説明

局部発振器を調整する装置及び方法

装置は、タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を生成する局部発振器(LO)と、少なくとも2つの入力を有する優先制御部とを有し、入力の各々は、タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第2信号をそれぞれ受信し、優先制御部は、少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定され、優先制御部は、最高精度から最低精度へ少なくとも2つの第2信号を順番に並べ、少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、装置に利用可能な最高精度の第2信号に対してLOのオフセットエラーを補正するように、LOが調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局部発振器のタイミング及び/又は周波数を調整することに関連する。
【背景技術】
【0002】
あるネットワークにおいは、ネットワークのネットワークノードはそのネットワークノードにおけるタイミングの目標に使用される局部発振器(LO)を有する。ネットワークノードのコストを削減するため、LOは、タイミング信号をネットワークに提供するマスター基準タイミングソースと同程度には正確でない。
【0003】
ネットワークノードのLOは、外部タイミング基準ソースにより、時間経過と共に生じるオフセットエラーを補正するように調整できる。
【0004】
単独のマスタータイミング基準ソースがLOを調整するために使用される場合において、何らかの理由でマスター基準ソースが正確でなかった場合又はマスター基準ソースを用いて局部発振器を調整できない場合、例えばGPS信号がタイミング基準ソースとして使用されているがGPSロックが外れてしまった場合、或いはネットワークの不具合がネットワークのマスター基準タイミングは利用可能でないことを意味していた等の場合、ネットワークノードのパフォーマンス及びそのネットワークノードのローカルなタイミング信号を宛にしている他の任意のノード(の機能)は損なわれてしまう。マスター基準が利用可能でなく、代替的な利用可能な基準又はリファレンスが一切存在しなかった場合、ネットワークノードのタイミングを補正又はリセットするために人手を要する。しかしながら人手を介して行うと時間がかかることに加えてコスト高になってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、タイミングの調整を人手を介して行うと時間及びコストがかかってしまう問題点を少なくとも軽減できる装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一形態による装置は、
タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を生成する局部発振器(LO)と、
少なくとも2つの入力を有する優先制御部と
を有する装置であって、該入力の各々は、タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第2信号をそれぞれ受信し、
前記優先制御部は、少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は前記少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定され、
前記優先制御部は、最高精度から最低精度へ前記少なくとも2つの第2信号を順番に並べ、
前記少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、当該装置に利用可能な最高精度の第2信号に対して前記LOのオフセットエラーを補正するように、前記LOが調整される、装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一形態による方法例を示すフローチャート。
【図2】本発明の実施形態が使用されてもよいシステムの概略図。
【図3】本発明の一形態によるスレーブ装置の一例を示す概略図。
【図4】本発明の一形態による有限状態図。
【図5】本発明の一形態による別の方法例を示すフローチャート。
【図6】本発明の他の形態によるスレーブ装置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一形態による装置は、
タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を生成する局部発振器(LO)と、
少なくとも2つの入力を有する優先制御部と
を有する装置であって、該入力の各々は、タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第2信号をそれぞれ受信し、
前記優先制御部は、少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は前記少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定され、
前記優先制御部は、最高精度から最低精度へ前記少なくとも2つの第2信号を順番に並べ、
前記少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、当該装置に利用可能な最高精度の第2信号に対して前記LOのオフセットエラーを補正するように、前記LOが調整される、装置である。
【0009】
一実施例において、前記少なくとも2つの第2信号に属する或る第2信号は、前記少なくとも2つの第2信号の順番により指定された最高精度の第2信号であるとして選択されている。
【0010】
一実施例において、前記指定された最高精度の第2信号が利用可能でなかった場合、前記少なくとも2つの第2信号の前記順番に基づいて、当該装置に利用可能な次の最高精度の第2信号に対して前記LOが調整される。
【0011】
一実施例において、a)GPSタイミング信号、b)ネットワークタイミング信号、c)ネットワーク周波数信号、d)前記LOの数学的モデルによる信号、e)最も精度が高いとして指定された第2信号により前記LOが調整されていた期間内に導出された信号、及びf)同期情報を含む信号を含む信号群の内の1つである第2信号を受信するように、前記少なくとも2つの入力に属する各々の入力が形成されている。
【0012】
一実施例において、前記ネットワークタイミング信号がIEEE1588に従っている。
【0013】
一実施例において、前記ネットワーク周波数信号は、同期イーサネット適応クロックリカバリ(ACR)に従っている。
【0014】
一実施例において、前記LOの前記数学的モデルが、当該装置により生成されること及び当該装置により保持されることの内の少なくとも一方によるものである。
【0015】
一実施例において、自由空間、電気的な経路及び光学的な経路の内の何れかを介して個々の第2信号を受信するように、前記少なくとも2つの入力の内の各入力が形成されている。
【0016】
一実施例において、最高精度から再生精度までの前記少なくとも2つの第2信号の前記順番が、前記第2信号に影響を及ぼす要因に依存して時間と共に変化する。
【0017】
一実施例において、a)当該装置にとって外部の少なくとも1つのソースから送信された情報であって個々の第2信号を受ける少なくとも2つの入力の内の1つの入力に与える前記少なくとも1つのソースの利用可能性についての情報を受信すること、及びb)個々の第2信号を受ける少なくとも2つの入力の内の1つの入力に与える当該装置にとって外部の少なくとも1つのソースの利用可能性を検出することの内の少なくとも1つを行う。
【0018】
一実施例において、前記優先制御部が複数の補正信号生成部を有し、補正信号生成部の各々は個々の入力に関連付けられており、個々の補正信号生成部は第2信号を受信するように形成されており、補正信号生成部の各々は前記LOからクロック信号を受信し、補正信号生成部の各々は、受信した入力及び前記LOからの前記クロック信号の関数である補正信号を生成し、前記優先制御部が複数の加算部を有し、ある加算部は最高精度であるとして指定された第2信号以外の第2信号各々に対するものであり、加算部の各々は、最高精度であるとして指定されている前記第2信号からの補正信号と、他の第2信号の内の何れかからの補正信号とを受信し、前記優先制御部が前記複数の加算部の出力を受け、前記補正信号生成部は、該加算部の前記出力の関数として最高精度から最低精度までの順番に前記少なくとも2つの第2信号を並べる。
【0019】
本発明の一形態による方法は、
タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を局部発振器(LO)が生成するステップと、
少なくとも2つの第2信号を受信するステップであって、該第2信号の各々はタイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを含み、前記少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つは外部ソースから受信されている、ステップと、
