説明

外乱抑圧機能を持つ位置制御方法、位置制御装置および媒体記憶装置

【課題】外乱抑圧機能を持つ位置制御装置において、外乱抑圧制御を停止することなく、ループゲインの校正を行う。
【解決手段】外乱抑圧制御のため、ループ特性が変化するフィードバックコントローラ(20)と、外乱周波数に応じた目標ゲインを格納するテーブル(32)と、開ループゲインの校正を行うゲイン校正部(34)とを有する。フィードバックコントローラのループ特性の変化に応じて、テーブルの目標ゲインを用いて、ゲイン校正する。外乱抑圧制御を中断しないで、開ループゲインを校正でき、開ループゲインを外乱に影響されず、正確に校正でき、正確な位置制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外乱を抑圧して、対象物を位置制御する位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置に関し、特に、対象物の外乱による位置ずれを抑制するための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位置制御装置は、対象物を指定した位置に位置制御するものであり、種々の分野で広く利用されている。例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置などの媒体記憶装置において、ヘッドを目標トラックに正確に位置決めすることが記録密度向上のために極めて重要である。
【0003】
この位置制御において、外乱が、位置決め精度へ影響することが、知られている。このような外乱を制御系で抑圧するため、特定周波数を抑圧するフィルタを設ける方法(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)や、オブザーバ制御により、偏心等の外乱を抑圧する方法(例えば、特許文献2、特許文献3参照)が、提案されている。
【0004】
一方、位置決め制御系が、正確に動作するためには、開ループ特性のゲイン(開ループゲイン)の校正が不可欠である。開ループゲインは、フィードバックループを構成する要素の特性変化(温度、経時変化等)により、変動する。この開ループゲインを常時、適切に維持することが、フィードバックループの性能に貢献する。この校正は、装置のパワーオン時や、温度変化時、一定時間経過毎等、適宜行い、開ループゲインを適切に校正する。
【0005】
このゲインを校正する方法として、制御系の、位置又は電流に、正弦波外乱を印加して、正弦波外乱の印加前後の波形を取得し、比較することで、開ループ特性のゲインを測定する方法が知られている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
【特許文献1】USP 6,487,028B1公報
【非特許文献1】R. J. Bickel and M. Tomizuka, 論文“Disturbance observer based hybrid impedance control”(Proceedings of the American Control Conference 1995, pp.729-733)
【特許文献2】特開平7−50075号公報
【特許文献3】特開2000−21104号公報
【特許文献4】特開平11−328891号公報
【特許文献5】特開平8−167160号公報
【特許文献6】特開平11−96704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のゲイン校正方法では、ゲインを調整するためのループ特性の目標ゲインや、ゲインを調整するための正弦波外乱周波数は、固定値であった。即ち、従来のゲイン校正方法は、ゲイン調整時の位置決め制御系の特性は、1種類との前提の元に、ゲイン校正していた。
【0007】
しかしながら、外乱抑圧機能を付与した位置制御系では、抑圧する外乱周波数に応じて、位置制御系の特性が変化する。例えば、適応制御を使用した制御系では、外乱振動が印加された状態で、位置制御系が適応制御で外乱に追従している時には、制御系のループ特性が、外乱印加前と異なる。
【0008】
この適応制御が外乱に追従している最中に、ゲイン調整を実施する場合には、適応制御を中止し、ゲイン調整用の制御系に切り替えることが必要となる。この場合に、適応制御が中止されるため、外部振動を抑圧しきれずに、位置決め精度が悪化する。この結果、ゲイン調整の精度が低下するという問題生じる。
【0009】
即ち、適応制御系等の位置制御系では、外乱に応じて、ループ特性を変化し、外乱を抑圧するため、従来技術では、制御系の開ループゲインの校正を正確に実行するのが困難であった。特に、近年の広い範囲の外乱周波数に適応するという要求に対し、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合には、元のコントローラの特性に影響を与えるため、一層、ゲイン校正を正確に実行することが、困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、外乱適応制御を適用した位置制御系において、開ループゲインの校正を正確に行うための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0011】
又、本発明の他の目的は、外乱が印加されている最中も、開ループゲインの校正を正確に行うための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0012】
更に、本発明の他の目的は、外乱抑圧周波数が外部から設定されても、開ループゲインの校正を正確に行うための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0013】
更に、本発明の他の目的は、広い範囲の外乱周波数に適応する位置制御系でも、開ループゲインの校正を正確に行うための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の位置制御方法は、対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御方法において、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップと、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインをテーブルから引き出すステップと、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップと、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正するステップとを有する。
【0015】
又、本発明の対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御装置は、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正する。
【0016】
又、本発明の媒体記憶装置は、媒体記憶記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記媒体記憶記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正する。
【0017】
更に、本発明は、好ましくは、前記目標ループゲインを引き出すステップは、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出すステップを含み、前記測定ステップは、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップからなる。
【0018】
更に、本発明は、好ましくは、前記測定周波数を引き出すステップは、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出すステップからなる。
【0019】
更に、本発明は、好ましくは、前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなる。
【0020】
更に、本発明は、好ましくは、前記ループゲインの校正中に、前記位置誤差に従う前記外乱周波数の推定を中断するステップを更に有する。
【0021】
更に、本発明は、好ましくは、前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、コントローラの定数を変更するステップと、前記位置誤差に従い、変更された前記コントローラにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなる。
【0022】
