工作機械の位置測定方法とその装置
【課題】簡素な構成のレーザ光線を有する測定装置で、NC工作機械の3軸方向の位置座標値を同時に検出し、変位値を演算処理して、熱変位等の補正値とする。
【解決手段】回転主軸4とテーブル6との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の相対移動を行いワークを加工する工作機械に適用する。テーブル6上にレーザ光線11を照射する発光器12と受光器13を配置する。回転主軸4に端部を円錐形状部とした測定工具8を装着する。ワークの加工前と加工後に、テーブル6と測定工具8との相対移動でレーザ光線11を測定工具8の円錐形状部15に遮断させる。この遮断時にスキップ信号を送出し、位置を検出し演算処理し、X、Y,Zの各軸の加工前と加工後の差を算出し補正値を求める。
【解決手段】回転主軸4とテーブル6との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の相対移動を行いワークを加工する工作機械に適用する。テーブル6上にレーザ光線11を照射する発光器12と受光器13を配置する。回転主軸4に端部を円錐形状部とした測定工具8を装着する。ワークの加工前と加工後に、テーブル6と測定工具8との相対移動でレーザ光線11を測定工具8の円錐形状部15に遮断させる。この遮断時にスキップ信号を送出し、位置を検出し演算処理し、X、Y,Zの各軸の加工前と加工後の差を算出し補正値を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ、旋盤等の工作機械の位置測定方法とその装置に関する。更に詳しくは、マシニングセンタ等の主軸と、テーブル等に設けられ、レーザ光線を利用して主軸の測定工具とテーブルとの相対位置ずれを測定し位置補正する位置測定方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からNC工作機械、例えばマシニングセンタの主軸の動作位置、或いはテーブル等の送り系の動作位置を検出する技術と、それに関わる測定装置は知られている。これらの位置測定の必要性は、例えば、工作機械が加工に伴って発生する熱変形等の補正のためである。又形状等の確認、磨耗の確認等のための寸法測定等も行われている。これらの測定対象は、主軸の工具位置、工具長さ、工具形状、或いはテーブル等の送り系である。
【0003】
稼動中の工作機械で行われる測定は、主に工作機械が加工動作を行うことから生じる熱変形、摩耗、折損の有無等の測定である。中でも熱変形は工具と加工物との相対位置関係に直接影響を及ぼしずれが生じることから、その加工精度にからむ事項である。特に主軸においては、近年高速化に伴ない熱変形することが多い。又、送り系もボールスクリューの熱影響で、主軸との間で相対的位置ずれが生じている。更に、工具取り付けに伴う変形、工具の摩耗等種々の要因が重なって、加工中に主軸とテーブルとの相対位置関係はずれてくる。
【0004】
このため、従来から関係部位の測定は行われていて、又その測定結果に応じて工具等の位置の補正を行っている。これら位置測定において代表的な方法は、接触式のタッチセンサによるものである。これは例えばタッチプローブ装置を主軸に取り付け、主軸と加工物との相対動作でプローブを加工物に接触させ位置を計測し、NC制御により最終的に位置合わせを行う。これの適用例は多く、例えば熱変位補正の例として、温度測定値から熱変位補正を行う他に主軸のタッチセンサで、座標変化量を零補正する自動芯出しとを組み合わせ、定時的に補完し合う補正の技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
又、工作機械の送りねじと加工ワーク双方の熱変位を、包括的に補正する技術、即ち、ボールネジの熱変位を、殆ど熱膨張しないインバー材の絶対基準との比較し、この比較による補正を行うためにタッチセンサを使用することによって、加工ワークの熱変位を基準温度に基づく管理により行う技術が知られている(例えば特許文献2参照)。これらに関連する3次元測定用のタッチプローブの構成、及び検出信号の取り出し技術も知られている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
又、最近は非接触形の測定装置の使用も知られるようになった。この例としてレーザ光線に測定手段をアプローチさせ、レーザ光線を遮断するときの位置を測定し、位置検出を行う技術が知られている。例えば、工作機械のテーブル上の90度の割り出し可能な旋回台に、レーザ光線による測定装置を搭載し、工具をこのレーザ光線にアプローチさせて、軸線位置を90度変えた軸線の位置も検出する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
この方法は、予め測定しておいた基準値との差を演算し位置を算出する測定技術である。又、工作機械の回転中の工具の工具先端位置、工具径、工具長等を迅速に測定可能とする技術で、テーブル上の加工の障害にならない位置に、一本のレーザ光線を発生する光学式の測定手段を配置して行う測定技術も知られている(例えば特許文献5参照)。更に、熱変位補正に限定した技術においては、温度センサを用いてその温度から変化分を求め、補正係数を求め補正を行う技術も知られている(例えば特許文献6参照)。これは工作機械の機体上に測定装置を設け物理的に数値を求める技術ではないが、温度の測定で位置を推定していく技術の例である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−304846号公報
【特許文献2】特開2006−212765号公報
【特許文献3】特開平6−185911号公報
【特許文献4】特開平10−138097号公報
【特許文献5】特開平11−138392号公報
【特許文献6】特開平5−116053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明したように、特にレーザ光線を利用して位置を測定する技術は、前述のとおりレーザ光線に直角方向にアプローチさせて行う技術は既に知られている。しかしながら、現状は軸方向に移動する1つの軸に対応する測定技術であって、同一レーザ光線に他の軸の移動で遮断させ測定する方法は、前述のように例えば90度テーブルを反転させてレーザ光線の向きを変えるか、或いは他軸用に他のレーザ光線を準備する等で対処していた。
【0010】
このように個々の測定作業は非能率的で、加工能率を低下させる要因にもなっていた。又タッチセンサを使用する場合は、付着物の影響も無視できず、測定を可能とする測定環境の確保も求められていた。特に、主軸の熱変位とボールスクリューによる送り系の熱変位は、無視できない要素ともなっている。本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するために創案されたもので、次の目的を達成する。
