説明

容量性負荷の駆動装置、及びその駆動装置を搭載するプラズマディスプレイ装置

【課題】容量性負荷である表示パネルを高い効率で駆動するため、表示パネルに急峻な電圧を印加しながらスイッチング損失やリンギングを抑制することが可能な容量性負荷駆動装置を提供すること。
【解決手段】容量性負荷駆動装置は、負荷容量(Cp)を有する表示パネル(20)と、表示パネルに電力を供給する電力供給源(In)と、表示パネルに電力供給源からの電力の供給/遮断を行うスイッチング部(Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Y)と、飽和可能な磁心を持つ可飽和インダクタ(LsX)とを有し、表示パネルに電力を供給するとき、表示パネルと、電力供給源と、スイッチング部と、可飽和インダクタとを、電気的に接続状態とするよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量性負荷(例えば、プラズマディスプレイパネル)に対する駆動信号としてのパルス電圧を印加するための駆動装置及びその駆動装置を搭載したプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ装置は、気体放電に伴う発光現象を利用した表示装置であり、大画面化、薄型化、及び広視野角の点で他の表示装置より有利である。
プラズマディスプレイ装置の表示部分、すなわち、表示パネルであるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する)は、直流パルスで動作するDC型と、交流パルスで動作するAC型とに大別される。AC型PDPは特に、輝度が高く、かつ構造が簡素である。従って、AC型PDPは量産化と画素の精細化とに適し、広範囲に使用されている。
【0003】
AC型PDPは例えば三電極面放電型構造を有している。その構造は、PDPの背面基板上にアドレス電極(データ電極)がPDPの縦方向に平行に配置されており、PDPの前面基板下に維持電極と走査電極とが交互に、かつPDPの横方向に平行に配置されている。アドレス電極と走査電極とは一般に、一本ずつ個別に電位を変化させ得る構造を有する。
互いに隣り合う維持電極と走査電極との対である表示電極対、及びアドレス電極との交差点には放電セルが設置される。放電セルの表面には、誘電体で構成された誘電体層、電極と誘電体層とを保護するための保護層、蛍光体を含む蛍光層が設けられている。放電セルの内部にはガスが封入される。維持電極、走査電極、及びアドレス電極間に対してパルス電圧が印加されるとき、放電セル中では放電が生じる。その放電により、ガス分子が電離し、紫外線を発する。その紫外線が放電セル表面の蛍光体を励起し、光が生成される。こうして、放電セルは発光する。
【0004】
プラズマディスプレイ装置によるテレビ画像の表示方式としては一般に、サブフィールド方式が採用される。サブフィールド方式では、一フィールドが複数のサブフィールドに分けられる。サブフィールドは初期化期間とアドレス期間と放電維持期間とを含む。
初期期間では、初期化パルス電圧が維持電極と走査電極に対して印加されて、全ての放電セルの表面から壁電荷が整えられる。
【0005】
アドレス期間では、走査パルス電圧が走査電極に対して順次印加される。走査パルス電圧の印加と同時に、信号パルス電圧がアドレス電極に対して印加される。ここで、信号パルス電圧が印加されるべきアドレス電極は、外部から入力される映像信号に基づき選択される。走査パルス電圧が走査電極の一つに印加され、かつ信号パルス電圧がアドレス電極の一つに印加されるとき、その走査電極とアドレス電極との交差点の位置にある放電セルにおいて放電が生じる。その放電により当該放電セルの表面には壁電荷が蓄積される。
放電維持期間では、放電維持パルス電圧が維持電極と走査電極とに対して交互に、かつ周期的に印加される。維持電極と走査電極との間の電圧が極性を反転させるごとに、アドレス期間中に壁電荷が蓄積された放電セルでは、ガス放電と壁電荷の蓄積とが繰り返される。従って、その放電セルでは蛍光体の発光が持続する。放電維持期間の長さは一般にサブフィールドごとに異なるため、放電セルの一フィールド当たりの発光時間、すなわち放電セルの輝度は、発光すべきサブフィールドの選択により調整される。
【0006】
走査パルス電圧、信号パルス電圧、及び放電維持パルス電圧はそれぞれ、個別のパルス生成部により生成される。特に、アドレス電極に印加される信号パルス電圧については、映像信号に基づいて、例えば印加すべきアドレス電極及びサブフィールドが決定される。その結果、映像信号に対応する映像がPDP上に再現される。
【0007】
AC型PDPでは放電セルの発光が壁電荷の蓄積を必要とする。このようにPDPは一般に容量性負荷である。また、PDPにおいては、三電極面放電型構造であるため、多数の電極がPDP内を縦横に設けられており、かつ互いに近接して配置されている。従って、PDPは大きな浮遊容量を有している。特に、維持電極と走査電極との間は、大きな浮遊容量(以下、パネル容量という)を持っている。PDPの維持電極と走査電極とに対して維持パルス電圧が印加されるとき、パネル容量が充放電される。その充電電流及び放電電流により、PDP駆動装置の回路素子、PDPの維持電極と走査電極、及びリード線のそれぞれの抵抗において電力が消費される。その消費電力はPDPの発光には寄与せず、すなわち無効電力である。PDPのサイズが大きいほど、維持電極及び走査電極が長く、かつ多いため、パネル容量が大きくなる。それため、PDPの大画面化と省電力化との両立には前記の無効電力の低減が必要不可欠な重要な課題である。
【0008】
前記の無効電力の削減を目的とするPDP駆動装置としては、従来、例えば以下のような電力回収回路を含むものが知られる(特許文献1参照)。電力回収回路は、以下に説明する通り、PDPに対してパルス電圧が印加されるとき、パネル容量の充放電に要する電力を回収する。更に、その回収された電力を別のパルス電圧の印加時、パネル容量の充放電に再利用する。それにより、PDPの駆動時の損失を低減させるものである。
【0009】
図13は、前述したPDP駆動装置110とPDP20の等価回路図である。このPDP駆動装置110は、二つの相似なパルス生成部101X,101Yと、二つの相似な電力回収部102X,102Yと、を有する。
パルス生成部101X,101Yは例えばフルブリッジ型インバータを構成する。すなわち、四つの主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yを含む。主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yは、例えばnチャネル型MOSFETである。パルス生成部101X,101Yの共通の入力端子In(以下、入力端子Inを電源端子と呼ぶ)に対しては直流電圧Vsが印加される。パルス生成部101X,101Yの各出力端子J1X,J1Yはそれぞれ、PDP20の維持電極Xと走査電極Yとに接続される。図13において、PDP20の等価回路はパネル容量Cpでのみ表され、放電セルでの放電時にPDP20を流れる電流の経路は省略されている。
【0010】
第1の電力回収部102Xは、第1の回収コンデンサCX、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3X、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4X、第1のハイサイドダイオードD1X、第1のローサイドダイオードD2X、及び第1の回収インダクタLXを含む。二つの回収スイッチ素子Q3X,Q4Xは、例えばnチャネル型MOSFETである。第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xのソースは、第1のハイサイドダイオードD1Xのアノードへ接続される。第1のハイサイドダイオードD1Xのカソードは、第1のローサイドダイオードD2Xのアノードへ接続される。第1のローサイドダイオードD2Xのカソードは、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xのドレインへ接続される。第1の回収コンデンサCXの一端は接地され、他端は第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xのドレインと第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xのソースとに接続される。第1の回収インダクタLXの一端は第1のパルス生成部101Xの出力端子J1Xに接続され、他端は第1のハイサイドダイオードD1Xと第1のローサイドダイオードD2Xとの間の接続点J2Xに接続される。
第2の電力回収部102Yの回路構成は、第2の回収インダクタLYの一端が第2のパルス生成部101Yの出力端子J1Yへ接続される点を除き、第1の電力回収部102Xの回路構成と全く同様である。
【0011】
回収コンデンサCX,CYそれぞれの容量は、PDP20のパネル容量Cpより十分に大きい値に設定されている。回収コンデンサCX,CYのそれぞれの両端電圧は直流電圧Vsの半値Vs/2と実質的に等しく維持されている。
【0012】
パルス生成部101X,101Yでは、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの対、及び第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yとの対が交互にオンオフ動作する。それにより、パネル容量Cpに対する印加電圧(Vp)の極性が周期的に反転する。すなわち、周期的に交流であるパルス電圧Vpがパネル容量Cpに対して印加される。
パルス電圧Vpの立ち上がりと立ち下がりとではパネル容量Cpが充放電されている。電力回収部102X,102Yの回収スイッチ素子Q3X,Q4X,Q3Y,Q4Yは、パルス電圧Vpの立ち上がりと立ち下がりとに合わせてオンオフ動作する。そのオンオフ動作により、回収インダクタLX,LYのいずれかが同じ電力回収部の回収コンデンサCX又はCYに接続される。そのとき、その回収インダクタ(LX又はLY)がパネル容量Cpと共振する。その共振により、互いに接続される回収コンデンサ(CX又はCY)とパネル容量Cpとの間で電力が交換される。従って、その共振期間中、PDP駆動装置110の回路素子、PDP20の維持電極Xと走査電極Y、及びリード線のそれぞれの抵抗(図示せず)により消費される電力を抑えている。こうして、PDP20のパネル容量Cpの充放電に起因する無効電力の低減が図られている。
【0013】
図14は、二つのパルス生成部101X,101Yと二つの電力回収部102X,102Yとの各部分での電圧/電流変化を示す波形図である。
四つの主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Y、及び、四つの回収スイッチ素子Q3X,Q4X,Q3Y,Q4Yのそれぞれのゲートに対し、八つの制御信号CTRL1X,CTRL2X,CTRL1Y,CTRL2Y,CTRL3X,CTRL4X,CTRL3Y,CTRL4Yがそれぞれ送出される。それぞれのスイッチ素子(Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Y,Q3X,Q4X,Q3Y,Q4Y)は、受信した制御信号(CTRL1X,CTRL2X,CTRL1Y,CTRL2Y,CTRL3X,CTRL4X,CTRL3Y,CTRL4Y)に従ってオンオフ動作する。図14では、制御信号が高電位に遷移する(アサートする)とき、対応するスイッチ素子がオン状態となり、制御信号が低電位に遷移する(ネゲートする)とき、対応するスイッチ素子がオフ状態となる。
【0014】
パルス生成部101X,101Yと電力回収部102X,102Yとにおけるスイッチング動作は、パネル容量Cpに対して印加されるパルス電圧Vpの一周期当たり、次の四つのモードI〜IV(図14参照)に分けられる。
【0015】
<モードI>
