説明

導電性部材及びその製造方法、帯電部材、プロセスカートリッジ、並びに、画像形成装置

【課題】高温多湿などの環境条件で、長期に亘って使用されても、静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されて、静電潜像担持体表面の均一帯電が可能である、耐久性の高い導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体とその導電性支持体の面上に形成された電気抵抗調整層を有する導電性部材であって、前記導電性支持体の前記面の中央に電気抵抗調整層側に向かって高くなった高面部、前記高面部の周辺の前記面に嵌合用凹部が設けられた低面部を有するとともに、該高面部と該低面部との間に段部が形成され、かつ、前記電気抵抗調整層が、前記高面部全体と前記低面部の少なくとも一部との上に設けられるとともに前記導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合する嵌合用凸部を有する導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において帯電部材として用いられる導電性部材、その製造方法、かかる導電性部材を帯電部材として備えたプロセスカートリッジ、かかるプロセスカートリッジを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式には、静電潜像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。以下、帯電部材として導電性部材を用いた場合について説明する。
【0003】
図8は電子写真方式の画像形成装置の概略図である。図8について説明すると、101は静電潜像が形成される静電潜像担持体(ドラム状の感光体)、102はドラム状の感光体101に接触あるいは近接配置されて帯電処理を行う帯電部材(帯電ローラ)、103はレーザー光あるいは原稿の反射光等の露光、104は感光体101の静電潜像にトナーを付着させるトナー担持体(現像ローラ)、105は帯電部材102に電圧を印加するための電圧印加電源、106は感光体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ、107は給紙部から搬送されてきた記録紙、108は転写処理後の感光体101をクリーニングするためのクリーニング装置、109は感光体101の表面電位を測定する表面電位計である。なお、図8では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、省略してある。
【0004】
このような画像形成装置では次のような手段で、画像の形成を行う。
1.帯電ローラが、感光体の表面を所望の電位に帯電する。
【0005】
2.露光装置が、感光体に画像光を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を、感光体上に形成する。
【0006】
3.現像ローラが、静電潜像をトナーによって現像し、感光体上にトナー像(顕像)を形成する。
【0007】
4.転写ローラが、感光体上のトナー像を、記録紙に転写する。
【0008】
5.クリーニング装置が、転写されず感光体ドラム上に残留したトナーを清掃する。
【0009】
6.転写ローラによって、トナー像を転写された記録紙は、不図示の定着装置へと搬送される。定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙上に定着する。
【0010】
上記の1から6の手順を繰り返すことによって、記録紙上に所望の画像が形成されていく。
【0011】
ここで、帯電ローラを用いた帯電方式として、感光体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式がある(特開昭63−149668号公報(特許文献1)、特開平1−2111779号公報(特許文献2)、特開平1−267667号公報(特許文献3)等)。しかしながら、接触帯電方式には以下のような問題がある。
【0012】
・帯電ローラ跡(帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、被帯電体の表面に付着移行するために起こる)、帯電音(帯電ローラに交流電圧を印加したときに被帯電体に接触している帯電ローラが振動するために起こる)。
【0013】
・感光体上のトナーが帯電ローラに付着することによる導電性能の低下(特に上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる)、帯電ローラを構成している物質の感光体への付着感光体を長期停止したときに生ずる、帯電ローラの永久変形。
【0014】
このような問題を解決する方法として、帯電ローラを感光体に近接させる近接帯電方式が考案されている(特開平3−240076号公報(特許文献4)、特開平4−358175号公報(特許文献5)、特開平5−107871号公報(特許文献6)等)。帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)が50〜300μmになるように対向させ、帯電ローラに電圧を印加することにより、感光体の帯電を行うものである。この近接帯電方式では、帯電装置と感光体が接触していないために、接触帯電装置で問題となる「帯電ローラを構成している物質の感光体への付着」「感光体を長期停止したときに生ずる、永久変形」は問題とならない。また、「感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下」に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるため、近接帯電方式が優れている。
【0015】
特開平3−240076号公報、特開平4−358175号公報では、帯電ローラと感光体間の空隙を保持する手段として、ローラ両端部にスペーサリング層を設ける方法が開示されている。
【0016】
しかしながら、これらの公報には空隙を精密に設定する具体的な手段の記載が無く、帯電ローラおよびスペーサリングの寸法精度がばらつくことによって空隙が変動し、その結果、感光体の帯電電位が均一にならずに変動するという不具合を有している。
【0017】
特開平2001−296723公報(特許文献7)では、所定の厚みを持ったテープ状の空隙保持手段により、これらの不具合を解決している。しかしながら、テープ状部材の磨耗、テープ粘着剤のはみ出しによるトナーの固着等により、長期間使用において、感光体と帯電ローラ間の空隙を維持できないという不具合がある。また、テープ、接着層の厚みのばらつきのため、高精度の空隙を形成することができない。
【0018】
