説明

導電性エンドレスベルトの製造方法

【課題】樹脂材料の押出成形により導電性エンドレスベルトを製造するにあたり、異物の少ない良好な表面性を得るための技術を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む樹脂材料100を、溶融状態で筒状に押出す押出工程を含む導電性エンドレスベルトの製造方法である。押出工程に先立って、溶融状態の樹脂材料をフィルタに通過させるろ過工程を含み、樹脂材料としてフィラーを含むものを用いるとともに、フィルタとして、目開きがフィラーの最大粒径以上のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性エンドレスベルトの製造方法(以下、単に「ベルト」および「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンター、特にカラープリンター等の各種画像形成装置において、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等として用いられる導電性エンドレスベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
まず、第1には、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行い、感光体上にカラーのトナー像を形成する多重現像方式がある。この方式によれば比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、この方式では階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
【0005】
第2に、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現するタンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
【0006】
図2にタンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光体ドラム1、帯電ロール2、現像ロール3、現像ブレード4、トナー供給ロール5およびクリーニングブレード6で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ(駆動部材)9により循環駆動されて転写搬送ベルト10で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール7および除電ロール8で行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
【0007】
転写搬送ベルト10の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、タンデム型の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
【0008】
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
【0009】
第3に、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
【0010】
前記多重現像方式、タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、かつ装置が特に大型化するようなこともなく、しかも記録媒体種が特に制限されるようなこともない方式として、中間転写方式が提案されている。
【0011】
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、かつタンデム方式のように感光体を1列に並べる必要がないので装置が特に大型化することもなく、しかも記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
【0012】
中間転写方式によりカラー画像の形成を行う装置として、中間転写部材として無端ベルト状の中間転写部材を用いた画像形成装置を図3に例示する。
【0013】
図3中、11はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体11は、一次帯電器12によって帯電され、次いで画像露光13により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光体11上に形成され、更に静電潜像が現像器41により第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光体11上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ(駆動部材)30により循環駆動されて感光体11と接触しながら循環回転する中間転写部材20に転写される。この場合、感光体11から中間転写部材20への転写は、感光体11と中間転写部材20とのニップ部において、中間転写部材20に電源61から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写部材20に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光体11はその表面がクリーニング装置14により清掃され、感光体11の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光体が3回転し、各周回ごとに現像器42〜44を順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光体11上に形成され、これが周回ごとに中間転写部材20に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写部材20上に形成される。なお、図3の装置にあっては、感光体11の周回ごとに現像器41〜44が順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
