性のより低い変速比減速側の領域では、ライン圧Plの余裕代をより大きく確保して、制御性を好適に確保することができるようになる。一方、ライン圧Plの応答性のより高い変速比増速側の領域では、ライン圧Plの余裕代をより小さく設定して、ライン圧Plをその分低く抑えることで、燃費の向上や燃費のばらつきの抑制を図ることができる。
【0126】
以上説明した本実施形態では、第1レギュレータバルブ40及び第2レギュレータバルブ41が上記ライン圧調整手段に相当する構成となっている。
以上説明した本実施形態の変速機の油圧制御装置では、以下の効果を奏することができる。
【0127】
(1)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1レギュレータバルブ40及び第2レギュレータバルブ41によって、第1ソレノイド圧Pslpと第2シーブ圧Poutとに基づいてライン圧Plが調整されている。より具体的には、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηにて第2シーブ圧Poutを除算したもの(Pout/η)と、第1ソレノイド圧Pslpとの2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧Plを調整するようにしている。すなわち、第1ソレノイド圧Pslpに対する第2シーブ圧Poutの比(Pout/Pslp)が、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインη以下のときには、第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plの調整を行うようにしている。一方、そうでないとき、すなわち上記比(Pout/Pslp)が上記ゲインηよりも大きいときには、第2シーブ圧Poutに応じてライン圧Plの調整を行うようにしている。そのため、第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと、第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαとを個別設定しながらも、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができる。
【0128】
(2)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第2シーブ圧調整バルブ17における第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Poutのゲインαよりも、第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηを大きく設定している。そのため、第1及び第2ソレノイドバルブ14,15を共通の構成としながらも、すなわち第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsの最大値を同じとしながらも、第2シーブ圧Poutの最大値を、第1シーブ圧Pinの最大値よりも低く抑えることができ、シーブ圧制御の最適化を図ることができる。
【0129】
(3)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第2シーブ圧Poutと第1ソレノイド圧Pslpとに基づいてライン圧制御油圧Psrvを作り出す第2レギュレータバルブ41と、そのライン圧制御油圧Psrvを用いてライン圧Plを調整する第1レギュレータバルブ40とを備えるようにしている。そしてこれら第1レギュレータバルブ40及び第2レギュレータバルブ41により、上述のような第2シーブ圧Poutと第1ソレノイド圧Pslpとに基づくライン圧Plの調整を行うようにしている。そのため、ソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインをドライブ側、ドリブン側で個別設定可能としながらも、ライン圧調整を好適に行うことのできる変速機の油圧制御装置を比較的簡易な構成で具現とすることができる。
【0130】
(4)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、その第2レギュレータバルブ41において、第2シーブ圧Poutの作用される部分の正味のプランジャ面積に対する第1ソレノイド圧Pslpの作用される部分の正味のプランジャ面積の比を、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと等しくしている。そのため、上述したようなゲインηにて第2シーブ圧Poutを除算したもの(Pout/η)と、第1ソレノイド圧Pslpとの2つの圧力のうちのより高い方を用いたライン圧Plの調整を、比較的簡易な構成で実現することができる。
【0131】
(5)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、ライン圧Plが許容最低値Plmin以上に維持される範囲内で、「Pout/η」と「Pslp」との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に対するライン圧Plのゲインを、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと等しくしている。そのため、制御領域全体においてほぼ必要最小限となるようなライン圧Plの調整を的確に行うことができる。
【0132】
(6)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、第1レギュレータバルブ40におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、ライン圧制御油圧Psrvが所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さくなるように設定している。より具体的には、上記ゲインを一定とした場合にライン圧Plがその許容最低値Plmin未満となってしまう領域では、ライン圧Plが許容最低値Plminとなるように下限ガードを行っている。そのため、制御領域全体においてライン圧Plが過剰に設定されないようにすることができる。
【0133】
(7)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、ライン圧Plの調整用の専用のソレノイドバルブを備えることなく、好適なライン圧制御が可能である。そのため、油圧制御装置のコストを低く抑えることができる。
【0134】
