説明

太陽電池バックシート用積層体およびそれを有するバックシート

【課題】長期間にわたる過酷な自然環境下においても、優れた水蒸気バリア性能を発現・維持することが可能な、耐候性および耐湿性に優れた太陽電池バックシート用積層体を提供すること。
また、前記太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート及び前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する太陽電池バックシート用積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る太陽電池バックシート用積層体、前記太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート及び前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。化石燃料に代替えするエネルギーとしては、いろいろ検討されているが、クリーンなエネルギー源である太陽光発電に対する期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長時間(約20年)に亘って素子を保護するため種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。そのパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に、太陽電池モジュールの太陽光が当たる面はガラスで覆われている。そして、熱可塑性プラスチック(一般的にはエチレン酢酸ビニル共重合樹脂)からなる充填材で間隙が埋められ、裏面が耐熱、耐候性プラスチック材料などのシートで保護された構成になっている。
【0003】
太陽電池モジュールは、屋外で使用されるため、その構成、材質構造などにおいて、十分な耐久性、耐候性が要求される。特にバックシート(裏面保護シート)は耐候性と共に水蒸気透過率の小さいことが要求される。これは水分の透過により充填材が剥離したり、変色したり、配線の腐食を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を及ぼす恐れがあるためである。
【0004】
従来、この太陽電池バックシートとしては、ポリフッ化ビニルフィルム(フッ素フィルム)などの高耐候性樹脂フィルムで、ガスバリア性のある、金属箔(一般的にはアルミニウム箔)又は無機酸化物蒸着フィルム(一般的にはアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)をサンドイッチ又は積層した構造の太陽電池バックシートが多く用いられてきた。しかし、このフッ素フィルムは機械的強度も弱く部材加工性に劣り、太陽電池モジュール製造時に太陽電池素子電極部の突起物が貫通して裏面保護シート中のアルミニウム箔に接触するなど、太陽電池素子とアルミニウム箔が短絡して電池性能に悪影響を及ぼすという欠点があった。また、幾層にも亘る部材構成の複雑さは生産性からも望ましいものとは言えず、太陽電池普及の妨げとなっていた。
これらの欠点及び障害を改善するために、例えばポリアクリルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルムその他の種々の代替フィルムが太陽電池バックシートとして検討されてきた。
【0005】
特許文献1には、ポリカーボネートフィルムと、無機酸化物からなる蒸着フィルムの積層による太陽電池用バックシートが記載されている。
特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に接着層を介して積層される一対のアルミニウム蒸着層を有し、該接着層が、ポリウレタン系接着剤が用いられるドライラミネート用接着剤から形成されている太陽電池モジュール用バックシートが記載されている。
特許文献3には、二酸化チタンを含有するポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂層を有する太陽電池用熱可塑性樹脂シートが記載されている。
特許文献4には、複数の樹脂フィルム層から形成され、太陽電池モジュールから相対的に遠い側に配置される外層にポリエチレンナフタレートフィルムを含む太陽電池用シート部材が記載されている。
特許文献5には、薄膜太陽電池モジュールの裏面保護シート面内周縁端部にブチルゴム、防湿層にアルミ箔、PETフィルムからなる基材層と防湿層がウレタン樹脂系接着剤により接着されていることを特徴とする薄膜太陽電池モジュールが記載されている。
特許文献6には、少なくとも一層のポリプロピレン系樹脂シートを備え、該ポリプロピレン系樹脂シートの少なくとも一面側にポリエチレン系樹脂からなるシートが配された積層シートを用いた太陽電池用裏面保護シートが記載されている。
特許文献7には、紫外線吸収剤と光安定化剤とを含む耐熱性ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した三層積層樹脂フィルムからなることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート及びそれを使用した太陽電池モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−324556号公報
【特許文献2】特開2005−322687号公報
【特許文献3】特開2006−270025号公報
【特許文献4】特開2006−179557号公報
【特許文献5】特開2006−310680号公報
【特許文献6】特開2004−223925号公報
【特許文献7】特開2003−243679号公報
【特許文献8】国際公開第2008/043848号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1−7に記載された太陽電池バックシート用積層体では、耐熱性、耐候性、耐湿性などの諸機能を充分に満たすことができず、長期間にわたる過酷な自然環境下においては、高い水蒸気バリア性を維持できないため、必ずしも望ましいものとは言い難い。
また、特許文献8に記載されたガスバリア性積層体では、充分なガスバリア性能を発現するためには、ガスバリア層が少なくとも2層以上必要である上に、開示された内容では太陽電池用部材として供するには耐水性および耐候性等、過酷な自然環境下での使用において望ましいものであるとは、とうてい言い難い。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、長期間にわたる過酷な自然環境下においても、優れた水蒸気バリア性能を発現・維持することが可能な、耐候性および耐湿性に優れる太陽電池バックシート用積層体を提供することにある。
また、前記太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート及び前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する太陽電池バックシート用積層体が、前記課題を解決するための有効な手段となり得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の太陽電池バックシート用積層体、前記太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート及び前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールを提供する。
[1]
塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する太陽電池バックシート用積層体。
[2]
前記塩化ビニリデン系樹脂層と、前記シリコーン変性アクリル系樹脂層とが直に接して積層される、前記[1]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[3]
前記塩化ビニリデン系樹脂層が有機溶剤に塩化ビニリデン系樹脂粉末を溶解して得た、塩化ビニリデンラッカー又は、塩化ビニリデンエマルジョンから製造される、前記[1]又は[2]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[4]
前記塩化ビニリデンラッカー中の塩化ビニリデン系樹脂粉末および、塩化ビニリデンエマルジョンが全単量体中50質量%以上の塩化ビニリデンを含む単量体を乳化重合して得られる、前記[3]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[5]
前記シリコーン変性アクリル系樹脂層がシリコーン変性アクリルエマルジョンから製造される、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[6]
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンがシリコーン樹脂とアクリル樹脂とを含む、前記[5]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[7]
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンが、乳化重合して前記アクリル樹脂を製造する際、シリコーン変性剤を乳化重合の前、乳化重合中、乳化重合後に添加することにより得られる、前記[6]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[8]
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤が配合されている、前記[5]〜[7]のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[9]
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンが、顔料と共に混合された塗料として使用される、請求項[5]〜[10]のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[10]
前記塩化ビニリデン系樹脂層が、塩化ビニリデンラッカー又は塩化ビニリデンエマルジョンの塗工層であり、シリコーン変性アクリル系樹脂層が、シリコーン変性アクリルエマルジョンの塗工層である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[11]
前記塩化ビニリデン系樹脂塗工層の厚さが5〜50μmであり、かつ前記シリコーン変性アクリル系樹脂塗工層の厚さが10〜100μmである、[10]に記載の太陽電池バックシート用積層体。
[12]
基材と、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体とを有し、
前記太陽電池バックシート用積層体が前記基材上に積層される、太陽電池バックシート。
[13]
前記基材がプラスチック基材である、[12]に記載の太陽電池バックシート。
[14]
前記塩化ビニリデン系樹脂層と基材とが、接着剤を介して積層される、[12]又は[13]に記載の太陽電池バックシート。
[15]
前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート系樹脂から製造される、[13]又は[14]に記載の太陽電池バックシート。
[16]
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂が耐加水分解性樹脂である、[15]に記載の太陽電池バックシート。
[17]
[12]〜[16]のいずれか一項に記載の太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間にわたる過酷な自然環境下において、優れた水蒸気バリア性能を発現・維持することが可能な、耐候性および耐湿性に優れる太陽電池バックシート用積層体を提供することができ、また、前記太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート及び前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】太陽電池バックシートの一例を示す断面図。
【図2】太陽電池モジュールの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
(太陽電池バックシート用積層体)
本実施の形態における太陽電池バックシート用積層体は、塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する積層体である。
本実施の形態において、塩化ビニリデン系樹脂層は、太陽電池バックシートとして要求される水蒸気バリア性など、ガスバリア性能を維持するために必須である。そして、シリコーン変性アクリル系樹脂層は、太陽電池バックシートとして要求される長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る耐環境適性、特に耐候性能を維持するために必須である。
また、シリコーン変性アクリル系樹脂層は、耐候性および耐湿性を最大限に発現させるために塩化ビニリデン系樹脂層上に直に接して積層されていることが好ましい。この構造とすることで、ガスバリア層が1層でも太陽電池用バックシートに要求されるガスバリア性能を充分に発揮することが可能となる。
【0014】
本実施の形態において、塩化ビニリデン系樹脂層とシリコーン変性アクリル系樹脂層の間に別の層が入ってもよく、その場合でも太陽電池バックシート用として要求される水蒸気バリア性、耐候性、耐湿性、耐熱性等の性能は発現する。
また、本実施の形態において、塩化ビニリデン系樹脂層上にシリコーン変性アクリル系エマルジョンを直接塗工することで、プラスチック基材上にこれら2つの層が連続して積層されていること(すなわち、塩化ビニリデン系樹脂層とシリコーン変性アクリル系樹脂層が直に接して積層されていること)が好ましい。
プラスチック基材上に塩化ビニリデン系樹脂層が積層され、さらにその上に直に接するかたちでシリコーン変性アクリル系樹脂層が積層されていることが、太陽電池バックシート用積層体の耐候性、耐熱性、耐湿性、ガスバリア性、電気絶縁性、物理的強度などの諸特性からより好ましい。
【0015】
(塩化ビニリデン系樹脂層)
本実施の形態における塩化ビニリデン系樹脂層は、塩化ビニリデン系フィルム、塩化ビニリデンレジン、塩化ビニリデンエマルジョンなどから製造されるものであれば、特に限定されるものではないが、塩化ビニリデンエマルジョン又は溶剤に塩化ビニリデンレジンを溶解させた塩化ビニリデンラッカーから製造されることが好ましく、膜厚を制御しやすいという観点から、塩化ビニリデンエマルジョンから製造されることがより好ましい。
また、部材構成の簡素化、加工性などの生産性の観点から塩化ビニリデン系樹脂層が、塩化ビニリデンエマルジョン又は塩化ビニリデンラッカーをコーティング(塗工)して得られることがより好ましい。
なお、ここで、塩化ビニリデン系樹脂層とは、塩化ビニリデン系樹脂単独又はこれを含む樹脂組成物からなる層をいう。また、塩化ビニリデン系樹脂とは、塩化ビニリデンを単量体成分として含む重合体であり、塩化ビニリデンの単独重合体であっても、塩化ビニリデンとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。塩化ビニリデン系樹脂が共重合体である場合、塩化ビニリデン樹脂中の塩化ビニリデンの重合割合は50質量%以上であることが好ましく、50〜94質量%であることがより好ましく、80〜93質量%であることがさらに好ましく、88〜92質量%であることがよりさらに好ましい。
また、塩化ビニリデンレジンとは、塩化ビニリデン系樹脂単独又はこれを含む樹脂組成物からなる乾燥粉末体のことである。
さらに、塩化ビニリデン系フィルムとは、塩化ビニリデン系樹脂単独又はこれを含む樹脂組成物からなるフィルムをいう。
