説明

変速機

【課題】 トルクの変化に対応して自動的に変速し、大トルクを得ることができると共に、変速範囲も大きくすることができる変速機を提供することを目的とする。
【解決手段】 内周面に入力内接歯車4を有し入力軸1と一体に回転する第1回転体3を、入力軸1の出力軸2側の端部に設ける。出力軸2の入力軸1側の端部に第2回転体5を回転自在に外嵌する。第2回転体5から入力軸1側に突出した出力軸2端部13に出力歯車14を外嵌固定すると共に、第2回転体5に、入・出力軸1,2の同一軸心L廻りに公転する第1遊星歯車6と、入力内接歯車4に噛合して入・出力軸1,2の同一軸心L廻りに公転する第2遊星歯車7とを、夫々、入・出力軸1,2の同一軸心Lと平行な軸心廻りに回転自在として付設する。かつ、第1遊星歯車6は、第2遊星歯車7、及び、出力歯車14に、夫々、噛合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、産業機械、建設機械、農業機械、車両機械等に用いられる変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の変速機として、インバーターやサーボモーター等の電気制御による変速機等が知られており、その一例として、自動車の変速機における遊星歯車機構の出力軸に交流モータを配設すると共に、加速制御スイッチをアクセルペダルに連動して配設し、減速制御スイッチの作動に応じて、電源制御装置により出力軸を正回転方向又は逆回転方向に回転付勢するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−24252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の変速機では、低速域においては、低トルクで出力不足であり、効率が悪かった。
【0004】
そこで、本発明は、トルクの変化に対応して自動的に変速し、大トルクを得ることができると共に、変速範囲も大きくすることができる変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る変速機は、同一軸心上に回転自在に枢支された入力軸・出力軸を備えた変速機に於て、内周面に入力内接歯車を有し該入力軸と一体に回転する第1回転体を、該入力軸の出力軸側の端部に該入力軸と上記同一軸心上に設けると共に、上記出力軸の入力軸側の端部に外嵌される円筒部と該円筒部の端部に外鍔状に設けられる基盤部と周方向に所定ピッチで配設される連結部を介して該基盤部に相対面して一体状に連設された円盤部と該円盤部の入力軸側の端面中央部に突設されて入力軸の端面の孔部に回転自在に嵌入された軸部とを有する第2回転体を回転自在に設け、さらに、該第2回転体から入力軸側に突出した出力軸端部に出力歯車を外嵌固定すると共に、上記入力内接歯車に噛合して上記同一軸心廻りに公転する第2遊星歯車を、上記同一軸心と平行な軸心廻りに回転自在として上記円盤部に付設し、かつ、上記同一軸心と平行な軸心廻りに回転自在として上記基盤部に付設されると共に該同一軸心廻りに公転する第1遊星歯車を、上記出力歯車、及び、上記第2遊星歯車に夫々噛合させ、さらに、上記第2回転体の回転速度を変化させる変速手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る変速機は、内周面に入力内接歯車を有し入力軸と一体に回転する第1回転体を、入力軸の出力軸側の端部に入力軸と同一軸心上に設けると共に、出力軸の入力軸側の端部に外嵌される円筒部と円筒部の端部に外鍔状に設けられる基盤部と周方向に所定ピッチで配設される連結部を介して基盤部に相対面して一体状に連設された円盤部と円盤部の入力軸側の端面中央部に突設されて入力軸の端面の孔部に回転自在に嵌入された軸部とを有する第2回転体を回転自在に設け、さらに、第2回転体から入力軸側に突出した出力軸端部に出力歯車を外嵌固定すると共に、入力内接歯車に噛合して同一軸心廻りに公転する第2遊星歯車を、同一軸心と平行な軸心廻りに回転自在として円盤部に付設し、かつ、同一軸心と平行な軸心廻りに回転自在として基盤部に付設されると共に同一軸心廻りに公転する第1遊星歯車を、出力歯車、及び、第2遊星歯車に夫々噛合させ、さらに、第2回転体5の回転速度を変化させる変速手段16を備えているので、入力軸が回転することにより出力軸の反力に見合って第2回転体が公転し、トルクの変化に応じて自動的に変速し、かつ、大トルクを得ることができる。
