説明

対象物検出装置、対象物検出方法

【課題】処理負荷を大きくすることなく、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合の検出精度を高める。
【解決手段】入力画像に関する撮像対象までの距離情報を取得する距離情報取得部と、距離情報に基づいて、入力画像に対して距離区分を設定する距離区分設定部と、距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定するウィンドウサイズ設定部と、距離区分毎に、設定されたサイズの探索ウィンドウを用いて入力画像のスキャンを行なうスキャン部と、探索ウィンドウ内から検出対象物の検出処理を行なう検出処理部とを備えた対象物検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物検出技術に関し、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合の検出精度を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の撮像装置により生成された撮像画像上で、人物や車両等の物体をその輪郭などの特徴を用いて検出する物体検出技術が従来から提案されている。このような物体検出技術では、テンプレート画像や、機械学習によって作成された識別器を利用し、撮像画像上で探索ウィンドウをスキャンすることで対象とする物体を検出する手法が主流である。
【0003】
輪郭などの特徴を用いて検出する方法を、人物を検出し追跡する監視カメラ装置に適用すると、色や動きを利用した検出方法と異なり、小動物や木の揺れなどにつられることなく侵入者を検出し、追跡等の対処が可能になる。
【0004】
この場合、検出対象がどのような大きさで画像に写るかは、検出対象の位置や、ズーム・撮影方向等の監視カメラ装置の状態によって異なる。監視カメラ装置では、どのような大きさで写っていても確実に対象物の検出が行なえるように、複数の異なるサイズの探索ウィンドウを設定し、それぞれの探索ウィンドウを用いて撮像画像内を全面スキャンすることが行なわれている。例えば、図6(a)〜(c)に示す例では、サイズの異なる探索ウィンドウW1、探索ウィンドウW2、探索ウィンドウW3を、それぞれ全面スキャンすることで、異なる大きさに写っている人物を検出している。
【0005】
実装上は、もっと多くのサイズの探索ウィンドウを用い、また、スキャンも所定量オーバーラップさせながら行なうため、検出処理に時間がかかり、また大きなメモリ容量を要することになり、処理負荷が大きかった。
【0006】
この問題に対し、特許文献1には、被写体のフォーカス情報から得られる距離情報に基づいて被写体の大きさを推定し、その大きさに対応した探索ウィンドウを用いて対象物を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−334836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、監視カメラ装置は、一般のカメラの撮影状態と異なり、被写体が確定していないため、被写体のフォーカス状態に基づいて距離情報を得ることはできない。このため、特許文献1に記載された技術をそのまま適用しても十分な効果は得られない。また、監視カメラ装置では、検出対象物が遠近離れて複数存在し、それぞれの対象物の撮像画像内のサイズが異なる場合でも、すべての対象物に対する検出精度を高める必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、処理負荷を大きくすることなく、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合の検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である対象物検出装置は、入力画像に関する撮像対象までの距離情報を取得する距離情報取得部と、前記距離情報に基づいて、前記入力画像に対して距離区分を設定する距離区分設定部と、前記距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定するウィンドウサイズ設定部と、前記距離区分毎に、設定されたサイズの前記探索ウィンドウを用いて前記入力画像のスキャンを行なうスキャン部と、前記探索ウィンドウ内から検出対象物の検出処理を行なう検出処理部と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記距離情報取得部は、前記入力画像の画素毎に距離情報を取得し、前記距離区分設定部は、前記入力画像を複数のブロックに分割し、ブロック内の画素の距離情報に基づいてブロック単位で距離区分を設定することができる。
