説明

導電性ローラおよびその製造方法

【課題】端面或いはテーパー面からのリークによる画像不良等がない高精度な導電性ローラと、それを低コストに製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの導電性弾性体層を備え、最外層の導電性弾性体層のローラ端面或いはテーパー面の表面抵抗が、被当接部材に圧接して使用されるローラ面の表面抵抗に比べて高いことを特徴とする導電性ローラ、並びに、ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する工程と、該芯金上の未加硫ゴム組成物を圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程とを有する導電性ローラの製造方法において、該圧接部材が、ローラ長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ、或いは搬送ローラ、定着ローラ等の導電性ローラ、中間転写体等に用いる導電性ローラと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真の帯電・転写プロセスにおいて、接触帯電および接触転写の手法が多く研究されている。図1は、接触帯電手段および接触転写手段を有する電子写真装置の構成を模式的に示す図である。1は被帯電体としての像担持体であり、アルミニウムなどの導電性の支持体とその外周面に少なくとも光導電層を有するドラム型の電子写真プロセスに用いられる感光体である。2はこの感光体に接し、感光体面を所定の電位に一様に帯電させる帯電部材であり、本例はローラ形状のもの(以下、帯電ローラとする)を示す。
【0003】
この帯電ローラは、少なくとも中心部の芯金と、その外周面に弾性体の層を有する。この帯電ローラはバネ等の圧接手段(不図示)で感光体1に所定の圧接力をもって圧接され、感光体1の回転にともない従動回転する。また、この芯金部に直流+交流(または、直流のみ)バイアスを印加することで感光体1を所定の電位に接触帯電する。つまり、良好なコピー画像を得るために、帯電部材2には、感光体1との均一な接触状態と、導電性が必要になる。帯電部材2で所定の電位に帯電された感光体1の表面が、レーザー、LED等の露光手段(不図示)から出力される露光光3によって画像情報を露光されることによって、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0004】
次いで、その潜像を現像手段4によってトナー画像として可視像化する。このトナー画像は、転写部材5によって転写材6の裏面側からトナーと逆極性の帯電を行うことで感光体1の表面のトナー画像が転写材6の表面側に転写される。トナー画像の転写を受けた転写材6は感光体1から分離され、定着部材7によって熱、圧力で固着される。また、像転写後の感光体1の表面はクリーニング部材8で転写時における残留トナー等の付着物の除去を受けて清浄面化され、くり返し作像に供される。図1中、9はトナー、10は回転軸である。
【0005】
こうした帯電、転写、現像部材等に用いられるローラは、少なくとも両端において回転可能に支持される芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性体層によって構成される導電性ローラである。また、抵抗・表面性等を調整する目的で、上記弾性体層の上に表面層を設けて用いられることもある。
【0006】
一つ以上の層を持つローラにおいて、芯金の上に設けられる導電性弾性体層は外周部に設けられる層に給電するために、低抵抗にすることが多く行われている。また、芯金の上に導電性弾性体層だけを設けて使用する場合には、表面性・抵抗などを調整するために、表面処理をすることが行われる。
【0007】
ここで、導電性弾性体層を低抵抗とした場合に、端面が高抵抗層などで被覆されず、露出している場合などで、印加電圧によっては感光体などの被当接部材の表面へ端面から高抵抗層を通さずに直接放電(リーク)が発生し、画像不良となる場合がある。
【0008】
特に、感光体に圧接して使用されるローラであると、使用している途中にローラ端部で感光体が削れ、低抵抗部ができてしまった場合などに特に顕著に端面からリークが生じる。
【0009】
これに対し、端面を高抵抗層などで覆ったりすることが知られているが(例えば、特許文献1参照。)、抵抗層を設けるのにコストがかかったり、高抵抗層の製造法によっては端面に液溜まりなどが生じ好ましくない場合がある。
【0010】
また、端面とローラ面の境界を面取り形状にし、高抵抗層で被覆することも知られており、面取り形状に端部を形成する場合には、型で成形する場合や、研磨での加工が行われている。
【0011】
しかし、端面の形状を作成する場合、型などでは、ばりやパーティングラインが発生して画像に対して影響を及ぼす可能性があり、また研磨では表面粗さが粗い等の課題が発生する場合がある。
