説明

局地通報システム

【課題】特に、多くの児童・生徒の登下校時の安全を守る用途に適用して、安価な費用で高い実効性を得ることのできる局地通報システムを提供する。
【解決手段】対象者に携帯され、押釦18a,18bが操作されたときに警報信号を無線で所定範囲内に送信する携帯型端末器1と、携帯型端末器1からの警報信号を受信する受信部17および警報信号の受信時に作動する受信報知部19を備えた監視装置2とを有する。監視装置2は警戒区域内において間隔をあけて複数配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、児童・生徒の登下校時の安全、高齢者や病弱な人の保護などに適した局地通報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通学や通勤の経路での安全を守る手段として、防犯ブザーや護身用スプレーを携帯させて、これを緊急事態の発生の際に操作して作動させることにより、近くにいる人に知らせたり、相手を威嚇して難を逃れるように図るものが知られている。また、近年では、携帯電話機の機能にGPS(Global Positioning System 全世界測位システム)端末による位置検知機能やテレビカメラからなる撮像機能を付加した携帯端末器を安全確認の対象者に携帯させるとともに、警備保障会社の監視センターなどにおいて、携帯端末器から無線で送信される現在位置検知信号や画像信号に基づき、対象者を監視して、救援が必要な非常事態が発生したときに警備員などが現場に駆けつけるシステムも提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−76289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の手段では、犯罪者はできるだけ人目につかない場所を選んで犯行に及ぶのが普通であるから、防犯ブザーを操作しても、そのブザー音を近くで聞いてもらえないことの方が多く、本来の目的を達し難い。また、防犯ブザーや護身用スプレーは、相当に切迫した事態が発生しないと、操作し難いものである。例えば、進行方向前方に不良グループがたむろしているということだけで防犯ブザーを鳴らしたり、普段見慣れない人相の悪い人であるいうだけで護身用スプレーを発射させたりすると、逆に迷惑をかけることもあると考えてしまい、操作し難い。一方、後者のシステムは、位置検知機能を備えた携帯端末器が高価であるとともに、携帯回線網を利用することによる料金が高くつくことから、サービスを利用できる層が限定され、特に、多くの児童・生徒の安全を守る用途には利用し難い。
【0004】
近年では、児童・生徒に対する暴行事件が多発して社会問題化しており、緊急時に児童・生徒が駆け込める「子ども110番の家」を設定するなどの取り組みなどが各地で実施されているが、安価な費用で多くの児童・生徒の登下校時の安全を確実に守ることができる有効なシステムが確立されていないのが実情である。また、独り暮らしの高齢者、持病を持つ人など、周囲からの保護が必要な人に、必要とするタイミングで保護を提供するシステムも確立されていない。
【0005】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたもので、児童・生徒、独り暮らしの高齢者、持病を持つ人などの安全、特に、多くの児童・生徒の登下校時の安全を守る用途に適用して、安価な費用で高い実効性を得ることのできる局地通報システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る局地通報システムは、対象者に携帯され押釦が操作されたときに警報信号を無線で所定範囲内に送信する携帯型端末器と、前記携帯型端末器からの警報信号を受信する受信部および警報信号の受信時に作動して受信を報知する受信報知部を備えた監視装置とを有し、前記監視装置が、警戒区域内において間隔をあけて複数配置されている。
【0007】
この構成によれば、例えば、児童・生徒の登下校時の安全を守る用途に適用する場合、或る学校に通学する全ての児童・生徒に携帯型端末器を常時携帯させるとともに、学校区地域内における携帯型端末器からの送信電波の到達距離よりも短い間隔にある一般住宅に監視装置を設置するようにすれば、児童・生徒が我が身に不安や危険を感じたときに押釦を操作すると、所定範囲、例えば半径50mの範囲内に警報信号が無線で送信され、この警報信号を受信した監視装置の受信報知部が作動して警報信号の受信を報知する。これにより、監視装置を設置した一般住宅の住人は、受信報知部の作動により近くで児童・生徒が警報信号を送信したのを確認して、屋外に出て児童・生徒をサポートできるから、大きな事件が発生するのを未然に抑制できる。
【0008】
