説明

多気筒エンジンの排気制御装置

【課題】簡単な構成でエゼクタ効果を十分発揮させることが可能な多気筒エンジンの排気制御装置を提供する。
【解決手段】排気制御装置は、1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続された複数の独立排気通路と、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部54dを含む混合管54とを有する。各独立排気通路の下流端部Aが束ねられた状態で混合管54の上流側部分に挿入される。各独立排気通路の下流端部Aを画成する壁部のうち混合管54の内周面に対向する部分が除去される。各独立排気通路の下流端部Aと集合部54dとが排気流通方向に重なっている。前記重なり量Lが変化するように独立排気通路及び混合管54の少なくともいずれか一方を排気流通方向に移動させる移動手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される多気筒エンジンの排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載される多気筒エンジンにおいて、トルクの向上を目的とした排気制御装置の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気順序が連続しない気筒の排気通路を束ねて、先細の排気管として集合させ、この絞り部分にエゼクタ効果を持たせて、気筒間の排気干渉を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−036023号公報(第4頁、第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多気筒エンジンにおいて、トルクの向上を図り、トルクのワイドレンジ化を達成するためには、前記エゼクタ効果を十分発揮させることが重要な要素の1つである。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成でエゼクタ効果を十分発揮させることが可能な多気筒エンジンの排気制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートを開閉可能な吸気弁及び排気ポートを開閉可能な排気弁が備えられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気制御装置であって、1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続された複数の独立排気通路と、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部を含む混合管とを有し、前記各独立排気通路の下流端部が束ねられた状態で前記混合管の上流側部分に挿入され、前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち前記混合管の内周面に対向する部分が除去され、前記各独立排気通路の下流端部と前記集合部とが排気流通方向に重なっており、前記各独立排気通路の下流端部と前記集合部との重なり量が変化するように、前記独立排気通路及び前記混合管の少なくともいずれか一方を排気流通方向に移動させる移動手段が設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置である(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、各独立排気通路の下流端部は、束ねられた状態で、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部を含む混合管の上流側部分に挿入されている。そして、各独立排気通路の下流端部は、下流端部を画成する壁部のうち前記混合管の内周面に対向する部分が除去されている。そのため、各独立排気通路の下流端部は、下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部と、混合管の壁部とで構成される。そして、この状態で、各独立排気通路の下流端部と前記集合部とが排気流通方向に重なっている。
【0009】
このように、混合管の壁部は、各独立排気通路の下流端部の混合管側の壁部に兼用される。そのため、各独立排気通路の下流端部を通過する排気は、混合管の壁部に沿って下流側に移動し、その後、各独立排気通路の下流端の開口から混合管に噴出される。この噴出の方向は、混合管の壁部に沿うものであるから、噴出された排気は、混合管の壁部に衝突することが抑制され、排気の速度の低下が抑制される。そのため、混合管内に発生する負圧の減少が抑制され、簡単な構成でエゼクタ効果を十分発揮させることが可能となる。その結果、他の気筒の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上、ひいてはトルクの向上が図られる。
【0010】
加えて、各独立排気通路の下流端部と混合管の集合部との排気流通方向の重なり量が移動手段により変化される。混合管の集合部は、排気流通方向の下流側が次第に縮径するので、例えば、前記重なり量が大きくされて、各独立排気通路の下流端部が前記集合部の相対的に下流側に位置するときは、各独立排気通路の下流端の開口(独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部の下流端と、この下流端と対応する位置にある混合管の壁部とで画成される開口)の面積、すなわち流路面積が減少する。逆に、前記重なり量が小さくされて、各独立排気通路の下流端部が前記集合部の相対的に上流側に位置するときは、各独立排気通路の下流端の流路面積が増大する。
【0011】
しかも、例えば運転状態に応じて各独立排気通路の下流端の流路面積を増減しても、常にエゼクタ効果を十分発揮させることができるので、トルクのワイドレンジ化が達成される。
【0012】