【特許文献1】特開平1−179959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は以上の課題を鑑み、端面或いはテーパー面からのリークによる画像不良等がない高精度な導電性ローラと、それを低コストで製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0014】
1.少なくとも一つの導電性弾性体層を備え、最外層の導電性弾性体層のローラ端面或いはテーパー面の表面抵抗が、被当接部材に圧接して使用されるローラ面の表面抵抗に比べて高いことを特徴とする導電性ローラ。
【0015】
2.前記最外層の導電性弾性体層の外周のうち前記被当接部材と接触する面が、少なくとも一層の表面層でさらに被覆されていることを特徴とする上記1の導電性ローラ。
【0016】
3.前記表面層が、前記被当接部材と接触する面よりもローラ軸方向に幅広く、前記テーパー面の一部にまで被覆されていることを特徴とする上記2の導電性ローラ。
【0017】
4.前記導電性弾性体層がイオン導電性を有するゴムを含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかの導電性ローラ。
【0018】
5.ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する工程と、該芯金上の未加硫ゴム組成物を圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程とを有する導電性ローラの製造方法において、該圧接部材が、ローラ長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【0019】
6.前記圧接部材の前記形状変化率が1%以上である部分の表面の温度を、該圧接部材の他の圧接面の温度よりも、高くすることを特徴とする上記5の導電性ローラの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも一つの導電性弾性体層を備え、最外層の導電性弾性体層のローラ端面或いはテーパー面の表面抵抗が、被当接部材に圧接して使用されるローラ面の表面抵抗に比べて高くすることによって、端面或いはテーパー面からのリークに起因した画像不良の発生を抑えることができる。
【0021】
また、ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する工程と、該芯金上の未加硫ゴム組成物を圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程とを有する導電性ローラの製造方法において、該圧接部材が、ローラ長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることによって、端部表面に欠陥等が無く、高精度な導電性ローラを、短時間に安定して得ることができるため、製造コストを削減するだけでなく、製品としての品質も高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
被当接部材に当接して使用されるローラにおいて、端面或いはテーパー面が当接して使用されるローラ面と比較して抵抗が低い場合には、通電して使用される時に、リークが低抵抗である導電性弾性体層の端面或いはテーパー面から発生し、画像不良を引き起こすことがある。
【0024】
従って、最外層の導電性弾性体層の端面或いはテーパー面がローラ面と比較して抵抗が高くなれば、リークが発生しにくくなる(ここでいうローラ面とは、回転時に被当接部材に接触する面を言う。)。
【0025】
なお、テーパー形状とは、線形的に径を減少させても良いし、R面取りなどのように曲線的に径を減少させる部分を設けた形状でも良い。
【0026】
そこで、端面或いはテーパー面を、ローラ面と比較して抵抗を高くするための手法としては、表面を高温で加熱する方法や、UV、EB、プラズマなどの表面処理などいずれの手法でも良く、ゴムの材質・形状に合わせて高抵抗化する手法を選択することができる。
【0027】
また、同時にローラ面を表面処理し、表面処理の程度を端面或いはテーパー面とローラ面で変えることで抵抗差を設けても良い。
【0028】
さらに、表面処理などによって端面或いはテーパー面を高抵抗化した状態で、ローラ面を高抵抗層で被覆しても、端面或いはテーパー面は被覆前に全く表面処理しない場合と比較して高抵抗なため、やはりリークの発生は抑えることができる。
【0029】
なお、端面或いはテーパー面の表面抵抗は、ローラ面の表面抵抗と比較して、1.5倍以上が好ましく、2倍以上が特に好ましい。
【0030】
端面或いはテーパー面を高抵抗層で覆う場合に関しては、導電性弾性体層の端面が芯金に対して鉛直をなす面をもつと、ディッピングなどの手段によって一度に端面まで液を塗工して表面層を設けると、端面に液溜まりが生じ、引き上げ時にローラ面に垂れたり、硬化時に発泡したり、硬度ムラを引き起こすなど好ましくない場合がある。
【0031】
従って、高抵抗層で覆う面が、テーパー面の一部だけであり、かつテーパー面とローラ面にパーティングラインなどの突起物がなければ、液溜まりなどの発生がなく、容易に表面層を形成でき、かつ被当接部材との距離が近い部分は少なくとも被覆することができるため、端面からのリークも防ぐことができる。