更に、本発明は、好ましくは、前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、オブザーバで構成されたコントローラの定数を変更するステップと、前記位置誤差に従い、変更された前記オブザーバにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなる。
【発明の効果】
【0023】
外乱抑圧制御することにより、フィードバックコントローラのループ特性が変化しても、外乱周波数に応じた目標ゲインを用いて、開ループゲインの校正を行うので、外乱抑圧制御を中断しないで、開ループゲインを校正できる。このため、開ループゲインを外乱に影響されず、正確に校正でき、正確な位置制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、位置制御装置、位置制御装置の第1の実施の形態、ループゲイン校正処理、第2の実施の形態、第3の実施の形態、外乱オブザーバの設計、第4の実施の形態、第5の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0025】
(位置制御装置)
図1は、本発明の一実施の形態の位置決め装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1及び図2の磁気ディスクの位置信号の構成図である。
【0026】
図1は、位置制御装置として、ディスク装置に一種である磁気ディスク装置を例に示す。図1に示すように、磁気ディスク装置では、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0027】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。
【0028】
磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる分離型磁気ヘッドで構成される。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0029】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0030】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調と図4以下で説明する外乱抑圧を含むサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理のためのデータ等を格納する。
【0031】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データを記録・再生する。バッファ用ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、USB,ATAやSCSI等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0032】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)16が、円周方向に等間隔に配置される。尚、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線は、サーボ信号16の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は,サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。尚、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0033】
図3の位置信号をヘッド3で読み取り、トラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0034】
例えば,インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は,データの記録再生を行うときの基準となる。尚、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、セクタ番号を設けることもできる。
【0035】
図1のMCU14は、位置検出回路7を通じて、アクチュエータ1の位置を確認して,サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。即ち、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで,目標位置まで移動させることができる。いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。
【0036】
このような,位置を確認するためには,前述の図2のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク,トラック番号を表すグレイコード,インデックス信号,オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。この信号を磁気ヘッドで読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0037】
(位置制御系の第1の実施の形態)
図4は、本発明の位置制御系の第1の実施の形態のブロック図であり、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系のブロック図である。図5は、図4の目標ゲインテーブルの説明図、図6、図7は、図4の外乱適応制御の特性図である。
【0038】
図4にこの位置制御系は、外部から設定された、又は、検出した外乱周波数Fdistに応じて、コントローラの外乱抑圧補償機能を制御するものである。この位置制御系にゲイン調整機能を付与する。誤差演算ブロック24は、目標位置rから観測位置(現在位置)yを差し引き、位置誤差eを演算する。
【0039】
コントローラ20は、位置誤差eに従い、位置誤差eをゼロとするためのプラント22(1,3)の駆動指示値uを演算する。コントローラ20は、例えば、周知のPID制御、PI制御+LeadLag、オブザーバ制御により、駆動指示値uを演算する。
【0040】
ゲイン乗算ブロック26は、設定されたゲイン(開ループゲイン)で、コントローラ20からの駆動指示値uに設定したゲインを乗じて、出力する。図示しないパワーアンプは、この出力を、プラント22(1,3)の駆動電流Iに変換して、プラント22(1,3)を駆動する。
【0041】
外乱抑圧補償ブロック30は、外部から設定された外乱抑圧周波数又は推定した外乱周波数Fdistに応じて、コントローラ20の特性(例えば、定数)を変更し、コントローラ20により、外乱周波数の抑圧特性を付与する。この抑圧特性を、感度関数(1/(1+CP))と開ループ特性(CP)で説明する。尚、Cは、コントローラの特性、Pは、プラントの特性である。
【0042】
図6は、位置制御系の感度関数の周波数特性例を示し、図6の上段に、周波数(Hz)対ゲイン特性(dB)を、下段に、周波数(Hz)対位相特性(deg)を示す。図6に示すように、太線の元のコントローラの特性に対し、抑圧する周波数に応じて、感度関数を、細線のように変更する。ここでは、500Hzの外乱周波数を抑圧する場合の感度関数を示す。
【0043】
図7は、図6に対応した位置制御系の開ループ特性の周波数特性例を示し、図7の上段に、周波数(Hz)対ゲイン特性(dB)を、下段に、周波数(Hz)対位相特性(deg)を示す。図7に示すように、太線の元のコントローラの特性に対し、抑圧する周波数に応じて、開ループ特性を、細線のように変更する。ここでは、500Hzの外乱周波数を抑圧する場合の開ループ特性を示す。
【0044】
このような特定の外乱周波数を抑圧する感度関数又は開ループ特性を実現するコントローラ20については、図12以下で、具体的に説明する。
【0045】
図4に戻り、ゲイン校正ブロック34は、ゲイン校正指示に応じて、所定の周波数の正弦波外乱SDを与えて、印加前後のループ内の信号を検出して、ゲイン乗算ブロック26のゲインを校正するものである。図4では、コントローラ20の入力である位置(位置誤差)に対し、測定用正弦波外乱SDを、フィードバックループに、加算ブロック28から与え、印加前後の位置誤差を観測する。目標ゲインテーブル32は、外乱周波数Fdistに対応する目標ゲインGを格納し、外乱周波数Fdistに応じた目標ゲインGを、ゲイン校正ブロック34に与え、ゲイン校正ブロック34のゲイン校正の基準に供する。
【0046】
この目標ゲインテーブル34は、図5に示すように、外乱周波数Fdist毎に、目標ゲインTG1,TG2,…、TGnwo格納する。この目標ゲインは、前述の図6、図7で説明したように、外乱抑圧制御により、ループ特性が変化するため、これに対応して、決定される。
【0047】
(ゲイン校正処理)
次に、ゲイン校正ブロック34の校正処理を説明する。図8は、ゲイン校正ブロック34が実行するゲイン校正処理フロー図、図9は、その正弦波外乱の説明図である。