前記システムでは、児童・生徒に携帯させる携帯型端末器が、位置検知機能を有せず、かつ、到達範囲の狭い弱い電波で警報信号を送信するだけの安価な構成になるとともに、監視装置を、児童・生徒を持つ親や地域の防犯プログラムに積極的な人の住宅に設置して、地域住民に児童・生徒の安全に協力してもらえるので、警備保障会社などによる安全サービスに比較して、費用が格段に安くてすみ、しかも、児童・生徒がいる現場に可及的に早く駆けつけて事件の発生を防止できる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記携帯型端末器が複数種類の警報信号を送信できる機能を有し、前記監視装置の受信報知部が受信した警報信号の種類に応じて異なる報知を行うようになっている。この構成によれば、携帯型端末器に、警報信号として、例えば危険度が低いときの守護要請信号と、危険度が高いときの緊急通報信号との2種類を送信できるようにすれば、児童・生徒が進行方向前方に不良グループがたむろしていたりして不安を覚えたような場合にも、防犯ブザーを鳴らす場合などと異なり、無線で警報信号を送信するだけであるから、守護要請信号を送信する操作を躊躇なく行える。
【0010】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記監視装置が、前記携帯型端末器から警報信号を受信したときに、その警報信号を他の前記監視装置に無線で送信する機能を有している。この構成によれば、より多くの住民の協力を得ることができるとともに、警報信号を受信した監視装置を設置している住宅が留守であっても、その住宅の近くの監視装置に警報信号を転送することができ、児童・生徒の安全を一層確実に守ることができる。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、前記転送機能を有した監視装置が、前記携帯型端末器または他の前記監視装置から警報信号を受信したときに、転送回数を示す情報を付加して警報信号を他の前記監視装置に送信するようになっている。この構成によれば、転送回数に基づき警報信号を発した児童・生徒のいる場所を推測することができる。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、監視装置が転送回数を示す情報を付加して警報信号を送信する場合において、監視装置が、受信した警報信号に付加されている転送回数を示す情報が所定回数以内である場合に限り、転送回数を示す情報を付加して警報信号を他の前記監視装置に送信するようになっている。この構成によれば、転送回数を例えば2回以内と設定することにより、多くの住民に警報信号を送信し過ぎることによって大騒ぎになるといった、警報信号の無駄な転送を防止できる。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記携帯型端末器は予め記憶登録された固有の識別コード情報を付加して警報信号を送信するようになっている。この構成によれば、監視装置が警報信号を連続的に複数回受信したような場合に、その警報信号が同じ児童・生徒から発せられたものであるか否かを判別することができ、同じ児童・生徒から発せられた場合には、単なるいたずらである可能性を含めて一層の注意を払ったり、自宅まで送り届けたりすることができる。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、前記携帯型端末器および全ての前記監視装置からそれぞれ送信される警報信号を受信する安全管理装置を有し、この安全管理装置に、全ての前記携帯型端末器の識別コードと所持者を特定する情報とが関連付けて記憶登録されている。この構成によれば、安全管理装置を、例えば学校に設置すれば、児童・生徒がいたずらで携帯型端末器を何度も操作したような場合には、その児童・生徒を識別コードに基づき特定して、学校の教師が児童・生徒またはその両親に内密に注意を与えることができ、これにより、児童・生徒の個人情報を保護することができる。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、前記安全管理装置に、記憶登録されている前記携帯型端末器の識別コードのうちの特定の識別コードが指定されている。この構成によれば、例えば、予め児童・生徒の父兄から、緊急時には学校から父兄に連絡するよう依頼されている場合には、その児童・生徒が警報信号を発したのを識別コードから判別したときに、学校から父兄の携帯電話機に連絡することができる。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態では、前記安全管理装置が、指定された特定の識別コードを付加した警報信号を受信したときに、予め設定登録された通報を行うようになっている。この構成によれば、例えば、予め児童・生徒の父兄から、緊急時には学校に連絡が入るよう依頼されたような場合には、その児童・生徒が警報信号を発したのを識別コードから判別したときに、安全管理装置から児童・生徒の自宅の電話機または父兄の携帯電話機に自動的に通報するといったことができる。