説明

太陽電池素子、カラーセンサ、ならびに発光素子及び受光素子の製造方法

【課題】優れた発電効率を備える太陽電池素子を提供する。
【解決手段】太陽電池素子100は、基板110と、マスクパターン120と、半導体ナノロッド130と、第1の電極150と、第2の電極160とを有する。半導体ナノロッド130は、基板110上に平面視三角格子状に配置されており、相隣り合う半導体ナノロッド130同士の中心間距離pと、半導体ナノロッド130の最小径dとの比p/dが1〜7の範囲にある。半導体ナノロッド130は、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッド131と、真性半導体からなり中心ナノロッド131を被覆する第1の被覆層132と、第2の導電型の半導体からなり第1の被覆層132を被覆する第2の被覆層138とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノロッドを有する太陽電池素子およびカラーセンサ、ならびに半導体ナノロッドを有する発光素子および受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.太陽電池素子
半導体ナノロッド(ナノワイヤ)を有する太陽電池素子は、入射光に対する表面積を大きくすることができるため、薄膜型の太陽電池素子よりも発電効率の点で優れていると考えられている。近年、半導体ナノロッドを有する太陽電池素子について、いくつかの報告がなされている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1の太陽電池素子(光起電力デバイス)は、基板と、前記基板上に形成された多層膜と、前記多層膜上に形成された細長いナノ構造体とを有する。多層膜およびナノ構造体は、それぞれp−n接合を含む。また、多層膜およびナノ構造体は、トンネル接合で接続されたタンデム接合を形成している。
【0004】
特許文献2の太陽電池素子(光起電力装置)は、基板と、前記基板上に形成された第1の導電型の細長いナノ構造体と、前記ナノ構造体を被覆する第2の導電型のコンフォーマル層とを有する。第1の導電型のナノ構造体および第2の導電型のコンフォーマル層は、p−n接合を形成している。
【0005】
非特許文献1,2には、半導体ナノロッドの動径方向にp−n接合を形成したコアシェル型太陽電池の発電効率について記載されている。また、特許文献3および非特許文献3,4には、半導体ナノロッドからなるタンデム型の太陽電池について記載されている。
【0006】
一方、従来からよく知られている薄膜型のタンデム型太陽電池素子については、数多くの報告がなされている(例えば、非特許文献5,6参照)。非特許文献5には、薄膜型のタンデム型高効率太陽電池素子について記載されている。非特許文献6には、p−n接合を利用した薄膜型の太陽電池素子であって、p−n接合の界面部分に形成された真性層(i層)内に超格子構造を形成した太陽電池素子が記載されている。この太陽電池素子は、p層、i層およびn層の各層を構成する半導体よりもエネルギーバンドギャップの小さい半導体からなる量子井戸層をi層内に含む超格子構造を有する。このように超格子構造を有する太陽電池は、p層、i層およびn層の各層を構成する半導体のエネルギーバンドギャップよりも小さいエネルギーの光を利用することができる。
【0007】
2.カラーセンサ
可視光に含まれる赤色光、緑色光および青色光に対応する波長成分を電気信号に変換する半導体光検知素子としてカラーセンサが知られている(例えば、特許文献4,5、非特許文献7参照)。
【0008】
特許文献4には、半導体シリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)との混晶(SiGe)からなる光吸収部を有するカラーセンサについて記載されている。このカラーセンサは、基板上にSiGeの混晶からなる光吸収層を3層有している。各層におけるSiとGeとの混晶比率は、上層、中層、下層と順次変えられている。上層では青色光が吸収され、中層では緑色光が吸収され、下層では赤色光が吸収される。
【0009】
特許文献5には、ガラス製基体上に形成された3層のアモルファスシリコン(a−Si)層を有するカラーセンサについて記載されている。各層の間には、透明なコンタクトが形成されている。それぞれのa−Si層は、ダイオードを構成する。a−Si層の各層において、赤色光、緑色光および青色光が吸収され、光起電力が発生する。
【0010】
非特許文献7には、a−Siを用いたカラーセンサについて記載されている。
【0011】
また、半導体ナノロッドを利用したp−n接合型光検知素子についても報告されている(例えば、特許文献6参照)。
【0012】
特許文献6には、500nm未満の最小幅を有する自立型半導体ナノロッドについて記載されている。また、この半導体ナノロッドは、n型半導体およびp型半導体を含むものであってもよく、光検出器やp−n太陽電池などの電気部品となりうると記載されている。
【0013】
3.発光素子および受光素子の製造方法
半導体ナノロッドを有するp−n接合型発光素子(LED)の製造方法について報告されている(例えば、特許文献7参照)。
【0014】
特許文献7には、基板上に複数の開口部を有する絶縁膜を形成し、前記開口部からp−n接合を有する半導体ナノロッドを成長させて、p−n接合型発光素子(LED)を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−182226号公報
【特許文献2】特開2008−53730号公報
【特許文献3】特開2008−28118号公報
【特許文献4】特開2007−27462号公報
【特許文献5】特表2001−515275号公報
【特許文献6】特表2004−535066号公報
【特許文献7】特開2009−049209号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】E. C. Garnett, et al., "Silicon nanowire radial p-n junction solar cells", Journal of American Chemical Society, Vol.130, (2008), pp.9224-9225.
【非特許文献2】B. Tian, et al., "Coaxial silicon nanowires as solar cells and nanoelectric power sources", Nature, Vol.449, (2007), pp.885-889.
【非特許文献3】T. J. Kempa, et al., "Single and tandem axial p-i-n nanowire photovoltaic devices", Nano letters, Vol.8, (2008), pp.3456-3460.
【非特許文献4】A. Kandala, et al., "General theoretical considerations on nanowire solar cell designs", Physica Status Solidi (a), Vol.206, (2009), pp.173-178.
【非特許文献5】R. R. King, et al., "40% efficient metamorphic GaInP/GaInAs/Ge multijunction solar cells", Applied Physics Letters, Vol.90, (2007), pp.183516-1-183516-3.
【非特許文献6】K. W. J. Barnham, et al., "A new approach to high-efficiency multi-bandgap solar cells", Journal of Applied Physics, Vol.67, (1990), pp.3490-3493.
【非特許文献7】M. Topic, et al., "Stacked a-SiC:H/a-Si:H heterostructures for bias-controlled three-color detectors", Journal of Non-Crystalline Solids, Vol.198-200, (1996), pp.1180-1184.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
1.太陽電池素子
特許文献1〜3および非特許文献1,2に記載の半導体ナノロッドを有する従来の太陽電池素子には、p−n接合(またはp−i−n接合)を構成する半導体のエネルギーバンドギャップよりも小さいエネルギーの光を利用できないという問題がある。したがって、従来の半導体ナノロッドを有する太陽電池素子では、発電効率の更なる向上を望むことは難しい。
【0018】
また、特許文献1に記載の半導体ナノロッドを有する従来の太陽電池素子には、基板上の多層膜と半導体ナノロッドとの接合界面において結晶の格子定数差に起因する転位が発生し、太陽電池素子の性能が低下してしまうという問題もある。
【0019】
さらに、特許文献3および非特許文献3,4に記載の半導体ナノロッドを有する従来の太陽電池素子には、光照射により発生したキャリアのうち半導体ナノロッドの表面に拡散したキャリアが表面準位に捕獲されてしまうため、発電効率が低下してしまうという問題がある。
【0020】
一方、非特許文献6に記載の薄膜型の従来の太陽電池素子では、超格子構造内に量子井戸層を数nm以内の間隔で複数配置して、隣接する量子井戸層内の電子または正孔の波動関数が重なり合うようにすれば、一つの量子井戸層で発生したキャリア(電子および正孔)の再結合を防止して、発電効率を向上させることができる。しかしながら、従来の構造では、量子井戸層を数nm以内の間隔で複数配置すると、異種接合に起因する結晶格子の歪みが増大してしまい、結晶転位が発生してしまう。この結晶転位は、太陽電池素子の性能を低下させてしまう。なお、量子井戸層ではなく量子ドットを含む埋設層を配置する場合も同様の課題が生じる。
【0021】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、発電効率がより高い太陽電池素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
2.カラーセンサ
特許文献4,5および非特許文献7に記載の従来のカラーセンサには、入射光の一部が平坦な半導体表面における反射により失われてしまうため、入射光を十分に利用できないという問題がある。
【0023】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、反射損失がより少ないカラーセンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0024】
3.発光素子および受光素子の製造方法
特許文献7に記載の従来の製造方法には、発光素子と受光素子を別個の製造工程で製造するため、製造コストの観点から問題がある。
【0025】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、発光素子および受光素子をより高い効率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、半導体ナノロッドを有する従来の太陽電池素子において十分な発電効率が得られない理由について検討した結果、前記従来の太陽電池素子では入射光を十分に吸収できない場合があることを知見した。本発明者らは、前記知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、前記半導体ロッドを基板上に平面視三角格子状に配置したときに、相隣り合う前記半導体ナノロッド同士の中心間距離pと、前記半導体ナノロッドの最小径dとの比p/dを所定の範囲とすることにより、入射光の反射率を低減し、吸収を大にすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0027】
そこで、前記目的を達成するために、本発明の太陽電池素子は、基板と、前記基板の表面に配置され2以上の開口部を有するマスクパターンと、前記基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸する2以上の半導体ナノロッドと、前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有する太陽電池素子であって、前記半導体ナノロッドは、基板上に平面視三角格子状に配置されており、相隣り合う前記半導体ナノロッド同士の中心間距離pと、前記半導体ナノロッドの最小径dとの比p/dが1〜7の範囲にあり、前記半導体ナノロッドは、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッドと、真性半導体からなり前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層とを有することを特徴とする。
【0028】
尚、本願において、「三角格子」とは、任意の三角形の各辺に平行な複数の直線の交点を格子点とする格子を意味するものとする。
【0029】
本発明の太陽電池素子によれば、基板上に平面視三角格子状に配置された前記半導体ナノロッドにおいて、相隣り合う前記半導体ナノロッド同士の中心間距離pと、前記半導体ナノロッドの最小径dとの比p/dが1〜7の範囲にあることにより、入射光の反射率を低減し、吸収を大にすることができる。p/dが1未満または7より大きいときには、入射光の反射率を十分に低減することができない。
【0030】
また、入射光の反射率を低減するために、p/dは1.5〜5の範囲にあることがさらに好ましい。
【0031】
また、本発明の太陽電池素子によれば、前記半導体ナノロッドは、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッドと、真性半導体からなり前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層とを有する。ここで、第1の導電型はn型又はp型であり、第2の導電型は第1の導電型がn型であるときはp型であり、第1の導電型がp型であるときはn型である。
【0032】
従って、前記中心ナノロッドと、前記第1の被覆層と、前記第2の被覆層とにより、p−i−n接合を形成することができる。
【0033】
本発明の太陽電池素子は、前記第2の被覆層を被覆すると共に、前記第1の導電型の半導体、前記第2の導電型の半導体および前記真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの大きな半導体からなる表面保護層を有することが好ましい。
【0034】
また、本発明の太陽電池素子において、前記中心ナノロッドは、第1の半導体からなり前記基板上に形成された第1の領域と、前記第1の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第2の半導体からなり前記第1の領域上に形成された第2の領域と、前記第2の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第3の半導体からなり前記第2の領域上に形成された第3の領域とを有することが好ましい。
【0035】
本発明の太陽電池素子は、前記中心ナノロッドが前記第1〜第3の領域を有するときに、さらに、前記第3の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第4の半導体からなり前記第3の領域上に形成された第4の領域を有するものであってもよい。
【0036】
また、本発明の太陽電池素子において、前記第1の被覆層は、量子井戸層又は量子ドットを含む埋設層を有することが好ましい。このとき、前記第1の被覆層は、第1の真性半導体からなる2以上の量子障壁と、前記第1の真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの小さな第2の真性半導体からなり前記量子障壁に挟持された量子井戸層とを有することが好ましい。またこのとき、前記第1の被覆層は、第1の真性半導体からなる2以上の量子障壁と、第1の真性半導体と第1の真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの小さな第2の真性半導体からなる量子ドットとを含み前記量子障壁に挟持された埋設層とを有し、前記埋設層中で前記量子ドットは第1の真性半導体中に分散されていることが好ましい。
【0037】
また、本発明の太陽電池素子は、基板と、前記基板の表面に配置され2以上の開口部を有するマスクパターンと、前記基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸する2以上の半導体ナノロッドと、前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有する太陽電池素子であって、前記半導体ナノロッドは、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッドと、第2の導電型の半導体からなり前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、第1の導電型の半導体からなり前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第2の被覆層を被覆する第3の被覆層と、第1の導電型の半導体からなり前記第3の被覆層を被覆する第4の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第4の被覆層を被覆する第5の被覆層とを有し、前記第4の被覆層及び第5の被覆層を形成する半導体は、前記第第2の被覆層及び第3の被覆層を形成する半導体より大きなエネルギーバンドギャップを有し、前記第第2の被覆層及び第3の被覆層を形成する半導体は、前記第1の被覆層を形成する半導体より大きなエネルギーバンドギャップを有することを特徴とする。
【0038】