【0048】
(S10)ゲイン校正ブロック34は、目標ゲインテーブル34から外乱周波数に対応する目標ゲインTGを得る。
【0049】
(S12)ゲイン校正ブロック34は、正弦波外乱SDを加算ブロック28に印加する。図8は、印加する正弦波外乱SDの波形例を示し、例えば、800Hzの正弦波を用いる。
【0050】
(S14)ゲイン校正ブロック34は、外乱印加前後の信号S1,S2を観測する。図4では、加算ブロック28の入力段を、外乱印加前の信号(位置誤差)S1、加算ブロック28の出力段を、外乱印加後の信号(位置誤差)S2として、観測する(取り込む)。
【0051】
(S16)ゲイン校正ブロック34は、観測した信号S1,S2の各々を、DFT(Digital Fourier Transfer)演算して、各信号S1、S2の大きさ(振幅)を求める。これを、ディスクの回転のN周(例えば、10周)行い、その和ΣS1,ΣS2を計算する。
【0052】
(S18)ゲイン校正ブロック34は、外乱印加前の信号S1の振幅の和ΣS1を、外乱印加後の信号S2の振幅の和ΣS2で割り、開ループゲインTmを計算する。
【0053】
(S20)次に、ゲイン校正ブロック34は、補正ゲインTcを、ステップS10で得た外乱周波数に対応する目標ゲインTGを、計測した開ループゲインTmで割り、計算する。
【0054】
(S22)ゲイン校正ブロック34は、この補正ゲインTcを、ゲイン乗算ブロック26に設定し、校正を終了する。
【0055】
この目標ゲインTGは、外乱周波数個々に設けることが望ましいが、このようにすると、目標ゲインテーブル32のメモリ容量が大きくなる。このため、図5で示したように、テーブル32は、Fr(例えば、回転周波数)の倍数の目標ゲインTGを格納し、その倍数間の周波数の外乱周波数に対しては、補間により、外乱周波数Frに対応する目標ゲインを計算して、使用することもできる。
【0056】
のこのようにして、外乱抑圧制御して、コントローラ20のループ特性が変化しても、外乱周波数に応じた目標ゲインを用いて、開ループゲインの校正を行うので、外乱抑圧制御を中断しないで、開ループゲインを校正できる。このため、開ループゲインを外乱に影響されず、正確に校正できる。
【0057】
(位置制御系の第2の実施の形態)
図10は、本発明の位置制御系の第2の実施の形態のブロック図である。図中、図4で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり。
【0058】
図4と同様に、誤差演算ブロック24は、目標位置rから観測位置(現在位置)yを差し引き、位置誤差eを演算する。コントローラ20は、位置誤差eに従い、位置誤差eをゼロとするためのプラント22(1,3)の駆動指示値uを演算する。コントローラ20は、例えば、周知のPID制御、PI制御+LeadLag、オブザーバ制御により、駆動指示値uを演算する。
【0059】
ゲイン乗算ブロック26は、設定されたゲイン(開ループゲイン)で、コントローラ20からの駆動指示値uに設定したゲインを乗じて、出力する。図示しないパワーアンプは、この出力を、プラント22(1,3)の駆動電流Iに変換して、プラント22(1,3)を駆動する。
【0060】
外乱抑圧補償ブロック30は、外部から設定された外乱抑圧周波数又は推定した外乱周波数Fdistに応じて、コントローラ20の特性(例えば、定数)を変更し、コントローラ20により、外乱周波数の抑圧特性を付与する。
【0061】
ゲイン校正ブロック34は、ゲイン校正指示に応じて、所定の周波数の正弦波外乱SDを与えて、印加前後のループ内の信号を検出して、ゲイン乗算ブロック26のゲインを校正するものである。図11では、コントローラの出力段である電流レベル(駆動指示値)に対し、測定用正弦波外乱SDを、加算ブロック28−1で、フィードバックループ与え、印加前後の電流を観測する。目標ゲインテーブル32は、外乱周波数Fdistに対応する目標ゲインGを格納し、外乱周波数Fdistに応じた目標ゲインGを、ゲイン校正ブロック34に与え、ゲイン校正ブロック34のゲイン校正の基準に供する。
【0062】
この目標ゲインテーブル34は、図5又は図10に示したように、外乱周波数Fdist毎に、目標ゲインTG1,TG2,…、TGnを格納する。この目標ゲインは、前述の図6、図7で説明したように、外乱抑圧制御により、ループ特性が変化するため、これに対応して、決定される。
【0063】
このゲイン校正処理は、観測対象が、出力段の電流レベルである点以外は、図8と同様である。このように、電流レベルの観測でも、ゲイン校正できる。
【0064】
又、図11は、他の目標ゲインテーブルの説明図である。このテーブル32−1は、図5のテーブル32に比し、各外乱周波数Fdistに対し、目標ゲインの他に、測定周波数の欄を設けている。即ち、外乱周波数Fdistに応じて、測定周波数も変更することができる。
【0065】
ここでは、外乱周波数Fdistが、所定の測定周波数fsdである時は、測定周波数を、fsd+α(α≠0)に変更する。即ち、位置制御系が外乱抑圧制御中に、更に、外乱周波数と同じ測定周波数を、外乱として、制御系に印加することは、その外乱周波数を抑圧しているのに、その外乱周波数をループに注入することになる。
【0066】
このため、測定周波数の正弦波外乱も、外乱抑圧機能で抑圧され、正確な開ループゲインを測定できない。従って、測定周波数を、外乱周波数と重ならないように、ずらすことにより、開ループゲインを正確に測定できる。
【0067】
この図11のテーブル32−1は、図4の第1の実施の形態にも、適用できる。
【0068】
(第3の実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施の形態の位置制御系のブロック図、図13は、図12の制御系を現在オブザーバで構成した場合のブロック図、図14は、図13のパラメータテーブルの説明図である。
【0069】
図12は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧する位置制御系を示し、図12において、図4と同一のものは、同一の記号で示してある。
【0070】
即ち、誤差演算ブロック24は、目標位置rから観測位置(現在位置)yを差し引き、位置誤差eを演算する。コントローラ20は、位置誤差eに従い、位置誤差eをゼロとするためのプラント22(1,3)の駆動指示値uを演算する。コントローラ20は、例えば、図13で後述べするオブザーバ制御により、駆動指示値uを演算する。
【0071】
ゲイン乗算ブロック26は、設定されたゲイン(開ループゲイン)で、コントローラ20からの駆動指示値uに設定したゲインを乗じて、出力する。図示しないパワーアンプは、この出力を、プラント22(1,3)の駆動電流Iに変換して、プラント22(1,3)を駆動する。
【0072】
外乱抑圧補償ブロック30は、外部抑圧適応制御系で構成される。この適応制御系は、コントローラ20の位置誤差から適応則に従い外乱周波数Fdist(ω)を推定するω推定部30−1と、推定周波数(ここでは、角周波数ω)に応じたコントローラ20の推定ゲインL,Aを格納するテーブル30−2とを有する。
【0073】
ゲイン校正ブロック34は、ゲイン校正指示に応じて、所定の周波数の正弦波外乱SDを与えて、印加前後のループ内の信号を検出して、ゲイン乗算ブロック26のゲインを校正する。図12では、コントローラの入力段である位置に対し、測定用正弦波外乱SDを、加算ブロック28で、フィードバックループ与え、印加前後の位置を観測する。
【0074】
目標ゲインテーブル32は、外乱周波数Fdistに対応する目標ゲインGを格納し、ω推定部30−1からの外乱周波数Fdistに応じた目標ゲインGを、ゲイン校正ブロック34に与え、ゲイン校正ブロック34のゲイン校正の基準に供する。
【0075】
更に、ω推定部30−1へ、コントローラ20の位置誤差の入力を、前記ゲイン校正中は、カットするためのスイッチSWを設ける。これにより、ゲイン校正中は、ω推定部30−1は、ゲイン構成開始前の推定外乱周波数を維持する。このため、ゲイン校正中は、外乱抑圧制御を実行するが、ゲイン測定の正弦波外乱で、不要な適応制御が行われないように、適応制御を中断する。
【0076】
この実施の形態は、推定した外乱周波数Fdistに応じて、コントローラ20の特性(例えば、定数)を変更し、コントローラ20により、外乱周波数の抑圧特性を付与する。
【0077】
図13の現在オブザーバによるコントローラ20により、より詳細に説明する。図13において、図12で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。図13に示す現在オブザーバは、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で示されるバイアス補償を含む現在オブザーバである。
【0078】
【数1】

