説明

導電性ペースト組成物及びそのペースト組成物を用いた太陽電池セル、並びにそのセルを用いた太陽電池モジュール

【課題】高い導電性と良好な密着性を備えるとともに耐熱性と耐湿性に優れた電極を形成することのできる導電性ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】シリコーン樹脂と、導電性粉末と、熱硬化性成分と、硬化剤と、溶剤とを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペースト組成物に関し、より詳しくは、電極または電気配線の形成に使用される導電性ペースト組成物であって、フィルム、基板、電子部品等の基材に塗布または印刷して塗膜を形成し、これを加熱硬化させることにより、優れた接着性と導電性を備えるとともに電気信頼性の良好な電極を形成することのできる導電性ペースト組成物、およびその導電性ペースト組成物を集電電極に用いた太陽電池セル、並びにその太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱硬化型導電性ペーストを、フィルムや基板や電子部品等の基材に塗布または印刷し、加熱して乾燥硬化させることにより、電極や電気配線等を形成するという方法は、従来から広く用いられている。しかし、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される電極や電気配線等には、より低抵抗でより信頼性が高いことが要求され、その要求は年々厳しくなっている。また、高温処理により特性が劣化するような電子部品等に導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、例えば、導電性ペーストを用いてアモルファスシリコン層を有する太陽電池の集電電極を形成する場合、銀などの導電性金属粉末とエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する導電性ペーストを電子部品等に印刷し、これを比較的低温で加熱硬化する方法が行われているが、ペーストの密着性と導電性が変換効率に与える影響が大きいことから、より変換効率を上げるために、密着性に優れ且つより低抵抗であることが要求されている。
【0003】
このような要求に応えるべく、低抵抗と電子部品等への良好な密着性を企図した導電性ペーストとして、次に説明するものが提案されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、銀粉末と、加熱硬化性成分としてブロック化ポリイソシアネート化合物とエポキシ樹脂と硬化剤を含有する導電性ペースト組成物が開示されており、ブロック化ポリイソシアネート化合物の硬化収縮によって銀粉末どうしを密に接触させて低抵抗化し、エポキシ樹脂により高密着性を得るという方法が提案されている。
【0005】
特許文献2には、銀粉末と、加熱硬化性成分として分子量が900以上のエポキシ樹脂とそのエポキシ樹脂の硬化に最低限必要な添加量の2倍以上のイミダゾール系硬化剤を含有する導電ペーストが開示されており、分子量900以上のエポキシ樹脂の緩やかな硬化により半田付け性を確保し、エポキシ樹脂の硬化に十分な量のイミダゾール系硬化剤を含有するので所定の端子引張強度を確保しうるという方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、リン片状のニッケル、モリブデンおよび/またはグラファイトであるオーミック性導電粒子、ならびにリン片状の銀粒子またはリン片状の銀粒子と銀粉との混合物を含み、シリコーン系またはフッ素樹脂系の熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた導電ペーストにより、オーミック性接触を有し、変換効率の変化が小さい太陽電池の電極を形成するという方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−161123号公報
【特許文献2】特開平8−92506号公報
【特許文献3】特開平7−15022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から、導電性ペーストで形成した電極の信頼性を向上させるための方法として、電極の金メッキ処理、電極への封止樹脂のコーティング等の処理が行われている。
【0008】
この点で、特許文献1に記載された導電性ペーストは、ブロック化ポリイソシアネート化合物の加熱硬化時の収縮によって銀粉末どうしを密に接触させようとするものであるが、その加熱硬化により生成するウレタン化合物は湿分により劣化して密着性が低下する可能性があるので、必ずしも十分な信頼性を備えているとは言えない。