前記前記第1の被覆層が、量子井戸層又は量子ドットを含む埋設層を有する太陽電池素子は、基板の表面に、開口部を有するマスクパターンを形成する工程と、前記開口部から露出する前記基板の表面に、第1の導電型の半導体を結晶成長させることにより中心ナノロッドを形成する工程と、前記中心ナノロッドの周囲に、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法又は化学気相堆積法により真性半導体からなる第1の被覆層を形成する工程と、前記第1の被覆層の周囲に、第2の導電型の半導体からなる第2の被覆層を形成する工程と、第1の電極および第2の電極を形成する工程とを備える太陽電池素子の製造方法であって、前記第1の被覆層は、第1の組成の原料ガスを供給することにより量子障壁層を形成したのち、第2の組成の原料ガスを供給することにより量子井戸層又は量子ドットを含む埋設層を形成する製造方法により製造することができる。
【0039】
次に、本発明のカラーセンサは、基板と、前記基板の表面に配置されたマスクパターンであって、前記マスクパターンはRGBに対応する3以上の領域に区分されており、かつ前記3以上の領域のそれぞれには開口部が形成されているマスクパターンと、前記半導体基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸しp−n接合又はp−i−n接合を有する2以上の半導体ナノロッドと、前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有するカラーセンサであって、前記半導体ナノロッドの組成は、前記3以上の領域ごとに異なることを特徴とする。
【0040】
次に、本発明の発光素子および受光素子の製造方法は、発光素子および受光素子を同時に製造する製造方法であって、A)表面をマスクパターンで被覆された基板を準備するステップであって、前記マスクパターンは、発光素子となる領域と受光素子となる領域とに区分されており、かつ前記発光素子となる領域および前記受光素子となる領域には、それぞれ、前記基板表面を露出させる2以上の開口部が形成されており、かつ前記開口部のサイズまたは前記開口部の中心間距離は、前記発光素子となる領域と前記受光素子となる領域とで異なる、ステップと、B)前記マスクパターンで被覆された基板から、前記開口部を通して半導体ナノロッドを成長させるステップであって、n型半導体からなる層を形成する工程と、p型半導体からなる層を形成する工程とを含むステップとを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】半導体ナノロッドの配列を示す平面図。
【図2】実施の形態1の半導体ナノロッドアレイの構成を示す斜視図
【図3】半導体ナノロッド同士の中心間距離pと半導体ナノロッドの最小径dとの比p/dと、太陽電池素子の反射率との関係を示すグラフ。
【図4】実施の形態1の太陽電池素子の構成を示す斜視図。
【図5】実施の形態1の太陽電池素子の半導体ナノロッドの構造を示す図。
【図6】実施の形態2の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図7】実施の形態3の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図8】実施の形態4の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図9】実施の形態5の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図10】実施の形態6の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図11】実施の形態7の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図12】実施の形態8の太陽電池素子の半導体ナノロッドの断面図。
【図13】実施の形態9のカラーセンサの構成を示す斜視図。
【図14】実施の形態9のカラーセンサの製造方法を示す模式図。
【図15】実施の形態9のカラーセンサの別の構成を示す斜視図。
【図16】実施の形態10の製造方法を説明するための斜視図。
【図17】実施の形態10の製造方法により製造された発受光素子の使用例を説明するための模式図。
【図18】実施の形態10の製造方法により製造された発受光素子の使用例を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
1.本発明の太陽電池素子
本発明の太陽電池素子は、基板、マスクパターン、2以上の半導体ナノロッド、第1の電極および第2の電極を有する。後述するように、本発明の太陽電池素子は、半導体ナノロッド内に量子井戸層または量子ドットを含むことを一つの特徴とする。
【0043】
基板は、半導体ナノロッドを成長させうるものであれば特に限定されない。基板の材料の例には、半導体、ガラス、金属、プラスチック、セラミックなどが含まれる。基板を構成する半導体の例には、GaAs、InP、Si、InAs、GaN、SiC、Alなどが含まれる。好ましい基板は、半導体基板である。半導体基板の表面から、半導体ナノロッドを形成しやすいためである。
【0044】
マスクパターンは、基板表面に配置され、2以上の開口部を有する薄膜である。基板が半導体結晶基板の場合、マスクパターンは、基板を構成する半導体結晶の結晶軸(111)面上に配置されていることが好ましい。結晶軸(111)面から半導体ロッドの中心ナノロッドを成長させることにより、中心ナノロッドの延伸方向を半導体結晶の結晶軸(111)方向に揃えることができる。マスクパターンの材料は、半導体ナノロッドの中心ナノロッドの成長を阻害しうるものであれば特に限定されない。マスクパターンの材料の例には、無機絶縁材料、金属、プラスチック、セラミック、これらの組み合わせなどが含まれる。無機絶縁材料の例には、SiO、SiNなどが含まれ、金属の例には、W、WSi、Ti、Mo、Pt、MoSi、Ni、NiSi、WAl、TiAl、MoAlなどが含まれる。マスクパターンの膜厚は、特に限定されず、数nm以上であればよい。また、マスクパターンの膜厚は、半導体ナノロッドの長さと同じ(数μm程度)であってもよい。
【0045】
前述の通り、マスクパターンには、2以上の開口部が形成されている。開口部は基板表面まで貫通しており、開口部内では基板表面が露出している。開口部は、本発明の太陽電池素子を製造する際に、半導体ナノロッドの中心ナノロッド(後述)の成長位置、太さおよび形状を規定する。開口部の形状は、任意であり、例えば円形、三角形、四角形、六角形などであればよい。開口部のサイズ(直径)は、マスクパターンの製造歩留まりや製造精度などを含む製造コストの観点から、10nm以上が好ましい。また、半導体ナノロッドが格子定数差を有するヘテロ接合を含む場合、結晶転位の発生密度を極力小さく抑える観点から、半導体ナノロッドの断面積および表面積は小さいことが好ましい。したがって、中心ナノロッドの断面積も小さいことが好ましい。これらの観点から、開口部のサイズ(直径)は、10nm〜数百nmの範囲内であればよい。開口部の中心間距離は、5μm以下であればよい。後述するように、開口部は三角格子状に配列されていることが好ましい。前記「三角格子」とは、任意の三角形の各辺に平行な複数の直線の交点を格子点とする格子を意味するものであり、換言すれば前記開口部は六方最密配列で配置されていることになる(図1参照)。
【0046】
半導体ナノロッドは、半導体からなる、直径数百nm以下、長さ数μm以下の構造体である。半導体ナノロッドは、基板(マスクパターン)の表面上に、その長軸が略垂直になるように配置されている。半導体ナノロッドは、少なくとも、中心ナノロッドと、前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層とを有する。中心ナノロッドは、基板表面からマスクパターンの開口部を通って上方に延伸しており、第1の導電型(n型またはp型)の半導体からなる。第1の被覆層は、真性半導体からなる。第2の被覆層は、第1の導電型とは異なる第2の導電型(p型またはn型)の半導体からなる。すなわち、中心ナノロッド(n型またはp型半導体)、第1の被覆層(真性半導体)および第2の被覆層(p型またはn型半導体)は、p−i−n接合を形成する。
【0047】
中心ナノロッドには、導電体としての機能を有することも求められることから、中心ナノロッドの太さ(直径)は、電気伝導に関与するキャリアが空乏化しない10nm以上であることが好ましい。前述の通り、半導体ナノロッドがヘテロ接合を含む場合、半導体ナノロッドの太さ(直径)は、結晶転位の発生密度を極力抑えられる範囲内であることが好ましい。また、半導体ナノロッドの長さは、配列された複数の半導体ナノロッドで入射光を無駄なく吸収する観点から、半導体材料の光吸収係数を考慮して設計されることが好ましい。これらの観点から、中心ナノロッドの太さ(直径)は、10〜300nmの範囲内が好ましい。また、中心ナノロッドの長さは、0.5〜10μmの範囲内が好ましい。
【0048】
第1の被覆層および第2の被覆層は、中心ナノロッドの外側に形成されるため、結晶欠陥となる転位を極力発生させないように形成されることが好ましい。また、第1の被覆層および第2の被覆層は、隣り合う半導体ナノロッド同士が接触しないように形成されることが好ましい。さらに、第2の被覆層が半導体ナノロッドの最表面に位置する場合、第2の被覆層には、電気的に低抵抗であること、およびその内側に位置する第1の被覆層に十分な量の光を透過させうることが求められる。これらの観点から、第1の被覆層の膜厚は、10〜数百nmの範囲内が好ましい。また、第2の被覆層の膜厚は、10〜100nmの範囲内が好ましい。
【0049】
中心ナノロッド、第1の被覆層および第2の被覆層の半導体材料はそれぞれ、単体半導体、2成分元素からなる半導体、3成分元素からなる半導体、4成分元素からなる半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。単体半導体の例には、Si、Geが含まれる。2成分元素からなる半導体の例には、GaAs、InP、InAs、GaN、ZnS、ZnO、SiC、SiGe、ZnTeが含まれる。3成分元素からなる半導体の例には、AlGaAs、InGaAs、GaAsP、GaInP、AlInP、InGaN、AlGaN、ZnSSe、GaNAsが含まれる。4成分元素からなる半導体の例には、InGaAsP、InGaAlN、AlInGaP、GaInAsNが含まれる。
【0050】
中心ナノロッドは、単一の半導体から構成されていてもよいが、タンデム構造であってもよい。たとえば、中心ナノロッドは、第1の半導体からなる第1の領域と、第2の半導体からなる第2の領域と、第3の半導体からなる第3の領域とのタンデム構造であってもよい。また、中心ナノロッドは、第1の半導体からなる第1の領域と、第2の半導体からなる第2の領域と、第3の半導体からなる第3の領域と、第4の半導体からなる第4の領域とのタンデム構造であってもよい。もちろん、中心ナノロッドは、5以上の領域からなるタンデム構造であってもよい。このように中心ナノロッドがタンデム構造の場合、透明電極側の領域を構成する半導体ほどエネルギーバンドギャップが大きいことが好ましい。すなわち、基板側から第1の領域、第2の領域、第3の領域、第4の領域の順番で接続されている場合は、第4の半導体は、第3の半導体よりもエネルギーバンドギャップが大きく、第3の半導体は、第2の半導体よりもエネルギーバンドギャップが大きく、第2の半導体は、第1の半導体よりもエネルギーバンドギャップが大きいことが好ましい。
【0051】
本発明の太陽電池素子は、真性半導体からなる第1の被覆層(i層)を有する。第1の被覆層は、2以上の量子障壁層と、それに挟まれた量子井戸層とを有するか;または2以上の量子障壁層と、それに挟まれた量子ドットを含む埋設層とを有することを特徴とする。量子障壁層、量子井戸層、量子ドットおよび埋設層(量子ドット以外の部分)を構成する半導体は、いずれも真性半導体であるが、量子井戸層または量子ドットを構成する半導体のエネルギーバンドギャップは、量子障壁層を構成する半導体のエネルギーバンドギャップよりも小さい。量子障壁層の厚さは、例えば0.5nm〜数十nmの範囲内であればよい。量子井戸層の厚さは、例えば1nm〜数十nmの範囲内であればよい。埋設層の厚さは、例えば1nm〜数十nmの範囲内であればよい。また、量子ドットを構成する半導体のエネルギーバンドギャップは、埋設層の量子ドット以外の部分を構成する半導体のエネルギーバンドギャップよりも小さい。このような第1の被覆層を設けることで、中心ナノロッド(n層またはp層)、第1の被覆層(i層)および第2の被覆層(p層またはn層)のエネルギーバンドギャップよりもエネルギーの小さい光を発電に利用することができるようになる。
【0052】
量子井戸層または量子ドットを含む埋設層は、1層だけであってもよいし、2層以上あってもよい。2層以上の量子井戸層または埋設層を有する場合には、互いに同一組成の層であっても、異なる組成の層であってもよい。例えば、中心ナノロッドに近い埋設層には、大きい量子ドットを埋設、中心ナノロッドから遠い埋設層には、小さい量子ドットを埋め込んでもよい。エネルギーバンドギャップを調整することで、より効率的に光を電気に変換することができる。
【0053】
量子ドットの形状は、その中に閉じ込められた電子または正孔の運動が3次元的に束縛(制限)されるものであれば特に限定されない。量子ドットの形状の例には、球状、片面凸レンズ状、四面体状などが含まれる。量子ドットの形状が球状または四面体状の場合、量子ドットの大きさは、縦、横、高さのいずれも数nm〜10nmの範囲内であればよい。また、量子ドットの形状が片面凸レンズ状の場合、量子ドットの大きさは、縦、横はいずれも10〜30nmの範囲内、高さ(厚さ)は数nm程度であればよい。量子ドットを高密度に分布させて、量子ドット間の間隔が数nm以下の距離になると、電子または正孔(ホール)が隣接する量子ドット間をトンネル効果により移動できるようになる。
【0054】
図1に示すように、半導体ナノロッド130は、基板(マスクパターン)上に、三角格子状に配列されていることが好ましい。ここで、三角格子とは、三角形Tの各辺に平行な複数の直線の交点を格子点とする格子であり、半導体ナノロッド130は前記格子点をその中心とするように配置されている。
【0055】
前記配列において、半導体ナノロッド130同士の中心間距離をpとすれば、半導体ナノロッド130は図1に破線で示すようにピッチpを単位とする六方最密配列で配置されているということもできる。
【0056】
このとき、半導体ナノロッド130は、半導体ナノロッド同士の中心間距離をpと半導体ナノロッド130の最小径dとの比p/dが1〜7の範囲、好ましくは1.5〜5の範囲となるように調整されていることが好ましい。半導体ナノロッド130をこのように配列することにより、太陽電池素子全体として入射光の反射率が低減され、かつ、半導体ナノロッド130の内部で吸収される光量が平面構造の膜に比較してより大きくなる。この結果、本発明の太陽電池素子は光反射率を低減すると共に光吸収率を増大させ、発電効率を向上させることができる。
【0057】
第1の電極は、半導体ナノロッドの下部(下端)に接続され、第2の電極は半導体ナノロッドの上部(端部)に接続される。第1の電極を半導体ナノロッドの下部(下端)に接続するには、導電性を有する基板に第1の電極を接続してもよい。第1の電極は、例えば金属電極である。第2の電極は、例えば半導体ナノロッドの上部に接続された透明電極と、前記透明電極に接続された金属電極である。金属電極は、例えばTi/Au合金膜やGe/Au/Ni/Au合金膜などである。透明電極は、例えばInSnO膜、SnSbO膜、ZnO膜などである。
【0058】
本発明の太陽電池素子は、半導体ナノロッドを被覆する表面保護層をさらに有することが好ましい。表面保護層は、半導体ナノロッドの最外層(例えば、第2の被覆層)を被覆する。表面保護層の材料は、半導体ナノロッドを構成するすべての半導体のエネルギーバンドギャップよりも大きいものであれば特に限定されない。
【0059】
また、本発明の太陽電池素子において、半導体ナノロッド間の隙間は、絶縁材料で満たされていてもよい。絶縁材料の例には、SOGガラスやBCB樹脂などが含まれる。
【0060】
本発明の太陽電池素子は、量子井戸層または量子ドットを含む埋設層を有するため、エネルギーの小さい光も発電に利用することができる。
【0061】
本発明の太陽電池素子は、本発明の効果を損なわない限り任意の方法で製造されうる。たとえば、本発明の太陽電池素子は、以下のステップを含む方法で製造されうる。
【0062】
第1のステップでは、開口部を有するマスクパターンで表面を被覆された基板を準備する。たとえば、半導体結晶基板の結晶軸(111)面にスパッタ法で絶縁膜を形成した後、この絶縁膜にフォトリソグラフィーや電子ビームリソグラフィーなどで開口部を形成すればよい。
【0063】
第2のステップでは、基板の表面からマスクパターンの開口部を通して第1の導電型(n型またはp型)の半導体からなる中心ナノロッドを結晶成長により形成する。中心ナノロッドの形成は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相堆積法(CVD)などにより行われる。好ましくは、半導体ナノロッドの成長は、MOCVD法により行われる。
【0064】
MOCVD法による中心ナノロッドの形成は、通常のMOCVD装置を用いて行うことができる。つまり、所定の温度および圧力の条件下で、反応炉に配置された基板に原料ガスを供給すればよい。たとえば、以下の工程により中心ナノロッドを形成することができる。なお、開口部以外の領域では、マスクパターンによりナノロッドの成長が阻害される。
【0065】
まず、基板温度を750℃とし、有機金属原料のガスを反応炉に供給すれば、ナノロッドが形成される。このとき、ナノロッドの太さ(直径)はマスクパターンの開口部の直径とほぼ同じである。また、ナノロッドは、基板の表面に垂直な方向に伸長する。次に、ナノロッドの長さ方向よりも動径方向の成長を促進させるには、基板温度を50〜100℃程度低下させて、650〜700℃の範囲とする。この温度では、ナノロッドの側面における成長速度がナノロッドの長さ方向の成長速度よりも大きくなる。基板温度を650℃程度まで低下させることで、ナノロッドの長さ方向と動径方向の成長速度比を1:100程度にまで変化させることができる。このようにすることで、ナノロッドのコア部の周囲にシェル部が形成される横方向成長を実現することができる。基板温度を650℃から上昇させると、ナノロッドの長さ方向と動径方向の成長速度比は徐々に1に近づく。基板温度が680〜720℃の範囲内の場合、ナノロッドの長さ方向と動径方向の成長速度比はほぼ等しくなり、ナノロッドの表面を包み込むように結晶が成長する。このように基板温度を変化させることで、長さ方向と横方向の成長速度を制御することができる。