少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は前記少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定されるステップと、
最高精度から最低精度へ前記少なくとも2つの第2信号を順番に並べるステップと、
前記少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、利用可能な最高精度の第2信号に対して前記LOのオフセットエラーを補正するように、前記LOを調整するステップと
を有する方法である。
【0020】
一実施例において、前記少なくとも2つの第2信号に属する或る第2信号を、前記少なくとも2つの第2信号の順番により指定された最高精度の第2信号であるとして選択するステップを更に有する。
【0021】
一実施例において、オフセットエラーを補正するように、前記LOを調整するステップにおいて、前記指定された最高精度の第2信号が利用可能でなかった場合、前記少なくとも2つの第2信号の前記順番に基づいて、利用可能な次の最高精度の第2信号に対してオフセットエラーを補正するように前記LOを調整する。
【0022】
一実施例において、a)GPSタイミング信号、b)ネットワークタイミング信号、c)ネットワーク周波数信号、d)前記LOの数学的モデルによる信号、e)最も精度が高いとして指定された第2信号により前記LOが調整されていた期間内に導出された信号、及びf)同期情報を含む信号を含む信号群の内の1つである第2信号を、前記少なくとも2つの入力信号各々について受信する。
【0023】
一実施例において、前記ネットワークタイミング信号を受信する際に、IEEE1588に従うネットワークタイミング信号を受信する。
【0024】
一実施例において、前記ネットワーク周波数信号を受信する際に、同期イーサネット及び適応クロックリカバリ(ACR)の内の少なくとも一方に従うネットワーク周波数信号を受信する。
【0025】
一実施例において、前記LOの前記数学的モデルを生成されること及び前記LOの前記数学的モデルを保持することの内の少なくとも一方を行う。
【0026】
一実施例において、a)外部ソースから送信された情報であって少なくとも2つの第2信号の内の第2信号を与える前記少なくとも外部ソースの利用可能性についての情報を受信すること、及びb)前記少なくとも2つの第2信号を与える少なくとも1つの外部ソースの利用可能性を検出することの内の少なくとも1つを行う。
【0027】
一実施例において、時間経過と共に前記第2信号に影響を及ぼす要因に基づいて、最高精度から最低精度までの順番に前記少なくとも2つの第2信号を並べるステップを更に有する。
【0028】
本発明に関する他の形態及び特徴は、添付図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を理解することで当業者にとって更に明らかになるであろう。
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0030】
ローカルクロックソースを含む複数のネットワーク要素(例えば、複数の基地局又はネットワークリレー)がネットワークに備わっている実施形態において、ローカルクロックソース同士の間の通信は一切なされていない。従って、ローカルクロックソースが複数存在する冗長性は、クロックのネットワーク全体の同期ロバストネス(synchronization robustness)を改善するようには活用されていない。
【0031】
本発明は、スレーブ装置にローカルな時間を保持するために局部発振器(LO)が使用されるシステム及び方法を開示し、LOは、複数のマスター時間及び/又は周波数基準ソースの内の何れかに正確に合った時間を維持するように調整される。一実施例において、複数のマスター時間及び/又は周波数基準ソースの内の1つ以上は、LOよりも正確及び/又は安定的である。従ってプライマリリファレンス又は一次リファレンス(primary reference)が利用可能でない場合、代替的なリファレンスがLOを調整するのに使用され、LO自身が提供できるものよりも正確な時間及び/又は周波数を提供する。
【0032】
一実施例において、複数のマスター時間及び/又は周波数基準ソースの内の1つ以上は、次の場合には、調整されたLOよりも精度が悪い及び/又は安定的でない:(1)より安定的かつ正確なリファレンスにより調整され、(周波数オフセットを表す)精度がLOにより正確に特徴付けられる場合、及び(2)LOがより安定的なリファレンスにより調整され、マスター時間及び/又は周波数基準ソースの時間依存性の周波数安定性が特徴付けられる場合。(1)及び(2)のリファレンスの特徴を利用すると、リファレンスソースにおいて精度及び安定性を補償できるようにし、一次リファレンスが失われた場合にそれを利用可能にする。
【0033】
1つより多い数の時間及び/又は周波数リファレンスが利用可能であった場合、時間及び/又は周波数リファレンスの内の何れかが一次リファレンスとして選択される。一次リファレンスは利用可能なリファレンスの中で最も正確であるものとして選択される。一次リファレンスは、システムの時間同期及び/又は周波数同期のための時間同期及び/又は周波数リファレンスと考えられる任意の時間及び/又は周波数ソースである。他の時間及び/又は周波数リファレンスは、一次リファレンスが利用可能でない場合に使用されてもよい精度が劣ったリファレンスである。一次リファレンスとして選択されるマスターリファレンスソースは時間経過と共に変更されてもよい。例えば、一次リファレンスが選択された際には利用可能でなかった新たなマスターリファレンスが、現在の一次リファレンスよりも正確であると判断された場合、その新たなマスターリファレンスは一次リファレンスとして選択され、かつての一次リファレンスは代替的なリファレンスになるように設定される。
【0034】
1つ以上の時間及び/又は周波数リファレンスは、LOを調整する際に使用可能な基準信号の位相成分も有する。
【0035】
時間及び/又は周波数リファレンスは、例えば、GPSソースからの信号、LOの数学的なモデル、ネットワーク時間リファレンスソースからの信号、及び/又はネットワーク周波数リファレンスソースからの信号等であるがこれらに限定されない。一実施例において、時間及び/又は周波数信号はネットワークノードにおいて外部ソースから受信され、この場合における外部ソースは例えばGPSソースからの信号、ネットワーク時間リファレンスソースからの信号、及びネットワーク周波数リファレンスソースからの信号等である。一実施例において、例えばLOのモデルの場合、時間及び/又は周波数信号はネットワークノードで生成又は維持されてもよい。しかしながらこれらの具体例は本発明を限定するようには意図されていない。例えば、異なるネットワークノードでLOモデルが生成及び/又は維持され、そのモデルに基づいた結果の時間及び/又は周波数リファレンス信号が、そのLOを備えたネットワークノードに送信されることも可能である。時間及び/又は周波数リファレンスは、自由空間(例えば、無線電波)を介して、電気的な経路を介して、光学的な経路を介して、或いは1つ以上のリンクを有する2つのネットワークノード間を結ぶ上記の経路の組み合わせを介して、時間情報、周波数情報、位相情報又はそれらの組み合わせを他の装置に伝える。
【0036】
リファレンスソースの別の具体例は補償されたリファレンスソースであり、ネットワークソースにおける周波数及び/又は位相の精度及び安定性が、GPS信号のような利用可能な既知の正確なリファレンスにより特徴付けられる。そのように特徴付けられた1つ以上のソースの補償は、それらを一次リファレンスソースに対する実現可能な代替手段にする。
【0037】
リファレンスソースを補償する具体例は同期イーサネットクロック信号を利用する場合であり、位相情報は全く無いが周波数が非常に安定的で正確である。そのようなソースとGPSリファレンスとの比較は、GPSリファレンスに対して位相情報を決定できるようにし、その結果、同期アプリケーションを利用するために同期イーサネットクロック信号を較正することができる。
【0038】
ネットワーク時間リファレンスソースからの信号の具体例は、IEEE1588イネーブルネットワークノードからのタイミング信号である。ネットワーク周波数リファレンスソースからの信号の具体例は、同期イーサネット(登録商標)及び/又はECS(イーサネットクロック同期)イネーブルネットワークノードからの周波数信号である。或いは、ネットワーク周波数リファレンスソースからの信号は、適応クロック復元(Adaptive Clock Recovery:ACR)イネーブルネットワークノードからの信号である。
【0039】
一実施例において、LOが一次リファレンスソースにより調整されていた期間内に導出された時間及び/又は周波数情報に基づいて、LOを調整することが可能である。具体例については後述する。
【0040】