本発明では、前記移動手段は、エンジンの回転数が予め設定された基準回転数を超える高速域を少なくとも含む第1運転領域では前記重なり量を小さくし、エンジンの回転数が前記基準回転数以下の低速域を少なくとも含む第2運転領域では前記重なり量を大きくすることが好ましい(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、少なくともエンジン回転数が相対的に高い高速域では、各独立排気通路の下流端の流路面積が増大するので、排気流量の増大に伴う排気抵抗の増大、ひいてはポンピングロスの増大が抑制され、熱効率が向上する。一方、少なくともエンジン回転数が相対的に低い低速域では、各独立排気通路の下流端の流路面積が減少するので、各独立排気通路の下流端の開口から混合管に噴出された排気の速度が増大し、混合管内に発生する負圧が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0014】
本発明では、少なくとも低速・高負荷域において、前記各気筒の排気弁の開弁期間と吸気弁の開弁期間とが所定期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行の気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気弁が開弁するように、各気筒の吸気弁及び排気弁を駆動する弁駆動手段が設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
この構成によれば、少なくとも低速・高負荷域では、各気筒の排気弁と吸気弁とが共に開いた状態となるオーバーラップ期間が設けられ、排気順序が連続する気筒間において先行の気筒のオーバーラップ期間中に後続の気筒の排気弁が開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間中の先行気筒の吸気ポートにまで及び、これにより、先行気筒の掃気がより一層促進され、体積効率のより一層の向上、ひいてはトルクのより一層の向上が図られる。
【0016】
本発明では、前記混合管の内周面に排気流通方向に延びる凹溝が形成され、前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部が前記凹溝に嵌合していることが好ましい(請求項4)。
【0017】
この構成によれば、独立排気通路の下流端部の除去されずに残っている壁部が、相互に隣接する独立排気通路の下流端部間の仕切壁として用いられると共に、前記移動手段が独立排気通路及び混合管の少なくともいずれか一方を排気流通方向に移動させる際のガイド壁としても用いられる。そのため、部品点数を増加させることなく、各独立排気通路の下流端部の独立性を維持できると共に、独立排気通路及び/又は混合管の移動が円滑に行われる。
【0018】
本発明では、前記混合管の内周面に排気流通方向に延びる凸条が形成され、前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部に排気流通方向に延びる凹溝が形成され、前記凸条が前記凹溝に嵌合していることが好ましい(請求項5)。
【0019】
この構成によれば、独立排気通路の下流端部の除去されずに残っている壁部及び混合管の凸条が、相互に隣接する独立排気通路の下流端部間の仕切壁として用いられると共に、前記移動手段が独立排気通路及び混合管の少なくともいずれか一方を排気流通方向に移動させる際のガイド壁としても用いられる。そのため、部品点数を増加させることなく、各独立排気通路の下流端部の独立性を維持できると共に、独立排気通路及び/又は混合管の移動が円滑に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多気筒エンジンにおいて、簡単な構成でエゼクタ効果を十分発揮させることが可能となる。その結果、トルクが向上し、トルクがワイドレンジ化した多気筒エンジンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気制御装置の概略構成図である。
【図2】図1の要部側面図である。
【図3】前記エンジンの各気筒の排気弁の開弁期間と吸気弁の開弁期間とが所定期間オーバーラップする説明図である。
【図4】前記吸気弁及び排気弁の開弁期間の説明図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】前記エンジンの排気系に用いられるノズル部材の、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は斜視図である。
【図7】前記ノズル部材が上流側部分に挿入される混合管の、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は斜視図である。
【図8】前記ノズル部材が前記混合管の上流側部分に挿入された状態(低速域のとき)を示す、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は斜視図である。
【図9】前記ノズル部材が前記混合管の上流側部分に挿入され、前記ノズル部材の上流端に独立排気管が接続された状態(低速域のとき)を示す、(a)は斜視図、(b)は図9(a)のア−ア線断面図である。
【図10】前記ノズル部材が前記混合管の上流側部分に挿入された状態(高速域のとき)を示す、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図11】前記ノズル部材が前記混合管の上流側部分に挿入され、前記ノズル部材の上流端に独立排気管が接続された状態(高速域のとき)を示す、(a)は斜視図、(b)は図11(a)のイ−イ線断面図である。
【図12】図9(b)の矢印Xの位置(低速域のとき)においてノズル部材側を見た拡大断面図である。
【図13】図11(b)の矢印Yの位置(高速域のとき)においてノズル部材側を見た拡大断面図である。
【図14】前記エンジンの運転領域の説明図である。
【図15】前記混合管を覆う漏れ防止用外管の斜視図である。