【0079】
【数2】

【0080】
【数3】

【0081】
【数4】

【0082】
【数5】

即ち、この実施の形態は、コントローラ20を、コントローラのモデルと外乱モデルに分離した適応制御系の例である。
【0083】
図13において、第1の演算ブロック24は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。第2の演算ブロック40は、実位置誤差er[k]からオブザーバの推定位置x[k]を差し引き、推定位置誤差e[k]を演算する。
【0084】
コントローラモデルでは、この推定位置誤差e[k]は、状態推定ブロック42に入力され、コントローラの推定ゲインLa(L1,L2)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック46から状態量(式(1)の左辺)x[k],v[k]と加算ブロック44で加算され、式(1)のように、推定位置x[k],推定速度v[k]を得る。尚、式(1)では、推定位置誤差e[k]を、(y[k]−x[k])で表示する。
【0085】
この推定値のx[k],v[k]は、第4の演算ブロック48で、状態フィードバックゲイン(一Fa=F1,F2)を乗算され、式(2)のように、アクチュエータ1の第1の駆動値u[k]を得る。一方、加算ブロック44からの式(1)の推定値x[k],v[k]は、第5の演算ブロック52で、推定ゲインAa(式(4)の2×2の(1,0)の行列)を乗じられる。
【0086】
又、第4の演算ブロック48の駆動値u[k]は、第6の演算ブロック50で、推定ゲインBa(式(4)のu[k]に乗じる値)を乗じられる。両乗算結果は、加算ブロック54で、加算され、式(4)の次のサンプルの推定状態量x[k+1],v[k+1]を得る。
【0087】
この次のサンプルの推定状態量は、前述のように、遅延ブロック46に入力し、状態推定ブロック42の推定修正値で、修正される。そして、加算ブロック44からの式(1)の推定値は、第7の演算ブロック56で、推定位置x[k]が取り出され、前述の第2の演算ブロック40に入力する。
【0088】
一方、外乱モデルでは、推定位置誤差e[k]が、外乱の状態推定ブロック60に入力され、推定ゲインLd1(L3,L4,L5)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック62から状態量(式(1)の左辺)と、加算ブロック66で加算され、式(1)のように、推定バイアス値b[k],推定外乱抑圧値z1[k],z2[k]を得る。
【0089】
この推定値b[k],z1[k],z2[k]は、第8の演算ブロック68で、状態フィードバックゲイン(Fd1=F3,F4,F5)を乗算され、式(3)のように、アクチュエータ1の外乱抑圧駆動値を得る。
【0090】
一方、加算ブロック66からの式(1)の推定値のb[k],z1[k],z2[k]は、第9の演算ブロック64で、推定ゲインAd1(式(5)のb[k]のゲイン及び2×2のA行列のゲイン)を乗じられ、遅延ブロック62に入力し、次のサンプルの推定値b[k+1],z1[k+1],z2[k+1]を得る。
【0091】
そして、加算ブロック70で、駆動値u[k]に、外乱抑圧駆動値を差し引き、式(3)の出力駆動値uout[k]を得る。
【0092】
即ち、推定ゲインLを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、且つフィードバックゲインFを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、コントローラモデルと外乱モデルを分離して、設計する。この外乱オブザーバの設計の詳細は、後述する。
【0093】
次に、適応制御系30−1の入力に、前述のオブザーバの推定位置誤差e[k]を与える。オブザーバの推定位置誤差e[k]とは、演算ブロック40の実位置誤差(r−y[k])とオブザーバの推定位置x[k]との差分値のことである。
【0094】
外乱抑圧適応制御系は、適応則に従い外乱周波数を推定するω推定部30−1と、推定周波数(ここでは、角周波数ω)に応じた推定ゲインL,A及び目標ゲインを格納するテーブル30−2(32)とを有する。ω推定部24は、下記適応式(6)により、推定位置誤差e[k]から推定角周波数ω1[k]を計算する。
【0095】
【数6】