【0014】
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写部材20に転写ローラ25が当接し、そのニップ部に給紙カセット19から紙等の記録媒体26が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源29から転写ローラ25に印加され、中間転写部材20から記録媒体26上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体26へと転写した後の中間転写部材20は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置35により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0015】
また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせた中間転写方式もある。図4に、無端ベルト状の中間転写部材を用いてカラー画像の形成を行う中間転写方式の画像形成装置を例示する。
【0016】
図示する装置においては、感光体ドラム52a〜52d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部54a〜第4現像部54dが、中間転写部材50に沿って順次配置されており、この中間転写部材50を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部54a〜54dの感光体ドラム52a〜52d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、この中間転写部材50上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体53上に転写することにより、プリントアウトを行う。ここで、上記いずれの装置においても、現像に用いるトナーの配列順は特に制限されるものではなく、任意に選択可能である。
【0017】
なお、図中、符号55は、中間転写部材50を循環駆動するための駆動ローラ若しくはテンションローラを示し、符号56は2次転写ローラ、符号57は記録媒体送り装置、符号58は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。
【0018】
従来より、かかる無端ベルト状の転写搬送ベルト10や中間転写部材20,50等として使用される導電性エンドレスベルトとしては、種々のものが知られている。例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリアミドとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンド、または、これらのうちいずれかとポリアミド系熱可塑性エラストマーとのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドを基材とし、カーボンブラックが添加されてなる導電性エンドレスベルトが開示されている。
【0019】
さらに、特許文献2には、トナー像を保持又は形成する表面における一番高い凸部の高さが40μm以下であり、この凸部の高さの傾斜が20μm/mm以下であるシームレスベルトが開示されており、2つの環状支流路を備える2層ダイ金型においてシームレスベルトを形成する際に、2つの環状支流路へ向かって流れる溶融樹脂を、比較的にミクロなフィルター部材および比較的に粗いフィルター部材をそれぞれ用いて濾過することが記載されている。
【0020】
また、樹脂材料を用いたシームレスベルトの製造方法としては、インフレーション製法やデフレーション製法、遠心注型製法などが知られている。これらのうちデフレーション製法は、樹脂組成物を、筒状に溶融押出した後、マンドレルの外側に接触させて冷却し、収縮させて、最終形状のシームレスベルトを得るものであり、ポリイミド(PI)を用いたベルトに適用される遠心注型製法などに比べて、生産性が良好であるというメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2005−274752号公報(特許第4473614号,特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平11−237795号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記各種転写ベルトとして用いられる導電性エンドレスベルトにおいては、良好な画像性を確保するために、異物、すなわち、微小な突起部のない平滑な表面を有していることが要求される。しかしながら、デフレーション製法を用いて、後加工なしでベルトの成型を行うと、成型されたベルト表面に異物が生ずる場合があり、問題となっていた。これに対し、特許文献3に記載されているような技術もあるが、十分なものではなく、デフレーション製法を用いて、異物のない良好な表面性を有するベルトを製造するための技術の確立が求められていた。
【0023】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、樹脂材料の押出成形により導電性エンドレスベルトを製造するにあたり、異物の少ない良好な表面性を得るための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは鋭意検討した結果、ベルトを構成する樹脂材料中にフィラーを添加するとともに、溶融状態の樹脂材料を、押出前に所定の目開きを有するフィルタに通過させることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を解決するに至った。