【0066】
また、基板温度の制御に加えて、供給ガスのV族原料ガスとIII族原料ガスとの供給比率V/IIIを変化させることでも、長さ方向と横方向の成長速度を制御することができる。たとえば、750℃でGaAsナノロッドの長さ方向の成長速度を高めるには、V/III供給比率を10〜200の範囲内とすればよい。一方、長さ方向の成長速度をこれよりも遅くするには、V/III供給比率をさらに大きく300〜500の範囲とするか、または500以上とすればよい。これにより、長さ方向の成長速度を数%から数十%の範囲で抑制できる。ナノロッドの動径方向の成長に適した650℃では、V/III供給比率を300以上とすれば、長さ方向の成長をほぼ完全に抑制することができる。一方、V/III供給比率を100以下、例えば10程度にまで低下させると、長さ方向の成長速度は、V/III供給比率300の場合よりも大きいが、750℃成長の場合よりも1桁程度小さくなる。ここまでGaAsナノロッドを例としてナノロッドの形状を作り分ける温度範囲について説明したが、他の半導体からなるナノロッドについても原理は同じである。AlGaAsナノロッドを形成する場合は、GaAsナノロッドよりも相対的に50〜100℃程度高い温度とすればよい。また、InAsナノロッドまたはInGaAsナノロッドを形成する場合は、GaAsナノロッドよりも相対的に100〜200℃程度低い温度とすればよい。
【0067】
たとえば、GaAsからなる中心ナノロッドを成長させる場合には、ガリウム原料としてトリメチルガリウム((CHGa:TMG)ガスを1×10−6〜1×10−5atmの圧力で供給し、ヒ素原料として水素化ヒ素(AsH:アルシン)ガスを1×10−5〜1×10−3atmの圧力で供給すればよい。また、AlGaAsからなる中心ナノロッドを成長させる場合には、ガリウム原料としてトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料として水素化ヒ素ガスを、アルミニウム原料としてトリメチルアルミニウム((CHAl:TMA)ガスを供給すればよい。また、InGaAsからなる中心ナノロッドを成長させる場合には、インジウム原料としてトリメチルインジウム((CHIn:TMI)ガスを、ガリウム原料としてトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料として水素化ヒ素を供給すればよい。また、InGaPからなる中心ナノロッドを成長させる場合には、インジウム原料としてトリメチルインジウムガスを、ガリウム原料としてトリメチルガリウムガスを、リン原料としてターシャリーブチルフォスフィン(TBP)ガスを供給すればよい。InGaPからなる中心ナノロッドを成長させる場合には、ターシャリーブチルフォスフィンの供給圧力は1×10−4〜1×10−3atmの範囲内とし、成長温度は700〜750℃の範囲内とする。
【0068】
中心ナノロッドを構成する半導体をn型またはp型にするには、例えば原料ガスと同時にn型のモノシラン(SiH)ガスまたはp型のドーパントガス(例えば、ジメチル亜鉛(Zn(CH:DMZ)ガス)を供給すればよい。
【0069】
タンデム構造の中心ナノロッドを形成するには、中心ナノロッドの成長過程において供給する原料ガスの種類を切り替えればよい。たとえば、基板側から長さ方向にGaAs、AlGaAs、GaInPの順で積み重ねた構造の中心部ナノロッドを形成するには、750℃でGaAsを成長させ;次いで800〜820℃でAlGaAsを成長させ;次いで750〜800℃でGaInPを成長させればよい。基板側から長さ方向にGe、GaAs、GaAsP、GaInPの順で積み重ねた構造の中心部ナノロッドを形成するには、ゲルマニウム原料として水素化ゲルマニウム(GeH)ガスを用いて600〜650℃でGeを成長させ;次いでトリメチルガリウムガスおよび水素化ヒ素ガスを用いて750℃でGaAsを成長させ;次いでトリメチルガリウムガス、水素化ヒ素ガスおよびターシャリーブチルフォスフィンガスを用いて780〜800℃でGaAsPを成長させ;次いでトリメチルガリウムガス、トリメチルインジウムガスおよびターシャリーブチルフォスフィンガスを用いて750℃でGaInPを成長させればよい。
【0070】
第3のステップでは、中心ナノロッドの周囲に真性半導体からなる第1の被覆層を形成する。つまり、中心ナノロッドをコア部とし、第1の被覆層をシェル部とする、コアシェル構造を形成する。第1の被覆層の形成は、中心ナノロッドの形成と同じ方法(MOCVD、MBE、CVDなど)で行えばよい。第1の被覆層を形成する第3のステップは、第1の組成のガスを供給して量子障壁層を形成するステップと、第2の組成のガスを供給して量子井戸層または量子ドットを形成するステップとを含む。量子井戸層または量子ドットのポテンシャルは、周囲の量子障壁層のポテンシャルよりも小さくする必要があるので、量子井戸層または量子ドットの材料と量子障壁層の材料とは異なるものにする必要がある。したがって、量子井戸層を形成する工程では、反応炉に供給される有機金属原料ガスの組成を変更する。ヘテロ接合を形成する場合には、半導体ナノロッドの成長過程において原料ガスの種類を切り替えればよい。
【0071】
量子井戸層を形成する場合、量子井戸層の厚さをナノロッドの太さに対して相対的に薄くして、1〜10nmの範囲内とする。量子井戸層の厚さをこの範囲とするためには、成長時間を数秒〜1分間程度の範囲内とすればよい。原料ガスの供給圧力は、中心ナノロッド(コア部)の形成時の供給圧力またはシェル部の形成時の供給圧力と同程度にすればよい。また、基板温度は、シェル部の形成時と同程度にすればよい。
【0072】
InAs量子ドットを形成する場合、基板温度は400〜500℃の範囲内とし、かつ、成長時間は1〜数十秒程度の範囲内とすればよい。成長時間を短くするほど量子ドットの大きさを小さくすることができる。原料ガスの供給量(供給圧力)は、コア部またはシェル部の成長時と同程度でよい。この温度範囲では成長温度が400℃に近いほど、GaAs面上にInAs結晶を島状に形成することができる。一方、成長温度が高くなると、基板表面や結晶表面に付着した原料ガスの表面移動が活発になるため、島状結晶から膜状成長へと結晶の成長形態が変化する。このような量子ドットの形成は、InAsとGaAsとの結晶格子定数差に起因するものである。したがって、GaAsに限らず、InAsとの結晶格子定数差を利用できる半導体(例えば、InPやInGaNなど)を用いれば、InAs量子ドットを形成することができる。InGaAs量子ドットを形成する場合も、InAs量子ドットと同じ原理で形成できる。この場合、InGaAs量子ドットは、InGaAsよりもエネルギーバンドギャップが大きい半導体(例えば、GaAsやAlGaAsなど)の上に形成される。また、InGaAs量子ドットの最適な成長温度は、500〜600℃の範囲内である。
【0073】
第4のステップでは、第1の被覆層の周囲に第2の被覆層を形成する。第2の被覆層は、第2の導電型の半導体からなる。つまり、中心ナノロッドがn型であれば第2の被覆層はp型であり、中心ナノロッドがp型であれば第2の被覆層はn型である。第2の被覆層の形成は、MOCVD、MBE、CVDなどで行えばよく、原料ガスと一緒にn型またはp型のドーパントガスを供給すればよい。
【0074】
半導体ナノロッドの成長方向に対する垂直断面は、マスクパターンの開口部の形状の影響をほとんど受けない。よって、開口部が三角形、六角形、円形のいずれの場合であっても、ほぼ六角柱に近い形状の半導体ナノロッドを得ることができる。半導体ナノロッドの太さも、開口部のサイズ(直径)で制御することができる。
【0075】
形成した半導体ナノロッドの下端に第1の電極を接続し、上端に第2の電極を接続して、本発明の太陽電池素子を製造することができる。通常は、第2の電極を透明電極とする。
【0076】
半導体ナノロッドは、直径が数百nm以下の細長い形状であるため、半導体の接合界面において発生する結晶格子の歪みを緩和することができる。この効果は、格子定数差の大きいヘテロ接合を形成する際に有利である。たとえば、ナノロッドの長軸方向にヘテロ接合を形成する場合、格子定数が互いに異なる半導体間の接合界面に結晶格子の歪みが発生する。従来の膜構造の太陽電池素子では、この結晶格子の歪みを結晶転位に発展させないためには、半導体膜の厚さを非常に薄くするか、格子定数差を小さくしなければならなかった。一方、本発明の太陽電池素子では、半導体ナノロッドの結晶格子が外部方向に伸縮できるため、結晶格子の歪みが結晶転位に発展することはほとんどない。このように、本発明の太陽電池素子では、複数の超格子構造(量子井戸層または量子ドット)を含ませ、かつ隣接する超格子が近接するヘテロ接合とした場合も、半導体ナノロッド内に転位が発生することを防ぐことができる。
【0077】
2.カラーセンサ
本発明のカラーセンサは、基板、3以上の領域に区分されたマスクパターン、2以上の半導体ナノロッド、第1の電極および第2の電極を有する。後述するように、本発明のカラーセンサは、半導体ナノロッドの組成がマスクパターンの領域ごとに異なることを一つの特徴とする。
【0078】
基板は、半導体ナノロッドを成長させうるものであれば特に限定されない。基板の材料の例には、半導体、ガラス、金属、プラスチック、セラミックなどが含まれる。基板を構成する半導体の例には、GaAs、InP、Si、InAs、GaN、SiC、Alなどが含まれる。好ましい基板は、半導体基板である。半導体基板の表面から、半導体ナノロッドを形成しやすいためである。
【0079】
マスクパターンは、基板表面に配置され、2以上の開口部を有する薄膜である。基板が半導体結晶基板の場合、マスクパターンは、基板を構成する半導体結晶の結晶軸(111)面上に配置されていることが好ましい。結晶軸(111)面から半導体ロッドの中心ナノロッドを成長させることにより、中心ナノロッドの延伸方向を半導体結晶の結晶軸(111)方向に揃えることができる。マスクパターンの材料は、半導体ナノロッドの中心ナノロッドの成長を阻害しうるものであれば特に限定されない。マスクパターンの材料の例には、無機絶縁材料、金属、プラスチック、セラミック、これらの組み合わせなどが含まれる。無機絶縁材料の例には、SiO、SiNなどが含まれ、金属の例には、W、WSi、Ti、Mo、Pt、MoSi、Ni、NiSi、WAl、TiAl、MoAlなどが含まれる。マスクパターンの膜厚は、特に限定されず、数nm程度であればよい。マスクパターンの膜厚は、半導体ナノロッドの長さと同じ(数μm程度)であってもよい。
【0080】
前述の通り、マスクパターンは3以上の領域に区分されている。通常、各領域は、赤色光、緑色光または青色光に対応している。各領域のマスクパターンには、2以上の開口部が形成されている。開口部は基板表面まで貫通しており、開口部内では基板表面が露出している。開口部は、本発明のカラーセンサを製造する際に、半導体ナノロッドの中心ナノロッドの成長位置、太さおよび形状を規定する。開口部の形状は、任意であり、例えば円形、三角形、四角形、六角形などであればよい。開口部のサイズ(直径)は、10nm〜数百nmの範囲内であればよい。開口部の中心間距離は、約5μm以下であればよい。1つの領域内では、開口部の直径および開口部の中心間距離は一定であることが好ましい。一方、異なる領域間では、開口部の直径および開口部の中心間距離は異なることが好ましい。
【0081】
半導体ナノロッドは、InGaNからなる、直径数百nm以下、長さ数μm以下の構造体である。半導体ナノロッドは、基板(マスクパターン)の表面上に、その長軸が略垂直になるように配置されている。半導体ナノロッドは、少なくとも、中心ナノロッドと、前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層とを有し、p−n接合またはp−i−n接合を有する。中心ナノロッドは、基板表面からマスクパターンの開口部を通って上方に延伸しており、第1の導電型(n型またはp型)のInGaNからなる。第1の被覆層は、第1の導電型とは異なる第2の導電型(p型またはn型)のInGaNからなる。すなわち、中心ナノロッド(n型またはp型InGaN)および第1の被覆層(p型またはn型InGaN)は、p−n接合またはp−i−n接合を形成する。中心ナノロッドの直径は10〜200nmの範囲内であればよく、長さは0.5〜3μmの範囲内であればよい。第1の被覆層の膜厚は、〜100nmの範囲内であればよい。
【0082】
半導体ナノロッドの組成は、検出する光の波長に応じてマスクパターンの領域ごとに異なる。すなわち、赤色光を検出する領域の半導体ナノロッドの組成は、赤色光を吸収しうる組成であり;緑色光を検出する領域の半導体ナノロッドの組成は、緑色光を吸収しうる組成であり;青色光を検出する領域の半導体ナノロッドの組成は、青色光を吸収しうる組成である。具体的な組成については、製造方法を説明する際に説明する。
【0083】
第1の電極は、半導体ナノロッドの下部(下端)に接続され、第2の電極は半導体ナノロッドの上部(端部)に接続される。第1の電極を半導体ナノロッドの下部(下端)に接続するには、導電性を有する基板に第1の電極を接続してもよい。第1の電極は、例えば金属電極である。第2の電極は、例えば半導体ナノロッドの上部に接続された透明電極と、前記透明電極に接続された金属電極である。金属電極は、例えばTi/Au合金膜やGe/Au/Ni/Au合金膜などである。透明電極は、例えばInSnO膜、SnSbO膜、ZnO膜などである。
【0084】
また、本発明のカラーセンサにおいて、半導体ナノロッド間の隙間は、絶縁材料で満たされていてもよい。絶縁材料の例には、SOGガラスやBCB樹脂などが含まれる。
【0085】
本発明のカラーセンサは、p−n接合に逆バイアスを印加することで使用されうる。本発明のカラーセンサは、光反射率が低いため、検出感度が優れている。
【0086】
本発明のカラーセンサは、本発明の効果を損なわない限り任意の方法で製造されうる。たとえば、本発明のカラーセンサは、以下のステップを含む方法で製造されうる。
【0087】
第1のステップでは、開口部を有するマスクパターンで表面を被覆された基板を準備する。たとえば、半導体結晶基板の結晶軸(111)面にスパッタ法で絶縁膜を形成した後、この絶縁膜にフォトリソグラフィーや電子ビームリソグラフィーなどで開口部を形成すればよい。前述の通り、マスクパターンは3以上の領域に区分されている。後述するように、マスクパターンの領域ごとに半導体ナノロッドの組成を変えるために、マスクパターンの領域ごとに開口部の直径および/または開口部の中心間距離を変えることが好ましい。
【0088】
第2のステップでは、基板の表面からマスクパターンの開口部を通して第1の導電型(n型またはp型)のInGaNからなる中心ナノロッドを結晶成長により形成する。中心ナノロッドの形成は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相堆積法(CVD)などにより行われる。好ましくは、半導体ナノロッドの成長は、MOCVD法により行われる。
【0089】
MOCVD法による中心ナノロッドの形成は、通常のMOCVD装置を用いて行うことができる。つまり、所定の温度および圧力の条件下で、反応炉に配置された基板に原料ガスを供給すればよい。たとえば、以下の工程により中心ナノロッドを形成することができる。なお、開口部以外の領域では、マスクパターンによりナノロッドの成長が阻害される。
【0090】
まず、基板温度を750℃とし、有機金属原料のガスを反応炉に供給すれば、ナノロッドが形成される。インジウム原料としてはトリメチルインジウムガスを用いることができ、ガリウム原料としてはトリメチルガリウムガスを用いることができ、窒素原料としてはアンモニアガスを用いることができる。このとき、ナノロッドの太さ(直径)はマスクパターンの開口部の直径とほぼ同じである。また、ナノロッドは、基板の表面に垂直な方向に伸長する。中心ナノロッドを構成する半導体をn型またはp型にするには、例えば原料ガスと同時にn型のモノシランガスまたはp型のドーパントガス(例えば、ジメチル亜鉛ガス)を供給すればよい。
【0091】
InGaNの結晶成長では、In原料ガスおよびGa原料ガスの供給量(供給圧力)の比率を変化させることで、InGaN中のInとGaとの比率を制御することができる。また、成長時の基板温度を変化させることでも、InGaN中のInとGaとの比率を制御することができる。通常、基板温度は600〜1000℃の範囲内であり、温度が高いほどInの取り込みが少なくなり、Gaが多い結晶組成となる。
【0092】
前述の通り、本発明のカラーセンサでは、マスクパターンの領域ごとに半導体ナノロッド全体の組成が異なる。3成分系の化合物半導体InGa1−xNでは、Inの組成xが増加するにつれて、光学的なエネルギーバンドギャップは単調に減少する。Inの組成xが0のGaNでは、エネルギーバンドギャップが約3.4eVであるが、Inの組成xが増加するにつれて(Gaの組成1−xは逆に減少する)エネルギーバンドギャップは小さくなる。Inの組成xが1のInNでは、エネルギーバンドギャップは約0.8eVになる。赤色光(波長650nm)に対応するエネルギーバンドギャップは約1.9eVであり;緑色光(波長520nm)に対応するエネルギーバンドギャップは約2.4eVであり;青色光(波長460nm)に対応するエネルギーバンドギャップは約2.7eVである。したがって、InGa1−xNにおける、赤色光、緑色光および青色光に対応するInの組成xは、それぞれ0.5、0.3、0.2である。
【0093】
マスクパターンの領域ごとに半導体ナノロッドの組成を変えるには、例えば第1のステップでマスクパターンに開口部を形成する際に、マスクパターンの領域ごとに開口部のサイズ(直径)および/または開口部の中心間距離を変えればよい。MOCVDまたはMBEによる結晶成長で、中心ナノロッドの組成変化は、ナノロッドを成長させる時の基板温度、マスクパターンの開口部のサイズ、開口部の中心間距離との関係で以下のように説明される。以下の説明では、マスクパターンの開口部の大きさが50〜500nmの範囲内であり、開口部間の中心間距離が100nm〜10μmの範囲内であるものとして説明する。
【0094】