モードIの開始時、PDP20の維持電極Xの電位VXは零と実質的に等しく、走査電極Yの電位VYは電源端子Inの電位Vsと実質的に等しい。
モードIにおいては、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xと第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yがオン状態となり、他のスイッチ素子はオフ状態に維持される。このスイッチング動作により、接地端子→第1の回収コンデンサCX→第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3X→第1のハイサイドダイオードD1X→第1の回収インダクタLX→パネル容量Cp→第2の回収インダクタLY→第2のローサイドダイオードD2Y→第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Y→第2の回収コンデンサCY→接地端子のループが導通する。上記の矢印(→)は電流の向きを示す。そのとき、二つの回収インダクタLX,LY、及びパネル容量Cpの直列回路が共振回路を形成し、二つの回収コンデンサCX,CYからそれぞれ電圧Vs/2が印加されて、共振する。共振電流ILX=−ILYは上記のループにおいて矢印(→)の方向に流れる。この結果、維持電極Xの電位VXが上昇し、走査電極Yの電位VYが降下する。従って、パネル容量Cpの両端電圧Vp=VX−VYの極性が反転する。共振電流ILX=−ILYが実質的に零まで減衰したとき、第1のハイサイドダイオードD1Xと第2のローサイドダイオードD2Yは逆バイアスとなりオフ状態となる。それと同時に、パネル容量Cpの両端電圧Vpが実質的に正のピーク電圧Vsまで達する。
【0016】
<モードII>
モードIIにおいて、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yはオン状態となり、他のスイッチ素子はそれまでのオン状態又はオフ状態をそのまま維持する。このとき、維持電極Xの電位VXは電源端子Inの電位(Vs)と実質的に等しい電位に維持され、走査電極Yの電位VYは接地電位(GND)と実質的に等しい電位(≒0V)に維持される。従って、パネル容量Cpの両端電圧Vpが正のピーク電圧Vsと実質的に等しい電圧に固定される。ここで、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yにおいては、それらの両端電圧が実質的に零であるためスイッチング損失が生じることがない。
モードIIの開始時点から暫くの間はPDP20において放電が維持される。その放電期間では、放電電流Ipを維持するための電力が外部から電源端子Inを通して供給される。このとき、電源端子Inから供給されて、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xに流れる電流を、図13において電流I1Xとして示す。
図14に示すように、モードIIにおいては、放電が終了してから所定時間が経過した後、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xと第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yがオフ状態となり、続いて、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yがオフ状態となる。
【0017】
<モードIII>
モードIIIの開始時、維持電極Xの電位VXは電源端子Inの電位Vsと実質的に等しく、走査電極Yの電位VYは接地電位(GND)と実質的に等しい電位(≒0V)である。
モードIIIにおいて、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xと第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yがオン状態となり、他のスイッチ素子はオフ状態に維持される。このスイッチング動作により、接地端子→第2の回収コンデンサCY→第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Y→第2のハイサイドダイオードD1Y→第2の回収インダクタLY→パネル容量Cp→第1の回収インダクタLX→第1のローサイドダイオードD2X→第1のローサイド回収スイッチ素子Q4X→第1の回収コンデンサCX→接地端子のループが導通する。上記の矢印(→)は電流の向きを示す。そのとき、二つの回収インダクタLX,LY、及びパネル容量Cpの直列回路が共振回路を形成し、二つの回収コンデンサCX,CYからそれぞれ電圧Vs/2が印加されて、共振する。共振電流−ILX=ILYは上記のループにおいて矢印(→)の方向に流れる。この結果、維持電極Xの電位VXが降下し、走査電極Yの電位VYが上昇する。従って、パネル容量Cpの両端電圧Vp=VX−VYの極性が反転する。共振電流−ILX=ILYが実質的に零まで減衰したとき、第1のローサイドダイオードD2Xと第2のハイサイドダイオードD1Yは逆バイアスとなりオフ状態となる。それと同時に、パネル容量Cpの両端電圧Vpが実質的に負のピーク電圧−Vsまで達する。
【0018】
<モードIV>
モードIVにおいて、第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yはオン状態となり、他のスイッチ素子はそれまでのオン状態又はオフ状態をそのまま維持する。このとき、維持電極Xの電位VXが接地電位(GND)と実質的に等しい電位(≒0V)に維持され、走査電極Yの電位VYが電源端子Inの電位(Vs)と実質的に等しい電位に維持される。従って、パネル容量Cpの両端電圧Vpが負のピーク電圧−Vsと実質的に等しい電圧に固定される。
モードIVの開始時点から暫くの間はPDP20において放電が維持される。その放電期間では、放電電流Ipを維持するための電力が外部から電源端子Inを通して供給される。このとき、電源端子Inから供給されて、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yを流れる電流を、図13において電流I1Yとして示す。
図14に示すように、モードIVにおいては、放電が終了してから所定時間が経過した後、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xと第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yがオフ状態となり、続いて、第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yがオフ状態となる。
上記のスイッチング動作を行うことにより、前述のモードIの開始時の状態となる。
【0019】
こうして、駆動信号である放電維持パルス電圧の立ち上がり及び立ち下がりでは回収インダクタ(LX,LY)がPDP20のパネル容量(Cp)と共振して、回収コンデンサとパネル容量を通じて電力が交換されている。すなわち、従来のPDP駆動回路では、放電維持パルス電圧の印加時、パネル容量の充放電時において生じる無効電力の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開昭63−101897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述した従来のPDP駆動装置のような容量性負荷駆動装置は、モードIからモードII(又はモードIIIからモードIV)に移行する際、パネル容量Cpの両端電圧Vpがピーク電圧Vs(−Vs)に速く達する程、パネル容量Cpの両端電圧Vpを高い状態で維持放電することができ、発光効率を向上させることができる。しかしながら、パネル容量Cpの両端電圧Vpがピーク電圧Vs(−Vs)に速く達する程、すなわち、立ち上がりの傾きが急峻である程、スイッチ素子のターンオン時(オフ状態からオン状態への遷移時)においては、次のようなスイッチング損失が生じて、回路損失が著しく悪化するという問題を有する。下記にスイッチング損失が生じる理由について詳述する。
【0022】
図15は、モードIからモードIIへの過渡期間における第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xと電流I1Xとの変化を示す拡大波形図である。図15では、実線が電流I1Xを示し、破線が両端電圧V1Xを示す。モードIからモードIIへの過渡期間では、両端電圧V1Xが十分に高い状態で第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xがターンオン動作を行う。その結果、両端電圧V1Xの波形が電流I1Xの波形と重なる(図15に示される斜線部分参照)。その重なりが生じる期間では、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xに電力損失(例えば、熱の放散)が生じ、スイッチング損失となる。同様なスイッチング損失は、モードIIIからモードIVへの過渡期間の第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yにおいても生じている。
【0023】
主スイッチ素子Q1X,Q1Yのターンオン時のスイッチング損失は、PDP駆動装置の回路効率を低下させ好ましいものではない。ここで、回路効率とは、結果的に回収電力が再利用される割合を言う。このスイッチング損失を低減させるには、例えば、モードIの期間を長くして、モードIからモードIIへの移行時の主スイッチ素子Q1Xの両端間の電位差を小さくすれば良い。しかしながら、パネル容量Cpの両端電圧Vpの立上りがは回収インダクタLX,LYに制限されて、両端電圧Vpがすばやくピーク電圧値(Vs)に達することができないため、維持放電の発光効率は低下する。
【0024】
また、従来のPDP駆動装置においては、放電維持パルス電圧の立上りの傾き、すなわち、パネル容量Cpへ供給する電流は、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのオンスピード(スイッチング動作のオフ状態からオン状態になるまでの時間)によって制限されている。さらに、従来のPDP駆動装置は、パネル容量Cpの両端電圧Vpがピーク電圧Vsに速く達する程、パネル内部にリンギングが発生して壁電荷が安定して蓄積されなくなり、駆動許容範囲を示す駆動マージンが減少するという課題も有する。
【0025】
本発明は、従来のPDP駆動装置における上記の課題を解決するものであり、容量性負荷である表示パネルを高い効率で駆動するため、表示パネルに急峻な電圧を印加しながらスイッチング損失やリンギングを抑制することが可能な容量性負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る第1の態様の容量性負荷駆動装置は、負荷容量を有する表示パネルと、前記表示パネルに電力を供給する電力供給源と、前記表示パネルに前記電力供給源からの電力の供給/遮断を行うスイッチング部と、飽和可能な磁心を持つ可飽和インダクタとを有し、
前記表示パネルに電力を供給するとき、前記表示パネルと、前記電力供給源と、前記スイッチング部と、前記可飽和インダクタとを、電気的に接続状態とするよう構成されている。このように構成された本発明に係る第1の態様の容量性負荷駆動装置は、容量性負荷である表示パネルを高い効率で駆動するために、表示パネルに急峻な電圧を印加しながらスイッチング損失やリンギングを抑制することができる。
【0027】
本発明に係る第2の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第1の態様の前記可飽和インダクタは、前記表示パネルの充放電電流が閾値電流より小さいとき、所定のインダクタンスを示し、前記充放電電流が前記閾値電流を超えたとき、インダクタンスが急激に低下するよう構成してもよい。
【0028】
本発明に係る第3の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第1の態様の前記可飽和インダクタを、前記電力供給源と、前記スイッチング部との間に設けてもよい。