【図16】(a)は図9(a)において前記漏れ防止用外管を取り付けた状態を示す斜視図、(b)は図16(a)のウ−ウ線断面図である。
【図17】本発明の第2実施形態における、(a)は図12に相当する拡大断面図、(b)は図13に相当する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)全体構成
図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気制御装置100の概略構成図、図2は、図1の要部側面図である。この装置100は、シリンダヘッド9及びシリンダブロック10を有するエンジン本体1と、エンジン本体1に接続される排気マニホールド50と、排気マニホールド50に接続される触媒装置60とを備えている。
【0023】
前記シリンダヘッド9及びシリンダブロック10の内部にはピストンがそれぞれ嵌挿された複数(図例では4つ)の気筒12が形成されている。本実施形態では、エンジン本体1は、直列4気筒のエンジンであって、シリンダヘッド9及びシリンダブロック10の内部には、4つの気筒12が直列に並んだ状態で形成されている。具体的には、図1の右から順に、第1気筒12a、第2気筒12b、第3気筒12c、第4気筒12dが形成されている。シリンダヘッド9には、ピストンの上方に区画された燃焼室内に臨むようにそれぞれ点火プラグ15が設置されている。
【0024】
エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、図3に示すように、各気筒12a〜12dにおいて、180°CAずつずれたタイミングで点火プラグ15による点火が行われて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の各行程がそれぞれ180°CAずつずれたタイミングで行われる。本実施形態では、第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に点火が行われ、この順に各行程が実施される。
【0025】
シリンダヘッド9には、それぞれ燃焼室に向かって開口する2つの吸気ポート17及び2つの排気ポート18が設けられている。吸気ポート17は、各気筒12内に吸気を導入するためのものである。排気ポート18は、各気筒12内から排気を排出するためのものである。各吸気ポート17には、これら吸気ポート17を開閉して吸気ポート17と気筒12内部とを連通又は遮断するための吸気弁19が設けられている。各排気ポート18には、これら排気ポート18を開閉して排気ポート18と気筒12内部とを連通又は遮断するための排気弁20が設けられている。吸気弁19は、吸気弁駆動機構(弁駆動手段)30で駆動されることにより、所定のタイミングで吸気ポート17を開閉する。排気弁20は、排気弁駆動機構(弁駆動手段)40で駆動されることにより、所定のタイミングで排気ポート18を開閉する。
【0026】
吸気弁駆動機構30は、吸気弁19に連結された吸気カムシャフト31と吸気VVT32とを有している。吸気カムシャフト31は、周知のチェーン及びスプロケット機構等の動力伝達機構を介してクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴い回転して、吸気弁19を開閉駆動する。吸気VVT32は、吸気弁19のバルブタイミングを変更するためのものである。
【0027】
吸気VVT32は、吸気カムシャフト31と、この吸気カムシャフト31と同軸に配置されてクランクシャフトにより直接駆動される所定の被駆動軸との間の位相差を変更し、これによりクランクシャフトと前記吸気カムシャフト31との間の位相差を変更することで、吸気弁19のバルブタイミングを変更する。吸気VVT32の具体的構成としては、例えば、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に周方向に並ぶ複数の液室を有し、これら液室間に圧力差を設けることで前記位相差を変更する液圧式機構や、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に電磁石を配設し、前記電磁石に電力を付与することで前記位相差を変更する電磁式機構等が挙げられる。この吸気VVT32は、コントロールユニット(図示略)で算出された吸気弁19の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。
【0028】
排気弁駆動機構40は、吸気弁駆動機構30と同様の構造を有している。すなわち、排気弁駆動機構40は、排気弁20及びクランクシャフトに連結された排気カムシャフト41と、この排気カムシャフト41とクランクシャフトとの位相差を変更することで、排気弁20のバルブタイミングを変更する排気VVT42とを有している。排気VVT42は、コントロールユニットで算出された排気弁20の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。そして、排気カムシャフト41は、この位相差の下でクランクシャフトの回転に伴って回転して排気弁20を前記目標バルブタイミングで開閉駆動する。
【0029】
本実施形態では、前記吸気VVT32及び前記排気VVT42は、吸気弁19及び排気弁20の開弁期間及びリフト量つまりバルブプロファイルをそれぞれ一定に保ったまま、吸気弁19及び排気弁20の開弁時期(図4に示す開弁開始時期)及び閉弁時期をそれぞれ変更する。
【0030】
また、本実施形態では、前記吸気弁19及び排気弁20の開弁時期(開弁開始時期)及び閉弁時期とは、それぞれ、図4に示すように、各バルブのリフトカーブにおいてバルブのリフトが急峻に立ち上がる又は立ち下がる時期であり、例えば0.4mmリフトの時期をいう。
【0031】
(2)排気系の構成
