説明

小型ゲッタ蒸着層の形成方法及びそうして得られたゲッタ蒸着層

支持体(10)上に感光性高分子材料の層(11)の形成、高分子層の一部に化学的な変性を引き起こすために高分子層の選択的露光、高分子層の上記のようにして露光された部分又は上記のようにして露光されなかった部分の1方のみを溶媒で除き、そうして高分子層内の空洞(12、12’・・・)の形成、上記空洞の底部および残りの高分子上に陰極析出によりゲッタ材料の薄い層(13)の形成、そして支持体表面の上に少なくとも1つのゲッタ材料蒸着層(131、131’、・・・、20)を残して、第1溶媒で除かれなかった高分子部分を第2溶媒により除く、各工程を含む小型ゲッタ蒸着層の形成方法が記載される。同様に、本発明はこの方法によって得られた小型ゲッタ蒸着層に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲッタ材料の小型蒸着層、すなわち1mm未満の、そして通常は数μm〜数百μmの横の寸法を有する蒸着層の形成方法に関する。同様に、本発明は、そうして得られたゲッタ材料の蒸着層に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲッタ材料は、例えば水素、酸素、二酸化炭素、水蒸気そしてある場合には窒素のような気体の痕跡を固定することができる特性を有する。これらの材料は通常はIII、IVそしてV族の遷移グループ(スカンジウム、チタニウムおよびバナジウムのグループ)又は他の元素、通常遷移金属あるいはアルミニウムとそれらの合金に属する金属である。最も広く使用されるゲッタ材料はチタニウムをベースにした合金および特に、ジルコニウムをベースにした合金である。
【0003】
最近のゲッタ材料の使用分野は、この分野で“超小型電気機械式システム”又は “超小型光学電気機械式システム”、そして略記でMEMSおよびMOEMS(以下ではMEMSとのみ言及がなされ、同様にMOEMSを当てる)として知られる微小機械デバイスで表わされる。これらのデバイスは、内部に、補助部品およびデバイスの代役をし、そして外部へ信号送信のための電気的フィードスルーに加えて、所定の動きを取り得る微小機械部品又は電磁波放射と相互に作用し得る部品が存在する密封された空洞(キャビティ)を含む。これらのデバイスの例は、米国特許第5594170号、米国特許第5656778号および米国特許第5952572号のように多くの特許に記載される微小加速度計、米国特許第5821836号および米国特許第6058027号に記載される通信分野、そして特に携帯電話の製作に使用される小型共振器、又はその例が米国特許第5895233号に記載される小型IRセンサーである。
【0004】
製造工程の最後に、MEMSの空洞内に、MEMSの働きを妨害する可能性のある数種類のガスが含まれ(工程の残留物又は空洞壁自体の脱ガスが原因である)、例えば、それらは、可動の微小機械部品の動作を変えたり(部品がその中で動いている媒体の粘度の変化によって)、又は系内の熱伝導を、それ故にIRセンサーの場合には温度の尺度を変えて、変え得る。
従って、空洞内へこれらのガスを除くことができるゲッタ材料を導入することが必要である。MEMSデバイス内でのゲッタ材料の使用は、例えば米国特許第5952572号、同第6499354号、同第6590850号、同第6621134号、同第6635509号および米国特許出願公開第2003/0138656号に記載される。
【0005】
最近の世代のMEMSにおいて、空洞は極度に寸法を減じてきており、そしてゲッタは、横方向の寸法が数百μm〜数mmで且つ数分の1μm〜数μmで変化する厚さを持つ薄層状でのみ挿入され得る。加えて、MEMSは、局所的堆積と異なる複数の材料からなる複数の層の選択的除去によって、単一の支持体(一般にはシリコンウエハー)上に数1000の小型デバイスが同時に作製される半導体のそれから導入された技術を用いて作製される。これらの生産のためには、堆積される種々の層の寸法および位置の正確さをかなえ得ることが必要であり、そしてこのことがゲッタ材料の蒸着にも当てはまる。
【0006】
寸法および蒸着層の位置の高度の正確さを備えた薄い蒸着層の製造を可能とする技術は“リフトオフ”として知られる1つであり、支持体上に光硬化高分子材料(これらの材料はこの分野で“レジスト”として周知である)の層の形成、通常はUV光に対するマスクを用いて高分子層を選択的に露光、あらかじめ露光しなかった部分(又はレジストと溶媒の種類によっては露光された部分)を第1溶媒によって選択的に除き、支持体上および第1溶媒によって除かれなかったレジスト上に望ましい材料、例えば金属あるいは酸化物の薄い層を蒸着、そして最後に、第2溶媒によって、光によってあらかじめ重合されたレジストを除いて、それ故支持体上、レジスト層上に第1溶媒によって形成された開口の近くにのみ望ましい材料からなる蒸着層を残すことにある。蒸着技術として、例えばヨーロッパ特許出願公開第EP341843号および国際出願公開第03/043062号に記載の蒸着がほぼ例外なくリフトオフ型の方法に用いられる。しかしながら、蒸着した層がぎっしり詰まりそしてその際にゲッタ材料の機能を得るために必要な大きな表面積と多孔性という特徴を失う状態になるので、この技術はゲッタ材料層の蒸着には不適である。