【0025】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を、溶融状態で筒状に押出す押出工程を含む導電性エンドレスベルトの製造方法において、
前記押出工程に先立って、前記溶融状態の樹脂材料をフィルタに通過させるろ過工程を含み、該樹脂材料としてフィラーを含むものを用いるとともに、該フィルタとして、目開きが該フィラーの最大粒径以上のものを用いることを特徴とするものである。
【0026】
本発明において、前記フィラーとしては、タルクを好適に用いることができる。また、前記フィラーの配合量は、好適には、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し3〜7質量部の範囲内である。さらに、前記熱可塑性樹脂としては、好適には熱可塑性ポリアミド(PA)を用いる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上記構成としたことにより、樹脂材料の押出成形により、異物の少ない良好な表面性を有する導電性エンドレスベルトを製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の導電性エンドレスベルトの製造方法に係る説明図である。
【図2】画像形成装置の一例としての転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置を示す概略図である。
【図3】画像形成装置の他の例としての中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。
【図4】画像形成装置のさらに他の例としての中間転写部材を用いた他の中間転写装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の導電性エンドレスベルトの製造方法に係る説明図を示す。図示するように、本発明においては、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料100を、金型101を用いて、溶融状態で筒状に押出すことにより、導電性エンドレスベルトを成形する(押出工程)。
【0030】
本発明の製造方法においては、上記樹脂材料としてフィラーを含むものを用いるとともに、上記押出工程に先立って、溶融状態の樹脂材料をフィルタに通過させるろ過工程を含む点が重要である。すなわち、本発明においては、配合面では、樹脂材料にフィラーを添加することで、ベルト表面における異物の発生を抑制することができるとともに、プロセス面では、押出工程に先立って樹脂材料をろ過することで、異物の生ずる原因を除去することができる。よって、これらの相乗効果により、結果として、表面における異物の発生を十分に抑制して、表面性の良好なベルトを得ることが可能となったものである。
【0031】
ベルト表面に生ずる異物の原因は、溶融状態の樹脂材料中に生ずる樹脂成分等の塊であると考えられ、デフレーション製法においては、この塊がベルト内周側からマンドレルに押されてベルト表面方向に流動し、結果として、ベルト表面に異物が発生しやすくなるものと考えられる。これに対し、本発明においては、押出工程に先立つろ過工程により、異物の原因物をあらかじめ樹脂材料中からある程度除去するとともに、樹脂材料中にフィラーを添加することで、異物の原因物がベルト表面に流動することを抑制するものとしたので、ベルト表面における異物の発生を効果的に抑制することが可能となった。ここで、樹脂材料中にフィラーを添加することで、異物の原因物がベルト表面に流動することを抑制できるメカニズムについては明確ではないが、フィラーの添加により、樹脂材料が押出後に固まる際の溶融張力が高まり、異物の原因物との粘度差が小さくなって、異物の原因物がベルト表面側に動きにくくなることによるものとも考えられる。
【0032】
また、本発明においては、フィルタとして、目開きが上記フィラーの最大粒径以上のものを用いる点も重要である。フィルタの目開きが小さいと、異物の低減には効果的である反面、フィルタの目詰まりが生じやすくなって、フィルタ寿命が短くなり、ベルトの生産性を著しく阻害する。本発明においては、目開きがフィラーの最大粒径以上のフィルタを用いることで、フィルタの目詰まりの発生を抑制して、フィルタ寿命を十分に確保することができるので、良好な表面性を有するベルトを、生産性良く製造することが可能となる。
【0033】
本発明において使用可能なフィラーとしては、具体的には例えば、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウムなどを挙げることができ、中でも好適には、タルクを用いる。タルク等のフィラーについては、粉砕、分級により最大粒径を調整することができる。また、かかるフィラーとしては、シランカップリング剤などによる表面処理を施したものを用いてもよい。さらに、かかるフィラーの最大粒径は、好適には25μm以下、より好適には1〜20μm程度である。フィラーの最大粒径が小さすぎると、フィラー添加前のフィラー粒子同士の凝集が強くなりすぎて樹脂中への分散が困難となる現象が発生するために混練が困難となり、大きすぎると、フィラーの凝集塊そのものが異物の核となる現象が発生するので、いずれも好ましくない。
【0034】
樹脂材料中のフィラーの配合量としては、好適には、熱可塑性樹脂100質量部に対し、3〜7質量部の範囲内とする。フィラーを上記範囲内の配合量で添加することにより、異物の発生を効果的に抑制することができる。フィラーの配合量が少なすぎると、異物の発生を抑制する効果が十分に得られないおそれがあり、多すぎると、フィルタ寿命が短くなって生産性が低下してしまう。フィラーは、マスターバッチ化するなどの手法により、樹脂材料中に安定的に供給することができる。