また、前記ウィンドウサイズ設定部は、前記入力画像に対する探索ウィンドウのサイズ比を設定し、前記スキャン部は、前記サイズ比にしたがった大きさの入力画像と探索ウィンドウとを用いて、前記スキャンを行なうようにしてもよい。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である対象物検出方法は、入力画像に関する撮像対象までの距離情報を取得する距離情報取得ステップと、前記距離情報に基づいて、前記入力画像に対して距離区分を設定する距離区分設定ステップと、前記距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定するウィンドウサイズ設定ステップと、
前記距離区分毎に、設定されたサイズの前記探索ウィンドウを用いて前記入力画像のスキャンを行ない、前記探索ウィンドウ内から検出対象物の検出処理を行なう検出ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理負荷を大きくすることなく、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る対象物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】設定される距離区分の例を示す図である。
【図3】探索ウィンドウのサイズ設定について説明する図である。
【図4】距離区分毎に設定されたサイズの探索ウィンドウでスキャンを行なっている状態を模式的に示した図である。
【図5】本実施形態の対象物検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】従来の探索ウィンドウのスキャン動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、本発明の対象物検出装置を対象物検出システムに適用した場合の例である。図1は、本実施形態に係る対象物検出システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
本図に示すように、対象物検出システム10は、対象物検出装置100、カメラ200、表示装置300を備えて構成される。対象物検出システム10は、例えば、監視カメラシステムとして機能することができ、この場合、カメラ200は監視カメラ装置として機能し、表示装置300は監視モニタ装置として機能する。対象物検出装置100は、例えば、CPU、メモリ、インタフェース等を備えた情報処理装置を用いて構成することができる。
【0015】
カメラ200は、撮像部210、カメラ駆動部220、距離測定部230を備えている。撮像部210は、レンズ等による光学系、受光素子等による受光部、演算装置等による画像処理部等を備えており、動画像を撮像して画像データを対象物検出装置100に出力する。光学系には、ズーム機能が含まれているものとする。
【0016】
カメラ駆動部220は、モータ等の駆動機構を備えており、対象物検出装置100からの制御信号に基づいて、撮像部210のズーム機能を変更する機能と、撮像方向を変更するパン・チルト機能を備えている。ここでは、ズーム、パン・チルトをPTZと総称する。
【0017】
距離測定部230は、撮像部210が撮像した画像内の全面において、撮像対象までの距離をリアルタイムで測定する。距離の測定は、例えば、TOF(Time of Flight)方式、ステレオカメラ方式等種々の方式を採用することができる。ここで、TOF方式は、例えば、撮像時あるいは撮影の前後に赤外線LEDを一瞬光らせ、赤外線が撮像対象にあたって跳ね返ってくるまでの時間を撮像部210の受光素子毎に測定することにより、撮像対象までの距離を算出する。距離測定部230が測定した距離情報は、例えば、撮像部210が出力する画像データの画素毎のアルファチャンネルに記録して対象物検出装置100に出力する。
【0018】
対象物検出装置100は、画像入力部110、距離情報取得部120、距離区分設定部130、ウィンドウサイズ設定部140、スキャン部150、検出処理部160、カメラ制御部170を備えている。
【0019】
画像入力部110は、カメラ200から画像データを連続して入力する。距離情報取得部120は、画像データの画素毎にアルファチャンネルから距離情報を取得して距離区分設定部130に出力する。
【0020】
距離区分設定部130は、画素毎の距離情報に基づいて、画像に距離区分を設定する。距離区分は、例えば、画像内を所定サイズのブロックに区分し、ブロック内の画素の平均距離に基づいて各ブロックを10m未満、10m以上20m未満、20m以上30m未満等の距離区分に振り分けることで設定することができる。
【0021】