【0009】
また、特許文献2に記載された導電ペーストは、樹脂成分として分子量900以上のエポキシ樹脂を使用することで緩やかな硬化により半田付け性を改善しようとするものであるが、分子量900以上のエポキシ樹脂であっても、エポキシ当量が500〜1000のエポキシ樹脂を使用すると、熱硬化時のペーストの収縮により発生した内部応力が原因で、そのペーストからなる電極が基材から剥がれることがある。
【0010】
さらに、特許文献3には、得られる電極の比抵抗は50×10-6Ω・cm以上であることが記載されており、これでは十分な導電性を備えているとは言えない。
【0011】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い導電性と良好な密着性を備えるとともに耐熱性と耐湿性に優れた高い信頼性を有する電極を形成することのできる導電性ペースト組成物、およびそのペースト組成物を用いた太陽電池セル、並びにそのセルを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の導電性ペースト組成物は、シリコーン樹脂と、導電性粉末と、熱硬化性成分と、硬化剤と、溶剤とを含有することを特徴としている。
【0013】
熱硬化性成分のシリコーン樹脂成分に対する重量混合比率は、80/20≦(熱硬化性成分/シリコーン樹脂成分)≦99.5/0.5であることが好ましい。
【0014】
熱硬化性成分中にエポキシ当量が1000以下のエポキシ樹脂(A成分)と、エポキシ当量が1500以上のエポキシ樹脂(B成分)またはブロック化ポリイソシアネート化合物(C成分)を含み、A成分とB成分を含む場合は、A成分のB成分に対する重量混合比率は、30/70≦(A成分/B成分)≦90/10であり、A成分とC成分を含む場合は、A成分のC成分に対する重量混合比率は、30/70≦(A成分/C成分)≦90/10であることが好ましい。
【0015】
上記導電性ペースト組成物を太陽電池セルの集電電極に用いることが好ましい。また、係る太陽電池セルを太陽電池モジュールに用いることが好ましい。
【0016】
そして、集電電極の下地層として透明導電層を有することが好ましい。
【0017】
本発明におけるエポキシ当量は、JIS−K−7236に従って求めることができる。エポキシ当量の単位は、[g/eq]である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、シロキサン結合による耐熱性と有機基(主としてメチル基)による撥水性とを備えたシリコーン樹脂を成分として含有することにより、耐熱性と耐湿性に優れた導電性ペースト組成物を提供することができる。さらに、熱硬化性成分とシリコーン樹脂成分を巧みな比率で配合することにより、硬化収縮の際に発生して残存する内部応力が緩和されるという効果が期待できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、上記効果を最大限に享受することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、低エポキシ当量のエポキシ樹脂と高エポキシ当量のエポキシ樹脂または低エポキシ当量のエポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を巧みな比率で配合した熱硬化性成分を含有することにより、上記効果に加えて高い導電性と良好な密着性を備えた導電性ペースト組成物を提供することができる。
【0021】
請求項4、5記載の発明によれば、上記効果を備えた太陽電池セルを提供することができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、上記効果を備えた太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
(1)シリコーン樹脂
本発明に用いるシリコーン樹脂としては、一般に用いられているものが使用可能である。例えば、メチル系やメチルフェニル系のようなストレートシリコーン樹脂や、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂などで変性した変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
【0024】