【0007】
そして、入力軸・出力軸が同一軸心に回転自在なので、両軸の回転が非常に安定しており、振れるのが防止される。
また、第2回転体の回転速度を変化させる変速手段を備えているので、変速手段にて第2回転体の回転速度を所望の速度に変化させることにより、全域定出力で出力軸の増速・減速が行え、変速範囲が広い。例えば、出力軸の回転速度を、入力軸の回転速度の2倍以上に調整可能である。さらに、効率が良いという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1は本発明に係る変速機を示し、この変速機は、回転自在な入力軸1と、該入力軸1と同一軸心L廻りに回転自在な出力軸2と、を備える。入力軸1はその基端側が図示省略の原動機等に接続されて回転駆動され、出力軸2はその先端側が変速駆動される機械等に接続される。
【0009】
入力軸1の出力軸側の端部には、該入力軸1と一体に回転する第1回転体3が設けられている。この第1回転体3は、円盤部3aと短円筒部3bとからなり、短円筒部3bの内周面に入力内接歯車4が設けられている。
【0010】
また、出力軸2には、第2回転体5が回転自在に外嵌されている。この第2回転体5は、出力軸2に外嵌される円筒部5aと、該円筒部5aの端部に外鍔状に設けられる基盤部5bとを備える。
【0011】
しかして、この第2回転体5には、上記同一軸心L廻りに回転する第1・第2遊星歯車6,7が付設されている。
具体的には、この第2回転体5には、基盤部5bに相対面する円盤部5cが設けられ、同一軸心Lに対して対称位置に配設された一対の第1軸8,8が、基盤部5bから円盤部5c側へ突設され、かつ、同一軸心Lに対して対称位置に配設された一対の第2軸9,9が、円盤部5cから基盤部5b側へ突設される。第1軸8・第2軸9の軸心は、夫々、同一軸心Lと平行とされる。円盤部5cは、周方向に所定ピッチで配設される連結部10…(図例では、同一軸心Lを挟んで対称位置に配設された2本のボルト部材)を介して基盤部5bに一体状に連設されている。また、円盤部5cの入力軸1側の端面中央部から突出した軸部11が、入力軸1の端面の孔部12に回転自在に嵌入されている。
【0012】
そして、第2回転体5の一対の第1軸8,8に、夫々、第1遊星歯車6,6が、同一軸心Lと平行な軸心廻りに回転自在に外嵌され、かつ、一対の第2軸9,9に、夫々、第2遊星歯車7,7が、同一軸心Lと平行な軸心廻りに回転自在として外嵌される。
【0013】
また、出力軸2から入力軸1側に突出した端部13に、出力歯車14が外嵌固定される。そして、第1遊星歯車6が、出力歯車14、及び、第2遊星歯車7に夫々噛合されると共に、第2遊星歯車7が、第1回転体3の入力内接歯車4に噛合される。なお、図例でも明らかなように、出力歯車14と第2遊星歯車7とは、同一軸心L方向に相互にずれて配設され、重ならない。
第1遊星歯車6と第2遊星歯車7は、略同一外形寸法に形成されるのが好ましい。また、歯数については、入力内接歯車4の歯数を出力歯車14の歯数より大とするのが好ましく、具体的には、例えば、出力歯車14の歯数を入力内接歯車4の歯数の1/2以下とする。また、第2遊星歯車7の歯数は任意である。
【0014】
また、第2回転体5には、この第2回転体5の回転速度を変化させる変速手段16が付設されている。変速手段16は、滑りキー17を介して外嵌状に第2回転体5に取付けられるプーリー18を備え、このプーリー18と、図示省略の電動機等の回転軸に取付けられた図示省略のプーリーとに、ベルト19が掛け回されている。
【0015】
さらに,プーリー18は、一対のプーリー半体18a,18bからなり、一方のプーリー半体18aは、第2回転体5に固定され、他方のプーリー半体18bは、第2回転体5に対して、一体回転可能かつ軸心方向にスライド自在となっており、図示省略のバネ等の弾発部材によりプーリー半体18aに接近する方向に弾発付勢される。
【0016】
