説明

多層粘着シート及び多層粘着シートを用いた電子部品の製造方法。

【課題】ダイシング時にウエハをリングフレームに固定する粘着シートの機能と、チップをリードフレームなどに固定する接着機能を兼ね備えたダイアタッチ一体型の粘着シートにおいて、ダイシング工程における切削屑の発生を防止又は低減可能な多層粘着シートを提供する。
【解決手段】基材フィルム106と、該基材フィルムの一方の面に積層してなる粘着剤層103と、さらに該粘着剤層に積層されたダイアタッチフィルム105とを備え、該基材フィルムをプロピレン系共重合体で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層粘着シート及び多層粘着シートを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造方法の一つに、ウエハや絶縁基板上に複数の回路パターンが形成された電子部品集合体を粘着シートに貼り付ける貼付工程と、貼り付けられたウエハや電子部品集合体を個々に切断してチップ化する切断・分離工程(ダイシング工程)と、切断されたチップを粘着シートからピックアップするピックアップ工程と、ピックアップしたチップの底面に接着剤を塗布した後にこの接着剤でチップをリードフレーム等に固定する固定工程を有する製造方法が知られている。
【0003】
切断工程にあっては、ウエハや電子部品集合体を粘着シートに貼り付け、更に粘着シートをリングフレームに固定してから個々のチップに切断し分離(ダイシング)する方法が知られている。
【0004】
この製造方法で用いられる粘着シートにダイアタッチフィルムを積層することにより、ダイシング用の粘着シートの機能と、チップをリードフレーム等に固定する接着剤の機能を兼ね備えた粘着シート(ダイアタッチフィルム一体型シート)を用いる方法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。ダイアタッチフィルム一体型シートを電子部品の製造に用いることにより、ダイシング後の接着剤の塗布工程を省略できる。
【0005】
ダイアタッチフィルム一体型シートは、チップとリードフレームの接着に接着剤を用いる方法に比べ、接着剤部分の厚み制御や接着剤のはみ出し抑制に優れている。ダイアタッチフィルム一体型シートは、チップサイズパッケージ、スタックパッケージ、及びシステムインパッケージ等の電子部品の製造に利用されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−049509号公報
【特許文献2】特開2007−246633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ダイアタッチフィルム一体型シートの基材としては、一般的にポリエチレン系の樹脂組成物が使用されているが、ダイシング工程に基材由来の切削屑、及びダイアタッチフィルム由来の切削屑が発生する場合があった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ダイシング工程時における切削屑の発生を防止又は低減し、高効率に信頼性の高いダイシング工程を行い、高品質な電子部品を製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に積層してなる粘着剤層と、さらに該粘着剤層に積層されたダイアタッチフィルムと、を備え、該基材フィルムがプロピレン系共重合体で形成されている多層粘着シートが提供される。
【0010】
上記構成からなる多層粘着シートをダイシング工程に供することにより、ダイシング工程時における切削屑の発生を抑制でき、高効率に信頼性の高いダイシング処理を行い、高品質な電子部品を製造できる。なお、上記の多層粘着シートは本発明の一態様であり、本発明の多層粘着シートを用いた電子部品の製造方法も、同様の技術的特徴を有し、同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成の多層粘着シートをダイシング工程に供することにより、ダイシング工程時における切削屑の発生を抑制でき、高効率に信頼性の高いダイシング工程を行い、高品質な電子部品を製造できる。これらの結果、電子部品の信頼性の向上、生産性の向上等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る多層粘着剤シート及び多層粘着シートを用いた電子部品の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<用語の説明>
本明細書において、単量体単位とは単量体に由来する構造単位を意味する。本明細書の部及び%は、特に記載がない限り質量基準とする。
本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0014】
<実施形態の概要>
図1(1)は、本発明の一実施形態の粘着シート構成を説明する断面の概念図である。本実施形態の多層粘着シート(ダイアタッチフィルム一体型シート)100は、図1(1)に示すように、基材フィルム106と、その基材フィルム106に後述する粘着剤を塗布してなる粘着剤層103と、その粘着剤層103上に積層されてなるダイアタッチフィルム105と、を備える。
【0015】
ここで、上記の基材フィルム106と、基材フィルム106に後述する粘着剤を塗布してなる粘着剤層103と、を併せて、粘着シート110と呼ぶことにする。すなわち、多層粘着シート100は、粘着シート110と、その粘着シート110の粘着剤層103側に積層されてなるダイアタッチフィルム105と、を備える。
【0016】
そして、上記基材フィルム106はプロピレン系共重合体で形成されている。
【0017】
(基材フィルム)
