説明

局所麻酔の方法およびキット

【課題】フェントラミン−メシレートの低濃度の、および他のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの組成物および処方物、並びに、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含有する持続性局所麻酔薬剤の効果からの回復のためのその使用を提供すること。
【解決手段】哺乳動物に局所麻酔を施すためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストがフェントラミンメシレートまたは別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストである、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医化学の分野内にある。本発明は、特に、局所麻酔薬およびα−アドレナリン作用性アゴニスト(α−アドレナリン作用性アンタゴニストの有効低容量の投与を含む)によって誘導される局所麻酔の回復の方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
局所麻酔は、歯の処置の間、痛みの軽減を患者に提供するために歯科医によって幅広く使用される。痛みの軽減を提供するために、リドカインのような局所麻酔性の化合物を含む薬剤処方物が、歯の処置が行なわれる歯(単数または複数)のまわりの歯肉組織に注射される。短時間作用性局所麻酔薬剤処方物および持続性所麻酔薬剤処方物がある。短時間作用性局所麻酔薬剤処方物は、リドカイン、あるいは生理食塩水または他の適切な注射ビヒクルに溶かされた関連する局所麻酔薬剤を含む。典型的には、短時間作用性局所麻酔での局所麻酔は、およそ20〜30分(これは、多くの歯の処置をするのに十分な長さではない)持続する。持続性局所麻酔を得るために、歯科医は、しばしば、リドカイン、または他の局所麻酔処方物(局所麻酔剤自身に加えて、低濃度のエピネフリンまたは、レボノルデフリンのような別のアドレナリン作用性レセプターアゴニストを含む)を使用する。歯科医によって行なわれた局所麻酔の処置の90%より多くが、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト含有局所麻酔処方物を含む。血管収縮薬なしの局所麻酔は、大部分の歯の処置にはあまりに短時間作用性であるので、血管収縮薬は、必要である。加えられたエピネフリンは、注射された組織における血管上のα−アドレナリン作用性レセプターを刺激する。これは、組織における血管を狭窄する効果を有する。この血管狭窄によって、局所麻酔剤を非常に長く組織に留め、結果として麻酔の効果の持続時間(短時間作用物処方物では20分間から持続性処方物では3〜6時間まで)は、大いに増大する。エピネフリンを含有する局所麻酔薬の使用に伴う主な問題は、通常、麻酔よりもさらに長時間持続する軟部組織(唇、頬、舌)の麻酔および歯髄の鎮痛である。歯髄の麻酔および鎮痛は、歯の処置の観点から、局所麻酔の所望される効果である、その一方で、軟部組織麻酔は、通常、望ましくない副作用である。軟部組織麻酔は、口の中および口の周りにおける知覚麻痺の長期かつ不快な感覚、微笑できないこと、食事、飲水および嚥下が難しいこと、労働時間または会議時間を失うことなどによる生産性の損失などのような、多くの問題および不都合を引き起こす。長引く軟部組織の麻酔は、舌または唇を噛むことによって怪我を起こし得る。長引く軟部組織の麻酔はまた、労働時間または会議時間を失うことによる生産性の損失を起こし得る。さらに、長引く軟部組織の麻酔は、不都合であり、そして、多くの患者によって不快なものとして認められる。長引く軟部組織の麻酔は、特に、麻酔された組織を興味本位で、しばしば、噛む子供において怪我を引き起こし得る。従って、もはや必要がない後で、歯科医によって、意のままに素早く局所麻酔を回復するために、使用され得る薬剤を有することが望ましい。
【0003】
特許文献1は、血管収縮剤(特に、血管壁のα−アドレナリン作用性レセプターに作用する血管収縮剤)の同時投与によって局所麻酔を延長する方法を開示する。’714号の特許はまた、延長された麻酔効果の低下を起こすための、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの引き続いての投与を開示する。この特許に記載されるα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの群に含まれるのは、フェントラミンメシレートである。しかし、実施例は、「フェントラミン」の投与に言及している。フェントラミンメシレートは、FDAに認可され、そして水に容易に溶けるので、フェントラミンメシレートを投与することは非常にありそうである。対照的に、フェントラミンは、FDAに認可されておらず、そして比較的水に溶けにくい。
【0004】
実施例1の表1に示されるように、0.5〜1.5mgの「フェントラミン」は、エピネフリンと混ぜたリグノカインで前処置した患者の群に投与された。表1における結果は、「フェントラミン」の量の増加で麻酔の持続時間が減少したことを示す。実施例2において、2mgの「フェントラミン」が投与された。実施例3において、各1mg(総量4mg)の「フェントラミン」の4回注射が、投与された。実施例4において、各1mg(総量4mg)の「フェントラミン」の4回注射(総量4mg)が、投与された。
【0005】
特許文献1に記載の「フェントラミン」の薬剤投薬量(0.5〜4mg)は、褐色細胞腫の患者における高血圧の全身処置のために、FDAによって承認されるフェントラミンメシレートの用量(2.5〜5mg/mlの溶液に5mgの総用量)と重複する。この用量は、通常、高血圧の全身処置のために意図されるので、健康で、通常の人に使用した場合、この高用量レベルは、重篤な副作用を引き起こし得る。フェントラミン−メシレート製品のパッケージの挿入物は、以下の副作用の注意に言及する:心筋梗塞、脳血管の痙攣および脳血管の閉塞は、通常、顕著な血圧降下の発症に関連がある、フェントラミンの投与後に起きることが報告されている。従って、局所麻酔からの回復のための特許文献1によって教示される薬剤用量は、容認できない副作用を起こし得るので、歯科医院において健康で、通常の被験者における麻酔からの回復のためのこの製品の使用を防止する。
【0006】
特許文献1で開示されるよりも、非常により低濃度のフェントラミン−メシレートの注射によって、高度に効果的な局所麻酔からの回復が得られ得ることが、現在、発見されている。0.05mg/mlのフェントラミン−メシレートのみを含有する溶液が、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト含有局所麻酔の効果から素早く回復し得ることが見出されている。フェントラミン−メシレート薬剤濃度は、特許文献1で教示されるフェントラミン−メシレート薬剤濃度の20分の1〜100分の1である。この利点は、そのような低フェントラミン−メシレート薬剤濃度で、心筋梗塞、脳血管の痙攣のような全身性の副作用が観察されないことである。これは、生命を危うくする、または他の不都合な副作用を起こすことなく局所麻酔からの回復のためのフェントラミン−メシレートの安全かつ効果的な使用を可能にする。確かに、フェントラミン−メシレートの低濃度処方物を使用するヒト臨床効果の研究において、高度に効果的な麻酔からの回復が、全く副作用がなく観察された。従って、本発明は、特許文献1によって教示される局所麻酔の回復方法の重要な改善を構成する。