【0007】
ゲッタ材料の製造のために、一般に“スパッタリング”と呼ばれる陰極析出技術を用いることが好適である。この技術においては、その上で薄層の形成が望ましい支持体および蒸着されるのが望ましい“ターゲット”材料が処理室内に配置され、先ず室が排気されそしてその後に、通常約0.01〜0.1パスカル(Pa)の圧力で希ガス、一般にはアルゴン又はクリプトンの雰囲気に満たされる。次いで、支持体ホルダーとターゲットホルダー間に数1000ボルトの電位差を加えることによって(後者がカソード電位であるように)、電場によってターゲットに向かって加速されその際にその衝撃腐食をもたらすAr(又はKr)のプラズマイオンが形成され、ターゲットの腐食に起因する種(通常は原子又は原子のクラスター)が支持体上に蒸着し、それ故薄層を形成する。製法の因子を適切に決めることによって、この技術はゲッタ材料層の形成に適当であり得る。
【0008】
しかしながら、薄層の蒸着分野で周知であるように、リフトオフ製法におけるスパッタリングの使用は難しい。
生じる第1の問題は、スパッタリングの間、レジストの過熱とその後のその硬化が生じ、その際にレジスト層は最早溶媒で除去され得ないということであり、この問題はこの分野で周知であり、そしてそれは、例えばエヌ.エー.パパニコロウ(N.A.Papanicolaou)等によるInst.Phys.Conf.Ser.No.65、407−414頁(特に411頁を参照のこと)の“リフトオフによって定義されるスパッタ処理されたアモルファス金属ゲートを用いた低ノイズMOSFET”の論文に記載される。問題を打開するために、この論文は蒸着の間に支持体を約10℃の温度で冷却することを提案するが、装置を複雑化するのに加えて、これは、リフトオフが適用される製品において通常望まれない効果である、蒸着された層の密度を減少させるという結果を招く。
【0009】
スパッタリングを使用する第2の問題は、この技術では材料の蒸着は方向性でない、すなわち材料は支持体上に選択的方向よりむしろ全方向に蒸着する(たまたま、蒸着では反対である)ということである。この特性が、レジストの上部表面上、レジストに形成された空洞の底部(すなわち、支持体感光領域上に)およびレジストからなるこれらの空洞の側面壁上での連続層を形成して、すべての有効表面へのターゲット材料の均一な蒸着をもたらす。連続した蒸着された層はその後のレジストへの第2の溶媒の到達そしてそれ故支持体表面からのそれの除去を妨げる。先行技術の数多くの文献には、種々の解決策を提供するが、常に特別な方策の使用を必要とするという問題がある。
【0010】
第1の方策は、蒸着される材料でちょうど辛うじて満たされるに十分に深い、空洞の全周囲に沿ってレジスト層の下に凹所(この分野では“逃げ溝”又は“切り欠き”として知られる)が存在するということである。このように、蒸着された層の連続性が遮断されて、それ故に溶媒がレジストと支持体表面の間の接触領域に到達するためのアクセスの方法が残る。しかしながら、凹所の形成は、通常レジスト層が現実には下の層(支持体と直接接する1つ)が上の層よりも速く第1溶媒によって侵蝕されるように、異種の溶媒に異なる溶解性特性を有する異なる高分子材料からなる二つの層であるということを必要とする。このやり方は、例えば米国特許第5705432号およびヨーロッパ特許出願公開第341843号そして国際公開第03/043062号に説明される。
【0011】
2002年のGaAsのマンテク会議の議事録の論文11a(article 11a of the proceedings of 2002 GaAs Mantech conference)であるエフ.ラデュレスク(F.Radulescu)らによる“高容量GaAsの調製のためのCOスノーリフトオフを併用した完全なスパッタリング金属化の紹介”の論文は、2つの層のレジストの使用に加えて、レジスト上の蒸着層を切り取りそして溶媒の侵蝕にさらすために、レジストとその上の表面上に蒸着された材料との間の熱的示差膨張を引き起こすCO“スノー”を用いたスパッタリングによる蒸着後の処理を提案する。最後に、米国特許5658469は、逃げ溝形成のため、レジストの上側部を下側部に対して溶媒に不溶性にして、後で後者が優先的に除かれ得るようにするため異なるパワーの電子線を用いるレジストの連続照射を提案する。
【0012】