塩化ビニリデンエマルジョンとしては、塩化ビニリデンを主成分として重合させて製造される樹脂組成物のエマルジョンであれば、特に限定されるものではない。他の成分を混合したエマルジョンであってもよく、塩化ビニリデンが他の成分と共重合したものであってもよい。塩化ビニリデンエマルジョンとしては、全単量体中50質量%以上の塩化ビニリデンを含む単量体を乳化重合して得られるものが好ましい。塩化ビニリデンの含有量としては、全単量体中、50〜94質量%であることがより好ましく、80〜93質量%であることがさらに好ましく、88〜92質量%であることがよりさらに好ましい。
塩化ビニリデンの比率が50質量%以上であることにより、水蒸気バリア性などガスバリア性能を維持することができる。また、塩化ビニリデンの比率が94質量%以下であることにより、実用上塗膜の成膜性に優れる塩化ビニリデン系樹脂層とすることができる。
塩化ビニリデンラッカーとしては、塩化ビニリデン系樹脂の粉末、例えば、上記記載のエマルジョンを凝集・洗浄・乾燥粉末化したもの、を有機溶剤に溶解させることで得られるものであれば、特に限定されるものではない。有機溶剤としては、塩化ビニリデン系樹脂を溶解でき、乾燥時に揮発するものであればよく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、それらを1種もしくは2種以上を任意の割合で混合したものが使用できる。
【0016】
本実施の形態において、塩化ビニリデンと共重合可能な単量体の具体例としては、例えば、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル並びにアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。
これらの単量体のうち一種又は二種以上を選択して用いることができる。
【0017】
また、塩化ビニリデンエマルジョンや塩化ビニリデンラッカーには、皮膜のブロッキング防止のための無機系すべり剤(例えばシリカ粒子)、有機系すべり剤、結晶化促進のための結晶核、接着剤など、各種添加剤を添加してもよい。
各添加剤の添加量は、塩化ビニリデン系樹脂対比で無機系すべり剤は0.2〜0.5質量%、有機系すべり剤は0.2〜2.0質量%、接着剤は1〜6質量%が好ましい。
ここでいう接着剤としては、塩化ビニリデンエマルジョンや塩化ビニリデンラッカー中に均一に溶解又は分散するものであれば何でも良く、例えばウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0018】
塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニリデンラッカーをコーティングする方法としては、基材に、塩化ビニリデンエマルジョンを塗布し、乾燥することにより塩化ビニリデン皮膜を形成する方法が好ましい。この時の塗布液の濃度は1〜70質量%であることが好ましく、乾燥は20〜150℃の間で行われることが好ましい。
コーティングして得られる塩化ビニリデン系樹脂層の性能を充分に発揮させるためには、コーティングした後、熟成させ結晶化度を促進させることが好ましく、そのために20〜90℃でエージングさせることが好ましい。
前記塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニリデンラッカーの塗布方法としては、グラビアコート、ディップニップコート、メータリングバーコート、エアナイフコートなどの様々な方法により塗布することが可能であるが、塩化ビニリデン系樹脂層の性能を充分に発揮させることや均一な塗布のためにはメータリングバーコート、エアナイフコートの方法により塗布することが好ましい。
【0019】
本実施の形態において、塩化ビニリデン系樹脂層と基材との接着力を増すために塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニリデンラッカーの塗布に先立って基材にコロナ放電処理を行ってもよく、接着剤を介して塩化ビニリデン系樹脂層を積層させてもよい。
接着剤としては、使用する基材と塩化ビニリデン系樹脂層を接着させることが可能なものであれば何でも良く、基材としてプラスチック基材を用いる場合、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン変性アクリル樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレンブタジエン共重合体系接着剤などが挙げられる。これらの内、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン変性アクリル樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤が好ましい。
接着剤の使用方法としては、塩化ビニリデン系樹脂層が、塩化ビニリデンラッカーから製造される場合には、ラッカー中に添加して使用するのが好ましい。その際の添加量は、塩化ビニリデン系樹脂対比で1〜6質量%程度が好ましい。
一方、塩化ビニリデン系樹脂層が、塩化ビニリデンエマルジョンから製造される場合には、あらかじめ基材上に接着剤を塗布しておき、その上に塩化ビニリデンエマルジョンを塗布するのが好ましい。
【0020】
本実施の形態における塩化ビニリデン系樹脂層の厚みは5〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらにより好ましい。プラスチック基材などに塩化ビニリデンエマルジョンや塩化ビニリデンラッカーをコーティングすることにより得られる塩化ビニリデン系樹脂層のガスバリア性は、一般に塩化ビニリデン系樹脂層の厚みに依存し、塗膜厚みが大きいほど高いガスバリア性を発揮することができる。
しかしながら、塩化ビニリデン系樹脂層の塗膜厚みを大きくするため、一度に多くの塩化ビニリデンエマルジョンや塩化ビニリデンラッカーをコーティングした場合、その乾燥過程において塗膜にクラックやヨレが発生する問題が生じる場合がある。このような塗膜外観不良が発生すると、商品としての外観を損なうばかりか期待するガスバリア性を発揮できない。塩化ビニリデン系樹脂層の塗膜厚みを大きくするためには、一旦コーティングした樹脂層の上に塩化ビニリデンエマルジョンや塩化ビニリデンラッカーを複数回重ね塗りする方法などにより行うことができる。
【0021】
(シリコーン変性アクリル系樹脂層)
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリル系樹脂層は、シリコーン変性アクリル系フィルム、シリコーン変性アクリルレジン、シリコーン変性アクリルエマルジョンなどから製造されるものであれば、特に限定されるものではないが、膜厚を制御しやすいという観点から、シリコーン変性アクリルエマルジョンから製造されることが好ましい。
また、部材構成の簡素化、加工性などの生産性の観点からシリコーン変性アクリル系樹脂層が、シリコーン変性アクリルエマルジョンをコーティングして得られることがより好ましい。
なお、ここで、シリコーン変性アクリル系樹脂層とは、シリコーン変性アクリル系樹脂単独又はこれを含む樹脂組成物からなる層をいう。また、シリコーン変性アクリル系樹脂とは、シロキサン結合とアクリル系樹脂が共存している樹脂又は樹脂組成物をいい、例えば、シリコーン変性剤(シロキサン化合物)とエチレン性不飽和単量体の共重合体であってもよいし、その一部にシリコーン変性剤が結合したアクリル系樹脂であってもよいし、シリコーン樹脂とアクリル系樹脂の混合物であってもよい。
また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体であっても、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。共重合体である場合、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体の重合割合は50質量%以上であってもよく、50〜94質量%であってもよく、80〜93質量%であってもよく、88〜92質量%であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸エステル単量体およびアクリル酸エステル単量体等が挙げられる。
シリコーン樹脂とは、シロキサン結合を有する高分子化合物をいう。
さらに、シリコーン変性アクリル系フィルムおよびシリコーン変性アクリルレジンとは、それぞれ、シリコーン変性アクリル系樹脂単独又はこれを含む樹脂組成物からなるフィルム又は乾燥粉末をいう。
また、シリコーン変性アクリル系樹脂層が、シリコーン変性アクリルエマルジョンと顔料とを混合した塗料をコーティングすることで得られても良い。顔料としては、とくに限定するものではないが、例えば白色顔料であれば、酸化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉等の無機顔料および、ポリスチレン系共重合体粒子等の有機顔料が使用できる。また、黒色顔料であればカーボンブラック等が、赤色顔料であれば鉛丹、酸化鉄赤等が、黄色顔料であれば、黄鉛、亜鉛黄等が、青色顔料であればウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等が使用できる。太陽電池モジュールに入射した光を反射させ、電気への変換効率をあげるという観点では、白色顔料を使用することが好ましく、なかでも二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウムを使用することがより好ましい。
顔料とシリコーン変性アクリルエマルジョンからなる塗料には、必要に応じて分散剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤(有機溶剤)等が使用される。造膜助剤としては、後述するものが使用できる。
顔料とシリコーン変性アクリルエマルジョンの配合比率は、塗布乾燥後の塗膜中における質量比で、顔料20〜60質量%、シリコーン変性アクリル樹脂40〜80質量%であることが好ましく、顔料30〜50質量%、シリコーン変性アクリル樹脂50〜70質量%であることがより好ましい。
顔料の質量比率を20質量%以上とすることで塗膜の不透明性が向上し、白色顔料の場合には太陽光発電セルの表面から入射した光を効率よく反射させることができる。一方、60質量%以下とすることで、塗膜の成膜性ならびに自然環境化における耐候性が良好となる。
【0022】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンとしては、耐候性の観点から、シリコーン変性剤と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(以下、単に、「エチレン性不飽和単量体A」と記載する場合がある。)と、少なくとも1種の前記カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体とは別のエチレン性不飽和単量体(以下、単に、「エチレン性不飽和単量体B」と記載する場合がある。)と、乳化剤と、を重合して得られるシリコーン含有高分子エマルジョンが好ましい。シリコーン変性アクリルエマルジョンは、耐光性の観点から、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤が配合されていることが好ましく、また、シリコーン変性アクリルエマルジョンに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を共重合して得られるものであってもよい。
【0023】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンを重合することにより製造する方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルション重合などの重合方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
【0024】
本実施の形態において、乳化重合は、ラジカル重合性単量体であるエチレン性不飽和単量体Aとエチレン性不飽和単量体Bとのラジカル重合による乳化重合と、シリコーン変性剤の加水分解・縮合反応による乳化重合を同時に水性媒体中で行うことが好ましく、アクリル樹脂とシリコーン樹脂を含有するシリコーン変性アクリルエマルジョンを得ることができる。
前記水性媒体としては、主に水が用いられるが、炭素数1〜3の低級アルコール又はアセトンなどの水に可溶な溶媒を水に添加した媒体を用いることもできる。この際添加する水以外の溶媒の量は重合開始前のプレ乳化液中で20質量%以下となるように添加することが好ましい。水以外の溶媒の量を20質量%以下とすることにより、プレ乳化液の乳化状態が破壊されず、乳化重合が安定に進行する。溶媒として水のみを用いて、乳化重合を行うことがさらに好ましい。
【0025】
本実施の形態において、乳化重合を行う前の、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体A、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体B及び乳化剤からなるプレ乳化液のpHは、特に限定されるものでないが、pH4.0以下であることが好ましい。pH4.0以下で乳化重合を実施することにより、シリコーン変性剤の縮合反応が速やかに起こり、乳化重合後に縮合反応が進むことを抑制することができる。製品としての貯蔵安定性の観点から、反応系のpHが4.0以下であることが好ましく、pH1.5以上3.0以下であることがより好ましい。
また、本実施の形態において、乳化重合を行う際のラジカル開始剤の導入方法に特に制限はない。ラジカル開始剤として過硫酸塩などをあらかじめ反応系に導入してもよい。また、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体A、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体B、乳化剤及びラジカル開始剤とからなるプレ乳化液を、直接反応系に逐次添加する方法でもよい。また、プレ乳化液とは別に水溶液系などで反応系へ逐次導入することも可能である。
【0026】
前記、ラジカル重合では、シリコーン変性剤の添加が乳化重合の前に行われても、乳化重合中に行われても、乳化重合の後に行われてもよい。乳化重合中に行われることがより好ましい。また、前記乳化重合において、シリコーン変性剤の加水分解・縮合反応による乳化重合は、エチレン性不飽和単量体Aやエチレン性不飽和単量体Bなどのラジカル重合による乳化重合開始と同時であることが特に好ましい。
さらに、シリコーン変性剤の加水分解・縮合反応によるシリコーン樹脂を、アクリル樹脂を含むアクリルエマルジョンとブレンド配合してもよい。
【0027】
本実施の形態において用いるシリコーン変性剤は、それぞれ、下記式(1)、(2)及び(3)で表されるシラン化合物(1)、シラン化合物(2)及びシラン化合物(3)並びに環状シラン化合物から選ばれる少なくとも一種類を含み、これらの二種類以上による組合せでもよい。
太陽電池バックシートとして要求される耐候性能を維持するためには、前記シラン化合物(2)と前記シラン化合物(3)の組合せが好ましい。
【0028】
12mSiR3(3-m) (1)
(式中、
1は、フェニル基又はシクロヘキシル基であり、
2は、水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、
3は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基又は水酸基から選択され、
mは、0又は1である。)
【0029】
CH3Si(R43 (2)
(式中、
4は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基又は水酸基から選択される。)
【0030】
(CH32Si(R52 (3)