【0032】
図2に本発明において表面層を被覆した場合の導電性ローラの断面図を模式的に示す。
【0033】
図2において、金属の芯金11の周囲に端部にテーパー面を備える導電性弾性体層12を設け、さらにテーパー面の一部とローラ面を表面層13で被覆したものである。
【0034】
ローラとして端部のテーパー面の形状変化率が1%以上で、大きく径が変化するようなローラを製造する際に、型成形でパーティングライン無しにローラを得ようとすると、型から抜くことが難しくなってしまう。
【0035】
そこで、表面粗さが良好で、かつパーティングラインなどの突起部がないテーパー形状に端部を加工するための製造方法としては、ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する工程と、該芯金上の未加硫ゴム組成物を圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程とを有する導電性ローラの製造方法において、該圧接部材が、ローラ長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることで実現できる。
【0036】
さらには、圧接部材の形状変化が大きい部分の表面を他の圧接面よりも温度を高くすることによって、成形と同時にテーパー面を高抵抗化することができる。
【0037】
ここで、圧接部材のローラ長手方向の形状変化率とは、未加硫ローラを圧接させる時と同様にして芯金のみを圧接部材に圧接した場合に、芯金の中心軸から加圧方向の圧接部材までの距離を長手方向に測定し、長手方向の変化率を計算した値とした。従って、圧接部材の形状が略円筒形状の場合には、多くの場合、長手方向の半径変化率に相当する。なお、本発明における形状変化率は長手方向に0.5mmピッチで芯金の中心軸との距離を測定して変化率を計算するものとする。
【0038】
圧接部材の温度を高くした場合には、ローラ表面の材料の架橋等が進むため、接触している部分の表面を高抵抗化させることができる。圧接部材につける温度差としては、20℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0039】
また、イオン導電性を有するゴムを含有することで、表面処理によって短時間に高抵抗化させることができる。
【0040】
イオン導電性を有するゴムとしては、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他、イオン導電性を有さないゴムでもイオン導電剤を含有させることでイオン導電性を付与しても良い。
【0041】
まず、ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する。この芯金上に被覆された未加硫ゴムに対して、圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程を行うことで導電性ローラを製造することができる。
【0042】
図3は本発明に用いる押出し機の模式図を示す。
【0043】
押出し機14は、クロスヘッド15を備える。クロスヘッド15は芯金送りローラ16によって送られた芯金17を後ろ側から挿入でき、芯金17と同時に円筒状の未加硫原料組成物を一体的に押し出すことができる。ここでは押し出し後に、未加硫原料組成物が芯金の周囲に円筒状に形成した後に(18)、端部のゴムを定尺で切り取ったものを、未加硫ローラとした。
【0044】
なお、押し出しの際、押出し機を定速回転させた状態で、芯金の送り速度を変化させて外径を変化させても良く、中央で太く、端部で細いクラウン形状を形成しても良い。
【0045】
図4に本発明において圧接回転加熱工程に用いられる、円筒状の圧接部材を有する圧接加硫装置の、Aは上面図、Bは側面図を示す。
【0046】
モータ25によって回転している円筒状の圧接部材20と、芯金とともに押し出された未加硫ローラ19の中心軸は平行に保持され、未加硫ローラ19の両端部の芯金露出部を保持部材24で軸がずれることないように保持している。円筒状の圧接部材20は、未加硫ローラをもう一つの圧接部材21とともに前後からバネ22で加圧できるように配置され、円筒状の圧接部材20の回転により、未加硫ローラ、もう一方の円筒状の圧接部材21を従動で回転させる。また、加圧力はバネ22の長さをかえることで調整可能である。なお、圧接部材20の幅は、未加硫ローラのゴム長よりも幅広い方が好ましい。図4中、23はスライダーである。
【0047】
圧接部材21は未加硫ローラの両端に相当する位置に、曲率変化が大きく、ローラとしての所望のテーパー形状に対応した形状を持つものである。
【0048】
また、図示する圧接部材20、21は、中に空間を設けて、ヒータを内蔵したものであるが、中に空間がない圧接部材を用いて装置全体を恒温槽の中に構築するなどして全体を加硫温度に保っても良いし、両者を同時に行っても良い。圧接部材の形状は、円筒・円柱形状以外に、平面形状、ベルト形状などでも良く、平行に配した二つ以上の圧接部材で挟み込んでも良い。また、未加硫ローラの形状に合わせても良く、円筒形状の圧接部材の場合は逆クラウン形状やクラウン形状などにすることができる。