【0011】
本発明の目的は、簡素な構成で1つのレーザ光線を有する位置測定装置で、3軸方向の位置座標を変位の形で同時に検出し、効率よく迅速に演算処理し補正値とする工作機械の位置測定技術とその装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1の工作機械の位置測定方法は、
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられる発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する工程と、
前記主軸(4)に取り付けられた測定工具(8)を、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断する工程と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときにスキップ信号を送出する工程と、
前記スキップ信号により前記3軸の各軸の座標値を測定する工程と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を更新する工程とからなる。
【0013】
本発明2の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記発光器と前記受光器が少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする。
本発明3の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、前記発光器及び前記受光器がテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明4の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)を遮断する部分が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする。
本発明5の工作機械の位置測定方法は、本発明1ないし4の工作機械の位置測定方法において、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする。
【0015】
本発明6の工作機械の位置測定方法は、
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられ発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する測定手段と、
前記主軸(4)に取り付け、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断することができる測定工具(8)と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときのスキップ信号を送出する送出手段(17)と、
前記送出手段からのスキップ信号を受けて前記3軸の各軸の座標値を検出する位置検出手段(18)と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を求める演算手段(19、20,21)とからなる。
【0016】
本発明7の工作機械の位置測定装置は、本発明6において、前記発光器と前記受光器は少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする。
【0017】
本発明8の工作機械の位置測定装置は、本発明6の工作機械の位置測定装置において、前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする。
本発明9の工作機械の位置測定装置は、本発明6の工作機械の位置測定装置において、前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)の遮断部が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする。
【0018】
本発明10の工作機械の位置測定装置は、本発明6ないし9の工作機械の位置測定装置において、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の工作機械の位置測定方法とその装置は、測定装置を簡素で1つのレーザ光線を、円錐形状等の測定工具に照射遮断して位置を検出できる構成とした。このため、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向の位置座標を、個別に又は同時に検出でき、その座標値から演算処理して容易に迅速に位置補正値が得られるようになった。この結果、この補正値が駆動系にフィードバックされ高精度の工作機械を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に関わる実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の位置測定装置を備えたNC工作機械の構成を示すブロック図である。図1において、NC工作機械1の機体である本体には、ベース2上に立設するコラム3上をZ軸方向に案内し、かつ回転主軸4を有する主軸ヘッド5が配置されている。更に、本体には、この主軸ヘッド5に対向して配置され、ワークを固定するテーブル6と、このテーブル6をX軸方向に案内するサドル7とからなり、このサドル7はY軸方向にベース2上で案内されている。従って、テーブル6は、X軸方向及びY軸方向に移動可能である。
【0021】
主軸ヘッド5、テーブル6、及びサドル7は、各々3軸方向にNC装置16の指令にもとづき、サーボモータの駆動によりNC制御されて移動する。NC装置16は、各種プログラムを有し、記憶手段、演算手段等により工作機械を数値制御するものである。サーボモータには回転位置検出手段18が設けられ、軸変位の検出を行う。この3軸を有するNC工作機械本体の構造は、ここに示すものはその一例であって、本発明はこの実施の形態の構成に限定されることはない。例えば、コラム形のマシニングセンタへの適用も可能である。この場合は、テーブル6が固定され、主軸ヘッド5側がX軸、Y軸、及びZ軸方向に駆動されることになる。
【0022】
主軸ヘッド5には、回転主軸4が回転自在に内蔵されており、この回転主軸4の下端部には、テーブル6上に固定されているワークを機械加工するための加工用工具(図示せず)が装着されている。加工用工具を装着するための回転主軸4には、本発明に関わる測定工具8も装着される。この測定工具8は、図示していないが、主軸ヘッド5の側部に配置された自動工具交換装置(ATC)により工具交換され、加工用工具との置き換えが可能である。加工用工具がこの回転主軸4に装着されたときは、加工用工具がテーブル6上に固定されるワークとの間で相対移動しワークの加工を行う。なお、この測定工具8は、回転主軸4ではなくベッド等の工作機械の機体のように移動しない固定台に固定しても良い。