従って、上述の図示省略の電動機等の回転軸が回転すると、プーリー18と第2回転体5が一体に回転し、また、プーリー半体18aに対してプーリー半体18bを接近・離間させることにより、ベルト19を、プーリー18の径方向にスライドさせ、プーリー18及び第2回転体5の回転速度を変化させることができる。
【0017】
しかして、上述の如く構成された変速機によれば、入力軸1が回転して第1回転体3が回転すれば、この第1回転体3の入力内接歯車4に噛合している第2遊星歯車7が自転しつつ同一軸心L廻りに公転するので、出力軸2の反力に見合って第2回転体5が同一軸心L廻りに回転する。このとき、第2回転体5の第1軸8・第2軸9に夫々外嵌された第1遊星歯車6・第2遊星歯車7が公転することにより、第2遊星歯車7に噛合している第1遊星歯車6は、自転しつつ公転するので、この第1遊星歯車6に噛合している出力歯車14が回転して出力軸2が回転することとなる。
【0018】
しかして、本発明の変速機は、第2回転体5の回転速度を変化させる変速手段16を備えているので、入力軸1及び第2回転体5の回転時に於て、この変速手段16にて、第2回転体5の回転(矢印A方向)を入力軸1の回転(矢印A方向)よりも遅らせていくと、歯車の回転速度差により、出力軸2の回転が入力軸1の回転よりも速くなり、入力軸1の回転数の2倍以上の増速が可能である。逆に、第2回転体5の回転を入力軸1の回転よりも速くしていくと、出力軸2の回転が入力軸1の回転よりも遅くなり、停止状態まで減速可能である。
また、第2回転体5の回転を入力軸1の回転と等しくすれば、出力軸2の回転が入力軸1の回転と等しくなる。
このように、変速手段16にて第2回転体5の回転速度を変化させるだけで、全域定出力で出力軸2の変速が行えると共に、変速範囲が広い利点がある。また、変速手段16にて第2回転体5をあまり速く回転させずとも広い変速範囲を実現できるので、効率が良好である。
【0019】
図1,図2に於て、第1回転体3の入力内接歯車4と第2遊星歯車7との噛合部をPとし、第2遊星歯車7と第1遊星歯車6の噛合部をQとし、第1遊星歯車6と出力歯車14の噛合部をRとする。噛合部P,Q,Rは、軸心Lからの半径寸法が順に小さくなっており、しかも、軸心L方向に相互にずれた配置となっている。
本発明の変速機に於て、変速手段16を駆動させて、第2回転体5を入力軸1(第1回転体3)と同速度で回転させた場合、第2回転体5、第1回転体3、第1遊星歯車6、及び第2遊星歯車7は一体状に回転し、噛合部P,Q,Rは停止している(各噛合部P,Q,Rに於ける各歯車の噛合位置は変化しない)。このことから、噛合部P,Q,Rは、Lを軸心とする1個の仮想の大ヘリカルベベルギア(入力軸1側から出力軸2側にかけて縮径状のもの)に小ベベルギアが噛合する噛合部の位置関係にあると言える。各噛合部のトルクは同じ大きさである。
よって、第2回転体5を入力軸1と同速度で回転させた場合に、第2回転体5、第1回転体3、第1遊星歯車6、及び第2遊星歯車7を、スムーズに一体状に回転させることができるので、入力軸1から出力軸2へ効率よく動力が伝達される。
これに対し、本発明を設計変更し、第1遊星歯車6の径を、噛合部Q,噛合部Rに対応する部位によって相違して形成(例えば、噛合部Rの側を小径に形成)したものについて考察する(図示省略)。これによると、第2回転体5を入力軸1(第1回転体3)と同速度で回転させると、噛合部Rに於て回転が生ずる(第1遊星歯車6と出力歯車14の噛合部Rが変化する)。よって、各歯車、回転体等を、本発明の変速機のような一体回転をさせることができない。
以上のことから、本発明の変速機は、遊星歯車の公転時に、出力軸2を非常にスムーズに回転させることができることが明らかである。
【0020】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、例えば、第1・第2遊星歯車6,7は、図例では夫々一対づつ設けられるが、これに限るものでなく増減は自由である。
【0021】