本発明の一実施例において、LOを調整する処理は、一次リファレンスとして選択された時間及び/又は周波数リファレンスと、LOの出力とを比較し、「補正因子(correction factor)」を生成することを含む。補正因子は、LOを一次リファレンスで調整することによるLOにおけるオフセットエラーを補正するために使用される。一次リファレンスとLOとの比較はサイクル毎に実行されてもよい。一実施例において、サイクルは約1秒である。しかしながら、本発明の実施例はサイクル時間が1秒未満である又は1秒より長いシステムに適用されてもよいことが理解される。更に、一実施例において、サイクル時間が不規則であり、数十秒ないし数分にわたって変化してもよい。
【0041】
LOは一次リファレンスが利用できなくなるまで一次リファレンスにより調整され続けてよい。一次リファレンスが利用可能でなくなると、次の最も高精度な時間及び/又は周波数リファレンスとして選択される代替的なリファレンスを選択することで、LOの調整を継続することができる。その代替的なリファレンスが利用可能でなくなると、LOは次の最も精度が良い安定的な時間及び/又は周波数リファレンスと共に調整され、最低精度のリファレンスが使用されるまで同様な処理が続く。上記の説明において、精度(accuracy)は目標値に対する周波数又はオフセットの静的なずれ(相違、オフセット)に関連し、安定性(stability)は目標値に対する時間依存性の変動値に関連することに留意を要する。
【0042】
一実施例において、LOを調整するために一次リファレンスが使用されている場合、代替的なリファレンス各々の補正因子が決定される。一実施例において、LOを調整するために一次リファレンスが使用されている場合、代替的なリファレンス全体の内の選択された一部分の代替リファレンス各々の補正因子が決定される。一実施例において、所与の代替的なリファレンスの補正因子は、LO、所与の代替的なリファレンス及び一次リファレンスの出力の関数である。
【0043】
一実施例において、一次リファレンスが利用可能であった場合、代替的なリファレンス各々について決定された補正因子は、一次リファレンスに基づいて決定された補正因子と比較される。補正因子に関するこの比較は、一次リファレンスに基づいて決定された補正因子に関して最高の精度/安定性から最低の精度/安定性にいたる代替リファレンスの順序を決定するのに使用される。
【0044】
一実施例において、代替リファレンスの順序の決定は、一次リファレンスが最も高い精度のリファレンスとして利用可能である期間内においてのみ実行される。そのような例の場合、一次リファレンスが利用可能でなくなると、一次リファレンスが未だ利用可能であった期間に基づいて、最も精度が良い代替リファレンスが選択され、残りの代替リファレンスの順序のまま残る。
【0045】
一実施例において、代替リファレンスの補正因子及び順序の決定は、LOを調整する際にどのリファレンスが使用されるかによらず継続的に又は絶え間なく(continual)実行される。そのような例において、一次リファレンスが利用可能でなくなると、利用可能な順序に基づく最も精度の良い代替リファレンスが、LOを調整するために選択される。選択された最も精度が高い代替リファレンスの補正因子は、LOの出力と比較することで決定される。
【0046】
一実施例において、一次リファレンスが利用可能でなくなると、代替リファレンス各々について決定された補正因子は、現在選択されている最高精度の代替リファレンスの補正因子と比較される。この比較は、LOを調整するために使用されている現在選択されている最高精度の代替リファレンスに関して最高の精度から最低の精度にいたる代替リファレンスの順序を決定するのに使用される。
【0047】
リファレンスの順序が決定された場合であって、利用可能な最高精度のリファレンスが選択された場合において、一次リファレンス又は代替リファレンスの内一次リファレンスが利用可能でなかった場合、選択された利用可能な最高精度のリファレンスから導出された補正信号に基づいて、LOが調整される。
【0048】
一実施例において、マスターリファレンスソースから提供される時間及び/又は周波数信号に影響を及ぼす様々な要因に依存して、代替リファレンスの順序は時間と共に変化する。そのような要因は、例えば、天候及び/又は配置のような環境的な要因、運動又は移動の要因、信号の干渉及び/又は信頼性の要因等であるがこれらに限定されない。
【0049】
一実施例において、周波数リファレンスは時間リファレンスとして使用するために評価される。周波数リファレンスの周波数が充分に安定的であった場合、それはタイミングの条件を満たすために使用されてもよい。
【実施例1】
【0050】
図1のフローチャートを参照しながら、本発明の実施例による方法例を説明する。本方法の第1ステップ1-1は、時間情報、周波数情報、位相情報又はそれらの組み合わせを示す第1信号をLOが生成することを含む。
【0051】
第2ステップ1-2は、時間情報、周波数情報、位相情報又はそれらの組み合わせを含む少なくとも1つの第2信号を受信することを含む。一実施例において、少なくとも1つの第2信号は第1信号よりも高い精度を有する。一実施例において、少なくとも1つの第ミング信号を受信することは、GPSタイミング信号、ネットワークタイミング信号又はネットワーク周波数信号の内の任意の1つ以上を受信することを含む。
【0052】
第3ステップ1-3は、少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも一方の精度を判定し、少なくとも2つの第2信号のうち精度が最高である第2信号を指定する。少なくとも1つの第2タイミング信号の精度を判定する処理は、LOに加えて装置内で発生した時間及び/又は周波数信号を含む外部装置から受信した時間及び/又は周波数信号の精度を判定することを含む。装置内で発生する信号の具体例は、装置内で生成又は維持されるLOのモデルに基づく時間及び/又は周波数信号、又はLOが一次リファレンスによって調整されている期間内に生成又は維持される時間及び/又は周波数信号である。
【0053】
第4ステップ1-4は、最高精度から最低精度に至少なくとも2つの第2信号の順序を決定する(順に並べる)ことを含む。最高精度の時間及び/又は周波数信号が一次リファレンスとして指定され、他の時間及び/又は周波数信号は、一次リファレンスが利用可能でなくなった場合に、次の最高精度の信号がLOを調整するために選択できるような形式で順に並べられる。
【0054】
一実施例において、一次リファレンスは時間及び/又は周波数信号を順に並べる前に指定され、従って代替的な時間及び/又は周波数信号は最高精度から最低精度まで順に並べられ、その最高精度のものは、一次リファレンスの後の最高精度のものとなる。一実施例において、一次リファレンスはソースの既知のパフォーマンスに基づいて指定される。例えば、GPSはシステムに依存する指定された精度を有することが知られている。従ってGPSが利用可能である場合、ソースの安定性に関する不確定性(uncertainty)が問題とはならず、より良いソースの安定性を発揮する利用可能な他のソースが無かった場合、そのソースが一次リファレンスとして指定されてもよい。
【0055】
一次リファレンスに対する二次リファレンスの順序は、一次リファレンスの選択に依存する。一実施例において、「二次的な一次リファレンス(secondary primary reference)」が指定され、一次リファレンスが利用可能でない場合に、二次的な一次リファレンスが一次リファレンスとして使用されるようにする。元の一次リファレンスが失われた場合に、システムにとってソースが一次リファレンスとして使用するのに適切であることを保証するように、可能性のある二次的な一次リファレンスと考えられるソースのパフォーマンスが予め決定されている必要がある。
【0056】
第5ステップ1-5は、少なくとも2つの第2の時間及び/又は周波数信号の順序に基づいて、利用可能な最高精度の第2信号に関してLOのオフセットエラーを補正するようにLOを調整することを含む。
【0057】
一実施例において、本方法は更に装置において、少なくとも1つのマスターリファレンスソースから送信された情報であってその少なくとも1つのマスターリファレンスソースが第2信号を提供することに利用できる可能性についての情報を受信することを含む。一実施例における本方法は、時間及び/又は周波数信号を提供する少なくとも1つのソースの利用可能性を装置が検出することを含む。装置がソースの利用可能性を判定できる場合、特に一次信号が利用可能であるか否か及びそれが何時利用可能であるかを判定できる場合に、それは適切な第2信号を選択することを促す。
【0058】
図2を参照しながら、本発明による方法を使用するシステムを説明する。システム100はスレーブ装置150及び複数のマスターリファレンスソースを含む。
【0059】