基材フィルム106としてプロピレン系共重合体を採用した理由は、このプロピレン系共重合体を採用することにより、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を抑制することができるためである。このプロピレン系共重合体としては、例えばプロピレンと他成分とのランダム共重合体、プロピレンと他成分とのブロック共重合体、プロピレンと他成分の交互共重合体がある。他成分としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン等のα−オレフィン、少なくとも2種以上のα−オレフィンからなる共重合体、スチレン−ジエン共重合体等が挙げられる。これらの中でも1−ブテンが好ましい。これにより、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を特に抑制することができる。
【0018】
プロピレン系共重合体を重合する方法としては、例えば溶媒重合法、バルク重合法、気相重合法、逐次重合方法等が挙げられるが、一段目でプロピレン単独重合体またはプロピレンと少量のエチレンおよび/またはα−オレフィンとのランダム共重合体を製造後、二段目以降でα−オレフィンの単独重合体またはプロピレンと少量のエチレンおよび/またはα−オレフィンとのランダム共重合体を製造する、少なくとも二段以上の逐次重合方法が好ましい。
【0019】
上記プロピレン系共重合体を含む樹脂組成物には、上述したプロピレン系共重合体以外に本発明の目的を損なわない範囲で結晶核剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両イオン性の一般に公知である帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、染料、顔料、難燃剤、充填剤、石油樹脂等の添加剤を添加しても良い。
【0020】
基材フィルム106の成型方法は特に限定されず、例えばカレンダー、Tダイ押出し、インフレーション、及びキャスティング等が挙げられる。
【0021】
基材フィルム106の加工性を向上させるために、少なくとも基材フィルム106の片面にシボ加工やエンボス加工を施して凹凸を形成することが好ましい。好ましい面粗度は算術平均Ra値が0.3μm以上2.0μm以下であり、0.5μm以上1.5μm以下とすることがより好ましい。面粗度が0.3μm以上であれば、基材フィルム製膜後に基材の巻き戻しが容易ある。また、面粗度が2.0μm以下であれば、視認性が損なわれないため、ダイシング時の加工精度を向上させることができる。
【0022】
基材フィルム106の厚みは特に限定されないが、50μm以上250μm以下が良い。好ましくは70μm以上、150μm以下がよい。基材フィルム106の厚みが50μm以上であれば、エキスパンド時に基材フィルムの切断が生じにくくなる。また、基材フィルム106の厚みが250μm以下であれば、半導体ウエハをダイシング処理する場合にエキスパンド性に優れる傾向にある。また、重量が増大を抑えられるので、コスト性、作業性の両面からも実用的である。
【0023】
多層粘着シート100には、ダイアタッチフィルム105剥離時における帯電を防止するために、基材フィルム106の片面又は両面に帯電防止剤を塗布して帯電防止処理を施してもよい。
【0024】
帯電防止剤としては、例えば四級アミン塩単量体が好適に用いられる。四級アミン塩単量体としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物等が挙げられ、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好適に用いられる。
【0025】
基材フィルム106の表面には、ブロッキング防止等の目的で滑剤を塗布してよい。滑剤は基材フィルム中に30質量%を上限として練り込んでもよい。滑剤としては、特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂や(変性)シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック、及び二硫化モリブデン等が挙げられる。電子部品の製造はクリーンルームで行なわれるため、滑剤としてシリコーン化合物又はフッ素樹脂を用いることが好ましい。シリコーン化合物の中でも特にシリコーングラフと単量体を有する共重合体は帯電防止層との相溶性が良いため、好適に用いられる。
【0026】
滑剤及び帯電防止剤の基材への用い方は特に限定されないが、例えば一方の面に粘着剤が塗布された基材フィルムの他方の面に積層してもよく、基材を構成する樹脂を作製する際に添加しても良い。
【0027】
(粘着剤層)
粘着剤層103を形成する粘着剤としては、従来のダイシング用粘着シートに採用される粘着剤、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステルモノマーを重合させたポリマーの他、これらモノマーと共重合可能な不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル)とを共重合させたコポリマーが用いられる。この粘着剤としては、これら粘着剤のうち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。粘着剤層103には、紫外線又は放射線のいずれか又は照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を分子内に少なくとも2個以上有する低分子量化合物、たとえば公知のアクリレート化合物又はウレタンアクリレートオリゴマ等を用いた光硬化型感圧性粘着剤も採用できる。
【0028】
((メタ)アクリル酸エステル共重合体)
本発明で使用する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルの主単量体と、その他のビニル化合物単量体を共重合したものである。ビニル化合物単量体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、スルホン酸基、スルファミン酸基、及び(亜)リン酸エステル基からなる官能基群の1種以上を有する官能基含有単量体を用いることが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルの主単量体としては、例えばブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、及びエトキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