(式中、
5は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基又は水酸基から選択される。)
【0031】
本実施の形態において、シリコーン変性剤として、シラン化合物(1)を少なくとも一種類含むことは、重合を行った後に、シリコーン樹脂とアクリル樹脂との共存が円滑となるため好ましい。
また、シリコーン変性剤として、シラン化合物(2)を少なくとも一種類含むことは、シリコーン構造の架橋密度を付与するために好ましい。
さらに、シリコーン変性剤として、シラン化合物(3)を少なくとも一種及び/又は環状シラン化合物を含むことは、シリコーン変性剤が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低下させることにより、シリコーン変性アクリルエマルジョンを塗膜する際に可撓性を付与することができるため好ましい。
【0032】
本実施の形態において用いる前記シラン化合物(1)の具体例としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトシキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシランなどが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよく、またこれらの二種以上を用いてもよい。
シラン化合物(1)としては、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0033】
本実施の形態に用いる前記シラン化合物(2)の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよく、これらの二種以上を用いてもよい。
シラン化合物(2)としては、メチルトリメトキシシランが好ましい。
【0034】
本実施の形態に用いる前記シラン化合物(3)の具体例としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよく、これらの二種以上を用いてもよい。
シラン化合物(3)としては、ジメチルジメトキシシランが好ましい。
【0035】
本実施の形態に用いる前記環状シラン化合物の具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよく、これらの二種以上を用いてもよい。
【0036】
シリコーン変性剤は、前記シラン化合物(1)、シラン化合物(2)、シラン化合物(3)及び環状シラン化合物から選ばれるシリコーン変性剤に加え、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを含むことができる。
【0037】
また、シリコーン変性剤を添加して、又はシリコーン変性剤を添加せずに、エチレン性不飽和単量体A、エチレン性不飽和単量体B及び乳化剤からエマルジョンを作製し、シリコーンエマルジョンを後からブレンド配合してもよい。後からブレンド配合するシリコーンエマルジョンとしては、ジメチルシリコーンエマルジョンの他、フェニル系、直鎖アルキル系、水素系、アミノ系、エポキシ系、メルカプト系シリコーンエマルジョンやシリコーンレジンエマルジョンなどが挙げられる。
【0038】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリル系樹脂層は、シリコーン変性剤が加水分解・縮合し、アクリル系樹脂(アクリルエマルジョン粒子)中にシリコーン樹脂(シロキサン結合)が存在しているので、極めて優れた耐候性が達成される。
また、シリコーン変性剤の縮合物の存在は、29Si−NMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)、又は1H−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって確認することができる。なお、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)では、テトラメチルシランを内部標準として使用するが、29Si−NMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)では、内部標準は使用せず、シリコンゴムを測定してその信号を−22ppmとするか、あるいはクロロホルムにテトラメチルシランを溶解した溶液試料の測定値を0ppmとしてそれを外部標準として使用する。
例えば、シラン化合物(1)の縮合物は、29Si−NMRのケミカルシフトが−35〜−90ppmにピークを示すので同定することができる。また、シラン化合物(2)の縮合物は、29Si−NMRのケミカルシフトが−40〜−80ppmにピークを示すので同定することができる。さらに、シラン化合物(3)の縮合物は、29Si−NMRのケミカルシフトが−16〜−26ppmにピークを示すので同定することができる。また、環状シラン化合物の縮合物も、その構造に応じた29Si−NMRのケミカルシフトにピークを示すので同定することができる。
【0039】
本実施の形態において、シリコーン変性剤は、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量に対して、好ましくは0.1〜200質量%、より好ましくは0.1〜120質量%、さらに好ましくは0.1〜80質量%、よりさらに好ましくは1〜10質量%で用いられる。
【0040】
本実施の形態において用いるエチレン性不飽和単量体Aとしては、エチレン性不飽和単量体Bと共重合可能な、少なくとも1種のカルボキシル基を持つラジカル重合性カルボン酸単量体が挙げられ、具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びそのモノエステル、フマル酸及びそのモノエステル並びにマレイン酸及びそのモノエステルなどが挙げられる(以下、アクリル酸及びメタアクリル酸をあわせて、単に、(メタ)アクリル酸と記載する場合がある。)。
エチレン性不飽和単量体Aは、シリコーン変性剤の加水分解反応および縮合反応を促進させる触媒としても作用するため、これらの群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本実施の形態において、エチレン性不飽和単量体Aは、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量中、好ましくは0.1〜15質量%で用いられる。
【0041】
本実施の形態において用いるエチレン性不飽和単量体Bとしては、エチレン性不飽和単量体Aと共重合可能な少なくとも1種のコモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルに代表される(メタ)アクリレート単量体や(メタ)アクリルアミド単量体及びその他のビニル単量体などが挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド単位の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド単位の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイドが好ましい。
【0043】
前記(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
前記(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0045】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0046】
前記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。
【0047】
エチレン性不飽和単量体Bとしては前記以外では、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0048】
前記(メタ)アクリレート単量体の含有量は、エチレン性不飽和単量体Bの合計質量中、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%である。
【0049】
本実施の形態においては、エチレン性不飽和単量体Bの主成分である(メタ)アクリレート単量体の中でも、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体をさらに含むことが、耐久性に優れるシリコーン変性アクリル系樹脂層とすることができるため好ましい。
前記シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換されていてもよく、また、環状にエポキシ基が存在していてもよい。
【0050】
シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、炭素数5〜12のシクロアルキル基のエステルが挙げられる。
シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体の具体例として、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
CH2=C(R6)COOR7 (4)
(式中、
6は、水素原子又はメチル基であり、
7は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロドデシル基であり、これらシクロアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基を置換基として有してもよい。)
【0051】
前記式(4)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3シクロヘキセンオキサイドなどを挙げることができる。
その中では、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和単量体Bの主成分である(メタ)アクリレート単量体中、前記シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を含有する割合は、エチレン性不飽和単量体B中の(メタ)アクリレート単量体の合計質量中、5質量%以上であることが好ましい。5質量%〜99質量%であることがより好ましく、5質量%〜80質量%であることがさらに好ましい。
シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、一種を用いてもよく、それらの二種以上の混合物を用いてもよい。
シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を、エチレン性不飽和単量体B中の(メタ)アクリレート単量体の全質量に対し5質量%以上含有することにより、耐久性に優れるシリコーン変性アクリル系樹脂層とすることができ、99質量%以下含有することにより、シリコーン変性アクリルエマルジョンの成膜性が優れたものとなる。
【0053】
(メタ)アクリルアミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
その他のビニル単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトンなどが挙げられる。
また、その他のビニル単量体としては、シアン化ビニル単量体であってもよく、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
さらに、その他のビニル単量体としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル、ブタジエン、エチレンなども挙げられる。
【0054】
本実施の形態において、エチレン性不飽和単量体Bは、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量中、好ましくは85〜99.9質量%で用いられる。
【0055】
本実施の形態において用いる乳化剤には、スルホン酸基(−SO3H)又はスルホネート基(−SO3M)を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基(−OSO3H又は−OSO3M)を有するエチレン性不飽和単量体のうち、少なくともいずれか一つを含むことが、シリコーン変性アクリル系樹脂層の高度な耐水性を達成するために好ましい。
【0056】
本実施の形態におけるスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ遊離のスルホン酸基又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物が挙げられる。
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基に結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が好ましい。
【0057】
本実施の形態におけるスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩である、例えば、下記式(5)〜(8)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式(5)〜(8)中、
8は、水素又はメチル基であり、
9は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜19のアラルキル基である炭化水素基若しくはその一部が水酸基、カルボン酸基で置換された炭化水素基又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が1〜20及びアルキレン部分の炭素数が2〜4である。)若しくはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が1〜20、アルキレン部分の炭素数が2〜4である。)であり、
Aは、炭素数2〜4のアルキレン基又はアルキレン基の一部の水素が水酸基若しくはカルボン酸基で置換されたアルキレン基であり、
Mは、アンモニウム、ナトリウム又はカリウムであり、
nは、0〜200の整数である。)
【0059】
前記式(5)及び(6)で表される化合物を含む乳化剤として、例えば、エレミノールJS−2、JS−5(登録商標、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられ、前記式(7)及び(8)を含む乳化剤として、例えば、ラテムルS−120、S−180A、S−180(登録商標、花王株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
また、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などが挙げられる。スルホネート基により一部が置換されたアルキル基を有する化合物の具体例として、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミドのアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩、アクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩、(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などが挙げられる。
【0061】
本実施の形態における硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体とは、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基を有する化合物をいう。これらのうち、硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群より選ばれる基を有する化合物が好ましい。