マスターリファレンスソースはタイミングリファレンスソース又は周波数リファレンスソースであり、何れもソース信号における位相成分を含む。図2において、第1のマスターリファレンスソースはネットワーククロック110であり、これは衛星120から時間及び/又は周波数信号を受信し、その時間及び/又は周波数信号ネットワークノード160を介してスレーブ装置150へ転送する。第2のマスターリファレンスソースは衛星120であり、これはGPSタイミング情報を直接的にスレーブ装置150へ提供する。一実施例において、1つより多い数の衛星が時間及び/又は周波数信号を提供するために利用可能であってもよい。第3のマスターリファレンスソースはネットワーククロック140であり、これは時間及び/又は周波数信号をネットワークノード142、144、146を介してスレーブ装置150へ送信する。第4のマスターリファレンスソースはネットワーククロック130であり、これは基準信号を基地局(BTS)135を介してスレーブ装置150へ送信する。第5のマスターリファレンスソースはネットワーククロック175であり、これは無線モバイル装置170を中継局として利用し、BTS180を介して基準信号をスレーブ装置150へ送信する。スレーブ装置が受信する時間及び/又は周波数信号の送信元である様々なマスタークロックに関し、いくつかは突き詰めれば同じソースから導出されているが、所与の任意の時点における利用可能性に依存して、必ずしも全てが同時に利用可能であるとは限らない。例えば、衛星120は時間及び/又は周波数情報をスレーブ装置150に直接的に提供することに加えて、ネットワーククロック110を含むネットワークノードを介しても提供している。ある時点において、スレーブ装置150の近辺の悪天候に起因して、スレーブ装置は衛星120からタイミング情報を受信できないかもしれない。しかしながら、衛星からの情報を受信するネットワーククロック110を含むノードの機能は、そのような悪天候には影響されない。ネットワーククロック110は衛星120からタイミング情報を受信し、時間及び/又は周波数信号をスレーブ装置150へ転送することができる。
【0060】
一実施例において、様々なマスタークロックソースが関係のない(すなわち非同期の)ネットワーククロックから生じる。
【0061】
図2において無線モバイル装置又は無線移動機が中継装置として示されているが、無線モバイル装置以外の装置が中継装置として機能してもよいことが理解されるであろう。代替例において、中継局は簡易なBTSであり、そのBTSは、田舎の地方のように不十分なBTSしかない地域或いは激しいフェージングの問題を引き起こす都市(ビル)の谷間がある地域の中で無線信号を伝送するように設計されている。例えば、第1のLOを有する第1のスレーブ装置は、第2のLOを有する第2のスレーブ装置から、第1のLOを調整するための時間及び/又は周波数情報を受信し、第2のスレーブ装置内の第2のLOはマスターリファレンスソースによって調整されている。
【0062】
スレーブ装置150は1つ以上のマスターリファレンスソース110、120、130、140、175から時間及び/又は周波数信号を受信する。上述したように、精度及び時間依存性の周波数の安定性に関するリファレンスの特徴に上記の条件が合致する場合、一実施例におけるスレーブ装置150は他のマスターリファレンスソースと比較して精度が劣っているLO152を有し、別の実施例におけるLO152は1つ以上の他のマスターリファレンスソースよりも高い精度を有する。
【0063】
図2のスレーブ装置150は1つ以上のマスターリファレンスソースからの無線信号を受信する3つのアンテナ155A、155B、155Cを有する。アンテナ155A及び155Cは無線モバイル装置170及びBTS135からの無線信号をそれぞれ受信し、アンテナ155Bは衛星120からの無線信号を受信する。スレーブ装置が備えているアンテナの数は具体的な実施形態に依存する。1つのアンテナは、1つより多い数のマスターリファレンスソースからの信号を受信するのに使用されてもよい。
【0064】
一実施例において、スレーブ装置150は有線ネットワーク接続を介して1つ以上のマスターリファレンスソースに接続されている。スレーブ装置150は有線接続によりネットワークノード142、144、146を介してネットワーククロック140に接続されている。ネットワークノード146及びスレーブ装置150の間の最後のリンクは有線リンク157Aにより示されている。図2のスレーブ装置150は有線接続によりネットワークノード160を介してネットワーククロック110にも接続されている。ネットワークノード160及びスレーブ装置150の間の最後のリンクは有線リンク157Bにより示されている。ネットワーククロックに至る有線接続の数は具体的な実施形態に依存する。更に、ネットワーククロック及びスレーブ装置間のネットワークノードを介するホップ数も具体的な実施形態に依存する。
【0065】
一実施例において、ネットワーククロック及びスレーブ装置間の接続は、有線及び無線リンクの何らかの組み合わせとすることができる。
【0066】
図2はシステム100の中に1つのスレーブ装置150しか示していないが、ネットワークは本願で説明されているタイプのスレーブ装置を1つより多く含んでいてもよいことが、理解されるであろう。ネットワークにおけるスレーブ装置の数に影響する要因は、例えば、ネットワークのサイズ、ネットワークがカバーする地理的な領域、及びスレーブ装置及び/又はマスターリファレンスソースの電力条件等であるがこれらに限定されない。
【0067】
一実施例において、スレーブ装置は、そのスレーブ装置の非常に近くにあるネットワーククロックから時間及び/又は周波数信号を受信する。一実施例において、スレーブ装置は、スレーブ装置に近接していないネットワーククロックから時間及び/又は周波数信号を受信してもよく、その時間及び/又は周波数信号は1つ以上のネットワークノードを介して転送される必要がある。
【0068】
図2は、ネットワークノード160を介してネットワーククロック110が時間及び/又は周波数信号をスレーブ装置150へ送信する例を示す。ネットワーククロック110及びスレーブ装置150の間の距離に依存して、時間及び/又は周波数信号がスレーブ装置150に到達するまでにネットワーク遅延(network delay)が生じるかもしれない。程度の差こそあれネットワーク遅延は補償されるが、そのような遅延は、他のマスターリファレンスソース信号よりも精度が劣った所与のマスターリファレンスソースからの時間及び/又は周波数信号、或いは信頼性が低い又は利用できない可能性がある所与のマスターリファレンスソースからの時間及び/又は周波数信号となる。
【0069】
一実施例において、スレーブ装置は、衛星から直接的に受信したのではなくネットワークノードから時間及び/又は周波数信号を受信し、そのネットワークノードは、衛星から時間及び/又は周波数信号を取得してそれを(有線又は無線による)ネットワークを介してスレーブ装置に転送するように構築されている。図2はネットワーククロック110の具体例を示し、これは時間及び/又は周波数情報を衛星120から受信し、時間及び/又は周波数信号をスレーブ装置150へ送信する。ネットワークノードはスレーブ装置に近接していてもしていなくてもよい。ネットワークノードがスレーブ装置に近接していない場合、時間及び/又は周波数信号を受信するまでに遅延が生じてしまうかもしれない。
【0070】
一実施例において、スレーブ装置は時間及び/又は周波数信号をマスターリソースソースから受信し、それは「無線(over the air:OTA)」インタフェースでスレーブ装置に送信を行う。図2はスレーブ装置150及びBTS135の間にあるOTA接続の例を示す。マスターリファレンスソース、ネットワーククロック130は有線又は無線接続を介してBTS135と通信する。
【0071】
一実施例において、スレーブ装置は中継局を利用することで時間及び/又は周波数信号を受信する。図2に示されているように、BTS180はネットワーククロック175からの時間及び/又は周波数信号を無線モバイル装置170を介して提供する。BTS180はスレーブ装置150に近接していてもいなくてもよい。BTS180及び/又は無線モバイル装置170がスレーブ装置150に近接していない場合、時間及び/又は周波数信号を受信するまでに遅延が生じ、スレーブ装置150に到着した際に補償される必要がある。
【0072】
マスターリファレンスソースの種類、形式又はタイプが、図2を参照しながら言及したものに限定されることは意図されていない。それらは時間及び/又は周波数リファレンスソースの具体的なタイプとして例示されているに過ぎない。時間及び/又は周波数信号をスレーブ装置に提供する他のタイプのマスターリファレンスソースは、ルビジウム又はセシウム標準を用いた原子時計信号;長距離航空法装置(Long Range Aid to Navigation:LORAN)によるタイミング信号;テレビジョン放送信号中に存在する同期信号等のようなネットワーク配信を含む。
【0073】
図2は、様々なタイプのリファレンスソースと、リファレンスソース及びスレーブ装置の間の様々なタイプの接続とを示す。本発明の実施形態は、個々の具体的な形態に依存し、図2に具体的に示されている形式(タイプ)のリファレンスソース及び接続や、本願で説明されている他のタイプのリファレンスソース及び接続を含む。
【0074】
一実施例において、ネットワーククロックは例えばレイヤ1の手段のような物理レイヤで時間及び/又は周波数信号をスレーブ装置に送信することができる。一実施例において、物理レイヤの実現手段は同期イーサネット(SyncE)標準仕様に従っていてもよい。レイヤ1の手段を実現する例において、マスターリファレンスソース及びスレーブ装置間のネットワークノードは、マスターリファレンスソースの時間及び/又は周波数信号を用いて、ネットワークノード間の信号を計時する。例えば、図2において、ネットワークノード142、144、146はネットワーククロック140からのネットワーククロック信号を用いて、物理レイヤにおける各自のネットワークノードを通るデータの時間を測定する。