図2(b)は、図2(a)に示した画像に対して設定された距離区分の例を示している。本例では、距離区分をあらかじめ5段階に区切っておき、画像を図2(b)の領域Bに示すようなサイズのブロックで分割し、それぞれのブロック内の画素の距離情報の平均値を用いて、各ブロックを距離区分に振り分けている。例えば、あるブロックに含まれる画素の距離情報の平均値が12mであれば、そのブロックは、10m以上20m未満の距離区分となる。
【0022】
ウィンドウサイズ設定部140は、距離区分毎に探索ウィンドウサイズを設定する。すなわち、同じ大きさの対象物であっても、カメラ200からの距離に応じて画像上のサイズが変化する。具体的には、遠くにある対象物ほど画像上では小さく写る。したがって、ウィンドウサイズ設定部140は、遠い距離区分ほど、探索ウィンドウサイズが相対的に小さくなるように設定する。
【0023】
また、画像上のサイズは、撮像部210のズーム状態に応じても変化する。具体的には、対象物とカメラ200との距離が同じであっても、ズームの焦点距離が大きいほど大きく写る。このため、ウィンドウサイズ設定部140は、後述するカメラ制御部170から、カメラ200のズーム情報を取得して、さらに焦点距離に応じて探索ウィンドウサイズを設定するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態では、例えば、図3に示すように、距離区分および焦点距離に応じて探索ウィンドウを設定するものとする。すなわち、遠い距離区分ほど探索ウィンドウが小さくなるように設定し、また、同じ距離区分であれば、焦点距離が長いほど大きな探索ウィンドウを設定する。それぞれの探索ウィンドウのサイズは、人物・車両等の検出対象物自身のサイズと撮像部210のレンズ特性等に基づいて実験的、理論的に取得して、ウィンドウサイズ設定部140の内部、あるいは外部に記録しておくようにする。
【0025】
スキャン部150は、画像入力部110が入力した画像に対して、距離区分毎に設定されたサイズの探索ウィンドウでスキャンを行なう。探索ウィンドウのスキャンは、所定数オーバーラップさせながら、距離区分内全体に対して行なう。
【0026】
図4は、距離区分毎に設定されたサイズの探索ウィンドウでスキャンを行なっている状態を模式的に示した図である。設定された距離区分は、図2(b)に対応している。本図の例では、最も距離が遠い距離区分Aにおいて、最も小さいサイズの探索ウィンドウWaを用いてスキャンを行ない、次に距離が遠い距離区分Bにおいて、次に小さいサイズの探索ウィンドウWbを用いてスキャンを行なっている。そして、最も距離の近い距離区分Eにおいて、最も大きいサイズの探索ウィンドウWeを用いてスキャンを行なっている。スキャンの方向、手順等についてはあらかじめスキャンシーケンスとして定めておくことができる。
【0027】
なお、スキャン時には、オーバーラップさせながら探索ウィンドウを移動させるため、探索ウィンドウが対応する距離区分からはみ出してもよい。同じ距離区分が連続せず、離散している場合には、それぞれの領域について同じサイズの探索ウィンドウを用いてスキャンを行なう。また、本実施形態では、探索ウィンドウのサイズを変更するようにしているが、探索ウィンドウのサイズを固定し、画像のサイズを相対的に変更してスキャンするようにしてもよい。
【0028】
このように、本実施形態では、距離区分に応じたサイズの探索ウィンドウを用いて、距離区分毎にスキャンを行なうため、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合にも検出精度を向上させることができる。また、種々のサイズの探索ウィンドウを用いて全画面をスキャンする必要がないため、検出処理の時間を短縮できるのに加え、必要なメモリ容量を削減することができる。
【0029】
検出処理部160は、探索ウィンドウ内に検出対象物が存在するかどうかを判定し、検出結果を含めた画像を表示装置300に出力する。探索ウィンドウ内に検出対象物が存在するかどうかの判定は、探索ウィンドウ内から輪郭などの特徴を抽出し、テンプレート画像や、機械学習によって作成された識別器を利用して行なうことができる。輪郭などの特徴としては、例えば、HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量を用いることができ、機械学習としては、例えば、AdaBoostアルゴリズムを用いることができる。
【0030】
カメラ制御部170は、検出結果に応じてカメラ駆動部220の動作を制御し、カメラ200にPTZ動作を行なわせる。検出結果に応じて行なわせるカメラ200のPTZ動作は、種々のロジックで行なうことができる。例えば、検出対象物を大きく撮像するためや、複数の検出対象物すべてを画角内に収めるためにズーム動作を行なわせたり、検出対象物の位置に対応してPT動作を行なわせたり、検出対象物を追尾するようにPT動作を行なわせたりすることができる。ズーム動作を行なわせた場合には、焦点距離情報をウィンドウサイズ設定部140に通知する。
【0031】