【0049】
圧接部材に設けられる逆クラウン形状やクラウン形状の外径差は、ローラ長230mm前後に対し、外径差で0.01〜1mm前後のものが用いられる。本発明において、未加硫ゴム組成物との圧接面における長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることは、クラウン形状あるいは逆クラウン形状などのローラ全体にわたる滑らかな外径変化をつける目的でなく、端部などに曲率変化が大きいテーパー面を設けるのが目的である。
【0050】
また、未加硫ローラは多層同時押し出しなどにより、導電性弾性体層を複数層設けても良く、内側の層に発泡層を設けても良い。
【0051】
なお、加硫を同時に進行させるために、圧接部材の加熱温度はゴムの加硫が進行しやすい140℃以上240℃以下が好ましく、1〜120分の間で押圧加硫を行うと良い。
【0052】
図6は本発明に用いる表面処理装置を模式的に示した。
【0053】
図6において、34は芯金を保持し、回転させる保持部材であり、保持部材をモータ35などで駆動することで、未加硫ローラ33を回転させることができる。37はUVランプであり、必要な部分にのみ当たるように遮光板36を配置することができる。
【0054】
なお、圧接回転加熱工程後に表面処理を行う以外に、圧接回転加熱工程中に同時に行っても良い。
【0055】
図5に圧接回転加熱中に同時に表面処理を行う場合に用いる圧接回転加熱表面処理装置の、Aは上面図、Bは側面図を模式的に示した。
【0056】
回転している円筒状の圧接部材27と、芯金とともに押し出された未加硫ローラ26の中心軸は平行に保持され、未加硫ローラ26の両端部の芯金露出部を保持部材30で軸がずれることないように保持している。円筒状の圧接部材27に対し、ガイド上に配置された保持部材30をバネ28で加圧することで、未加硫ローラを円筒状の圧接部材27に対し加圧することができる。図5中、29はスライダーである。
【0057】
また、端部のテーパー面を形成するための端部圧接部材32を備え、円筒状の圧接部材をモータ31で駆動することで、未加硫ローラと端部圧接部材32を従動で回転させる。端部圧接部材32は中にヒータを入れてあり、円筒状の圧接部材27に対して高温に設定して用いることで、加熱表面処理と形状成形を同時に行うことが可能となる。
【0058】
本発明で使用されるポリマー原料としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴムなどのゴムがある。
【0059】
さらには、熱可塑性の材料や、熱可塑性の材料とゴム材料と混合されたものでも良い。その場合、加硫の進行は関係ないため軟化点以上の温度で圧接回転させれば表面粗さと形状精度の良いローラを得ることができる。
【0060】
押し出し時に同時に多層を成形した未加硫ローラを用いて、圧接回転させても良く、多層ローラを得ることもできる。また、加硫後の導電性ローラの最外層に未加硫ゴムを被覆したものを用いて、圧接回転させても良い。
【0061】
また、ローラの原料組成物には、導電性フィラーを分散させる手法や、導電性ポリマー、イオン導電剤などを用いて導電性を付与しても良い。
【0062】
前記ポリマー原料中に分散させる導電粉としてはカーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、TiO2、SnO2、ZnOなどの金属酸化物、ZnOとAl23の固溶体などの複酸化物、Cu、Agなどの金属粉等が挙げられ、前記ポリマー原料100質量部に対して5〜200質量部添加される。
【0063】
加硫剤としては硫黄、金属酸化物、有機酸化物など、無機充填剤としてカーボンブラック、タルク、クレーなどが挙げられ、その他公知の加硫促進剤、プロセスオイルなどが適宜添加される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に従って本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」は質量部を示す。
【0065】
[実施例1]
未加硫ゴム組成物としては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(ダイソー社製 CG102)100部に対して、酸化亜鉛(正同化学社製 酸化亜鉛二種)5部、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 シルバーW)45部、カーボンブラック(東海カーボン社製 シーストSO)10部、イオン導電剤としてテトラブチルアンモニウムパークロレート2部、加工助剤としてステアリン酸1部、可塑剤としてアジピン酸エステル(日本インキ化学工業社製 ポリサイザーW305ELS)10部、加硫剤として硫黄0.5部、架橋助剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(大内新興化学工業社製 ノクセラーTRA)2部をオープンロールにて混合した。得られた未加硫ゴム組成物を芯金の周囲に成形するために、図3に模式的に示す押出し機に内径がφ11mmであるダイをセットし、あらかじめヘッドを80℃に温調した。次に、直径がφ6mm、長さ256mmの芯金を用意してゴムととともに押し出すことで、芯金の周囲に円筒状の未加硫ゴム組成物を成形した。その後、未加硫ゴム組成物の長さを224mmになるように端部の余分な未加硫ゴム組成物を切断、除去処理を行い、未加硫ローラを得た。