【0029】
本発明に係る第4の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第1の態様の前記可飽和インダクタを、前記表示パネルと、前記スイッチング部との間に設けてもよい。
【0030】
本発明に係る第5の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第1の態様の前記可飽和インダクタと磁気的に結合する補助インダクタに流れる電流を制御する電流制御部を更に有する構成としてもよい。
【0031】
本発明に係る第6の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第5の態様の前記電流制御部が、前記補助インダクタに接続される可変電流源を含む構成としてもよい。
【0032】
本発明に係る第7の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第5の態様の前記電流制御部が、保護ダイオードを含み、前記表示パネルと前記電源端子若しくは前記表示パネルと前記接地端子との間に前記補助インダクタと前記保護ダイオードが直列に接続された構成としてもよい。
【0033】
本発明に係る第8の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第5の態様の前記電流制御部が、前記表示パネルの出力端子を前記電力供給源に接続するインピーダンス素子を含み、前記補助インダクタが前記インピーダンス素子に直列に接続される構成としてもよい。
【0034】
本発明に係る第9の態様の容量性負荷駆動装置は、前記の第5の態様の前記表示パネルの負荷容量に蓄積された電力をLC共振により回収コンデンサに回収し、回収された電力を前記回収コンデンサから前記表示パネルの電極に供給する電力回収回路を、更に備え、
前記電流制御部が、インピーダンス素子を含み、前記表示パネルと前記回収コンデンサとの間に前記補助インダクタと前記インピーダンス素子が直列に接続された構成としてもよい。
【0035】
本発明に係る第10の態様のプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルと、プラズマディスプレイパネル駆動回路として用いられる前記の第1の態様乃至第8の態様に記載の容量性負荷駆動装置とを含む。このように構成された本発明に係る第9の態様のプラズマディスプレイ装置は、表示パネルに急峻な電圧を印加しながらスイッチング損失やリンギングを抑制することができ、プラズマディスプレイパネルを高い回路効率で駆動することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、容量性負荷を高い効率で駆動するために、表示パネルに対して急峻な電圧を印加しつつ、スイッチング損失及びリンギングを抑制することができる容量性負荷駆動装置及びその容量性負荷駆動装置を用いたプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る実施形態1のプラズマディスプレイ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る実施形態1におけるAC型のプラズマディスプレイパネル(PDP)の三電極面放電型構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態1における維持電極駆動部、走査電極駆動部及びPDPの等価回路図である。
【図4】本発明に係る実施形態1におけるインダクタ(LsX,LsY)の直流電流重畳特性を示すグラフである。
【図5】本発明に係る実施形態1におけるプラズマディスプレイパネル駆動装置の各部における電圧/電流変化を示す波形図である。
【図6】図5に示されるモードIからモードIIにおける主スイッチ素子(Q1X)の両端電圧(V1X)と電流(I1X)との変化を拡大して示した波形図である。
【図7】本発明に係る実施形態2のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部、走査電極駆動部及びPDPの等価回路図である。
【図8】本発明に係る実施形態3のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部、走査電極駆動部及びPDPの等価回路図である。
【図9】本発明に係る実施形態4のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部の等価回路図である。
【図10】本発明に係る実施形態4におけるプラズマディスプレイパネル駆動装置において、モードIからモードIIへの過渡期間のスイッチ素子(Q1X)の両端電圧(V1X)と電流(ILsX)との変化を拡大して示した波形図である。
【図11】本発明に係る実施形態5のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部の等価回路図である。
【図12】本発明に係る実施形態6のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部の等価回路図である。
【図13】従来のプラズマディスプレイパネル駆動装置とプラズマディスプレイパネルの等価回路図である。
【図14】従来のプラズマディスプレイパネル駆動装置の各部における電圧/電流変化を示す波形図である。
【図15】従来のプラズマディスプレイパネル駆動装置において、モードIからモードIIへの過渡期間のスイッチ素子(Q1X)の両端電圧(V1X)と電流(I1X)との変化を拡大して示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図面において、実質的に同一の構成、動作、及び効果を表す要素については、同一の符号を付す。また、以下において記述される数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されるものではない。さらに、オン状態/オフ状態により表されるスイッチング状態は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、例示された論理レベル又はスイッチング状態の異なる組み合わせにより、同等な結果を得ることも可能である。また、構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。さらに、以下の実施形態は、ハードウェア及び/又はソフトウェアを用いて構成されるが、ハードウェアを用いる構成は、ソフトウェアを用いても構成可能であり、ソフトウェアを用いる構成は、ハードウェアを用いても構成可能である。
【0039】
《実施形態1》
以下、本発明に係る実施形態1のプラズマディスプレイ装置について添付の図1から図6を用いて説明する。
図1は、本発明に係る実施形態1のプラズマディスプレイ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施形態1のプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)10、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称)20、制御部30、及び電源部40を有する。
電源部40は、外部の商用交流電源ACからの交流電力を直流電力へ変換し、その直流電力をPDP駆動装置10に供給する。電源部40は、特に、PDP駆動装置10への出力電圧を所定の直流電圧Vsに維持している。
【0040】
PDP20は、好ましくはAC型であり、三電極面放電型構造を有する。PDP20の背面基板上には複数のアドレス電極(データ電極)A1,A2,A3,・・・がPDP20の縦方向にストライプ状に並設される。PDP20の前面基板には維持電極X1,X2,X3,・・・、及び走査電極Y1,Y2,Y3,・・・が対(表示電極対)となって交互に配置され、かつPDP20の横方向にストライプ状に並設されている。アドレス電極A1,A2,A3,・・・、及び走査電極Y1,Y2,Y3,・・・は、一本ずつ個別に電位を変化させ得るよう構成されている。
【0041】
図2は、AC型PDP20の三電極面放電型構造を示す斜視図であり、維持電極Xn(n=1,2,3,・・・)と走査電極Yn(n=1,2,3,・・・)、及びアドレス電極An(n=1,2,3,・・・)の一部を例示として示している。以下、図2を用いて実施形態1のプラズマディスプレイ装置のPDP20の一部の構造について説明するが、PDP20の全体としては図2に示す構造と同様の構造が連続して構成されている。
前面基板21は光透過性のガラス製である。維持電極Xnと走査電極Ynとは透明電極である。これらの維持電極Xnと走査電極Ynは誘電体層27に埋設され、保護層22により覆われている。背面基板23はガラス製である。維持電極Xnと走査電極Ynの配設方向と直交するアドレス電極Anは、背面基板23上の誘電体層26に埋め込まれている。アドレス電極Anの上には隔壁(リブ)24がアドレス電極Anの配設方向と平行にストライプ状に形成されている。隔壁24の壁面及び隔壁間の誘電体層26の表面は蛍光層25で覆われている。隔壁24で仕切られる前面基板21と背面基板23との間の空間(放電セル)にはガスが封入されている。
【0042】
上記のように構成されたPDP20においては、維持電極X1,X2,X3,・・・と走査電極Y1,Y2,Y3,・・・の対(表示電極対)、及びアドレス電極A1,A2,A3,・・・から選択された各電極、例えば、維持電極X2と走査電極Y2との対(表示電極対)、及びアドレス電極A2のそれぞれに対して、所定のパルス電圧が印加される。そのとき、所定のパルス電圧が印加されたそれぞれの電極の交差点に位置する放電セルP(例えば、図1に示される斜線部、及び図2参照)では放電が生じて、ガス分子が電離し、紫外線を発する。その紫外線が放電セルPの蛍光層25中の蛍光体を励起して、光を生成する。このように光が生成されて、放電セルPは発光する。
【0043】
図1に示したように、PDP駆動装置10は、維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びアドレス電極駆動部13を有して構成されている。
維持電極駆動部11の入力端子Inは、電源部40に接続されている。維持電極駆動部11の出力端子の一方は、PDP20の維持電極X1,X2,X3,・・・に接続され、他方は接地されている。維持電極駆動部11は、電源部40から印加された直流電圧Vsをパルス電圧に変換し、各維持電極X1,X2,X3,・・・に対して形成されたパルス電圧を同時に印加する。
【0044】
走査電極駆動部12の入力端子は、維持電極駆動部11を介して電源部40に接続されている。走査電極駆動部12の出力端子のそれぞれは、PDP20の走査電極Y1,Y2,Y3,・・・のそれぞれに接続されている。走査電極駆動部12は、電源部40から印加された直流電圧Vsをパルス電圧に変換し、それぞれの走査電極Y1,Y2,Y3,・・・に対して形成されたパルス電圧を個別に印加する。
アドレス電極駆動部13はPDP20のアドレス電極A1,A2,A3,・・・に接続されている。アドレス電極駆動部13は信号パルス電圧を生成し、アドレス電極A1,A2,A3,・・・の中から選択された電極に対して生成された信号パルス電圧を印加する。
【0045】
例えば、日本のテレビ放送では、画像が一フィールドずつ、1/60秒(=約16.7msec)間隔で送られる。それにより、一フィールド当たりの表示時間は一定である。一方、プラズマディスプレイではテレビ画像の表示方式として一般に、サブフィールド方式が採用される。その方式では、フィールドがそれぞれ、複数のサブフィールドに分けられる。サブフィールドは次の三つの期間、初期化期間、アドレス期間(書込み期間)、及び放電維持期間を順に含む。PDP20にはそれら三つの期間ごとに異なるパルス電圧が、次のように印加される。
【0046】