【特許文献1】米国特許第4,659,714号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明によって、以下が提供される。
(項目1) 哺乳動物に局所麻酔を施すためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該指示書が以下:
(a) 該局所麻酔が必要である該哺乳動物に対して、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、麻酔される部位に投与し、
ここで、該麻酔薬は、局所麻酔を施すのに有効な量を投与され、
そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、該部位において血管を狭窄し、そして該局所麻酔を延長させるのに有効な量を投与されること、そして次いで
(b) 低用量の該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、該延長を減少させるために、該部位に投与すること
を指示するキット。
(項目2) 前記指示書が、前記麻酔薬およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、溶液として共に投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目3) 前記指示書が、前記溶液を、注射によって前記部位に投与することを指示する、項目2に記載のキット。
(項目4) 前記指示書が、前記麻酔薬およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、カプセルから溶液として、注射によって前記部位に共に投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目5) 前記麻酔薬が、リドカイン、ポロカイン、エチドカイン、リグノカイン、キシロカイン、ノバカイン、カルボカイン、プロカイン、プリロカイン、ブピバカイン、シンコカインおよびメピバカインからなる群より選択される、項目1に記載のキット。
(項目6) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、カテコールアミンまたはカテコールアミン誘導体である、項目1に記載のキット。
(項目7) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、レボノルデフリン、エピネフリン、またはノルエプネフリンである、項目6に記載のキット。
(項目8) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、フェントラミン、塩酸フェントラミン、フェントラミンメシレート、トラゾリン、ヨヒンビン、ラウオルスシン、ドキサゾシン、ラベタロール、プラゾシン、テトラゾシン、およびトリマゾシンからなる群から選択される、項目1に記載のキット。
(項目9) 前記指示書が、前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、約0.001mg/ml〜約0.25mg/mlの濃度で投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目10) 前記指示書が、前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを約0.25mgで、または約0.25mg未満で投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目11) 前記指示書が、約0.08mgの前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目12) 前記指示書が、前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、カプセルから溶液として、注射によって前記部位に投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目13) 前記指示書が、前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、前記部位に局所的に投与することを指示する、項目1に記載のキット。
(項目14) ヒトに局所麻酔を施すためのキットであって、該キットはポロカインおよびレボノルデフリンを含む溶液、フェントラミンメシレート、および指示書を備え、該指示書が以下:
(a) 該局所麻酔が必要である該ヒトに対して、ポロカインおよびレボノルデフリンを含む該溶液を、麻酔される部位に注射によって投与し、
ここで、該ポロカインは、局所麻酔を施すのに有効な量を投与し、
そして、該レボノルデフリンは、該部位において血管を狭窄し、そして該局所麻酔を延長させるのに有効な量を投与し、そしてそれによって、該部位において局所麻酔を施すこと、
(b) 該ヒトにおいて医学的手順を実行すること、そして次いで、
(c) 約0.08mgの該フェントラミンメシレートを、該部位に、約0.05mg/mlの濃度で、該延長を減少するために投与すること
を指示するキット。
(項目15) 前記指示書が、麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストおよびα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、カプセルから溶液として、注射によって前記部位に投与することを指示する、項目14に記載のキット。
(項目16) 組織移植片の生存性を増強するためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該指示書が以下:
(a) 組織移植片を受けた哺乳動物に、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該組織移植の部位に投与し、
ここで、該麻酔薬は局所麻酔を施すのに有効な量を投与し、
そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該部位において血管を狭窄し、そして該局所麻酔を延長させるのに有効な量を投与すること、
(b) 該組織移植片の手順を実行すること、そして次いで
(c) 該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、該延長を減少し、そして該組織移植片の生存性を増強するために、該部位に投与すること
を指示するキット。
(項目17) 前記組織移植片が毛髪移植片である、項目16に記載のキット。