排気マニホールド50は、3つの独立排気管52と混合管54とを含み、さらに、ノズル部材53(図5参照)を有する。後述するように、ノズル部材53は、独立排気管52の下流端に接続され、混合管54の上流側部分に軸方向(排気流通方向)に移動自在に挿入されている。後述するように、混合管54は、その軸芯上に、上流側から順に、円筒状の導入部54bと、下流側ほど流路面積が小さくなる集合部54dと、前記集合部54dの下流端の流路面積(混合管54の最小流路面積)を維持して下流側に延びるストレート部54eと、下流側ほど流路面積が大きくなるディフューザー部54fとを備えている。
【0032】
前記各独立排気管52は、前記各気筒12の排気ポート18に接続されている。具体的には、前記気筒12のうち第1気筒12aの排気ポート18及び第4気筒12dの排気ポート18は、それぞれ個別に1つの独立排気管52に接続されている。一方、排気行程が隣り合わず排気順序が連続しない第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とは、構造を簡素化する観点から、共通の1つの独立排気管52に接続されている。より詳細には、この第2気筒12bの排気ポート18と第3気筒12cの排気ポート18とに接続されている独立排気管52は、その上流側において2つの通路に分離しており、その一方に前記第2気筒12bの排気ポート18が接続され、他方に前記第3気筒12cの排気ポート18が接続されている。
【0033】
本実施形態では、前記第2気筒12bと前記第3気筒12cとに対応する独立排気管52は、これら気筒12b,12cの間すなわちエンジン本体1の略中央部分と対向する位置において前記混合管54の導入部54bに向かって延びている。一方、前記第1気筒12a及び前記第4気筒12dにそれぞれ対応する独立排気管52は、各気筒12a、12dと対向する位置から湾曲しつつ前記混合管54の導入部54bに向かって延びている。
【0034】
これら独立排気管52は、互いに独立しており、第1気筒12aから排出された排気と、第2気筒12b又は第3気筒12cから排出された排気と、第4気筒12dから排出された排気とは、互いに独立して各独立排気管52内を通って下流側に排出される。各独立排気管52を通過した排気は前記ノズル部材53を経由して前記混合管54の導入部54bないし集合部54dに流入する。
【0035】
本実施形態においては、独立排気通路2(図1、図2参照)は、独立排気管52の通路及びノズル部材53の通路53a(図5参照)を含む。
【0036】
独立排気通路2及び混合管54の集合部54dは、各独立排気通路2から高速で排気が噴出されてこの排気が高速で前記集合部54d内に流入するのに伴い、この高速の排気の周囲に発生した混合管54内の負圧作用すなわちエゼクタ効果によって隣接する他の独立排気通路2及びこの独立排気通路2と連通する排気ポート18内に負圧が生成され、この排気ポート18内の排気が下流側に吸い出されるような形状を有している。
【0037】
具体的には、前記集合部54dは、前記各独立排気通路2から排出された排気が高い速度を維持したまま下流側に流れるよう、下流側に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、排気の速度をより高めるべく前記集合部54dの下流端の流路面積は、前記各独立排気通路2の下流端の流路面積の合計よりも小さく設定されている。本実施形態では、この集合部54dは、下流側に向かうに従って縮径する逆円錐台形状(漏斗形状)を有している。
【0038】
このように、前記集合部54d及びストレート部54eにおいては、下流側の流路面積の方が上流側の流路面積よりも小さい。そのため、排気は前記集合部54d及びストレート部54eを高速で通過する。この通過時に、排気の圧力及び温度は低下する。そのため、前記集合部54d及びストレート部54eにおいて、排気の外部への放熱量は小さく抑えられる。そして、このストレート部54eを通過した排気は、下流に向かうに従って流路面積が拡大するディフューザー部54fに流入することにより、排気の圧力及び温度が回復し、高い温度を維持したまま下流側の触媒装置60に排出される。
【0039】
触媒装置60は、エンジン本体1から排出された排気を浄化するための装置である。この触媒装置60は、触媒本体64と、この触媒本体64を収容するケーシング62とを備えている。ケーシング62は、排気の流通方向と平行に延びる略円筒状を有している。触媒本体64は、排気中の有害成分を浄化するためのものであり、理論空燃比の雰囲気下で三元触媒機能を有する。この触媒本体64は、例えば、三元触媒を含有する。
【0040】
前記触媒本体64は、前記ケーシング62の排気流通方向の中央の拡径部分に収容されている。ケーシング62の上流端には所定の空間が形成されている。前記混合管54のディフューザー部54fの下流端は前記ケーシング62の上流端に接続されている。ディフューザー部54fから排出された排気は前記ケーシング62の上流端に流入した後、触媒本体64側へ進行する。
【0041】
前述のように、混合管54のディフューザー部54fからは、高い温度の排気が下流側に排出される。そのため、混合管54に直接に触媒装置60が接続されていることで、触媒装置60内には相対的に高温の排気が流入し、これにより、触媒本体64は早期に活性化され、また、触媒本体64の活性状態が確実に維持される。
【0042】
一方、前記各独立排気通路2の下流端部(符号Aを付す:図9(b)、図11(b)参照)は、排気が各独立排気通路2から高速で前記集合部54d内に噴出されるよう、下流に向かうほどその流路面積が小さくなる形状を有している。本実施形態では、各独立排気通路2は、略楕円形断面を有する上流側部分から下流に向かうに従ってその断面積が縮小されており、その下流端では上流側部分の楕円形断面積の略1/3の断面積(流路面積)となる扇形となっている(図12、図13参照)。そして、図12、図13に示すように、各独立排気通路2は、扇形をなす各下流端が互いに隣接して全体として略円形断面を形成するように、各独立排気通路2の下流端ないし下流端部Aが束ねられた状態で前記混合管54の上流側部分に挿入されている。
【0043】