1)開口部の中心間距離とナノロッドの組成との関係(予備実験)
1つの基板上に3つのマスクパターン領域A、BおよびCを形成した。各領域のサイズは100μm×100μmとし、隣接するマスクパターン間の間隔は100μmとし、開口部のサイズは約100nmとした。一方、マスクパターンAでは開口部の中心間距離Pを0.5μmとし、マスクパターンBでは開口部の中心間距離Pを2.0μmとし、マスクパターンCでは開口部の中心間距離Pを5.0μmとした。マスクパターン領域A、BおよびCは、開口部間の中心間距離P以外のパラメータはすべて同じである。
【0095】
基板温度750℃でガリウムの原料ガスとしてトリメチルガリウムガス、インジウムの原料ガスとしてトリメチルインジウムガス、窒素の原料ガスとしてアンモニアガスを供給すると、これらのガスは基板表面付近で熱分解反応を起こし、分解した元素(Ga、InおよびN)はマスクパターンの開口部にマスクパターンの表面を移動して集まる。マスクパターンで被覆された領域では結晶成長が起こらず、開口部内で半導体結晶が露出している部分で結晶成長が起こる。マスクパターンの表面では基板が加熱されているため、表面に付着した元素や原料ガスは、一定時間経過した後に、基板表面から気相中へと離散する。マスクパターンの表面におけるGaの表面移動距離はInの表面移動距離よりも長いため、開口部から離れた位置に付着した元素のうち、Gaの方がInよりも多く開口部に到達する。このように開口部の中心間距離Pが大きい場合には、Ga組成がIn組成よりも大きいGaInN結晶となる。一方、開口部の中心間距離Pが小さく(0.5μm程度)なると、Gaの表面移動距離およびInの表面移動距離が開口部の中心間距離Pよりも長くなり、In組成がGa組成よりも大きいGaInN結晶となる。この原理は、GaInNナノロッドを成長させる場合も成り立つ。また、基板温度を上げれば、Gaに対するInの取り込み量が減り、基板温度を下げれば、Gaに対するInの取り込み量が増大する。したがって、GaInN内のGaとInの比率を大幅に変化させるには、基板温度も並行して制御することが好ましい。
【0096】
トリメチルガリウムガスの供給量を0.1モル/分とし、トリメチルインジウムガスの供給量を0.1モル/分とし、アンモニアガスの供給量を2000cc/分としてナノロッドを成長させた。このナノロッドの光学特性をフォトルミネッセンスで測定したところ、マスクパターンA(P=0.5μm)で赤黄色発光(波長590nm)が観測され、マスクパターンB(P=2μm)で緑色発光(波長510nm)が観測され、マスクパターンC(P=5μm)で青緑色発光(波長495nm)が観測された。
【0097】
2)開口部のサイズとナノロッドの組成との関係(予備実験)
1つの基板上に2つのマスクパターン領域AおよびBを形成した。各領域のサイズは100μm×100μmとし、隣接するマスクパターン間の間隔は100μmとし、開口の中心間距離は0.5μmとした。一方、マスクパターンAでは開口部のサイズdを100nmとし、マスクパターンBでは開口部のサイズdを300nmとした。マスクパターン領域AおよびBは、開口部のサイズd以外のパラメータはすべて同じである。
【0098】
トリメチルガリウムガスの供給量を0.1モル/分とし、トリメチルインジウムガスの供給量を0.1モル/分とし、アンモニアガスの供給量を2000cc/分としてナノロッドを成長させた。このナノロッドの光学特性をフォトルミネッセンスで測定したところ、マスクパターンA(d=100nm)で赤黄色発光(波長590nm)が観測され;マスクパターンB(d=300nm)で赤色発光(波長630nm)が観測された。
【0099】
以上の予備実験の結果から、基板上に形成するマスクパターンの開口部の中心間距離P、開口部サイズdを下記のように設定すると、赤色光、緑色光および青色光に対応するGaInNナノロッドを形成することができる。
【0100】
i)赤色波長帯に感度中心ピークを有するGaInNナノロッド:
P=0.5〜0.7μm、d=400〜500nm
ii)緑色波長帯に感度中心ピークを有するGaInNナノロッド:
P=2〜3μm、d=100〜200nm
iii)青色波長帯に感度中心ピークを有するGaInNナノロッド:
P=5〜7μm、d=100nm
第2のステップでは、中心ナノロッドの周囲に第1の被覆層を形成する。第1の被覆層は、第2の導電型のInGaNからなる。つまり、中心ナノロッドがn型であれば第1の被覆層はp型であり、中心ナノロッドがp型であれば第1の被覆層はn型である。第1の被覆層を形成することで、半導体ナノロッド中に長さ方向および/または動径方向にp−n接合が形成される。第1の被覆層の形成は、MOCVD、MBE、CVDなどで行えばよく、原料ガスと一緒にn型またはp型のドーパントガスを供給すればよい。
【0101】
半導体ナノロッドの成長方向に対する垂直断面は、マスクパターンの開口部の形状による影響を受けない。開口部が三角形、六角形、円形、いずれの場合にも、六角柱に近い形状の半導体ナノロッドを得ることができる。半導体ナノロッドの太さも、開口部のサイズ(直径)で制御することができる。
【0102】
形成した半導体ナノロッドの下端に第1の電極を接続し、上端に第2の電極を接続して、本発明のカラーセンサを製造することができる。通常は、第2の電極を透明電極とする。
【0103】
3.発光素子および受光素子の製造方法
本発明の製造方法は、発光素子および受光素子を同時に製造する方法であって、A)表面をマスクパターンで被覆された基板を準備する第1のステップと、B)マスクパターンで被覆された基板から、開口部を通して半導体ナノロッドを成長させる第2のステップとを有する。
【0104】
第1のステップでは、開口部を有するマスクパターンで表面を被覆された基板を準備する。たとえば、半導体結晶基板の結晶軸(111)面にスパッタ法で絶縁膜を形成した後、この絶縁膜にフォトリソグラフィーや電子ビームリソグラフィーなどで開口部を形成すればよい。このとき、マスクパターンが、発光素子となる領域と受光素子となる領域とに区分されるようにする。後述するように、発光素子に含まれる半導体ナノロッドと受光素子に含まれる半導体ナノロッドとで組成を変えるために、発光素子となる領域と受光素子となる領域とで開口部のサイズおよび/または開口部の中心間距離を変えることが好ましい。
【0105】
第2のステップでは、基板の表面からマスクパターンの開口部を通して半導体ナノロッドを成長させる。このとき、半導体ナノロッド内にn型半導体からなる層と、p型半導体からなる層とを形成して、p−n接合またはp−i−n接合を形成する。半導体ナノロッドを構成する半導体は、GaInNまたはGaInAsである。半導体ナノロッドの形成は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相堆積法(CVD)などにより行われる。好ましくは、半導体ナノロッドの成長は、MOCVD法により行われる。
【0106】
MOCVD法による半導体ナノロッドの形成は、通常のMOCVD装置を用いて行うことができる。つまり、所定の温度および圧力の条件下で、反応炉に配置された基板に原料ガスを供給すればよい。たとえば、以下の工程により半導体ナノロッドを形成することができる。なお、開口部以外の領域では、マスクパターンによりナノロッドの成長が阻害される。
【0107】
ここでは、GaInNを成長させる場合について説明する。まず、基板温度を675℃とし、有機金属原料のガスを反応炉に供給すれば、ナノロッドが形成される。たとえば、インジウム原料としてはトリメチルインジウムガスを用いることができ、ガリウム原料としてはトリメチルガリウムガスを用いることができ、窒素原料としてはアンモニアガスを用いることができる。このとき、ナノロッドの太さ(直径)はマスクパターンの開口部の直径とほぼ同じである。また、ナノロッドは、基板の表面に垂直な方向に伸長する。中心ナノロッドを構成する半導体をn型またはp型にするには、例えば原料ガスと同時にn型のモノシランガスまたはp型のドーパントガス(例えば、ジメチル亜鉛ガス)を供給すればよい。
【0108】
InGaNの結晶成長では、In原料ガスおよびGa原料ガスの供給量(供給圧力)の比率を変化させることで、InGaN中のInとGaとの比率を制御することができる。また、成長時の基板温度を変化させることでも、InGaN中のInとGaとの比率を制御することができる。通常、基板温度は600〜1000℃の範囲内であり、温度が高いほどInの取り込みが少なくなり、Gaが多い結晶組成となる。一方、温度が低いほど、Gaの取り込みが少なくなり、Inが多い結晶組成となる。
【0109】
発光素子と受光素子とでは、半導体ナノロッドの組成が異なる。また、発光素子内でも、発光波長ごとに半導体ナノロッドの組成は異なる。発光素子内では、マスクパターンは発光波長の数に区分される。すなわち、4つの異なる波長の光を発光させる場合は、発光素子内のマスクパターンは4つに区分される。各領域では、半導体ナノロッドが所望の波長の光を発光するように、半導体ナノロッドの組成が調整される。一方、受光素子内では、発光素子が発する波長の光を検出できるように半導体ナノロッドの組成が調整される。
【0110】
マスクパターンの領域ごとに半導体ナノロッドの組成を変えるには、例えば第1のステップでマスクパターンに開口部を形成する際に、マスクパターンの領域ごとに開口部のサイズおよび/または開口部の中心間距離を変えればよい。MOCVDまたはMBEによる結晶成長で、半導体ナノロッドの組成変化は、ナノロッドを成長させる時の基板温度、マスクパターンの開口部のサイズ、開口部の中心間距離との関係で以下のように説明される。以下の説明では、マスクパターンの開口部の大きさが50〜500nmの範囲内であり、開口部の中心間距離が100nm〜10μmの範囲内であるものとして説明する。
【0111】
1)開口部の中心間距離とナノロッドの組成との関係(予備実験)
1つの基板上に複数のマスクパターン領域を形成した。各領域のサイズは50μm×50μmとし、隣接するマスクパターン領域間の間隔は50μmとし、開口部のサイズは100nmとした。一方、開口部の中心間距離Lは、マスクパターン領域ごとに0.5〜5μmと変化させた。複数のマスクパターン領域は、開口部の中心間距離L以外のパラメータはすべて同じである。
【0112】
ここでは、GaInAsを成長させる場合について説明する。基板温度675℃でガリウムの原料ガスとしてトリメチルガリウムガス(供給圧力:1.0×10−7〜1.0×10−6atm)、インジウムの原料ガスとしてトリメチルインジウムガス(供給圧力:1.0×10−7〜1.0×10−6atm)、ヒ素の原料ガスとして水素化ヒ素ガス(供給圧力:1.0×10−5〜1.0×10−4atm)を供給して、GaInAsナノロッドを成長させた。このナノロッドの光学特性をフォトルミネッセンスで測定したところ、開口部の中心間距離Lが0.5μmから3.0μmへと長くなるのに併せて、GaInAsナノロッドのエネルギーバンドギャップが1.35eV(波長918nm)から1.15eV(波長1078nm)へとほぼ単調に減少した。このことから、開口部の中心間距離Lを変化させることで、GaとInの取り込み量を制御できることがわかる。特に、GaInAsナノロッドを成長させる場合、開口部の中心間距離Lを1μm以下とすることで、Gaの取り込み量が増大した。開口部のサイズが50nm、200nmまたは500nmの場合も、同様の傾向であった。
【0113】
2)開口部のサイズとナノロッドの組成との関係(予備実験)
1つの基板上に複数のマスクパターン領域を形成した。各領域のサイズは50μm×50μmとし、隣接するマスクパターン領域間の間隔は50μmとし、開口部の中心間距離は1.0μmとした。一方、開口部のサイズdは、マスクパターン領域ごとに50〜500nmと変化させた。複数のマスクパターン領域は、開口部のサイズd以外のパラメータはすべて同じである。
【0114】
上記1)と同様の手順でGaInAsナノロッドを成長させた。このナノロッドの光学特性をフォトルミネッセンスで測定したところ、開口部のサイズdが50nmから200nmへと大きくなるのに併せて、GaInAsナノロッドのエネルギーバンドギャップが1.34eV(波長925nm)から1.32eV(波長939nm)へとわずかに変化した。また、開口部のサイズdが300nmから400nmへと大きくなるのに併せて、GaInAsナノロッドのエネルギーバンドギャップが1.32eVから1.31eVへとわずかに変化した。
【0115】
以上の予備実験の結果から、1つの基板上に複数の発光波長を有する発光素子および受光素子を同時に製造するためには、基板上に形成するマスクパターンの開口部の中心間距離L、開口部サイズdを下記のように設定することが導き出される。
【0116】
i)GaInAsナノロッドを有する発光素子
発光素子領域のマスクパターンをマスクパターン領域A、マスクパターン領域B、マスクパターン領域C、マスクパターン領域Dの4つの領域に区分する。各領域の開口部のサイズdは100nmとする。マスクパターン領域Aの開口部の中心間距離Lは0.5μmとし、マスクパターン領域Bの開口部の中心間距離Lは1.0μmとし、マスクパターン領域Cの開口部の中心間距離Lは2.0μmとし、マスクパターン領域Dの開口部の中心間距離Lは3.0μmとする。
【0117】
ii)GaInAsナノロッドを有する受光素子
受光素子領域のマスクパターンの開口部の中心間距離Lを3.0〜10μmの範囲内とする。これにより、受光素子の検出感度のピークを、発光素子が発光する光と同じ波長またはより長い波長とすることができる。GaInAsナノロッドを有する受光素子は、検出感度のピークと同じ波長の光と、より短い波長の光(よりエネルギーの大きい光)に対して感度を有する。したがって、GaInAsナノロッドを有する受光素子は、発光素子が発光するすべての波長の光に対して感度を有する。
【0118】
たとえば、基板温度675℃で上記の条件を満たすマスクパターンを形成した基板にトリメチルガリウムガス、トリメチルインジウムガスおよび水素化ヒ素ガスを供給してGaInAsナノロッドを成長させることで、発光波長925nm(マスクパターン領域A)、990nm(マスクパターン領域B)、1040nm(マスクパターン領域C)、1090nm(マスクパターン領域D)の発光素子と、波長925〜1090nmの光を検出できる受光素子とを同時に製造することができる。
【0119】
形成した半導体ナノロッドの下端に第1の電極を接続し、上端に第2の電極を接続して、発光素子および受光素子を製造することができる。通常は、第2の電極を透明電極とする。
【0120】
本発明の製造方法により製造された発光素子は、p−n接合に順バイアスを印加することで発光させることができる。本発明の製造方法により製造された受光素子は、p−n接合に逆バイアスを印加することで使用できる。本発明の製造方法により製造された発光素子は、例えば並列伝送方式や波長多重方式の光伝送システムに適用されうる。
【0121】
本発明の発光素子および受光素子の製造方法は、発光素子および受光素子を同時に製造することができるため、従来よりも低コストで効率よく発光素子および受光素子を製造することができる。
【0122】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0123】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の太陽電池素子に用いる半導体ナノロッドアレイの例を示す。
【0124】
図1は、実施の形態1の半導体ナノロッドアレイの構成を示す斜視図である。図1に示すように、実施の形態1の半導体ナノロッドアレイは、導電性のGaAs(111)B基板110、非晶質SiO膜120、半導体ナノロッド130を有する。
【0125】
次に、図1に示す半導体ナノロッドアレイの製造方法について説明する。
【0126】
まず、GaAs(111)B基板110を洗浄し、SiOターゲットを備えたRFスパッタ装置を用いて、GaAs(111)B基板110表面に非晶質SiO被膜120を約20nmの厚さに成膜する。
【0127】
次に、非晶質SiO被膜120上にポジレジストを塗布し、EB描画装置にGaAs(111)B基板110をセットし、該ポジレジストに円形孔を三角格子状に配列させたパターンを描画する。前記円形孔は、図1に示す断面正六角形状の半導体ナノロッド130に内接する円となる。
【0128】
前記描画後、レジストを現像して、50倍に希釈したBHF溶液にGaAs(111)B基板110を浸漬し、円形孔のSiOをエッチング除去する。そして、前記エッチング後、前記レジストを除去する。この結果、非晶質SiO被膜120からなるマスクパターンが形成される。
【0129】
次に、非晶質SiO被膜120からなるマスクパターンが形成されたGaAs(111)B基板110をMOVPE装置にセットし、チャンバーを真空排気した後にHガスに置換し、全圧が0.1atmで安定するように流量と排気速度とを調整する。
【0130】
次に、AsH(Arsine)とキャリアガス(H)との混合ガス(全圧:0.1atm、AsH分圧:2.5×10−4atm)を流しながら、基板温度が750℃になるまで昇温する。そして、基板温度が750℃に達した後、流通ガスにTMG(trimetylgallium)を加え、GaAsからなる半導体ナノロッド130を成長させる。このとき、全圧は0.1atmのままとし、AsH分圧が2.5×10−4atm、TMG分圧が1.0×10−6atmになるように設定する。
【0131】
次に、流通ガスにTMGを加えてから30分後にTMGの供給を停止し、半導体ナノロッド130の成長を停止させる。そして、AsH(Arsine)とキャリアガス(H)との混合ガス流通下に半導体ナノロッド130を成長させた半導体ナノロッドアレイを取り出す。
【0132】
前記製造方法によれば、半導体ナノロッド130の最小径d(半導体ナノロッド130の正六角形状断面の内接円直径)は、前記マスクパターン円形孔の直径と一致する。従って、半導体ナノロッド130の最小径dは、前記マスクパターン円形孔の直径により制御することができる。
【0133】
そこで、次に、前記製造方法において、半導体ナノロッド130の最小径dを50〜300nmの範囲で変量すると共に、相隣り合う半導体ナノロッド130同士の中心間距離pを70〜900nmの範囲で変量して、複数の半導体ナノロッドアレイを製造した。そして、各半導体ナノロッドアレイに垂直に光を入射したときの反射率スペクトルを分光光度計により測定した。
【0134】