特開2005−091818公報(特許文献8)においては、電気抵抗調整層の両端部に空隙保持部材を圧入する構成になっている。電気抵抗調整層と空隙保持部材の構成(関係)は、電気抵抗調整層の端部に空隙保持部材が形成され、空隙保持部材は、電気抵抗調整層の端面及び、導電性支持体と接している。長期の信頼性を向上させるために、空隙保持部材と導電性支持体間に接着剤を塗布することにより、空隙保持部材の固定を確実なものとすることができるが、空隙保持部材(樹脂)と導電性支持体(金属)の線膨張係数が大きくことなるために、低温あるいは、高温環境になった場合、導電性支持体と空隙保持部材の界面で剥離が発生する可能性があるため、長期に渡る信頼性が若干劣る。また、長時間の通電により、接着強度も弱くなっていく。空隙保持部材が動いてしまうと、空隙精度が変動するために、帯電ムラが生じやすくなる。特に、空隙を高精度にする場合は、電気抵抗調整層と空隙形成部材を同時に加工することにより、達成することができるが、空隙保持部材の固定が充分でないと、研削あるいは、切削加工等の除去加工時に空隙部材が回転してしまうため、接着剤を塗布して、より強固に空隙保持部材を固定することが必要となる。
【0019】
空隙保持部材と電気抵抗調整層はトナー固着性を考慮して異なった材質で形成するが、電気抵抗調整層の抵抗調整剤として、イオン導電剤が使用されているため、吸水性が高く、高温高湿時には、電気抵抗調整層が吸湿して寸法変動が発生する。
【0020】
具体的には空隙保持部材は、絶縁性及び、耐トナー固着性を勘案してオレフィン系材料が用いられるが、オレフィン系材料は低吸水材料であるため、電気抵抗調整層に比べ高温高湿時の寸法変動量が小さく、環境変動で高精度に形成された空隙(段差)が変動するといった問題が発生する。
【0021】
一般的に電気抵抗調整層のような樹脂材料やゴム材料による成形物は加熱により膨張するが、冷却により収縮作用が生じる。加熱により、成形時の残留応力が開放され、成形品の形状も変化する。成形品の形状や加工方法により変形の仕方は様々であり、一概に説明できないが、拘束力の無い方向に形状が変化する傾向が見られる。また経時による酸化作用、有機物のブリードにより収縮が起こる
【0022】
さらに、これらの伸縮変形が生じると軸方向での樹脂部材の位置が変動することになり、感光体との当接位置が変動することになる。軸方向端部では、導電領域と空隙保持機能の絶縁領域に境界が変化するために、電気的なリーク、端部画像の異常が生じる確率が高くなる。
【0023】
特に最近の導電性部材は、充分な帯電機能を得るために、電気特性(電気抵抗)の環境安定化や経時安定化のため、及び、高電圧が付加されても、破壊、ワレなどが発生しないようイオン系の導電樹脂を含有している。イオン系の導電樹脂の添加により、一般的な樹脂より吸水率の高くなり、吸水による膨張も生じる可能性が高い。また、加熱により、水分は揮発するが、元の状態まで収縮しない場合がある。これは前述の成形における残留応力の作用が大きいことによることと、加熱され、軟化した状態での成形層の変形(延びる方向での変形)は容易であるが、冷却時にでは成形層は芯金との密着性が強く、さらに芯金と成形層との境界面での摩擦係数が大きいので、加熱時の伸び量に対応する収縮が達成できず、成形層が戻りきらないために生じるものであると考えられる。
【0024】
よって、電気抵抗調整層のように長尺の芯金上に被覆された樹脂成形層については、収縮を拘束することを主として、導電性支持体である芯金と電気抵抗調整層との接着処理が多く用いられている。このように接着処理を行った場合には、接着剤塗布装置、芯金の洗浄など設備面、環境面での負荷が掛かり、さらには樹脂材料を剥離して芯金の再利用することも困難となる。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−2111779号公報
【特許文献3】特開平1−267667号公報
【特許文献4】特開平3−240076号公報
【特許文献5】特開平4−358175号公報
【特許文献6】特開平5−107871号公報
【特許文献7】特開平2001−296723公報
【特許文献8】特開2005−091818公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高温多湿などの環境条件で、長期に亘って使用されても、静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されて、静電潜像担持体表面の均一帯電が可能である、耐久性の高い導電性部材、その導電性部材を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【0026】
具体的には、電気抵抗調整層形成材料が吸湿性があって熱膨張の大きなものであり、かつ、電気抵抗調整層を導電性支持体(芯金)表面上の長手方向に成形して長尺部材とした場合であっても、接着剤を使用せずとも、その伸縮が抑制された安定した形状の導電性部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の導電性部材は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、導電性支持体とその導電性支持体の面上に形成された電気抵抗調整層を有する導電性部材であって、前記導電性支持体の前記面の中央に電気抵抗調整層側に向かって高くなった高面部、前記高面部の周辺の前記面に嵌合用凹部が設けられた低面部を有するとともに、該高面部と該低面部との間に段部が形成され、かつ、前記電気抵抗調整層が、前記高面部全体と前記低面部の少なくとも一部との上に設けられるとともに前記導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合する嵌合用凸部を有することを特徴とする導電性部材である。
【0028】
また、本発明の導電性部材は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の導電性部材において、前記嵌合用凹部が、前記段部に接して設けられていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の導電性部材は、請求項3に記載の通り、請求項2に記載の導電性部材において、前記嵌合用凹部が前記段部に沿って溝状に設けられたものであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の導電性部材は、請求項4に記載の通り、請求項2に記載の導電性部材において、前記嵌合用凹部が複数個設けられ、これら複数の凹部が前記段部に沿って配置されていることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の導電性部材は、請求項5に記載の通り、請求項2または請求項3に記載の導電性部材において、前記高面部と前記低面部との高さの差が0.5mm以上、前記嵌合用凹部の前記段部からの幅が0.5mm以上、かつ、前記嵌合用凹部の前記低面部からの深さが0.2mm以上であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の導電性部材は、請求項6に記載の通り、請求項5に記載の導電性部材において、前記高面部と