本実施形態では、少なくとも低速・高負荷域において、図3に示すように、前記各気筒12の排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気順序が連続する気筒12,12間において、一方の気筒(先行の気筒)12のオーバーラップ期間T_O/L中に、他方の気筒(後続の気筒)12の排気弁20が開弁を開始するように設定されている。
【0044】
具体的には、図3に示すように、第1気筒12aの排気弁20と吸気弁19とがオーバーラップしている期間中に第3気筒12cの排気弁20が開弁し、第3気筒12cの排気弁20と吸気弁19とがオーバーラップしている期間中に第4気筒12dの排気弁20が開弁し、第4気筒12dの排気弁20と吸気弁19とがオーバーラップしている期間中に第2気筒12bの排気弁20が開弁し、第2気筒12bの排気弁20と吸気弁19とがオーバーラップしている期間中に第1気筒12aの排気弁20が開弁するように設定されている。
【0045】
つまり、コントロールユニットは、少なくとも低速・高負荷域において、各気筒12の排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが所定期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒12,12間において先行の気筒12の前記オーバーラップ期間T_O/L中に後続の気筒12の排気弁20が開弁するように、吸気弁駆動機構30及び排気弁駆動機構40を制御する。
【0046】
これにより、排気行程気筒12の排気弁20が開弁してブローダウンガスがこの排気行程気筒12から独立排気通路2(前述したように、独立排気通路2は、独立排気管52の通路及びノズル部材53の通路53aを含む)を通って集合部54dに高速で噴出されるのに伴い、エゼクタ効果によりオーバーラップ期間T_O/L中の吸気行程気筒12の排気ポート18内に負圧が生成される。そのため、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間T_O/L中の吸気行程気筒12の排気ポート18だけでなく、吸気行程気筒12から吸気行程気筒12の吸気ポート17にまで及び、このオーバーラップ期間T_O/L中の吸気行程気筒12内の掃気がより一層促進される。
【0047】
(3)本実施形態の特徴
図6は前記ノズル部材53を表し、図6(a)は平面図、図6(b)は側面図、図6(c)は底面図、図6(d)は斜視図である。前述したように、ノズル部材53は、混合管54の上流側部分に軸方向(排気流通方向)に移動自在に挿入される。
【0048】
図示されるように、ノズル部材53は円柱状の本体部53bを有する。この本体部53bには3つの通路(円孔)53aが形成されている。各通路53aは本体部53bを軸方向に貫通し、本体部53bの両端面に開口している。図6(a)に表れる端面及び開口を第1端面及び第1開口といい、図6(c)に表れる端面及び開口を第2端面及び第2開口という。
【0049】
3つの通路53aは本体部53bの軸芯に対して相互に120°の割付角で配置されている。各通路53aの第1開口にはそれぞれ前記独立排気管52の下流端が接続される(例えば図11(b)参照)。本実施形態では、独立排気通路2は、前記独立排気管52の通路と、前記ノズル部材53の通路53aとを含む。
【0050】
本体部53bの外周面に、外方に突出し、軸方向に延びる突壁53cが3つ形成されている。3つの突壁53cは本体部53bの軸芯に対して相互に120°の割付角で配置されている。各突壁53cは、第2端面を超えてさらに軸方向に延設されている。図例では、前記突壁53cの延設の長さは、本体部53bの軸方向の長さと略同じとされている。
【0051】
図6(c)に示されるように、3つの突壁53cは、前記延設部分で相互に交じり合っている。そして、交じり合った隣接する延設部分同士が共働して前記通路53aの第2開口を1つずつ仕切っている。前記突壁53cのうち、前記延設部分を仕切壁53c”といい、本体部53bの外周面に位置する部分をガイド壁53c’という(図6(d)参照)。
【0052】
前記仕切壁53c”と前記本体部53bの第2端面とに連続して円錐部53dが形成されている。円錐部53dは、軸方向において第2端面から離れる側が軸芯に近づくように傾斜する曲面を有する。
【0053】
以上のような構成のノズル部材53において、前記突壁53cの軸方向の一端から他端までがノズル部材53の範囲である。このノズル部材53において、本体部53bの第2端面と、隣接する2つの仕切壁53c”とで囲まれる部分(符号Aを付す)は、前記通路53aよりも下流側にある独立排気通路2を画成する壁部のうち、当該ノズル部材53が前記混合管54に挿入されたときに前記混合管54の内周面に対向する部分が除去された部分である。つまり、前記突壁53cの下流端は独立排気通路2の下流端であり、前記部分Aは独立排気通路2の下流端部である。ノズル部材53は、前記独立排気通路2の下流端部Aが束ねられたものであり、束ねられた独立排気通路2の下流端部Aは、その下流端部Aを画成する壁部のうち混合管54の内周面に対向する部分が除去されたものである。前記仕切壁53c”は、前記独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち、除去されずに残っている壁部である。
【0054】
図7は前記混合管54を表し、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図、図7(c)は底面図、図7(d)は斜視図である。図7(a)に表れる混合管54の端面を第1端面といい、図7(c)に表れる混合管54の端面を第2端面という。
【0055】
図示されるように、混合管54は、第1端面側から第2端面側に向けて、軸方向に、導入部54b、集合部54d、ストレート部54e及びディフューザー部54fを、この順に、同軸に備えている。
【0056】
導入部54bは円筒状である。導入部54bの内径は、前記ノズル部材53の本体部53bの外径と略同じか又は若干大きくされている。導入部54bの軸方向の長さは、前記ノズル部材53の本体部53bの軸方向の長さと略同じとされている。
【0057】