GaAsからなる半導体ナノロッド130の場合、利用できる太陽光の波長は300〜900nmの範囲であるので、前記測定により得られた反射率スペクトルから、300〜900nmの範囲で、p/dに対する平均反射率を求めた。尚、p/dは、半導体ナノロッド130同士の中心間距離pと、半導体ナノロッドの最小径dとの比である。結果を図3に示す。
【0135】
また、基板上に形成された表面平滑なGaAs膜、表面での反射損失を抑制するために表面に凹凸をつけたテクスチャ構造GaAs膜を用いて、前記半導体ナノロッドアレイと同一にして求めた平均反射率を図3に併せて示す。
【0136】
図3から、実施の形態1の半導体ナノロッドアレイはp/dが1〜7の範囲では平均反射率が表面平滑なGaAs膜より小さいことが認められ、p/dが1.5〜7の範囲では平均反射率がテクスチャ構造GaAs膜よりも小さくなることが認められる。また、実施の形態1の半導体ナノロッドアレイはp/dが1.5〜5の範囲で、平均反射率が最も低くなることが認められる。
【0137】
従って、実施の形態1の半導体ナノロッドアレイによれば、p/dを1〜7の範囲とすることにより、入射光の吸収率を増加させることができ、発電効率を向上させることができることが明らかである。
【0138】
(実施の形態2)
実施の形態2では、複数の量子井戸層を有する本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0139】
図4は、実施の形態2の太陽電池素子の構成を示す斜視図である。図4に示されるように、実施の形態2の太陽電池素子100は、導電性GaAs基板110、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド130、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。第1の金属電極160および第2の金属電極170は、外部回路に接続される。
【0140】
導電性GaAs基板110は、導電性のGaAs(111)B基板である。
【0141】
SiO膜120は、GaAs基板110の(111)B面を被覆している。SiO膜120の膜厚は、例えば20nmである。SiO膜120の半導体ナノロッド130が配置される領域には、SiO膜120を貫通する開口部が形成されている。後述するように、半導体ナノロッド130内のn型GaAsナノロッド(中心ナノロッド)131は、GaAs基板110に直接接触している(図5(b)参照)。
【0142】
半導体ナノロッド130は、SiO膜120上に複数配置されており、その長軸が導電性GaAs基板110の(111)B面に対して略垂直になるように配置されている。半導体ナノロッド130の外径は、例えば200nmであり、SiO膜120表面からの高さは、例えば1000nmである。各半導体ナノロッド130は、例えば中心間距離pが300nmとなるように配列されている(図1参照)。
【0143】
図5は、半導体ナノロッド130の構造を示す図である。図5(a)は、半導体ナノロッド130の斜視透視図であり、図5(b)は、半導体ナノロッド130の断面図である。図5(a)および図5(b)に示されるように、半導体ナノロッド130は、n型GaAsナノロッド131(中心ナノロッド)と、前記n型GaAsナノロッド131を被覆し、量子井戸層を有するノンドープGaAs層(第1の被覆層)132と、前記ノンドープGaAs層132を被覆するp型GaAs層(第2の被覆層)138とを有する。n型GaAsナノロッド131はn層として機能し、ノンドープGaAs層132はi層として機能し、p型GaAs層138はp層として機能する。すなわち、n型GaAsナノロッド131、ノンドープGaAs層132およびp型GaAs層138によりp−i−n接合が形成される。n型GaAsナノロッド131の根元の太さは、例えば100nmであり、GaAs基板110表面からの高さは、例えば800nmである。
【0144】
また、図5(b)に示されるように、ノンドープGaAs層132は、2層のノンドープInGaAs量子井戸層を有する。これら2層のノンドープInGaAs量子井戸層は、それぞれノンドープGaAs量子障壁層の間に挟まれている。すなわち、ノンドープGaAs層132は、前記n型GaAsナノロッド131を被覆する、第1のノンドープGaAs量子障壁層133と;前記第1のノンドープGaAs量子障壁層133を被覆する、第1のノンドープInGaAs量子井戸層134と;前記第1のノンドープInGaAs量子井戸層134を被覆する、第2のノンドープGaAs量子障壁層135と;前記第2のノンドープGaAs量子障壁層135を被覆する、第2のノンドープInGaAs量子井戸層136と;前記第2のノンドープInGaAs量子井戸層136を被覆する、第3のノンドープGaAs量子障壁層137とを有する。ノンドープInGaAs量子井戸層134,136およびノンドープGaAs量子障壁層133,135,137は、超格子構造を形成している。キャリアは、これらノンドープInGaAs量子井戸層134,136内を自由に移動することができる。また、量子障壁層の膜厚が数nm以下である場合、その量子障壁層を挟む2つの量子井戸層内のキャリアは、トンネル効果によりその量子障壁層を透過して2つの量子井戸層間を自由に移動することができる。
【0145】
前述の通り、n型GaAsナノロッド(中心ナノロッド)131は、導電性GaAs基板110の(111)B面に接触しているが、ノンドープInGaAs量子井戸層134,136およびノンドープGaAs量子障壁層133,135,137は、いずれも導電性GaAs基板110の(111)B面には接触していない。第1のノンドープInGaAs量子井戸層134の膜厚は、例えば10nmであり、第2のノンドープInGaAs量子井戸層136の膜厚は、例えば5nmである。また、ノンドープGaAs量子障壁層133,135,137の膜厚は、例えばそれぞれ3nmである。
【0146】
透明埋設膜140は、半導体ナノロッド130の側面を被覆し、かつ半導体ナノロッド130間の空間を埋める、絶縁膜である。半導体ナノロッド130の上部は、透明埋設膜140に被覆されずに露出している。透明埋設膜140の材料の例には、SOGガラス、BCB樹脂が含まれる。
【0147】
透明電極150は、透明埋設膜140に被覆されずに露出している半導体ナノロッド130の上部に接続されており、半導体ナノロッド130のp型GaAs層(第2の被覆層)138にオーミック接続されている。透明電極150の材料の例には、InSnO、SnSbO、ZnOが含まれる。
【0148】
第1の金属電極160は、導電性GaAs基板110のSiO膜120が無い面の上に配置されており、導電性GaAs基板110にオーミック接続されている。第1の金属電極160の材料の例には、Au、Tiなどの金属が含まれる。
【0149】
第2の金属電極170は、透明電極150上に配置されており、透明電極150にオーミック接続されている。第2の金属電極170の材料の例には、Au、Tiなどの金属が含まれる。
【0150】
以下、図面を参照して実施の形態2の太陽電池素子100の製造方法について説明する。
【0151】
まず、導電性GaAs基板(GaAs(111)B基板)110を準備する。次いで、スパッタ法により、導電性GaAs基板110の(111)B面上にSiO膜120を堆積する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、SiO膜120に複数の開口部(貫通孔)を形成する。開口部を有するSiO膜120は、マスクパターンとして機能する。開口部の形状は略円形であり、その直径は例えば80nmである。各開口部は、例えば中心間距離が300nmとなるように配列される(図1参照)。次いで、MOCVD法により、開口部を通して露出した導電性GaAs基板110の(111)B面からn型GaAsナノロッド131を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は例えば750℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0152】
次いで、MOCVD法により、n型GaAsナノロッド131の周囲に、第1のノンドープGaAs量子障壁層133、第1のノンドープInGaAs量子井戸層134、第2のノンドープGaAs量子障壁層135、第2のノンドープInGaAs量子井戸層136および第3のノンドープGaAs量子障壁層137を成長させる。InGaAsを成長させる場合、MOCVD装置内の基板温度は例えば680℃とし、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを用いればよい。
【0153】
次いで、MOCVD法により、第3のノンドープGaAs量子障壁層137の周囲にp型GaAs層138を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は例えば680℃とすればよい。n型GaAsナノロッド131およびp型GaAs層138のキャリア濃度は、例えば2×1018〜5×1018cm−3であればよい。図2は、半導体ナノロッド130を成長させた後の導電性GaAs基板110を示す斜視図である。図1は、図2に示される導電性GaAs基板110における半導体ナノロッド130の配列を示す平面図である。図1に示されるように、半導体ナノロッド130は、最小径dの六角柱状であり、ピッチpを単位とする六方最密配列で配置されている。
【0154】
次いで、導電性GaAs基板110上の半導体ナノロッド130を透明埋設膜140内に埋め込んだ後、透明埋設膜140を薄膜化して半導体ナノロッド130の頭部を露出させる。次いで、透明埋設膜140上に透明電極150を形成し、透明電極150上に第2の金属電極170を形成する。また、導電性GaAs基板110のSiO膜120が形成されていない面上に、第1の金属電極160を形成する。
【0155】
以上の手順により、本実施の形態の太陽電池素子100を製造することができる。この太陽電池素子100は、半導体ナノロッド130の頭部側(透明電極150側)から光を照射されて使用される。
【0156】
なお、本実施の形態では、半導体ナノロッドの中心部をn型GaAsとし、半導体ナノロッドの最外部をp型GaAsとしたが、半導体ナノロッドの中心部をp型GaAsとし、半導体ナノロッドの最外部をn型GaAsとしても同様の効果を得ることができる。
【0157】
(実施の形態3)
実施の形態2では、量子井戸層を有する本発明の太陽電池素子の例を示したが、実施の形態3では、さらに表面保護層を有する本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0158】
実施の形態3の太陽電池素子は、半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態3の太陽電池素子100’、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド130’と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0159】
図4に示すように、実施の形態3の太陽電池素子100’は、導電性GaAs基板110、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド130’、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0160】
図6は、実施の形態3の太陽電池素子100’の半導体ナノロッド130’の断面図である。図6に示されるように、半導体ナノロッド130’は、n型GaAsナノロッド131(中心ナノロッド)と、前記n型GaAsナノロッド131を被覆し、量子井戸層を有するノンドープGaAs層(第1の被覆層)132と、前記ノンドープGaAs層132を被覆するp型GaAs層(第2の被覆層)138と、前記p型GaAs層138を被覆する表面保護層180とを有する。
【0161】
表面保護層180は、p型GaAs層138を被覆する保護膜である。表面保護層180の材料は、p型GaAsよりもエネルギーバンドギャップが大きい材料であれば特に限定されない。このような材料の例には、GaP、InGaP、AlInP、AlGaAs、GaN、AlN、ZnO、ZnS、SiCおよびアモルファスシリコン(a−Si)が含まれる。表面保護層180を結晶成長で形成する場合、表面保護層180の形成は、MOCVD法やMBE法などにより行えばよい。また、a−Siからなる表面保護層180を形成する場合、表面保護層180の形成は、CVD法などにより行えばよい。
【0162】
実施の形態3の太陽電池素子100’は、半導体ナノロッド130’の表面をエネルギーバンドギャップの大きい材料で被覆しているため、光照射により発生したキャリアを捕獲する表面準位を小さくすることができる。したがって、実施の形態3の太陽電池素子100’は、実施の形態2の太陽電池素子よりもさらに発電効率が優れている。
【0163】
(実施の形態4)
実施の形態4では、量子ドットを有する本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0164】
実施の形態4の太陽電池素子は、基板および半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態4の太陽電池素子200、導電性GaAs基板110を導電性InP基板210、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド220と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0165】
図4に示すように、実施の形態4の太陽電池素子200は、導電性InP基板210、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド220、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0166】
図7は、実施の形態4の太陽電池素子200の半導体ナノロッド220の断面図である。図7(a)は、半導体ナノロッド全体の断面図であり、図7(b)は、半導体ナノロッドの部分拡大断面図である。
【0167】
図7(a)および図7(b)に示されるように、半導体ナノロッド220は、n型InPナノロッド(中心ナノロッド)230と、前記n型InPナノロッド230を被覆し、量子ドット構造を有するノンドープInP層(第1の被覆層)240と、前記ノンドープInP層240を被覆するp型InP層(第2の被覆層)250とを有する。n型InPナノロッド230はn層として機能し、ノンドープInP層240はi層として機能し、p型InP層250はp層として機能する。すなわち、n型InPナノロッド230、ノンドープInP層240およびp型InP層250によりp−i−n接合が形成される。n型InPナノロッド230の根元の太さは、例えば100nmであり、基板210表面からの高さは、例えば500nmである。
【0168】
また、図7(a)および図7(b)に示されるように、ノンドープInP層240は、2層のノンドープInP埋設層を有する。これら2層のノンドープInP埋設層は、それぞれノンドープInP量子障壁層の間に挟まれている。すなわち、ノンドープInP層240は、前記n型InPナノロッド(中心ナノロッド)230を被覆する第1のノンドープInP量子障壁層241と、前記第1のノンドープInP量子障壁層241を被覆する第1のノンドープInP埋設層242と、前記第1のノンドープInP埋設層242を被覆する第2のノンドープInP量子障壁層244と、前記第2のノンドープInP量子障壁層244を被覆する第2のノンドープInP埋設層245と、前記第2のノンドープInP埋設層245を被覆する第3のノンドープInP量子障壁層247とを有する。第1のノンドープInP埋設層242の膜厚は、例えば100nmであり、第2のノンドープInP埋設層245の膜厚は、例えば50nmである。また、ノンドープInP量子障壁層241,244,247の膜厚は、例えばそれぞれ50nmである。
【0169】
2層のノンドープInP埋設層242,245は、それぞれInGaAs(またはInAs)の島状固体結晶を含んでいる。この結晶は、電子を閉じ込める量子井戸として機能しうることからInGaAs(またはInAs)量子ドットとみなすことができる。図7(b)に示されるように、第1のノンドープInP埋設層242は、大きなInGaAs量子ドット243を含み、第2のノンドープInP埋設層245は、小さなInGaAs量子ドット246を含む。このようにすることで、第2のノンドープInP埋設層245に含まれるInGaAs量子ドット246の光学的なエネルギーバンドギャップを、第1のノンドープInP埋設層242に含まれるInGaAs量子ドット243の光学的なエネルギーバンドギャップよりも大きくすることができる。また、InPのエネルギーバンドギャップは、InGaAs量子ドットのエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0170】
以下、図面を参照して実施の形態4の太陽電池素子200の製造方法について説明する。
【0171】
まず、導電性InP基板(InP(111)A基板)210を準備する。次いで、スパッタ法により、導電性InP基板210の(111)A面上にSiO膜120を堆積する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、SiO膜120に複数の開口部(貫通孔)を形成する。開口部を有するSiO膜120は、マスクパターンとして機能する。開口部の形状は略円形であり、その直径は例えば100nmである。各開口部は、中心間距離が約500nmとなるように配列される。次いで、MOCVD法により、開口部を通して露出した導電性InP基板210の(111)A面からn型InPナノロッド230を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は例えば650℃とし、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、リン原料ガスにはターシャリーブチルフォスフィンガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0172】