(項目18) 低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが前記部位に投与される、項目16に記載のキット。
(項目19) 項目16に記載のキットであって、前記指示書が以下:
(d) 前記組織移植手順の後、前記部位にヒアルロニダーゼを投与すること
をさらに指示するキット。
(項目20) 前記指示書が、前記ヒアルロニダーゼを注射によって投与することを指示し、そして毛髪移植片が毛髪弁である、項目19に記載のキット。
(項目21) 哺乳動物に局所麻酔遮断を施すためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該指示書が以下:
(a) 該局所麻酔遮断が必要である該哺乳動物に対して、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該麻酔遮断を受ける部位に投与し、
ここで、該麻酔薬は、局所麻酔を施すのに有効な量を投与し、
そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、該部位において血管を狭窄し、そして該麻酔遮断を延長させるのに有効な量を投与し、そして次いで
(b) 該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、該延長を減少させるために、該部位に投与すること
を指示するキット。
(項目22) 前記指示書が、低用量の前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを投与することを指示する、項目21に記載のキット。
(項目23) 前記部位が硬膜上腔である、項目21に記載のキット。
(項目24) 2つ以上の容器手段を厳重に閉じられた状態で中に有する運搬手段を含むキットであり、ここで以下:
第1の容器手段は、麻酔薬および必要に応じてα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含み、そして
第2の容器手段は、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを含む、キット。
(項目25) 前記麻酔薬および前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、前記第1の容器手段に含まれる、項目24に記載のキット。
(項目26) 前記麻酔薬および前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、別々の容器手段に含まれる、項目24に記載のキット。
(項目27) 前記容器手段がカプセルである、項目24に記載のキット。
(項目28) 前記麻酔薬がポロカインであり、前記アドレナリン作用性レセプターアゴニストがレボノルデフリンであり、そして前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストがフェントラミンメシレートである、項目24に記載のキット。
(項目29) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、約0.25mgまたは0.25mg未満の用量のフェントラミンメシレートである、項目24に記載のキット。
(項目30) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、約0.08mgの用量のフェントラミンメシレートである、項目24に記載のキット。
(項目31) ヒアルロニダーゼを含む容器手段をさらに含む、項目24に記載のキット。
(項目32) 前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを含む前記容器手段が、ヒアルロニダーゼをさらに含む、項目24に記載のキット。
【0008】
特に本発明は、以下を包含する、哺乳動物への局所麻酔の提供方法に関連する:
(a) 局所麻酔を必要とする哺乳動物に対して、麻酔されるべき部位に麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程、ここで、その麻酔は、局所麻酔剤を提供する有効量において投与され、そしてそのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、その部位で血管を狭窄し、そして局所麻酔を持続する有効量において投与され、次いで、
(b) 延長を減らすために、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、その部位に投与する工程。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明は、以下を包含する、ヒトへの局所麻酔の提供方法に関連する:
(a) 局所麻酔を必要とするヒトに対して、ポロカイン(polocaine)およびレボノルデフリン含有溶液を麻酔すべき部位へ、注射によって投与する工程、ここで、そのポロカイン(polocaine)は、局所麻酔を提供する有効量において投与され、そしてそのレボノルデフリンは、その部位で血管を狭窄して、そして局所麻酔を持続するに効果的な量において投与され、その結果、その部位で局所麻酔を生じる工程、
(b) ヒトにおいて医学的な処置を実行する工程、次いで、
(c) 約0.05mg/ml以下の濃度で、その部位にフェントラミンメシレートを投与し、延長を減少する工程。
【0010】
本発明はまた、以下を包含する、組織移植片の生存を増強する方法に関連する:
(a) 組織移植を行う哺乳動物に、組織移植の部位に対して麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程、ここで、その麻酔剤は、局所麻酔を提供する有効量において投与され、そしてそのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、その部位で血管を狭窄し、そして局所麻酔を持続する有効量において投与され、
(b) 組織移植の処置を行う工程、次いで、
(c) α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、その部位投与して、延長を減少し、そして組織移植片の生存を増強する工程。
【0011】
本発明はまた、以下を包含する、哺乳動物に局所的な麻酔の遮断を提供する方法に関連する:
(a) 局所麻酔の遮断を必要とする哺乳動物に対して、麻酔の遮断を受ける部位に麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程、ここで、その麻酔剤は、局所麻酔を提供する有効量において投与され、そしてそのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、その部位で血管を狭窄し、そして麻酔の遮断を延長する有効量において投与され、次いで、
(b) 延長を減少するために、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、その部位に投与する工程。