【0066】
その後、あらかじめ170℃に熱した熱風炉の中で、60分間加熱を行い、冷却後に研磨によって外径を整えた。なお、研磨時にはローラ長手方向中央でφ10.1mm、端部でφ10.0mmのいわゆるクラウン形状に外径を整えている。
【0067】
この導電性ローラの電気抵抗は約5×104[Ω]であった。
【0068】
なお、導電性ローラのローラ抵抗は、ローラを円柱状のアルミドラムに当接させ、回転させた状態で、ドラムとの間に電源から直流100Vの電圧を印加し、基準抵抗にかかる電圧を測定することにより計算した。
【0069】
上記のようにして得られた導電性ローラを帯電ローラとして用いるために、表面の粘着性を減少させる目的で、波長250nm近傍のUVランプで3分間照射し、表面処理した上で、以下に示すような装置を用いて画像評価を行った。なお、紫外線の照射はローラをコンベアで回転した状態で送り、上下からローラと平行に設けたランプで行った。
【0070】
さらに、端面にだけ紫外線が照射されるように遮光板を調整し、さらに回転させながら3分間照射を行い、導電性ローラを得た。
【0071】
次に、このローラのローラ面と端面の表面抵抗測定を行った。
【0072】
直径がφ1mmの電極を端面とローラ面において3mmの距離をおいて接触させて配設し、該電極間に100Vの電圧を印加した。その結果求められる二つの表面抵抗R(端面)、R(ローラ面)から、比の値を表面抵抗R(端面)/表面抵抗R(ローラ面)で計算し、さらに同様の測定を3回繰り返した後に平均した値は1.5であった。端面における表面抵抗が高くなっていることが分かる。
【0073】
さらに、帯電ローラとして実際に電子写真装置に入れて、耐久テストを行った。
【0074】
本試験で使用した電子写真式レーザープリンターはA4縦出力用の装置で、記録メディアの出力スピードは、94mm/secで画像解像度は600dpiである。感光体はアルミシリンダーに膜厚12μmの感光層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。トナーは、ワックスを中心に電荷制御剤と色素等を含有するスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、さらに表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子を外添した。このトナーはガラス転移温度が63℃、体積平均粒子径が6μmの重合トナーである。
【0075】
通紙試験を連続12000枚まで行い、端面からのリークによる画像不良の発生があるかどうかを500枚おきに確認した。なお、リークは8000枚以上発生しないことが好ましい。
【0076】
その結果、9000枚までは連続通紙では端面からのリークに起因する画像不良の発生は無かった。
【0077】
[実施例2]
本実施例ではイオン導電剤としてテトラブチルアンモニウムパークロレートを4部にした以外は実施例1と同様にして研磨まで行い、導電性ローラを作成した。
【0078】
さらに、端面にだけ紫外線が当たるように遮光板・反射板等を調整した表面処理装置において、回転させながら3分間照射を行い、導電性ローラを得た。表面抵抗を測定した結果、その比は2.1であった。
【0079】
次に、導電性ローラの外周面上に被覆層を設けるために、ディッピング用塗布液として、下記の材料を混合して混合溶液を調製した。
【0080】
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液100部、メチルイソブチルケトン250部、導電性酸化錫(体積抵抗率:103Ω・cm)190部、二酸化チタン(体積抵抗率:1016Ω・cm)24部、変性ジメチルシリコーンオイル0.08部、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(平均粒径:5.1μm、体積抵抗率1016Ω・cm)60部。この混合液を攪拌機で30分間混合した後、ガラスビーズ(平均粒径:0.8mm)を分散メディアとして、上記分散メディアを80%充填したビーズミル分散機を用い、この分散機中で18時間分散した。分散溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体1:1の混合物を、NCO/OH=1.0となるように添加し、1時間攪拌して、ディッピング用塗布液を調製した。
【0081】
前記塗布液をディッピングにより、前記導電性ローラの表面に塗工した。ディッピングは、導電性弾性体層の端面と芯金露出部に塗布液が付着しないように樹脂製のキャップを上下に被せて行った。ディッピング後、30分間風乾後、オーブンで160℃×1時間乾燥した。このとき膜厚は15μmであった。この導電性ローラの電気抵抗は約2×105[Ω]であった。