集合部54dは、第1端面側から第2端面側に向けて次第に縮径する(次第に流路面積が小さくなる)漏斗形状である。集合部54dの第1端面側の内径は、前記導入部54bの内径と略同じとされている。集合部54dの軸方向の長さは、前記ノズル部材53の仕切壁53c”の軸方向の長さ(すなわち独立排気通路2の下流端部Aの長さ)よりも所定長さだけ長くされている。
【0058】
ストレート部54eは、軸方向に流路面積が変化しない円筒状である。ストレート部54eの内径は、前記集合部54dの第2端面側の内径と略同じとされている。
【0059】
ディフューザー部54fは、第1端面側から第2端面側に向けて次第に拡径する(次第に流路面積が大きくなる)逆漏斗形状である。ディフューザー部54fの第1端面側の内径は、前記ストレート部54eの内径と略同じとされている。
【0060】
導入部54bの外周面に、外方に突出し、軸方向に延びる突壁54c’が3つ形成されている。3つの突壁54c’は導入部54bの軸芯に対して相互に120°の割付角で配置されている。各突壁54c’は、導入部54bを超えてさらに集合部54dの外周面に延設されている。各突壁54c’の軸方向の長さは、前記ノズル部材53の突壁53cの軸方向の長さと略同じとされている。
【0061】
そして、図7(a)及び図7(d)に示されるように、前記突壁54c’に対応する位置において、前記導入部54bの内周面及び前記集合部54dの内周面に軸方向に延びる凹溝54cが形成されている。凹溝54cは、前記突壁54c’の内部に突入している。
【0062】
なお、混合管54の外周面(図例ではストレート部54eの外周面)には、この混合管54を前記ノズル部材53に対して軸方向に移動させるためのアクチュエータ(移動手段)54gが備えられている。
【0063】
図8は、前記ノズル部材53が前記混合管54の上流側部分(混合管54の第1端面側の部分)に軸方向(排気流通方向)に移動自在に挿入された状態を表し、図8(a)は平面図、図8(b)は底面図、図8(c)は斜視図である。なお、前記ノズル部材53が前記混合管54の上流側部分に挿入された状態を表す側面図は、図7(b)と同じであるので省略した。図9は、前記混合管54の上流側部分に挿入された前記ノズル部材53に独立排気管52の下流端が接続された状態を表し、図9(a)は斜視図、図9(b)は図9(a)のア−ア線断面図である。
【0064】
ノズル部材53は、混合管54の第1端面側の開口から、独立排気通路2の下流端部Aを先にして挿入される。その際、ノズル部材53の突壁53cが混合管54の凹溝54cに嵌合する。挿入されたノズル部材53は、図9(b)に示されるように、本体部53bが混合管54の導入部54bと対接し、独立排気通路2の下流端部Aが混合管54の集合部54dと排気流通方向に重なる。ただし、前述したように、集合部54dの軸方向の長さが独立排気通路2の下流端部Aの長さよりも所定長さだけ長くされているから、独立排気通路2の下流端部Aと集合部54dとの重なり量Lが最大となったときでも、集合部54dには、独立排気通路2の下流端部Aと重ならない部分が残り、混合管54には集合部54dが確保される。
【0065】
図9(b)の状態において、ノズル部材53の円錐部53dは、混合管54の集合部54dと対接し、これ以上のノズル部材53の下流側への移動規制を確実にする。もっとも、状況に応じて、円錐部53dは、省略することができる。
【0066】
図8及び図9は、独立排気通路2の下流端部Aと集合部54dとの重なり量Lが相対的に大きい場合を示す。これに対し、図10及び図11は、独立排気通路2の下流端部Aと集合部54dとの重なり量Lが相対的に小さい場合を示す。図10及び図11においては、混合管54がノズル部材53に対して下流側に移動されている。その結果、ノズル部材53の本体部53bが混合管54の導入部54bから抜け出て露出し、独立排気通路2の下流端部Aと集合部54dとの重なり量Lが小さくなっている。
【0067】
そして、図9(b)の矢印Xの位置においてノズル部材53側を見た拡大断面図を図12に示し、図11(b)の矢印Yの位置においてノズル部材53側を見た拡大断面図を図13に示す。図12に示すように、前記重なり量Lが相対的に大きい場合は、独立排気通路2の下流端の流路面積(独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部の下流端と、この下流端と対応する位置にある混合管54の壁部とで画成される開口の面積)K(ハッチングを施した部分)は、相対的に小さくなる。これに対し、図13に示すように、前記重なり量Lが相対的に小さい場合は、独立排気通路2の下流端の流路面積K(ハッチングを施した部分)は、相対的に大きくなる。
【0068】
本実施形態においては、図14に示すように、エンジン回転数が予め設定された基準回転数Ne1を超える高速域が第1運転領域(i)、エンジン回転数が前記基準回転数Ne1以下の低速域が第2運転領域(ii)と設定されている。前記基準回転数Ne1は、例えば2500rpm〜3000rpmとされる。
【0069】
混合管54をノズル部材53に対して軸方向に移動させるためのアクチュエータ54gは、前記高速域(i)では前記重なり量Lを小さくし(図13)、前記低速域(ii)では前記重なり量Lを大きくする(図12)。
【0070】
なお、ノズル部材53は混合管54に移動自在に挿入されているので、ノズル部材53の本体部53bの外周面と、混合管54の導入部54bの内周面との間隙から排気が漏れる可能性がある。そこで、図15に示すような漏れ防止用外管55を取り付けることが好ましい。図示した例では、前記外管55の一端に形成されたフランジ部55aと、前記独立排気管52の下流端に形成されたフランジ部50a(図9及び図11参照)とを介して、前記外管55が前記独立排気管52の下流端に結合される。漏れ防止用外管55を取り付けた状態を図16に示す。漏れ防止用外管55は混合管54を覆っている(図1及び図2参照)。
【0071】
(4)本実施形態の作用
