説明

導電性組成物

【目的】電子部品の接合用として最外層がSnである電極材に対して電気的な接続信頼性の高い導電性組成物を提供する。
【構成】硝酸銀水溶液をヒドラジン化合物にて還元することにより得られる銀粉末と熱硬化性樹脂及び粘度調整剤から成る銀ペーストであって、前記銀粉末と熱硬化性樹脂の比率が85:15〜93:7の範囲内にあること、また前記銀粉末の最大粒子径が40μm以下で、平均粒子径が1〜10μm、且つ、比表面積が0.2〜1.5m2/gであるを特徴とする導電性組成
物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子部品の素子やチップ部品の接合に使用される導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より各種電子部品の素子とリードフレーム等の電極材を接合するために銀粉末、熱硬化性樹脂及び粘度調整剤から成る導電性接着剤が一般的に使用されている。
特許文献1、特許文献2、特許文献3には、特定の樹脂を使用する、あるいは銀粉末の特性を規定することで優れた導電性と接着性を有する導電性接着剤について開示されている。
【0003】
一方、リードフレーム等の電極材は近年の鉛フリー化の流れにより、その最外層が半田メッキ層からSnメッキ層へと移行してきている。しかし、最外層がSnである電極材に対して導電性接着剤を使用した場合、特に高温湿度下において電気的抵抗値が増大するため、高い信頼性が要求される部品へは適用できないという問題がある。
【0004】
特許文献1から3に記載の導電性接着剤は電極材との接合界面において接続信頼性や電気的信頼性を満足するものではあるが、最外層がSnである電極材に対しては電気的信頼性を十分に満足するものではなく、またその解決策についても全く開示されていない。
【特許文献1】特開平5−36307号公報
【特許文献2】特開2001−254067号公報
【特許文献3】特開2004−197030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を、ある種の銀粉末を使用することによって解決し、最外層がSnである電極材との接合において高温湿度下の環境でも電気的信頼性の高い導電性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを目的としてなされたもので硝酸銀水溶液をヒドラジン化合物にて還元することにより得られる銀粉末と熱硬化性樹脂及び粘度調整剤から成る銀ペーストであって、前記銀粉末と熱硬化性樹脂の重量比率が85:15〜93:7の範囲内にあり、前記銀粉末の最大粒子径が40μm以下で、平均粒子径が1〜10μm、且つ、比表面積が0.2〜1.5m2/gであることを特徴とすることで、最外層がSnである
電極材との接合において高温湿度の雰囲気でも抵抗値変化を小さくすることを実現した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果としては最外層がSnである電極材との接合において高温湿度の雰囲気でも抵抗値の増加が比較的小さいため電気的な接続信頼性が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の導電性組成物は硝酸銀水溶液をヒドラジン化合物にて還元することにより得られる銀粉末と熱硬化性樹脂及び粘度調整剤とを含んでなるものであり、銀粉末と熱硬化性樹脂の重量比率を85:15〜93:7とするものである。
銀粉末の比率が85重量%未満の場合、塗膜自身の導電性が悪くなるため良好な電気特性が得られなくなるので好ましくない。逆に銀粉末の比率が93重量%を超えると被着体との接合強度が弱くなることにより接合界面での抵抗値が上昇するため、高い電気的信頼性を得ることができないので好ましくない。より好ましくは88〜91重量%である。
【0009】
本発明の導電性組成物に使用される銀粉末の形状は特に規定されるものではなく、球状、フレーク状等を適用することができるが、塗膜の導電性と接合強度を両立させるためにフレーク状であることが好ましい。
本発明の導電性組成物に使用する銀粉末は、その最大粒子径が40μm以下で、平均粒子径が1〜10μm、且つ、比表面積が0.2〜1.5m2/gであれば良好な塗膜を形成することがで
きる。
【0010】
最大粒子径を40μm以下としたのはディスペンサーのニードル目詰まり、スクリーン印刷のメッシュ目詰りなど作業性に問題が生じることにより好適な電気特性が得られなくなるためである。平均粒子径を1〜10μmとしたのは、1μmより小さい粉末では組成物自身の抵抗値が高くなる、或いはペースト粘度が高くなるため多量の溶剤添加が必要となり、その結果、最適な粘度特性を維持できず、ニジミ、ダレ等の発生により作業性が悪くなるため好ましくない。一方10μm以上の場合、球状の銀粉末では接合界面において点接触となり銀の面積が相対的に少なくなることが原因で接触抵抗値が上昇するため好ましくない。