【0012】
本発明はまた、キャリア中の密接な拘束において2以上の容器手段を有するキャリア手段を含むキットに関連する。ここで、第1の容器手段は、麻酔剤および必要であればα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含み、そして第2の容器手段は、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(好ましい実施形態の記載)
本発明は、以下を包含する、哺乳動物への局所麻酔を提供する方法に関連する:
(a) 局所麻酔を必要とする哺乳動物に対して、麻酔されるべき部位に麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程、ここで、その麻酔剤は、局所麻酔を提供する有効量において投与され、そしてそのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、その部位で血管を狭窄し、局所麻酔を延長する有効量において投与され、次いで
(b) 低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、延長を減少するその部位に投与する工程。
【0014】
α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが投与され、結果として麻酔の延長が生じる近傍の血管を狭窄する作用をする限り、麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、1単位の薬学的組成物の一部としてか、または別々の薬学的組成物の一部として一緒に投与され得る。好ましい実施形態において、麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、溶液において一緒に投与される。麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、注射によって、浸潤によってまたは局所投与(例えば、ゲルまたはペーストの一部として)によって投与され得る。
【0015】
好ましい実施形態において、麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含む溶液は、麻酔されるべき部位に(例えば、歯の処置の前に)直接的な注入によって投与される。
【0016】
本発明の実施において使用され得る局所麻酔の例として、リドカイン、ポロカイン(polocaine)、リグノカイン、キシロカイン(xylocaine)、ノボカイン、カルボカイン、エチドカイン、プロカイン、プリロカイン(prilocaine)、ビプバカイン、シンコカイン(cinchocaine)およびメピバカインが挙げられるがこれに限定されない。
【0017】
本発明に従って使用され得るα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストの例として、カテコールアミンおよびカテコールアミン誘導体が挙げられる。特定の実施例として、レボノルデフリン、エピネフリンおよびノルエピネフリンが挙げられるがこれに限定されない。
【0018】
本発明の実施において使用され得るα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの例として、フェントラミン、塩酸フェントラミン、フェントラミンメシレート、トラゾリン、ヨヒンビン、ラウオルシン(rauwolscine)、ドキサゾシン、ラベトロール(labetolol)、パラゾシン(prazosine)、テトラゾシン(tetrazosin)およびトリマゾシン(trimazosine)が挙げられるがこれらに限定されない。フェントラミン−メシレートは、褐色細胞腫の患者における高血圧の処置、偶発的なノルエピネフリンの管外遊出後の皮膚の壊死および脱落の処置、ならびに褐色細胞腫の診断(フェントラミンブロック試験)に関してFDAによって承認される。この薬剤は、5mgの薬剤物質(生理食塩水または他の薬学的に受容可能なキャリア中に溶かされ得る)を含むバイアルにおいて供給される。
【0019】
本発明に従って医学的な手順の後に局所麻酔を回復するために、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、フェントラミンメシレートまたは当モルの別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの低用量(すなわち、副作用を起こさない用量で、すなわち、成人に対して用量あたり約0.25mg以下で(または約0.0036mg/kg以下で)あるいは子供に対して用量あたり約0.1mg以下で、より好ましくは、成人に対して用量あたり約0.1mgより下で(約0.0014mg/kgより下で)、あるいは子供に対して用量あたり0.04mgより下で、最も好ましくは、成人に対して用量あたり約0.08mg以下(約0.0011mg/kg)、あるいは子供に対して用量あたり約0.032mg)で投与される。好ましい実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、約0.001mg/mlから約0.25mg/mlまでの濃度で、より好ましくは、約0.05mg/mlから約0.1mg/mlまでの濃度で存在する。
【0020】
α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、麻酔の部位への注射によって、浸潤によって、または局所投与によって投与され得る。好ましい実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、粘膜組織に投与される。この実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、含浸したウェハ、ペレットまたはコットンボールの形態において、部位に適用され得る。これによって、アンタゴニストは、粘膜組織まで吸い上げられ、結果として麻酔から回復する。別の実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、局所麻酔の遮断の部位に投与され、遮断(例えば、部位への注射または浸潤によって)から回復する。好ましい実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、動物の硬膜上腔へのカニューレを介して投与され、硬膜外の麻酔から回復する。
【0021】
本発明に従って実行され得る医療手順の例は、大きい手術および小さい手術の両方、歯の処置、美容整形手術、組織移植(例えば、植毛および骨移植)および帝王切開術が挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施形態において、本発明に従う麻酔からの回復は、臨床上の練習生によって実行され、医学練習生による、起こされた任意の過失、ならびに、指および耳あるいは鼻の先のような末端の消失をもたらし得る、任意の過失を緩和する。
【0022】