【0082】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は9500枚までは無かった。
【0083】
[実施例3]
本実施例ではダイスの内径をφ10mmにした以外は実施例1と同様にして未加硫ローラを作成した。
【0084】
次に、図5に模式的に示す圧接加硫装置を用いて、加硫を行った。圧接加硫装置において、円筒状の圧接部材として内部に入ったヒータによって160℃に加熱したものを用い、20分の圧接加硫を行った。なお、圧接加硫装置においては、片側1kgの荷重になるようにバネを調整した。さらにその後、180℃にあらかじめ熱せられた熱風炉中で30分間の二次加硫を行い、端部がR面付きの導電性ローラを得た。なお、円筒状の圧接部材はいわゆる逆クラウン形状をなしており、ローラゴム部の端部に相当する部分と中央に相当する部分で、0.1mmの外径差を設けているものである。
【0085】
図5の圧接加硫装置により、円筒状の圧接部材による圧接加硫と同時に、端部に押し付ける圧接部材(端部圧接部材)により圧接を行った。端部に押し付ける圧接部材の凹部の形状はR=1.5mmの円弧状の形状をなしているものを用いた。従って、圧接部材の形状が1.5mm幅で半径が1.5mm変化しているため、形状変化率としては、最大で約223.6%となる。端部に押し付ける圧接部材の温度は円筒状の圧接部材よりも高い180℃とした。
【0086】
さらに、ローラ面にだけ紫外線が当たるように遮光板・反射板等を調整した表面処理装置において、回転させながら3分間照射を行い、導電性ローラを得た。表面抵抗を測定した結果、その比は1.6であった。
【0087】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は9500枚までは無かった。
【0088】
[実施例4]
本実施例では、端部に押し付ける圧接部材の温度を200℃とした以外は実施例3と同様にして導電性弾性体層を形成した。
【0089】
表面抵抗を測定した結果、その比は2.0であった。
【0090】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は11000枚までは無かった。
【0091】
[実施例5]
本実施例では、導電性弾性体層に用いる材料を実施例2と同じ物を用い、端部に押し付ける圧接部材の温度を220℃とした以外は実施例3と同様にして導電性弾性体層を形成した。
【0092】
表面抵抗の比を測定した結果、3.4であった。
【0093】
その後、塗布液は実施例2と同じものを用い、塗工を行った。なお、芯金露出部、テーパー面には塗布液が付着しないように樹脂製のキャップを被せて塗工を行った。
【0094】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は11500枚まで無かった。
【0095】
[実施例6]
本実施例では、弾性体層に用いる未加硫ゴム組成物を以下のものに変更し、圧接加硫の時間を40分に変更した以外は、実施例5と同様にして、弾性体層を形成した。
【0096】
本実施例では未加硫ゴム組成物として、エチレンープロピレンージエン三元共重合体(三井石油化学社製 EPT4045)100部に対して、導電剤としてケッチェンブラック(三菱化学社製 ケッチェンブラックEC)6部、SRFカーボンブラック(旭カーボン社製 旭#35)50部、軟化剤としてパラフィンオイルを40部、加硫促進助剤として、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、架橋剤として硫黄2部、加硫促進剤としてメルカプトベンゾチアゾール(MBT)2部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)1部、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)1部をオープンロールを用いて混合したものを用いた。
【0097】
表面抵抗の比を測定した結果、1.5であった。
【0098】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は8500枚まで無かった。
【0099】
[実施例7]
本実施例では、実施例5と同様にして、弾性体層を形成した。その後、塗工時に上側のテーパー面の途中までローラを浸漬し、引き上げを行った。なお、下部のテーパー面には、図7に模式的に示すようにテーパー面の途中まで被さる樹脂製のキャップ40を付けて塗工を行った。図7中、38は芯金、39は導電性弾性体層である。
【0100】
本導電性ローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行った結果、リークに起因する画像不良の発生は12000枚まで無かった。
【0101】
[比較例1]
本比較例では、端面の表面処理を除いては実施例1と同様にして、導電性ローラを作成した。この導電性ローラの表面抵抗を測定した結果、その比の値は、0.7であった。
【0102】