前記段部との境界が該高面部と前記低面部との高さの差の1/2の曲率半径となるようにR面取りされ、前記嵌合用凹部の壁部と底面との境界部が、その曲率半径が該嵌合用凹部の深さの1/2となるようR面取りされ、かつ、該嵌合用凹部の底面の、前記段部に垂直な方向の長さが0.5mm以上であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の導電性部材は、請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記導電性支持体の前記面の前記電気抵抗調整層が形成されていない部分に該電気抵抗調整層の端部に接して、該電気抵抗調整層の高さより高い空隙保持部材を有することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の導電性部材は、請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項7に記載の導電性部材において、前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とする。
【0035】
本発明の導電性部材の製造方法は、請求項9に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材の製造方法において、前記電気抵抗調整層を、電気抵抗調整層形成材料を前記導電性支持体の前記面に溶融状態で供給して形成することを特徴とする導電性部材の製造方法である。
【0036】
本発明の帯電部材は、請求項10に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材からなることを特徴とする帯電部材である。
【0037】
本発明のプロセスカートリッジは、請求項11に記載の通り、請求項10に記載の帯電部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0038】
本発明の画像形成装置は、請求項12に記載の通り、請求項11に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の導電性部材は、導電性支持体とその導電性支持体の面上に形成された電気抵抗調整層を有する導電性部材であって、前記導電性支持体の前記面の中央に電気抵抗調整層側に向かって高くなった高面部、前記高面部の周辺の前記面に嵌合用凹部が設けられた低面部を有するとともに、該高面部と該低面部との間に段部が形成され、かつ、前記電気抵抗調整層が、前記高面部全体と前記低面部の少なくとも一部との上に設けられるとともに前記導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合する嵌合用凸部を有するので、部材としての強度向上と電気抵抗調整層の形状変動を抑止し、電気抵抗調整層形成材料に吸湿性があって熱膨張の大きなものであったり、電気抵抗調整層を導電性支持体(芯金)表面上の長手方向に成形して長尺部材とした場合であっても、接着剤を使用せずとも、その伸縮が抑制された安定した形状の導電性部材を得ることができる。このような導電性部材を帯電材料として画像形成装置に組み込んだ場合に厳しい環境条件で、長期に亘って使用されても、静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されるために、静電潜像担持体表面の均一帯電及び、耐久性の高い(長寿命)導電性部材とすることができる。
【0040】
また、請求項2に記載の本発明の導電性部材によれば、前記嵌合用凹部が、前記段部に接して設けられているために、さらに高い電気抵抗調整層の強度、変形防止効果を得ることができる。
【0041】
また、請求項3に記載の本発明の導電性部材によれば、前記嵌合用凹部が前記段部に沿って溝状に設けられているために、さらに高い電気抵抗調整層の強度、変形防止効果を得ることができる。
【0042】
また、請求項4に記載の本発明の導電性部材によれば、前記嵌合用凹部が複数個設けられ、これら複数の凹部が前記段部に沿って配置されているために、さらに高い電気抵抗調整層の強度、変形防止効果を得ることができる。
【0043】
また、請求項5に記載の本発明の導電性部材によれば、前記高面部と前記低面部との高さの差が0.5mm以上、前記嵌合用凹部の前記段部からの幅が0.5mm以上、かつ、前記嵌合用凹部の前記低面部からの深さが0.2mm以上であることにより、さらに高い電気抵抗調整層の変形防止効果を得ることができる。
【0044】
また、請求項6に記載の本発明の導電性部材によれば、前記高面部と前記段部との境界が該高面部と前記低面部との高さの差の1/2の曲率半径となるようにR面取りされ、前記嵌合用凹部の壁部と底面との境界部が、その曲率半径が該嵌合用凹部の深さの1/2となるようR面取りされ、かつ、該嵌合用凹部の底面の、前記段部に垂直な方向の長さが0.5mm以上であるために、応力破壊を未然に防ぐことができるので高寿命とすることができ、かつ、より高い電気抵抗調整層の変形防止効果を得ることができる。
【0045】
また、請求項7に記載の本発明の導電性部材によれば、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電性部材において、前記導電性支持体の前記面の前記電気抵抗調整層が形成されていない部分に該電気抵抗調整層の端部に接して、該電気抵抗調整層の高さより高い空隙保持部材を有するため、空隙保持部材を含めた形状変動が小さくなり、導電性部材としての機能、性能が低下しない。
【0046】
また、請求項8に記載の本発明の導電性部材によれば、前記導電性部材が円筒形状であるので、回転させながら用いることができ、このとき、回転することにより、経時変化の部分的発生を防止することができるために、長寿命とすることができる。
【0047】
請求項9に記載の本発明の導電性部材の製造方法によれば、前記電気抵抗調整層を、電気抵抗調整層形成材料を前記導電性支持体の前記面に溶融状態で供給して形成するために、きわめて容易に、前記嵌合用凸部を嵌合用凹部の形状に対応した形状とすることができ、このとき、より高い電気抵抗調整層の変形防止効果を得ることができる。
【0048】
請求項10に記載の本発明の帯電部材によれば、上記の導電性部材からなるために、画像形成装置に組み込んだ場合に、環境条件、経時(長期)にわたって使用されても、静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されるために、静電潜像担持体表面の均一帯電及び、耐久性の高い(長寿命)ものとなる。
【0049】
請求項11に記載の本発明のプロセスカートリッジによれば、上記の導電性部材を備えているために、画像形成装置に組み込んだ場合に、環境条件、経時(長期)にわたって使用されても、帯電部材と静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されるために、静電潜像担持体表面の均一帯電及び、耐久性の高い(長寿命)ものとなる。