以上のように、本発明に係る変速機は、同一軸心L上に回転自在に枢支された入力軸1・出力軸2を備えたものであって、内周面に入力内接歯車4を有し入力軸1と一体に回転する第1回転体3を、入力軸1の出力軸2側の端部に入力軸1と同一軸心L上に設けると共に、出力軸2の入力軸1側の端部に外嵌される円筒部5aと円筒部5aの端部に外鍔状に設けられる基盤部5bと周方向に所定ピッチで配設される連結部10を介して基盤部5bに相対面して一体状に連設された円盤部5cと円盤部5cの入力軸1側の端面中央部に突設されて入力軸1の端面の孔部12に回転自在に嵌入された軸部11とを有する第2回転体5を回転自在に設け、さらに、第2回転体5から入力軸1側に突出した出力軸2端部13に出力歯車14を外嵌固定すると共に、入力内接歯車4に噛合して同一軸心L廻りに公転する第2遊星歯車7を、同一軸心Lと平行な軸心廻りに回転自在として円盤部5cに付設し、かつ、同一軸心Lと平行な軸心廻りに回転自在として基盤部5bに付設されると共に同一軸心L廻りに公転する第1遊星歯車6を、出力歯車14、及び、第2遊星歯車7に夫々噛合させ、さらに、第2回転体5の回転速度を変化させる変速手段16を備えているので、入力軸1が回転することにより出力軸2の反力に見合って第2回転体5が公転し、トルクの変化に応じて自動的に変速し、かつ、大トルクを得ることができる。
そして、入力軸1・出力軸2が同一軸心L上に回転自在なので、両軸の回転が非常に安定しており、振れるのが防止される。
また、変速手段16にて第2回転体5の回転速度を所望の速度に変化させることにより、全域定出力で出力軸2の増速・減速が行え、変速範囲が広い。例えば、出力軸2の回転速度を、入力軸1の回転速度の2倍以上に調整可能である。さらに、効率が良いという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る変速機の実施の一形態を示す一部断面側面図である。
【図2】歯車の位置関係を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 入力軸
2 出力軸
3 第1回転体
4 入力内接歯車
5 第2回転体
5a 円筒部
5b 基盤部
5c 円盤部
6 第1遊星歯車
7 第2遊星歯車
10 連結部
11 軸部
12 孔部
13 端部
14 出力歯車
16 変速手段
L 同一軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸心(L)上に回転自在に枢支された入力軸(1)・出力軸(2)を備えた変速機に於て、内周面に入力内接歯車(4)を有し該入力軸(1)と一体に回転する第1回転体(3)を、該入力軸(1)の出力軸(2)側の端部に該入力軸(1)と上記同一軸心(L)上に設けると共に、上記出力軸(2)の入力軸(1)側の端部に外嵌される円筒部(5a)と該円筒部(5a)の端部に外鍔状に設けられる基盤部(5b)と周方向に所定ピッチで配設される連結部(10)を介して該基盤部(5b)に相対面して一体状に連設された円盤部(5c)と該円盤部(5c)の入力軸(1)側の端面中央部に突設されて入力軸(1)の端面の孔部(12)に回転自在に嵌入された軸部(11)とを有する第2回転体(5)を回転自在に設け、さらに、該第2回転体(5)から入力軸(1)側に突出した出力軸(2)端部(13)に出力歯車(14)を外嵌固定すると共に、上記入力内接歯車(4)に噛合して上記同一軸心(L)廻りに公転する第2遊星歯車(7)を、上記同一軸心(L)と平行な軸心廻りに回転自在として上記円盤部(5c)に付設し、かつ、上記同一軸心(L)と平行な軸心廻りに回転自在として上記基盤部(5b)に付設されると共に該同一軸心(L)廻りに公転する第1遊星歯車(6)を、上記出力歯車(14)、及び、上記第2遊星歯車(7)に夫々噛合させ、
さらに、上記第2回転体(5)の回転速度を変化させる変速手段(16)を備えたことを特徴とする変速機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−113677(P2007−113677A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305342(P2005−305342)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000177841)
【Fターム(参考)】