この適応式は、1サンプル前の推定角周波数ω1[k−1]を、外乱推定ゲインL4,L5と、外乱推定値z1[k],z2[k]と、推定位置誤差e[k]で、適応的に修正する積分形式のものである。尚、Kaは、所定のゲインである。
【0096】
加算ブロック66の推定値から、外乱推定値z1[k],z2[k]を取り出し、ω推定部30−1に出力する。ω推定部30−1は、式(6)のω適応式の第2項(Ka・・・e[k])を演算する演算部と、推定されたω[k]を、1サンプル遅延する遅延部と、遅延されたω(ω[k−1])と演算部の第2項の演算結果を加算する加算部とを有する。即ち、式(6)の適応式を演算する。
【0097】
一方、テーブル30−2は、図14に示すように、推定外乱周波数Fdist(推定角周波数ω)の値に応じたL1,L2,L3,L4,L5と、a11,a12,a21,a22と、目標ゲインの値を格納する。このテーブル30−2のL1,L2,L3,L4,L5により、状態推定ブロック42、60のL1,L2,L3,L4,L5を、推定角周波数に応じて、変更する。又、このテーブル30−2のa11,a12,a21,a22によって、第9の演算ブロック64のa11,a12,a21,a22(式(5)参照)を、推定角周波数に応じて、変更する。
【0098】
即ち、外乱(角)周波数ωに応じて,状態フィードバックゲインFは変化せずに、外乱モデルおよび推定ゲインを変化させる。ここで、オブザーバの推定ゲインは,ノッチフィルタ状に整形するための外乱モデルのみなく、その他の全ての推定ゲインも影響を受けることである。すなわち、外乱周波数ωや外乱モデルが変化したら、前記の(1)式の外乱推定ゲインL4,L5のみでなく、位置、速度、バイアスのゲインL1,L2,L3のすべてが影響を受ける.
特に,外乱モデルを整形フィルタの形で設計する場合の極配置においてζ2の値が大きい場合、すなわち、周波数特性において、ノッチフィルタ状の抑圧域の幅が広い場合に、影響が大きい。従って、推定ゲインL1からL5まで,すべての推定ゲインを外乱周波数に応じて変化させる必要がある。この推定ゲインの値は、事前に、極配置法により計算して、テーブル30−2に格納しておく。
【0099】
一方、図12と同様に、ゲイン校正ブロック34は、ゲイン校正指示に応じて、所定の周波数の正弦波外乱SDを与えて、印加前後のループ内の信号を検出して、ゲイン乗算ブロック26のゲインを校正する。外乱オブザーバで構成されたコントローラ20の入力段である位置に対し、測定用正弦波外乱SDを、加算ブロック28で、フィードバックループ与え、印加前後の位置を観測する。
【0100】
ここで、目標ゲインテーブルは、図14に示したように、パラメータテーブル30−2と一体に構成される。即ち、パラメータテーブル30−2は、外乱周波数Fdistに対応する目標ゲインGを格納し、ω推定部30−1からの外乱周波数Fdistに応じた目標ゲインGを、ゲイン校正ブロック34に与え、ゲイン校正ブロック34のゲイン校正の基準に供する。
【0101】
更に、ω推定部30−1へ、コントローラ20の位置誤差の入力を、前記ゲイン校正中は、カットするためのスイッチSWを設ける。これにより、ゲイン校正中は、ω推定部30−1は、ゲイン校正開始前の推定外乱周波数を維持する。このため、ゲイン校正中は、外乱抑圧制御を実行するが、ゲイン測定の正弦波外乱で、不要な適応制御が行われないように、適応制御を中断する。
【0102】
このように、コントローラを外乱オブザーバで構成することにより、容易に、所望の外乱抑圧機能を容易に、コントローラに付与できる。又、外乱抑圧適応制御を、推定ゲインの変更で容易に実現できる。
【0103】
又、図15は、他のパラメータテーブルの説明図、図16は、その動作説明図である。このテーブル30−2は、図14のテーブル30−2に比し、各外乱周波数Fdistに対し、推定ゲイン、目標ゲインの他に、測定周波数Fcalの欄を設けている。即ち、外乱周波数Fdistに応じて、測定周波数も変更することができる。
【0104】
ここでは、図16に示すように、外乱周波数Fdistに対し、測定周波数が、αだけ、離れた周波数を設定している。このため、測定周波数を、外乱周波数と重ならないように、ずらすことができ、開ループゲインを正確に測定できる。
【0105】
図17は、更に別のパラメータテーブルの説明図、図18は、その動作説明図である。このテーブル30−2は、図14のテーブル30−2に比し、各外乱周波数Fdistに対し、推定ゲイン、目標ゲインの他に、測定周波数Fcalの欄を設けている。
【0106】
図17では、図11と同様に、外乱周波数Fdistが、測定周波数fsdである時は、測定周波数を、fsd+α(α≠0)又はfsd−αに変更する。更に、図18に示すように、ここを境に、外乱周波数が低域では、測定周波数を,外乱周波数Fdistより高く(例えば、fsd+α)、外乱周波数が高域では、測定周波数を,外乱周波数Fdistより低く(例えば、fsd−α)設定する。
【0107】
即ち、測定周波数を外乱周波数とずらすが、ずらす範囲が、適切でないと、ゲイン校正が困難となる。例えば、測定周波数を低く設定すると、サーボ帯域の下限から外れ、又、測定周波数を高く設定すると、サーボ帯域の上限から外れ、測定自体が困難となる。
【0108】
このため、外乱周波数が低域では、測定周波数を,外乱周波数Fdistより高く(例えば、fsd+α)、外乱周波数が高域では、測定周波数を,外乱周波数Fdistより低く(例えば、fsd−α)設定する。
【0109】
そして、この外乱周波数Fr*K(=fsd)の欄には、2つの測定周波数(fsd+α)、(fsd−α)を設定し、それに対応する目標ゲインGK1,GK2を設定する。これにより、前述の境界において、ゲインの補間の切り替えが可能となる。
【0110】
(外乱オブザーバの設計)
前述の外乱オブザーバの設計手順を説明する。先ず、アクチュエータ1を2重積分モデルとしたときの、オブザーバ制御系は、次式(7)のアナログ式で示される。
【0111】
【数7】

式(7)において、sは、ラプラス演算子、xは、推定位置、vは、推定速度、yは、現在位置、rは、目標位置、L1,L2は、各々位置、速度の推定ゲイン、uは、駆動電流、Bl/mは、アクチュエータ1の力定数である。
【0112】
次に、この制御系は、1/(1+CP)の感度関数を持つが、この感度関数に対して、外乱抑圧を、次式(8)の2次フィルタで定義する。
【0113】
【数8】