シリコーン樹脂と熱硬化性成分の重量混合比率は、両者の合計を100重量部とした場合、シリコーン樹脂が20重量部超で熱硬化性成分が80重量部未満であると、以下のような不都合がある。すなわち、印刷時にニジミが生じて、微細な配線を形成する必要のある場合に線幅のコントロールが困難になる。例えば、太陽電池セルに用いる場合、ニジミが大きいと受光面積が減少し、変換効率の向上が妨げられる。また、内部応力の緩和効果は得られるものの、熱硬化性成分の占める割合が少なくなるので優れた接着性が得られなくなるという不都合がある。一方、シリコーン樹脂が0.5重量部未満で熱硬化性成分が99.5重量部超であると、耐熱性と耐湿性および内部応力の緩和に対する優れた効果が得られなくなるという不都合がある。そこで、熱硬化性成分のシリコーン樹脂成分に対する重量混合比率は、80/20≦(熱硬化性成分/シリコーン樹脂成分)≦99.5/0.5であるのが好ましい。
(2)導電性粉末
本発明に用いる導電性粉末としては、導電性を有するものであれば、一般に用いられているものを使用することができる。例えば、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、カーボン等の粉末を挙げることができる。
【0025】
導電性粉末として銀粉末を用いる場合、フレーク状(薄片状)銀粉末と球状銀粉末の両者を使用し、フレーク状銀粉末の平均粒径は3〜20μm、球状銀粉末の平均粒径は0.1〜5μmの範囲であるのが好ましい。
【0026】
フレーク状銀粉末のみを使用した場合、銀粉末間の接触面積を大きくすることができるので、高い導電性を期待することができる。しかし、フレーク状銀粉末の製造過程で使用される滑剤による接着性および導電性の低下を避けることができない。また、フレーク状銀粉末の形状に起因して硬化物の厚みを大きくすることが困難で、電気配線を形成した際に配線の抵抗値が期待したほど低くならないことがある。そこで、これらの欠点を改善するために、球状銀粉末を併用するのが好ましい。一方、球状銀粉末のみを使用した場合、フレーク状銀粉末に比して銀粉末間の接触面積が小さいため、比抵抗が上昇するという不都合がある。
【0027】
本発明において、球状とは、部分的に凹凸があり、変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状を含む意である。また、フレーク状とは、部分的に凹凸があり、変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体を含む意である。そして、平均粒径とは、球状銀粉末においては、球状の長径と短径の算術平均値をマイクロトラック式粒度分布測定法で測定した場合における50%累積値をいい、フレーク状銀粉末においては、フレークの長径と短径をマイクロトラック式粒度分布測定法で測定した場合における50%累積値をいう。
【0028】
フレーク状銀粉末の平均粒径が3μmより小さいと、粘度が高くなり、ペースト化が困難となるので好ましくない。一方、フレーク状銀粉末の平均粒径が20μmより大きいと、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、スクリーンの目詰まりが起こったり、微細配線の形成が困難となるので好ましくない。
【0029】
球状銀粉末の平均粒径が0.1μmより小さいと、高粘度化により、ペースト化が困難となるので好ましくない。一方、球状銀粉末の平均粒径が5μmより大きいと、フレーク状銀粉末の場合と同様に、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、スクリーンの目詰まりが起こったり、微細配線の形成が困難となるので好ましくない。
【0030】
フレーク状銀粉末および球状銀粉末の重量混合比率は、両者の合計が100重量部で、フレーク状銀粉末が20〜80重量部、球状銀粉末が80〜20重量部であるのが好ましい。フレーク状銀粉末および球状銀粉末の混合比率が上記範囲外であると、両者を併用したことによる導電性を向上させる効果が十分に得られず、また、フィルム、基板、電子部品等の基材への優れた接着性が得られなくなるので好ましくない。
【0031】
固形分中における銀粉末の比率は、90〜95重量%であるのが好ましい。銀粉末が90重量%未満である場合、銀粉末の接触密度が小さく(銀粉末同士の接触不良により)、導電性が不充分となる。一方、銀粉末が95重量%より多くなると、樹脂による銀粉末の均一な分散ができずに、基材に一様に印刷または塗布できる粘度とはならず、カスレたり、不均一な導体が形成される。
【0032】
本発明の導電性ペースト組成物においては、必要に応じて、フレーク状銀粉末および球状銀粉末以外の銀粉末、例えば、樹脂状銀粉末や、銀以外の導電性粉末、例えば、銅粉末等を加えることも可能である。
(3)熱硬化性成分