スパッタリングの指向性を改善するために、ターゲットから支持体を離しそして2つの部品の間で支持体に非垂直の方向(又はそれに近い)に動いている粒子を途中で捕捉する機械的フィルターであるコリメータを置くことも可能であるが、これらの対策は支持体上に蒸着された材料の量をターゲットから除かれた量に対して少なくし、材料の浪費、ターゲットをさらに頻繁に取替える必要性、そして簡単には処理コストの上昇をもたらす。
【0013】
最後に、日本特許出願公開第2002−043248号に示されるように、リフトオフ方法においてスパッタリングによる蒸着を用いるために、スパッタリングが非常に低い圧力、例えば0.1Paの範囲で発生するということが必要である。これは、工程への2つの負の効果を伴って、“スパッタされた”原子のエネルギーの増加とその結果の蒸着層の下に位置する材料と同様に蒸着される層の温度の上昇を引き起こす。1つには後に溶媒で除くことがさらに困難(又は不可能)であるレジストの熱硬化が起こり、そしてもう1つにはゲッタ材料層が余りにぎっしり詰まる傾向にあり、そしてその際に形態学的特徴を失うことである。
これらの方法の厄介な問題の結果として、スパッタリング蒸着技術は、リフトオフ方法における蒸着処理として実際の産業上の応用がされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点が無いスパッタリングによってゲッタ材料の蒸着工程が行われる、小型ゲッタ蒸着層の形成ためのリフトオフ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、以下の工程:
支持体上に感光性高分子材料層を形成し、
上記高分子層の部分に化学的変性を引き起こすために高分子層の少なくとも一部を選択的に露光させ、
上記高分子層の上記のようにして露光された部分又は上記のようにして露光されなかった部分の1方のみを第1溶媒で除き、上記高分子層内にその底壁が支持体の表面によって形成される少なくとも1つの空洞を形成し、
上記空洞の底部および第1溶媒によって除かれなかった高分子層の部分の上にゲッタ材料の薄層を陰極析出法によって形成し、そして
第1溶媒によって除かれなかった高分子部分を第2溶媒で除くことによって、上記支持体の表面に少なくとも1つのゲッタ材料の蒸着層を残すこと、を含む方法において、
前記の陰極析出工程が、高分子層の低部での凹所形成のための工程あるいは処理のいずれによっても先行されていないこと、そして上記陰極析出工程が約1〜5Paの容器圧力で且つプラズマが実際に関係するターゲットの面積1cm当たり6〜13Wの比出力で行われることを特徴とするリフトオフ方法によってこれらと他のメリットが得られる。
【0016】
本発明の方法で用いられるスパッタリング条件と工業プロセス、特に半導体産業で通常用いられるそれらとの間の主たる相違は、本発明においては操作圧力が1Paより大きいが周知の方法ではこの圧力は通常約0.01〜0.1Paであり、本発明においてはスパッタリング室内で維持される圧力は絶対値が1つ又は2つの位数大きいということである。
【0017】
同様に、本発明の方法におけるターゲットへの比出力も、通常約20〜40W/cmであるスパッタリング工程で典型的に用いられるそれらとは異なる特徴的な値を有する。本文および特許請求の範囲で用いられるように、比出力の定義と考え方が一体になって、それは使用される希ガスのプラズマイオンと接触するターゲット部分の面積で割って適用される出力を意味する。プラズマによって実際に関係されるターゲットの領域は、最も簡単な場合に円形の冠の形状を取り得、しかしより複雑な形状を取り得る同じ表面のほんの一部分に過ぎないということはこの分野で周知である。プラズマによって実際に関係される領域の形状は、例えば磁場(当業者に周知の“マグネトロン”様式のスパッタリング)によって制御され得て、そして平均でターゲットのより均一な浸蝕を得るために、工程の間に、関係させられる領域を動かすことが可能であることは周知である。しかしながら、すべての瞬間およびすべての操作形態において、本発明による比出力の計算と制御のために重要な面積であるプラズマが作動するターゲットの部分の実際の面積を知ることは可能である。
本発明による方法のさらなる利点および特徴は、添付の図面を参照した以下の詳細な記載から当業者に明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明のリフトオフ方法の主たる工程を図式的に示す断面図である。そして、図2は本発明の方法で得られた複数のゲッタ蒸着層を有する支持体の斜視図である。
本発明のリフトオフ方法の第1工程は支持体10(図1.a)の選択にある。支持体は金属、セラミック、ガラス、石英であり得るか又はそれは場合により後の操作が行われる表面へのパッシベーション層(例えば、酸化ケイ素又は窒化ケイ素で作られる)を用いた半導体材料で作られ得る。材料の選択はこの方法で製造されるゲッタデバイスの最終の用途に依存する。最もよく使われる材料は、10分の数mm〜約1mmの厚さで約10〜30cmの可変の直径のウエハーにて市販される単結晶又は多結晶シリコンである。