【0075】
一実施例において、ネットワーククロックはソフトウェアレイヤ(例えば、レイヤ2の手段)においてスレーブ装置に時間及び/又は周波数信号を送信することができる。ソフトウェアレイヤの実現手段に関する特定の具体例において、マスターリファレンスソースがスレーブ装置に送信したデータパケットは、時間及びデータの情報と共にエンコードされ、スレーブ装置がネットワーク遅延を判定できるようにしかつスレーブ装置を調整するのに使用される時間及び/又は周波数信号を判定できるようにする。一実施例において、ソフトウェアレイヤ手段の処理は周波数/時間転送プロトコルのIEEE1588標準仕様に従って実行される。再び図2を参照するに、ネットワーククロック130はレイヤ2の手段を用いて時間及び/又は周波数信号をBTS135に送信しており、BTS135はその信号をレイヤ2の手段を用いてスレーブ装置150に送信している。
【0076】
マスターリファレンスソース及びスレーブ装置の間に関して複数のタイプの通信方式(すなわち、レイヤ1及びレイヤ2)が説明されているが、これは、スレーブ装置がマスターリファレンスソースから時間及び/又は周波数信号を受信する方式の網羅的な列挙であると解釈すべきではない。他のタイプの通信方式が想定されてもよい。
【0077】
一実施例において、スレーブ装置は無線通信ネットワークにおけるBTSの一部分であってもよい。一実施例において、スレーブ装置は、無線通信ネットワークにおける中継局のようなネットワークノードの一部部であってもよい。一実施例において、スレーブ装置は企業ネットワークの一部分であってもよい。一実施例において、スレーブ装置は無線通信ネットワークにおける無線端末であってもよく、例えば、セルラ電話、無線イネーブルコンピュータ又はパーソナルデータアシスタント(PDA)等でもよいがこれらに限定されない。概して、スレーブ装置は、ネットワーク内の任意のタイプのネットワーク要素の一部分でもよいし、それに近接して位置していてもよく、そのネットワーク要素はLOのような局在した時間基準(ローカルタイミングソース)を使用することができる。一実施例において、本願で説明される方法で調整することが可能なLOを利用すると、ネットワーク要素に安価なタイプのLOを利用できるようになり、従ってネットワーク要素の経済的なコストを低減することができる。
【0078】
図3を参照しながら、図2で説明したようなスレーブ装置の更に詳細な例を説明する。図3は複数の入力210、220、230、240を有するスレーブ装置を示し、その複数の入力は複数のマスターリファレンスソース(図示せず)から時間及び/又は周波数信号を受信する。スレーブ装置は優先制御部250を含み、優先制御部は、入力210、220、230、240で受信した与えられた1つ以上の時間及び/又は周波数信号に対する補正信号を決定し、最も精度が高いものから最も精度が低いものまで補正信号の優先順位を決め、最も高い精度のリファレンスをLOに提供し、LOを調整してLO内のオフセットエラーを削減し、そのオフセットエラーはLOが最後に調整されて以来生じたものである。優先制御部250の詳細な動作については後述する。優先制御部250の出力298はLO260に提供される。LO260の出力262は優先制御部250の入力に提供され、1つ以上の入力から補正信号を決定する処理を支援する。
【0079】
優先制御部250の第1入力210は一次リファレンス信号のためのものである。一次リファレンスは、最も精度が良い時間及び/又は周波数信号を提供していることを示す少なくとも1つの基準に基づいて選択される。残りの入力は代替的なマスターリファレンスソースの時間及び/又は周波数信号のためのものであり、すなわち、入力220は代替リファレンス#1、入力230は代替リファレンス#2、入力240は代替リファレンス#13のためのものである。LOの出力262は優先制御部250にフィードバックされている。図3には4つの入力が示されているが、このことは単なる一例に過ぎない。マスターリファレンスソースからの信号を受信するための入力の数は具体的な実施形態に依存する。
【0080】
一実施例において、少なくとも1つのGPS信号や少なくとも1つのネットワーククロック信号を含むマスターリファレンスソースからの一群の時間及び/又は周波数信号から、一次リファレンス及び代替リファレンスが選択される。一実施例において、時間及び/又は周波数信号はLOのモデルに基づいて生成される。一実施例において、LOのモデルから生成された信号は一次リファレンス又は代替リファレンスの何れかとして使用するように選択される。一実施例において、時間及び/又は周波数信号は、LOが一次リファレンスソースにより調整されていた期間内に導出される。本発明を限定するようには意図されていない具体例では、一次リファレンスがLOを調整するのに利用可能であって使用されること、LO及び一次リファレンスの間の相違量と時間との間に実質的な線形関係があることが、或る期間の間に判断されると、一次リファレンスが利用可能でなくなった場合に、LOが最後に調整されて以来の時間の長さ及び判定された線形関係に基づいて、LOを調整することができる。
【0081】
マスターリファレンスソース信号は、スレーブ装置における一次リファレンスであるように内部で決定されてもよい。一実施例において、スレーブ装置は、そのような決定を、リファレンスソース信号を受信した後であって図3に示す入力に先行して行うように形成されている。一実施例において、どのマスターリファレンスソースが一次リファレンスであるかの決定は、受信した複数の信号同士の比較に基づいており、最も正確な時間及び/又は周波数信号をもたらすマスターリファレンスソースを決定する。一実施例において、どのマスターリファレンスソースが一次リファレンスであるかの決定は、特定のマスターリファレンスソースからの信号のデフォルトの選択に基づいている。一実施例において、どのマスターリファレンスが一次リファレンスであるかの決定は、指定されたマスターリファレンスソースのリストからの選択に基づいている。特定のマスターリファレンスソースを一次リファレンスとして選択する具体例は、GPS衛星から提供されるマスターリファレンスソースを一次リファレンスとして選択することである。指定されたマスターリファレンスソースのリストから一次リファレンスを選択する具体例は、1)GPSマスターリソースソース、2)ネットワーククロックリソースソース及び3)LOモデルを含む指定されたリストから一次リファレンスを選択することを含む。指定に基づく一次リファレンスの最初の選択肢はGPSソースである。しかしながら、GPSが利用可能でなかった場合、ネットワーククロックソースが一次リファレンスとして選択されてもよい、等々。
【0082】
更に図3を参照するに、スレーブ装置200において、入力210で受信した一次リファレンスは第1の補正信号生成部270に与えられる。クロック信号の出力262も第1の補正信号生成部270に与えられる。第1の補正信号生成部270からの出力は補正信号271であり、補正信号は一次リファレンスに対してLO260を調整するのに使用可能である。
入力220で受信した代替リファレンス#1は第2の補正信号生成部272に与えられる。クロック信号の出力262も第2の補正信号生成部272に与えられる。入力230で受信した代替リファレンス#2及び入力240で受信した代替リファレンス#3に関し、同様な接続が第3及び第4の補正信号生成部274及び276にそれぞれなされている。
【0083】
第2の補正信号生成部272からの補正信号273は第1の加算部282に与えられる。第1の補正信号生成部270からの補正信号271も第1の加算部282に与えられている。第1の加算部282の出力は、一次リファレンス補正信号271と代替リファレンス#1補正信号273との間の差分である。第3の補正信号生成部274からの補正信号275は第2の加算部284に与えられる。第1の補正信号生成部270からの補正信号271も第2の加算部284に与えられている。第2の加算部284の出力は、一次リファレンス補正信号271と代替リファレンス#2補正信号275との間の差分である。代替リファレンス#3補正信号277についても、代替リファレンス#1及び#2と同様な方法で加算部286を用いて処理される。
【0084】
一次リファレンス補正信号271に基づく加算部282、284、286の出力は、補正信号選択部290に与えられる。補正信号選択部290は、そして、一次リファレンスに関する最高の精度ないし最低の精度の観点から様々な補正信号を指定する。
【0085】
補正信号選択部290はその後に最も正確な補正信号と共に利用可能な補正信号を選択する。一次リファレンスが利用可能である場合、その一次リファレンスに基づく補正信号が使用される。一次リファレンスが利用可能でなかった場合、利用可能である補正信号によって決定される順序(ordering)に基づいて、次の最も精度の高い補正信号が選択される。