【0050】
請求項12に記載の本発明の画像形成装置は上記のプロセスカートリッジを有するために、比較的厳しい環境条件で、長期に亘って使用されても、帯電部材と静電潜像担持体との間に安定した空隙が維持されるために、静電潜像担持体表面の均一帯電及び、耐久性の高い(長寿命)ものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1(a)及び図1(c)に本発明の導電性部材で用いる導電性支持体の例についてのモデル斜視図を、図1(b)及び図1(d)にはこれら導電性支持体を用いて電気抵抗調整層を設けた導電性部材にさらに空隙保持部材203を取り付けて得た帯電部材を示す。
【0052】
図1(a)に示した導電性支持体の例201aはステンレスからなる円筒状体(円柱状体)の表面にニッケルめっきを施したものであって、導電性支持体201aの側面の中央に電気抵抗調整層形成側に向かって高くなった高面部としての大径部201a1、大径部201a1の軸方向周辺、すなわちこの場合には両端には、側面に嵌合用凹部201a2が設けられた低面部としての小径部201a3を有するとともに、大径部201a1と小径部201a3との間に段部201a4が形成されている。
【0053】
嵌合用凹部201a2は小径部201a3の側面に段部201a4に接して設けられ、かつ、嵌合用凹部201a2(略四角形の凹部)は複数個設けられおり、これら複数の凹部201a2は段部201a4に沿って配置されている。
【0054】
図1(b)に示した帯電部材は上記導電性支持体201aの側面のうち、大径部201a1全体と2箇所の小径部201a3のそれぞれ一部との上に、すなわち段部201a4を包み込むように電気抵抗調整層202aが設けられており、かつ、電気抵抗調整層202aの導電性支持体201a側の面である内側面に導電性支持体201aの嵌合用凹部201a2に嵌合する嵌合用凸部202a1が設けられており、これら嵌合用凹部201a2と嵌合用凸部202a1とは互いに嵌合しているために、電気抵抗調整層の膨張に対して拘束効果(アンカ−効果)が得られる。
【0055】
さらに導電性支持体201aの側面の電気抵抗調整層202aが形成されていない部分である小径部201a3に電気抵抗調整層202aの両端部に接して、電気抵抗調整層202aの高さ(太さ)より高い(太径の)空隙保持部材203aがそれぞれ設けられている。この例では電気抵抗調整層202aの端部に空隙保持部材203aが接着されている。
【0056】
ここで電気抵抗調整層に隣接するように空隙保持部材を配置する場合、電気抵抗調整層の伸縮により空隙保持部材の配置位置も変動することは、空隙の精度劣化、感光体の当接位置のズレが生じ、帯電ムラによるノイズ画像や、リークによる異常画像が発生する懸念があるが、本発明では電気抵抗調整層の形状変動を低減することで、これらの問題が同時に解決される。
【0057】
一方、図1(c)に示した導電性支持体201bでは導電性支持体201aでの複数個の嵌合用凹部201a2の替わりにその2箇所の段部201b4に沿って嵌合用凹部201b2が溝状に設けられた点でのみ異なる。
【0058】
図1(d)に示した帯電部材は上記導電性支持体201bの側面のうち、大径部201b1全体と2箇所の小径部201b3のそれぞれ一部との上に、すなわち段部201a4を包み込むように電気抵抗調整層202bが設けられており、かつ、電気抵抗調整層202bの導電性支持体201b側の面である内側面に導電性支持体201bの溝状の嵌合用凹部201b2に嵌合する凸条状の嵌合用凸部202b1が設けられており、これら嵌合用凹部201b2と嵌合用凸部202b1とは互いに嵌合しているために、電気抵抗調整層の膨張に対して拘束効果(アンカ−効果)が得られる。
【0059】
さらに導電性支持体201bの側面の電気抵抗調整層202bが形成されていない部分である小径部201b3に電気抵抗調整層202bの両端部に接して、電気抵抗調整層202bの高さ(太さ)より高い(太径の)空隙保持部材203bがそれぞれ設けられている。この例では電気抵抗調整層202bの端部に空隙保持部材203bが接着されている。
【0060】
これらの例でおいて、大径部と小径部との間に形成された2箇所の段部を包み込むように電気抵抗調整層が形成されていることと、嵌合用凹部と嵌合用凸部との嵌合とにより、電気抵抗調整層に寸法変化が生じうる環境、条件であっても、接着なしで、その伸縮が抑制された安定した形状の帯電部材となっている。
【0061】
ここで、空隙保持部材としては、種々の樹脂材料を使用することができる。空隙保持部材の必要な特性としては、静電潜像担持体との空隙を環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましい。また、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいこと、静電潜像担持体と当接し、摺動するために、静電潜像担持体を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体))等の汎用樹脂、PC(ポリカーボネート)、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂等があげられる。特に空隙保持部材を確実に固定するためには、電気抵抗調整層及び導電性支持体との間に接着剤を塗布して接着することができる。また、空隙保持部材は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、静電潜像担持体基体とのリーク電流の発生を無くすためである。空隙保持部材は、通常、成形加工により成形されたものを用いる。
【0062】
電気抵抗調整層は高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層の体積固有抵抗は10〜10Ωcmであることが望ましい。10Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、静電潜像担持体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0063】
電気抵抗調整層に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
【0064】
その熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また高分子材料であるため、ブリードアウトが生じにくい。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70〜30重量%とする必要がある。
【0065】
電気抵抗調整層に使用される樹脂材料として、吸水率が大きいイオン系導電材料を用いた場合、その吸水率は3.5〜4.1%で、この値は樹脂材料の中でも吸水性の高いと言われるABS樹脂の0.4〜0.5%より吸水性が高い。
【0066】