【0023】
テーブル6上には、図2に示すようにワークの加工領域9外に、ワーク加工領域9を挟んで、この両側にレーザ光線11による測定装置10が配置されている。この測定装置10は図2に示すように、レーザ光線11の光線軸が略矩形のテーブル6上の水平方向対角線位置に照射されるように配置されている。本実施の形態においては、光線軸がX軸方向に対し45度の対角線方向になるように配置されている。レーザ光線11は、一方のテーブル6の端部に配置された発光器12と、これと対向する他方のテーブル6の端部に配置された受光器13によって照射されていて、光線軸はX軸とY軸方向から45度に傾いて投射されている。
【0024】
従って、この測定装置10は、テーブル6と共にX軸、Y軸方向に移動可能である。このテーブル6の移動可能な軸は、図示されている通りX軸とY軸方向である。又、図は測定工具8が、一方向からのアプローチによるX軸、Y軸のレーザ光線11による遮断時の位置を示している。テーブル6は移動体であるので、このため、図示していないが、テーブル6がX軸、Y軸方向への移動に伴ない相対移動が可能なように、ベース2等の固定部との間に、発光器12及び受光器13のための配線用のケーブルが設けられている。
【0025】
又、この測定装置10には、レーザ光線11を遮断したときにスキップ信号を送出する電子回路14が組み込まれている(図1参照)。一方、回転主軸4には、前述のように測定位置を測定するための測定工具8が装着されている。この測定工具8は測定の必要があるときにのみ、自動工具交換装置の工具マガジンから呼び出され回転主軸4に装着される。この測定工具8の先端部は円錐形状部15をなしていて、測定時にレーザ光線11をこの測定工具8で遮断する際は、この円錐形状部15で行う。
【0026】
この測定工具8がレーザ光線11を遮断したとき、スキップ信号送出手段17を介してスキップ信号が送出される。このスキップ信号はNC装置16に送出されるが、後述するように位置検出手段18の座標値により、座標値演算手段19と変位量演算手段20により演算処理され、演算結果が表示手段22に表示され、補正位置設定座標手段21により、補正値として送り系にフィードバックされる。これらの検出結果及び演算結果は表示手段22に表示される。
【0027】
NC装置16は、これら測定結果の処理を含め、測定された座標値を基に演算処理し変位量を求め、この値を補正値として軸駆動制御手段23に送り、補正指令に応じて前記各軸を位置制御する。位置を測定するための装置は以上のように構成されているが、次にその位置の測定方法について説明する。前述のようにレーザ光線11による測定装置10は、テーブル6上に固定されている。このテーブル6面にはワークが取り付けられ、ワーク加工範囲9内において加工がなされる。
【0028】
このテーブル6面にはワークと測定装置10が同居しているが、レーザ光線11による測定はワーク取り付け前、即ちワーク加工前と、加工中(加工の中断中)又はワーク加工後に行われる。ワーク加工時には当然のことながら、レーザ光線11による測定装置10は機能していない。この場合、加工時に切り屑、クーラント等の発生があるので、測定装置10にはカバー等の保護がなされる。ワーク加工後の測定は、基本的にワークを外した後に行うが、板状部品のようにワークの高さがレーザ光線の照射位置より低い場合は、ワークを取り付けたままでも測定工具8はワークに干渉しないので測定は可能である。
【0029】
本発明、又は本実施の形態でいう加工前と加工後とは、例えば、あるワーク1個を加工する前と加工後に測定する場合、1個の加工時間が長いワークのときに加工前後、及び加工中に測定する場合、複数個のワークを加工する場合に加工前、加工後に測定する場合、更には工作機械の起動時から実際の加工直前の測定等がいろいろのパターンがある。従って、本発明、又は本実施の形態でいう加工前、加工後の測定とは、時間間隔を置いて測定する意味であり、実際に加工するしないという意味ではない。
【0030】
測定状態になった場合には、回転主軸4に工具交換により測定工具8を呼び出して装着する。測定装置10は発光器12と受光器13が動作し、レーザ光線11が照射している状態とする。この状態で先ず加工前の基準値となる座標値を測定する。測定は、測定工具10を所定位置に保持してテーブル6を移動させ、レーザ光線11にアプローチし、光線を測定工具8の円錐形状部15が遮断することにより行われる。このときスキップ信号が送出される。この測定方法について理解を容易にするため、X軸に適用した例で説明する。回転主軸4の測定工具10を、レーザ光線11による横切り遮断可能なZ軸位置に主軸ヘッド5を移動させる。
【0031】
次に、サドル7のY軸座標値を所定位置にして、テーブル6を図2に示す矢印方向に移動させる。このテーブル6の移動で測定工具8がレーザ光線11を遮断した時のスキップ信号位置を、測定工具8の中心位置の加工前の基準座標値X1としてNC装置16に記憶させる。次に、加工後、同様にY軸、Z軸を加工前と同じ条件にしてテーブル6を移動させ、レーザ光線11を遮断した時のスキップ信号位置を、測定工具8の中心位置の加工後の検出した測定座標値X2として、検出、演算処理装置に送出し、加工前の基準座標値との比較演算処理を行ない変位値ΔX1=X2−X1を求める。図2において、レーザ光線11の実線は、加工前の検出位置を示し、二点鎖線は加工後の検出位置を示している。
【0032】
これが加工前と加工後のX軸のずれとなる。このずれはX軸の補正値としてサーボモータに送出され、NC制御によりX軸の位置補正がなされる。このような測定をY軸においても同様に行い、図3に示すようにY軸移動を矢印のように進め、その変位値、ΔY1=Y2−Y1を求める。次に、Z軸方向の変位値を求める方法を説明する。このZ軸方向のずれはX軸、又はY軸の測定値で求めることができる。
【0033】
X軸の場合で説明すると、図4に示すように、まず加工前の測定工具8がレーザ光線11を遮断した座標位置の円錐円径を演算する。これは図4に示すように、テーブル6のA方向からのアプローチによるレーザ光線11が遮断された位置のX座標値X1と、テーブル6のA1方向からのレーザ光線11が遮断された位置のX座標値X3の差から、測定工具8の円錐円径を次式により求める。レーザ光線11の光線軸が45度になっていることを考慮すると、レーザ光線11が遮断された座標位置の円錐円径は、D1=(X3−X1)/√2となる。
【0034】
同様に、図5に示すように、加工後のA方向の座標値X2と、A1方向の座標値X4から、円錐円径は、D2=(X4−X2)/√2となる。この結果から図6に示すように、測定工具8の円錐形状部15の傾斜角度が45度であるので、加工後のZ軸方向の変位値は、ΔZ1=(D2−D1)/2となる。図6において、符号A、符号B、符号C、及び符号Dの位置が、それぞれレーザ光線11の遮断位置である。即ち、符号A、及び符号Bは加工前の遮断位置を示し、符号Aは、レーザ光線11を図4及び5の図示上でいうと、図に向かって左から右方向へ移動(A1)させ、測定工具8により遮断された位置である。