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、屋外に設置されて警報信号を受信する警報表示装置を有し、この警報表示装置は警報信号を受信したことを示す警報表示を行うようになっている。この構成によれば、住宅が存在しないような地域においても、電柱などに警報表示装置を設置しておけば、警報信号を発した児童・生徒が近くの警報表示装置が警報表示したのを見て安心感を持つことができるとともに、その警報表示を見た、或いは聞いた人が駆けつけて児童・生徒をサポートすることができる。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態では、前記警報表示装置が受信した警報信号の種類に応じて異なる警報表示を行うようになっている。この構成によれば、警報信号が、例えば守護要請信号または緊急通報信号の別により、間欠音の周期を異ならせたり、表示灯を青色または赤色で発光させるようにすることにより、児童・生徒の置かれている状況または心理状態を近くにいる人に正確に伝えることができる。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態では、携帯型端末器が、押釦が操作されたときに警報信号を無線で送信するのに連動して作動する防犯ブザーを有している。この構成によれば、特に、非常事態が発生したような場合には、防犯ブザーを鳴らして近くの人に助けを求めることができる。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態では、前記監視装置が予め記憶登録された固有の識別コード情報を付加して警報信号を送信するようになっている。この構成によれば、警報信号を転送した監視装置を識別コードから特定することができるから、監視装置間での警報信号の転送経路から児童・生徒のいる場所を推測することができ、身の危険を感じている児童・生徒のいる場所に一層迅速に駆けつけことができる。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態では、安全管理装置が、前記監視装置の識別コードが予め設定登録され、警報信号に付加されている前記識別コードに基づき受信した前記監視装置の配置位置を地図上に画面表示するようになっている。この構成によれば、識別コードに基づき特定した監視装置の配置場所が地図上に画面表示されるので、地図上における各監視装置を結んだ範囲の中央部分を児童・生徒のいる場所と推測することができる。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態では、前記携帯型端末器が、自身の位置を検知して現在位置情報を無線で送信する位置検知機能を有している。この構成によれば、安全管理装置において、警報信号を発した児童・生徒のいる場所を正確に特定することができる。
【0023】
本発明のさらに他の実施形態では、前記携帯型端末器が、警報信号を複数回に分けて送信する機能を有するとともに、警報信号の送信ごとに到達範囲が異なる複数種類の強度の電波で送信するようになっている。この構成によれば、多くの監視装置に警報信号を送信して確実なサポートを期待できるとともに、児童・生徒のいる場所を、到達範囲の狭い警報信号を受信した各監視装置の設置場所の中央部であると推測することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の局地通報システムによれば、押釦の操作により警報信号を所定範囲に無線で送信する安価な携帯型端末器と、携帯型端末器からの警報信号を受信する受信部および警報信号の受信時に作動して受信を報知する受信報知部を備えた監視装置とを有し、監視装置を、警戒区域内において間隔をあけて複数配置したので、安全確保の対象者に携帯型端末器を携帯させ、かつ、一般住宅に監視装置を設置することにより、安価な費用で対象者の安全を高い実効性で守ることができるシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明の一実施形態に係る局地通報システムに用いる各機器を示すブロック部である。この実施形態では、児童・生徒を安全確保の対象者とし、児童・生徒の登下校時の安全を守る用途に適用した場合について説明する。上記局地通報システムでは、児童・生徒に常に携帯させる携帯型端末器1と、一般家庭などに設置される監視装置2と、必要に応じて電柱などの屋外に設置される屋外設置型転送器3と、児童・生徒が通う学校などに設置される安全管理装置4とを備えて構成されている。
【0026】
前記携帯型端末器1は、例えば1チップマイクロコンピュータからなる制御部7と、児童・生徒が手動操作する押釦を有する操作部8と、この操作部8が操作されたときに制御部7の指令により作動する防犯ブザー9と、各携帯型端末器1毎に固有の識別コード(IDコード)が予め設定登録されたメモリ10と、操作部8が操作されたときに、メモリ10に記憶されている識別コードを付加した警報信号を送信アンテナ12を通じて無線で送信する送信部11と、各部に駆動電源を供給する電池からなる電源部13とを有している。