固形分中において、熱硬化性成分とシリコーン樹脂を合わせた比率は5〜10重量%であるのが好ましい。熱硬化性成分とシリコーン樹脂を合わせた比率が5重量%より少なくなると、得られる硬化膜の接着性が低くなるので好ましくない。一方、熱硬化性成分とシリコーン樹脂を合わせた比率が10重量%より多くなると、得られる硬化膜の導電性が低くなるので好ましくない。
【0033】
本発明に用いる熱硬化性成分としては、エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0034】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ樹脂を有する多価エポキシ樹脂であれば、一般に用いられているものが使用可能である。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシル化合物とエピクロルヒドリンまたは2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族および脂環式エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
【0035】
熱硬化性成分としてエポキシ樹脂のみを用いる場合、エポキシ当量が1000以下のエポキシ樹脂(A成分)と、エポキシ当量が1500以上のエポキシ樹脂(B成分)の重量混合比率は、両者の合計を100重量部とすると、A成分が30重量部でB成分が70重量部である比率から、A成分が90重量部でB成分が10重量部である比率の範囲に含まれるものが好ましい。A成分が30重量部未満であると(B成分が70重量部を超えると)、熱硬化時の収縮量が少なく、残存する内部応力が小さいので、基材から剥離しにくいが、B成分の粘性に起因する印刷時のニジミが生じて、微細な配線を形成する必要のある場合に線幅のコントロールが困難になる。さらに、収縮量が少ないことに起因して導電性粉末同士の接触部分が少なくなり、比抵抗が高くなるので、好ましくない。一方、A成分が90重量部を超えると(B成分が10重量部未満であると)、熱硬化時の収縮により発生した内部応力が残存し、基材から剥がれたり、剥離部分から水分が浸透し、耐湿試験後の電極の密着性や電極特性が劣化するので好ましくない。
【0036】
以上に述べた理由により、A成分が50重量部でB成分が50重量部である比率から、A成分が80重量部でB成分が20重量部である比率の範囲に含まれるものがより好ましい。なお、エポキシ当量が100未満であると、塗膜の耐熱性や耐久性等が不充分となり、4000を超えると、ペーストの流動性に欠け、一様な厚みの塗膜が得られないという不都合がある。そこで、エポキシ樹脂のエポキシ当量は100以上であって、且つ4000以下であるのが好ましい。
【0037】
本発明に用いるブロック化ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物のうち、その成分中に3核体以上のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含む場合に、より低抵抗となる。
【0038】
また、ポリイソシアネートとポリオールを公知の方法により反応させて合成した末端イソシアネート基含有化合物も、本発明におけるポリイソシアネート化合物として用いることができる。この場合のポリオールについては特に限定はなく、一般的なポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等が使用できる。ポリイソシアネート化合物のブロック化剤についても特に限定はなく、イミダゾール類、フェノール類、オキシム類等を使用することができる。
【0039】
熱硬化性成分としてエポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を用いる場合、エポキシ当量が1000以下のエポキシ樹脂(A成分)と、ブロック化ポリイソシアネート化合物(C成分)の重量混合比率は、両者の合計を100重量部とすると、A成分が30重量部でC成分が70重量部である比率から、A成分が90重量部でC成分が10重量部である比率の範囲に含まれるものが好ましい。A成分が30重量部未満であると(C成分が70重量部を超えると)、得られる硬化膜の強度と接着性が低下するので好ましくない。一方、A成分が90重量部を超えると(C成分が10重量部未満であると)、ブロック化ポリイソシアネート化合物の硬化収縮による導電性粉末間の接触を促進させる効果が小さくなり、導電性が低下するので好ましくない。
【0040】
以上に述べた理由により、A成分が50重量部でC成分が50重量部である比率から、A成分が80重量部でC成分が20重量部である比率の範囲に含まれるものがより好ましい。
(4)硬化剤