(8)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、変速比減速側の領域では、第2シーブ圧Poutに対してライン圧Plが、より大きい余裕代を持って設定されるため、第2シーブ圧Poutの急変に対してライン圧Plが不足するような事態は生じ難くなっている。一方、変速比増速側の領域では、シーブ圧の変更に対するライン圧Plの応答性が高いため、第1シーブ圧Pinに対するライン圧Plの余裕代を小さく設定して、燃費の向上や燃費のばらつきの抑制を図ることができる。
【0135】
(9)本実施形態の変速機の油圧制御装置では、変速比減速側では、第1ソレノイドバルブ14の出力する第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plを調整するようにしている。そのため、このときには、より少ない行程でライン圧Plを変更可能となり、アップシフト時等の増速側への変速比γの移行に際して、ライン圧Plの上昇速度を確保して、速やかな第2シーブ圧Poutの上昇を許容することができるようになる。
【0136】
なお、こうした第2実施形態の油圧制御装置では、第2シーブ圧Poutに応じてライン圧Plが直接調整される変速比減速側の領域における第2シーブ圧Poutとライン圧Plとの差圧のばらつきは、第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plが調整される変速比増速側の領域における第1シーブ圧Pinとライン圧Plとの差圧のばらつきよりも小さくなる。したがって、こうした差圧のばらつきを考慮した場合には、上記変速比増速側の領域でのライン圧Plの余裕代を、変速比減速側の領域におけるライン圧Plの余裕代よりも大きく取るようにすることが望ましい。そうした設定は、上式(4)における定数β1が負の値となるように、第1シーブ圧調整バルブ16を構成することで実現することができる。この場合には、ライン圧Plの制御精度の高い、変速比減速側の領域でのライン圧Plの余裕代を、すなわちライン圧Plと第2シーブ圧Poutとの差圧を小さく設定することができる。そのため、変速比減速側の領域では、ライン圧Plをより低く設定することが可能となり、ひいては燃費を向上することや燃費のばらつきを小さくすることができるようになる。
【0137】
図10(a),(b)は、上式(4)における定数β1が負の値となるような第1シーブ圧調整バルブの構成例をそれぞれ示している。図10(a)に示される第1シーブ圧調整バルブの構成例では、そのスプール50に、第1ソレノイド圧Pslpに対する抗力となる一定の油圧Paが常時印加されるように構成されている。一方、図10(b)に示される第1シーブ圧調整バルブの別の構成例では、そのスプール51が、第1ソレノイド圧Pslpに対する抗力を発生するように配置されたスプリング52により付勢されるように構成されている。いずれの構成例においても、一定の油圧Paやスプリング52により発生される抗力によって、上式(4)における定数β1が負の値となるようになる。
【0138】
また上記第2実施形態は、以下のように変更して実施することも可能である。
・上記実施形態では、ライン圧Plがその許容最低値Plmin以上に維持される範囲内で、第1レギュレータバルブ40におけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを「η/ν」とするようにしていた。ただし、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインはこれに限らず、任意の適宜な値を設定することが可能である。もっとも、ライン圧Plの過剰設定を回避するためには、ライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインを、上記ゲイン「η/ν」と同じか、それよりも若干小さい値に設定することが望ましい。
【0139】
・上記実施形態では、第2シーブ圧Poutの作用される部分のプランジャ面積に対する第1ソレノイド圧Pslpの作用される部分のプランジャ面積の比が、第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηと等しくなるように、第2レギュレータバルブ41を構成するようにしていた。そしてこれにより、「Pout/η」及び「Pslp」のうち、より高い方を選択して、ライン圧Plの調整に供するようにしていた。もっとも、上記プランジャ面積の比の設定を行わずとも、適宜な減圧機構を備えてそれにより上記と同様の選択が可能であれば、同様のライン圧調整を行うことが可能である。
【0140】
・上記実施形態では、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηにて第2シーブ圧Poutを除算したものと、第1ソレノイド圧Pslpとの2つの圧力のうち、より高い方を用いてライン圧Plの調整を行うようにしていた。そしてこれにより、ドライブ側とドリブン側とでソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインを個別設定しながらも、制御領域全体でライン圧Plをほぼ必要最小限に抑えることができるようにしていた。もっとも、そうした効果は、次の(ハ)、(ニ)に示される態様でライン圧Plの調整を行えば、得ることができる。(ハ)第1ソレノイド圧Pslpに対する第2シーブ圧Poutの比(Pout/Pslp)が、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインη以下のときには、第1ソレノイド圧Pslpに応じてライン圧Plの調整を行う。(ニ)そうでないとき、すなわち上記比(Pout/Pslp)が上記ゲインηよりも大きいときには、第2シーブ圧Poutに応じてライン圧Plの調整を行う。例えば、第1シーブ圧調整バルブ16における第1ソレノイド圧Pslpに対する第1シーブ圧Pinのゲインηを第1ソレノイド圧Pslpに乗算したものと、第2シーブ圧Poutとの2つの圧力のうちのより高い方の圧力(MAX(η×Pslp,Pout))を用いてライン圧Plの調整を行うようにしても良い。この場合にも、上記実施形態と同様のライン圧調整を行うことができる。
【0141】
さらに以上説明した各実施形態は、以下に列記する態様で変更して実施することもできる。
・上記各実施形態では、上式(10)、(14)における定数βがライン圧Plの許容最低値Plminとなるように、第1レギュレータバルブ12,40を構成していたが、定数βにこれ以外の任意の値を設定するようにしても良い。そうした場合にも、許容最低値Plmin以上のライン圧Plが常時確保されるようにしておく必要はある。
【0142】
・上記各実施形態での各バルブの構造は、同等の機能を維持可能な限りにおいて、適宜に変更することができる。