初期化期間では、初期化パルス電圧が維持電極X1,X2,X3,・・・と走査電極Y1,Y2,Y3,・・・に対して印加される。それにより、全ての放電セルの表面から壁電荷が整えられる。アドレス期間では、走査電極駆動部12が走査パルス電圧を、走査電極Y1,Y2,Y3,・・・に対して順次印加する。走査パルス電圧の印加と同時に、アドレス電極駆動部13は信号パルス電圧を、アドレス電極A1,A2,A3,・・・に対して印加する。ここで、信号パルス電圧が印加されるべきアドレス電極は、外部から入力される映像信号に基づいて選択される。走査パルス電圧が走査電極の一つに対して印加され、かつ信号パルス電圧がアドレス電極の一つに対して印加されるとき、その走査電極とアドレス電極との交差点に位置する放電セルで放電が生じる。その放電により、その放電セル表面には壁電荷が蓄積される。
【0047】
放電維持期間では、維持電極駆動部11が放電維持パルス電圧を維持電極X1,X2,X3,・・・に対して印加し、走査電極駆動部12が放電維持パルス電圧を走査電極Y1,Y2,Y3,・・・に対して印加する。維持電極駆動部11と走査電極駆動部12とは逆位相で同じ周期で周期的に動作する。それにより、放電維持パルス電圧が維持電極と走査電極とに対して交互に、かつ周期的に印加される。維持電極と走査電極との間の電圧が極性を反転させるごとに、アドレス期間中に壁電荷が蓄積された放電セルではガス放電と壁電荷の蓄積とが繰り返される。従って、放電維持期間中、その放電セルでは蛍光体の発光が持続する。
なお、実施形態1において、放電維持パルス電圧は、維持電極と走査電極とに対して交互に、かつ周期的に印加される例で説明するが、維持電極と走査電極のそれぞれに印加される放電維持パルス電圧の波形においては、重複する領域があってもよい。
【0048】
維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びアドレス電極駆動部13のそれぞれは、パルス生成部として、好ましくはスイッチングインバータを含む。制御部30はそれらのパルス生成部に対してスイッチング制御を行う。制御部30によるスイッチング制御により、維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びアドレス電極駆動部13の各パルス生成部において放電維持パルス電圧、走査パルス電圧、及び信号パルス電圧が、所定の波形及びタイミングでそれぞれ生成される。好ましくは、制御部30が、外部から入力される映像信号に基づき、信号パルス電圧が印加されるべきアドレス電極とサブフィールドとを決定する。その結果、PDP20には映像信号に対応する映像が再現される。
【0049】
図3は、放電維持期間における、維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びPDP20の等価回路図である。維持電極駆動部11は、第1のパルス生成部1Xと第1の電力回収部2Xとを有する。走査電極駆動部12は、第2のパルス生成部1Yと第2の電力回収部2Yとを有する。
【0050】
第1のパルス生成部1Xは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1X,Q2Xの直列回路を含む。同様に、第2のパルス生成部1Yは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1Y,Q2Yの直列回路を含む。それらの主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yは、好ましくはnチャネル型MOSFETである。パルス生成部1X,1Yの共通の入力端子Inに対しては電源部40(図1参照)から直流電圧Vsが印加される。以下、入力端子Inを電源端子という。
【0051】
実施形態1のPDP駆動装置において、第1のパルス生成部1Xには、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xとの直列回路、及び可飽和インダクタLsXが設けられている。可飽和インダクタLsXの一端は、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xとの接続点J3Xに接続されており、可飽和インダクタLsXの他端は、第1のパルス生成部1Xの出力端子J1Xに接続されている。第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのドレインは電源端子Inに接続され、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのソースは第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xのドレインに接続されている。第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xのソースは接地されている。
【0052】
第2のパルス生成部1Yには、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの直列回路、及び可飽和インダクタLsYが設けられている。可飽和インダクタLsYの一端は、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの接続点J3Yに接続されており、可飽和インダクタLsYの他端は、第2のパルス生成部1Yの出力端子J1Yに接続されている。第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yのドレインは電源端子Inに接続され、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yのソースは第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yのドレインに接続されている。第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yのソースは接地されている。
【0053】
第1のパルス生成部1Xの出力端子J1Xは、PDP20の維持電極Xに接続されている。また、第2のパルス生成部1Yの出力端子J1Yは、PDP20の走査電極Yに接続されている。ここで、PDP20の等価回路はパネル容量Cpでのみ表されており、放電セルでの放電時にPDP20を流れる電流の経路における容量等は省略されている。
【0054】
第1の電力回収部2Xは、第1の回収コンデンサCX、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3X、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4X、第1のハイサイドダイオードD1X、第1のローサイドダイオードD2X、及び第1の回収インダクタLXを含む。二つの回収スイッチ素子Q3X,Q4Xは、例えばnチャネル型MOSFETである。第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xのソースは第1のハイサイドダイオードD1Xのアノードに接続される。第1のハイサイドダイオードD1Xのカソードは第1のローサイドダイオードD2Xのアノードに接続される。第1のローサイドダイオードD2Xのカソードは第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xのドレインに接続される。第1の回収コンデンサCXの一端は接地され、他端は第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xのドレインと第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xのソースとに接続される。第1の回収コンデンサCXの容量(1〜100μF程度)はPDP20のパネル容量Cp(0.01〜1μF程度)より十分に大きい値に設定されている。第1の回収コンデンサCXの両端電圧は直流電圧Vsの半値Vs/2と実質的に等しく維持される。第1の回収インダクタLXの一端は第1のパルス生成部1Xの出力端子J1Xに接続され、他端は第1のハイサイドダイオードD1Xと第1のローサイドダイオードD2Xとの間の接続点J2Xに接続されている。
【0055】
第2の電力回収部2Yの回路構成は、第2の回収インダクタLYの一端が第2のパルス生成部1Yの出力端子J1Yへ接続される点を除き、以下に説明するように、前述の第1の電力回収部2Xの回路構成と同様である。
【0056】
第2の電力回収部2Yは、第2の回収コンデンサCY、第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Y、第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Y、第2のハイサイドダイオードD1Y、第2のローサイドダイオードD2Y、及び第2の回収インダクタLYを含む。二つの回収スイッチ素子Q3Y,Q4Yは、例えばnチャネル型MOSFETである。第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yのソースは第2のハイサイドダイオードD1Yのアノードに接続される。第2のハイサイドダイオードD1Yのカソードは第2のローサイドダイオードD2Yのアノードに接続される。第2のローサイドダイオードD2Yのカソードは第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yのドレインに接続される。第2の回収コンデンサCYの一端は接地され、他端は第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yのドレインと第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yのソースとに接続される。第2の回収コンデンサCYの容量(1〜100μF程度)はPDP20のパネル容量Cp(0.01〜1μF程度)より十分に大きい値に設定されている。第2の回収コンデンサCYの両端電圧は直流電圧Vsの半値Vs/2と実質的に等しく維持される。第2の回収インダクタLYの一端は第2のパルス生成部1Yの出力端子J1Yに接続され、他端は第2のハイサイドダイオードD1Yと第2のローサイドダイオードD2Yとの間の接続点J2Yに接続されている。
【0057】
本発明に係る実施形態1のPDP駆動装置10において、パルス生成部1X,1Yに設けられている可飽和インダクタLsX,LsYは、それぞれが次のような特性を有する。
図4は、それぞれの可飽和インダクタLsX,LsYの直流電流重畳特性を示すグラフである。図4において、縦軸は可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLを示し、横軸は直流重畳電流Ibを示す。
【0058】
可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLは直流重畳電流Ibに依存し、次のように変化する。直流重畳電流Ibが所定の飽和電流Isより小さいとき(0<Ib<Is)、インダクタンスLは、直流重畳電流Ibが零と等しいときのインダクタンスL0(以下、初期インダクタンスという)と実質的に等しい値(L≒L0)推移する。直流重畳電流Ibが飽和電流Isより大きいとき(Is<Ib)、インダクタンスLはインダクタンスL0付近から急激に低下し、零付近と実質的に等しい値(L≒0)となる。なお、初期インダクタンスL0は少なくとも飽和時のインダクタンスの2倍以上であり、一般的に1000倍以上である。また、各可飽和インダクタLsX,LsYに流れる電流ILsX,ILsYのピークは、インダクタLX,LYの飽和電流Isより十分に小さい。
可飽和インダクタLsX,LsYとしては、例えば、アモルファスコアを有して構成される。このように可飽和インダクタLsX,LsYが構成されたとき、図4に示したような直流電流重畳特性が容易に実現される。
【0059】