このような高分子型イオン導電材料を用いた従来の導電部材の電気抵抗調整層では、吸水により膨張は300mmの成形長さの場合、最大で約1mm(約0.4%)の伸びを示す。さらに全長一様に膨張しておらず、端部での部材の変形が大きくなるが、本発明の導電部材では導電性支持体に高面部、低面部及び段部を有し、かつ低面部に嵌合用凹部を有し、電気抵抗調整層が、高面部全体と低面部の少なくとも一部との上に設けられるとともに前記導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合する嵌合用凸部を有しているので、アンカ−効果が生じ、導電材料の膨張に対して拘束効果を持たせることによりこのような変形を未然に防ぐことができる。
【0067】
さらに熱膨張に関しても、嵌合用凸部と嵌合用凹部との嵌合により膨張変形が防止されているので、膨張後に収縮した際にも変形が生じない。
【0068】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層としての導電性支持体上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0069】
導電性支持体上に電気抵抗調整層のみを形成して導電性部材を構成すると、電気抵抗調整層にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層に表面層を形成することで、防止することができる。
【0070】
表面層の抵抗値は電気抵抗調整層のそれよりも大きくなるように形成され、それによって静電潜像担持体欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層と電気抵抗調整層との抵抗値の差を10Ωcm以下にすることが好ましい。
【0071】
表面層を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また樹脂材料は電気的に絶縁性であるため樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の抵抗を調整する。
【0072】
表面層の電気抵抗調整層上への形成は、上記表面層構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。膜厚については、5〜30μm程度であることが望ましい。
【0073】
導電性部材の製造方法の一例としては、導電性支持体上に電気抵抗調整層を射出成形によって形成し、その後、両端部の段差部に接着剤を塗布して、空隙保持部材を接着固定する。その後、空隙保持部材と電気抵抗調整層の段差部のばらつきを小さくするために、空隙保持部材と電気抵抗調整層が一体で形成となった状態において、切削、研削等の除去加工によって、外径を仕上げる。その後、空隙保持部材を保護した状態で電気抵抗調整層上に更に表面層を形成し、導電性部材とする。
【0074】
このように導電性支持体上に電気抵抗調整層を射出成形する際に、中央に電気抵抗調整層側に向かって高くなった高面部、高面部の周辺に嵌合用凹部が設けられた低面部を有するとともに、高面部と低面部との間に段部が形成された導電性支持体を用いて、前記高面部全体と前記低面部の少なくとも一部との上に電気抵抗調整層を成形することにより、電気抵抗調整層導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合している嵌合用凸部を容易に形成することができる。
【0075】
導電性支持体の形状としては、高面部と低面部との高さの差、すなわち段部の高さが0.5mm以上、嵌合用凹部の段部からの幅が0.5mm以上、かつ、嵌合用凹部の低面部からの深さが0.2mm以上であることが、充分に高い電気抵抗調整層の変形防止効果を得るために好ましい。
【0076】
高面部と低面部との高さの差、すなわち段部の高さが0.5mm未満であると充分な効果が得られない場合があるので、0.5mm以上であることが好ましい。
嵌合用凹部の大きさ(嵌合用凹部が溝状のときにはその幅)は、0.5mm未満では電気抵抗調整層の成形材料へ完全には転写されず結果として嵌合用凸部の形成が不完全となり、本発明の効果が得られにくくなる場合がある。成形樹脂温度を高くし、流動性を大きくすることも対応策であるが、樹脂温度を高くすることで材料が酸化しやすくなる副作用もあり、嵌合用凹部の大きさとしては0.5mm以上であることが好ましい。嵌合用凹部の深さが0.2mm未満では充分な効果が得られない場合がある。
【0077】
電気抵抗調整層は導電性支持体である芯金の表面に形成され、導電性部材がえられるが、装置の小型化などの要求により、部材の要求外径は小さくなる傾向にある。円筒形の導電性支持体の場合、全長がA3サイズで300〜350mmで外径が10mm〜15mm程度、導電性支持体端部の小径部であるベアリング接続部は組み付けの関係上、直径5mm〜8mm程度の細長い形状の部品構成となる。
【0078】
その際、部材の剛性、強度を確保する為には、電気抵抗調整層内部で導電性支持体形状を大径化することが望ましい。たわみ剛性は外径の4乗、ねじり剛性は外径の3乗で変化する為、小径部であるベアリング接続部以外の芯金外径は8mm以上12mm以下とすることが望ましい。
【0079】
本発明の導電性部材において、大径部を形成することにより導電性支持体の剛性を高くすることができるので耐久性、及び、寸法精度を高めることができる。
【0080】
また、導電性支持体の段部及び嵌合用凹部では破壊強度を考慮し、応力集中を避けるためにR形状を付けることが望ましい。このとき、高面部と段部との境界が高面部と低面部との高さの差の1/2の曲率半径となるようにR面取りされ、嵌合用凹部の壁部と底面との境界部が、その曲率半径が嵌合用凹部の低面部からの深さの1/2となるようR面取りされ、かつ、嵌合用凹部の底面の、前記段部に垂直な方向の長さ(導電性支持体が円筒状の場合にはその軸方向の長さ)が0.5mm以上であることが望ましい。嵌合用凹部を段部に接して設けることで、高面部領域を大きくとることができる。低面部領域が大きいと電気抵抗調整層の変形が大きくなる傾向があるが、高面部領域を大きくとることにより、電気抵抗調整層の変形を小さくすることができる。すなわち、嵌合用凹部と段部とをできるだけ導電性支持体の端に設けることが好ましい。
【0081】
嵌合用凹部で、その壁部と底面との境界部にR面取りした場合、R形状を大きくすることにより溝の容積が減少し、本発明の効果が得られにくくなる。この場合には嵌合用凹部の底面の、前記段部に垂直な方向の長さ(導電性支持体が円筒状の場合にはその軸方向の長さ)を上記のように0.5mm以上とすることにより、R形状としたことによる影響を排除することができる。
【0082】
円筒状(本発明では”円柱状”の場合も含む)の導電性支持体に対して電気抵抗調整層を射出成形、押し出し成形で成形する場合、材料の流動性が金型内で制限され、流れにくくなる、圧力が高くなるなどの副作用が生じる。
【0083】
特に成形外径が変化せず、導電性支持体に大径部と段部とを設けることで、金型内の樹脂流路が狭くなるため、全長に材料を充填させるためには、高圧で樹脂を注入しなければならず、樹脂残留応力が大きくなる。