【0027】
前記携帯型端末器1は、図2に示すように、児童・生徒が容易に携帯できるように、携帯電話機に類似したボックス形態の外観を有し、図1の操作部8を構成する一対の押釦8a,8bが両側面に設けられている。この押釦8a,8bのうちのいずれか一方が押圧操作されたときに、安全要請の警報信号が送信され、両方の押釦8a,8bが同時に押圧操作されたときに、緊急通報の警報信号が送信される。警報信号は、到達距離が例えば直径50m程度の比較的狭い範囲となる弱い電波で送信アンテナ12から送信される。
【0028】
図1に示す監視装置2は、例えば1チップマイクロコンピュータからなる制御部14と、受信アンテナ18を介して受信した警報信号を制御部14に供給する受信部17と、警報信号を受信したときに作動するブザーからなる受信報知部19と、この受信報知部19の作動を確認した人が操作することにより受信確認信号を制御部14に対し入力する操作部20と、各監視装置2毎に固有の識別コードが予め設定登録されたメモリ21と、制御部14の制御を受けてメモリ21に記憶されている識別コードを付加した警報信号を送信アンテナ23を通じて無線で送信する送信部22とを有している。送信アンテナ23からの警報信号は、携帯型端末器1と同様に、到達距離が例えば直径50m程度の比較的狭い範囲となる弱い無線で送信される。
【0029】
前記監視装置2は、予め選定された複数の一般住宅の屋内に設置される。また、この監視装置2が設置された一般住宅の例えば道路に面した外壁などには、表示灯および/またはサイレンからなる警報表示器24が取り付けられる。この警報表示器24は、監視装置2が警報信号を受信したときに制御部19により制御されて作動する。なお、監視装置2の配置については後述する。
【0030】
前記屋外設置型転送器3は、例えば1チップマイクロコンピュータからなる制御部27と、受信アンテナ29を介して受信した警報信号を制御部27に供給する受信部28と、この受信部28が警報信号を受信したときに制御部27の制御を受けて作動する表示灯および/またはサイレンからなる警報表示部30と、制御部27の制御を受けて警報信号を送信アンテナ32を通じて無線で送信する送信部31とを有している。この屋外設置型転送器3は、屋外における電柱や取付ポールなどに取り付けられるものであり、前述の構成要素27,28,30,31が外装ケース内に液密に内装された防水構造に構成されている。
【0031】
前記安全管理装置4は、例えばパーソナルコンピュータからなる制御部33と、受信アンテナ37を介して受信した警報信号を制御部33に供給する受信部34と、警報信号を受信したときに作動するブザーからなる受信報知部38と、後述する種々の情報が予め記憶登録された記憶部39と、この記憶部39から読み出して供給された情報をモニタ画面41に画像表示させる表示制御部40とを有している。前記記憶部39には、各携帯型端末器1毎に設定された個別の識別コード、その携帯型端末器1の所持者(児童・生徒)の氏名、所持者の自宅の住所、電話番号および父兄の携帯電話機の番号、各監視装置2毎に設定された個別の識別コード、各監視装置2の設置場所、各監視装置2の配置箇所の地図情報などが予め記憶されている。
【0032】
図3は、監視装置2、屋外設置型転送器3および安全管理装置4の配置例を示す配置図である。監視装置2は、児童・生徒を持つ親の住宅Hや地域の防犯プログラムに積極的な住民の住宅(例えば、子ども110番の住宅)H内に設置される。この監視装置2の配置に際しては、学校区の全ての通学路を含む区域全体をカバーできるように、この区域全体を、携帯型端末器1および監視装置2からの電波の到達範囲である50mの1/√2倍≒35mの間隔で縦横に区分線51で区分し、各区分域D内に1〜3台が設置され、かつ隣接する各2台の監視装置2,2の間隔が前記50m以内となるように設定して、監視抜けの地域が生じないようにする。屋外設置型転送器3は、住宅がまばらであって、前記区分域D内に住宅が存在しない場所の電柱などに取り付けられるが、電柱も存在しない場所では、取付ポールなどを建てて、その取付ポールに取り付けられる。安全管理装置4は携帯型端末器1を携帯させた児童・生徒が通う学校Sに設置される。なお、携帯型端末器1は上述したように児童・生徒に携帯させる。
【0033】
つぎに、図1の携帯型端末器1、監視装置2、屋外設置型転送器3および安全管理装置4の各々の制御部7,14,27,33の制御処理について説明する。先ず、携帯型端末器1の制御部7の制御処理について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。制御部7は、携帯型端末器1を携帯する児童・生徒が操作部8を操作したことにより操作信号が入力されるのを常時監視し(ステップS1)、操作信号が入力したと判別したときに、その操作信号が、操作部8の一対の押釦8a,8bのいずれか一方のみが押圧操作されたことによる守護要請信号であるか否かの判別を行う(ステップS2)。守護要請信号であると判別したときには、その守護要請を示す警報信号にメモリ10から読み出した識別コードを付加した情報を送信部11に送って送信アンテナ12から無線で送信させる(ステップS3)。