官能基含有単量体としては、例えば官能基としてヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、スルホン酸基、スルファミン酸基、(亜)リン酸エステル基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0031】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、アクリルアミドN−グリコール酸、及びケイ皮酸等が挙げられる。
【0033】
エポキシ基を有する単量体としては、例えばアリルグリシジルエーテル、及び(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
アミド基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
アミノ基を有する単量体としては、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
メチロール基を有する単量体としては、例えばN−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法は、乳化重合、溶液重合等の公知の方法が使用できる。ダイアタッチフィルムとの相互作用により放射線照射後に粘着シートがダイアタッチフィルムと容易に剥離できるように、乳化重合により製造できるアクリルゴムが好ましい。
【0038】
(多官能イソシアネート硬化剤)
多官能イソシアネート硬化剤はイソシアネート基を2個以上有する点以外に特に限定されず、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
脂環族ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及び1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネートのうち、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好適に用いられる。
【0043】
多官能イソシアネート硬化剤の配合比は((メタ)アクリル酸エステル共重合体)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、下限としては0.5質量部以上、上限としては10質量部以下がより好ましい。多官能イソシアネート硬化剤が0.1質量部以上であれば、粘着力が強すぎないので、ピックアップ不良の発生を抑制することができる。また、多官能イソシアネート硬化剤が20質量部以下であれば、粘着力が低下せず、ダイシング時に粘着シートとリングフレームの間の保持性が維持されるので、ダイシング作業中に粘着シートとリングフレームが剥離しにくくなる。
【0044】
(ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマ)
ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマ(以下、単に「ウレタンアクリレートオリゴマ」という。)とは、ビニル基を4個以上有し、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートオリゴマであれば特に限定されない。
【0045】
ウレタンアクリレートオリゴマの製造方法は特に限定されないが、例えば水酸基と複数の(メタ)アクリレート基を含有する(メタ)アクリレート化合物と、複数のイソシアネート基を有する化合物(例えばジイソシアネート化合物)を反応させてウレタンアクリレートオリゴマとする方法が挙げられる。複数の水酸基末端を有するポリオールオリゴマに、複数のイソシアネート基を有する化合物(例えばジイソシアネート化合物)を過剰に添加して反応させて複数のイソシアネート末端を有するオリゴマとし、更に水酸基と複数の(メタ)アクリレート基を含有する(メタ)アクリレート化合物と反応させてウレタンアクリレートオリゴマとしてもよい。
【0046】
水酸基と複数の(メタ)アクリレート基を含有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトール−ヒドロキシ−ペンタアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)−テトラアクリレート、テトラメチロールメタン−トリアクリレート、グリシドール−ジアクリレートや、これらのアクリレート基の一部又は全部をメタアクリレート基とした化合物等が挙げられる。
【0047】
複数のイソシアネート基を有するイソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート、及び脂肪族イソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネートのうち、複数のイソシアネート基を有する、芳香族イソシアネート又は脂環族イソシアネートが好適に用いられる。イソシアネート成分の形態としては単量体、二量体、三量体があり、三量体が好適に用いられる。
【0048】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどがある。
【0049】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)などが挙げられる。
【0050】
脂肪ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