【0035】
符号Bは、同様に図に向かって右から左に移動(A)し、測定工具8により遮断された位置を仮想図として示したものである。符号C、及び符号Dは、加工後の遮断位置を示しており、前述と同じ図5に示すように仮想図として示したものである。このZ方向の変位は、Y軸方向の座標値によっても同様に求めることができる。これまでの説明は、X軸、Y軸ともにこの軸方向に平行に移動させた場合での座標値を測定し、X軸、Y軸、Z軸を含めた3軸のずれかを求める方法であった。これは本発明の理解を容易にするため、比較的簡素な実施の形態として説明したものである。
【0036】
次に、X軸とY軸を同時に制御し、レーザ光線11の光線軸に対し直角方向に遮断するように移動させた場合の測定方法の説明をする。図7に示すように、X軸とY軸の送り量を同じにした同時制御で、レーザ光線11の光線軸に対して、直角方向にアプローチするようにテーブル6を相対動作させ、測定工具8で遮断させる。このアプローチは、テーブル6が測定工具8に対して移動する方向として、B方向とB1方向とで行う。レーザ光線11の実線は加工前の検出位置を示し、二点鎖線は加工後の検出位置を示している。
【0037】
先ず加工前において、遮断位置での測定工具8の中心の座標値を求めると、A1方向においての座標値は(X5、Y5)、B1方向においての座標値は(X6、Y6)となる。次に、同様に加工後におけるB方向においての座標値は(X7、Y7)、B1方向においての座標値は(X8、Y8)となる。この結果から、測定工具の円錐角度がαであると、図7、図8、図9に示す構成から次の式が導かれる。
【0038】
加工前と加工後のX軸の変位量は、B方向からはΔX2=(X7−X5)、B1方向からはΔX3=(X8−X6)である。又、Y軸の変位量は、B方向からはΔY2=(Y7−Y5)、B1方向からはΔY3=(Y8−Y6)となる。次に、この座標値からZ軸の変位量を求めると次のようになる。図9は、加工前と加工後について、レーザ光線11の位置を基点に相対的に移動する測定工具8の中心位置を求めるための仮想図である。先ず加工前の円錐円径は、
【数1】
であり、加工後の円錐円径は、
【数2】
となる。従って、Z軸方向の変位量は、
【数3】
となる。
【0039】
このようにして、測定工具の円錐角度αが特定されていれば、テーブル動作のみでX軸、Y軸、及びZ軸の変位量が演算処理により同時に求めることができ、補正値として駆動系に即座にそのデータを送出できる。これらの測定動作は自動的に行うことができる。以上の説明は、加工前と加工後の座標値の差を同条件で求めるとした。基本的には位置のずれを求めることを主としている。従って、本実施の形態においてはレーザ光線の太さは考慮していない。
【0040】
以上、測定工具の測定位置を特定の位置に限定して、その補正値を算出することで説明したが、測定位置を変え複数位置で行うと、X軸平面、Y軸平面の変位傾向を確認することもできるので、次にその説明をする。例えば、図10は他の実施の形態を示す図であるが、レーザ光線11の光線軸の位置を、平面上でクロスする方向に配置し、a位置、b位置、c位置、及びd位置で、前述した同様の方法で測定すると、それぞれの位置での変位量を求めることができる。
【0041】
レーザ光線11の及ばない位置については、例えばe位置の場合は、a位置、b位置の座標値からその差を演算し、比例的に座標値を算定しe位置の変位量とする。他の位置も同様にして任意の位置の変位量を求めることができる。これらの変位量に変化がなければ、測定工具8に対しテーブル6面は平坦で水平を保持していることになるが、変位量が異なるようであれば、テーブル6面は平坦でなく傾斜していることになる。この場合は軸移動全体を補正の形で修正はできないので、加工形状に沿いテーブル面の変化に応じて、加工プログラムの中で寸法修正しながら補正を行うことができる。
【0042】
図11は、レーザ光線装置の更に他の実施の形態を示す図である。レーザ光線の発光器と受光器を有するレーザ光線装置30を、複数個セットでテーブル6上周縁に光線軸31を移動方向に沿った向きになるように配置したものである。本実施の形態においては、テーブル6上のX軸方向に対向してワーク加工領域9を挟んで両縁部に2セットのレーザ光線装置30を、又、同様にY軸方向にも2セットのレーザ光線装置30を配置している。
【0043】
前述の例は、レーザ光線軸の光束が測定可能な一定条件を満たす前提で説明したが、本例の場合は、レーザ光線軸の長さが短いのでレーザ光線軸の光束においては安定した条件を確保できる。本例の場合は、測定箇所を特定できるので、光線軸31の短いレーザ光線装置30を設置することができる。このため、レーザ光線装置30は小型で安価な装置とすることが可能である。
【0044】
対向して2セットのレーザ光線装置30を設置したことは、テーブル6の傾斜状態を確認できる。位置座標値そのものの求め方は、前述の実施の形態例と同様である。しかし、複数のレーザ光線装置30を配置しているので、複数セット間の条件を同じにしなければならない。従って、その基準値を求めるための高さ方向等の初期設定を合わせることが必要となる。
【0045】
図11のレーザ光線装置の配置は、X軸又はY軸方向に個別にテーブル6が移動したとき、測定工具8はレーザ光線31を直角方向に横切り遮断することで位置検出ができる。図12の配置は、レーザ光線装置30をテーブル6上にワークの加工領域9を挟んで対向方向の縁部に2セット配置した例である。この例は、テーブルをX軸とY軸とで同時制御移動したときに測定工具8が、レーザ光線31を直角方向に横切り遮断することで位置検出ができる。図11、図12の場合も測定工具8は、前述した形状のものを使用するので、位置検出、演算、補正処理は、加工前と加工後に前述した通り行えばよい。
【0046】
以上説明したように、レーザ光線を利用する測定により、加工前と加工後の座標値の差をX軸、Y軸、Z軸の3軸を同時に容易に求めることができる。このことから、加工の流れの途中で位置補正を行うことができる。特に熱変位補正においては、実際のデータを直接補正に反映できることとなり、加工物を高精度に維持させることが可能である。
【0047】
以上、実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態で説明した内容に限定されないことはいうまでもない。例えば、前述したNC工作機械1の主軸は、1軸方向のみの移動と説明したが、固定、又は1軸以上移動するものであれば良い。また、テーブルも2軸方向に移動可能なものとしたが、固定、又は1軸以上移動するものであれば良い。要するに、NC工作機械の主軸とテーブルとの間で、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行うNC工作機械であれば良い。