・上記各実施形態では、シーブ圧とソレノイド圧とに応じてライン圧制御油圧Psrvを作り出して出力する第2レギュレータバルブ18,41と、そのライン圧制御油圧Psrvに応じてライン圧Plを調整する第1レギュレータバルブ12,40との2つのバルブを用いてライン圧Plを調整するようにしていた。これら2つのバルブと同等の機能を、単独のレギュレータバルブにて実現したり、3つ以上のバルブを用いて実現したりするように、油圧制御装置のバルブ構成を変更するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の変速機の油圧制御装置を具体化した第1実施形態についてその油圧制御装置の主要部の構成を模式的に示した略図。
【図2】同実施形態に採用される第2レギュレータバルブについて、(a)は「Pin/α>Psls」のときの動作態様を、(b)は「Pin/α<Psls」のときの動作態様をそれぞれ模式的に示す略図。
【図3】同実施形態における第1及び第2ソレノイド圧Pslp,Pslsに対する第1及び第2ソレノイド圧Pin,Pout並びにライン圧Plの変化態様を示すグラフ。
【図4】同実施形態における変速比γと各油圧との関係を示すグラフ。
【図5】第1レギュレータバルブにおけるライン圧制御油圧Psrvに対するライン圧Plのゲインの設定態様を変更した同実施形態の変形例について、その第2ソレノイド圧Pslsに対する第2シーブ圧Pout及びライン圧Plの変化態様を示すグラフ。
【図6】「β2<0」とした同実施形態の別の変形例についてその変速比γと各油圧との関係を示すグラフ。
【図7】同変形例について、(a)はその第2シーブ圧調整バルブの一構成例を、(b)は同第2シーブ圧調整バルブの別の構成例をそれぞれ示す略図。
【図8】本発明の変速機の油圧制御装置を具体化した第2実施形態についてその油圧制御装置の主要部の構成を模式的に示した略図。
【図9】同実施形態における変速比γと各油圧との関係を示すグラフ。
【図10】「β1<0」とした同実施形態の別の変形例について、(a)はその第1シーブ圧調整バルブの一構成例を、(b)は同第1シーブ圧調整バルブの別の構成例をそれぞれ示す略図。
【図11】ベルト式無段変速機の構成を模式的に示す略図。
【図12】従来の変速機の油圧制御装置の構成を模式的に示すブロック図。
【図13】同じく従来の変速機の油圧制御装置についてその変速比γと各油圧との関係を示すグラフ。
【図14】同じく従来の変速機の油圧制御装置について、ドライブ側とドリブン側とでソレノイド圧に対するシーブ圧のゲインを異ならせたときの変速比γと各油圧との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0144】
12,40…第1レギュレータバルブ、13…モジュレータバルブ、14…第1ソレノイドバルブ、15…第2ソレノイドバルブ、16…第1シーブ圧調整バルブ、17…第2シーブ圧調整バルブ、18,41…第2レギュレータバルブ、30,31,50,51…スプール、32,52…スプリング、100…ドライブプーリ、101…ドリブンプーリ、102…ベルト、110…油圧制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにベルトが架け渡されたドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧に応じてそれらプーリの前記ベルトの巻き掛け半径を変更して変速を行う変速機に適用されて、前記シーブ圧の調整に係る油圧制御を行う変速機の油圧制御装置において、
前記ドライブプーリに印加される第1シーブ圧を調整するための第1ソレノイド圧を作り出す第1ソレノイドバルブと、
前記ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧を調整するための第2ソレノイド圧を作り出す第2ソレノイドバルブと、
制御元圧となるライン圧を前記第1ソレノイド圧に応じて調整して、前記第1シーブ圧を作り出す第1シーブ圧調整バルブと、
前記ライン圧を前記第2ソレノイド圧に応じて調整して、前記第2シーブ圧を作り出す第2シーブ圧調整バルブと、
前記第1シーブ圧と前記第2ソレノイド圧とに基づいて前記ライン圧を調整するライン圧調整手段と、
を備えることを特徴とする変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記ライン圧調整手段は、前記第2ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧の比が、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲイン以下のときには、前記第2ソレノイド圧に応じて前記ライン圧の調整を行い、そうでないときには、前記第1シーブ圧に応じて前記ライン圧の調整を行う
請求項1に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記ライン圧調整手段は、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインにて前記第1シーブ圧を除算したものと、前記第2ソレノイド圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いて前記ライン圧の調整を行う
請求項1に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインよりも、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインが大きく設定されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記ライン圧調整手段は、前記第1シーブ圧と前記第2ソレノイド圧とに基づいてライン圧制御油圧を作り出す第2レギュレータバルブと、そのライン圧制御油圧を用いて前記ライン圧を調整する第1レギュレータバルブとを備えてなる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記第2レギュレータバルブにおいて、前記第1シーブ圧の作用する部分の正味のプランジャ面積に対する前記第2ソレノイド圧の作用する部分の正味のプランジャ面積の比は、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインと等しくされてなる
請求項5に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項7】