本発明に用いる硬化剤としては、一般的に用いられているイミダゾール類、三級アミン、フッ化ホウ素を含むルイス酸及びそれらの錯体または塩が使用可能である。
(5)溶剤
本発明に用いる溶剤としては特に限定はしないが、印刷等で塗布する場合は、高沸点溶媒であるエチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール等を用いることができる。
(6)透明導電層
集電電極の下地層である透明導電層を形成する透明導電膜としては、インジウム・スズ混合酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化カドミウムなどの金属酸化物、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロムなどの金属、導電性高分子などの導電性薄膜を用いることができる。中でも、透明性、比抵抗などの諸特性を考慮した場合、ITOを好ましく用いることができる。ITO膜などの金属酸化物薄膜、金属薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、コーティング法、スプレイ法など公知の方法を用いることができる。成膜時の基板温度は、透明性、低抵抗化、接着性、耐熱性、耐薬品性を考慮し、ペースト組成によって適宜選択される。また、ITOの組成比は、透明導電膜として要求される、表面抵抗値、比抵抗、透明性等によって決定されるが、低抵抗化と透明性の観点から、SnO2の含有量を5重量%以下とするのが好ましい。透明導電膜の膜厚は、特に限定されないが、導電性と成膜時間の観点から、150〜5000Åの範囲から適宜選択されることが好ましい。
(7)導電性ペースト組成物の加熱硬化
本発明の導電性ペースト組成物は、フィルムや基板や電子部品等の基材に塗布または印刷し、150〜250℃で加熱硬化するのが好ましい。150℃より低温の場合は硬化が不充分であり、250℃より高温の場合は反応による急激な発熱により樹脂の酸化分解や基材からの電極の剥離が起こるので好ましくない。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
(1)導電性ペースト組成物の作製
銀粉末、エポキシ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、シリコーン樹脂、硬化剤および溶剤を表1に示す割合(重量部)で配合し、3本ロールミルで混練してペースト化することにより、実施例1〜5および比較例1と2の導電性ペースト組成物を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
表1における各配合成分としては、以下のものを用いた。
【0044】
銀粉末として、平均粒径が10.3μmのフレーク状銀粉末と平均粒径が1.2μmの球状銀粉末を重量比で1対1で混合したものを用いた。
【0045】
エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製のエピコート802(エポキシ樹脂a)とエピコート1007(エポキシ樹脂b))
ブロック化ポリイソシアネート化合物として、ポリメリックメタンジイソシアネートとポリエステルポリオールとを公知の方法で反応させ、合成した末端イソシアネート基含有化合物をメチルエチルケトオキシムでブロック化した化合物を用いた。
【0046】
シリコーン樹脂として、ストレートシリコーン樹脂を用いた。
【0047】
硬化剤として、2−エチル4−メチルイミダゾール、および三フッ化ホウ素モノエチルアミンを用いた。
【0048】
溶剤として、ブチルカルビトールアセテートを用いた。
(2)特性評価用サンプルの作製
a.比抵抗と密着性の評価用サンプル
表1の配合により得られた各実施例および比較例のペーストを用いて、以下のようにして比抵抗と密着性の評価用サンプルを作製した。ソーダライムガラス基板(後記する番号20参照)上に、表1の各配合の導電性ペーストを用いて、図3に示すように、アスペクト比75のパターン16と、5つの2mm×2mmの大きさのパッド17を印刷した。図3において、18と19は正方形の枕電極で、枕電極18から枕電極19に至る線長は37.5mmで、その線幅Lは一定で500μm、線間隔S1は500μm、線間隔S2は750μmである。従って、アスペクト比は、37.5mm/0.5mm=75となる。
【0049】
次に、図4に示すように、ガラス基板20に印刷したパッド17の上に直径4mmのアルミリベット21を載せた。そして、アルミリベット21を載せたガラス基板20を180℃の熱風乾燥機中で60分間加熱し、導電性ペーストを硬化させた。このようにして、比抵抗と密着性の評価用サンプルを得た。