外乱モデルは、整形フィルタの分子の式を分母に持つため、次式(9)で表される。
【0114】
【数9】

次に、この外乱モデルを、元のコントローラのオブザーバ(式(7))に実装する方法として3通りの方法が考えられる。
【0115】
第1の方法は、式(9)の外乱モデルをそのまま実装する。即ち、2次フィルタのため、外乱の状態推定量をz1,z2とし、外乱の推定ゲインをL3,L4とすると、式(10)で表される。
【0116】
【数10】

次に、第2の方法は、ω1の二乗の項を、分散させ、式(10)を変形して、式(11)を得る。
【0117】
【数11】

第3の方法は、式(11)のω1の符号を反転したものであり、式(12)で表される。
【0118】
【数12】

いずれの方法を採用しても、設計が可能になる。第2の方法及び第3の方法は、特にデジタル制御系へ上記モデルを変換したときに有効である。即ち、2つの状態変数z1,z2のバランスがとれ,2つの状態変数用のオブザーバの推定ゲインL3、L4の大きさが離れすぎずに、実装できる。
【0119】
このときに,極は、式(8)の整形フィルタの極(式(8)の分母=0から導かれる)と,もとのオブザーバ制御系の設計に用いた極とをあわせて,指定して、推定ゲインL1、L2、L3、L4の値を設計する。
【0120】
更に、この2次フィルタ整形と、従来の定常バイアス推定とをあわせたオブザーバ制御系は、次式(13)で表される。
【0121】
【数13】

このように,最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で,外乱モデルをオブザーバに付加し,設計することが可能になる。したがって,元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく,自由な形状の整形が可能になった。
【0122】
いままでは、アナログ設計における説明であった。一方,デジタル制御系を設計するには、外乱モデルをアナログ空間にてモデル化して拡大モデルを構成し、その拡大モデルをデジタル空間に変換した(離散化した)後、極配置を、デジタル空間で指定する。
【0123】
更に、2次フィルタの特性を外乱モデルとして持つ場合に、拡大モデルを離散系に変換すると,オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0124】
そこで,外乱モデルの一方の変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように、具体的には、アナログ設計と同じ変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように修正する。即ち、離散化した後、拡大モデルを修正する。
【0125】
具体的に説明すると、2次フィルタを使用した式(11)の形のアナログモデルを離散化(所謂、z変換して、SI単位に変換)すると、次式(14)の形になる。
【0126】
【数14】

式(14)において、zは、Z変換子、Tは、サンプリング周期である。ここで,着目すべきは、A行列であるA13,A14,A23,A24である。離散化しただけでは、A14,A24は,いずれも「0」にはならない。即ち、オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0127】
そこで,アナログモデルを離散化した上で,さらに、A行列中の外乱モデルの状態変数z1,z2が、アクチュエータ1に影響を与える係数を置換する。
【0128】
式(14)の例では、A行列を、下記式(15)のように、修正する。
【0129】
【数15】

また,デジタル制御系においては,距離の単位がトラック,電流値は最大電流を1と正規化,さらに、速度や加速度も秒ではなく、サンプル周波数で正規化することも必要になる。
【0130】
同様にして、式(13)のアナログ形式のオブザーバを、現在オブザーバの形式に変換すると、式(16)となる。
【0131】
【数16】