前記第2レギュレータバルブは、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインにて前記第1シーブ圧を除算したものと、前記第2ソレノイド圧との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に応じて前記ライン圧制御油圧を作り出し、
前記より高い方の圧力に対する前記ライン圧のゲインは、前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインと等しくされてなる
請求項5又は6に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項8】
前記第1レギュレータバルブにおける前記ライン圧制御油圧に対する前記ライン圧のゲインは、前記ライン圧制御油圧が所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さく設定されてなる
請求項5又は6に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項9】
前記第2シーブ圧調整バルブのスプールには、前記第2ソレノイド圧に対する抗力として、常時一定の油圧が印加されてなる
請求項1〜8のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項10】
前記第2シーブ圧調整バルブのスプールは、前記第2ソレノイド圧に対する抗力を発生するスプリングによって付勢されてなる
請求項1〜8のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項11】
互いにベルトが架け渡されたドライブプーリ及びドリブンプーリのそれぞれに印加されるシーブ圧に応じてそれらプーリの前記ベルトの巻き掛け半径を変更して変速を行う変速機に適用されて、前記シーブ圧の調整に係る油圧制御を行う変速機の油圧制御装置において、
前記ドライブプーリに印加される第1シーブ圧を調整するための第1ソレノイド圧を作り出す第1ソレノイドバルブと、
前記ドリブンプーリに印加される第2シーブ圧を調整するための第2ソレノイド圧を作り出す第2ソレノイドバルブと、
制御元圧となるライン圧を前記第1ソレノイド圧に応じて調整して、前記第1シーブ圧を作り出す第1シーブ圧調整バルブと、
前記ライン圧を前記第2ソレノイド圧に応じて調整して、前記第2シーブ圧を作り出す第2シーブ圧調整バルブと、
前記第2シーブ圧と前記第1ソレノイド圧とに基づいて前記ライン圧を調整するライン圧調整手段と、
を備えることを特徴とする変速機の油圧制御装置。
【請求項12】
前記ライン圧調整手段は、前記第1ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧の比が、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲイン以下のときには、前記第1ソレノイド圧に応じて前記ライン圧の調整を行い、そうでないときには、前記第2シーブ圧に応じて前記ライン圧の調整を行う
請求項11に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項13】
前記ライン圧調整手段は、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインにて前記第2シーブ圧を除算したものと、前記第1ソレノイド圧との2つの圧力のうち、より高い方を用いて前記ライン圧の調整を行う
請求項11に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項14】
前記第2シーブ圧調整バルブにおける前記第2ソレノイド圧に対する前記第2シーブ圧のゲインよりも、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインが大きく設定されてなる
請求項11〜13のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項15】
前記ライン圧調整手段は、前記第2シーブ圧と前記第1ソレノイド圧とに基づいてライン圧制御油圧を作り出す第2レギュレータバルブと、そのライン圧制御油圧を用いて前記ライン圧を調整する第1レギュレータバルブとを備えてなる
請求項11〜14のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項16】
前記第2レギュレータバルブにおいて、前記第2シーブ圧の作用する部分の正味のプランジャ面積に対する前記第1ソレノイド圧の作用する部分の正味のプランジャ面積の比は、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインと等しくされてなる
請求項15に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項17】
前記第2レギュレータバルブは、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインにて前記第2シーブ圧を除算したものと、前記第1ソレノイド圧との2つの圧力のうちのより高い方の圧力に応じて前記ライン圧制御油圧を作り出し、
前記より高い方の圧力に対する前記ライン圧のゲインは、前記第1シーブ圧調整バルブにおける前記第1ソレノイド圧に対する前記第1シーブ圧のゲインと等しくされてなる
請求項15又は16に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項18】
前記第1レギュレータバルブにおける前記ライン圧制御油圧に対する前記ライン圧のゲインは、前記ライン圧制御油圧が所定値未満の領域では、所定値以上の領域よりもその値が小さく設定されてなる
請求項15又は16に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項19】
前記第1シーブ圧調整バルブのスプールには、前記第1ソレノイド圧に対する抗力として、常時一定の油圧が印加されてなる
請求項11〜18のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。
【請求項20】
前記第1シーブ圧調整バルブのスプールは、前記第1ソレノイド圧に対する抗力を発生するスプリングによって常時付勢されてなる
請求項11〜18のいずれか1項に記載の変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−63020(P2009−63020A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229242(P2007−229242)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】