ポリオール成分としては、例えば、ポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、コポリ(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールSスピログリコール、カプロラクトン変性ジオール、カーボネートジオール等が挙げられる。
【0052】
ビニル基を有するウレタンアクリレートオリゴマのビニル基の数が4個以上であれば、放射線照射後の粘着シートの接着剤硬化層からの剥離が容易なので、チップのピックアップ性を向上させることができる。
【0053】
ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマの配合量は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して20質量部以上200質量部以下とすることが好ましい。ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマの配合量が20質量部以上であれば、放射線照射後の粘着シートのダイアタッチフィルムからの剥離が容易となり、チップのピックアップ性の問題の発生を抑制することができる。また、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマの配合量が200質量部以下であれば、ダイシング時に糊の掻き上げによりピックアップ不良が生じにくくなるとともに、反応残渣による微小な糊残りの発生を抑制できるため、ダイアタッチフィルムが付着したチップをリードフレーム上に搭載した際の加温時の接着不良の発生を抑制することができる。
【0054】
(ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル系重合体)
ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル単量体とポリジメチルシロキサン結合の末端にビニル基を有する単量体(以下、「シリコーン系マクロモノマ」という)の重合物であり、ポリジメチルシロキサン結合の末端にビニル基を有する単量体に由来する単量体単位を有する点以外は特に限定されず、例えばシリコーン系マクロモノマのホモポリマーや、シリコーン系マクロモノマと他のビニル化合物を重合してなるビニル重合体が挙げられる。シリコーン系マクロモノマは、ポリジメチルシロキサン結合の末端が(メタ)アクリロイル基またはスチリル基等のビニル基となっている化合物が好適に用いられる(例えば、特開2000−080135号公報等参照)。
【0055】
(メタ)アクリル単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートの他に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0056】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレンオキシド変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、及びラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル酸を用いた場合、ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体を合成した後、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート等を用いアクリル酸と反応させ、ビニル基を有する重合物を得る。
【0060】
パーティクルと呼ばれる微小な糊残りを防止するため、及び粘着シートとダイアタッチフィルムを積層した際にポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル系重合体のダイアタッチフィルムへのマイグレーションを防止するためには、反応性を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又は変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、及びビニル基を少なくとも一つ有するポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体が好適に用いられる。
【0061】
ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体のシリコーン系マクロモノマ単位の割合は特に限定されないが、ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル系重合体100質量部中、シリコーン系マクロモノマ単位を15質量部以上50質量部以下とすることが好ましい。シリコーン系マクロモノマ単位の含有量が15質量部以上であれば、放射線照射後の粘着シートをダイアタッチフィルムから容易に剥離でき、チップのピックアップ性を向上させることができる。また、シリコーン系マクロモノマ単位の含有量が50質量部以下であれば、粘着剤表面へのブリードアウトが抑制されるため、ダイアタッチフィルムが付着したチップをリードフレーム上に搭載した際の加温時に接着不良を抑制することができる。
【0062】
ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体の配合量は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体の配合量が0.1質量部以上であれば、放射線照射後に粘着シートをダイアタッチフィルムから容易に剥離でき、チップのピックアップ性を向上させることができる。また、ポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル重合体の配合量が10質量部以下であれば、初期の粘着力の低下が抑えられるため、ダイシング時にリングフレームからの剥離を抑制することができる。