【0084】
さらに肉厚が変化するため冷却固化挙動に差が生じ、成形外形が金型に部分的に転写されないヒケなどが生じやすくなる。金型設計時や成形時に注意を払い、予め検討を行って、このような導電性支持体に大径部を設けることにより生じやすくなる障害を防止することが必要である。
【0085】
図2は図1(b)に示す導電性部材を帯電部材として静電潜像担持体上に配置した状態を示すモデル図である。導電性部材は静電潜像担持体に任意の圧力で当接されて配置される。また、空隙保持部材は画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で帯電部材に電圧を印加することにより、静電潜像担持体の帯電を行うことができる。導電性部材をトナー担持体及び、転写部材として使用する場合も、同様の形態で行うことができる。
【0086】
本発明において、導電性部材及び静電潜像担持体の形状は特に限定されず、静電潜像担持体はベルト状、円筒状いずれの形式もとることができる。導電性部材もブレード形状、円筒形状等種々の形状をとることができるが、ともに円筒形状であることが好ましい。両者が常に同一面で対向していると、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じてしまうが、両者を円筒形状として回転駆動させることで、この劣化を低減できるからである。ここで、図2のように空隙保持部材が感光体に接する場合には、従動回転となり動力機能を省くことが可能となる。
【0087】
本発明の導電性部材に電圧を印加させることで電荷を放出することで感光体を帯電させる機能を持たせる。帯電対象となる感光体とはパッシェンの法則により、ギャップ距離50〜300μmに均一に保つことで帯電部材として機能する。従って、空隙がこの範囲になるように空隙保持部材の寸法を決定する。
【0088】
図3に本発明の導電性部材を帯電体として組み込んだプロセスカートリッジ87を示す。導電性部材を帯電ローラ82aとして、プロセスカートリッジ87(静電潜像担持体、現像、クリーニングを含む装置)へ入れることにより、静電潜像担持体を含めた部分を同時にかつ全て交換するために、画質は安定する。交換もユーザーメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0089】
プロセスカートリッジ87の帯電装置82は、本発明の導電性部材である帯電ローラ82aや帯電ローラ82aを静電潜像担持体1に当接させるための図示しないスプリング等を備えている。帯電ローラ82aは図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。この帯電ローラ82aの空隙保持部材と静電潜像担持体81とは接しているがこの帯電ローラ82aの周囲には、帯電ローラ82aの表面に付着した異物を清掃する帯電清掃ローラ82bが設けられている。これにより、帯電ローラ82aの長寿命化を実現することができる。
【0090】
図3において、86は、プロセスカートリッジ87のクリーニング装置である。クリーニング装置86は、クリーニング補助剤成形物86bの先端と静電潜像担持体81とに接触して該クリーニング補助剤成形物86bを削り取って得た微粉末を該静電潜像担持体81の表面に供給するようにした第1のブラシローラー86d、前記第1のブラシローラー86dよりも前記静電潜像担持体81の移行方向の上流側で静電潜像担持体81に当接するように配置したクリーニングブレード86a、前記クリーニングブレード86aよりも前記静電潜像担持体81の移行方向の上流側に配置して、潤滑剤成形物86cの先端と該静電潜像担持体81とに接触して該潤滑剤成形物86cを削り取って微粉末を該静電潜像担持体81の表面に供給するようにした第2のブラシローラー86g、及び、前記第2のブラシローラー86gよりも前記静電潜像担持体81の移行方向の上流側で静電潜像担持体81に当接するように配置された塗布ブレード86hを有している。また、86fは、トナー回収コイルである。
【0091】
なお、露光装置83は、公知のレーザー方式によって、カラー画像形成に対応した光情報を一様に帯電された静電潜像担持体81の表面に潜像として照射する。LEDアレイと結像手段から成る露光装置も採用可能である。
【0092】
現像装置84は、静電潜像担持体81と対向する位置に、内部に磁界発生手段を備える現像スリーブ84aが配置されている。現像スリーブ84aの下方には図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブ84aへ汲み上げるための2つのスクリュー84bが備えられている。現像スリーブ84aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード84cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ84aに担持される。現像スリーブ84aは、静電潜像担持体81との対向位置において矢印の方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを静電潜像担持体1の潜像面に供給する。
【0093】
図4に本発明の導電性部材を帯電体として組み込んだプロセスカートリッジを組み込んだ画像形成装置の例を示す。プロセスカートリッジを画像形成装置に組み込んで、画像出力装置とすることにより、信頼性が高くかつ、高画質な画像を得ることができる。
【0094】
図4において、100は複写装置本体、200はそれを載せる給紙テーブル、300は複写装置本体100上に取り付けるスキャナ、500はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体100には、静電潜像担持体40の周囲に帯電、現像、クリーニング等の電子写真プロセスを実行する各手段を備えた画像形成手段18を4つ並列にしたタンデム型の画像形成装置20が設けられている。この画像形成装置20の上部には、画像情報に基づいて静電潜像担持体40をレーザー光により露光し潜像を形成する露光装置21が設けられている。また、画像形成装置20の各静電潜像担持体40と対向する位置には、無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト10が設けられている。中間転写ベルト10を介して静電潜像担持体40と相対する位置には、静電潜像担持体40上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト10に転写する一次転写手段62が配置されている。画像形成手段18の現像装置4には、上記のトナーを含んだ現像剤が用いられる。現像装置4は、現像剤担持体が現像剤を担持、搬送して、静電潜像担持体40との対向位置において交互電界を印加して静電潜像担持体40上の潜像を現像する。このように静電潜像担持体40に交互電界を印加して現像剤を活性化させるので、トナーの帯電量分布をより狭くすることができ、そのために、静電潜像担持体40の現像性を向上させることができる。また、静電潜像担持体40及び現像装置4と共に一体に支持されて画像形成装置20に対し着脱自在に形成されたプロセスカートリッジ(図3における87を参照。)とすることができる。このプロセスカートリッジは、この他に帯電手段を含んで構成してもよい。