次に、本実施形態における対象物検出装置100の動作について図5のフローチャートを参照して説明する。まず、画像入力部110がカメラ200から画像データを入力する(S101)。そして、距離情報取得部120が、カメラ制御部170に制御により、前画像との間でPTZの変更があったかどうかを判定する(S102)。PTZに変化がなければ(S102:No)、画像内の距離区分を変更する必要がないためである。
【0032】
PTZに変更があった場合(S102:Yes)、および距離区分が未設定の場合には、距離情報取得部120が、画像データのアルファチャンネルから画素毎の距離情報を取得する(S103)。そして、距離区分設定部130が、画像内の領域をブロックに分割し、図2(b)に示したように、ブロック単位で距離区分を設定する(S104)。
【0033】
距離区分が設定されると、ウィンドウサイズ設定部140が、距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定する(S105)。このとき、カメラ200のズーム状態、レンズ特性等を考慮して探索ウィンドウのサイズを設定するようにしてもよい。
【0034】
そして、PTZに変化があった場合には、新たに設定された距離区分を対象に、PTZに変化がなかった場合には、設定済みの距離区分を対象に、スキャン部150が、図4に示したように距離区分毎に設定されたサイズの探索ウィンドウを用いてスキャンを行ない、検出処理部160が探索ウィンドウ内から対象物の検出処理を行なう(S106)。
【0035】
カメラ制御部170は、検出結果に基づいてPTZによるカメラ200の制御を行なう(S107)。検出結果に基づくカメラ200のPTZ制御は従来と同様に行なうことができる。
【0036】
対象物検出装置100は、以上の処理を、検出処理を終了するまで繰り返す(S108:Yes)。以上の手順により、対象物検出装置100は、検出対象物が遠近離れて複数存在する場合であっても、処理負荷を大きくすることなく、高い精度で検出対象物の検出を行なうことができる。
【符号の説明】
【0037】
10…対象物検出システム
100…対象物検出装置
110…画像入力部
120…距離情報取得部
130…距離区分設定部
140…ウィンドウサイズ設定部
150…スキャン部
160…検出処理部
170…カメラ制御部
200…カメラ
210…撮像部
220…カメラ駆動部
230…距離測定部
300…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に関する撮像対象までの距離情報を取得する距離情報取得部と、
前記距離情報に基づいて、前記入力画像に対して距離区分を設定する距離区分設定部と、
前記距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定するウィンドウサイズ設定部と、
前記距離区分毎に、設定されたサイズの前記探索ウィンドウを用いて前記入力画像のスキャンを行なうスキャン部と、
前記探索ウィンドウ内から検出対象物の検出処理を行なう検出処理部と、を備えたことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項2】
前記距離情報取得部は、前記入力画像の画素毎に距離情報を取得し、
前記距離区分設定部は、前記入力画像を複数のブロックに分割し、ブロック内の画素の距離情報に基づいてブロック単位で距離区分を設定することを特徴とする請求項1に記載の対象物検出装置。
【請求項3】
前記ウィンドウサイズ設定部は、前記入力画像に対する探索ウィンドウのサイズ比を設定し、
前記スキャン部は、前記サイズ比にしたがった大きさの入力画像と探索ウィンドウとを用いて、前記スキャンを行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の対象物検出装置。
【請求項4】
入力画像に関する撮像対象までの距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
前記距離情報に基づいて、前記入力画像に対して距離区分を設定する距離区分設定ステップと、
前記距離区分毎に、探索ウィンドウのサイズを設定するウィンドウサイズ設定ステップと、
前記距離区分毎に、設定されたサイズの前記探索ウィンドウを用いて前記入力画像のスキャンを行ない、前記探索ウィンドウ内から検出対象物の検出処理を行なう検出ステップと、を含むことを特徴とする対象物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185684(P2012−185684A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48448(P2011−48448)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】