【0063】
粘着剤層103には、例えば、重合開始剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0064】
粘着剤層103の厚みは特に限定されるものではないが、一般に5μm以上100μm以下程度であり、5μm以上40μm以下程度であるのが好ましい。
【0065】
基材フィルム106上に粘着剤層103を形成して粘着シートとする方法は特に限定されず、例えばグラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで基材上に粘着剤を直接塗布する方法が挙げられる。凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で基材フィルム上に粘着剤層を印刷してもよい。
【0066】
(ダイアタッチフィルム)
ダイアタッチフィルム105は、粘着剤や接着剤をフィルム状に成形したものである。ダイアタッチフィルム105は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等からなる剥離用フィルム等に接着剤や粘着剤を積層した状態で市販されており、接着剤や粘着剤を多層粘着シートに転写することができる。
【0067】
ダイアタッチフィルム105の材質は、一般的に使用される粘着剤や接着剤の成分が用いられる。粘着剤としては、例えばエポキシ系、ポリアミド系、アクリル系、及びポリイミド系等が挙げられる。接着剤としては、例えばアクリル系、酢酸ビニル系、エチレン・酢酸ビニル共重合体系、エチレン・アクリル酸エステル共重合体系、ポリアミド系、ポリエチレン系、ポリスルホン系、エポキシ系、ポリイミド系、ポリアミド酸系、シリコーン系、フェノール系、ゴム系ポリマー、フッ素ゴム系ポリマー、及びフッ素樹脂等が挙げられる。
【0068】
ダイアタッチフィルム105にはこれらの粘着剤や接着剤を混合物、共重合体、及び積層体等も使用することができる。ダイアタッチフィルムには、必要に応じて光重合開始剤、帯電防止剤、架橋促進剤等を添加してもよい。
【0069】
(粘着シート)
粘着シート110の粘着剤塗布面にダイアタッチフィルム105を貼り付け、多層粘着シート100とする。多層粘着シート100を電子部品の製造に使用する場合には、ダイアタッチフィルム105と粘着シート110の間の粘着強度を調整する必要があり、ダイアタッチフィルム105と粘着シート110の間の粘着強度が大きいとピックアップ不良が発生する場合があり、粘着力が小さいとチップ保持が低下すると同時に、粘着シート110とリングフレーム102が剥離しやすくなる場合があるため、0.05〜0.9N/20mmに調整することが好ましい。
【0070】
(電子部品の製造方法)
多層粘着シート100を使用した電子部品の製造方法は特に限定されないが、例えば、図1に示す次の手順が挙げられる。
(1)シリコンウエハ101を多層粘着シート100に貼り付けて固定する貼付工程。
(2)多層粘着シート100をリングフレーム102に固定する固定工程。
(3)ダイシングブレード104でシリコンウエハ101をダイシングするダイシング工程。
(4)多層粘着シート100を放射状に拡大してダイチップ108間隔を広げた後、ダイチップ108をニードル等で突き上るエキスパンド工程。
(5)真空コレツト又はエアピンセット等でチップを吸着し、粘着剤層103とダイアタッチフィルム105との間で剥離し、ダイアタッチフィルム105が付着したダイチップ108をピックアップするピックアップ工程。
(6)ダイアタッチフィルム105が付着したダイチップ108をリードフレーム111上に搭載(マウント)する搭載工程。
(7)ダイアタッチフィルム105を加熱し、チップとリードフレーム111を加熱接着する加熱接着工程。
(8)リードフレーム111又は回路基板に搭載したダイチップ108を樹脂(不図示)でモールドするモールド工程。
【0071】
この製造方法では、リードフレーム111の代わりに回路パターンを形成した回路基板等を用いてもよい。
【0072】
<作用効果>
以下、本実施形態の多層粘着シート100の作用効果について図1を参照しながら説明する。
【0073】
本実施形態の多層粘着シート100は、図1(1)に示すように、基材フィルム106と、該基材フィルムの一方の面に積層してなる粘着剤層103と、さらに該粘着剤層103に積層されたダイアタッチフィルム105と、を備え、該基材フィルム106がプロピレン系共重合体で形成されている。
【0074】
上記多層粘着シート100は、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑を抑制することができるからである。
【0075】
また、本実施形態の多層粘着シート100は、基材フィルム106がプロピレンと1−ブテンを重合成分として含有したものであることが好ましい。
【0076】
上記多層粘着シート100は、柔軟性や弾力性等に優れるため、半導体ウエハを切断する際に発生する切り屑をさらに抑制することができるからである。
【0077】
また、本実施形態の多層粘着シート100は、粘着剤層103が、(メタ)アクリル酸エステル100質量部と、多官能イソシアネート硬化剤0.5質量部以上20質量部以下とを含有するものであることが好ましい。
【0078】
上記多層粘着シート100は、粘着剤の粘着力や保持力に優れるため、ダイシング時の電子部品の飛散を防止することができる。さらに、粘着剤の凝集力に優れるため、電子部品側面への糊の掻き上げを防止することができる。
【0079】
また、本実施形態の多層粘着シート100は、粘着剤層103が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部、多官能イソシアネート硬化剤0.5質量部以上20質量部以下、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマ20質量部以上200質量部以下、及びポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル共重合体0.1質量部以上10質量部以下、を含有するものであることが好ましい。