【0034】
一方、制御部7は、入力した操作信号が、守護要請信号でないと判別したとき(ステップS2)、つまり操作部8の一対の押釦8a,8bが同時に押圧操作されたことによる緊急通報信号であると判別したときには、防犯ブザー9を一定時間作動させるよう制御する(ステップS4)とともに、その緊急通報を示す警報信号にメモリ10から読み出した識別コードを付加した情報を送信部11に送って送信アンテナ12から無線で送信させる(ステップS5)。
【0035】
つぎに、図1の監視装置2の制御部14の制御処理について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。制御部14は、携帯型端末器1または他の監視装置2から送信された警報信号を受信部17が受信するのを常時監視し(ステップS11)、警報信号を受信したと判別したときに、その警報信号が守護要請信号であるか否かの判別を行う(ステップS12)。守護要請信号であると判別したときには、警報報知部19のブザーを注意モードで駆動させるとともに、屋外の警報表示部24を注意モードで駆動させる(ステップS13)。例えば、警報報知部19のブザーからは比較的間隔の長い間欠音が出力され、警報表示器24は青色に点灯表示される。
【0036】
児童・生徒は、進行方向前方に不良グループがたむろしていたり、見慣れない人が自身を凝視していると感じたりして、不安を覚えたような場合に、操作部8のいずれか一方の押釦8aまたは8bを押圧操作すると、携帯型端末器1の電波の到達範囲内に設置されている監視装置2に守護要請の警報信号が受信され、その監視装置2を設置している住民が屋外にさりげなく出て、近くにいる児童・生徒を見守るようにする。これにより、児童・生徒は、不安を感じている状況を近隣住人に知ってもらったことにより安心する。また、監視装置2を設置している住宅の住人が留守であっても、屋外の警報表示器24が青色に点灯表示されているのを見て、自身の不安感が伝達されたのを確認して安心できる。したがって、児童・生徒は、従来の防犯ブザーの鳴動や防犯スプレーを発射する場合とは異なり、不安を覚えた相手に気づかれることなく電波を発射できることから、不安を感じた場合に躊躇することなく守護要請の警報信号を送信する操作を行うことができる。
【0037】
続いて、制御部14は、操作部20の操作によって受信確認信号が入力されたか否かの判別を行う(ステップS14)。つまり、警報信号を受信した監視装置2の住人は、受信報知部9の作動状況により守護要請の警報信号の受信である場合に、操作部20を操作して受信確認信号を入力する、その住人が留守である場合には受信確認信号が入力されない。したがって、制御部20は、受信確認信号が入力したと判別したときに、住人が上述したような児童・生徒を見守る行動を行ってくれるものと判断して制御処理を終了する。
【0038】
一方、受信確認信号が入力しなかったと判別したときには、住人が留守であって警報信号の受信が確認されていないことから、受信した警報信号を含む情報を他の監視装置2に転送する必要があるので、続いて、受信した警報信号が1回目の転送によるものであるか否かの判別を行う(ステップS15)。すなわち、制御部14は、受信情報に監視装置2の識別コードが2種類含まれている場合、2回目の転送による警報信号の受信であると判別して制御処理を終了するが、受信情報に識別コードが1種類のみ含まれているか、全く含まれていない場合、1回目の転送による警報信号の受信であると判別して、受信情報、つまり守護要請信号か緊急通報信号であるかの警報信号の種別と携帯型端末器1の識別コードおよび/または他の監視装置2の識別コードを含む受信情報に、自身に設定されている識別コードを付加した情報を、他の監視装置2に向け送信して転送し(ステップS16)、制御処理を終了する。
【0039】
上述したように、制御部14は、2回目以上の転送による警報信号の受信であると判別したときに制御処理を終了して、転送回数を1回に制限しているので、多くの住人に警報信号を送信し過ぎることによって大騒ぎになるといったことを引き起こす無駄な警報信号の転送を防止している。
【0040】
一方、制御部14は、前記ステップS12において、受信した警報信号が守護要請信号でない、つまり緊急通報信号であると判別したときに、緊急モードで警報報知部19のブザーを駆動させるとともに、屋外の警報表示部24も緊急モードで駆動させる(ステップS17)。例えば、警報報知部19のブザーからは比較的間隔の短い間欠音が出力され、警報表示部24が赤色に点灯表示される。これにより、監視装置2を設置している住宅の住人は、緊急通報の警報信号を受信したのを確認でき、警報表示器24が赤色に発光表示することにより、近くを通行する人に非常事態の発生を報知できる。