次いで、MOCVD法により、n型InPナノロッド230の周囲に第1のノンドープInP量子障壁層241としてノンドープInP層を成長させる。このとき、MOCVD装置内の基板温度は例えば600℃に低下させて、n型InPナノロッド230の長さ方向の成長速度と動径方向の成長速度をほぼ等しくすることが好ましい。第1のノンドープInP量子障壁層241を形成した後、トリメチルインジウムガス、トリメチルガリウムガスおよびターシャリーブチルフォスフィンガスを同時に供給し、膜厚数nmのInGaAs膜を成長させるのと同じ時間供給を維持する。このとき、III族原料として、Gaの約5倍以上の量のInを供給するか、またはInのみを供給する。これにより、第1のノンドープInP量子障壁層241の表面に付着したInGaAs(またはInAs)は、InPとInGaAs(またはInAs)との結晶格子定数の違い、およびInGaAs(またはInAs)の表面張力により、島状固体結晶(InGaAs量子ドット243)となる。InGaAs量子ドット243が形成された直後に、再度ノンドープInP層を成長させることで、InGaAs量子ドット243を第1のノンドープInP埋設層242の中に埋め込むことができる。この工程を繰り返すことで、さらに第2のノンドープInP量子障壁層244、第2のノンドープInP埋設層245(InGaAs量子ドット246を含む)および第3のノンドープInP量子障壁層247を成長させる。
【0173】
次いで、MOCVD法により、第3のノンドープInP量子障壁層247の周囲にp型InP層250を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は例えば600℃とし、p型ドーパントにはジエチル亜鉛((CZn:DEZ)を用いればよい。n型InPナノロッド230およびp型InP層250のキャリア濃度は、例えば1×1018cm−3であればよい。
【0174】
次いで、導電性InP基板210上の半導体ナノロッド220を透明埋設膜140内に埋め込んだ後、透明埋設膜140を薄膜化して半導体ナノロッド220の頭部を露出させる。次いで、透明埋設膜140上に透明電極150を形成し、透明電極150上に第2の金属電極170を形成する。また、導電性InP基板210のSiO膜120が形成されていない面上に、第1の金属電極160を形成する。
【0175】
以上の手順により、本実施の形態の太陽電池素子200を製造することができる。この太陽電池素子200は、半導体ナノロッド220の頭部側(透明電極側)から光を照射されて使用される。
【0176】
実施の形態4の太陽電池素子200は、実施の形態2の太陽電池素子100と同様の効果を得ることができる。
【0177】
(実施の形態5)
実施の形態4では、量子ドットを有する本発明の太陽電池素子の例を示したが、実施の形態5では、さらに表面保護層を有する本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0178】
実施の形態5の太陽電池素子は、半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、実施の形態4の太陽電池素子200と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態5の太陽電池素子200’、導電性GaAs基板110を導電性InP基板210、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド220’と読み替えて説明する。また、実施の形態4の太陽電池素子200と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0179】
図4に示すように、実施の形態5の太陽電池素子200’は、導電性InP基板210、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド220’、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0180】
図8は、実施の形態5の太陽電池素子200’の半導体ナノロッド220’の断面図である。図8に示されるように、半導体ナノロッド220’は、n型InPナノロッド230(中心ナノロッド)と、前記n型InPナノロッド230を被覆し、量子井戸層を有するノンドープInP層(第1の被覆層)240と、前記ノンドープInP層240を被覆するp型InP層(第2の被覆層)250と、前記p型InP層250を被覆する表面保護層260とを有する。
【0181】
表面保護層260は、p型InP層240を被覆する保護膜である。表面保護層260の材料は、p型InPよりもエネルギーバンドギャップが大きい材料であれば特に限定されない。このような材料の例には、InGaP、AlGaInP、GaP、InGaN、GaN、ZnS、SiC、SiO、SiNおよびAlが含まれる。
【0182】
実施の形態5の太陽電池素子200’は、半導体ナノロッド220’の表面をエネルギーバンドギャップの大きい材料で被覆しているため、光照射により発生したキャリアを捕獲する表面準位を小さくすることができる。したがって、実施の形態5の太陽電池素子200’は、実施の形態3の太陽電池素子よりもさらに発電効率が優れている。
【0183】
(実施の形態6)
実施の形態6では、半導体ナノロッドがタンデム構造である本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0184】
実施の形態6の太陽電池素子は、半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態6の太陽電池素子300、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド310と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0185】
図4に示すように、実施の形態6の太陽電池素子300は、導電性GaAs基板110、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド310、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0186】
図9は、実施の形態6の太陽電池素子300の半導体ナノロッド310の断面図である。図9に示されるように、半導体ナノロッド310は、n型GaAs領域321、n型AlGaAs領域322およびn型GaN領域323からなる中心ナノロッド320と、前記中心ナノロッド320を被覆し、量子ドットを有するノンドープGaN層330と、前記ノンドープGaN層330を被覆するp型GaN層340と、前記p型GaN層340を被覆する表面保護層350とを有する。中心ナノロッド320はn層として機能し、ノンドープGaN層330はi層として機能し、p型GaN層340はp層として機能する。すなわち、中心ナノロッド320、ノンドープGaN層330およびp型GaN層340によりp−i−n接合が形成される。中心ナノロッド320の根元の直径は、例えば80nmであり、導電性GaAs基板110表面からの長さは、例えば1500nmである。n型GaAs領域321、n型AlGaAs領域322およびn型GaN領域323の長さは、例えばそれぞれ500nmである。n型GaAs領域321は導電性GaAs基板110側に位置し、n型GaN領域323は透明電極150側に位置する。n型AlGaAs領域322は、n型GaAs領域321とn型GaN領域323との間に位置する。すなわち、各半導体(n型GaAs、n型AlGaAsおよびn型GaN)は、透明電極150側からエネルギーバンドギャップが大きい順に並んでいる。
【0187】
また、図9に示されるように、ノンドープGaN層330は、2層のノンドープGaN埋設層を有する。これら2層のノンドープGaN埋設層は、それぞれノンドープGaN量子障壁層の間に挟まれている。すなわち、ノンドープGaN層330は、前記中心ナノロッド320を被覆する、第1のノンドープGaN量子障壁層331と;前記第1のノンドープGaN量子障壁層331を被覆する、第1のノンドープGaN埋設層332と;前記第1のノンドープGaN埋設層332を被覆する、第2のノンドープGaN量子障壁層334と;前記第2のノンドープGaN量子障壁層334を被覆する、第2のノンドープGaN埋設層335と;前記第2のノンドープGaN埋設層335を被覆する、第3のノンドープGaN量子障壁層337とを有する。第1のノンドープGaN埋設層332の膜厚は、例えば100nmであり、第2のノンドープGaN埋設層335の膜厚は、例えば50nmである。また、ノンドープGaN量子障壁層331,334,337の膜厚は、例えばそれぞれ50nmである。
【0188】
2層のノンドープGaN埋設層332,335は、それぞれInAsの島状固体結晶を含んでいる。この結晶は、電子を閉じ込める量子井戸として機能しうることからInAs量子ドットとみなすことができる。図9に示されるように、第1のノンドープGaN埋設層332は、大きなInAs量子ドット333を含み、第2のノンドープGaN埋設層335は、小さなInAs量子ドット336を含む。このようにすることで、第2のノンドープGaN埋設層335に含まれるInAs量子ドット336の光学的なエネルギーバンドギャップを、第1のノンドープGaN埋設層332に含まれるInAs量子ドット333の光学的なエネルギーバンドギャップよりも大きくすることができる。また、GaNのエネルギーバンドギャップは、InAs量子ドットのエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0189】
以下、図面を参照して実施の形態6の太陽電池素子300の製造方法について説明する。
【0190】
まず、導電性GaAs基板(GaAs(111)B基板)110を準備する。次いで、スパッタ法により、導電性GaAs基板110の(111)B面上にSiO膜120を堆積する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、SiO膜120に複数の開口部(貫通孔)を形成する。開口部を有するSiO膜120は、マスクパターンとして機能する。開口部の形状は略円形であり、その直径は例えば150nmである。各開口部は、例えば中心間距離が500nmとなるように配列される。次いで、MOCVD法により、開口部を通して露出した導電性GaAs基板110の(111)B面からn型GaAsナノロッド321、n型AlGaAsナノロッド322およびn型GaNナノロッド323をこの順番で成長させる。MOCVD装置内の基板温度は800℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、アルミニウム原料ガスにはトリメチルアルミニウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、窒素原料ガスにはアンモニアガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0191】
次いで、MOCVD法により、中心ナノロッド320の周囲に第1のノンドープGaN量子障壁層331としてノンドープGaN層を成長させる。このとき、MOCVD装置内の基板温度は700℃に低下させて、中心ナノロッド320の長さ方向の成長速度と動径方向の成長速度がほぼ等しくすることが好ましい。第1のノンドープGaN量子障壁層331を形成した後、トリメチルインジウムガスおよび水素化ヒ素ガスを同時に供給し、膜厚数nmのInAs膜を成長させるのと同じ時間供給を維持する。これにより、第1のノンドープGaN量子障壁層331の表面に付着したInAsは、GaNとInAsとの結晶格子定数の違い、およびInAsの表面張力により、島状固体結晶(InAs量子ドット333)となる。InAs量子ドット333が形成された直後に、再度ノンドープGaN層を成長させることで、InAs量子ドット333を第1のノンドープGaN埋設層332の中に埋め込むことができる。この工程を繰り返すことで、さらに第2のノンドープGaN量子障壁層334、第2のノンドープGaN埋設層335(InAs量子ドット336を含む)および第3のノンドープGaN量子障壁層337を成長させる。
【0192】
次いで、MOCVD法により、第3のノンドープGaN量子障壁層337の周囲にp型GaN層340を成長させ、さらにp型GaN層340の周囲に表面保護層350としてAlGaN層を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は800℃とし、p型ドーパントにはマグネシウム(Mg)または亜鉛(Zn)を含む有機金属を用いればよい。中心ナノロッド320およびp型GaN層340のキャリア濃度は、いずれも1×1018cm−3であればよい。
【0193】
次いで、導電性GaAs基板110上の半導体ナノロッド310を透明埋設膜140内に埋め込んだ後、透明埋設膜140を薄膜化して半導体ナノロッド310の頭部を露出させる。次いで、透明埋設膜140上に透明電極150を形成し、透明電極150上に第2の金属電極170を形成する。また、導電性GaAs基板110のSiO膜120が形成されていない面上に、第1の金属電極160を形成する。
【0194】
以上の手順により、本実施の形態の太陽電池素子300を製造することができる。この太陽電池素子300は、半導体ナノロッド310の頭部側(透明電極側)から光を照射されて使用される。
【0195】
実施の形態6の太陽電池素子300は、実施の形態1の太陽電池素子の効果に加えて、GaNのエネルギーバンドギャップ(3.4eV)よりもエネルギーの小さい太陽光スペクトルをより効率的に利用することができる。
【0196】
(実施の形態7)
実施の形態7では、半導体ナノロッドがタンデム構造である本発明の太陽電池素子の別の例を示す。
【0197】
実施の形態7の太陽電池素子は、半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態7の太陽電池素子400、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド410と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0198】
図4に示すように、実施の形態7の太陽電池素子400は、導電性GaAs基板110、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド410、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0199】
図10は、実施の形態7の太陽電池素子400の半導体ナノロッド410の断面図である。図10に示されるように、半導体ナノロッド410は、n型GaAs領域421、n型AlGaAs領域422およびn型GaInP領域423からなる中心ナノロッド420と、前記中心ナノロッド420を被覆し、量子井戸層を有するノンドープGaInP層430と、前記ノンドープGaInP層430を被覆するp型GaInP層440と、前記p型GaInP層440を被覆する表面保護層450とを有する。中心ナノロッド420はn層として機能し、ノンドープGaInP層430はi層として機能し、p型GaInP層440はp層として機能する。すなわち、中心ナノロッド420、ノンドープGaInP層430およびp型GaInP層440によりp−i−n接合が形成される。中心ナノロッド420の根元の直径は、例えば80nmであり、導電性GaAs基板110表面からの長さは、例えば1500nmである。n型GaAs領域421、n型AlGaAs領域422およびn型GaInP領域423の長さは、例えばそれぞれ500nmである。n型GaAs領域421は導電性GaAs基板110側に位置し、n型GaInP領域423は透明電極150側に位置する。n型AlGaAs領域422は、n型GaAs領域421とn型GaInP領域423との間に位置する。すなわち、各半導体(n型GaAs、n型AlGaAsおよびn型GaInP)は、透明電極150側からエネルギーバンドギャップが大きい順に並んでいる。
【0200】
また、図10に示されるように、ノンドープGaInP層430は、2層のノンドープInGaAs量子井戸層を有する。これら2層のノンドープInGaAs量子井戸層は、それぞれノンドープGaInP量子障壁層の間に挟まれている。すなわち、ノンドープGaInP層430は、前記中心ナノロッド420を被覆する、第1のノンドープGaInP量子障壁層431と;前記第1のノンドープGaInP量子障壁層431を被覆する、第1のノンドープInGaAs量子井戸層432と;前記第1のノンドープInGaAs量子井戸層432を被覆する、第2のノンドープGaInP量子障壁層433と;前記第2のノンドープGaInP量子障壁層433を被覆する、第2のノンドープInGaAs量子井戸層434と;前記第2のノンドープInGaAs量子井戸層434を被覆する、第3のノンドープGaInP量子障壁層435とを有する。ノンドープInGaAs量子井戸層432,434およびノンドープGaInP量子障壁層431,433,435は、超格子構造を形成している。キャリアは、これらノンドープInGaAs量子井戸層432,434内を自由に移動することができる。第1のノンドープInGaAs量子井戸層432の膜厚は、例えば10nmであり、第2のノンドープInGaAs量子井戸層434の膜厚は、例えば5nmである。また、ノンドープGaInP量子障壁層431,433,435の膜厚は、例えばそれぞれ3nmである。
【0201】
本実施の形態の太陽電池素子400は、実施の形態2,6の太陽電池素子と同様の手順により製造されうる。本実施の形態の太陽電池素子400は、半導体ナノロッド410の頭部側(透明電極側)から光を照射されて使用される。
【0202】
実施の形態7の太陽電池素子400は、実施の形態6の太陽電池素子と同様の効果を得ることができる。
【0203】
(実施の形態8)
実施の形態6,7では、半導体ナノロッドが3段構造である本発明の太陽電池素子の例を示したが、実施の形態8では、半導体ナノロッドが4段構造である本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0204】