【0019】
本発明方法の第2工程は支持体10上の光硬化高分子材料からなる層11(図1.b)の形成にある。光硬化高分子材料はこの分野で“フォトレジスト”という名前で知られる。層11は支持体上で液体材料を均一分散させることと支持体上で固化させることによって“現場で”調製され得る。典型的にはこの工程は、支持体の中心で有機材料を含んだ適切な量の溶液を堆積させ、溶液が拡散させられるように支持体を早い回転に設定し、そして溶媒を蒸発させ、支持体上に有機材料の平坦な層を残すことにある“スピンコーティング”によって行われる。溶媒の蒸発は通常該層の形成が完了した後の加熱によって促進される。
【0020】
同様に、特に支持体が平面的でない場合に(例えば、それが空洞又は浮上り部をすでに示している部分的に処理された部品であれば)、支持体上で溶液をスプレー(“スプレーコーティング”)によって高分子層を形成することも可能である。スピンコーティング又はスプレーコーティングでの使用に適した大量生産される製品は、マサチューセッツ州(米国)、マールボロー市のシップレイ社(Shipley Company)からの登録商標MICROPOSIT S−1800シリーズの溶液である。その代わりに、厚さおよび組成に関しては所望の高分子層に相当し、加熱されたロールを用いて離して支持体に均一に付着される、いわゆる“ドライフィルム”を用いることも可能である。本発明の目的に適したドライフィルムはポリアーノ・ミラネーゼ(Pogliano Milanese)(ミラノ県)のTOK Italia S.p.A社によって販売される製品ORDYL FP 325である。
【0021】
そのように置かれた層11は、この分野で周知のフォトリソグラフィー法によって、光の照射により選択的に高感度にされる。図1.cにおいて矢印は光照射(通常は紫外線)を示しそして層11の黒い部分は光増感された領域、すなわち露光されなかった領域のものとは異なる所定の溶媒中での溶解性を有するように化学的変性を受けた領域を示す。
次いで、先に露光の済んだ11の領域(又は溶液に依っては、露光されなかった領域)がいわゆる“現像液”を用いて選択的に除かれる。例えば、膜11が登録商標MICROPOSIT S−1800シリーズの溶液のスピンコーティング又はスプレーコーティングによって調製されたら、適した現像液はシプレイ社(Shipley Company)からの登録商標MICROPOSIT MF−300シリーズのそれらであり、一方、ORDYLドライフィルムを使用する場合は、適した溶媒は1重量%の炭酸ナトリウム水溶液である。この工程の結果が図1.dに示され、そして開口12、12’、・・・を有する層11と一体となった支持体10からなる。
【0022】
続いての工程は、複数の点が蒸着下の材料の粒子を示しそして波状矢印がこれらの粒子の蒸着方向を示す図1.eに図式的に示されるスパッタリングによるゲッタ材料の蒸着である。この工程が本発明の方法を特徴付ける1つである。先ず第一に、スパッタリング蒸着が、従来技術の方法におけるように支持体に接する領域内の凹所の形成に導く層11の処理によって先行されていることはない。それに加えて、蒸着はこの技術にとって典型的ではない条件下、特にこの分野で標準的に採用される値に対して絶対値が1つ又は2つの位数大きい室内での稼動圧力そして適用される比較的低い出力で行われる。スパッタリングの間の室内の圧力は、アルゴンを用いる時、約1〜5Paそして好適には約1.5〜4Paであり、そして適用される出力は、例えば約16.5cm直径のターゲットで稼動して、約500〜1000Wで変化し得る。
【0023】
支持体温度とターゲットおよび支持体間の距離は別の蒸着因子である。温度に関して、支持体は蒸着の間冷却され得る。ターゲット−支持体間の距離は40mmより大きくそしてそれは好適には約50〜80mmである。同様に、この因子は、通常さらに短い、例えば約10mmのターゲット−支持体間の距離で行われる陰極析出では標準的ではない。しかしながら、これら2つの因子の制御は、室圧力と比出力とは逆に、本発明の目的にとって必須ではない。
蒸着されたゲッタ材料層の空隙率を増やすために、ターゲットと支持体とをそれらの向かい合う面が平行でないように配置すること、そして蒸着の間支持体を動かす(例えば、回転させる)ことも同様に可能である。
【0024】
蒸着工程の間、チタニウムのような単一の金属の層を形成することは可能であるが、これらは通常ゲッタ機能の活性化のため、ゲッタデバイスが意図される最終デバイスとは適合し得ない高温で真空(又は不活性ガス)下の熱処理を必要とする。その代わりに、米国特許第5961750号に記載されるようなジルコニウム、コバルトおよび希土類を含有する合金そして特にSt 787の名前で本出願人によって販売されるZr80重量%−Co15重量%−希土類5重量%の組成の合金、又はジルコニウム、バナジウムおよび/又はチタニウムを含有する合金又は化合物の層を蒸着することが可能である。同様に、ヨーロッパ特許出願公開第1518599号に記載されるような二層のゲッタ蒸着層を調製することも可能である。