b.太陽電池セルのセル特性と太陽電池モジュールの耐湿性評価用サンプル
表1の配合により得られた各実施例および比較例のペーストを用いて、太陽電池セル及び太陽電池モジュールを作製した。すなわち、太陽電池セル1として、図1に示すように、単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面の特性を改良した構造(HIT構造)の太陽電池セルを作製した。すなわち、図1に示すように、表面に数μm〜10μm程度の高さを有するピラミッド状の凹凸を設けた約300μmの厚みのn型単結晶シリコン基板2の上面に50Åの厚みのi型アモルファスシリコン層3と50Åの厚みのp型アモルファスシリコン層4をRFプラズマCVD法で形成し、n型単結晶シリコン基板2の下面に50Åの厚みのi型アモルファスシリコン層7と50Åの厚みのn型アモルファスシリコン層8をRFプラズマCVD法で形成し、さらに、p型アモルファスシリコン層4およびn型アモルファスシリコン層8の各々の上に、1000Åの厚みのITOの透明導電膜5と9をマグネトロンスパッタリング法により形成した。その後、透明導電膜5、9それぞれの上に表1の各配合の導電性ペースト組成物6と10をスクリーン印刷法で印刷し、180℃で1時間熱硬化させることにより集電電極とした。
【0050】
RFプラズマCVD法によるアモルファスシリコン層の具体的な形成条件は、周波数が約13.56MHz、形成温度が約170℃、反応圧力が約40Pa、RF出力は約8.33mW/cm2である。また、マグネトロンスパッタリング法によるITO膜の具体的な形成条件は、形成温度が約100℃、Arガス流量が約200sccm、O2ガス流量が約11sccm、出力が約1kW、磁場強度が約1500Gaussである。
【0051】
以上のようにして得られた複数の太陽電池セル1に対して、図2に示すように、Sn−Ag−Cu系の鉛フリー半田を表面にコーティングした銅箔からなるタブ12を加熱することにより集電極6にタブ12を直列接続し、所定の電圧が得られるようにした。次に、表面保護ガラス14の上にエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)からなる充填材13を載せた後、タブ12により接続された複数の太陽電池セル1を載せ、さらにその上に、EVAからなる充填材13を載せた後、ポリエチレンテレフタレート(PET)/アルミニウム箔/PETの3層構造を有する裏面保護材15を載せ、加熱しながら加圧することによって、表面保護ガラス14、充填材13、タブ12により接続された複数の太陽電池セル1および裏面保護材15を一体化し、太陽電池モジュール11を作製した。
(3)特性の評価方法
上記のようにして作製したサンプルについて、次に説明するような方法で、比抵抗と、耐湿試験後の密着性と、太陽電池のセル特性と、太陽電池モジュールの耐湿性について評価した。
(比抵抗)
ガラス基板20上の硬化後の印刷パターン16の膜厚を測定し、さらに、印刷パターン16の両端部の枕電極18と19に端子を接して電気抵抗を測定し、それら膜厚と電気抵抗とアスペクト比に基づいて比抵抗を算出した。この比抵抗が15×10-6Ω・cm以下のものが良好な導電性を備えていると言える。この比抵抗の数値を表1に示す。
(耐湿試験後の密着性)
まず、初期値として、図4の矢印22に示すように、評価用サンプルのパッド17上に実装した直径4mmのアルミリベット21を水平方向に引っ張り、パッド17からアルミリベット21が外れるときの応力(初期応力)を測定した。
【0052】
別途、上記のようにして作製した評価用サンプルを温度が85℃で相対湿度が85%の恒温恒湿槽に1000時間放置し、その耐湿試験後のサンプルについて同上方法でアルミリベットがパッド17から外れるときの応力を測定し、初期応力を100とした相対的な数値を表1に示す。この相対値が90以上のものが良好な密着性を備えていると言える。
(太陽電池のセル特性)
上記のようにして作製した太陽電池セルのサンプルについて、JIS−C−8913に基づいてセル特性を評価した。Pmax(最大出力)について、比較例1を100とした相対的な数値を表1に示す。
(太陽電池モジュールの耐湿性)
上記のようにして作製した太陽電池モジュールのサンプルを、JIS−C−8917に従い、温度が85℃で相対湿度が85%の恒温恒湿槽に1000時間放置した後にモジュール出力を測定した。初期のモジュール出力に対する比率を表1に示す。ただし、このテストでは、耐湿性を厳しく評価するため、透湿度の高いポリビニルホルマールフィルム(厚み38μm)を用い、モジュール中に浸入する水分を大幅に増やした構造とした。そのため、市販されている太陽電池モジュールに比べて、やや出力は低くなった。