制御部30(図1参照)は、主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Y、及び、回収スイッチ素子Q3X,Q4X,Q3Y,Q4Yのそれぞれのゲートに対して、所定の制御信号を送出する。制御部30からの所定の制御信号により、それぞれのスイッチ素子は次のようにオンオフ制御される。
制御部30は、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの対、及び、第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yとの対を所定の周期(例えば数百kHz)で交互にオンオフ動作させる。そのオンオフ動作により、パネル容量Cpに対する印加電圧(Vp)の極性が周期的に反転する。すなわち、一定周期の交流パルス電圧Vpがパネル容量Cpに対して印加される。
【0060】
制御部30は、更に、パルス電圧Vpの立ち上がりにおいて、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xと第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yとをオン状態とし、パルス電圧Vpの立ち下がりにおいては第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xと第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yとをオン状態とする。それにより、回収インダクタLX,LYは、回収コンデンサCX,CYに接続されて、それぞれの回収コンデンサCX,CYの電圧Vs/2によりパネル容量Cpと共振する。
【0061】
図5は、パルス生成部1X,1Yと電力回収部2X,2Yの各部における電圧/電流変化を示す波形図である。
制御部30により主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yと回収スイッチ素子Q3X,Q4X,Q3Y,Q4Yとのそれぞれのゲートに対して送出される八つの制御信号をそれぞれ、CTRL1X,CTRL2X,CTRL1Y,CTRL2Y,CTRL3X,CTRL4X,CTRL3Y,CTRL4Yとする。それぞれのスイッチ素子は受信した制御信号に従ってオンオフ動作を行う。図5において、制御信号が高電位に遷移するとき(アサートするとき)、対応するスイッチ素子がオン状態となり、制御信号が低電位に遷移するとき(ネゲートするとき)、対応するスイッチ素子がオフ状態となる。
【0062】
パルス生成部1X,1Yと電力回収部2X,2Yにおけるスイッチング動作は、パルス電圧Vpの一周期当たり次の四つのモードI〜IV(図5参照)に分けられる。
【0063】
<モードI>
モードIの開始時、PDP20の維持電極Xの電位VXは零と実質的に等しく、走査電極Yの電位VYは電源端子Inの電位Vsと実質的に等しい。
制御部30は、制御信号CTRL3X,CTRL4Yをアサートする。それにより、第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3Xと第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Yとがオン状態となる。このとき、他のスイッチ素子はオフ状態に維持される。モードIにおけるスイッチング動作により、接地端子→第1の回収コンデンサCX→第1のハイサイド回収スイッチ素子Q3X→第1のハイサイドダイオードD1X→第1の回収インダクタLX→パネル容量Cp→第2の回収インダクタLY→第2のローサイドダイオードD2Y→第2のローサイド回収スイッチ素子Q4Y→第2の回収コンデンサCY→接地端子のループが導通する。上記の矢印(→)は電流の向きを示す。そのとき、二つの回収インダクタLX,LY、及びパネル容量Cpの直列回路が共振回路を形成し、二つの回収コンデンサCX,CYからそれぞれ電圧Vs/2を印加され、共振する。その共振電流ILX=−ILYは上記のループにおける矢印(→)の向きに流れる。この結果、パネル容量Cpの両端電圧Vpが正の電圧に引き上げられる。
【0064】
<モードII>
モードIIにおいては、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとがオン状態となる。そのとき、接続点J3Xの電位が電源端子Inの電位Vsと実質的に等しくクランプされ、走査電極Yの電位VYが接地電位(GND)と実質的に等しい電位(≒0)にクランプされる。従って、可飽和インダクタLsX,LsYに正のピーク電圧値(Vs)が印加される。
【0065】
図6は、モードIからモードIIへの過渡期(図5参照)における、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xと、可飽和インダクタ電圧VLsX+VLsYと、電流I1X(=電流ILsX、電流ILsY)との変化を拡大して示した波形図である。図6では、一点鎖線が電圧VLsX+VLsYを示し、実線が電流I1Xを示し、破線が両端電圧V1Xを示す。
【0066】
モードIの終了時点においては、第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yがターンオンしており、モードIIの開始時点T0から、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xがターンオン動作を開始する。それにより、電圧V1Xがピーク値Vsから降下し始める。それと同時に、電流I1Xが可飽和インダクタLsX,LsYを流れ始める。時点T1では、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xがターンオン動作を終え、電圧V1Xがピーク電圧値(Vs)から実質的に零まで降下する。時点T2では、電流I1Xが飽和電流Isに達するので、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心が飽和状態に遷移する。
【0067】
時点T0から時点T2までの期間では、可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLが初期インダクタンスL0と実質的に等しく、十分に高いため(図4参照)、電流I1Xの増大が十分に緩やかである。特に、時点T0から時点T2までの期間は、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのターンオン時間(T1−T0)より長く設定されている。それにより、電流I1Xが十分に小さい間に、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xの電圧V1Xが実質的に零まで低下する。従って、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xの電圧V1Xの波形が電流I1Xの波形と重なる期間(T0〜T1)では、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xに電力損失(例えば、熱の放散)が生じ、スイッチング損失となる(図6に示される斜線部分参照)。しかし、この電圧V1Xと電流I1Xとの積で示される電力損失、すなわちスイッチング損失は十分に小さいものとなっている。
【0068】
時点T2以降においては、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心が飽和状態を維持するため、可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLが実質的に零まで低下する(図4参照)。従って、可飽和インダクタLsX,LsYにおいては、電流I1Xの変化が加速されて、速やかに電流が流れ、電流I1Xは時点T3でピークに達した後、時点T4において実質的に零まで減衰する。そして、パネル容量Cpの両端電圧Vpは実質的に正のピーク電圧値(Vs)まで達する。
【0069】
第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xに限らず、電力用半導体素子のターンオン時間は100ns以上と長いため、電流I1Xのピーク電流を制限するという問題がある。しかし、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心が未飽和状態から飽和状態に遷移する時間は数ns程であるため、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのターンオン動作に制限されずに、電流I1Xのピーク電流を大きくすることができる。従って、実施形態1のPDP駆動装置10においては、モードIIにおける時点T2から時点T3までの時間(T3−T2)、すなわち、立ち上がりに要する時間を短くしつつ、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのターンオン時のスイッチング損失を低減することができる。
【0070】
また、パネル容量Cpの両端電圧Vpをすばやくピーク電圧Vsに達するようにすると、パネル容量Cpの両端電圧Vpにはリンギングが発生するという問題がある。維持放電期間中にリンギングが発生すると維持放電が不安定になり、維持放電が続かなくなる現象が発生して、駆動マージンが減少する。リンギングは電流が正負交互に振動することで発生するが、可飽和インダクタは閾値電流Is以下のときにインダクタンスが増大するため、電流が正から負(又は負から正)振動することを抑制する。従って、実施形態1のPDP駆動装置10においては、リンギングを抑制し、駆動マージンを向上させることができる構成である。
【0071】
その後、パネル容量Cpの両端電圧Vpが正のピーク電圧値(Vs)と実質的に等しい電圧にクランプされ、しばらくはPDP20で放電が発生する。その放電期間では、放電電流Ipを流すための電力が外部から電源端子Inを通して供給される。
【0072】
<モードIII>
モードIIIの開始時、維持電極Xの電位VXは電源端子Inの電位Vsと実質的に等しく、走査電極Yの電位VYは接地電位(GND)と実質的に等しい電位(≒0V)である。
【0073】
モードIIIにおいて、制御部30は、制御信号CTRL4X,CTRL3Yをアサートする。それにより、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xと第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yがオン状態となる。そのとき、他のスイッチ素子はオフ状態に維持される。このスイッチング動作により、接地端子→第2の回収コンデンサCY→第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Y→第2のハイサイドダイオードD1Y→第2の回収インダクタLY→パネル容量Cp→第1の回収インダクタLX→第1のローサイドダイオードD2X→第1のローサイド回収スイッチ素子Q4X→第1の回収コンデンサCX→接地端子のループが導通する。上記の矢印(→)は電流の向きを示す。そのとき、二つの回収インダクタLX,LY、及びパネル容量Cpの直列回路が共振回路を形成し、二つの回収コンデンサCX,CYからそれぞれ電圧Vs/2が印加されて、共振する。共振電流−ILX=ILYは上記のループに流れる。この結果、維持電極Xの電位VXが降下し、走査電極Yの電位VYが上昇する。従って、パネル容量Cpの両端電圧Vp=VX−VYの極性が反転する。共振電流−ILX=ILYが実質的に零まで減衰したとき、第1のローサイドダイオードD2Xと第2のハイサイドダイオードD1Yは逆バイアスとなりオフ状態となる。それと同時に、パネル容量Cpの両端電圧Vpが実質的に負のピーク電圧値(−Vs)まで達する。
【0074】
<モードIV>