このように、外乱モデルを分離可能な構成に設計した場合には、式(16)を前述の図12で示したように、外乱モデルを分離して、実装できる。
【0132】
即ち、式(16)と式(1)乃至(5)を比較すると、式(16)において、コントローラのモデルを独立させたものが、式(2)、(4)であり、外乱モデル50を分離した式が、式(3)、(5)となる。
【0133】
(第4の実施の形態)
図19は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置制御系の第4の実施の形態のブロック図である。この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、所定の周波数の正弦波状の外乱を抑圧するための制御系である。図19において、図4で説明したものと同一のものは、同一の記号で示してある。
【0134】
インターフェース回路11−1(HDC11内)から与えられた目標位置rと観測位置yとの位置誤差eを、演算器24で演算する。この位置誤差eを、フィードバック制御を行うコントローラ20(Cn)に入力する。コントローラ20は、周知のPID制御、PI制御+LeadLag、オブザーバ制御により、制御電流値Unを出力する。
【0135】
このコントローラ20に対して、外乱の周波数を推定する周波数推定器(ω推定)30と、適応制御により、特定の周波数の外乱を抑圧するための補償器(Cd)20−1を付加する。
【0136】
プラント22(1,3)へは、コントローラ20(Cn)の出力Unと補償器20−1(Cd)の出力Udの和Uを加算ブロック20−2でとり、ゲイン乗算ブロック26を介し供給する。これにより、制御対象22であるアクチュエータ1に駆動されるヘッド3は、外乱に追従するように、位置制御される。即ち、装置が外乱で、振動するため、磁気ディスク4に対し、ヘッド3も外乱に追従するよう位置制御され、ヘッド3と磁気ディスク4の位置関係は、変化しない。
【0137】
この周波数推定器30は、図12のように、位置誤差eを基に、外乱の角周波数ω(=2πf)を推定し、補償器20−1の外乱周波数抑圧の伝達関数に、導入する。補償器20−1は、位置誤差eと、この推定角周波数ωとから正弦波の漸化式(適応制御式)を計算し、補償電流出力Udを計算する。
【0138】
このように、ある範囲の未知周波数の外乱にも対応させるべく、外乱の周波数を検出し、未知周波数の抑圧を行う。この未知の周波数を推定し、未知周波数の外乱を抑圧する方法としては、正弦波の漸化式を仮定したものや、前述の誤差信号eを基に、適応則を導入して、制御対象の駆動量を補正するものが、適用できる。更に、誤差信号eから未知の周波数を推定し、位置レベルでの外乱抑圧信号を生成し、その誤差信号を補正し、コントローラに入力するものも適用できる。
【0139】
ここで、外部から外乱抑圧周波数をインターフェース回路11−1が受け、周波数推定器30の初期値(外乱の角周波数の初期値)として、周波数推定器30にセットする。従って、補償器20−1は、この初期値から適応制御する。
【0140】
即ち、通常、周波数推定器30の初期値は、外乱周波数が未知であることを前提にしているため、追従範囲の真ん中に設定され、位置誤差eから徐々に外乱周波数に到達するが、この実施の形態では、既知の外乱周波数を初期値にセットするため、直ちに、既知の外乱周波数からスタートし、以降、周波数が変化しても、推定周波数は、それに追従する。
【0141】
このような外部から外乱周波数を設定する位置制御系に、ゲイン校正ブロック34と、目標ゲインテーブル32を設ける。ゲイン校正ブロック34は、ゲイン校正指示に応じて、所定の周波数の正弦波外乱SDを与えて、印加前後のループ内の信号を検出して、ゲイン乗算ブロック26のゲインを校正する。図19では、コントローラの入力段である位置に対し、測定用正弦波外乱SDを、加算ブロック28で、フィードバックループ与え、印加前後の位置を観測する。
【0142】
目標ゲインテーブル32は、外乱周波数Fdistに対応する目標ゲインGを格納し、ω推定部30からの外乱周波数Fdistに応じた目標ゲインGを、ゲイン校正ブロック34に与え、ゲイン校正ブロック34のゲイン校正の基準に供する。
【0143】
更に、ω推定部30への位置誤差の入力を、前記ゲイン校正中は、カットするためのスイッチSWを設ける。これにより、ゲイン校正中は、ω推定部30は、ゲイン校正開始前の推定外乱周波数を維持する。このため、ゲイン校正中は、外乱抑圧制御を実行するが、ゲイン測定の正弦波外乱で、不要な適応制御が行われないように、適応制御を中断する。
【0144】
このように、外部から外乱周波数を設定する位置制御系にも、適用できる。
【0145】
(第5の実施の形態)
図20は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置制御系の第5の実施の形態のブロック図である。この位置制御系は、外乱周波数を検出し、所定の周波数の正弦波状の外乱を抑圧するための制御系である。図20において、図4、図12、図19と同一のものは、同一の記号で示してある。
【0146】
図20において、インターフェース回路11−1(HDC11内)から与えられた目標位置rと観測位置yとの位置誤差eを、演算器24で演算する。この位置誤差eを、フィードバック制御を行うコントローラ20(Cn)に入力する。コントローラ20は、周知のPID制御、PI制御+LeadLag、オブザーバ制御により、制御電流値Unを出力する。
【0147】
このコントローラ20に対して、外乱の周波数を対応する角周波数に変換する周波数変換器30と、適応制御により、特定の周波数の外乱を抑圧するための補償器(Cd)20−1を付加する。
【0148】
プラント22(1,3)へは、コントローラ20(Cn)の出力Unと補償器20−1(Cd)の出力Udの和であるUを、加算ブロック20−2、ゲイン乗算ブロック26を介し、供給する。これにより、制御対象22であるアクチュエータ1に駆動されるヘッド3は、外乱に追従するように、位置制御される。即ち、装置が外乱で、振動するため、磁気ディスク4に対し、ヘッド3も外乱に追従するよう位置制御され、ヘッド3と磁気ディスク4の位置関係は、変化しない。
【0149】
この周波数変換器30は、角周波数ω(=2πf)を、補償器20−1の外乱周波数抑圧の伝達関数に、導入する。補償器20−1は、位置誤差eと、この推定角周波数ωとから正弦波の漸化式(適応制御式)を計算し、補償電流出力Udを計算する。
【0150】
このように、ある範囲の周波数の外乱にも対応させるべく、外乱の周波数に応じて、変化する外乱周波数の抑圧を行う。この方法としては、正弦波の漸化式を仮定したものや、前述の誤差信号eを基に、適応則を導入して、制御対象の駆動量を補正するものが、適用できる。更に、誤差信号eから未知の周波数を推定し、位置レベルでの外乱抑圧信号を生成し、その誤差信号を補正し、コントローラに入力するものも適用できる。
【0151】
この実施の形態は、外部から外乱抑圧周波数をインターフェース回路11−1が受け、周波数変換器30にセットする。従って、補償器20−1は、この初期値(角周波数)から適応制御する。
【0152】
従って、既知の外乱周波数を初期値にセットするため、直ちに、既知の外乱周波数からスタートし、以降、周波数が変化しても、補償器20−1の補償電流Udは、それに追従する。
【0153】
このように、位置決め制御系が、選択的に抑圧する外乱周波数の設定値に応じて、内部定数(図5、図6の例では、角周波数)または構成を違える手段を備えており、また、外乱周波数は、インターフェース11−1を通じて、外部から参照または設定を可能とする。
【0154】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、位置制御装置を、磁気ディスク装置のヘッド位置決め装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置等の他の媒体記憶装置や他の対象物を位置制御する装置にも適用できる。又、外乱周波数の数は、必要に応じて、適宜採用でき、それに応じて、外乱モデルの数も適宜採用できる。更に、2次フィルタで実施例を説明したが、1次フィルタや、1次フィルタと2次フィルタの組み合わせを、必要な抑圧周波数に応じて、使用することもできる。
【0155】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0156】
(付記1)対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御方法において、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップと、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインをテーブルから引き出すステップと、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップと、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正するステップとを有することを特徴とする外乱抑圧機能を持つ位置制御方法。
【0157】
(付記2)前記目標ループゲインを引き出すステップは、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出すステップを含み、前記測定ステップは、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップからなることを特徴とする付記1の位置制御方法。
【0158】
(付記3)前記測定周波数を引き出すステップは、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出すステップからなることを特徴とする付記1の位置制御方法。
【0159】
(付記4)前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなることを特徴とする付記1の位置制御方法。
【0160】
(付記5)前記ループゲインの校正中に、前記位置誤差に従う前記外乱周波数の推定を中断するステップを更に有することを特徴とする付記4の位置制御方法。
【0161】
(付記6)前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、コントローラの定数を変更するステップと、前記位置誤差に従い、変更された前記コントローラにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなることを特徴とする付記4の位置制御方法。
【0162】
(付記7)前記駆動値の演算ステップは、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、オブザーバで構成されたコントローラの定数を変更するステップと、前記位置誤差に従い、変更された前記オブザーバにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップからなることを特徴とする付記4の位置制御方法。
【0163】
(付記8)対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御装置において、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正することを特徴とする位置制御装置。