実施の形態8の太陽電池素子は、基板および半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態8の太陽電池素子500、導電性GaAs基板110を導電性Si基板510、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド520と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0205】
図4に示すように、実施の形態8の太陽電池素子500は、導電性Si基板510、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド520、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0206】
図11は、実施の形態8の太陽電池素子500の半導体ナノロッド520の断面図である。図11に示されるように、半導体ナノロッド520は、n型Ge領域531、n型GaAs領域532、n型GaAsP領域533およびn型GaInP領域534からなる中心ナノロッド530と、前記中心ナノロッド530を被覆し、量子ドットを有するノンドープInGaN層540と、前記ノンドープInGaN層540を被覆するp型GaN層550と、前記p型GaN層550を被覆する表面保護層560とを有する。中心ナノロッド530はn層として機能し、ノンドープInGaN層540はi層として機能し、p型GaN層550はp層として機能する。すなわち、中心ナノロッド530、ノンドープInGaN層540およびp型GaN層550によりp−i−n接合が形成される。中心ナノロッド530の根元の直径は、例えば100nmであり、導電性Si基板510表面からの長さは、例えば1600nmである。n型Ge領域531、n型GaAs領域532、n型GaAsP領域533およびn型GaInP領域534の長さは、例えばそれぞれ400nmである。各半導体(n型Ge、n型GaAs、n型GaAsPおよびn型GaInP)は、透明電極150側からエネルギーバンドギャップが大きい順に並んでいる。
【0207】
また、図11に示されるように、ノンドープInGaN層540は、2層のノンドープInGaN埋設層を有する。これら2層のノンドープInGaN埋設層は、それぞれノンドープInGaN量子障壁層の間に挟まれている。すなわち、ノンドープInGaN層540は、前記中心ナノロッド530を被覆する、第1のノンドープInGaN量子障壁層541と;前記第1のノンドープInGaN量子障壁層541を被覆する、第1のノンドープInGaN埋設層542と;前記第1のノンドープInGaN埋設層542を被覆する、第2のノンドープInGaN量子障壁層544と;前記第2のノンドープInGaN量子障壁層544を被覆する、第2のノンドープInGaN埋設層545と;前記第2のノンドープInGaN埋設層545を被覆する、第3のノンドープInGaN量子障壁層547とを有する。第1のノンドープInGaN埋設層542の膜厚は、例えば50nmであり、第2のノンドープInGaN埋設層545の膜厚は、例えば30nmである。また、ノンドープInGaN量子障壁層541,544,547の膜厚は、例えばそれぞれ30nmである。
【0208】
2層のノンドープInGaN埋設層542,545は、それぞれInAs量子ドットを含んでいる。図11に示されるように、第1のノンドープInGaN埋設層542は、大きなInAs量子ドット543を含み、第2のノンドープInGaN埋設層545は、小さなInAs量子ドット546を含む。このようにすることで、第2のノンドープInGaN埋設層545に含まれるInAs量子ドット546の光学的なエネルギーバンドギャップを、第1のノンドープInGaN埋設層542に含まれるInAs量子ドット543の光学的なエネルギーバンドギャップよりも大きくすることができる。また、InGaNのエネルギーバンドギャップは、InAs量子ドットのエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0209】
本実施の形態の太陽電池素子500は、実施の形態6の太陽電池素子とほぼ同様の手順により製造されうる。本実施の形態の太陽電池素子500は、半導体ナノロッド520の頭部側(透明電極側)から光を照射されて使用される。
【0210】
実施の形態8の太陽電池素子500は、実施の形態6の太陽電池素子と同様の効果を得ることができる。
【0211】
(実施の形態9)
実施の形態9では、半導体ナノロッドが複数のヘテロ接合を有する本発明の太陽電池素子の例を示す。
【0212】
実施の形態9の太陽電池素子は、半導体ナノロッドの構成が異なることを除いて、図4に示す実施の形態2の太陽電池素子100と全く同一の構成である。そこで、図4において、実施の形態2の太陽電池素子100を実施の形態9の太陽電池素子600、半導体ナノロッド130を半導体ナノロッド610と読み替えて説明する。また、実施の形態2の太陽電池素子100と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
【0213】
図4に示すように、実施の形態9の太陽電池素子600は、導電性GaAs基板110、酸化シリコン(SiO)膜120、半導体ナノロッド610、透明埋設膜140、透明電極150、第1の金属電極160および第2の金属電極170を有する。
【0214】
図12は、実施の形態9の太陽電池素子600の半導体ナノロッド610の断面図である。図12に示されるように、半導体ナノロッド610は、n型GaAsナノロッド(中心ナノロッド)611と、前記n型GaAsナノロッド611を被覆するp型GaAs層(第1の被覆層)612と、前記p型GaAs層612を被覆するn型AlGaAs層(第2の被覆層)613と、前記n型AlGaAs層613を被覆するp型AlGaAs層(第3の被覆層)614と、前記p型AlGaAs層614を被覆するn型GaInP層(第4の被覆層)615と、前記n型GaInP層615を被覆するp型GaInP層(第5の被覆層)616と、前記p型GaInP層616を被覆する表面保護層617とを有する。
【0215】
p型GaInP層(第5の被覆層)616およびn型GaInP層(第4の被覆層)615を構成するGaInPは、p型AlGaAs層(第3の被覆層)614およびn型AlGaAs層(第2の被覆層)613を構成するAlGaAsよりもエネルギーバンドギャップが大きい。また、p型AlGaAs層(第3の被覆層)614およびn型AlGaAs層(第2の被覆層)613を構成するAlGaAsは、p型GaAs層(第1の被覆層)612およびn型GaAsナノロッド(中心ナノロッド)611を構成するGaAsよりもエネルギーバンドギャップが大きい。すなわち、半導体ナノロッド610では、n型の半導体とp型の半導体とが交互になるように、かつ中心から外側に向けてエネルギーバンドギャップが順次大きくなるように、中心ナノロッドおよび半導体層が形成されている。
【0216】
半導体ナノロッド610内では、3つのp−n接合が形成されている。1つ目のp−n接合は、n型GaAsナノロッド(中心ナノロッド)611およびp型GaAs層(第1の被覆層)612により形成されるp−n接合である。2つ目のp−n接合は、n型AlGaAs層(第2の被覆層)613およびp型AlGaAs層(第3の被覆層)614により形成されるp−n接合である。3つ目のp−n接合は、n型GaInP層(第4の被覆層)615およびp型GaInP層(第5の被覆層)616により形成されるp−n接合である。n型GaAsナノロッド611の根元の太さは、例えば50nmである。また、半導体ナノロッド610の太さは、例えば400nmであり、基板110表面からの高さは、例えば1800nmである。
【0217】
表面保護層617は、p型GaInP層(第5の被覆層)616を被覆する保護膜である。表面保護層617の材料は、p型GaInP層よりもエネルギーバンドギャップが大きい材料であれば特に限定されない。
【0218】
以下、図面を参照して実施の形態9の太陽電池素子600の製造方法について説明する。
【0219】
まず、導電性GaAs基板(GaAs(111)B基板)110を準備する。次いで、スパッタ法により、導電性GaAs基板110の(111)B面上にSiO膜120を堆積する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、SiO膜120に複数の開口部(貫通孔)を形成する。開口部を有するSiO膜120は、マスクパターンとして機能する。開口部の形状は略円形であり、その直径は例えば50nmである。各開口部は、中心間距離が約300nmとなるように配列される。次いで、MOCVD法により、開口部を通して露出した導電性GaAs基板110の(111)B面から直径50nmのn型GaAsナノロッド611を成長させる。MOCVD装置内の基板温度は例えば750℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0220】
次いで、n型GaAsナノロッド611の周囲にp型GaAs層(第1の被覆層)612を成長させる。このとき、MOCVD装置内の基板温度は例えば650〜680℃に低下させて、p型GaAs層612の長さ方向の成長速度が動径方向の成長速度よりも大きくなるようにすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば680℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、p型ドーパントにはジエチル亜鉛ガスを用いればよい。
【0221】
次いで、p型GaAs層(第1の被覆層)612の周囲にn型AlGaAs層(第2の被覆層)613を成長させる。このときも、MOCVD装置内の基板温度は例えば750〜850℃として、n型AlGaAs層613の長さ方向の成長速度が動径方向の成長速度よりも大きくなるようにすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば820℃とし、アルミニウム原料ガスにはトリメチルアルミニウムガスを、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0222】
次いで、n型AlGaAs層(第2の被覆層)613の周囲にp型AlGaAs層(第3の被覆層)614を成長させる。このときも、MOCVD装置内の基板温度は例えば750〜850℃として、p型AlGaAs層614の長さ方向の成長速度が動径方向の成長速度よりも大きくなるようにすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば820℃とし、アルミニウム原料ガスにはトリメチルアルミニウムガスを、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、ヒ素原料ガスには水素化ヒ素ガスを、p型ドーパントにはジエチル亜鉛ガスを用いればよい。
【0223】
次いで、p型AlGaAs層(第3の被覆層)614の周囲にn型GaInP層(第4の被覆層)615を成長させる。このときも、MOCVD装置内の基板温度は例えば650〜750℃として、n型GaInP層615の長さ方向の成長速度が動径方向の成長速度よりも大きくなるようにすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば700℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、リン原料ガスにはターシャリーブチルフォスフィンガスを、n型ドーパントにはモノシランガスを用いればよい。
【0224】
次いで、n型GaInP層(第4の被覆層)615の周囲にp型GaInP層(第5の被覆層)616を成長させる。このときも、MOCVD装置内の基板温度は例えば650〜750℃として、p型GaInP層616の長さ方向の成長速度が動径方向の成長速度よりも大きくなるようにすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば700℃とし、ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、リン原料ガスにはターシャリーブチルフォスフィンガスを、p型ドーパントにはジエチル亜鉛ガスを用いればよい。
【0225】
次いで、p型GaInP層(第5の被覆層)616の周囲にAlInP層(表面保護層)617を成長させる。このときは、MOCVD装置内の基板温度は例えば650〜700℃として、AlInP層617の長さ方向の成長速度と動径方向の成長速度を等しくすることが好ましい。MOCVD装置内の基板温度は例えば700℃とし、アルミニウム原料ガスにはトリメチルアルミニウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、リン原料ガスにはターシャリーブチルフォスフィンガスを用いればよい。表面保護層617を形成した後の半導体ナノロッド610の太さ(直径)は約400nm、高さは1800nmである。
【0226】
次いで、導電性GaAs基板110上の半導体ナノロッド610を透明埋設膜140内に埋め込んだ後、透明埋設膜140を薄膜化して半導体ナノロッド610の頭部を露出させる。次いで、透明埋設膜140上に透明電極150を形成し、透明電極150上に第2の金属電極170を形成する。また、導電性GaAs基板110のSiO膜120が形成されていない面上に、第1の金属電極160を形成する。
【0227】
以上の手順により、本実施の形態の太陽電池素子600を製造することができる。この太陽電池素子600は、半導体ナノロッド610の頭部側(透明電極側)から光を照射されて使用される。
【0228】
実施の形態9の太陽電池素子600は、実施の形態2の太陽電池素子100と同様の効果を得ることができる。
【0229】
(実施の形態10)
実施の形態10では、本発明のカラーセンサの例を示す。
【0230】
図13は、実施の形態10のカラーセンサの構成を示す斜視図である。図13に示されるように、実施の形態10のカラーセンサ700は、導電性基板710と、導電性基板710上に配置された3つのロッドアレイ720r,g,bとを有する。各ロッドアレイ720は、それぞれ、透明導電層730、絶縁膜740、半導体ナノロッド750、透明埋設膜760および透明電極770を有する。透明導電層730および絶縁膜740は、マスクパターンとして機能する。また、図13に示されるように、導電性基板710および透明電極770r,g,bは、外部回路に接続される。
【0231】
導電性基板710は、導電性のn型基板である。
【0232】
透明導電層730および絶縁膜740は、導電性基板710の表面を被覆している。透明導電層730および絶縁膜740の半導体ナノロッド750が配置される領域には、透明導電層730および絶縁膜740を貫通する開口部が形成されている。後述するように、半導体ナノロッド750内のn型InGaNナノロッド(中心ナノロッド)751は、導電性基板710に直接接触している(図14参照)。
【0233】
半導体ナノロッド750は、絶縁膜740上に複数配置されており、その長軸が導電性基板710の表面に対して略垂直になるように配置されている。半導体ナノロッド750の外径は、例えば100nmである。第1のロッドアレイ720rでは、各半導体ナノロッド750rは、例えば中心間距離が500nmとなるように配列されており、第2のロッドアレイ720gでは、各半導体ナノロッド750gは、例えば中心間距離が1500nmとなるように配列されており、第3のロッドアレイ720bでは、各半導体ナノロッド750bは、例えば中心間距離が3000nmとなるように配列されている。
【0234】
後述するように、半導体ナノロッド750は、n型InGaNナノロッド(中心ナノロッド)751と、前記n型InGaNナノロッド751を被覆するノンドープInGaN層(第1の被覆層)752と、前記ノンドープInGaN層752を被覆するp型InGaN層(第2の被覆層)753とを有する。n型InGaNナノロッド751はn層として機能し、ノンドープInGaN層752はi層として機能し、p型InGaN層753はp層として機能する。すなわち、n型InGaNナノロッド751、ノンドープInGaN層752およびp型InGaN層753によりp−i−n接合が形成される。
【0235】
n型InGaNナノロッド(中心ナノロッド)751は、導電性基板710および透明導電層730に接触しているが、ノンドープInGaN層(第1の被覆層)752およびp型InGaN層(第2の被覆層)753は、いずれも導電性基板710および透明導電層730には接触していない。
【0236】
透明埋設膜760は、ロッドアレイ720r,g,bのそれぞれにおいて、半導体ナノロッド750の側面を被覆し、かつ半導体ナノロッド750間の空間を埋める、絶縁膜である。透明埋設膜760の材料の例には、BCB樹脂やPIQ樹脂などの絶縁性樹脂、PSGなどのガラスが含まれる。半導体ナノロッド750の頭部(透明電極770側の端部)は、透明埋設膜760に被覆されていない。
【0237】
透明電極770は、半導体ナノロッド750上に配置されており、半導体ナノロッド750のp型InGaN層(第2の被覆層)753にオーミック接続されている。
【0238】
以下、図14を参照して実施の形態10のカラーセンサ700の製造方法について説明する。図14は、本実施の形態のカラーセンサ700の製造方法を示す模式図である。説明の便宜上、1本の半導体ナノロッド750の形成過程を示している。
【0239】
まず、図14(a)に示されるように、導電性基板710の表面に透明導電層730および絶縁膜740(マスクパターン)を形成する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、マスクパターンに複数の開口部(貫通孔)を形成する。開口部の直径は30〜300nmの範囲内であり、開口部の中心間距離は100〜2000nmの範囲内である。ロッドアレイ720r,g,bのそれぞれにおいて、開口部は10×10のアレイ状に配列される。
【0240】
次いで、図14(b)に示されるように、ガスソースMBE成長法により、開口部を通して露出した導電性基板710の表面からn型InGaNナノロッド(中心ナノロッド)751を成長させる。ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、窒素原料ガスにはアンモニアガスを、n型ドーパントにはジシラン(Si)ガスを用いればよい。
【0241】