モードIVにおいて、制御部30は制御信号CTRL2X,CTRL1Yをアサートする(図5参照)。それにより、第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yがオン状態となる。また、制御部30は、モードIVにおいて、他のスイッチ素子のそれまでのオン状態又はオフ状態をそのまま維持する。そのとき、維持電極Xの電位VXは接地電位にクランプされ、走査電極Yの電位VYは電源端子Inの電位Vsにクランプされる。この結果、可飽和インダクタLsX,LsYに正のピーク電圧値(Vs)が印加される。
【0075】
第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yがターンオン動作を開始することにより、それぞれの両端電圧V2X,V1Yがピーク値Vs/2から降下し始める。それと同時に、電流(−ILsX=ILsY)が可飽和インダクタLsX,LsYを、モードIとは逆向きに流れ始める。それにより、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心は飽和状態から速やかに脱する。従って、モードIIIの開始後、電流−ILsX=ILsYが再び閾値電流Isに達するまでは、可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLは初期インダクタンスL0と実質的に等しく、十分に高い値となる(図4参照)。それ故、モードIIIの開始から電流−ILsX=ILsYが再び閾値電流Isに達するまでの期間では、電流−ILsX=ILsYの増大が十分に緩やかである。この期間の長さは二つの主スイッチ素子Q2X,Q1Yのターンオン時間より長く設定されている。それにより、電流(−ILsX=ILsY)が十分に小さいうちに、主スイッチ素子Q2X,Q1Yの各両端電圧V2X,V1Yが実質的に零の電位まで降下する。従って、主スイッチ素子Q2X,Q1Yの両端電圧V2X,V1Yの波形が電流(−ILsX=ILsY)の波形と重なる期間では、両端電圧と電流との積で示される電力損失、すなわちスイッチング損失は十分に小さいものとなる。
【0076】
その後、電流(−ILsX=ILsY)が閾値電流Isまで増大したとき、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心が再び、飽和状態に遷移する。それにより、可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLは零の値まで低下する(図4参照)。従って、それ以降、電流(−ILsX=ILsY)の変化が加速され、可飽和インダクタLsX,LsYにおいては、電流は速やかに流れる。
【0077】
上記のように動作するため、二つの主スイッチ素子Q2X,Q1Yのターンオン動作スピードに制限されずに、電流I1Yのピーク電流を大きくし、モードIVにおける時間T3−T2、すなわち、立ち上がりに要する時間を短くして、主スイッチ素子Q1Yのターンオン時のスイッチング損失を低減することができる。
【0078】
モードIVの開始からしばらくは、PDP20で放電が維持される。その放電期間では、放電電流Ipを維持するための電力が外部から電源端子Inを通してPDP20に供給される。
モードIVの開始時点から所定時間が経過するとき、制御部30はまず、制御信号CTRL4X,CTRL3Yをネゲートする。それにより、第1のローサイド回収スイッチ素子Q4Xと第2のハイサイド回収スイッチ素子Q3Yがオフ状態となる。制御部30は、続いて、制御信号CTRL2X,CTRL1Yをネゲートする。それにより、第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xと第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yがオフ状態となる。
上記のように、モードIVにおいて制御部30からの制御信号によりスイッチング動作を行うことにより、モードI開始時の状態となる。
【0079】
モードIにおいて第1の回収コンデンサCXからパネル容量Cpへ供給される電力は、モードIIIでパネル容量Cpから第1の回収コンデンサCXへ回収される。逆に、モードIにおいてパネル容量Cpから第2の回収コンデンサCYへ回収される電力は、モードIIIで第2の回収コンデンサCYからパネル容量Cpへ供給される。こうして、パルス電圧の立ち上がり及び立ち下がりでは回収インダクタLX,LYがPDP20のパネル容量Cpと共振し、回収コンデンサCX,CYとパネル容量Cpとの間で電力が効率高く交換される。すなわち、パルス電圧の印加時、パネル容量の充放電に起因する無効電力が大幅に低減される。
【0080】
モードII、IVの各開始時において、主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yの両端電圧V1X,V2X,V1Y,V2Yの波形が電流ILsX,ILsYの波形と重なる期間では可飽和インダクタLsX,LsYのインダクタンスLが高く維持されるため、電流ILsX,ILsYは小さい値となる。従って、両端電圧と共振電流との積で示される電力損失、すなわちスイッチング損失が十分に抑制される。
【0081】
更に、主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yの両端電圧V1X,V2X,V1Y,V2Yが実質的に零まで降下した後、電流ILsX,ILsYが閾値電流Isを超える。そのとき、可飽和インダクタLsX,LsYの磁心が飽和状態に遷移する。従って、それ以降、可飽和インダクタILsX,ILsYのインダクタンスLが低減するため、可飽和インダクタLsX,LsYにおいては電流が速やかに流れる。
【0082】
上記のように、本発明に係る実施形態1の容量性負荷駆動装置においては、パルス生成部1X,1Yが直流電圧(Vs)をパルス電圧(Vp)に変換して、そのパルス電圧(Vp)をPDP20の維持電極Xと走査電極Yとに対して印加している。パルス生成部1X,1Yはインダクタ(LsX,LsY)を有し、パルス電圧(Vp)の立ち上がりと立ち下がりにおいて、PDP20の充放電電流(ILsX,ILsY)が小さい期間ではインダクタ(LsX,LsY)のインダクタンスが高くなり、PDP20の充放電電流(ILsX、ILsY)が閾値電流Isを超えるとき、インダクタ(LsX,LsY)のインダクタンスが急激に低下している。
【0083】
上記のように構成された実施形態1のPDP駆動装置においては、立上りに要する時間が短くしながら、主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yのターンオン時のスイッチング損失を低減させている。従って、実施形態1のPDP駆動装置は、PDPに対して急峻な電圧を印加しつつ、スイッチング損失及びリンギングを抑制して、容量性負荷であるPDPを高い効率で駆動することができる。
【0084】
《実施形態2》
次に、本発明に係る実施形態2のプラズマディスプレイ装置について添付の図7を用いて説明する。実施形態2のプラズマディスプレイ装置の構成において、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)におけるパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様である。実施形態2において、PDP駆動装置のパルス生成部201X,201Y以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様であるため、ここではパルス生成部201X,201Yについて説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、実施形態2の説明において、実施形態1のプラズマディスプレイ装置における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0085】
図7は、実施形態2のプラズマディスプレイ装置における放電維持期間において、維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びPDP20の等価回路図である。維持電極駆動部11は、第1のパルス生成部201Xと第1の電力回収部2Xとを有する。走査電極駆動部12は、第2のパルス生成部201Yと第2の電力回収部2Yとを有する。
図7に示すように、第1のパルス生成部201Xは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1X,Q2Xの直列回路を含む。同様に、第2のパルス生成部201Yは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1Y,Q2Yの直列回路を含む。それらの主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yは好ましくはnチャネル型MOSFETである。
【0086】
実施形態2のプラズマディスプレイ装置においては、可飽和インダクタLsX,LsYが電源部からの直流電圧Vsが印加される入力端子である電源端子Inと、主スイッチ素子Q1X,Q1Yとの間にそれぞれ設けられている。第1のパルス生成部201Xにおいては、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xのドレインと電源端子Inとの間に可飽和インダクタLsXが挿入されている。第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xとの接続点が、PDP20の維持電極Xに接続される出力端子J1Xであり、この出力端子J1Xは第1の電力回収部2Xの第1の回収インダクタLXに接続されている。
【0087】
第2のパルス生成部201Yにおいては、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yのドレインと電源端子Inとの間に可飽和インダクタLsYが挿入されている。第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの接続点が、PDP20の走査電極Yに接続される出力端子J1Yであり、この出力端子J1Yは第2の電力回収部2Yの第2の回収インダクタLYに接続されている。
【0088】
上記のように、実施形態2のプラズマディスプレイ装置のPDP駆動装置においては、可飽和インダクタLsX,LsYをハイサイド主スイッチ素子Q1X,Q1Yに直列接続する構成を有している。このため、実施形態2のプラズマディスプレイ装置のPDP駆動装置は、実施形態1において説明した効果の他に、可飽和インダクタLsX,LsYを飽和させる回数が半分となり、発熱を分散できるという効果を有する。
【0089】
《実施形態3》
次に、本発明に係る実施形態3のプラズマディスプレイ装置について添付の図8を用いて説明する。実施形態3のプラズマディスプレイ装置の構成において、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)におけるパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様である。実施形態3において、PDP駆動装置のパルス生成部301X,301Y以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様であるため、ここではパルス生成部301X,301Yについて説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、実施形態3の説明において、実施形態1のプラズマディスプレイ装置における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0090】
図8は、実施形態3のプラズマディスプレイ装置における放電維持期間において、維持電極駆動部11、走査電極駆動部12、及びPDP20の等価回路図である。維持電極駆動部11は、第1のパルス生成部301Xと第1の電力回収部2Xとを有する。走査電極駆動部12は、第2のパルス生成部301Yと第2の電力回収部2Yとを有する。