【0062】
本実施の形態における硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例として、下記式(9)〜(11)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

(式中、
10は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基であり、
11は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基であり、
12は、水素又はプロペニル基であり、
Aは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム又はアルカノールアミン残基であり、
nは、1〜200の整数である。)
【化6】

(式中、
13は、水素又はメチル基であり、
14は、炭素数8〜24のアルキル基、アルキルフェニル基又はアシル基であり、
Aは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、
Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム又はアルカノールアミン残基であり、
lは、0〜50の整数であり、
nは、0〜20の整数である。)
【化7】

(式中、
15は、水素又はメチル基であり、
16は、炭素数8〜30のアルキル基であり、
Aは、炭素数2〜4のアルキレン基又はアルキレン基の一部の水素が水酸基若しくはカルボン酸基で置換アルキレン基であり、
Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム又はアルカノールアミン残基であり
nは、0〜200の整数である。)
【0063】
前記式(9)で表される化合物として、例えば、アクアロンHS−10(登録商標、第一工業製薬株式会社製)などが挙げられ、前記式(10)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025A、SR−10N、SR−20N(製品名、株式会社ADEKA製)などが挙げられ、前記式(11)で表される化合物として、例えば、アクアロンKH−10、KH−05(登録商標、第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
【0064】
本実施の形態において、乳化剤として用いられるスルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体は、エマルジョン中に、エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在するか、未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着若しくはエマルジョン水相中に存在するか、又は水溶性単量体との共重合物若しくは乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体どうしの共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着又はエマルジョン水相中に存在している。
中でも、エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物の状態で存在する比率を高めることによって、エマルジョンより得られるフィルムの耐湿性を高度なものとすることができる。
乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)により、各物質を同定することができる。
【0065】
本実施の形態において、乳化剤は、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量に対して、好ましくは0.05質量%〜10質量%用いられ、より好ましくは0.1質量%〜5質量%用いられる。
【0066】
本実施の形態において、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を含む乳化剤以外に、通常の界面活性剤を併用することもできる。前記界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどの非反応性ノニオン型界面活性剤、アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40(製品名、株式会社ADEKA製)などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン又はアクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(登録商標、第一工業製薬株式会社製)などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどの反応性ノニオン型界面活性剤といわれる、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤などを併用することができる。
【0067】
前記界面活性剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量に対して、アニオン型界面活性剤については、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下であり、非反応性ノニオン型界面活性剤及び反応性ノニオン型界面活性剤については、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。この範囲で前記界面活性剤を使用すると、耐湿性が良好なフィルムを形成することができる。
【0068】
本実施の形態において、シリコーン変性アクリルエマルジョンは、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤が配合されていることが好ましく、高耐候性を付与したシリコーン変性アクリルエマルジョンを得ることができる。また、シリコーン変性アクリルエマルジョンが光安定剤を共重合して得られたものであってもよい。
シリコーン変性アクリルエマルジョンに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有させる方法としては、シリコーン変性アクリルエマルジョンに造膜助剤などを混合した後に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を添加してもよいが、より長期にわたる耐光性および耐久性の発現のためには、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を乳化重合時に存在させることが好ましい。紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量を基準として、0.1〜20質量%用いることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。また、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、その高耐久性エマルジョンを用いて皮膜を形成した際に、皮膜がより耐候性に優れたシリコーン変性アクリル系樹脂層を得ることができる。
【0069】
本実施の形態において用いる紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、本実施の形態において用いる光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物を用いることが好ましい。耐久性の優れたシリコーン変性アクリルエマルジョンと紫外線吸収能が高いベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤及び/又は光安定剤とを組み合わせることで、相乗効果により卓越した耐久性を示す。
その中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と光安定剤との組合せがより好ましい。
【0070】
前記ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ラジカル重合性のベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0071】
前記ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、メチル−3−〔3’−tert−ブチル−5’−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4’−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー株式会社製、製品名:TINUVIN(登録商標)1130)、イソオクチル−3−〔3’−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー株式会社製、製品名:TINUVIN(登録商標)384)、2−(3’−ドデシル−5’−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー株式会社製、製品名:TINUVIN(登録商標)571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4’−(1’’,1’’,3’’,3’’−テトラメチルブチル)−6’−(2H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2’−イル)−4,6−ビス(1’−メチル−1’−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー株式会社製、製品名:TINUVIN(登録商標)900)などが挙げられる。
ラジカル重合性のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(2’’−メタクリロイルオキシエチル)フェニル)))−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、製品名:RUVA−93)、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3’−tert−ブチルフェニル)))−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−3’−tert−ブチルフェニル)))−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー株式会社製、製品名:CGL−104)などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、TINUVIN(登録商標)384が好ましい。
【0072】
前記トリアジン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477DW、TINUVIN479(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)などが挙げられる。
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、TINUVIN400が好ましい。
【0073】
前記光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、塩基定数(pKb)が8以上のものがより好ましい。
具体的には、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられ、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー株式会社製、製品名:TINUVIN(登録商標)292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)などが挙げられる。
ラジカル重合性の光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(株式会社ADEKA製、製品名:アデカスタブLA82)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(株式会社ADEKA製、製品名:アデカスタブLA87)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどが挙げられる。
光安定剤としては、TINUVIN(登録商標)123が好ましい。
【0074】
本実施の形態における乳化重合は、重合開始剤を使用し、熱又は還元性物質などを用いたラジカル分解により、エチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせることにより行うことができる。
乳化重合のための前記重合開始剤としては、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを使用することができる。
具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス化合物を挙げられる。
シリコーン変性剤の加水分解反応及び縮合反応を促進させるための触媒としても効果のある過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
前記重合開始剤の量としては、エチレン性不飽和単量体A及びエチレン性不飽和単量体Bとの合計質量に対して、0.05質量%〜1質量%を通常用いることができる。
【0075】
本実施の形態において、乳化重合反応は常圧下、65〜90℃の反応温度で行うことが好ましいが、単量体などの反応温度における蒸気圧などの特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。
【0076】
本実施の形態において、乳化重合の反応時間としては、導入時間と、導入後の熟成(cooking)時間を合わせた時間となる。導入時間は、各種原料を反応系へ同時に導入する場合は通常数分であり、各種原料を反応系へ逐次導入する場合は、重合による発熱が除熱可能な範囲で反応系へ各種原料を導入するため、最終的に得られるエマルジョン中の重合体濃度によっても異なるが、通常10分以上である。導入後の熟成(cooking)時間としては、少なくとも10分以上であることが好ましい。
前記熟成時間を10分以上とすることにより、各原料を反応させるのに十分な時間となる。また、シリコーン変性剤が加水分解した後に縮合するのに十分な時間とすることができる。
重合速度の促進及び70℃以下での低温での重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いることが好ましい。さらに、得られるシリコーン変性アクリルエマルジョン中の重合体の分子量を調整するために、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を任意に添加することもできる。
【0077】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンでは、乳化重合終了後、シリコーン変性アクリル系樹脂層とするための成膜時の硬化触媒として、例えば、ジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、オクチル酸すず、ラウリン酸すず、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネートなどの有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどのアミン化合物を、高耐久性エマルジョンへ添加することもできる。