【0041】
続いて、制御部14は、今回が緊急通報の警報信号の受信であることから、受信確認信号の有無の判別を行わずに、受信情報に含まれる監視装置2の識別コードの数に基づいて受信した警報信号が1回目の転送によるものであるか否かの判別を行い(ステップS18)、2回目以上であると判別した場合に限り制御処理を終了するが、携帯型端末器1からの警報信号を直接受信したか、または1回目の転送による警報信号であると判別した場合には、守護要請信号か緊急通報信号であるかの警報信号の種別と携帯型端末器1の識別コードおよび/または他の監視装置2の識別コードを含む受信情報に、自身に設定されている識別コードを付加した情報を、他の監視装置2に向け送信して転送する(ステップS19)とともに、送信部22を制御して、上述と同様の情報を安全管理装置4まで伝達できる強い無線で送信させる(ステップS20)。
【0042】
つぎに、図1の屋外設置型転送器3の制御部27の制御処理について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。制御部27は、携帯型端末器1または他の監視装置2から送信された警報信号を受信部28が受信するのを常時監視し(ステップS21)、警報信号を受信したと判別したときに、その警報信号が守護要請信号であるか否かの判別を行う(ステップS22)。守護要請信号であると判別したときには、警報表示部30を注意モードで駆動して青色に点灯表示させる(ステップS23)。
【0043】
続いて、制御部27は、受信した警報信号が1回目の転送によるものであるか否かの判別を行い(ステップS24)、2回目以上の転送による警報信号の受信であると判別したときに制御処理を終了するが、1回目の転送による警報信号の受信であると判別したときに、守護要請信号か緊急通報信号であるかの警報信号の種別と携帯型端末器1の識別コードおよび/または他の監視装置2の識別コードを含む受信情報に、自身に設定されている識別コードを付加した情報を、他の監視装置2に向け送信して転送し(ステップS25)、制御処理を終了する。
【0044】
一方、制御部27は、前記ステップS22において、受信した警報信号が守護要請信号でない、つまり緊急通報信号であると判別したときに、緊急モードで警報表示部30を駆動して赤色に発色表示させ(ステップS26)、近くを通行する人に非常事態の発生を報知する。なお、警報表示部30に例えばサイレンを付設して、緊急通報の警報信号を1回目の転送で受信した場合に前記サイレンを鳴らす構成とすれば、非常事態発生を近隣の人達に効果的に伝達することができる。
【0045】
さらに、制御部27は、警報信号が守護要請信号または緊急通報信号のいずれであるかの種別と携帯型端末器1の識別コードおよび/または他の監視装置2の識別コードを含む受信情報をそのまま他の監視装置2に向け送信して転送する(ステップS28)とともに、送信部31を制御して、上述と同様の情報を安全管理装置4まで伝達できる強い無線で送信させる(ステップS29)。なお、警戒区域内に屋外設置型転送器3を複数設置する場合には、監視装置2と同様に、各屋外設置型転送器3毎に固有の識別コードを設定して、受信情報に識別コードを付加した情報を転送するようにすれば、情報を転送した屋外設置型転送器3を特定することができる。
【0046】
つぎに、図1の安全管理装置4の御部33の制御処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。制御部33は、監視装置2から送信された警報信号を含む情報を受信部34が受信するのを常時監視し(ステップS31)、受信したと判別したときに、ブザーからなる受信報知部38を作動させて警報信号の受信を報知する(ステップS32)とともに、受信情報に含まれている携帯型端末器1の識別コードおよび/または監視装置2の識別コードを記憶部39に一時記憶する(ステップS33)。
【0047】
続いて、制御部33は、記憶部39に記憶した識別コードと、その識別コードと児童・生徒との関連を示す情報および/または記憶した識別コードと監視装置2との関連を示す情報と、監視装置2の識別コードに関連した地図情報とを記憶部39から読み出して、表示制御部40を制御することにより、モニタ画面41に、受信した監視装置2の配置位置と受信情報とを地図上に重ね表示させる(ステップS34)。
【0048】
図8は、安全管理装置4のモニタ画面41の表示例を模式的に示したものであり、警報信号を受信した各監視装置2の配置場所が地図(図示せず)上に重ね表示され、かつ、各監視装置2からの受信情報と、その各監視装置2の電波の到達範囲とが表示される。同図のA〜Hは、各監視装置2に設定された識別コードを示し、Xは、警報信号を発信した携帯型端末器1の識別コードを示している。
【0049】