本比較例のローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行ったところ、7000枚通紙時点でリークによる画像不良の発生が確認された。
【0103】
[比較例2]
本比較例では、圧接部材に温度差を設けない状態(円筒状の圧接部材、端部に押し付ける圧接部材ともに160℃)で成形した以外は、実施例5と同様にして、導電性ローラを作成した。この導電性ローラの表面抵抗を測定した結果、その比の値は、約1であった。
【0104】
本比較例のローラを帯電ローラとして用いて連続通紙試験を行ったところ、6500枚通紙時点でリークによる画像不良の発生が確認された。
【0105】
[比較例3]
本比較例では、図8に模式的に示す円筒型を用いて、注型によって導電性ローラを作成した。図8において、42は円筒型であり両端に芯金41を保持し端面のテーパー面を形作る形状を持つ駒43を備える。駒43には注型用の孔44が開いており、円筒型の中のキャビティに材料を注入することができる。
【0106】
円筒型を用いて作成したローラには、円筒型と芯金を支持する駒の隙間にばりが発生してしまった。この導電性ローラの表面抵抗を比の値は、約1であった。
【0107】
その後、塗工を行ったが、ばりにより塗布液が均一に塗工できない塗工不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】接触帯電部材、接触転写部材を用いた電子写真装置の模式図である。
【図2】本発明の導電性ローラの一例の断面図である。
【図3】本発明を実施するための押出し機の一例の模式図である。
【図4】本発明を実施するための円筒状の圧接部材と、端部に局率変化のある円筒状の圧接部材とを有する圧接加硫装置の、Aは正面図、Bは側面図である。
【図5】本発明を実施するための円筒状の圧接部材と、端部圧接部材とを有する圧接回転加熱表面処理装置の、Aは上面図、Bは側面図である。
【図6】本発明を実施するための表面処理装置の、Aは正面図、Bは側面図である。
【図7】本発明を実施するための、ディッピング時のキャップを示したものである。
【図8】比較例を実施するための、円筒型の断面図を模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0109】
1 感光体
2 帯電部材
3 露光光
4 現像部材
5 転写部材
6 転写材
7 定着部材
8 クリーニング部材
9 トナー
10 回転軸
11,17、38 芯金
12、39 導電性弾性体層
13 表面層
14 押出し機
15 クロスヘッド
16 芯金送りローラ
18、19、26、33 未加硫ローラ
20、27 圧接部材
21 圧接部材(端部に曲率変化あり)
22、28 加圧用バネ
23、29 スライダー
24、30、34 保持部材
25、31、35 モータ
32 端部圧接部材
36 遮光部材
37 UVランプ
40 キャップ
41 芯金
42 円筒型
43 駒
44 注型孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの導電性弾性体層を備え、最外層の導電性弾性体層のローラ端面或いはテーパー面の表面抵抗が、被当接部材に圧接して使用されるローラ面の表面抵抗に比べて高いことを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記最外層の導電性弾性体層の外周のうち前記被当接部材と接触する面が、少なくとも一層の表面層でさらに被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記表面層が、前記被当接部材と接触する面よりもローラ軸方向に幅広く、前記テーパー面の一部にまで被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記導電性弾性体層がイオン導電性を有するゴムを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラ。
【請求項5】
ポリマー原料と添加剤を配合し混練された未加硫ゴム組成物を、芯金とともに押し出すことで芯金上に未加硫ゴム組成物を被覆する工程と、該芯金上の未加硫ゴム組成物を圧接部材によって圧力をかけた状態で、回転させながら加熱を行う圧接回転加熱工程とを有する導電性ローラの製造方法において、該圧接部材が、ローラ長手方向の形状変化率が1%以上である部分を備えることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記圧接部材の前記形状変化率が1%以上である部分の表面の温度を、該圧接部材の他の圧接面の温度よりも、高くすることを特徴とする請求項5に記載の導電性ローラの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−258933(P2006−258933A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73252(P2005−73252)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】