これらの硬化触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが好ましい。
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンには、エマルジョンの分散の長期安定を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0078】
本実施の形態において、乳化重合終了後に、未反応単量体の揮発性物質、水、アルコールなどを蒸発除去するために濃縮を行うこともできる。
【0079】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンの分散質の平均粒子径は、10〜1,000nmであることが好ましい。
また、得られたエマルジョン中の分散質(固形分)と分散媒としての水性媒体との質量比は70/30以下が好ましく、より好ましくは30/70以上65/35以下である。
【0080】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンには、造膜助剤、増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。
【0081】
前記造膜助剤として、具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルなどが挙げられる。これら造膜助剤は、単独で、又は任意に併用して配合することができる。
【0082】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリルエマルジョンをコーティングする方法としては、シリコーン変性アクリルエマルジョンを塗布し、乾燥する方法が挙げられる。前記方法により樹脂皮膜を形成して、シリコーン変性アクリル系樹脂層を製造することができる。
このときの塗布液の濃度は1〜70質量%が好ましく、乾燥は20〜150℃の間で行うことが好ましい。前記エマルジョンの塗布方法としては、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。
【0083】
本実施の形態におけるシリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みは10〜100μmが好ましく、20〜90μmであることがより好ましく、30〜85μmであることがさらに好ましい。シリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みを10μm以上とすることにより耐久性や耐候性など耐環境適性に優れる太陽電池バックシートを得ることができる。また、シリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みを100μm以下とすることにより、乾燥過程において塗膜にクラックが発生しにくく、成膜性に優れるシリコーン変性アクリル系樹脂層を得ることができる。乾燥工程においては、成膜性を高めるために、前記造膜助剤を使用することができる。
【0084】
(太陽電池バックシート)
本実施の形態における太陽電池バックシートは、基材上に、上述した太陽電池バックシート用積層体が積層されるシートである。
積層順に限定はないが、具体的には、基材上に、塩化ビニリデン系樹脂層が積層され、さらにその上にシリコーン変性アクリル系樹脂層が積層されるシートである。
本実施の形態において、塩化ビニリデン系樹脂層とシリコーン変性アクリル系樹脂層は、基板上に連続して積層されることにより(すなわち、基材上に塩化ビニリデン系樹脂層が積層され、更にその上に直に接するかたちでシリコーン変性アクリル系樹脂層が積層されることにより)、塩化ビニリデン系樹脂層を保護し、ガスバリア性を良好なものとすることができる。
また、プラスチック基材上に塩化ビニリデン系樹脂層が積層され、さらにその上にシリコーン変性アクリル系樹脂層が積層されていることが、太陽電池バックシートの耐候性、耐熱性、耐湿性、ガスバリア性、電気絶縁性、物理的強度などの諸特性から好ましい。
【0085】
(基材)
本実施の形態において、基材は、太陽電池バックシート用積層体を支持できるものであれば特に限定はない。例えば、プラスチック基材が好ましく用いられる。
本実施の形態において用いるプラスチック基材は、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。前記熱可塑性樹脂フィルムは、ジカルボン酸誘導体とジオール誘導体との重縮合体であるポリエステル樹脂フィルムであることが好ましい。
前記熱硬化性樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂を用いることができる。ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びその誘導体、グリコール成分としてエチレングリコールを用いてエステル化反応で高分子化した結晶性熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いることがより好ましい。これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合体又はブレンド体であってもよい。ここで好ましく使用されるポリエステルの融点は、250℃以上のものが耐熱性の上で好ましく、300℃以下のものが生産性の上で好ましい。さらに、熱可塑性樹脂は、耐加水分解性を持たせるために、数平均分子量18,500〜40,000の範囲内の高分子量ポリマーで構成された2軸延伸フィルムであることが好ましい。耐加水分解性を有するためには、前記数平均分子量が高いほど好ましいが、重合性、溶融成形性、2軸延伸性の観点から、数平均分子量が前記範囲内にあるポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
本実施の形態における数平均分子量は、一般的に用いられる浸透クロマトグラフ法(GPC)などで測定することができる。
【0086】
前記基材の厚さは、太陽電池バックシートの基材としての適正な腰の強さ、加工性や電気絶縁性の観点から100〜350μmの範囲が好ましい。
また、基材には、コロナ放電処理や大気プラズマ放電処理など、コーティングのための各種表面処理を施してもよく、エステル系やウレタン系接着剤など公知の接着剤などを使用することもできる。
【0087】
図1は、本実施の形態の太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシートの一例を示す断面図である。
本実施の形態の太陽電池バックシートを、図1を用いて説明する。
図1に示すように、塩化ビニリデン系樹脂層4とシリコーン変性アクリル系樹脂層5からなる太陽電池バックシート用積層体を有する太陽電池バックシート1は、プラスチック基材2に、接着剤3を介して、塩化ビニリデン系樹脂層4とシリコーン変性アクリル系樹脂層5を積層した構造を持つ。
【0088】
図2は、本実施の形態の太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
本実施の形態の太陽電池モジュールを、図2を用いて説明する。
図2に示すように、太陽電池バックシート1を備える太陽電池モジュール6は、太陽光が当たるガラス層7と太陽電池バックシート1の間に、太陽電池素子8と充填材9が挟みこまれた構造が一例として挙げられる。
ここで、バックシートの装着の向きに関しては特に制限はないが、耐候性、耐湿性の観点から、シリコーン変性アクリル樹脂層が外側となるよう使用することが好ましい。
プラスチック基材層が外側になるよう使用する際には、プラスチック基材の非積層面にシリコーン変性アクリル樹脂層を設けることが好ましい。その際には、プラスチック基材面とシリコーン変性アクリル樹脂面との接着性が増すように、プラスチック基材面をコロナ放電処理等により易接着処理することがより好ましい。
【0089】
本実施の形態の太陽電池バックシートは、塩化ビニリデン系樹脂層と、塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する太陽電池バックシート用積層体を備えることにより、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、特に耐加水分解性や耐候性などの耐環境適性、耐熱性、耐湿性、ガスバリア性、電気絶縁性、物理的強度などの諸特性に優れ、部材構成の簡素化、加工性などの生産性にも優れる。この効果は、シリコーン変性アクリル系樹脂層が塩化ビニリデン樹脂層上に直に接するように積層される場合に特に顕著に奏される。
また、前記太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュールとすることにより、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、特に耐加水分解性や耐候性などの耐環境適性、耐熱性、耐湿性、ガスバリア性、電気絶縁性、物理的強度などの諸特性に優れる太陽電池モジュールを得ることができる。
【実施例】
【0090】
以下本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
以下、「部」とは、断りがない限り「質量部」を意味する。
【0091】
[参考例]
以下に、塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニリデンラッカー、シリコーン変性アクリルエマルジョンの製造方法例と、比較に用いたアクリルエマルジョンの製造方法例を参考例として示す。
【0092】
(塩化ビニリデンエマルジョン)
[参考例1]
ガラスライニングを施した耐圧反応器内に、イオン交換水100部、アルキル硫酸ナトリウム0.1部、過硫酸ナトリウム0.9部を仕込み、脱気を行ったのち内容物の温度を50℃に保った。別の容器に塩化ビニリデン91.8部、メタクリロニトリル7.3部を計量混合してモノマー混合物を作製した。
前記耐圧反応器内にメタクリロニトリル0.4部とメタクリル酸0.5部を添加したのち、前述のモノマー混合物3部を仕込み、その後直ちに残りのモノマー混合物96.1部を16時間かけて全量連続添加した。このとき亜硫酸水素ナトリウム0.1部もモノマーと一緒に連続添加した。モノマー混合物を全量添加したのち内圧は直ちに降下しはじめ、内圧の低下がなくなるまで反応を進行させて塩化ビニリデンエマルジョン〔A〕を得た。
【0093】
[参考例2]
ガラスライニングを施した耐圧反応器内に、イオン交換水100部、アルキル硫酸ナトリウム0.1部、過硫酸ナトリウム0.9部を仕込み、脱気を行ったのち内容物の温度を50℃に保った。別の容器に塩化ビニリデン89.0部、アクリロニトリル8.5部、メタクリル酸メチル1.4部を計量混合してモノマー混合物を作製した。
前記耐圧反応器内にアクリロニトリル0.5部とアクリル酸0.6部を添加したのち、前述のモノマー混合物3部を仕込み、その後直ちに残りのモノマー混合物95.9部を16時間かけて全量連続添加した。このとき亜硫酸水素ナトリウム0.1部もモノマーと一緒に連続添加した。モノマー混合物を全量添加したのち内圧は直ちに降下しはじめ、内圧の低下がなくなるまで反応を進行させて塩化ビニリデンエマルジョン〔B〕を得た。
【0094】
(塩化ビニリデンラッカー)
[参考例3]
参考例1で作製した塩化ビニリデンエマルジョン〔A〕の水分散体300gを、60℃に加温した塩化カルシウムの3%水溶液1000gの中に攪拌しながら少しずつ滴下した後、生成した凝集物を水洗、乾燥して白色の粉末を得た。
こうして得られた塩化ビニリデン系樹脂の粉末50gを、テトラヒドロフラン:トルエン=2:1の混合溶媒500gの中に添加し、30分間攪拌した。塩化ビニリデン系樹脂が完全に溶解した後に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を1.5g添加し、さらに5分間攪拌して塩化ビニリデンラッカー〔C〕を得た。
【0095】
(シリコーン変性アクリルエマルジョン)
[参考例4]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水50.8部と「アクアロンKH−10」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25%水溶液)1部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル3.378部、メタクリル酸シクロヘキシル14.5部、メタクリル酸n−ブチル17.5部、アクリル酸ブチル14部、メタクリル酸0.622部、「TINUVIN384」(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)1.2部、「TINUVIN123」(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)0.6部、「アクアロンKH−10」3部、「エマルゲン120」(登録商標、花王株式会社製、20%水溶液)2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を2.5部、水22.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.578部、メチルトリメトキシシラン2.111部、ジメチルジメトキシシラン3.378部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、メタクリル酸メチル5.25部、メタクリル酸シクロヘキシル6部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸ブチル0.4部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.15部、アクリルアミド0.2部、「アクアロンKH−10」0.6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1部、水14.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル6.822部、メタクリル酸シクロヘキシル9部、メタクリル酸n−ブチル10.5部、アクリル酸ブチル3.3部、メタクリル酸0.378部、「TINUVIN384」0.8部、「TINUVIN123」0.4部、「アクアロンKH−10」0.9部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部、水14.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.138部、メチルトリメトキシシラン1.267部、ジメチルジメトキシシラン2.022部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.3であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔a〕を得た。
【0096】