本実施形態では、吸気ポート17を開閉可能な吸気弁19及び排気ポート18を開閉可能な排気弁20が備えられた複数の気筒12を有する多気筒エンジンの排気制御装置100が提供される。排気制御装置100は、1つの気筒12又は排気順序が連続しない複数の気筒12の排気ポート18に接続された複数の独立排気通路2(独立排気管52とノズル部材53と混合管54とで構成される)と、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部54dを含む混合管54とを有する。前記各独立排気通路2の下流端部Aが束ねられた状態で前記混合管54の上流側部分に挿入される。前記各独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち前記混合管54側の壁部が除去される。前記各独立排気通路2の下流端部Aと前記集合部54dとが排気流通方向に重なっている。
【0072】
本実施形態によれば、各独立排気通路2の下流端部Aは、束ねられた状態で、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部54dを含む混合管54の上流側部分に挿入されている。そして、各独立排気通路2の下流端部Aは、下流端部Aを画成する壁部のうち前記混合管54側の壁部が除去されている。そのため、各独立排気通路2の下流端部Aは、下流端部Aを画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部(53c”)と、混合管54の壁部とで構成される。そして、この状態で、各独立排気通路2の下流端部Aと前記集合部54dとが排気流通方向に重なっている(図9及び図11参照)。
【0073】
このように、混合管54の壁部は、各独立排気通路2の下流端部Aの混合管54側の壁部に兼用される。そのため、図9及び図11に矢印で示すように、各独立排気通路2の下流端部Aを通過する排気は、混合管54の壁部に沿って下流側に移動し、その後、各独立排気通路2の下流端の開口から混合管54に噴出される。この噴出の方向は、混合管54の壁部に沿うものであるから、噴出された排気は、混合管54の壁部に衝突することが抑制され、排気の速度の低下が抑制される。そのため、混合管54内に発生する負圧の減少が抑制され、簡単な構成でエゼクタ効果を十分発揮させることが可能となる。その結果、他の気筒12の掃気が促進され、体積効率(ηV)の向上、ひいてはトルクの向上が図られる。
【0074】
本実施形態では、前記各独立排気通路2の下流端部Aと前記集合部54dとの重なり量Lが変化するように、前記混合管54を排気流通方向に移動させるアクチュエータ54gが設けられている。
【0075】
これにより、各独立排気通路2の下流端部Aと混合管54の集合部54dとの排気流通方向の重なり量Lがアクチュエータ54gにより変化される。混合管54の集合部54dは、排気流通方向の下流側が次第に縮径するので、例えば、前記重なり量Lが大きくされて、各独立排気通路2の下流端部Aが前記集合部54dの相対的に下流側に位置するとき(図9)は、図12に示したように、各独立排気通路2の下流端の開口(独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部53c”の下流端と、この下流端と対応する位置にある混合管54の壁部とで画成される開口)の面積K、すなわち流路面積Kが減少する。逆に、前記重なり量Lが小さくされて、各独立排気通路2の下流端部Aが前記集合部54dの相対的に上流側に位置するとき(図11)は、図13に示したように、各独立排気通路2の下流端の流路面積Kが増大する。
【0076】
しかも、例えば運転状態に応じて各独立排気通路2の下流端の流路面積Kを増減しても、常にエゼクタ効果を十分発揮させることができるので、トルクのワイドレンジ化が達成される。
【0077】
本実施形態では、前記アクチュエータ54gは、エンジン回転数が前記基準回転数Ne1を超える高速域(i)では前記重なり量Lを小さくし(図11、図13)、エンジン回転数が前記基準回転数Ne1以下の低速域(ii)では前記重なり量Lを大きくする(図9、図12)。
【0078】
これにより、高速域(i)では、各独立排気通路2の下流端の流路面積Kが増大するので、排気流量の増大に伴う排気抵抗の増大、ひいてはポンピングロスの増大が抑制され、熱効率が向上する。一方、低速域(i)では、各独立排気通路2の下流端の流路面積Kが減少するので、各独立排気通路2の下流端の開口から混合管54に噴出された排気の速度が増大し、混合管54内に発生する負圧が増大し、エゼクタ効果が増大する。
【0079】
本実施形態では、少なくとも低速・高負荷域において、各気筒12の排気弁20の開弁期間と吸気弁19の開弁期間とが所定期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒12,12間において先行の気筒12の前記オーバーラップ期間T_O/L中に後続の気筒12の排気弁20が開弁するように、各気筒12の吸気弁19及び排気弁20を駆動する吸気弁駆動機構30及び排気弁駆動機構40が設けられている。
【0080】
これにより、少なくとも低速・高負荷域では、各気筒12の排気弁20と吸気弁19とが共に開いた状態となるオーバーラップ期間が設けられ、排気順序が連続する気筒12,12間において先行の気筒12のオーバーラップ期間T_O/L中に後続の気筒12の排気弁20が開弁するので、前記エゼクタ効果がオーバーラップ期間T_O/L中の先行気筒12の吸気ポート17にまで及び、これにより、先行気筒12の掃気がより一層促進され、体積効率のより一層の向上、ひいてはトルクのより一層の向上が図られる。
【0081】
本実施形態では、前記混合管54の内周面に凹溝54cが排気流通方向に延設され、前記各独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部53c”(53c,53c’)が前記凹溝54cに嵌合している。
【0082】