【0095】
前記画像形成装置20の動作は以下の通りである。初めに、原稿自動搬送装置500の原稿台30上に原稿をセットするか、又は、原稿自動搬送装置500を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿自動搬送装置500を閉じてこれで原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置500に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後に、他方、コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちに、スキャナ300を駆動させて、第一走行体33及び第二走行体34に走行させる。次に、第一走行体33で光源から光を発射すると共に原稿面からの反射光をさらに反射して第二走行体34に向け、さらに、第二走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサ36に入れて、原稿内容を読み取る。
【0096】
続いて、不図示のスタートスイッチを押して、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動させ、他の2つの支持ローラを従動回転させて、中間転写ベルト10を回転させる。同時に、個々の画像形成手段18でその静電潜像担持体40を回転して各静電潜像担持体40上にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの単色画像をそれぞれ形成する。そして、中間転写ベルト10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写ベルト10上に合成カラー画像を形成する。
【0097】
一方、不図示のスタートスイッチを押して、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転させ、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、この給紙カセット44の1つから繰り出したシートを分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、この1枚ずつ分離したシートを搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、そして、この給紙路48に導いたシートをレジストローラ49に突き当てて止めるか、或いは、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、このトレイ上に繰り出したシートを分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差しで給紙路53に入れ、そして、この給紙路53に入れたシートを同じくレジストローラ49に突き当てて止める。次に、中間転写ベルト10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させた後、中間転写ベルト10と二次転写装置22との間にシートを送り込み、二次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0098】
このようにして得た画像転写後のシートは、二次転写装置22に搬送し、次に、定着装置25に送り込んで、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出して、排紙トレイ57上にスタックするか、或いは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで、反転して再び転写位置へと導いて、シートの裏面にも画像を記録して後、この画像を記録したシートを排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。一方、画像転写後の中間転写ベルト10は、中間転写ベルトクリーニング装置17において、中間転写ベルト10上に残留する残留トナーが除去された後、画像形成装置20による再度の画像形成に備えられる。
【実施例】
【0099】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。
導電性支持体はすべてステンレス表面にニッケルめっきを施してなる円筒状のもの(長さ350mm)を、仕上げも同等のものを用い、これらの中央部に軸方向長さが300mm、かつ、外径が14mmとなるよう、ABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーCL440−G、日本油脂(株)製)をポリエーテルエステルアミドとABS樹脂の合計100重量部に対して5重量部を混合の後、溶融混練してなる導電性樹脂組成物(吸湿性があって熱膨張が大きい)を用いて、導電性支持体をインサートとする射出成形により導電性支持体の中央部に長さ320mmの電気抵抗調整層を設けた。使用した金型では、その成形ゲートは電気抵抗調整層形成キャビティの一方の端に設けられていた。次いで切削加工し、電気抵抗調整層の外径を12.6mmとした。
【0100】
比較例1の導電性部材では図5にモデル的に示すような外径が一様な導電性支持体を、比較例2及び3の導電性部材では図6にモデル的に示すような中央に大径部が、大径部の両端には段部を介して小径部が、それぞれ形成された導電性支持体を用いた。実施例1〜3の導電性部材では、図7にモデル的に示すような、中央に大径部を、大径部の両端には段部を介して小径部が形成され、かつ、小径部の段部に接する部分に段部に沿って周方向に溝状の嵌合用凹部(嵌合用凹部の底部は小径部及び大径部と同心の円柱の側面に等しい)が形成されている。これらの寸法をそれぞれ表1に記載する。
【0101】
ここで、比較例3,4、及び、実施例1〜3の導電性支持体では、それらの大径部の段部側端には表1に示す曲率半径r(段部R寸法)でR面取りされており、実施例2及び3では溝状の嵌合用凹部の側面と底部との間にも表1に示す曲率半径r(溝R寸法)でR面取りされている。
【0102】
【表1】

【0103】
得られた各導電性部材について評価を行った。
溝状の嵌合用凹部が形成されていた導電性支持体を用いた導電性部材に関しては、に電気抵抗調整層の内側に嵌合用凹部に相当する嵌合用凸部が形成されており、これららは互いに嵌合していた。
【0104】