[参考例5]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水59.5部と「アデカリアソープSR−10N」(株式会社ADEKA製、25%水溶液)3.2部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル11.375部、メタクリル酸シクロヘキシル5部、メタクリル酸n−ブチル17.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル15.5部、アクリル酸0.625部、「アデガリアソープSR−10N」2部、「エマルゲン120」2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.25部、水30.1部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.578部、メチルトリメトキシシラン2.111部、ジメチルジメトキシシラン3.378部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、スチレン1部、メタクリル酸メチル7.8部、メタクリル酸シクロヘキシル2部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸2−エチルヘキシル1部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、アクリルアミド0.2部、「アデカリアソープSR−10N」0.4部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.5部、水19.2部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル14.7部、メタクリル酸シクロヘキシル3部、メタクリル酸n−ブチル10.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル1.425部、アクリル酸0.375部、「TINUVIN400」1部、「TINUVIN123」0.5部、「アデカリアソープSR−10N」0.6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.75部、水218.3部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.138部、メチルトリメトキシシラン1.267部、ジメチルジメトキシシラン2.022部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.4であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔b〕を得た。
【0097】
[参考例6]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水50.8部と「Newcol707SF」(日本乳化剤株式会社製、30%水溶液)1.33部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル3.875部、メタクリル酸シクロヘキシル25部、アクリル酸ブチル20.5部、メタクリル酸0.625部、「Newcol707SF」2.5部、「エマルゲン120」2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を2.5部、水24.5部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.353部、メチルトリメトキシシラン1.277部、ジメチルジメトキシシラン2.038部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、メタクリル酸メチル4.37部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、メタクリル酸n−ブチル0.1部、アクリル酸ブチル2.33部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2部、アクリルアミド0.2部、「Newcol707SF」1部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1部、水14.4部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル3.165部、メタクリル酸シクロヘキシル15部、アクリル酸ブチル10.86部、メタクリル酸0.375部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.6部、「TINUVIN123」0.49部、「Newcol707SF」1部、「アクアロンKH−10」0.24部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部、水15.2部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.084部、メチルトリメトキシシラン0.761部、ジメチルジメトキシシラン1.223部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.3であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔c〕を得た。
【0098】
[参考例7]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水59.6部と「アデカリアソープSR−10N」3.2部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル11.381部、メタクリル酸シクロヘキシル5部、メタクリル酸n−ブチル17.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル15.5部、アクリル酸0.619部、「アデガリアソープSR−10N」2部、「エマルゲン120」2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.25部、水30.0部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びメチルトリメトキシシラン0.417部、ジメチルジメトキシシラン0.685部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、スチレン1部、メタクリル酸メチル7.8部、メタクリル酸シクロヘキシル2部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸2−エチルヘキシル1部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、アクリルアミド0.2部、「アデカリアソープSR−10N」0.4部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.5部、水19.2部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル14.7部、メタクリル酸シクロヘキシル3部、メタクリル酸n−ブチル10.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル1.425部、アクリル酸0.375部、「TINUVIN400」1部、「TINUVIN123」0.5部、「アデカリアソープSR−10N」0.6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.75部、水218部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びメチルトリメトキシシラン0.67部、ジメチルジメトキシシラン1.09部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.4であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔d〕を得た。
【0099】
[参考例8]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水164.9部を投入して反応容器温度を70℃に保ったのち、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル2.4部、メタクリル酸シクロヘキシル9部、メタクリル酸n−ブチル3部、アクリル酸ブチル15部、メタクリル酸0.6部、「アクアロンKH−10」8.8部、「エマルゲン120」3部、水34.4部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.583部、メチルトリメトキシシラン33.52部、ジメチルジメトキシシラン21.423部、フェニルトリメトシキシシラン5.057部を添加した。反応容器温度を70℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を4.5部添加したのち、反応容器温度が80℃になるように60分間調整した。
反応容器温度を80℃に保ったまま、今度はステップ(2)として、メタクリル酸メチル22.5部、メタクリル酸シクロヘキシル21部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸ブチル13部、メタクリル酸2.1部、アクリル酸1.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2.8部、アクリルアミド0.2部、「TINUVIN400」1部、「TINUVIN123」0.5部、「アクアロンKH−10」3.2部、「エマルゲン120」2部、水45.1部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.133部、メチルトリメトキシシラン22.346部、ジメチルジメトキシシラン14.282部、フェニルトリメトシキシシラン3.371部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.7であった。前記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整したのち、再び該混合液を減圧可能な反応容器に戻し、3時間にわたって80℃で加熱した。さらに続いて、適量の消泡剤を添加したのちに容器内部を40kPaに減圧し、固形分が45%になるまで濃縮を行った。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH7.9であった。その後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔e〕を得た。
【0100】
[参考例9]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水97.5部と「アクアロンHS−10」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25%水溶液)4部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル18.3部、メタクリル酸n−ブチル11部、アクリル酸ブチル20.1部、アクリル酸0.6部、「TINUVIN400」3.5部、「TINUVIN123」1.75部、「アクアロンHS−10」6.4部、「エマルゲン120」2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を2.5部、水76.4部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.537部、メチルトリメトキシシラン54.825部、ジメチルジメトキシシラン21.9部、ジフェニルジメトキシシラン5.55部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、メタクリル酸メチル7部、メタクリル酸シクロヘキシル7部、メタクリル酸n−ブチル2.9部、メタクリル酸1.5部、アクリル酸0.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1部、アクリルアミド0.2部、「アクアロンHS−10」4部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1部、水31.8部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル10.4部、メタクリル酸シクロヘキシル13部、メタクリル酸n−ブチル6.1部、アクリル酸0.5部、「TINUVIN400」1.5部、「TINUVIN123」0.75部、「アクアロンHS−10」0.3部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部、水36.4部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液、及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.179部、メチルトリメトキシシラン18.275部、ジメチルジメトキシシラン7.3部、ジフェニルジメトキシシラン1.85部からなる混合液とを別々の滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.6であった。前記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整したのち、再び該混合液を減圧可能な反応容器に戻し、3時間にわたって80℃で加熱した。さらに続いて、適量の消泡剤を添加したのちに容器内部を40kPaに減圧し、固形分が45%になるまで濃縮を行った。室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH8.0であった。その後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔f〕を得た。
【0101】
[参考例10]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水100部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部を投入し、反応容器温度を85℃に保った。次に、「ジメチルサイクリックス」(環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物)85部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部、水300部からなる混合物をホモミキサーで予備混合した後、改めてホモジナイザーにより350kg/cm2の圧力でせん断したシリコーン乳化液を滴下槽から反応容器に3時間かけて滴下した。滴下終了後85℃のままさらに1時間加熱し、室温まで冷却した。水酸化ナトリウム水溶液により中和し、シリコーンエマルジョンを得た。
さらにこのシリコーンエマルジョン62部、「ラムテルS−180A」(登録商標、花王株式会社製、20%水溶液)1部、水85部を別の反応容器に投入して70℃に昇温した後、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を3部添加した。添加した5分後に、メタクリル酸メチル32部、メタクリル酸n−ブチル30部、アクリル酸2−エチルヘキシル23部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、ダイアセトンアクリルアミド3部、メタクリル酸2部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2部、「TINUVIN400」0.5部、「TINUVIN123」0.25部の混合物を4時間かけて滴下した。
反応容器温度を70℃で1時間保った後、さらに80℃に昇温して1時間保った後、室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔g〕を得た。
【0102】