【0011】
フレーク状銀粉末では、接合界面において逆に樹脂の面積比率が少なくなるために接合強度が弱くなることが原因で接触抵抗値が上昇するため好ましくない。
平均粒子径が1〜10μmであっても、比表面積が0.2m2/gより小さい、或いは1.5m2/gより大きい場合も上記同様の理由により好ましくない。即ち、比表面積が0.2m2/gより小さい場合は球状に近い粉末であるため、接合界面において銀の面積が少なくなり接触抵抗値が上昇するため好ましくない。また、1.5m2/gより大きい場合はフレーク度の高い粉末となるため、接合界面において樹脂面積が少なくなることにより接合強度が弱くなることが原因で接触抵抗値が上昇するため好ましくない。より好ましくは平均粒子径が3〜10μmで、比表面積が0.3〜1.0m2/gの粉末である。
【0012】
本発明の導電性組成物に使用する熱硬化性樹脂は特に規定されるものではなく、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等を使用することができる。
また、本発明の導電性組成物に使用する粘度調整剤も特に規定されるものではなく、多価アルコールや炭化水素及びエステル等の有機溶剤や反応性希釈剤等を使用することができる。
(実施例・比較例)
【0013】
次に本発明の実施例及び比較例について説明する。表1に示す銀粉末とエポキシ系熱硬化樹脂、ブチルカルビトールを配合後、3本ロールで混練し導電性組成物を得た。各導電性組成物を銅板上に0.005ccディスペンスし、その上に2mm×2mmのSnメッキを施したリ
ードフレームを塗膜厚が約150μmとなるように載せ、120℃×60分間熱処理することにより試料を作製した。尚、銀粉末の平均粒子径はレーザー回折式粒度測定器(SALD-3000J 島津製作所製)を、比表面積はBET1点法による流動式比表面積測定装置(フローソーブ2300島津製作所製)を用いて測定した。
【0014】
作製した試料のリードフレームと銅板に端子をあて4端子法(ミリオームハイテスタ3540-02 日置電機製)にて初期抵抗値を測定した。その後、試料を85℃/85%R.H.雰囲気中に500Hr放置し、再度室温にて同様に抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
抵抗値評価の変化率は放置後の抵抗率を初期抵抗率で割った値とし、判定については500
時間後の抵抗値が20.0mΩ以下、且つ、変化率が5.0以下のものを○、いずれか一つでも超えた場合を×とした。
ディスペンス性は4時間連続でディスペンスし、ニードル目詰まりのないものを○、目詰まりが発生したものを×とした。またディスペンス後の塗膜にニジミ、ダレ等が確認されたものを×、ニジミ、ダレ等がないものを○とした。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
上記表1及び表2により、本発明の実施例においては抵抗値変化が小さいのに対し、比較例をみると、同じような粉末特性であっても還元組成が異なると抵抗値が著しく増大する。またヒドラジン化合物の還元により得られた銀粉末であっても銀粉末と熱硬化性樹脂の重量比率が85:15〜93:7の範囲を逸脱するものも同様に抵抗値が著しく増大することが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本組成物は最外層がSnである電極材との接合において高温湿度の雰囲気でも抵抗値の増大が比較的小さいため、高い信頼性が要求される部品、たとえばチップ抵抗やタンタルコンデンサの接合剤として使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸銀水溶液をヒドラジン化合物にて還元することにより得られる銀粉末と熱硬化性樹脂及び粘度調整剤から成る銀ペーストであって、前記銀粉末と熱硬化性樹脂の重量比率が85:15〜93:7の範囲内にあることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記銀粉末はその最大粒子径が40μm以下で、平均粒子径が1〜10μm、且つ、比表面積が0.2〜1.5m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
最外層がSnである電極材と電子部品等の接合に使用される、請求項1及び2に記載の導電性組成物。

【公開番号】特開2007−5105(P2007−5105A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183028(P2005−183028)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】