【0086】
一実施例において、一次リファレンスが利用可能でなかった場合、次の最も正確な代替リファレンスが入力210に印加され、次の最も正確な代替リファレンスとLOの出力との間の比較結果が補正信号271となる。補正信号271は上述したように他の代替補正信号と比較され、補正信号は次の最も正確な代替リファレンスに対して適切に並べられることが可能である。
【0087】
次の最も正確孔代替リファレンスが入力210に入力されるのではない代替例の場合、代替リファレンス信号が図3に示す入力において維持され、信号相関部272、274、276の出力は、補正信号選択部290及び加算部282、284、286にそれぞれ直接的に与えられ、補正信号選択部290が、上述したような加算部282、284、286の出力の順番による選択に基づいて、信号相関部272、274、276の出力の中から適切な相関信号298を選択できるようにする。
【0088】
図3は優先制御部がどのように実現されるかの具体例を示しているが、一次リファレンスが利用可能でない場合に複数の代替リファレンスの順序を決定し及び次の最高に正確な代替リファレンスを選択した結果をもたらす他の物理的実現手段も、本発明の範囲内として想定されている。
【0089】
優先制御部250はソフトウェア、ハードウェア又はそれらの組み合わせによって実現されても良い。例えば、ソフトウェアで実現する場合、様々な信号の比較処理は1つ以上のソフトウェアモジュールとして実現され、順序指定機能は別のモジュールとして実現されもよい。ハードウェア実現手段の場合、様々な信号比較処理及び順序指定機能は、例えばASICやFPGA等(これらに限定されない)を用いて実現されてもよい。
【0090】
[ホールドオーバ時間の改善]
本発明の別の形態において、一次マスターリファレンスソースが利用可能でなくなった場合、ホールドオーバ状態(holdover state)に入り、温度、時間、供給電圧等のような環境パラメータに対するLOの動作モデルに基づいて、LOのタイミング同期及び/又は周波数同期を維持しようとする試みがなされる。ホールドオーバ状態に関する問題は、使用されるホールドオーモデルの精度及びLOの安定性によって、許容できるホールドオーバ持続時間が制限されてしまうことである。一実施例において、LOを調整するために外部の他のマスターリファレンスソースが利用可能である場合、又はLOのモデルである内部リファレンスソースがソースを調整するのに使用される場合に、ホールドオーバ状態が生じる。
【0091】
概して、一次マスターリファレンスソースが獲得され直されるたびに、利用可能でなくなった後、LOの時間/周波数の精度及び/又は安定性に関する更に多くの情報が取得される。しかしながら、上述したような一次及び代替リファレンスソースの優先リストを用いる場合、LOを調整するために現在利用できるソースよりも高精度であると判断されるリファレンスソースが発見される毎に、LOの現在の精度に関する更に多くの情報を取得することが可能である。こうして改善された制度を有するリファレンスソースが利用可能になった場合、ホールドオーバの持続時間の間に蓄積されたオフセットエラーが補正される。
【0092】
しかしながら状況によっては一次マスターリファレンスが利用不可能になっていた後に利用可能になった場合において、継続的にLOを調整するために一次マスターリファレンスソースが利用可能になる前に、再びその一次マスターリファレンスソースが利用可能でなくなってしまう。一次マスターリファレンスソースが一次的に有効な又は利用可能な間に復元された時間及び/又は周波数信号は、一次マスターリファレンスソースの一次的な有効性又は利用可能性に対して、LOの同期及び/又は同調を改善し、オフセットエラーを削減することができる。
【0093】
上述したような一次マスターリファレンスソースの限られた有用性に基づいて、オフセットエラーを補正するために一次的に有効な一次リファレンスを使用できる機能を備えていない装置の場合、LOはホールドオーバ状態のまま残る。例えば、一次マスターリファレンスソースが継続的にLOを調整するために使用される期間のような所定の期間の間、一次マスターリファレンスソースが利用可能にならない限り、LOを含む装置は、一次的に有効なマスターリファレンスソースに基づいてオフセットエラーを補正することを行わない。拡張されたホールドオーバ持続時間は、装置の同期及び/又は同調にとっては有害である。
【0094】
一次的に有効な一次マスターリファレンスソースに基づいてオフセットエラーを補正した結果、全体的なホールドオーバ持続時間は、一次的な有用性を用いてオフセットエラーを補正できなかった場合よりも長くなり、全体的なホールドオーバ持続時間にわたって、処理の継続中にLOを調整するのに充分に長い期間の間、如何なる一次マスターリファレンスソースも利用可能でない。そのような場合、一次的に利用可能な一次マスターリファレンスソースからの時間及び/又は周波数信号は、LOの時間及び/又は周波数オフセットエラーが減少する効果をもたらす。LOが、ホールド状態のまま残されかつマスターリファレンスソースの一次的に有効な期間の間に得られた情報によって調整されない場合よりも、LOは、一次マスターリファレンスソースに接近するように調整される。
【0095】
一実施例において、装置は単独の一次マスターリファレンスソースから時間及び/又は周波数信号を受信するのみであり、一次マスターリファレンスソースが利用可能でない場合、装置はホールドオーバ状態に入り、LOの安定性及び同調を維持しようとする試みがなされる。
【0096】
一実施例において、装置は1つより多い数のマスターリファレンスソースから時間及び/又は周波数信号を受信し、それらのマスターリファレンスソースは最高精度から最低精度まで順に並べられる。一次リファレンスソースが利用可能でない場合、ホールドオーバ状態に入り、その間、代替的な精度が劣ったマスターリファレンスソースがLOを調整するために少なくとも部分的に使用される。
【0097】
一次マスターリファレンスソースが利用可能でない場合において、一次マスターリファレンスソースの一次的に有用な期間の間に取得された情報を用いてLOを同期及び/又は同調させることで、オフセットエラーを低減させると、装置はホールドオーバ状態に戻る。
【0098】
本発明の一実施例はネットワークノードで使用するモジュールを実現する際に使用され、そのモジュールはネットワークノードの同期及び/又は同調に関わるコストを削減する。ネットワークノードは例えば通信ネットワークにおける基地局や中継局、或いは企業ネットワークにおけるネットワークノード等である。概して、そのモジュールはネットワーク内の任意のタイプのネットワークノードの一部分でもよいし又は近接して設けられてもよく、そのネットワークノードはLOのような局在しているタイミングソースを調整することができる。
【0099】
図4を参照しながら本発明の実施例に関する有限状態図(finite state diagram)を説明する。第1の状態は、LOの時間同期又は周波数同期についてマスターリファレンスソースと比較する状態である。唯1つのリファレンスソースがLOを調整するために使用されている場合、単独のマスターリファレンスソースが使用されてもよいし、或いは複数のマスターリファレンスソースが利用可能な場合、最も正確なソースとして指定された一次マスターリファレンスソースが使用されてもよい。この様子は、図4において「マスターリファレンスソースの状態にロック」410として示されている。
【0100】
第2の状態は、何らかの原因でマスターリファレンスソースが利用可能でなくなった場合に、環境パラメータ(例えば、温度、時間及び供給電圧等であるが、これらに限定されない)によるLOの動作モードに基づいて、LOの同期及び同調を維持しようとする試みがなされる状態である。一実施例において、一次マスターリファレンスソースが利用可能でなく、代替リファレンスソースが利用可能であった場合に、LOの同期及び同調を維持しようとする試みは、代替リファレンスソースを利用することに基づく。この様子は、図4において「ホールドオーバ状態」として示されている。
【0101】
マスターリファレンスソースが利用できず、「ホールド状態」420に移ることとなる様子は、図4において「マスターリファレンスソース状態喪失」415として示されている。
【0102】
第3の状態は、「ホールドオーバ状態」420である間にマスターリファレンスソースが利用可能になった場合に、マスターリファレンスソースに対してLOの同期及び/又は同調の状態を最終的に更新しようとする試みがなされる状態である。この様子は、図4において、「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430として示されている。
【0103】
利用可能でなくなった後にマスターリファレンスソースが利用可能になり、「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430に移ることとなる様子は、「マスターリファレンスソース利用可能」425として示されている。
【0104】