図8に示すように、第1のパルス生成部301Xは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1X,Q2Xの直列回路を含む。同様に、第2のパルス生成部301Yは、好ましくはスイッチングインバータであり、二つの主スイッチ素子Q1Y,Q2Yの直列回路を含む。それらの主スイッチ素子Q1X,Q2X,Q1Y,Q2Yは好ましくはnチャネル型MOSFETである。
【0091】
実施形態3のプラズマディスプレイ装置における第1のパルス生成部301Xにおいては、可飽和インダクタLsXが、容量性負荷であるPDP20に接続される出力端J1Xと、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xとの接続点J3Xとの間に挿入されている。また、第1のハイサイド主スイッチ素子Q1Xと第1のローサイド主スイッチ素子Q2Xとの接続点J3Xは、第1の電力回収部2Xの第1の回収インダクタLXに接続されている。
第2のパルス生成部301Yにおいては、可飽和インダクタLsYが、容量性負荷であるPDP20に接続される出力端J1Yと、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの接続点J3Yとの間に挿入されている。また、第2のハイサイド主スイッチ素子Q1Yと第2のローサイド主スイッチ素子Q2Yとの接続点J3Yは、第2の電力回収部2Yの第2の回収インダクタLYに接続されている。
【0092】
上記のように、実施形態3のプラズマディスプレイ装置のPDP駆動装置においては、可飽和インダクタLsX,LsYをPDP20に直列接続する構成を有している。このため、実施形態3のプラズマディスプレイ装置のPDP駆動装置は、パルス電圧波形における立上りの傾きを急峻にする効果が薄れるが、リンギングをさらに抑える効果を有しており、駆動マージンを向上させることができる。
【0093】
《実施形態4》
次に、本発明に係る実施形態4のプラズマディスプレイ装置について添付の図9及び図10を用いて説明する。実施形態4のプラズマディスプレイ装置の構成において、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)におけるパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様である。実施形態4において、PDP駆動装置のパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様であるため、ここでは維持電極駆動部11のパルス生成部401Xについて説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、実施形態4の説明において、実施形態1のプラズマディスプレイ装置における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0094】
図9は、本発明に係る実施形態4のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11の等価回路図である。実施形態4においては、走査電極駆動部12の回路構成は維持電極駆動部11の回路構成と全く同様であるので、走査電極駆動部12の等価回路を省略している。
実施形態4のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12は、前述の図3に示した実施形態1のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12の構成要素に加えて、補助インダクタLaを有する電流制御部4Aをそれぞれに設けたものである。
【0095】
補助インダクタLaは可飽和インダクタLsXと磁気的に結合している。可飽和インダクタLsXが磁心と巻線とを含むとき、補助インダクタLaは、好ましくは、可飽和インダクタLsXと共通の磁心に巻かれた別の巻線で構成される。
【0096】
電流制御部4Aは可変電流源Ivを含む。可変電流源Ivは補助インダクタLaに接続され、補助インダクタLaに流れる電流を制御する。可変電流源Ivは、好ましくは、主スイッチ素子Q1X及び回収スイッチ素子Q4Xの各ターンオン動作に先駆けて、すなわちモードII及びモードIVの各開始前(図5参照)に、補助インダクタLaにパルス電流を流すよう構成されている。なお、可変電流源Ivは、その他に、第1のパルス生成部401X、若しくはスイッチ素子Q1X,Q4Xのスイッチング動作期間中、すなわち、モードI〜IVの全体(図5参照)にわたり、補助インダクタLaに電流を流し続けても良い。
ここで、補助インダクタLaに流すべき電流のレベルとタイミングは、好ましくは、制御部30(図1参照)からの制御信号に従って制御される。
【0097】
上記のように、モードII及びモードIVの各開始前(図5参照)において、補助インダクタLaにパルス電流を流すことにより、モードII及びモードIVに先駆けて可飽和インダクタLsXの磁心が磁化される。このように磁心が磁化されることにより、可飽和インダクタLsXの閾値電流Isが変化するため、モードII及びモードIVでは電流ILsXが次のように変化する。図10は、モードIからモードIIへの過渡期間の一連動作における、主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xと、可飽和インダクタLsXの磁心が磁化されていない場合の電流ILsXと、可飽和インダクタLsXの磁心が予め磁化されている場合の共振電流ILsXとを拡大して示す波形図である。図10においては、可飽和インダクタLsXの磁心が磁化されていない場合の電流ILsXが一点鎖線で示され、可飽和インダクタLsXの磁心が予め磁化されている場合の共振電流ILsXが実線で示される。
【0098】
可飽和インダクタLsXの磁心が予め磁化されているとき、その磁化の向きに磁界が生じるように巻線を流れる電流に関しては、閾値電流Isが低減する(図10参照)。そのとき低減される量は、可飽和インダクタLsXの磁心の磁化、すなわち補助インダクタLaに予め流すべき電流量で調節される。特に、電流ILsXが閾値電流Isに達する時点T2が、主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xが実質的に零に達する時点T1と一致し得る(図10に示される実線参照)。すなわち、主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xの波形と電流ILsXの波形との重なりが解消された直後に可飽和インダクタLsXのインダクタンスが低下し、電流ILsXの変化が加速される。その結果、主スイッチ素子Q1Xのターンオン時のスイッチング損失を十分に低く抑えたまま、モードII(又はモードIV)の立上りの傾きを向上させることができる。図10に示されているように、共振電流ILsX(実線)の波形は、立上りが急峻であるとともに、そのピーク電圧値は従来に比して高く、そのピーク電圧値は電源電圧Vsと実質的に等しい値となっている。
【0099】
電流制御部4Aにおける可変電流源Ivの電流量は、好ましくは、実際のPDP駆動装置毎に、更に維持電極駆動部11と走査電極駆動部12とで別々に調節できるように構成されている。そのように構成することにより、可飽和インダクタLsXの実際の磁化特性に応じて閾値電流Isを最適化することが可能となり、実施形態4のプラズマディスプレイ装置におけるPDP駆動装置は高い信頼性を確保することができる。
【0100】
《実施形態5》
次に、本発明に係る実施形態5のプラズマディスプレイ装置について添付の図11を用いて説明する。実施形態5のプラズマディスプレイ装置の構成において、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)におけるパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様である。実施形態5において、PDP駆動装置のパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様であるため、ここでは維持電極駆動部11のパルス生成部501Xについて説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、実施形態5の説明において、実施形態1のプラズマディスプレイ装置における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0101】
図11は、本発明に係る実施形態5のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11の等価回路図である。実施形態5においては、走査電極駆動部12の回路構成は維持電極駆動部11の回路構成と全く同様であるので、走査電極駆動部12の等価回路を省略している。
【0102】
実施形態5のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12は、前述の図3に示した実施形態1のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12の構成要素に加えて、二つの補助インダクタLa1,La2と、保護ダイオードDp1,Dp2を有する電流制御部4Bをそれぞれに設けたものである。その他の構成要素は実施形態1における構成要素と同様である。実施の形態5のプラズマディスプレイ装置の構成は、前述の実施形態4のプラズマディスプレイ装置において補助インダクタLaに予め流す電流量を調整する方法の変形例である。
【0103】
実施形態5における維持電極駆動部11のパルス生成部501Xにおいて、補助インダクタLa1,La2は、いずれも、可飽和インダクタLsXと磁気的に結合するよう構成されている。その磁気結合の極性は、二つの補助インダクタLa1,La2間で互いに逆である。可飽和インダクタLsXが磁心と巻線とを含むとき、補助インダクタLa1,La2は、好ましくは、可飽和インダクタLsXと共通の磁心に巻かれた別の巻線を含む。そのとき、補助インダクタLa1,La2の巻線の極性は互いに逆である。
【0104】
維持電極駆動部11のパルス生成部501Xにおける電流制御部4Bは、好ましくは、二つの保護ダイオードDp1,Dp2を含む。ハイサイド保護ダイオードDp1はハイサイド補助インダクタLa1と直列に接続され、ローサイド保護ダイオードDp2はローサイド補助インダクタLa2と直列に接続される。保護ダイオードDp1,Dp2及び補助インダクタLa1,La2の各直列体(Dp1+La1,Dp2+La2)は、パルス生成部501Xの出力端子J1Xと電源端子Inとの間、及び、その出力端子J1Xと接地端子(GND)との間にそれぞれ挿入されている。ハイサイド保護ダイオードDp1は電源端子Inから出力端子J1Xへ向かう電流−Is1を遮断し、ローサイド保護ダイオードDp2は出力端子J1Xから接地端子(GND)へ向かう電流−Is2を遮断する。
【0105】
モードIIまたはモードIVの期間において、実際には、モードI直後またはモードIII直後において、可飽和インダクタLsXとPDP20との接続点であるパルス生成部501Xの出力端子J1Xでは、モードI直後に正のサージ電圧Svが生じ、モードIII直後に負のサージ電圧(−Sv)が生じる。これは、回路の寄生インダクタンスや過飽和インダクタンスの残留インダクタンスの影響による。
モードI直後、出力端子J1Xの電位が電源端子Inの電位Vsを超える瞬間、ハイサイド保護ダイオードDp1が導通するため、出力端子J1Xの電位が電源端子Inの電位Vsにクランプされる。更に、サージ電流Is1が出力端子J1Xからハイサイド補助インダクタLa1とハイサイド保護ダイオードDp1との直列体を通って電源端子Inへ流れる。それにより、可飽和インダクタLsXの磁心が飽和状態を脱し、更に逆方向に磁化される。
【0106】
モードIII直後、出力端子J1Xの電位が接地電位(GND)を下回る瞬間、ローサイド保護ダイオードDp2が導通するため、出力端子J1Xの電位が接地電位(GND)にクランプされる。更に、サージ電流Is2が接地端子からローサイド保護ダイオードDp2とローサイド補助インダクタLa2との直列体を通って出力端子J1Xへ流れる。それにより、可飽和インダクタLsXの磁心が飽和状態を脱し、更に逆方向に磁化される。