ヒアルロニダーゼ(組織内の薬剤の拡散を増強する酵素)は、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストと一緒に投与され得る。ヒアルロニダーゼおよびα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの各々が、麻酔から回復されるべき部位に投与され、そしてα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの拡散を増強し、そして麻酔から回復する有効量が存在する限り、ヒアルロニダーゼおよびα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、1単位の薬学的組成物の部分として、または別々の薬学的組成物の部分として共に投与され得る。ヒアルロニダーゼは、麻酔の部位に1以上の回数で投与される。一般に、約1.5U〜約200Uのヒアルロニダーゼが、1回以上の注射において投与される。最も好ましい実施形態において、約200Uのヒアルロニダーゼは、部位への注射によって投与される。当業者は、慣用的な実験だけでヒアルロニダーゼの最適量を決定し得る。
【0023】
植毛が行なわれた場合、外科医は、しばしば、麻酔剤およびエピネフリンを注射し、出血を減らし、そして部位に明瞭な視野を提供する。Bernstein,R.MおよびRassman,W.R.,Hair Transplant Forum International 10:39−42(2000)に従って、エピネフリンが、長い移植時間において使用される場合、植毛の処置におけるエピネフリンの有用性は、術後の休止期脱毛を含む多数の因子によって限定される。さらに、血液供給がかなり多くのレシピエント部位によって既に損なわれる領域に、アドレナリンが加えられた場合、その組織は、十分な酸素を受け取れないかもしれない。証明されていないが、BernsteinおよびRassmanに従って、レシピエント領域へのエピネフリンの浸潤は、植毛の間時折報告される「中心壊死」の発達において寄与する因子であるようである。さらに、エピネフリンの激しい血管収縮作用は、移植片の生存の減少に寄与し得ることが可能である。従って、本発明に従って、当業者は、以下を包含する、方法において増強された組織移植片の生存を達成し得る:
(a) 組織移植を受ける哺乳動物に対して、組織移植の部位に麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程、ここで、その麻酔剤は、局所麻酔を提供する有効量において投与され、そしてそのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、有効量において投与され、その部位で血管を狭窄し、そして局所麻酔を延長する、
(b) 組織移植の処置を行う工程、次いで、
(c) α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、その部位に投与し、延長を減少し、そして組織移植片の生存を増強する工程。
【0024】
好ましい実施形態において、組織移植は、植毛である。別の好ましい実施形態において、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストは、その部位に投与され、有害な副作用を避け得る。
【0025】
このような毛の移植片は、複数の毛細胞および単一の移植された毛細胞小胞を含む、皮弁を含む。代表的には、このような毛の移植片は、活発に成長している毛を有する動物のある部位から得られる。本発明に従って、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、毛移植片手順後に投与して、局所麻酔を回復し、そして術後の休止期脱毛(毛髪の脱落)および皮弁の生存を減少する。
【0026】
別の実施形態において、ヒアルロニダーゼを組織移植片部位に投与して、その移植片の生存を増加し得る。Pimentel、L.A.S.およびGoldenburg,R.C.d.S,Revista da Soociedade Brasileira de Cirurgia Plastica 14(1999)に従って、ヒアルロニダーゼの局所投与は、皮弁生存を増加する。著者らによると、ヒアルロニダーゼは、おそらく、溢出された流体の離れた領域への迅速な拡散を生じ、従って、これが、栄養素のより良好な代謝回転を可能にすることによって、組織損傷を減少または予防する酵素である。このヒアルロニダーゼは、一般に、毛の移植片の部位に1回以上注射される。同様に、本発明を使用して、任意の移植片外科手順において他の移植された組織または骨の生存を改善し得る。ここで、局所麻酔およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを使用して、手術中の出血を最小化し、かつここで、その後の迅速な組織の再灌流が、移植片の生存を増加するために所望される。
【0027】
さらなる実施形態において、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを、局所麻酔ブロック後に投与して、このブロックを回復する。硬膜外麻酔が、通常、多くの医療手順(出産、帝王切開、骨盤に対する手術などを含む)における局所麻酔ブロックを提供するために投与される。長期の硬膜外麻酔は、多くの不都合な副作用(長期の麻痺、自発的排尿の不能、および低血圧を含む)を有する。代表的に、麻酔科医は、麻酔剤を希釈しそして麻酔を減少するために、等量の生理食塩水を硬膜上腔に注射する。
【0028】
本発明は、多量の生理食塩水を注射する必要なく、要求に応じた麻酔の回復を提供することによって、この副作用の問題を解決する。この実施形態において、本発明は、哺乳動物に対して局所麻酔ブロックを提供する方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)それを必要とする哺乳動物に、麻酔ブロックを受ける部位において、麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを投与する工程であって、この麻酔剤は、局所麻酔を提供するのに有効な量で投与され、そしてこのα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、この部位にある血管を収縮しそしてこの局所麻酔を長期化するのに有効な量で投与され、次いで、
(b)この部位にα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを投与して、この長期化を減少する工程。
【0029】
好ましい実施形態において、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、投与される。別の好ましい実施形態において、この麻酔ブロックは、硬膜外麻酔であり、そしてこのブロックの部位は、硬膜上腔である。本発明は、腕神経叢および大腿ブロックを含む、他のブロックの回復に対する適用をもまた有する。
【0030】