【0080】
上記多層粘着シート100は、粘着剤の粘着力や保持力に優れるため、ダイシング時の電子部品の飛散を防止することができる。さらに、粘着剤の凝集力に優れるため、電子部品側面への糊の掻き上げやパーティクルと呼ばれるような微小な糊残りを防止することができる。
【0081】
また、本実施形態の電子部品の製造方法は、上記多層粘着シート100を用いることが好ましい。
【0082】
上記多層粘着シート100は、上述した通り、ダイシング性等に優れるため、生産工程の合理化、又は電子部品の品質や生産性の向上を図ることができるからである。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
<実験材料の調製>
実施例に係る粘着シート、及び多層粘着シートは次の手順で製造した。
(基材フィルム)
プロピレン系共重合体A:プロピレンとエチレン−プロピレンを重合成分として含有、MFR(メルトフローレート、以下同じ)値0.9g/10分、密度0.89g/cm、の市販品(サンアロマー社製、Q300F)を用いた。
プロピレン系共重合体B:プロピレンとエチレン−プロピレンを重合成分として含有、MFR値2.5g/10分、密度0.88g/cm、の市販品(サンアロマー社製、CA7320XEP)を用いた。
プロピレン系共重合体C:プロピレンと1−ブテンを重合成分として含有、MFR値7.5g/10分、密度0.89g/cm、の市販品(サンアロマー社製、X500F)を用いた。
エチレン系共重合体A:エチレンと酢酸ビニルのランダム共重合体、MFR値2.5g/10分、酢酸ビニル含有量12%、密度0.93g/cm、の市販品(三井デュポンポリケミカル社製)を用いた。
エチレン系共重合体B:エチレンとエチルアクリレートのランダム共重合体、MFR値5g/10分、エチルアクリレート含有量9%、密度0.92g/cm、の市販品(三井デュポンポリケミカル社製)を用いた。
【0085】
(粘着剤)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体A:2−エチルヘキシルアクリレート95%、2−ヒドロキシエチルアクリレート5%の共重合体からなり、溶液重合により得られたもの(当社重合品)。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体B:エチルアクリレート54%、ブチルアクリレート19%、メトキシエチルアクリレート24%の共重合体からなり、懸濁重合により得られたもの(当社重合品)。
多官能イソシアネート硬化剤A:2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の市販品(日本ポリウレタン社製、製品名コロネートL−45Eを用いた。
ウレタンアクリレートオリゴマA:ポリ(プロピレンオキサイド)ジオールの末端にヘキサメチレンジイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)の三量体を反応させてなる末端イソシアネートオリゴマに、更にジペタエリスリトールペンタアクリレートを反応させてなる末端アクリレートオリゴマであって、数平均分子量(Mn)が3,700でアクリレート官能基数15個のウレタンアクリレートオリゴマ(当社重合品)。
ウレタンアクリレートオリゴマB:ポリ(プロピレンオキサイド)ジオールの末端に2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させてなる末端イソシアネートオリゴマに、更に2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させてなる末端アクリレートオリゴマであって、数平均分子量(Mn)が3,400、ビニル基数は1分子あたり2個のウレタンアクリレートオリゴマ(当社重合品)。
シリコーン変性アクリル樹脂A:シリコーン分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系オリゴマ、及びメチルメタアクリレート等からなるアクリルビニル単位を重合してなるシリコーン系グラフト共重合体の市販品(綜研化学社製、製品名アクトフローUTMM−LS2)。
【0086】
光重合開始剤:ベンジルジメチルケタールからなる市販品(チバ・ジャパン社製、イルガキュア651)を用いた。
ダイアタッチフィルムA:ポリイミド接着剤を主体とし、厚さ30μmからなる市販品を用いた。
【0087】
(粘着シート)
基材フィルムは、プロピレン系共重合体AをTダイ押出しにより、100μmに成膜したものである。粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体A100質量部、イソシアネート硬化剤A3質量部を配合したものである。粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体A100質量部、イソシアネート硬化剤A3質量部を配合したものである。
【0088】
粘着剤をPETセパレーターフィルム上に塗布し、乾燥後の粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗工し、100μmの基材に積層し粘着シートを得た。
【0089】
(ダイアタッチフィルム一体型シート)
30μm厚さのダイアタッチフィルムAを6.2インチφの円形に切断し、粘着シートの粘着剤層上にラミネートして多層粘着シートとした。
【0090】
(電子部品集合体)
電子部品の製造には、ダミーの回路パターンを形成した直径6インチ×厚さ0.1mmのシリコンウエハを用いた。シリコンウエハをダイアタッチフィルム上に設置した。
【0091】
粘着シートへの切り込み量は30μmとした。ダイシングは10mm×10mmのチップサイズで行った。ダイシング装置はDISCO社製 DAD341を用いた。ダイシングブレードはDISCO社製NBC−ZH205O−27HEEEを用いた。