ついで、図5に示したように電気抵抗調整層の両端の移動を調べた。電気抵抗調整層の両端(一方は成形時に成形ゲート側となった端であり、他方を”成形反ゲート側”と云う)が、導電性部材の端部側に移動した場合を「+(プラス)」、中央側に移動した場合を「−(マイナス)」とし、所定の試験前後にノギスにより測定し、それぞれ移動距離を算出した。
【0105】
画像形成装置のロール状帯電体としての利用を想定すると、伸びが0.3mm以上生じるとジャーナル部のベアリングと干渉しまう。一方、収縮は0.5mm以上で感光体の電荷層に空隙保持部材が当接して、感光体の電荷層の損傷が発生し、電荷リークする可能性が生じることより、判断点とし、伸びが0.2mm以下で収縮が0.3mm以下の場合を良好であるとして”◎”、伸びが0.2mm以下で収縮が0.3mm超0.5mm未満の場合を充分であるとして”○”、伸びが0.3mmを越えるか、収縮が0.5mmを越えた場合を不充分であるとして”×”として評価した。
【0106】
試験条件は35℃、90%RHの高温多湿条件で1日放置し、その後、通常室内(室温下)に1日放置した場合、80℃で加熱した場合(表面層を形成するため樹脂を塗布した後焼き付け加工を行った)、あるいは、室温下で1ヶ月放置した場合のそれぞれで行った。
【0107】
上記、表面層の形成は抵抗調整層の外表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料製)、及びカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物をスプレーコーティングし膜厚約10μmの表面層を形成し、その後、オーブンで80℃、1時間の加熱処理を行って表面層を形成した。
【0108】
測定及び評価結果を表1に併せて示す。
表1により、本発明によれば、接着剤を使用せず、かつ、高温多湿条件でも、あるいは、表面層を形成しても、及び、1ヶ月という長時間の経時後であっても、電気抵抗調整層の変形の伸縮が抑制された安定した形状の導電性部材が得られることが判る。
【0109】
なお、比較例1〜4では段形状は0.5mm以上必要で、電気抵抗調整層の収縮は抑えられているが、伸びについては効果がなく、逆に段を付けることで、成形ゲート側の金型内樹脂流路が狭くなり、樹脂圧力が増加し、残留応力が増加したためか、むしろ伸び量が増加していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(a)本発明に係る導電性部材に用いる導電性支持体の一例を示すモデル斜視図である。(b)(a)の導電性支持体を有する本発明に係る導電性部材のモデル断面図である。(c)本発明に係る導電性部材に用いる導電性支持体の他の一例を示すモデル斜視図である。(d)(c)の導電性支持体を有する本発明に係る導電性部材のモデル断面図である。
【図2】図1(b)に示す導電性部材を帯電部材として静電潜像担持体上に配置した状態を示すモデル図である。
【図3】本発明にかかる導電性部材を帯電ローラとして有するプロセスカートリッジを示すモデル図である。
【図4】本発明に係るプロセスカートリッジを有する画像形成装置を示すモデル図である。
【図5】比較例の導電性部材を示すモデル断面図である。
【図6】他の比較例の導電性部材を示すモデル断面図である。
【図7】実施例の導電性部材を示すモデル断面図である。
【図8】電子写真方式の画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0111】
201a、201b 導電性支持体
201a1、201b1 大径部
201a2、201b2 嵌合用凹部
201a3、201b3 小径部
201a4、201b4 段部
202a、202b 電気抵抗調整層
203a、203b 空隙保持部材
81 静電潜像担持体
82 帯電装置
82a 帯電ローラ
83 露光装置
86 クリーニング装置
87 プロセスカートリッジ
101 静電潜像担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体とその導電性支持体の面上に形成された電気抵抗調整層を有する導電性部材であって、
前記導電性支持体の前記面の中央に電気抵抗調整層側に向かって高くなった高面部、前記高面部の周辺の前記面に嵌合用凹部が設けられた低面部を有するとともに、該高面部と該低面部との間に段部が形成され、かつ、
前記電気抵抗調整層が、前記高面部全体と前記低面部の少なくとも一部との上に設けられるとともに前記導電性支持体側の面に前記嵌合用凹部に嵌合する嵌合用凸部を有することを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記嵌合用凹部が、前記段部に接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記嵌合用凹部が前記段部に沿って溝状に設けられたものであることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記嵌合用凹部が複数個設けられ、これら複数の凹部が前記段部に沿って配置されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記高面部と前記低面部との高さの差が0.5mm以上、前記嵌合用凹部の前記段部からの幅が0.5mm以上、かつ、前記嵌合用凹部の前記低面部からの深さが0.2mm以上であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記高面部と前記段部との境界が該高面部と前記低面部との高さの差の1/2の曲率半径となるようにR面取りされ、前記嵌合用凹部の壁部と底面との境界部が、その曲率半径が該嵌合用凹部の深さの1/2となるようR面取りされ、かつ、該嵌合用凹部の底面の、前記段部に垂直な方向の長さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性支持体の前記面の前記電気抵抗調整層が形成されていない部分に該電気抵抗調整層の端部に接して、該電気抵抗調整層の高さより高い空隙保持部材を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項7に記載の導電性部材。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材の製造方法において、前記電気抵抗調整層を、電気抵抗調整層形成材料を前記導電性支持体の前記面に溶融状態で供給して形成することを特徴とする導電性部材の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の導電性部材からなることを特徴とする帯電部材。
【請求項11】
請求項10に記載の帯電部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−216286(P2008−216286A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49342(P2007−49342)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】