さらに、モニタ画面41には、外側の監視装置2を線で結んで緊急事態発生の予想区域を示すゾーン42が地図上に重ね表示されるとともに、モニタ画面41の隅部41aに、携帯型端末器1の識別コードに基づき記憶部39から読み出された警報信号の発信者である児童・生徒の氏名、住所、自宅の電話番号および父兄の携帯電話機の電話番号が表示される(ステップS35)。したがって、前記実施形態の安全管理装置4の制御部33、記憶部39、表示制御部40およびモニタ画面41は、パーソナルコンピュータの構成要素である。
【0050】
例えば、安全管理装置4を常時監視している学校Sの職員は、受信報知部38の作動により警報信号の受信を確認して、モニタ画面41を見ることにより、緊急通報の警報信号を発信した児童・生徒のいる場所をほぼ正確に推測できる。すなわち、児童・生徒のいる場所は、地図上のゾーン42内であって、携帯型端末器1から警報信号を直接受信した各監視装置2の間であると推測できるので、迅速に現場に駆けつけて児童・生徒を救い出す行動をとることができる。また、現場に駆けつけた学校の職員などは、自身で児童・生徒を救助するのが困難であると判断した場合に、そのことを携帯電話機で学校に通報すれば、その通報を受けた他の職員などが、モニタ画面41に表示されている事件発生場所や児童・生徒の氏名などを警察に通報することができる。
【0051】
また、児童・生徒の父兄などは、予め、緊急事態の発生時に自宅に連絡するよう依頼することもできる。その場合、安全監視装置4の記憶部39には、その児童・生徒が所持する携帯型端末器2の識別コードが予め登録されている。そこで、制御装置40は、受信情報に含まれている携帯型端末器1の識別コードが記憶部39に指定登録されたものであるか否かの判別を行い(ステップS36)、指定登録されたものであると判別した場合に限り、送信部33を制御して所要の情報を送信させることにより、、当該児童・生徒の自宅の電話機または父兄の携帯電話機に緊急事態の発生を通報する(ステップS37)。
【0052】
前記実施形態の局地通報システムでは、多くの児童・生徒に携帯せる携帯型端末器1が、位置検知機能を有せず、かつ、到達範囲が50m程度である弱い無線で警報信号を送信する安価な構成のものであるとともに、監視装置2を、児童・生徒を持つ親や地域の防犯プログラムに積極的な人の家庭に設置して、地域住民に児童・生徒の安全確保に協力して貰えるので、警備保障会社などによる安全サービスに比較して、費用が格段に安くてすみ、しかも、警報信号を発した児童・生徒がいる現場に可及的に早く駆けつけられることから、事件の発生を未然に防止できる確率が高い。
【0053】
また、携帯型端末器1の識別情報やそれを携帯所持する児童・生徒に関する個人情報は、学校などに設置される安全管理装置4の記憶部39のみに登録されるので、例えば、或る児童・生徒がいたずらで携帯型端末器1を何度も操作したような場合には、その児童・生徒を識別コードに基づき特定して、学校の教師などが児童・生徒またはその両親に内密で注意を与えるようにすることができ、この場合に、児童・生徒の個人情報を保護することができる。
【0054】
また、本発明の他の実施形態では、図1に2点鎖線で示すように、携帯型端末器1に、GPSなどの簡易な位置検知手段43を設ける。このようにすれば、安全管理装置4のモニタ画面41には、地図上における児童・生徒のいる場所を正確に特定して画面表示することができる。
【0055】
さらに、本発明の他の実施形態では、携帯型端末器1の制御部7が、送信部11を制御して、警報信号を複数回に分けて送信させるとともに、送信ごとに到達範囲が異なる複数種類の強度の電波で送信させるようになっている。例えば、1回目の警報信号は遠くまで伝達する強い電波で送信し、2回目の警報信号は近くまでしか伝達しない弱い電波で送信するようにすれば、1回目の警報信号を多くの監視装置2に送信して確実なサポートを期待できるとともに、安全管理装置4において、児童・生徒のいる場所を、到達範囲の狭い警報信号を受信した監視装置2の設置場所の中央であると正確に推測することができる。
【0056】
本発明のシステムによる安全確保の対象者には、上記実施形態で説明した児童・生徒のほか、独り暮らしの高齢者、持病を持つ人なども含まれ、このような人の自宅の周囲を警戒区域とすることにより、安全を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る局地通報システムに用いる各機器を示すブロック部である。
【図2】同上の局地通報システムにおける携帯型端末器を示す斜視図である。
【図3】同上の局地通報システムにおける監視装置、屋外設置型転送器および安全管理装置の配置例を示す説明図である。
【図4】同上の携帯型端末器における制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】同上の監視装置における制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】同上の屋外設置型転送器における制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】同上の安全管理装置における制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】同上の安全管理装置のモニタ画面の表示例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯型端末器