【0164】
(付記9)前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出し、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定することを特徴とする付記8の位置制御装置。
【0165】
(付記10)前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出すことを特徴とする付記8の位置制御装置。
【0166】
(付記11)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記8の位置制御装置。
【0167】
(付記12)前記制御部は、前記ループゲインの校正中に、前記位置誤差に従う前記外乱周波数の推定を中断することを特徴とする付記11の位置制御装置。
【0168】
(付記13)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、コントローラの定数を変更し、前記位置誤差に従い、変更された前記コントローラにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記11の位置制御装置。
【0169】
(付記14)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、オブザーバで構成されたコントローラの定数を変更し、前記位置誤差に従い、変更された前記オブザーバにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記11の位置制御装置。
【0170】
(付記15)記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正することを特徴とする媒体記憶装置。
【0171】
(付記16)前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出し、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定することを特徴とする付記15の媒体記憶装置。
【0172】
(付記17)前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出すことを特徴とする付記15の媒体記憶装置。
【0173】
(付記18)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記15の媒体記憶装置。
【0174】
(付記19)前記制御部は、前記ループゲインの校正中に、前記位置誤差に従う前記外乱周波数の推定を中断することを特徴とする付記18の媒体記憶装置。
【0175】
(付記20)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、コントローラの定数を変更し、前記位置誤差に従い、変更された前記コントローラにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記18の媒体記憶装置。
【0176】
(付記21)前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、オブザーバで構成されたコントローラの定数を変更し、前記位置誤差に従い、変更された前記オブザーバにより、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算することを特徴とする付記18の媒体記憶装置。
【産業上の利用可能性】
【0177】
外乱抑圧制御することにより、フィードバックコントローラのループ特性が変化しても、外乱周波数に応じた目標ゲインを用いて、開ループゲインの校正を行うので、外乱抑圧制御を中断しないで、開ループゲインを校正できる。このため、開ループゲインを外乱に影響されず、正確に校正でき、正確な位置制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の一実施の形態を示す媒体記憶装置の構成図である。
【図2】図1の媒体記憶の位置信号の説明図である。
【図3】図2の位置信号の詳細説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の位置制御系のブロック図である。
【図5】図4の目標ゲインテーブルの説明図である。
【図6】図4のフィードバックループの感度関数の特性図である。
【図7】図4のフィードバックループの開ループ特性図である。
【図8】図4のゲイン校正ブロックのゲイン校正処理フロー図である。
【図9】図8のゲイン校正処理の正弦波外乱の説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の位置制御系のブロック図である。
【図11】図10の実施の形態の目標ゲインテーブルの説明図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態の位置制御系のブロック図である。
【図13】図12のコントローラを現在オブザーバで構成した実施の形態のブロック図である。
【図14】図13の実施の形態のパラメータテーブルの構成図である。
【図15】図13の実施の形態の他のパラメータテーブルの構成図である。
【図16】図15のパラメータテーブルの測定周波数の説明図である。
【図17】図13の実施の形態の更に他のパラメータテーブルの構成図である。
【図18】図17のパラメータテーブルの測定周波数の説明図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態の位置制御系のブロック図である。
【図20】本発明の第5の実施の形態の位置制御系のブロック図である。
【符号の説明】
【0179】
1 アクチュエータ
2 スピンドルモータの回転軸
3 ヘッド
4 ディスク
5 スピンドルモータ
6 アクチュエータのVCM駆動回路
7 位置復調回路
8 スピンドルモータの駆動回路
9 バス
10 データの記録再生回路
11 ハード媒体記憶コントローラ
12 MCUのRAM
13 MCUのROM
14 マイクロコントローラユニット
15 ハード媒体記憶コントローラのRAM
16 位置信号
20 外乱抑圧コントローラ
22 プラント
24 位置誤差演算ブロック
26 ゲイン乗算ブロック
28 測定周波数信号加算ブロック
30 外乱抑圧補償ブロック
32 目標ゲインテーブル
34 ゲイン校正ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御方法において、
前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、
前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する演算ステップと、
前記外乱周波数に応じた目標ループゲインをテーブルから引き出すステップと、
前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップと、
前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正するステップとを有する
ことを特徴とする外乱抑圧機能を持つ位置制御方法。
【請求項2】
前記目標ループゲインを引き出すステップは、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出すステップを含み、
前記測定ステップは、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定するステップからなる
ことを特徴とする請求項1の位置制御方法。
【請求項3】
前記測定周波数を引き出すステップは、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出すステップからなる
ことを特徴とする請求項1の位置制御方法。
【請求項4】
対象物をアクチュエータにより所定の位置に位置制御する位置制御装置において、
前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、
前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、
前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正する
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出し、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定する
ことを特徴とする請求項4の位置制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数と重ならない測定周波数を引き出す
ことを特徴とする請求項4の位置制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する
ことを特徴とする請求項4の位置制御装置。
【請求項8】
記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、
前記記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差から所定のフィードバックループにより、外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する制御部と、
前記外乱周波数に応じた目標ループゲインを格納するテーブルとを有し、
前記制御部は、前記外乱周波数に応じた前記目標ループゲインを、前記テーブルから引き出し、前記フィードバックループに測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定し、前記測定したループゲインと前記目標ループゲインとから、前記制御値演算ステップのループゲインを校正する
ことを特徴とする媒体記憶装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記テーブルから、前記外乱周波数に応じた測定周波数を引き出し、前記フィードバックループに引き出した測定周波数の外乱を加え、前記フィードバックループのループゲインを測定する
ことを特徴とする請求項8の媒体記憶装置。
【請求項10】
前記制御部は、適応制御により、前記位置誤差に従い、前記外乱周波数を推定し、前記推定した外乱周波数に応じて、前記外乱周波数成分を抑圧した制御値を演算し、且つループゲインを乗じて、前記アクチュエータの駆動値を演算する
ことを特徴とする請求項8の媒体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−70933(P2008−70933A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246451(P2006−246451)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】