【0048】
また、レーザ光線の光線軸の配置方向を45度の例で説明したが、これに限定されないことはいうまでもない。前述した測定具8の先端は、円錐形状であったが、三角錐、四角錐等の多角錐であっても良い。何故ならば、この角錐の軸線方向の座標位置が計算できるからである。その意味において、角錐の軸線方向の座標位置が計算できるからである。その意味において、測定具8の先端形状は、レーザー光線を遮断するときの投影される軸線方向の座標位置が計算できるものであればいかなる形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、位置測定装置を備えたNC工作機械の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、テーブル上のレーザ光線をX軸方向において測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図3】図3は、テーブル上のレーザ光線をY軸方向において測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図4】図4は、加工前にテーブル上のレーザ光線をX軸のA方向とA1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図5】図5は、加工後にテーブル上のレーザ光線をX軸のA方向とA1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図6】図6は、Z軸方向の変位量ΔZ1を求めるための構成を加工前と加工後において図解で示す説明図である。
【図7】図7は、テーブル上のレーザ光線をX軸、Y軸の同時制御でレーザ光線に直交するB方向とB1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図8】図8は、X軸、Y軸の同時制御の場合で、加工前と加工後の測定工具のレーザ光線遮断位置の円錐円径を求めるための説明図である。
【図9】図9は、X軸、Y軸の同時制御の場合で、Z方向の変位量ΔZ2を求めるための構成を加工前と加工後において図解で示す説明図である。
【図10】図10は、テーブル上にレーザ光線をクロスする方向に配置した他の実施の形態例を示す説明図である。
【図11】図11は、テーブル上に複数のレーザ光線装置を配置した他の実施の形態の説明図で、光線軸がX軸又はY軸に平行になるような対向位置に配置した例を示す。
【図12】図12は、テーブル上に複数のレーザ光線装置を配置した他の実施の形態の説明図で、X軸とY軸の同時制御で光線軸を横切り遮断する方向に対向して配置した例を示す。
【符号の説明】
【0050】
1…NC工作機械
4…回転主軸
5…主軸ヘッド
6…テーブル
7…サドル
8…測定工具
9…ワークの加工範囲
10…測定装置
11…レーザ光線
12…発光器
13…受光器
15…円錐形状部
16…NC装置
30…レーザ光線装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ、旋盤等の工作機械の位置測定方法とその装置に関する。更に詳しくは、マシニングセンタ等の主軸と、テーブル等に設けられ、レーザ光線を利用して主軸の測定工具とテーブルとの相対位置ずれを測定し位置補正する位置測定方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からNC工作機械、例えばマシニングセンタの主軸の動作位置、或いはテーブル等の送り系の動作位置を検出する技術と、それに関わる測定装置は知られている。これらの位置測定の必要性は、例えば、工作機械が加工に伴って発生する熱変形等の補正のためである。又形状等の確認、磨耗の確認等のための寸法測定等も行われている。これらの測定対象は、主軸の工具位置、工具長さ、工具形状、或いはテーブル等の送り系である。
【0003】
稼動中の工作機械で行われる測定は、主に工作機械が加工動作を行うことから生じる熱変形、摩耗、折損の有無等の測定である。中でも熱変形は工具と加工物との相対位置関係に直接影響を及ぼしずれが生じることから、その加工精度にからむ事項である。特に主軸においては、近年高速化に伴ない熱変形することが多い。又、送り系もボールスクリューの熱影響で、主軸との間で相対的位置ずれが生じている。更に、工具取り付けに伴う変形、工具の摩耗等種々の要因が重なって、加工中に主軸とテーブルとの相対位置関係はずれてくる。
【0004】
このため、従来から関係部位の測定は行われていて、又その測定結果に応じて工具等の位置の補正を行っている。これら位置測定において代表的な方法は、接触式のタッチセンサによるものである。これは例えばタッチプローブ装置を主軸に取り付け、主軸と加工物との相対動作でプローブを加工物に接触させ位置を計測し、NC制御により最終的に位置合わせを行う。これの適用例は多く、例えば熱変位補正の例として、温度測定値から熱変位補正を行う他に主軸のタッチセンサで、座標変化量を零補正する自動芯出しとを組み合わせ、定時的に補完し合う補正の技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
又、工作機械の送りねじと加工ワーク双方の熱変位を、包括的に補正する技術、即ち、ボールネジの熱変位を、殆ど熱膨張しないインバー材の絶対基準との比較し、この比較による補正を行うためにタッチセンサを使用することによって、加工ワークの熱変位を基準温度に基づく管理により行う技術が知られている(例えば特許文献2参照)。これらに関連する3次元測定用のタッチプローブの構成、及び検出信号の取り出し技術も知られている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
又、最近は非接触形の測定装置の使用も知られるようになった。この例としてレーザ光線に測定手段をアプローチさせ、レーザ光線を遮断するときの位置を測定し、位置検出を行う技術が知られている。例えば、工作機械のテーブル上の90度の割り出し可能な旋回台に、レーザ光線による測定装置を搭載し、工具をこのレーザ光線にアプローチさせて、軸線位置を90度変えた軸線の位置も検出する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
この方法は、予め測定しておいた基準値との差を演算し位置を算出する測定技術である。又、工作機械の回転中の工具の工具先端位置、工具径、工具長等を迅速に測定可能とする技術で、テーブル上の加工の障害にならない位置に、一本のレーザ光線を発生する光学式の測定手段を配置して行う測定技術も知られている(例えば特許文献5参照)。更に、熱変位補正に限定した技術においては、温度センサを用いてその温度から変化分を求め、補正係数を求め補正を行う技術も知られている(例えば特許文献6参照)。これは工作機械の機体上に測定装置を設け物理的に数値を求める技術ではないが、温度の測定で位置を推定していく技術の例である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−304846号公報