2 監視装置
3 屋外設置型転送器(警報表示装置)
4 安全管理装置
9 防犯ブザー
43 位置検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に携帯され、押釦が操作されたときに警報信号を無線で所定範囲内に送信する携帯型端末器と、
前記携帯型端末器からの警報信号を受信する受信部および警報信号の受信時に作動して受信を報知する受信報知部を備えた監視装置とを有し、
前記監視装置は、警戒区域内において間隔をあけて複数配置されている局地通報システム。
【請求項2】
請求項1において、前記携帯型端末器が複数種類の警報信号を送信できる機能を有し、前記監視装置の受信報知部が受信した警報信号の種類に応じて異なる報知を行うようになっている局地通報装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記監視装置は、前記携帯型端末器から警報信号を受信したときに、その警報信号を他の前記監視装置に無線で送信する機能を有している局地通報システム。
【請求項4】
請求項3において、前記監視装置は、前記携帯型端末器または他の前記監視装置から警報信号を受信したときに、転送回数を示す情報を付加して警報信号を他の前記監視装置に送信する局地通報システム。
【請求項5】
請求項4において、前記監視装置は、受信した警報信号に付加されている転送回数を示す情報が所定回数以内である場合に限り、転送回数を示す情報を付加して警報信号を他の前記監視装置に送信する局地通報システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記携帯型端末器は予め記憶登録された固有の識別コード情報を付加して警報信号を送信するようになっている局地通報システム。
【請求項7】
請求項6において、前記携帯型端末器および全ての前記監視装置からそれぞれ送信される警報信号を受信する安全管理装置を有し、この安全管理装置に、全ての前記携帯型端末器の識別コードと所持者を特定する情報とが関連付けて記憶登録されている局地通報システム。
【請求項8】
請求項7において、前記安全管理装置には、記憶登録されている前記携帯型端末器の識別コードのうちの特定の識別コードが指定されている局地通報システム。
【請求項9】
請求項8において、前記安全管理装置は、指定された特定の識別コードを付加した警報信号を受信したときに、予め設定登録された通報を行うようになっている局地通報システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項において、屋外に設置されて警報信号を受信する警報表示装置を有し、この警報表示装置は警報信号を受信したことを示す警報表示を行うようになっている局地通報システム。
【請求項11】
請求項10において、前記警報表示装置は受信した警報信号の種類に応じて異なる警報表示を行うようになっている局地通報システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項において、携帯型端末器は、押釦が操作されたときに警報信号を無線で送信するのに連動して作動する防犯ブザーを有している局地通報システム。
【請求項13】
請求項3から11のいずれか一項において、前記監視装置は予め記憶登録された固有の識別コード情報を付加して警報信号を送信するようになっている局地通報システム。
【請求項14】
請求項13において、安全管理装置は、前記監視装置の識別コードが予め設定登録され、警報信号に付加されている前記識別コードに基づき受信した前記監視装置の配置位置を地図上に画面表示するようになっている局地通報システム。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項において、前記携帯型端末器は、自身の位置を検知して現在位置情報を無線で送信する位置検知機能を有している局地通報システム。
【請求項16】
請求項13において、前記携帯型端末器は、警報信号を複数回に分けて送信する機能を有するとともに、警報信号の送信ごとに到達範囲が異なる複数種類の強度の電波で送信するようになっている局地通報システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−185028(P2006−185028A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375899(P2004−375899)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】