この構成によれば、独立排気通路2の下流端部Aの除去されずに残っている壁部が、相互に隣接する独立排気通路2の下流端部A,A間の仕切壁53c”として用いられると共に、前記アクチュエータ54gが混合管54を排気流通方向に移動させる際のガイド壁53c’としても用いられる。そのため、部品点数を増加させることなく、各独立排気通路2の下流端部Aの独立性を維持できると共に、混合管54の移動が円滑に行われる。
【0083】
(5)本実施形態の変形例
図7に示した凹溝54cに相当するものを仕切壁53c”(53c,53c’)に形成してもよい。すなわち、図17に示すように、前記混合管54の内周面に排気流通方向に延びる凸条54xを形成し、前記各独立排気通路2の下流端部Aを画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部53c”(53c,53c’)に排気流通方向に延びる凹溝を形成し、前記凸条54xを前記凹溝に嵌合させてもよい。
【0084】
この構成によれば、図17に示すように、独立排気通路2の下流端部Aの除去されずに残っている壁部53c”(53c,53c’)及び混合管54の凸条54xが、相互に隣接する独立排気通路2の下流端部A,A間の仕切壁として用いられると共に、前記アクチュエータ54gが混合管54を排気流通方向に移動させる際のガイド壁としても用いられる。そのため、部品点数を増加させることなく、各独立排気通路2の下流端部Aの独立性を維持できると共に、混合管54の移動が円滑に行われる。
【0085】
混合管54は、円筒状の導入部54bと流路面積が縮小する集合部54dとだけを含むもの(ストレート部54e及びディフューザー部54fがないもの)でもよく、導入部54bと集合部54dとディフューザー部54fとだけを含むもの(ストレート部54eがないもの)でもよい。このような構成の混合管54を用いてもエゼクタ効果は得られる。例えば、量産設計時にレイアウト上の制約等から混合管54を短くする場合に、導入部54b及び集合部54dだけを含む混合管54や、ストレート部54eを省略して導入部54bと集合部54dとディフューザー部54fとを直接滑らかに曲面でつなぐような形状の混合管54等としても構わない。
【0086】
独立排気通路2の下流端部Aと集合部54dとの重なり量Lを変化させるために、ノズル部材53(独立排気通路2)を排気流通方向に移動させてもよく、また、ノズル部材53(独立排気通路2)と混合管54との両方を排気流通方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 独立排気通路
12 気筒
17 吸気ポート
18 排気ポート
19 吸気弁
20 排気弁
30 吸気弁駆動機構(弁駆動手段)
40 排気弁駆動機構(弁駆動手段)
52 独立排気管
53 ノズル部材
53c 突壁
53c’ ガイド壁
53c” 仕切壁
54 混合管
54c 凹溝
54d 集合部
54g アクチュエータ(移動手段)
100 排気装置
A 独立排気通路の下流端部
L 重なり量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートを開閉可能な吸気弁及び排気ポートを開閉可能な排気弁が備えられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気制御装置であって、
1つの気筒又は排気順序が連続しない複数の気筒の排気ポートに接続された複数の独立排気通路と、排気流通方向の下流側が次第に縮径する集合部を含む混合管とを有し、
前記各独立排気通路の下流端部が束ねられた状態で前記混合管の上流側部分に挿入され、
前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち前記混合管の内周面に対向する部分が除去され、
前記各独立排気通路の下流端部と前記集合部とが排気流通方向に重なっており、
前記各独立排気通路の下流端部と前記集合部との重なり量が変化するように、前記独立排気通路及び前記混合管の少なくともいずれか一方を排気流通方向に移動させる移動手段が設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気制御装置において、
前記移動手段は、エンジンの回転数が予め設定された基準回転数を超える高速域を少なくとも含む第1運転領域では前記重なり量を小さくし、エンジンの回転数が前記基準回転数以下の低速域を少なくとも含む第2運転領域では前記重なり量を大きくすることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多気筒エンジンの排気制御装置において、
少なくとも低速・高負荷域において、前記各気筒の排気弁の開弁期間と吸気弁の開弁期間とが所定期間オーバーラップすると共に、排気順序が連続する気筒間において先行の気筒の前記オーバーラップ期間中に後続の気筒の排気弁が開弁するように、各気筒の吸気弁及び排気弁を駆動する弁駆動手段が設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気制御装置において、
前記混合管の内周面に排気流通方向に延びる凹溝が形成され、
前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部が前記凹溝に嵌合していることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気制御装置において、
前記混合管の内周面に排気流通方向に延びる凸条が形成され、
前記各独立排気通路の下流端部を画成する壁部のうち除去されずに残っている壁部に排気流通方向に延びる凹溝が形成され、
前記凸条が前記凹溝に嵌合していることを特徴とする多気筒エンジンの排気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−104354(P2013−104354A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248722(P2011−248722)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】