ガスソースMBE成長工程では、n型InGaNナノロッド751の直径、長さおよび組成を制御するため、基板温度および成長時間を厳密に制御する。ここで、マスクパターンの開口部の直径、開口部の中心間距離および成長温度と、n型InGaNナノロッド751の組成との関係は以下の通りである。
【0242】
1)マスクパターンの開口部の中心間距離を一定として、開口部の直径を大きくすると、n型InGaNナノロッド751の直径も大きくなる。n型InGaNナノロッド751の直径とその結晶組成について調べると、n型InGaNナノロッド751の直径が50nmから450nmに増大すると、In組成は10%から70%へとほぼ線形に増加する。この傾向は、成長温度が600〜700℃の範囲内ではほぼ同じである。温度をさらに上昇させると、In組成がGaに対して相対的に減少し始める。
【0243】
2)成長温度700℃でマスクパターンの開口部の直径を一定として、開口部の中心間距離を400nmから3000nmまで変化させる。成長したn型InGaNナノロッド751の中心間距離が小さくなると、In組成は20%から50%程度に増加する。温度を800℃にすると、In組成は約半分に減少する。InGa1−xNのエネルギーバンドギャップとIn組成xとの関係では、In組成xが約48%で青色光のエネルギーに対応し、In組成xが約53%で緑色光のエネルギーに対応し、In組成xが約64%で赤色光のエネルギーに対応する。
【0244】
次いで、図14(c)に示されるように、ガスソースMBE成長法により、n型InGaNナノロッド751の周囲に、ノンドープInGaN層752およびp型InGaN層753を成長させる。ガリウム原料ガスにはトリメチルガリウムガスを、インジウム原料ガスにはトリメチルインジウムガスを、窒素原料ガスにはイオン化又は活性化した窒素を、p型ドーパントにはMg固体ソースを用いればよい。
【0245】
次いで、図14(d)に示されるように、ロッドアレイ720r,g,bのそれぞれにおいて、半導体ナノロッド750の下半分を透明埋設膜760内に埋め込んだ後、透明埋設膜760上に透明電極770を形成する。
【0246】
以上の手順により、本実施の形態のカラーセンサ700を製造することができる。このカラーセンサ700は、半導体ナノロッド750の頭部側(透明電極770側)から光を照射されて使用される。ロッドアレイ720rは赤色光の検出に最適なピーク感度を有し、ロッドアレイ720gは緑色光の検出に最適なピーク感度を有し、ロッドアレイ720bは青色光の検出に最適なピーク感度を有する。
【0247】
本発明者らは、本実施の形態のカラーセンサ700の光反射率について調べた。その結果、本実施の形態のカラーセンサ700は、従来の膜構造のカラーセンサよりも光反射率が1/4に減少することがわかった。すなわち、本実施の形態のカラーセンサ700は、従来のカラーセンサに比べて微弱な光に対するS/N比が向上している。
【0248】
図15は、3つのロッドアレイ720r,g,bを切り出して、積層した様子を示す斜視図である。この場合、ロッドアレイ720g,bの基板には、石英やサファイアなどの可視光が透過しうる透明基板を用いる。このカラーセンサ700’では、入射光(図中白矢印)に含まれる青色光は最上段のロッドアレイ720bで吸収され、緑色光および赤色光は下側に透過する。透過した入射光のうち緑色光は中段のロッドアレイ720gで吸収され、赤色光は下側に透過する。透過した赤色光は下段のロッドアレイ720rで吸収される。
【0249】
(実施の形態11)
実施の形態11では、半導体ナノロッドを有する発光素子と半導体ナノロッドを有する受光素子とを1回の結晶成長工程で同時に製造する例を示す。
【0250】
図16は、本実施の形態の製造方法により同時に製造された発光素子(LEDアレイ)800aおよび受光素子(PDアレイ)800bの構成を示す斜視図である。
【0251】
図16に示されるように、n型Si基板810上に絶縁膜(SiO膜)からなるマスクパターン820を8つ形成する。8つのマスクパターン820a〜hのうち、4つのマスクパターン820a〜dは発光素子(LED)形成用であり、4つのマスクパターン820e〜hは受光素子(PD)形成用である。各マスクパターン820は、縦横50μmの矩形であり、隣接するマスクパターン820の中心間距離は250μmである。各マスクパターン820a〜hには、複数の開口部が中心対称または同心円状に形成されている。
【0252】
MOCVD法により、マスクパターンの開口部にp−n接合またはp−i−n接合を含むInGaAsナノロッド830を成長させる。このとき、マスクパターン820の開口部の中心間距離とInGaAsナノロッド830のIn組成との関係を調べたところ、開口部の中心間距離が500nmのマスクパターン820aから中心間距離が3000nmのマスクパターン820dへと中心間距離が大きくなると、In組成がGaに対して10%から30%へと増加する関係にあった。また、マスクパターン820の開口部の直径とInGaAsナノロッド830のIn組成との関係を調べたところ、開口部の直径が100nmから400nmへと大きくなると、In組成が10%から30%へと増加する関係にあった。図16に示されるマスクパターン820a〜dにおいて、フォトルミネッセンスの発光ピーク波長は、マスクパターン820aは930nmであり、マスクパターン820bは970nmであり、マスクパターン820cは1010nmであり、マスクパターン820dは1060nmである。マスクパターン820e〜hではフォトルミネッセンスピーク波長はほぼ1050nmになるように開口部の直径と中心間距離を調整した。
【0253】
半導体ナノロッド830の頭部を露出するように透明なPSGで埋め込む。次いで、半導体ナノロッド830の頭部にオーミック透明電極および外部への引き出し用電極パターンを形成し、n型Si基板810の表面には共通のオーミック電極パターンを形成して通電試験を行えるようにした。通電状態では、LED部からは最も短波長側でλ=940nmにピークを持つ光が確認され、これより長波長側においても波長間隔30〜40nmで3つの異なる波長の発光が観察された。また、PD部では、この4つの波長に対して数マイクロアンペアの光電流が得られることも確認した。
【0254】
LEDアレイ800aとPDアレイ800bは別々のチップに分けることもできる。図17に示されるように、LEDアレイ800aを光導波路となる多モード光ファイバ中に埋め込んでもよい。この場合、LEDアレイを構成する各LED部は、直径10μmのマスクパターン内に形成する。MOCVDによる半導体ナノロッド結晶成長工程では、隣り合うLED部の中心間距離は15μm程度まで短くすることができる。したがって、コア部850の直径60μmの汎用多モード光ファイバを使用してLEDアレイ800aを埋め込むことができる。通信用光源として使用する場合は、4波長の光源として光合波器を使用せずに1本の光ファイバ840のみで10km程度の通信に使用することができるので、光ファイバ部材費を4分の1程度に削減できる利点がある。
【0255】
図18は、通信距離が1kmから10km程度の近距離通信用発受光素子を搭載したプリント回路基板への実装例を示す斜視図である。光出力部には4×1のLEDアレイ800aが搭載され、光受信部には4×1のPDアレイ800bが搭載されている。LED側、PD側のそれぞれが、4チャネルの光ファイバ840と接続されている。光出力部のLEDは、1個あたりの通信速度が2.5ギガビット/秒(2.5Gbps)であり、4チャネル合計で10Gbpsの通信速度に対応することができる。
【符号の説明】
【0256】
100、100’、200、200’300、400、500、600 太陽電池素子
110 導電性GaAs基板
120 SiO
130、130’、220、220’、310、410、520、610 半導体ナノロッド
131 n型GaAsナノロッド
132 ノンドープGaAs層
133 第1のノンドープGaAs量子障壁層
134 第1のノンドープInGaAs量子井戸層
135 第2のノンドープGaAs量子障壁層
136 第2のノンドープInGaAs量子井戸層
137 第3のノンドープGaAs量子障壁層
138 p型GaAs層
140 透明埋設膜
150 透明電極
160 第1の金属電極
170 第2の金属電極
180、260、350、450、560、617 表面保護層
210 導電性InP基板
230 n型InPナノロッド
240 ノンドープInP層
241 第1のノンドープInP量子障壁層
242 第1のノンドープInP埋設層
243、246 InGaAs量子ドット
244 第2のノンドープInP量子障壁層
245 第2のノンドープInP埋設層
247 第3のノンドープInP量子障壁層
250 p型InP層
320、420、530 中心ナノロッド
321、421 n型GaAs領域
322、422 n型AlGaAs領域
323 n型GaN領域
330 ノンドープGaN層
331 第1のノンドープGaN量子障壁層
332 第1のノンドープGaN埋設層
333、336、543、546 InAs量子ドット
334 第2のノンドープGaN量子障壁層
335 第2のノンドープGaN埋設層
337 第3のノンドープGaN量子障壁層
340 p型GaN層
423 n型GaInP領域
430 ノンドープGaInP層
431 第1のノンドープGaInP量子障壁層
432 第1のノンドープInGaAs量子井戸層
433 第2のノンドープGaInP量子障壁層
434 第2のノンドープInGaAs量子井戸層
435 第3のノンドープGaInP量子障壁層
440 p型GaInP層
510 導電性Si基板
531 n型Ge領域
532 n型GaAs領域
533 n型GaAsP領域
534 n型GaInP領域
540 ノンドープInGaN層
541 第1のノンドープInGaN量子障壁層
542 第1のノンドープInGaN埋設層
544 第2のノンドープInGaN量子障壁層
545 第2のノンドープInGaN埋設層
547 第3のノンドープInGaN量子障壁層
550 p型GaN層
611 n型GaAsナノロッド
612 p型GaAs層
613 n型AlGaAs層
614 p型AlGaAs層
615 n型GaInP層
616 p型GaInP層
700、700’ カラーセンサ
710 導電性基板
720 ロッドアレイ
730 透明導電層
740 絶縁膜
750 半導体ナノロッド
751 n型InGaNナノロッド
752 ノンドープInGaN層
753 p型InGaN層
760 透明埋設膜
770 透明電極
800a 発光素子
800b 受光素子
810 n型Si基板
820 マスクパターン
830 InGaAsナノロッド
840 光ファイバ
850 コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に配置され2以上の開口部を有するマスクパターンと、前記基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸する2以上の半導体ナノロッドと、前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有する太陽電池素子であって、
前記半導体ナノロッドは、基板上に平面視三角格子状に配置されており、相隣り合う前記半導体ナノロッド同士の中心間距離pと、前記半導体ナノロッドの最小径dとの比p/dが1〜7の範囲にあり、
前記半導体ナノロッドは、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッドと、真性半導体からなり前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層とを有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項2】
請求項1記載の太陽電池素子において、前記第2の被覆層を被覆すると共に、前記第1の導電型の半導体、前記第2の導電型の半導体および前記真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの大きな半導体からなる表面保護層を有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の太陽電池素子において、前記中心ナノロッドは、第1の半導体からなり前記基板上に形成された第1の領域と、前記第1の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第2の半導体からなり前記第1の領域上に形成された第2の領域と、前記第2の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第3の半導体からなり前記第2の領域上に形成された第3の領域とを有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項4】
請求項3記載の太陽電池素子において、前記中心ナノロッドは、前記第3の半導体よりエネルギーバンドギャップの大きな第4の半導体からなり前記第3の領域上に形成された第4の領域を有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の太陽電池素子において、前記第1の被覆層は、量子井戸層又は量子ドットを含む埋設層を有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項6】
請求項5記載の太陽電池素子において、前記第1の被覆層は、第1の真性半導体からなる2以上の量子障壁と、前記第1の真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの小さな第2の真性半導体からなり前記量子障壁に挟持された量子井戸層とを有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項7】
請求項5記載の太陽電池素子において、前記第1の被覆層は、第1の真性半導体からなる2以上の量子障壁と、第1の真性半導体と第1の真性半導体よりもエネルギーバンドギャップの小さな第2の真性半導体からなる量子ドットとを含み前記量子障壁に挟持された埋設層とを有し、前記埋設層中で前記量子ドットは第1の真性半導体中に分散されていることを特徴とする太陽電池素子。
【請求項8】
基板と、前記基板の表面に配置され2以上の開口部を有するマスクパターンと、前記基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸する2以上の半導体ナノロッドと、前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有する太陽電池素子であって、
前記半導体ナノロッドは、第1の導電型の半導体からなる中心ナノロッドと、第2の導電型の半導体からなり前記中心ナノロッドを被覆する第1の被覆層と、第1の導電型の半導体からなり前記第1の被覆層を被覆する第2の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第2の被覆層を被覆する第3の被覆層と、第1の導電型の半導体からなり前記第3の被覆層を被覆する第4の被覆層と、第2の導電型の半導体からなり前記第4の被覆層を被覆する第5の被覆層とを有し、
前記第4の被覆層及び第5の被覆層を形成する半導体は、前記第2の被覆層及び第3の被覆層を形成する半導体より大きなエネルギーバンドギャップを有し、
前記第2の被覆層及び第3の被覆層を形成する半導体は、前記第1の被覆層を形成する半導体より大きなエネルギーバンドギャップを有することを特徴とする太陽電池素子。
【請求項9】
基板の表面に、開口部を有するマスクパターンを形成する工程と、
前記開口部から露出する前記基板の表面に、第1の導電型の半導体を結晶成長させることにより中心ナノロッドを形成する工程と、
前記中心ナノロッドの周囲に、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法又は化学気相堆積法により真性半導体からなる第1の被覆層を形成する工程と、
前記第1の被覆層の周囲に、第2の導電型の半導体からなる第2の被覆層を形成する工程と、
第1の電極および第2の電極を形成する工程とを備える太陽電池素子の製造方法であって、
前記第1の被覆層は、第1の組成の原料ガスを供給することにより量子障壁層を形成したのち、第2の組成の原料ガスを供給することにより量子井戸層又は量子ドットを含む埋設層を形成することを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板の表面に配置されたマスクパターンであって、前記マスクパターンはRGBに対応する3以上の領域に区分されており、かつ前記3以上の領域のそれぞれには開口部が形成されているマスクパターンと、
前記基板の表面から前記開口部を通って上方に延伸しp−n接合又はp−i−n接合を有する2以上の半導体ナノロッドと、
前記半導体ナノロッドの下端に接続された第1の電極と、
前記半導体ナノロッドの上端に接続された第2の電極とを有するカラーセンサであって、
前記半導体ナノロッドの組成は、前記3以上の領域ごとに異なることを特徴とするカラーセンサ。
【請求項11】
発光素子および受光素子を同時に製造する製造方法であって、
A)表面をマスクパターンで被覆された基板を準備するステップであって、
前記マスクパターンは、発光素子となる領域と受光素子となる領域とに区分されており、かつ
前記発光素子となる領域および前記受光素子となる領域には、それぞれ、前記基板表面を露出させる2以上の開口部が形成されており、かつ
前記開口部のサイズまたは前記開口部の中心間距離は、前記発光素子となる領域と前記受光素子となる領域とで異なる、ステップと、
B)前記マスクパターンで被覆された基板から、前記開口部を通して半導体ナノロッドを成長させるステップであって、n型半導体からなる層を形成する工程と、p型半導体からなる層を形成する工程とを含むステップとを有することを特徴とする発光素子および受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−135058(P2011−135058A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261564(P2010−261564)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】