【0025】
図1.eに図式的に示される工程の結果が図1.fに示される。開口12、12’、・・・に対応する支持体の複数の領域および予め除去されなかった高分子層11の部分のいずれをも覆ったゲッタ材料の薄層13が得られる。
最後に、本発明方法の最後の工程は支持体10上になお存在する高分子蒸着層11の部分の溶媒を用いた除去にある。
前述のように、この工程は、従来技術の方法においては前述の特別な方策、特に開口12、12’、・・・の周辺で層11の下側の“逃げ溝(アンダーカット)”の形成が用いられないと、実際に行うことが不可能であるひとつである。反対に、この発明者らは上述の特別な条件でスパッタリング工程を行うことによって、特別な方策を用いることなく、層11の溶媒による除去が効果的に起こるということを観察した。層11の除去のための溶媒として、層が、MICROPOSIT溶液で調製された場合は登録商標MICROPOSIT REMOVERシリーズの製品を、又はORDYLドライフィルムの場合は40−50℃で水酸化ナトリウム溶液を用いることが可能である。
【0026】
この工程、そして全体の方法の最終の結果は、図1.gに示される局在した蒸着層131、131’、・・・を有する支持体10である。蒸着層131、131’、・・・は約0.5μmの最小限の厚さを有し得る。実際、蒸着層が薄すぎるとその上で生長する表面の形態を再生することができない傾向となりそしてその際に平らでぎっしりつまりすぎて良好な吸着特性を有さない結果となるという事実に恐らく起因して、もっと薄い厚さではガス吸収特性が過度に低減されるということが観察された。反対に、最大限の厚さは望ましい用途と矛盾しない収着能力を有することと蒸着層の形成の時間(そして従ってコスト)の間の妥協検討によって決定される。加えて、過度に厚い蒸着層は支持体から剥離する傾向がある。本発明にとって適した蒸着層は、最大限の厚さが約20μm、そして好適には約1〜5μmを有する。
【0027】
任意的に、本発明の方法は、高分子層内に第1溶媒を用いて少なくとも1つの空洞を形成する工程と、スパッタリングによりゲッタ材料を蒸着する工程との間に更に1つの工程を含む。このさらなる任意的な工程は、第1溶媒を用いた予めの除去処理によって支持体上に残された高分子層部分の熱処理である。この処理は、スパッタリングによるゲッタのその後の蒸着の間、高分子がより良好な機械的特性そしてそれ故第1溶媒による選択的な除去の間に得られたパターンを維持するため改良された能力を有するように、高分子の硬化結果を有する。それはリフトオフ方法では一般には行われないが、この工程は薄膜蒸着方法の分野では周知であり、そして例えば“現像後焼付け(ベーキング)”と呼ばれる。 この工程を行うために必要とされる温度は高分子の化学的性質に依存する。前述の材料では、この工程は約100〜150℃で変動し得る。
【0028】
図2は、その上に複雑な形状のゲッタ材料の蒸着層が本発明の方法で得られたタイプの支持体10の一部の光学顕微鏡を用いて得られた写真の複製である。図では、種々のゲッタ蒸着層が要素20として一緒に示され、また、リフトオフ方法の終わりに露光される結果となる支持体(この場合、シリコン製)の表面の領域が21として示される。図に示されるように、本発明の方法で得ることが可能である個々の蒸着層の寸法決定と位置決めの正確さを裏付けて、蒸着層は鮮明かつ直線的な端部を有する。特に、図に示される蒸着層は約2μmの厚さを有し、細長い直線形状を有する蒸着層20の領域は約120μmの幅を有し、露光された領域21は約100μmの幅を有する。図に示される位置決めの正確さと同様にこれらの寸法特に横のものは、ゲッタ材料層の蒸着以外の方法では正確且つ再現可能な方法で得られことはできないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明のリフトオフ方法の主たる工程を図式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の方法で得られた複数のゲッタ蒸着層を有する支持体の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 支持体
11 光硬化高分子材料からなる層
12 開口
12’ 開口
13 ゲッタ材料の薄層
131 蒸着層
131’ 蒸着層
20 蒸着層
21 露光された領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型ゲッタ蒸着層(131、131’、・・・、20)の形成のためのリフトオフ方法であって、下記の工程:
支持体(10)上に感光性高分子材料層(11)を形成し、
上記高分子層の部分に化学的変性を引き起こすために高分子層の少なくとも一部を選択的に露光させ、
上記高分子層の上記のようにして露光された部分又は上記のようにして露光されなかった部分の1方のみを第1溶媒で除き、上記高分子層内にその底壁が支持体の表面によって形成される少なくとも1つの空洞(12、12’、・・・)を形成し、
上記空洞の底部および第1溶媒によって除かれなかった高分子層の部分の上にゲッタ材料の薄層(13)を陰極析出によって形成し、そして
第1溶媒によって除かれなかった高分子部分を第2溶媒で除くことによって、上記支持体の表面に少なくとも1つのゲッタ材料の蒸着層(131、131’、・・・、20)を残すこと、を含む方法において、
前記の陰極析出工程が、高分子層の低部での凹所形成のための工程あるいは処理のいずれによっても先行されていないこと、そして上記陰極析出工程が約1〜5Paの容器圧力で且つプラズマが実際に関係するターゲットの面積1cm当たり6〜13Wの比出力で行われることを特徴とするリフトオフ方法。
【請求項2】
陰極析出の間のターゲットと支持体との距離が40mmより大きい請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の距離が50〜80mmである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
析出の間に支持体が冷却される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
支持体の材料が金属、セラミック、ガラス、石英又は半導体材料のなかから選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記材料が多結晶シリコンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記高分子層(11)の形成が、溶媒除去後に支持体上に上記高分子層を形成可能な有機材料を含む予め定めた量の溶液を支持体の中心に堆積させ、溶液が支持体上に拡がるように支持体を高速で回転させ、そして溶媒を蒸発させることによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記高分子層(11)の形成が、溶媒除去後に支持体上に上記高分子層を形成可能な有機材料を含む溶液を支持体上に噴霧することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記高分子層(11)の形成が、その所望の層に厚さおよび組成が合致する高分子膜を加熱されたロールを用いて支持体表面に均一に付着することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
陰極析出の間の容器内の圧力が約1.5〜4Paである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
陰極析出の間、支持体の表面が、ターゲットの表面に対して非平行に保持され、且つターゲットに対して動きを続ける請求項1に記載の方法。
【請求項12】
蒸着したゲッタ材料が、チタニウム、ジルコニウムとコバルトと希土類との合金、又はジルコニウム、バナジウムおよび/又はチタニウムの合金あるいは化合物の中から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
高分子層内に第1溶媒を用いて少なくとも1つの空洞を形成する工程と、ゲッタ材料を陰極析出によって蒸着する工程との間に、高分子の硬化を引き起こすために有効な温度まで高分子層の一部の熱処理を行う工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記温度が約100〜150℃の範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法によって得られた小型ゲッタ蒸着層(131、131’、・・・、20)を有する支持体(10)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537981(P2008−537981A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506057(P2008−506057)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000242
【国際公開番号】WO2006/109343
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(500275854)サエス ゲッタース ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】