別の実施形態において、ヒアルロニダーゼを、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストと一緒に投与して、このブロックの部位(例えば、硬膜上腔)内でのα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストの拡散およびこの麻酔の迅速な回復を増強する。
【0031】
本発明はまた、キャリア手段(例えば、カートンまたはボックス)を備えるキットに関し、この容器手段は、その中に、2以上の容器手段(例えば、カプセル(carpule)、バイアル、チューブ、ジャーなど)を厳重に有する。第1の容器手段は、麻酔剤および必要に応じてα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含み、そして第2の容器手段は、低用量のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを含む。あるいは、このα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、別の容器手段中に存在し得る。さらなる容器手段は、ヒアルロニダーゼを含み得る。あるいは、このヒアルロニダーゼは、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストと同じ容器手段中にある。好ましい実施形態において、この麻酔剤、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および必要に応じて、ヒアルロニダーゼは、1.8mLのカプセル中に存在し、このカプセルは、標準的な歯科局所麻酔シリンジに適合する。このようなカプセルは、種々の供給者(例えば、Henry Schein.Port Washington,N.Y.)から市販されている。この実施形態において、この局所麻酔剤およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含むカプセルを、このシリンジ中に配置し、そしてこの混合物を注射する。次いで、このカプセルは除去され得、そしてα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および必要に応じて、ヒアルロニダーゼを含む、第2のカプセルを挿入する。
【0032】
この麻酔剤、血管収縮剤、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および必要に応じて、ヒアルロニダーゼは、溶液(好ましくは、滅菌溶液)(必要に応じて、塩および緩衝剤を含む)中に存在し得るか、または局所投与用のゲルまたはペーストの一部として存在し得る。米国特許第4,938,970号およびRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osol(編)、第16版、Mack Publishing Co.,Easton,PA(1980)を参照のこと。
【0033】
本発明に従って処置され得る哺乳動物には、本発明の有益な効果を受け得る全ての哺乳動物が含まれる。このような哺乳動物としては、ヒトおよび獣医学的哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌおよびネコ)が挙げられるが、これらに限定されない。小児および獣医学的動物に適用する場合、この麻酔の迅速な回復は、この小児または動物が、新鮮な縫合部を裂き開くことを阻止する。
【0034】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であり、限定するものではない。臨床治療において通常に遭遇しそして当業者に明らかである、種々の状態およびパラメーターの他の適切な改変および適応は、本発明の精神および範囲内にある。
【実施例】
【0035】
(実施例)
(研究の原理および目的)
局所麻酔は、歯科手順中の麻酔をもたらすために、歯科医によって広く使用されている。局所麻酔剤は、しばしば、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含み、血管収縮を引き起こし、これによって麻酔を長期化する。血管収縮剤を含まない局所麻酔剤は、多くの歯科手順について、作用が短すぎるので、この血管収縮剤は、必要である。一方、多くの例において、長期化した局所麻酔の効果は、多くの歯科手順に必要とされるよりも、はるかに長く持続する。局所麻酔がもはや必要ではなくなった後に局所麻酔を迅速に回復するために、随意に使用され得る薬剤を有することが望ましい。長引く局所麻酔は、舌または唇を噛むことに起因する損傷の原因となり得る。長引く局所麻酔はまた、その失われた労働時間に起因する、生産性の損失を生じ得る。最後に、長引く局所麻酔は、不便であり、多くの患者に不快なものとして認識されている。本研究の目的は、フェントラミンメシレート(褐色細胞腫患者における高血圧の全身処置についてFDAの承認を受けた、注射用α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト)が、非常に低濃度で局所的に注射された場合に、長期の局所麻酔を迅速に回復するか否かを決定することであった。本研究について選択したフェントラミンメシレート濃度は非常に低いので、全身性の副作用(例えば、褐色細胞腫患者における高血圧の処置についてFDAによって承認されている高い全身薬物用量について記載されてきた、低血圧の重篤なエピソード)は、欠如されることが期待される。
【0036】
(研究設計)
このヒト被験体研究を、極度に低い濃度のフェントラミンメシレートを含む生理食塩水溶液の注射が、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを含有する、先に注射された局所麻酔剤の効果の回復を加速し得るか否かを決定するために設計した。生理食塩水ビヒクル(フェントラミンメシレートを含まない)の注射を、コントロールとして使用した。同じ患者においてビヒクルに対するフェントラミンメシレートの効果を比較するために、両側局所麻酔注射を、同じ患者の口内に行った。この後、口腔の一方の側への局所麻酔回復剤(LARA)を含有するフェントラミンメシレートの注射、および口腔の反対側への生理食塩水ビヒクル(コントロール)溶液の注射を行った。次いで、両側に対する局所麻酔効果の回復までの時間を記録して、この2つの側の間に差異が存在するか否かを決定した。
【0037】
(薬物)
使用した局所麻酔剤は、レボノルデフリン(1:20000=0.05mg/ml)(レボノルデフリン注射、USP)(Astra USA,Inc.,Westborough,MA 01581)を含む、2% ポロカイン(塩酸メピバカイン)であった。レボノルデフリンは、エピネフリンの薬理学的プロフィールに類似する薬理学的プロフィールを有するがより効力が低い、交感神経様作用アミンである。この局所麻酔回復剤(LARA)を、以下のように調製した:注射用の5mgの凍結乾燥化フェントラミンメシレート、USP(Bedford Laboratories,Bedford,OH 44146)を含有する標準的なバイアルを、滅菌使い捨て3mlシリンジおよび滅菌使い捨て皮下注射針を使用して、1mlの生理食塩水で再構成した。この凍結乾燥粉末の溶解後、0.5mlのこのフェントラミンメシレート溶液を抜き取り、そして滅菌使い捨て3mlシリンジおよび滅菌使い捨て皮下注射針によって、注射用生理食塩水(USP)の50mlバイアルに注射した。従って、この得られたLARAは、生理食塩水中の0.05mg/mlフェントラミンメシレートから構成された。