【0035】
また、本発明に用いるフィルタとしては、金属不織布の焼結体からなる焼結メッシュを用いることが好ましい。フィルタは、目詰まりの発生を抑制しつつ、異物の原因物の捕集性を高めるために、通常、目開きの異なる複数層のフィルタの積層体として使用される。かかるフィルタの目開きは、好適には30〜60μmの範囲内とする。フィルタの目開きが小さすぎると、異物の発生は抑制できる反面、フィルタ寿命が短くなって生産性が低下する。一方、フィルタの目開きが大きすぎると、フィルタ寿命は向上する反面、異物の発生を抑制する効果が十分に得られない。ここで、フィルタの目開きは、粒子を通過させた際に90質量%の粒子を捕集できる最小粒径である90%捕集率により定義される。本発明に用いるフィルタは、市場で容易に入手可能であり、具体的には例えば、日本精線(株)製のNF12T等を用いることができる。
【0036】
本発明において樹脂材料に用いる熱可塑性樹脂としては、ベルト材料として公知の樹脂のうちから適宜選択することができ、特に制限されるものではない。具体的には例えば、熱可塑性ポリアミド(PA)(例えば、PA11,PA12,PA6,PA66,PA610,PA612,PA46,芳香族ナイロン(ナイロン6T,9T,MXD6など)等)や、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂等)、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等)等のポリエステル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、熱可塑性ポリアセタール(POM)、熱可塑性ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を挙げることができる。本発明においては、上記のうちでも、熱可塑性PAを用いることが好ましい。一般に、ベルト配合中にフィラーを添加するとベルトの屈曲耐久性が低下する傾向があるが、熱可塑性PAはそれ自体屈曲耐久性に優れているという特徴を有するので、ベルトの樹脂成分として熱可塑性PAを用いることで、フィラーを添加した場合でも、高い屈曲耐久性を保持できるメリットがある。
【0037】
また、本発明に係るベルトには、上記熱可塑性樹脂およびフィラー以外の配合成分として、導電性を調整するための導電剤を1種または2種以上にて、適宜配合することができる。かかる導電剤としては、特に制限されるものではなく、各種カーボンブラック等の公知の電子導電剤や、イオン導電剤等を適宜用いることができる。中でも、本発明においては特に、導電性材料としてカーボンブラックを用いて、これを熱可塑性樹脂100質量部に対し、5〜30質量部にて添加することが好ましい。
【0038】
さらに、本発明に係るベルトには、さらに他の機能性成分として、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
【0039】
本発明の製造方法においては、具体的にはまず、上記熱可塑性樹脂、フィラーおよび他の任意の配合成分を所定の配合比率で混合し、溶融混練して、樹脂材料100を調製する。次いで、得られた溶融状態の樹脂材料100を、目開きがフィラーの最大粒径以上であるフィルタに通過させる(ろ過工程)。この際、フィルタへの通過は、1回のみであってもよく、2回以上、例えば2回にて繰り返して行ってもよい。1回のみでも異物の発生を抑制する効果は得られるが、2回以上とすることで、より抑制効果を向上することができる。但し、フィルタへの通過回数が多すぎても、それ以上の効果は得られず、生産性を低下させるので、好ましくない。
【0040】
次いで、フィルタに通過させた樹脂材料100を、溶融状態で金型101に供給して、環状ダイスを介して筒状に押出す(押出工程)。押出された筒状押出物200は、外気により徐冷されて収縮しながらマンドレル102方向に送られて、その内周面でマンドレル102の外周面に接触して冷却され、これにより、ベルトの周長が決定される。次いで、マンドレル102により冷却された筒状押出物200を所定長さ(幅)に切断することで、導電性エンドレスベルトを得ることができる。
【0041】
本発明のベルトの製造方法においては、樹脂材料としてフィラーを含むものを用いるとともに、樹脂材料の押出工程に先立って、溶融状態の樹脂材料を上記所定のフィルタに通過させるろ過工程を行う点のみが重要であり、これにより本発明の所期の効果を得ることができる。本発明においては、樹脂材料の押出しに用いる金型の具体的構造や樹脂材料の具体的配合、押出条件、ろ過条件の他、押出工程およびろ過工程以外のベルトの製造工程等については、常法に従い適宜選定して実施することができ、特に制限されるものではない。
【0042】
本発明の製造方法により得られるベルトは、前述したように、タンデム方式および中間転写方式の転写部材等として用いることができるものである。本発明に係るベルトが、例えば、図2に参照符号10で示す転写搬送ベルトの場合、駆動ローラ9等の駆動部材により駆動され、これに伴い搬送される記録媒体上にトナーが順次転写され、カラー画像が形成される。
【0043】
また、本発明に係るベルトが、例えば、図3に参照符号20で示す中間転写部材の場合、これを駆動ローラ30等の駆動部材により循環駆動させ、感光体ドラム(潜像保持体)11と紙等の記録媒体26との間に配設することで、前記感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体26へと転写する。なお、図3の装置は、上述したように、中間転写方式によりカラー印刷を行うものである。