[参考例11]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水70部、「アデガリアソープSE−1025A」(株式会社ADEKA製、25%水溶液)0.8部を投入して反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を15部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸シクロヘキシル40部、アクリル酸ブチル15部、アクリル酸2−エチルヘキシル15部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2部、アクリル酸3部、「TINUVIN400」0.5部、「TINUVIN123」0.25部、「アデガリアソープSE−1025A」4部、水30部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に3時間かけて滴下した。
その後、反応容器温度を90℃に昇温して2時間保ち、室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpH7に調整した。
引き続きステップ(2)として、γ−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン1部、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン2部を加え、1時間にわたり強く攪拌した。次にメチルトリエトキシシラン6部、テトラエトキシシラン2部を加えた後、70℃に昇温して3時間攪拌を続けて重縮合を行った。その後室温まで冷却し、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔h〕を得た。
【0103】
[参考例12]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水77.7部、「アデガリアソープSR−10N」2.4部、「エマルゲン1108S」(登録商標、花王株式会社製、25%水溶液)2.4部、スチレン1部を投入して反応容器温度を70℃に昇温した。
ステップ(1)として、メタクリル酸メチル21.9部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、アクリル酸2−エチルヘキシル15.6部、アクリル酸1.5部、「アデガリアソープSR−10N」1.8部、「エマルゲン1108S」1.8部、水17.3部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液のうち14.1部を滴下槽から反応容器に投入した後、過硫酸カリウム水溶液の5%水溶液を4.2部添加して重合を開始すると同時に、反応容器温度を15分間かけて80℃に昇温した後、さらに80℃で30分間反応させた。80℃に維持したまま、さらに残りの乳化液55.8部を80分間にわたって滴下槽から反応容器に滴下した。滴下後も80℃のまま30分間維持し、25%アンモニア水溶液を1.05部添加してさらに10分間維持した。
続いて、ステップ(2)として、メタクリル酸メチル25.5部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、アクリル酸2−エチルヘキシル15.5部、「アデカスタブLA82」(株式会社ADEKA製)0.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、「アデガリアソープSR−10N」1.8部、「エマルゲン1108S」1.8部、水17.3部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を80℃で100分間にわたって滴下槽から反応容器に滴下した。
滴下後も80℃のまま60分間維持し、その後室温まで冷却して、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔i〕を得た。
【0104】
[参考例13]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水59.6部と「アデカリアソープSR−10N」3.2部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル11.381部、メタクリル酸シクロヘキシル5部、メタクリル酸n−ブチル17.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル15.5部、アクリル酸0.619部、「アデガリアソープSR−10N」2部、「エマルゲン120」2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.25部、水30.0部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、スチレン1部、メタクリル酸メチル7.8部、メタクリル酸シクロヘキシル2部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸2−エチルヘキシル1部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、アクリルアミド0.2部、「アデカリアソープSR−10N」0.4部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.5部、水19.2部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル14.7部、メタクリル酸シクロヘキシル3部、メタクリル酸n−ブチル10.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル1.425部、アクリル酸0.375部、「TINUVIN400」1部、「TINUVIN123」0.5部、「アデカリアソープSR−10N」0.6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を0.75部、水218部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.4であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、アクリルエマルジョンを得た。このアクリルエマルジョン100部に、シリコーンエマルジョン「KM−785」(信越化学工業株式会社製)2部をブレンド配合して、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔j〕を得た。
【0105】
(アクリルエマルジョン)
[参考例14]
撹拌機、還流冷却器、2つの滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水50.8部と「アクアロンKH−10」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25%水溶液)1部を投入し、反応容器温度を80℃に保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部添加した。
添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル3.378部、メタクリル酸シクロヘキシル14.5部、メタクリル酸n−ブチル17.5部、アクリル酸ブチル14部、メタクリル酸0.622部、「TINUVIN384」(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)1.2部、「TINUVIN123」(登録商標、日本チバガイギー株式会社製)0.6部、「アクアロンKH−10」3部、「エマルゲン120」(登録商標、花王株式会社製、20%水溶液)2部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を2.5部、水22.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に90分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(2)として、メタクリル酸メチル5.25部、メタクリル酸シクロヘキシル6部、メタクリル酸n−ブチル7部、アクリル酸ブチル0.4部、メタクリル酸0.5部、アクリル酸0.5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.15部、アクリルアミド0.2部、「アクアロンKH−10」0.6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1部、水14.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に45分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま30分維持し、今度はステップ(3)として、メタクリル酸メチル6.822部、メタクリル酸シクロヘキシル9部、メタクリル酸n−ブチル10.5部、アクリル酸ブチル3.3部、メタクリル酸0.378部、「TINUVIN384」0.8部、「TINUVIN123」0.4部、「アクアロンKH−10」0.9部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を1.5部、水14.6部をホモミキサーにより5分間混合して作製した乳化液を滴下槽から反応容器に60分かけて滴下した。
反応容器温度を80℃に保ったまま90分維持し、その後室温まで冷却した。水素イオン濃度を測定したところpH2.3であった。25%アンモニア水溶液を添加してpH8.5に調整し、アクリルエマルジョン〔k〕を得た。
【0106】
以下に、シリコーン変性アクリルエマルジョンが顔料とともに混合された塗料の製造方法例を参考例として示す。
(顔料ペースト)
[参考例15]
1Lのステンレス製容器に、分散剤(SN−Dispersant5027/20%品、サンノプコ社製)10.5g、プロピレングリコール49g、水310.42g、アンモニア水(25%品)1g、をいれスリーワンモーターで攪拌する。攪拌しながら酸化チタン(Tipure R−706)700gを投入し、さらに消泡剤(SND−1310)6gを添加し30分間攪拌した。
攪拌されたスラリーに1kgのガラスビーズ(直径1mmの球状ビーズ)を投入し、カンペハピオ社製バッチ式卓上サンドミルに分散用のディスクを4枚取り付け、1490rpmでさらに20分間分散させ、顔料濃度65%の顔料ペースト〔い〕を得た。
【0107】
[参考例16]
酸化チタンが酸化亜鉛である以外は、参考例15と同様の方法で顔料ペースト〔ろ〕を得た。
【0108】
[参考例17]
酸化チタンが炭酸カルシウム(ブリリアント15)である以外は、参考例16と同様の方法で顔料ペースト〔は〕を得た。
【0109】
(エナメル塗料)
[参考例18]
シリコーン変性アクリルエマルジョン〔a〕(40%固形分)54.35gに、攪拌しながら増膜助剤(ブチルセロソルブ/水=1/1)を5g添加し、10分間攪拌した。そこに、増膜助剤(CS−12(テキサノール/チッソ株式会社製))を5g添加し、更に10分間攪拌した。その後さらに、顔料ペースト〔い〕(顔料濃度65%)25.64g、アデカノールUH−438(10%)0.6gを添加し5分間攪拌して、エナメル塗料〔1〕(PWC=40%)を得た。
【0110】
[参考例19]
顔料ペーストが〔ろ〕である以外は、参考例18と同様の方法でエナメル塗料〔2〕を得た。
【0111】
[参考例20]
顔料ペーストが〔は〕である以外は、参考例18と同様の方法でエナメル塗料〔3〕を得た。
【0112】
参考例1〜3で得られた塩化ビニリデンエマルジョン〔A〕、〔B〕および塩化ビニリデンラッカー〔C〕並びに参考例4〜14で得られたシリコーン変性エマルジョン〔a〕〜〔k〕、参考例18〜20で得られたエナメル塗料〔1〕〜〔3〕を用いて、以下に示すように太陽電池バックシートを製造した。
また、該太陽電池バックシートを用いて太陽電池モジュールを製造した。
【0113】
[実施例1]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み188μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布した。
引き続き、塩化ビニリデンエマルジョン〔A〕をエアナイフコーターにて塩化ビニリデン系樹脂層の厚みが11μmになるようにコーティングした。
40℃で48時間養生後、続いて、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔a〕をダイコーターにてシリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みが54μmになるようにコーティングし、図1に示すような太陽電池バックシートを得た。
次に、太陽光が当たる表面のガラス層と該太陽電池バックシートを裏面に用い、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂「ソーラエバ」(三井化学ファブロ社製)を充填材として太陽電池素子を挟みこみ、図2に示すような太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールを得た。
【0114】
[実施例2]
塩化ビニリデン系樹脂層の厚みが25μmになるようにコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0115】
[実施例3]
シリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みが81μmになるようにコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0116】
[実施例4]
シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔b〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0117】
[実施例5]
シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔c〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0118】
[実施例6]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔d〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0119】
[実施例7]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔e〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0120】
[実施例8]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔f〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0121】
[実施例9]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔g〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0122】
[実施例10]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔h〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0123】
[実施例11]
塩化ビニリデンエマルジョンが〔B〕、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔i〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0124】
[実施例12]