【特許文献2】特開2006−212765号公報
【特許文献3】特開平6−185911号公報
【特許文献4】特開平10−138097号公報
【特許文献5】特開平11−138392号公報
【特許文献6】特開平5−116053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明したように、特にレーザ光線を利用して位置を測定する技術は、前述のとおりレーザ光線に直角方向にアプローチさせて行う技術は既に知られている。しかしながら、現状は軸方向に移動する1つの軸に対応する測定技術であって、同一レーザ光線に他の軸の移動で遮断させ測定する方法は、前述のように例えば90度テーブルを反転させてレーザ光線の向きを変えるか、或いは他軸用に他のレーザ光線を準備する等で対処していた。
【0010】
このように個々の測定作業は非能率的で、加工能率を低下させる要因にもなっていた。又タッチセンサを使用する場合は、付着物の影響も無視できず、測定を可能とする測定環境の確保も求められていた。特に、主軸の熱変位とボールスクリューによる送り系の熱変位は、無視できない要素ともなっている。本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するために創案されたもので、次の目的を達成する。
【0011】
本発明の目的は、簡素な構成で1つのレーザ光線を有する位置測定装置で、3軸方向の位置座標を変位の形で同時に検出し、効率よく迅速に演算処理し補正値とする工作機械の位置測定技術とその装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1の工作機械の位置測定方法は、
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられる発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する工程と、
前記主軸(4)に取り付けられた測定工具(8)を、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断する工程と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときにスキップ信号を送出する工程と、
前記スキップ信号により前記3軸の各軸の座標値を測定する工程と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を更新する工程とからなる。
【0013】
本発明2の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記発光器と前記受光器が少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする。
本発明3の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、前記発光器及び前記受光器がテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明4の工作機械の位置測定方法は、本発明1の工作機械の位置測定方法において、前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)を遮断する部分が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする。
本発明5の工作機械の位置測定方法は、本発明1ないし4の工作機械の位置測定方法において、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする。
【0015】
本発明6の工作機械の位置測定方法は、
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられ発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する測定手段と、
前記主軸(4)に取り付け、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断することができる測定工具(8)と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときのスキップ信号を送出する送出手段(17)と、
前記送出手段からのスキップ信号を受けて前記3軸の各軸の座標値を検出する位置検出手段(18)と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を求める演算手段(19、20,21)とからなる。
【0016】
本発明7の工作機械の位置測定装置は、本発明6において、前記発光器と前記受光器は少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする。
【0017】
本発明8の工作機械の位置測定装置は、本発明6の工作機械の位置測定装置において、前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする。
本発明9の工作機械の位置測定装置は、本発明6の工作機械の位置測定装置において、前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)の遮断部が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする。
【0018】
本発明10の工作機械の位置測定装置は、本発明6ないし9の工作機械の位置測定装置において、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の工作機械の位置測定方法とその装置は、測定装置を簡素で1つのレーザ光線を、円錐形状等の測定工具に照射遮断して位置を検出できる構成とした。このため、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向の位置座標を、個別に又は同時に検出でき、その座標値から演算処理して容易に迅速に位置補正値が得られるようになった。この結果、この補正値が駆動系にフィードバックされ高精度の工作機械を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に関わる実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の位置測定装置を備えたNC工作機械の構成を示すブロック図である。図1において、NC工作機械1の機体である本体には、ベース2上に立設するコラム3上をZ軸方向に案内し、かつ回転主軸4を有する主軸ヘッド5が配置されている。更に、本体には、この主軸ヘッド5に対向して配置され、ワークを固定するテーブル6と、このテーブル6をX軸方向に案内するサドル7とからなり、このサドル7はY軸方向にベース2上で案内されている。従って、テーブル6は、X軸方向及びY軸方向に移動可能である。