【0044】
さらに、本発明に係るベルトが、例えば、図4に参照符号50で示す中間転写部材の場合、感光体ドラム52a〜52dを備える現像部54a〜54dと紙等の記録媒体53との間に配設されて、駆動ローラ55等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム52a〜52dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体53へと転写することで、カラー画像を形成する。なお、上記ではトナーが4色の場合について説明しているが、いずれの装置においても、トナーの色数が4色に限られないことは言うまでもない。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表中に示す配合に従い、熱可塑性樹脂、フィラーおよび他の配合成分を所定の配合比率で混合し、温度200℃で溶融混練して、樹脂材料を調製した。次いで、得られた溶融状態の樹脂材料を、下記表中に示す目開きを有するフィルタに、ポンプの前後で2回通過させた。
【0046】
次いで、フィルタに通過させた樹脂材料を、溶融状態で金型に供給して、押出時の温度250℃にて、環状ダイスを介して筒状に押出した。押出された筒状押出物を、その内周面で、表面温度70℃のマンドレルの外周面に接触させて冷却した後、所定長さ(幅)に切断することで、各実施例および比較例の導電性エンドレスベルトを得た。
【0047】
<フィルタライフ(生産性)評価>
各実施例および比較例の条件下で連続してベルト製造を行った際に、フィルタの目詰まりが生ずるまでの時間を計測して、フィルタライフを評価した。結果は、フィルタの目詰まりが生ずるまでの時間が8時間以上であった場合を○、2時間を超え8時間未満であった場合を△とした。
【0048】
<ベルト表面性評価>
各実施例および比較例で得られたベルトにつき、ベルト表面の異物の数を計測して、3枚のベルトの平均値を求めることにより、異物の有無を評価した。結果は、高さ20μm以上の異物の個数が2個以下であった場合を○、2個を超え10個未満であった場合を△、10個以上であった場合を×とした。
【0049】
<転写性評価>
各実施例および比較例で得られたベルトを、それぞれ転写ベルトとして市販のプリンタに組み込んで、10℃15%RHの低温低湿環境下にて50K(5万)枚の画像出しを行い、耐久性を評価した。具体的には、リークなどの局所的な抵抗変動による異常画像の発生の有無を確認して、異常画像が発生しなかった場合を○、発生した場合を×とした。
【0050】
<総合評価>
各実施例および比較例で得られたベルトの総合評価として、フィルタライフ、ベルト表面性および転写性のすべてが○の場合を◎、フィルタライフは○だが他2項目のうちに△が含まれる場合を○、フィルタライフは○だが他2項目のうちに×が含まれる場合、および、フィルタライフが△または×の場合を×とした。
これらの評価結果を、下記の表中に併せて示す。
【0051】
【表1】

*1)PA12:宇部興産(株)製 3024U(融点178℃)
*2)カーボンブラック:電気化学工業(株)製 デンカブラック粒状
*3)タルク:浅田製粉(株)製 FFR
*4)タルク:浅田製粉(株)製 MMR
*5)タルク:浅田製粉(株)製 JA−13R
*6)タルク:浅田製粉(株)製 HT−100B(シランカップリング剤表面処理)
*7)フィルタ:日本精線(株)製 NF12T
*8)フィルタ:日本精線(株)製 NF14T
【0052】
上記表中に示すように、本発明の条件を満足する各実施例においては、異物の少ない良好な表面性を有するベルトを、生産性を損なうことなく製造できることが明らかである。
【符号の説明】
【0053】
1、11、52a〜52d 感光体ドラム
2、7 帯電ロール
3 現像ロール
4 現像ブレード
5 トナー供給ロール
6 クリーニングブレード
8 除電ロール
9、30、55 駆動ローラ(駆動部材)
10 転写搬送ベルト
12 一次帯電器
13 画像露光
14、35 クリーニング装置
19 給紙カセット
20、50 中間転写部材
25 転写ローラ
26、53 記録媒体
29、61 電源
41、42、43、44 現像器
54a〜54d 第1現像部〜第4現像部
56 記録媒体送りローラ
57 記録媒体送り装置
58 定着装置
100 樹脂材料
101 金型
102 マンドレル
200 筒状押出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を、溶融状態で筒状に押出す押出工程を含む導電性エンドレスベルトの製造方法において、
前記押出工程に先立って、前記溶融状態の樹脂材料をフィルタに通過させるろ過工程を含み、該樹脂材料としてフィラーを含むものを用いるとともに、該フィルタとして、目開きが該フィラーの最大粒径以上のものを用いることを特徴とする導電性エンドレスベルトの製造方法。
【請求項2】
前記フィラーとしてタルクを用いる請求項1記載の導電性エンドレスベルトの製造方法。
【請求項3】
前記フィラーの配合量を、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し3〜7質量部の範囲内とする請求項1または2記載の導電性エンドレスベルトの製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリアミドである請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67021(P2013−67021A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205118(P2011−205118)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】