第4の状態は、「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430の間にマスターリファレンスソースが利用可能でなくなった場合に、「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430の間に蓄積された同期及び/又は同調の情報を利用して、一次的に回復したマスターリファレンスソースに関して、LOの同期及び/又は同調の状態を改善し続けようとする状態である。これは「累積時間エラー復元状態」440として示されている。ホールドオーバの持続時間に依存して、時間及び/又は周波数オフセットの大きなエラーがホールドオーバの間に蓄積される。そのようなエラーは一次的に有効なマスターリファレンスから復元した時間及び/又は周波数信号と共に減少させることができ、特に、一次的に有効なマスターリファレンスソースに基づいてエラーを補正せず、ホールドオーバ持続時間が長くなるにつれてエラーが大きくなってしまうことを許容する場合と比較して、エラーを減少させることができる。
【0105】
マスターリファレンスソースが一次的に利用可能になった後に再び利用不可能になり、「累積的時間エラー復元状態」440に移ることとなる様子は、「マスターリファレンスソース利用不可」435として示されている。
【0106】
「累積的時間エラー復元状態」440において一次的に有効なマスターリファレンスソースに基づいて、累積的なオフセットエラーが補正又は少なくとも改善された後、LOの制御は「ホールドオーバ状態」420に戻る。「累積的時間エラー復元状態」440から「ホールドオーバ状態」420に戻る様子は、図4において「復元完了」465として示されている。
【0107】
「累積的時間エラー復元状態」440の間にマスターリファレンスソースが利用可能になった場合、状態は「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430に戻ることになる。「累積的時間エラー復元状態」440の間にマスターリファレンスソースが再び利用可能になる様子は、「マスターリファレンスソース利用可能」455として示されている。
【0108】
「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430によりマスターリファレンスソースの復旧及び如何なる時間及び/又は周波数オフセットエラーの補償も首尾よく行われた後、LOの制御は「マスターリファレンスソースロック状態」410に戻る。一実施例において、「マスターリファレンスソースロック状態」410に復帰することが許容される前に、LO及びマスターリファレンスソースの間の位相誤差は200ナノ秒未満でなければならない。より一般的には、「マスターリファレンスソースロック状態」410に復帰するために、他の具体的な実現基準が設定されてもよい。
【0109】
「マスターリファレンスソースリカバリ状態」430から「マスターリファレンスソースロック状態」410に復帰する様子は、「マスターリファレンスソースリカバリ完了」475として示されている。
【0110】
本発明の実施例は有限状態マシン(finite state machine)アルゴリズムを使用し、マスターリファレンスソースに対するLOの同期及び/又は同調を維持するためにモジュールの様々な動作状態を追跡する。
【0111】
図5のフローチャートを参照しながら、本発明の実施例による方法例を説明する。本方法の第1のステップ5-1はLOが第1信号を生成することを含み、第1信号は、時間情報、周波数情報、位相情報又はそれらの組み合わせの内の何れかを含む。
【0112】
本方法の第2のステップ5-2は少なくとも1つの第2信号を受信することを含み、第2信号は時間情報、周波数情報、位相情報又はそれらの組み合わせの内の何れかを含む。一実施例において、少なくとも1つの第2信号は、第1信号よりも高精度及び/又は安定的である。一実施例において、上述したように、例えばソースの精度及び安定性を正確に特徴付ける条件に合致する場合、少なくとも1つの第2信号はLOよりも劣った精度/低い安定性を有する。少なくとも1つの第2信号は、GPSソースからの信号、LOの数学的モデル、ネットワーク時間基準ソースからの信号及び/又はネットワーク周波数基準ソースからの信号の内の少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。一実施例において、少なくとも第2信号は、LOを含むネットワークノードにおいて、例えばGPSソースからの信号等の場合に外部ソースから受信される。一実施例において、少なくとも1つの第2信号は、例えばLOのモデル等の場合にネットワークノードにおいて生成又は維持される。
【0113】
第3のステップ5-3は、第2信号がLOを調整するのに利用可能でなかった場合に、第2信号よりも劣った精度のソースを用いてLOを調整することを含む。
【0114】
第4のステップ5-4は、第2信号が少なくとも一次的に有効又は利用可能になった場合に、少なくとも一次的に有効になった第2信号に対するLOのオフセットエラーを判定することを含む。
【0115】
第5のステップ5-5は以下の処理を含む:装置が継続的にLOを調整するために第2信号を使用する前に、第2信号が利用可能でなくなった場合、第2信号が一次的に有効であった期間内に取得された情報に基づいて、第2信号に対するLOのオフセットエラーを補正し、第2信号が以後において少なくとも一次的に有効になるまで、第2信号よりも精度が劣っているソースを利用してLOを調整する。
一実施例において本方法は本発明の他の実施例に関する説明済みのステップを更に含んでもよく、例えば、少なくとも2つの第2信号が存在する場合において、少なくとも2つの第2信号の内の1つが、少なくとも2つの第2信号の内で最も正確であるとして指定されたプライマリ第2信号であり、少なくとも2つの第2信号の内の他の第2信号は、プライマリ第2信号が少なくとも一次的に利用可能でなくなった場合に使用することが可能な信号であって、プライマリ第2信号よりも劣った精度を有し、当該方法は、少なくとも2つの第2信号各々の精度をプライマリ第2信号に対して判定し、少なくとも2つの第2信号を最高精度から最低精度へ順に並べ、少なくとも2つの第2信号の順序に基づいて、利用可能なプライマリ第2信号に対するLOのオフセットエラーを補正するようにLOを調整するステップを有する。
【0116】
図6を参照しながらスレーブ装置の詳細な具体例を説明する。図6はスレーブ装置600を示し、スレーブ装置は複数のマスターリファレンスソース(図示せず)から時間及び/又は周波数信号を受信する複数の入力610、620、630、640を有する。スレーブ装置は複数の入力610、620、630、640を受信するLOエラー補正部650も有する。第2信号がLOを調整するために利用可能でなかった場合に、第2信号より低い精度のソースを利用してLOを調整するように、LOエラー補正部650は形成されている。
【0117】
装置が継続的にLOを調整するために第2信号を使用する前に、第2信号が利用可能でなくなった場合、第2信号が一次的に有効であった期間内に取得された情報に基づいて、第2信号に対するLOのオフセットエラーを補正し、第2信号が以後において少なくとも一次的に有効になるまで、第2信号よりも精度が劣っているソースを利用してLOを調整するように、LOエラー補正部650は更に形成されている。
【0118】
LOエラー補正部650の出力652はLO660に与えられる。LO660の出力662はLOエラー補正部650の入力に与えられ、オフセットエラーを補正するのに使用される1つ以上の入力から補正信号を決定することを促す。
【0119】
一実施例において、LOエラー補正部650の機能は、図3の優先制御部250と同一又は類似するタイプの優先制御部に含まれている。一実施例において、LOエラー補正部は個別的な機能モジュールであり、図3の優先制御部250と同一又は類似するタイプの優先制御部から出力された補正信号を利用する。
【0120】
図6に示す例には、LO補正部に対する複数の入力が存在する。しかしながら、一実施例において、LO補正部は、LOを調整するのに使用される1つの第2信号を受信する唯1つの入力を有していてもよい。その1つの第2信号が利用可能でなくなると、LOを調整する或る方法は、より良い情報が与えられるようになるまで、LOのチューニングポジション(同調位置)を、必要な限り高い精度及び/又は安定性の信号をもたらす位置にロックすることで実行される。
【0121】
LOエラー補正部650はソフトウェア、ハードウェア又はそれらの何らかの組み合わせにより実現される。例えば、ソフトウェア実現手段の場合、様々な信号の比較処理は1つ以上のソフトウェアモジュールとして実現され、順序指定機能は別のモジュールとして実現されもよい。ハードウェア実現手段の場合、様々な信号比較処理及び順序指定機能は、例えばASICやFPGA等(これらに限定されない)を用いて実現されてもよい。
【0122】
本発明に関する様々な修正例及び変形例が上記の教示内容に照らして可能である。従って添付の特許請求の範囲内において、具体的に上述したものとは別様に本発明が実現されてもよいことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を生成する局部発振器(LO)と、
少なくとも2つの入力を有する優先制御部と