【0038】
(方法)
3人の健常な男性ヒト被験体(年齢34〜50)が、容易に繰り返し可能な位置で、唇下の口の両側に局所麻酔の注射を受けることを志願した。各注射の正確な時間を記録した。選択した位置は、上犬歯の根の隆起の上部(先端)であった。これは、犬歯、側切歯および上唇を麻痺させるために選択される、一般的な位置である。注射した局所麻酔剤の容量は、口の各側で1.7+0.1mlであった。局所麻酔剤の注射後20分で、各被験体に、一方の側へ1.6mlのLARAを、および反対側へ1.6mlの生理食塩水を再注射した。異なるサイズの針を、麻酔剤およびLARAまたは生理食塩水に使用した。より長い針(11/4”)を、局所麻酔剤に使用し、より多くの溶液を、眼窩下の神経周辺に蓄積させた。LARAまたは生理食塩水を、より短い針(1/2”)を用いて注射し、眼窩下の神経周辺の麻酔剤と接触するLARAをより少なくした。全ての被験体が、麻酔剤を受け、その後、LARAまたは生理食塩水を受けた後、これらの被験体に質問し、口および顔における以下の部位(歯、鼻、上唇および歯肉)の両側での麻痺の強度を試験した。歯の麻痺を、咬合または削合によって試験した。唇の麻痺を、指または舌の接触により試験し、そして鼻の麻痺を、指の接触で試験した。歯肉の麻痺は、木綿スワブの鈍い末端を用いて試験した。
【0039】
(盲検(blinding))
これらの被験体のうちの2人(EおよびM)を、LARAまたは生理食塩水ビヒクルを注射した口の側について盲目にした(すなわち、これらの被験体は、どちら側がLARAを受け、そしてどちら側が生理食塩水ビヒクルを受けたかを、PIに話されてなかった)。第3の被験体(H)は、彼自身で注射した、本研究のPIであった。結果として、被験体Hは、LARAまたは生理食塩水が注射された側について盲目ではなかった。
【0040】
(結果)
3人全ての被験体において、生理食塩水が注射された側と比較して、LARAが注射された側に、局所麻酔の回復の劇的な加速が存在した。いかなる種の副作用は、3人の被験体のいずれにも見られなかった。一般に、歯に対する感覚が、最初に復帰した。表1は、この3人の被験体における、口および顔の両側上の種々の部位で、麻痺が消失しそして感覚が再現する時間を示す。回復の初期段階においては、これらの被験体は、唇のどちら側が最初に回復したかを決定することが幾分困難であったことを報告した。しかし、回復の後期段階においては、唇の2つの側の間の差異が、顕著かつ劇的であった。口および顔の他の部分において、側間の差異は、回復の非常に初期の段階でさえ顕著であることが報告された。この回復過程の初期での唇におけるこの2つの側間の差異を感知することの困難性は、以下の事実に起因すると考えられる:眼窩下神経の唇側の分枝は、正中で交差し、これが、上唇の正中での神経支配(および生じる感覚)の交差を生じる。
【0041】
【表1】

(考察)
LARAは、生理食塩水を使用するよりも、局所麻酔に関連する麻痺を除去するのに顕著に迅速な効果を有した。投与されるLARA溶液中に含まれるフェントラミンメシレートの総量は、0.08mg(1.6mgの0.05mg/ml溶液)であった。このフェントラミンメシレートの総用量は、褐色細胞腫患者における高血圧の全身処置についてFDAによって承認されており、かつ正常な患者において低血圧の重篤なエピソードを生じ得る、5mg用量(1mlの5mg/ml溶液)よりも約62倍低い。本研究において効果的であると見出された極度に低い有効用量で、任意の全身性副作用(例えば、FDA承認の高用量で生じ得る副作用)は、存在しないようである。実際、本研究においては、0.05mg/mlのフェントラミンメシレートの投与中または投与後に、いかなる種の副作用も見られなかった。
【0042】
本発明をここで十分に記載してきたが、本発明が、本発明または本発明の任意の実施形態の範囲に影響することなく、広くかつ等価的範囲の状態、処方物および他のパラメーター内で実施され得ることが、当業者に理解される。本明細書中に引用される全ての特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が本明細書中に参考として十分に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に局所麻酔を施すためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストがフェントラミンメシレートまたは別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストであり、該指示書が以下:
(a) 該局所麻酔が必要である該哺乳動物に対して、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、麻酔される部位に投与し、
ここで、該麻酔薬は、局所麻酔を施すのに有効な量を投与され、
そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、該部位において血管を狭窄し、そして該局所麻酔を延長させるのに有効な量を投与されること、そして次いで
(b) 単位用量の組成物を、該部位に投与することであって、該単位用量の組成物が、
約0.0018mg〜約0.45mgの間のフェントラミンメシレートまたは当モルの別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこと、
を指示するキット。
【請求項2】
哺乳動物に局所麻酔遮断を施すためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストがフェントラミンメシレートまたは別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストであり、該指示書が以下:
(a) 該局所麻酔遮断が必要である該哺乳動物に対して、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該麻酔遮断を受ける部位に投与し、
ここで、該麻酔薬は、局所麻酔を施すのに有効な量を投与され、
そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、該部位において血管を狭窄し、そして該麻酔遮断を延長させるのに有効な量を投与し、そして次いで
(b) 単位用量の組成物を、該部位に投与することであって、該単位用量の組成物が、約0.0018mg〜約0.45mgの間のフェントラミンメシレートまたは当モルの別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこと、
を指示するキット。
【請求項3】
前記部位が硬膜上腔である、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