プラスチック基材にポリエステルフィルム「コスモシャインA4100」(東洋紡績株式会社製、厚み188μm)を使用したこと、シリコーン変性アクリルエマルジョンが〔j〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0125】
[実施例13]
シリコーン変性アクリルエマルジョンが、エナメル塗料〔1〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0126】
[実施例14]
シリコーン変性アクリルエマルジョンが、エナメル塗料〔2〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0127】
[実施例15]
シリコーン変性アクリルエマルジョンが、エナメル塗料〔3〕である以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0128】
[実施例16]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み188μm)に、塩化ビニリデンラッカー〔C〕をバーコーターにて塩化ビニリデン系樹脂層の厚みが5μmになるようにコーティングし、120℃に保ったオーブンで60秒間乾燥した。
40℃で48時間養生後、続いて、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔a〕をダイコーターにてシリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みが54μmになるようにコーティングし、接着剤層がない点を除いて図1の太陽電池バックシートと同様の構造をもつ太陽電池バックシートを得た。
次に、太陽光が当たる表面のガラス層と該太陽電池バックシートを裏面に用い、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂「ソーラエバ」(三井化学ファブロ社製)を充填材として太陽電池素子を挟みこみ、図2に示すような太陽電池バックシートを用いた太陽電池モジュールを得た。
【0129】
[比較例1]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み188μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布した。
引き続き、塩化ビニリデンエマルジョン〔B〕をエアナイフコーターにて塩化ビニリデン系樹脂層の厚みが10μmになるようにコーティングして太陽電池バックシートを得た。
次に、実施例1と同様に太陽電池モジュールを得た。
【0130】
[比較例2]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み188μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布した。
引き続き、シリコーン変性アクリルエマルジョン〔b〕をダイコーターにてシリコーン変性アクリル系樹脂層の厚みが52μmになるようにコーティングして太陽電池バックシートを得た。
次に、実施例1と同様に太陽電池モジュールを得た。
【0131】
[比較例3]
高耐候フッ素樹脂フィルム(デュポン社製、登録商標「テドラー」、厚み50μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布し、その接着剤層を介して厚さ20μmのアルミニウム箔を積層した後、さらに同様のアルミニウム箔に前記ウレタン系接着剤を同様に塗布し、またさらに前記高耐候フッ素樹脂フィルム(「テドラー」、厚み50μm)を貼り合わせて積層し、フッ素樹脂フィルム/アルミニウム箔/フッ素樹脂フィルムの3層構成の太陽電池バックシートを得た。
次に、実施例1と同様に太陽電池モジュールを得た。
【0132】
[比較例4]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み60μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布し、その接着剤層を介して厚さ20μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積層した後、さらにアルミニウム蒸着PETフィルムに前記ウレタン系接着剤を同様に塗布し、またさらに高耐候フッ素樹脂フィルム(デュポン社製、登録商標「テドラー」、厚み50μm)を貼り合わせて積層し、耐加水分解性ポリエステルフィルム/アルミニウム蒸着PETフィルム/フッ素樹脂フィルムの3層構成の太陽電池バックシートを得た。
次に、実施例1と同様に太陽電池モジュールを得た。
【0133】
[比較例5]
耐加水分解性ポリエステルフィルム「ルミラーX10S」(登録商標、東レ株式会社製、厚み188μm)の片側に、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製の主剤「タケラック(登録商標)A511」/硬化剤「A50」=10/1)を塗布量5g/m2でグラビアコーターにて塗布し、その接着剤層を介してポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)(PCTFE)フィルム「ネオフロン」(登録商標、ダイキン株式会社製、厚み25μm)を積層し、耐加水分解性ポリエステルフィルム/PCTFEフィルムの2層構成の太陽電池バックシートを得た。
次に、実施例1と同様に太陽電池モジュールを得た。
【0134】
[比較例6]
シリコーン変性アクリルエマルジョン〔a〕の代わりに、アクリルエマルジョン〔k〕を用いた以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池バックシートと太陽電池モジュールを得た。
【0135】
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた太陽電池バックシートを用いて、以下の評価を行った。
その結果を表1〜表6に示す。
【0136】
<水蒸気バリア性>
作製した各太陽電池バックシートの初期の水蒸気バリア性を、JIS K 7129に準拠して、MOCON法(Modern Control社製PERMATRAN W3/31、40℃、90%RHの条件)で実施した。
0.6g/m2・24hr未満を「◎」、0.6g/m2・24hr以上1.0g/m2・24hr未満を「○」、1.0g/m2・24hr以上1.5g/m2・24hr未満を「△」、1.5g/m2・24hr以上を「×」とした。
【0137】
<耐候性>
サンシャインウエザオメーター(スガ試験機株式会社製、WEL−SUN−DC)を使用して、曝露試験(降雨サイクル;12分/時間、ブラックパネル温度60〜66℃)を実施した。
耐候性(1)として、試験2000時間後の外観を観察した。
表面変化なしを「○」、ワレ/フクレなど劣化ありを「×」とした。
耐候性(2)として、試験2000時間後の黄変の様子を観察した。
CIE1976(JIS Z 8729)に準拠し、コニカミノルタセンシング株式会社製色彩色差計「CR−200」にて測定した曝露試験後と試験前のb値差(Δb)で、10未満を「◎」、10以上20未満を「○」、20以上を「×」とした。
耐候性(3)として、試験2000時間後の水蒸気バリア性を測定した。測定方法および判定は、<水蒸気バリア性>の項に記述した内容で行った。
【0138】
<耐熱性>
DIN 40 634に基づき、150℃30分後の寸法安定性を評価した。
異常なしを「○」、異常ありを「×」とした。
【0139】
<耐湿性>
耐湿性(2000時間)として、85℃/85%RHの条件にて2000時間試験し た。耐湿性(3000時間)として、85℃/85%RHの条件にて3000時間試験 した。各試験時間経過後のサンプルの水蒸気バリア性をJIS K 7129に準拠し て同様に評価した。
0.6g/m2・24hr未満を「◎」、0.6g/m2・24hr以上1.0g/m2・24hr未満を「○」、1.0g/m2・24hr以上1.5g/m2・24hr未満を「△」、1.5g/m2・24hr以上を「×」とした。
【0140】
<電気絶縁性>
IEC 60 664−1に基づき、部分放電電圧性能を評価した。
適合したものを「○」、不適合であったものを「×」とした。
【0141】
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた太陽電池モジュールを用いて、以下の評価を行った。
その結果を表1〜表6に示す。
【0142】
<加工性>
プラスチック基材へのエマルジョンコーティング品など部材加工性に優れたものを「○」、機械的強度の弱いフッ素系フィルムなどの使用により部材加工性に劣っていたものを「×」とした。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

【0148】
【表6】

【0149】
表1〜表6の結果から、塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する実施例1〜16の太陽電池バックシートは、いずれも、耐候性、耐熱性、耐湿性、水蒸気バリア性、電気絶縁性に優れるものであった。
実施例1〜16の太陽電池バックシートは、塩化ビニリデン系樹脂層又はシリコーン変性アクリル系樹脂層のいずれか一方のみを有する比較例1及び2の太陽電池バックシートに比して、耐候性、耐熱性、耐湿性、水蒸気バリア性を同時に満たす優れたものであった。特に、耐候性(3)(耐候性試験2000時間後の水蒸気バリア性)および耐湿性(3000時間)については、上記2つの層のうちいずれか一方だけでは性能劣化が見られるのに対し、2つの層を有しそれらが連続して積層されたものは優れた性能を発現している。 さらに、実施例1〜16の太陽電池バックシートは、前記特性に加え、塩化ビニリデン系樹脂層とシリコーン変性アクリル系樹脂層間に、接着剤を用いる必要がないため、部材構成をより簡便なものとすることができ、また、各層の加工性にも優れるものであった。
一方、アルミ蒸着PET系樹脂層及びフッ素系樹脂層を有する比較例4の太陽電池バックシートは、太陽電池バックシートとして求められる耐候性などの特性を有するものではあったが、両樹脂層間に接着剤を用いる必要があるため、部材構成が複雑なものとなるとともに、製造工程も煩雑化し、かつ、その機械的強度が不十分なものであることから、加工性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境下においても、耐加水分解性や耐候性、耐熱性、耐湿性に優れることにより、高い水蒸気バリア性能の発現・維持が可能で、かつ、部材構成の簡素化、加工性などの生産性にも優れる太陽電池バックシート用積層体を提供することができる。
本発明の太陽電池バックシート及び太陽電池モジュールは、太陽光発電システムの分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1.太陽電池バックシート
2.プラスチック基材
3.接着剤
4.塩化ビニリデン系樹脂層
5.シリコーン変性アクリル系樹脂層
6.太陽電池モジュール
7.ガラス層
8.太陽電池素子
9.充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン系樹脂層と、前記塩化ビニリデン系樹脂層上に積層されるシリコーン変性アクリル系樹脂層と、を有する太陽電池バックシート用積層体。
【請求項2】
前記塩化ビニリデン系樹脂層と、前記シリコーン変性アクリル系樹脂層とが直に接して積層される、請求項1に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項3】
前記塩化ビニリデン系樹脂層が有機溶剤に塩化ビニリデン系樹脂粉末を溶解して得た塩化ビニリデンラッカー、又は塩化ビニリデンエマルジョンから製造される、請求項1又は2に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項4】
前記塩化ビニリデンラッカー中の塩化ビニリデン系樹脂粉末および、塩化ビニリデンエマルジョンが全単量体中50質量%以上の塩化ビニリデンを含む単量体を乳化重合して得られる、請求項3に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項5】
前記シリコーン変性アクリル系樹脂層がシリコーン変性アクリルエマルジョンから製造される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項6】
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンがシリコーン樹脂とアクリル樹脂とを含む、請求項5に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項7】
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンが、乳化重合して前記アクリル樹脂を製造する際、シリコーン変性剤を乳化重合の前、乳化重合中、乳化重合後の少なくともいずれかの段階で添加することにより得られる、請求項6に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項8】
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤が配合されている、請求項5〜7のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項9】
前記シリコーン変性アクリルエマルジョンが、顔料と共に混合された塗料として使用される、請求項5〜8のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項10】
前記塩化ビニリデン系樹脂層が、塩化ビニリデンラッカー又は塩化ビニリデンエマルジョンの塗工層であり、シリコーン変性アクリル系樹脂層が、シリコーン変性アクリルエマルジョンの塗工層である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項11】
前記塩化ビニリデン系樹脂塗工層の厚さが5〜50μmであり、かつ前記シリコーン変性アクリル系樹脂塗工層の厚さが10〜100μmである、請求項10に記載の太陽電池バックシート用積層体。
【請求項12】
基材と、請求項1〜11のいずれか一項に記載の太陽電池バックシート用積層体とを有し、
前記太陽電池バックシート用積層体が前記基材上に積層される、太陽電池バックシート。
【請求項13】
前記基材がプラスチック基材である、請求項12に記載の太陽電池バックシート。
【請求項14】
前記塩化ビニリデン系樹脂層と基材とが、接着剤を介して積層される、請求項12又は13に記載の太陽電池バックシート。
【請求項15】
前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート系樹脂から製造される、請求項13又は14に記載の太陽電池バックシート。
【請求項16】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂が耐加水分解性樹脂である、請求項15に記載の太陽電池バックシート。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか一項に記載の太陽電池バックシートを備える太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−290201(P2009−290201A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107052(P2009−107052)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(399020212)東山フイルム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】