を有する装置であって、該入力の各々は、タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第2信号をそれぞれ受信し、
前記優先制御部は、少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は前記少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定され、
前記優先制御部は、最高精度から最低精度へ前記少なくとも2つの第2信号を順番に並べ、
前記少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、当該装置に利用可能な最高精度の第2信号に対して前記LOのオフセットエラーを補正するように、前記LOが調整される、装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの第2信号に属する或る第2信号は、前記少なくとも2つの第2信号の順番により指定された最高精度の第2信号であるとして選択されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記指定された最高精度の第2信号が利用可能でなかった場合、前記少なくとも2つの第2信号の前記順番に基づいて、当該装置に利用可能な次の最高精度の第2信号に対して前記LOが調整される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
a)GPSタイミング信号、
b)ネットワークタイミング信号、
c)ネットワーク周波数信号、
d)前記LOの数学的モデルによる信号、
e)最も精度が高いとして指定された第2信号により前記LOが調整されていた期間内に導出された信号、及び
f)同期情報を含む信号
を含む信号群の内の1つである第2信号を受信するように、前記少なくとも2つの入力に属する各々の入力が形成されている、請求項1-3の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ネットワークタイミング信号がIEEE1588に従っている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ネットワーク周波数信号は、同期イーサネット適応クロックリカバリ(ACR)に従っている、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記LOの前記数学的モデルが、当該装置により生成されること及び当該装置により保持されることの内の少なくとも一方によるものである、請求項4記載の装置。
【請求項8】
自由空間、電気的な経路及び光学的な経路の内の何れかを介して個々の第2信号を受信するように、前記少なくとも2つの入力の内の各入力が形成されている、請求項1-7の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
最高精度から再生精度までの前記少なくとも2つの第2信号の前記順番が、前記第2信号に影響を及ぼす要因に依存して時間と共に変化する、請求項1-8の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
a)当該装置にとって外部の少なくとも1つのソースから送信された情報であって個々の第2信号を受ける少なくとも2つの入力の内の1つの入力に与える前記少なくとも1つのソースの利用可能性についての情報を受信すること、及び
b)個々の第2信号を受ける少なくとも2つの入力の内の1つの入力に与える当該装置にとって外部の少なくとも1つのソースの利用可能性を検出すること
の内の少なくとも1つを行う請求項1-9の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記優先制御部が複数の補正信号生成部を有し、補正信号生成部の各々は個々の入力に関連付けられており、個々の補正信号生成部は第2信号を受信するように形成されており、
補正信号生成部の各々は前記LOからクロック信号を受信し、
補正信号生成部の各々は、受信した入力及び前記LOからの前記クロック信号の関数である補正信号を生成し、
前記優先制御部が複数の加算部を有し、ある加算部は最高精度であるとして指定された第2信号以外の第2信号各々に対するものであり、加算部の各々は、最高精度であるとして指定されている前記第2信号からの補正信号と、他の第2信号の内の何れかからの補正信号とを受信し、
前記優先制御部が前記複数の加算部の出力を受け、前記補正信号生成部は、該加算部の前記出力の関数として最高精度から最低精度までの順番に前記少なくとも2つの第2信号を並べる、請求項1-10の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
タイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを有する第1信号を局部発振器(LO)が生成するステップと、
少なくとも2つの第2信号を受信するステップであって、該第2信号の各々はタイミング情報、周波数情報、位相情報及びそれらの組み合わせの内の少なくとも1つを含み、前記少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つは外部ソースから受信されている、ステップと、
少なくとも2つの第2信号の内の少なくとも1つの第2信号の精度を判定し、何れかの第2信号は前記少なくとも2つの第2信号の内で精度が最高であるように指定されるステップと、
最高精度から最低精度へ前記少なくとも2つの第2信号を順番に並べるステップと、
前記少なくとも2つの第2信号の順番に基づいて、利用可能な最高精度の第2信号に対して前記LOのオフセットエラーを補正するように、前記LOを調整するステップと
を有する方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの第2信号に属する或る第2信号を、前記少なくとも2つの第2信号の順番により指定された最高精度の第2信号であるとして選択するステップを更に有する請求項12記載の方法。
【請求項14】
オフセットエラーを補正するように、前記LOを調整するステップにおいて、前記指定された最高精度の第2信号が利用可能でなかった場合、前記少なくとも2つの第2信号の前記順番に基づいて、利用可能な次の最高精度の第2信号に対してオフセットエラーを補正するように前記LOを調整する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
a)GPSタイミング信号、
b)ネットワークタイミング信号、
c)ネットワーク周波数信号、
d)前記LOの数学的モデルによる信号、
e)最も精度が高いとして指定された第2信号により前記LOが調整されていた期間内に導出された信号、及び
f)同期情報を含む信号
を含む信号群の内の1つである第2信号を、前記少なくとも2つの入力信号各々について受信する、請求項12-14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ネットワークタイミング信号を受信する際に、IEEE1588に従うネットワークタイミング信号を受信する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ネットワーク周波数信号を受信する際に、同期イーサネット及び適応クロックリカバリ(ACR)の内の少なくとも一方に従うネットワーク周波数信号を受信する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記LOの前記数学的モデルを生成されること及び前記LOの前記数学的モデルを保持することの内の少なくとも一方を行う請求項15記載の方法。
【請求項19】
a)外部ソースから送信された情報であって少なくとも2つの第2信号の内の第2信号を与える前記少なくとも外部ソースの利用可能性についての情報を受信すること、及び
b)前記少なくとも2つの第2信号を与える少なくとも1つの外部ソースの利用可能性を検出すること
の内の少なくとも1つを行う請求項12-18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
時間経過と共に前記第2信号に影響を及ぼす要因に基づいて、最高精度から最低精度までの順番に前記少なくとも2つの第2信号を並べるステップを更に有する、請求項12-19の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530411(P2012−530411A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515297(P2012−515297)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000828
【国際公開番号】WO2010/144996
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511225310)ロックスター ビーアイディーシーオー,エルピー (26)
【Fターム(参考)】