【0107】
上記のように、保護ダイオードDp1,Dp2のクランプ作用により、パルス生成部501Xの出力端子J1Xの電位が接地電位(GND)から電源端子Inの電位(Vs)までの範囲内に収まる。従って、特に、パルス生成部501Xにおける主スイッチ素子Q1X,Q2Xは、過電圧から確実に保護される。
更に、モードI直後において、電流Is1がハイサイド補助インダクタLa1を流れるため、次のモードIIIに先駆けて可飽和インダクタLsXの磁心が磁化される。同様に、モードIII直後において、電流Is2がローサイド補助インダクタLa2を流れるため、次のモードIに先駆けて可飽和インダクタLsXの磁心が磁化される。
【0108】
上記のように可飽和インダクタLsXの磁心が磁化されることにより、可飽和インダクタLsXの閾値電流Isを調整できるため、前述の実施形態4と同様に、電流ILXが閾値電流Isに達すると同時に、主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xが実質的に零に達し得る(図10参照)。その結果、スイッチング損失を十分に低く抑えたまま、モードII(又はモードIV)の立上り傾きを向上させることができる(図10に示されるピーク電流値参照)。
【0109】
《実施形態6》
次に、本発明に係る実施形態6のプラズマディスプレイ装置について添付の図12を用いて説明する。実施形態6のプラズマディスプレイ装置の構成において、プラズマディスプレイパネル駆動装置(以下、PDP駆動装置と略称)におけるパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様である。実施形態6において、PDP駆動装置のパルス生成部以外の構成は、前述の実施形態1のプラズマディスプレイ装置と同様であるため、ここでは維持電極駆動部11のパルス生成部601Xについて説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、実施形態6の説明において、実施形態1のプラズマディスプレイ装置における要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0110】
図12は、本発明に係る実施形態6のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11の等価回路図である。実施形態6においては、走査電極駆動部12の回路構成は維持電極駆動部11の回路構成と全く同様であるので、走査電極駆動部12の等価回路を省略している。
実施形態6のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12は、前述の図3に示した実施形態1のプラズマディスプレイ装置における維持電極駆動部11と走査電極駆動部12の構成要素に加えて、補助インダクタLaを有する電流制御部4Cを設けたものである。その他の構成要素は実施形態1における構成要素と同様である。
【0111】
図12に示すように、実施形態6におけるパルス生成部601Xには、補助インダクタLa及びインピーダンス素子Rを有する電流制御部4Cが設けられている。
補助インダクタLaは可飽和インダクタLsXと磁気的に結合している。可飽和インダクタLsXが磁心と巻線とを含むとき、補助インダクタLaは、好ましくは、可飽和インダクタLsXと共通の磁心に巻かれた別の巻線を含む。
【0112】
電流制御部4Cにおけるインピーダンス素子Rは、好ましくは抵抗器であるが、その他の構成としてはコンデンサであっても良い。インピーダンス素子Rは補助インダクタLaと直列に接続されている。インピーダンス素子Rと補助インダクタLaとの直列体は、第1の電力回収部2Xにおける第1の回収コンデンサCXとパルス生成部601XにおけるPDP20への出力端子J1Xとの間に挿入されている。
【0113】
モードIIまたはモードIVの期間中、パルス生成部601Xの出力端子J1Xの電位、すなわちPDP20の維持電極Xの電位VXは、第1の回収コンデンサCXの両端電圧Vs/2の上下で推移する(図5参照)。
【0114】
モードIIにおいては、維持電極Xの電位VX=Vsが第1の回収コンデンサCXの両端電圧Vs/2より高く維持される。このため、電流(−Ia)が維持電極Xから補助インダクタLaとインピーダンス素子Rとの直列体を通って第1の回収コンデンサCXへ流れる。それにより、可飽和インダクタLsXの磁心が飽和状態を脱し、更に逆方向に磁化される。
モードIVにおいては、維持電極Xの電位VX=0が第1の回収コンデンサCXの両端電圧Vs/2より低く維持される。このため、電流Iaが第1の回収コンデンサCXからインピーダンス素子Rと補助インダクタLaとの直列体を通って維持電極Xへ流れる。それにより、可飽和インダクタLsXの磁心が飽和状態を脱し、更に逆方向に磁化される。
【0115】
上記のように、モードI及びモードIIIに先駆けて、モードIV及びモードIIにおいて、可飽和インダクタLsXの磁心が磁化されるため、可飽和インダクタLsXの閾値電流Isを調整することができる。従って、前述の実施形態4と同様に、電流ILsXが閾値電流Isに達すると同時に、主スイッチ素子Q1Xの両端電圧V1Xが実質的に零に達し得る(図10参照)。その結果、主スイッチ素子Q1Xのターンオン時のスイッチング損失を十分に低く抑えたまま、モードII(又はモードIV)の立上りの傾きを向上させることができる(図10に示されるピーク電流値参照)。
【0116】
本発明に係る容量性負荷駆動装置は、上記の各実施形態において説明したように、インダクタのインダクタンスが電流の増大に応じて低下する可飽和インダクタLsX,LsYを主スイッチ素子と併用して用いることにより、従来の駆動装置とは異なり、例えばモードIからモードIIに移行する際、パネル容量Cpの両端電圧Vpをすばやくピーク電圧Vsに達することができ、発光効率を向上させることができる。すなわち、本発明に係る容量性負荷駆動装置は、従来の駆動装置とは異なり、スイッチングスピードを向上させて発光効率を向上させることができ、スイッチングロスを低減して回路効率を向上させることができる。また、本発明に係る容量性負荷駆動装置は、可飽和インダクタLsX,LsYの特徴であるリンギング防止効果を利用して駆動マージンを向上させることができる。このように、本発明に係る容量性負荷駆動装置がPDP駆動装置としてプラズマディスプレイ装置に搭載されるとき、PDPの更なる大画面化と消費電力の更なる削減との両方を達成することができる。
【0117】
なお、前記の本発明に係る各実施形態においては、可飽和インダクタLsX,LsYを用いた例について説明したが、部分飽和可能な磁心を持つインダクタを可飽和インダクタとして用いることができ、同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、壁掛けテレビや大型のモニター等に用いられるプラズマディスプレイパネルを少ない消費電力で駆動することができるため、プラズマディスプレイパネル駆動装置及びプラズマディスプレイ装置における技術として高い利用価値を有する。
【符号の説明】
【0119】
1X,201X,301X,401X,501X,601X 第1のパルス生成部
1Y,201X,301X 第2のパルス生成部
2X 第1の電力回収部
2Y 第2の電力回収部
4A,4B,4C 電流制御部
10 プラズマディスプレイパネル駆動装置(PDP駆動装置)
11 維持電極駆動部
12 走査電極駆動部
13 アドレス電極駆動部
20 プラズマディスプレイパネル(PDP)
30 制御部
40 電源部
Q1X 第1のハイサイド主スイッチ素子
Q2X 第1のローサイド主スイッチ素子
Q3X 第1のハイサイド回収スイッチ素子
Q4X 第1のローサイド回収スイッチ素子
D1X 第1のハイサイドダイオード
D2X 第1のローサイドダイオード
CX 第1の回収コンデンサ
LX 第1の回収インダクタ
LsX 第1の可飽和インダクタ
Q1Y 第2のハイサイド主スイッチ素子
Q2Y 第2のローサイド主スイッチ素子
Q3Y 第2のハイサイド回収スイッチ素子
Q4Y 第2のローサイド回収スイッチ素子
D1Y 第2のハイサイドダイオード
D2Y 第2のローサイドダイオード
CY 第2の回収コンデンサ
LY 第2の回収インダクタ
LsY 第2の可飽和インダクタ
In 電源端子
X PDP20の維持電極
Y PDP20の走査電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷容量を有する表示パネルと、前記表示パネルに電力を供給する電力供給源と、前記表示パネルに前記電力供給源からの電力の供給/遮断を行うスイッチング部と、飽和可能な磁心を持つ可飽和インダクタとを有し、
前記表示パネルに電力を供給するとき、前記表示パネルと、前記電力供給源と、前記スイッチング部と、前記可飽和インダクタとを、電気的に接続状態とするよう構成された容量性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記可飽和インダクタは、前記表示パネルの充放電電流が閾値電流より小さいとき、所定のインダクタンスを示し、前記充放電電流が前記閾値電流を超えたとき、インダクタンスが急激に低下するよう構成された請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記可飽和インダクタが、前記電力供給源と、前記スイッチング部との間に設けられた請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項4】
前記可飽和インダクタが、前記表示パネルと、前記スイッチング部との間に設けられた請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項5】
前記可飽和インダクタと磁気的に結合する補助インダクタに流れる電流を制御する電流制御部を更に有する、請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項6】
前記電流制御部が、前記補助インダクタに接続される可変電流源を含む請求項5に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項7】
前記電流制御部が、保護ダイオードを含み、前記表示パネルと前記電源端子若しくは前記表示パネルと前記接地端子との間に前記補助インダクタと前記保護ダイオードが直列に接続された請求項5に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項8】
前記電流制御部が、前記表示パネルの出力端子を前記電力供給源に接続するインピーダンス素子を含み、前記補助インダクタが前記インピーダンス素子に直列に接続される請求項5に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項9】
前記表示パネルの負荷容量に蓄積された電力をLC共振により回収コンデンサに回収し、回収された電力を前記回収コンデンサから前記表示パネルの電極に供給する電力回収回路を、更に備え、
前記電流制御部が、インピーダンス素子を含み、前記表示パネルと前記回収コンデンサとの間に前記補助インダクタと前記インピーダンス素子が直列に接続された請求項5に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項10】
プラズマディスプレイパネルと、プラズマディスプレイパネル駆動回路として用いられる請求項1乃至9に記載の容量性負荷駆動装置とを含む、プラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−3109(P2012−3109A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139092(P2010−139092)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】