組織移植片の生存性を増強するためのキットであって、該キットは麻酔薬、α−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト、α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニスト、および指示書を備え、該α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストがフェントラミンメシレートまたは別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストであり、該指示書が以下:
(a) 組織移植片を受ける哺乳動物に、該麻酔薬および該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該組織移植の部位に投与し、ここで、該麻酔薬は局所麻酔を施すのに有効な量を投与され、そして、該α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、該部位において血管を狭窄し、そして該局所麻酔を延長させるのに有効な量を投与すること、そして次いで
(b) 組織移植の手順を実行すること、そして次いで
(c) 単位用量の組成物を、該部位に投与することであって、該単位用量の組成物が、約0.0018mg〜約0.45mgの間のフェントラミンメシレートまたは当モルの別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこと、
を指示するキット。
【請求項5】
前記組織移植片が毛髪移植片である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
請求項4に記載のキットであって、前記指示書が以下:
(d) 前記組織移植手順の後、前記部位にヒアルロニダーゼを投与すること
をさらに指示するキット。
【請求項7】
前記指示書が、前記ヒアルロニダーゼを注射によって投与することを指示し、そして前記毛髪移植片が毛髪弁である、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記指示書が、前記麻酔薬およびα−アドレナリン作用性レセプターアゴニストを、溶液として共に投与することを指示する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記指示書が、前記溶液を、注射によって前記部位に投与することを指示する、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記麻酔薬が、リドカイン、ポロカイン、エチドカイン、リグノカイン、キシロカイン、ノボカイン、カルボカイン、プロカイン、プリロカイン、ブピバカイン、シンコカインおよびメピバカインからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のキット。
【請求項11】
前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、カテコールアミンまたはカテコールアミン誘導体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
前記α−アドレナリン作用性レセプターアゴニストが、レボノルデフリン、エピネフリン、またはノルエプネフリンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のキットであって、前記単位用量の組成物が、約0.09mg〜約0.45mgの間のフェントラミンメシレートまたは当モルの別のα−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストを含む、キット。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のキットであって、前記組成物が、注射、浸潤、または局所投与による、哺乳動物への投与のために処方される溶液である、キット。
【請求項15】
前記溶液が、粘膜組織への局所投与のために処方される、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
該溶液が、粘膜組織への投与のためにウェハ、ペレットまたはコットンボールを含浸するために用いられる、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記組成物が、哺乳動物への局所的な投与のために処方されたゲルまたはペーストである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
前記組成物が、粘膜組織への局所的な投与のために処方される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、フェントラミン、塩酸フェントラミン、フェントラミンメシレート、トラゾリン、ヨヒンビン、ラウオルスシン、ドキサゾシン、ラベタロール、プラゾシン、テトラゾシン、およびトリマゾシンからなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載のキット。
【請求項20】
前記α−アドレナリン作用性レセプターアンタゴニストが、フェントラミンメシレートである、請求項1〜19のいずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
前記単位用量の組成物が、標準的な歯科局所麻酔シリンジに取り付けられる容器中に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
前記単位用量の組成物が、歯科カートリッジ、カプセル、またはシリンジより選択される容器に中に存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
前記容器が、1.6ml〜1.8mlの間の容量を有する、請求項21または請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記単位用量の組成物が、フェントラミンメシレートを含み、該単位用量の組成物が、標準的な歯科局所麻酔シリンジに取り付けられる容器中に存在する、請求項1〜23のいずれか1項に記載のキット。

【公開番号】特開2006−225400(P2006−225400A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104732(P2006−104732)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【分割の表示】特願2001−581825(P2001−581825)の分割
【原出願日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願人】(502219175)ノバラー ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】