ダイシングブレード形状 :外径55.56mm、刃幅35μm、内径19.05mm。
ダイシングブレード回転数 :40,000rpm。
ダイシングブレード送り速度:40mm/秒。
切削水温度:25℃。
切削水量 :1.0L/分。
【0092】
ピックアップはニードルピンで突き上げた後、真空コレツトでチップを吸着し、粘着シートとダイアタッチフィルムとの間で剥離し、ダイアタッチフィルムが付着したチップを得た。ピックアップ装置はキャノンマシナリー社製 CAP−300IIを用いた。尚、粘着剤に光硬化型感圧性粘着剤を使用した実施例10乃至23の場合、ブラックライトで紫外線を150mJ照射後、ピックアップを行なった。
ニードルピン形状 :150μmR。
ニードルピン突き上げ高さ:0.5mm。
エキスパンド量 :5mm。
【0093】
(粘着シートの評価方法)
ダイシングテープの切削性:半導体ウエハを前記条件にてダイシングした後に、半導体ウエハ上からダイシングラインを光学顕微鏡(倍率200倍)で観察した。結果を表1及び表2に示す。
◎(優):半導体ウエハ上に切削屑が付着していない。
○(良):半導体ウエハ上に切削屑が殆ど付着していない。
×(不可):半導体ウエハ上に付着していた。
【0094】
ダイアタッチフィルムの切削性:半導体ウエハを前記条件にてダイシング、ピックアップした後に、ダイアタッチフィルム付きのチップ断面を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。結果を表1及び表2に示す。
◎(優):ダイアタッチフィルムのバリの高さが3μm未満。
○(良):ダイアタッチフィルムのバリの高さが3μm以上10μm未満。
×(不可):ダイアタッチフィルムのバリの高さが10μm以上。
【0095】
チップ保持:半導体ウエハを前記条件にてダイシングした際に、チップが粘着シートに保持されている数を評価した。結果を表1及び表2示す。
◎(優):チップ飛びが5%未満。
○(良):チップ飛びが5%以上10%未満。
×(不可):チップ飛びが10%以上。
【0096】
ピックアップ:半導体ウエハを前記条件にてダイシングした後、前記条件にてダイアタッチフィルムが付着した状態のチップをピックアップできた数を評価した。結果を表1及び表2に示す。
◎(優):95%以上のチップがピックアップできた。
○(良):80%以上95%未満のチップがピックアップできた。
×(不可):80%未満のチップがピックアップできた。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
<実験の考察>
表1および表2に示した実験結果からわかるように、本発明に係る基材フィルムを用いた多層粘着シートは、ダイシングテープ切削性、ダイアタッチフィルム切削性に優れるとともに、ピックアップ作業時にダイアタッチフィルムと粘着剤層との剥離が容易である。
【0100】
以上、本発明の実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の多層粘着シートは、ダイシング時のダイシングテープ、及びダイアタッチフィルム由来の切削屑がなく、ダイシング時のチップ保持に優れ、更にダイシング時にリングフレームから外れにくく、ピックアップ作業時にチップの剥離が容易という効果を奏するため、粘着シートは、ダイシング後にチップ裏面にダイアタッチフィルム層を付けた状態でピックアップし、リードフレーム等にマウントして接着させる電子部品の製造方法に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態に係る多層粘着シートの構成を説明するための断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0103】
100 多層粘着シート
101 シリコンウエハ
102 リングフレーム
103 粘着剤層
104 ダイシングブレード
107 切り込み
105 ダイアタッチフィルム
106 基材フィルム
108 ダイチップ
110 粘着シート
111 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に積層してなる粘着剤層と、さらに前記粘着剤層に積層されたダイアタッチフィルムと、を備え、前記基材フィルムがプロピレン系共重合体で形成されている多層粘着シート。
【請求項2】
前記プロピレン系共重合体が、プロピレンと1−ブテンを重合成分として含有したものである請求項1に記載の多層粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部と、多官能イソシアネート硬化剤0.5質量部以上20質量部以下と、を含有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多層粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部、多官能イソシアネート硬化剤0.5質量部以上20質量部以下、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマ20質量部以上200質量部以下、及びポリジメチルシロキサン結合を有するアクリル酸エステル共重合体0.1質量部以上10質量部以下、を含有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多層粘着シート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層粘着シートを用いた電子部品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−44444(P2011−44444A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327283(P2007−327283)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】