【0021】
主軸ヘッド5、テーブル6、及びサドル7は、各々3軸方向にNC装置16の指令にもとづき、サーボモータの駆動によりNC制御されて移動する。NC装置16は、各種プログラムを有し、記憶手段、演算手段等により工作機械を数値制御するものである。サーボモータには回転位置検出手段18が設けられ、軸変位の検出を行う。この3軸を有するNC工作機械本体の構造は、ここに示すものはその一例であって、本発明はこの実施の形態の構成に限定されることはない。例えば、コラム形のマシニングセンタへの適用も可能である。この場合は、テーブル6が固定され、主軸ヘッド5側がX軸、Y軸、及びZ軸方向に駆動されることになる。
【0022】
主軸ヘッド5には、回転主軸4が回転自在に内蔵されており、この回転主軸4の下端部には、テーブル6上に固定されているワークを機械加工するための加工用工具(図示せず)が装着されている。加工用工具を装着するための回転主軸4には、本発明に関わる測定工具8も装着される。この測定工具8は、図示していないが、主軸ヘッド5の側部に配置された自動工具交換装置(ATC)により工具交換され、加工用工具との置き換えが可能である。加工用工具がこの回転主軸4に装着されたときは、加工用工具がテーブル6上に固定されるワークとの間で相対移動しワークの加工を行う。なお、この測定工具8は、回転主軸4ではなくベッド等の工作機械の機体のように移動しない固定台に固定しても良い。
【0023】
テーブル6上には、図2に示すようにワークの加工領域9外に、ワーク加工領域9を挟んで、この両側にレーザ光線11による測定装置10が配置されている。この測定装置10は図2に示すように、レーザ光線11の光線軸が略矩形のテーブル6上の水平方向対角線位置に照射されるように配置されている。本実施の形態においては、光線軸がX軸方向に対し45度の対角線方向になるように配置されている。レーザ光線11は、一方のテーブル6の端部に配置された発光器12と、これと対向する他方のテーブル6の端部に配置された受光器13によって照射されていて、光線軸はX軸とY軸方向から45度に傾いて投射されている。
【0024】
従って、この測定装置10は、テーブル6と共にX軸、Y軸方向に移動可能である。このテーブル6の移動可能な軸は、図示されている通りX軸とY軸方向である。又、図は測定工具8が、一方向からのアプローチによるX軸、Y軸のレーザ光線11による遮断時の位置を示している。テーブル6は移動体であるので、このため、図示していないが、テーブル6がX軸、Y軸方向への移動に伴ない相対移動が可能なように、ベース2等の固定部との間に、発光器12及び受光器13のための配線用のケーブルが設けられている。
【0025】
又、この測定装置10には、レーザ光線11を遮断したときにスキップ信号を送出する電子回路14が組み込まれている(図1参照)。一方、回転主軸4には、前述のように測定位置を測定するための測定工具8が装着されている。この測定工具8は測定の必要があるときにのみ、自動工具交換装置の工具マガジンから呼び出され回転主軸4に装着される。この測定工具8の先端部は円錐形状部15をなしていて、測定時にレーザ光線11をこの測定工具8で遮断する際は、この円錐形状部15で行う。
【0026】
この測定工具8がレーザ光線11を遮断したとき、スキップ信号送出手段17を介してスキップ信号が送出される。このスキップ信号はNC装置16に送出されるが、後述するように位置検出手段18の座標値により、座標値演算手段19と変位量演算手段20により演算処理され、演算結果が表示手段22に表示され、補正位置設定座標手段21により、補正値として送り系にフィードバックされる。これらの検出結果及び演算結果は表示手段22に表示される。
【0027】
NC装置16は、これら測定結果の処理を含め、測定された座標値を基に演算処理し変位量を求め、この値を補正値として軸駆動制御手段23に送り、補正指令に応じて前記各軸を位置制御する。位置を測定するための装置は以上のように構成されているが、次にその位置の測定方法について説明する。前述のようにレーザ光線11による測定装置10は、テーブル6上に固定されている。このテーブル6面にはワークが取り付けられ、ワーク加工範囲9内において加工がなされる。
【0028】
このテーブル6面にはワークと測定装置10が同居しているが、レーザ光線11による測定はワーク取り付け前、即ちワーク加工前と、加工中(加工の中断中)又はワーク加工後に行われる。ワーク加工時には当然のことながら、レーザ光線11による測定装置10は機能していない。この場合、加工時に切り屑、クーラント等の発生があるので、測定装置10にはカバー等の保護がなされる。ワーク加工後の測定は、基本的にワークを外した後に行うが、板状部品のようにワークの高さがレーザ光線の照射位置より低い場合は、ワークを取り付けたままでも測定工具8はワークに干渉しないので測定は可能である。
【0029】
本発明、又は本実施の形態でいう加工前と加工後とは、例えば、あるワーク1個を加工する前と加工後に測定する場合、1個の加工時間が長いワークのときに加工前後、及び加工中に測定する場合、複数個のワークを加工する場合に加工前、加工後に測定する場合、更には工作機械の起動時から実際の加工直前の測定等がいろいろのパターンがある。従って、本発明、又は本実施の形態でいう加工前、加工後の測定とは、時間間隔を置いて測定する意味であり、実際に加工するしないという意味ではない。
【0030】
測定状態になった場合には、回転主軸4に工具交換により測定工具8を呼び出して装着する。測定装置10は発光器12と受光器13が動作し、レーザ光線11が照射している状態とする。この状態で先ず加工前の基準値となる座標値を測定する。測定は、測定工具10を所定位置に保持してテーブル6を移動させ、レーザ光線11にアプローチし、光線を測定工具8の円錐形状部15が遮断することにより行われる。このときスキップ信号が送出される。この測定方法について理解を容易にするため、X軸に適用した例で説明する。回転主軸4の測定工具10を、レーザ光線11による横切り遮断可能なZ軸位置に主軸ヘッド5を移動させる。
【0031】
次に、サドル7のY軸座標値を所定位置にして、テーブル6を図2に示す矢印方向に移動させる。このテーブル6の移動で測定工具8がレーザ光線11を遮断した時のスキップ信号位置を、測定工具8の中心位置の加工前の基準座標値X1としてNC装置16に記憶させる。次に、加工後、同様にY軸、Z軸を加工前と同じ条件にしてテーブル6を移動させ、レーザ光線11を遮断した時のスキップ信号位置を、測定工具8の中心位置の加工後の検出した測定座標値X2として、検出、演算処理装置に送出し、加工前の基準座標値との比較演算処理を行ない変位値ΔX1=X2−X1を求める。図2において、レーザ光線11の実線は、加工前の検出位置を示し、二点鎖線は加工後の検出位置を示している。