(4)特性の評価結果
比較例1と2は、エポキシ当量が1000以下(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を本発明の範囲内の適正な比率で配合しているが、これらの熱硬化性成分にシリコーン樹脂を配合していないため、耐湿試験後の密着性の数値が90より小さい。また、通常より大幅に水分を浸入しやすい状態にした太陽電池モジュールでの耐湿性のテストにも関わらず、シリコーン樹脂を配合した実施例1〜5では、92.0以上を示しているのに対して、シリコーン樹脂を配合していない比較例1、2ではそれぞれ75.0、84.0しか出ていない。
【0053】
一方、実施例1〜4は、エポキシ当量1000以下のエポキシ樹脂とエポキシ当量1500以上のエポキシ樹脂を本発明の範囲内の適正な比率で配合し、実施例5は、エポキシ当量1000以下のエポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物を本発明の範囲内の適正な比率で配合し、さらに、それら実施例1〜5は、熱硬化性成分とシリコーン樹脂を本発明の範囲内の適正な比率で配合したものであるから、高い導電性と良好な密着性を備えるとともに耐湿性に優れた電極を形成することができる。しかも、実施例1〜5のセル特性は比較例1および2と同程度である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の導電性ペースト組成物は、特に、高温処理により特性が劣化するような電子部品等の電極で、高い耐湿性が要求されるもの、例えば、アモルファスシリコン層を有する太陽電池の集電電極形成用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の導電性ペースト組成物を集電電極に用いた太陽電池セルの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の導電性ペースト組成物の特性評価用印刷パターンを示す平面図である。
【図4】特性評価用印刷パターンのパッド上にアルミナリベットを装着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 太陽電池セル
2 n型単結晶シリコン基板
3 i型アモルファスシリコン層
4 p型アモルファスシリコン層
5 透明導電膜
6 導電性ペースト組成物(集電電極)
7 i型アモルファスシリコン層
8 n型アモルファスシリコン層
9 透明導電膜
10 導電性ペースト組成物(集電電極)
11 太陽電池モジュール
12 タブ
13 充填材
14 表面保護ガラス
15 裏面保護材
16 印刷パターン
17 パッド
18 枕電極
19 枕電極
20 ガラス基板
21 アルミリベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂と、導電性粉末と、熱硬化性成分と、硬化剤と、溶剤とを含有することを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項2】
熱硬化性成分のシリコーン樹脂成分に対する重量混合比率は、80/20≦(熱硬化性成分/シリコーン樹脂成分)≦99.5/0.5であることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト組成物
【請求項3】
熱硬化性成分中にエポキシ当量が1000以下のエポキシ樹脂(A成分)と、エポキシ当量が1500以上のエポキシ樹脂(B成分)またはブロック化ポリイソシアネート化合物(C成分)を含み、
A成分とB成分を含む場合は、A成分のB成分に対する重量混合比率は、30/70≦(A成分/B成分)≦90/10であり、
A成分とC成分を含む場合は、A成分のC成分に対する重量混合比率は、30/70≦(A成分/C成分)≦90/10であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の導電性ペースト組成物を集電電極に用いた太陽電池セル。
【請求項5】
集電電極の下地層として透明導電層を有することを特徴とする請求項4記載の太陽電池セル。
【請求項6】
請求項4または5記載の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−224191(P2007−224191A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48149(P2006−48149)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】