【0032】
これが加工前と加工後のX軸のずれとなる。このずれはX軸の補正値としてサーボモータに送出され、NC制御によりX軸の位置補正がなされる。このような測定をY軸においても同様に行い、図3に示すようにY軸移動を矢印のように進め、その変位値、ΔY1=Y2−Y1を求める。次に、Z軸方向の変位値を求める方法を説明する。このZ軸方向のずれはX軸、又はY軸の測定値で求めることができる。
【0033】
X軸の場合で説明すると、図4に示すように、まず加工前の測定工具8がレーザ光線11を遮断した座標位置の円錐円径を演算する。これは図4に示すように、テーブル6のA方向からのアプローチによるレーザ光線11が遮断された位置のX座標値X1と、テーブル6のA1方向からのレーザ光線11が遮断された位置のX座標値X3の差から、測定工具8の円錐円径を次式により求める。レーザ光線11の光線軸が45度になっていることを考慮すると、レーザ光線11が遮断された座標位置の円錐円径は、D1=(X3−X1)/√2となる。
【0034】
同様に、図5に示すように、加工後のA方向の座標値X2と、A1方向の座標値X4から、円錐円径は、D2=(X4−X2)/√2となる。この結果から図6に示すように、測定工具8の円錐形状部15の傾斜角度が45度であるので、加工後のZ軸方向の変位値は、ΔZ1=(D2−D1)/2となる。図6において、符号A、符号B、符号C、及び符号Dの位置が、それぞれレーザ光線11の遮断位置である。即ち、符号A、及び符号Bは加工前の遮断位置を示し、符号Aは、レーザ光線11を図4及び5の図示上でいうと、図に向かって左から右方向へ移動(A1)させ、測定工具8により遮断された位置である。
【0035】
符号Bは、同様に図に向かって右から左に移動(A)し、測定工具8により遮断された位置を仮想図として示したものである。符号C、及び符号Dは、加工後の遮断位置を示しており、前述と同じ図5に示すように仮想図として示したものである。このZ方向の変位は、Y軸方向の座標値によっても同様に求めることができる。これまでの説明は、X軸、Y軸ともにこの軸方向に平行に移動させた場合での座標値を測定し、X軸、Y軸、Z軸を含めた3軸のずれかを求める方法であった。これは本発明の理解を容易にするため、比較的簡素な実施の形態として説明したものである。
【0036】
次に、X軸とY軸を同時に制御し、レーザ光線11の光線軸に対し直角方向に遮断するように移動させた場合の測定方法の説明をする。図7に示すように、X軸とY軸の送り量を同じにした同時制御で、レーザ光線11の光線軸に対して、直角方向にアプローチするようにテーブル6を相対動作させ、測定工具8で遮断させる。このアプローチは、テーブル6が測定工具8に対して移動する方向として、B方向とB1方向とで行う。レーザ光線11の実線は加工前の検出位置を示し、二点鎖線は加工後の検出位置を示している。
【0037】
先ず加工前において、遮断位置での測定工具8の中心の座標値を求めると、A1方向においての座標値は(X5、Y5)、B1方向においての座標値は(X6、Y6)となる。次に、同様に加工後におけるB方向においての座標値は(X7、Y7)、B1方向においての座標値は(X8、Y8)となる。この結果から、測定工具の円錐角度がαであると、図7、図8、図9に示す構成から次の式が導かれる。
【0038】
加工前と加工後のX軸の変位量は、B方向からはΔX2=(X7−X5)、B1方向からはΔX3=(X8−X6)である。又、Y軸の変位量は、B方向からはΔY2=(Y7−Y5)、B1方向からはΔY3=(Y8−Y6)となる。次に、この座標値からZ軸の変位量を求めると次のようになる。図9は、加工前と加工後について、レーザ光線11の位置を基点に相対的に移動する測定工具8の中心位置を求めるための仮想図である。先ず加工前の円錐円径は、
【数1】
であり、加工後の円錐円径は、
【数2】
となる。従って、Z軸方向の変位量は、
【数3】
となる。
【0039】
このようにして、測定工具の円錐角度αが特定されていれば、テーブル動作のみでX軸、Y軸、及びZ軸の変位量が演算処理により同時に求めることができ、補正値として駆動系に即座にそのデータを送出できる。これらの測定動作は自動的に行うことができる。以上の説明は、加工前と加工後の座標値の差を同条件で求めるとした。基本的には位置のずれを求めることを主としている。従って、本実施の形態においてはレーザ光線の太さは考慮していない。
【0040】
以上、測定工具の測定位置を特定の位置に限定して、その補正値を算出することで説明したが、測定位置を変え複数位置で行うと、X軸平面、Y軸平面の変位傾向を確認することもできるので、次にその説明をする。例えば、図10は他の実施の形態を示す図であるが、レーザ光線11の光線軸の位置を、平面上でクロスする方向に配置し、a位置、b位置、c位置、及びd位置で、前述した同様の方法で測定すると、それぞれの位置での変位量を求めることができる。
【0041】
レーザ光線11の及ばない位置については、例えばe位置の場合は、a位置、b位置の座標値からその差を演算し、比例的に座標値を算定しe位置の変位量とする。他の位置も同様にして任意の位置の変位量を求めることができる。これらの変位量に変化がなければ、測定工具8に対しテーブル6面は平坦で水平を保持していることになるが、変位量が異なるようであれば、テーブル6面は平坦でなく傾斜していることになる。この場合は軸移動全体を補正の形で修正はできないので、加工形状に沿いテーブル面の変化に応じて、加工プログラムの中で寸法修正しながら補正を行うことができる。
【0042】
図11は、レーザ光線装置の更に他の実施の形態を示す図である。レーザ光線の発光器と受光器を有するレーザ光線装置30を、複数個セットでテーブル6上周縁に光線軸31を移動方向に沿った向きになるように配置したものである。本実施の形態においては、テーブル6上のX軸方向に対向してワーク加工領域9を挟んで両縁部に2セットのレーザ光線装置30を、又、同様にY軸方向にも2セットのレーザ光線装置30を配置している。
【0043】
前述の例は、レーザ光線軸の光束が測定可能な一定条件を満たす前提で説明したが、本例の場合は、レーザ光線軸の長さが短いのでレーザ光線軸の光束においては安定した条件を確保できる。本例の場合は、測定箇所を特定できるので、光線軸31の短いレーザ光線装置30を設置することができる。このため、レーザ光線装置30は小型で安価な装置とすることが可能である。
【0044】
対向して2セットのレーザ光線装置30を設置したことは、テーブル6の傾斜状態を確認できる。位置座標値そのものの求め方は、前述の実施の形態例と同様である。しかし、複数のレーザ光線装置30を配置しているので、複数セット間の条件を同じにしなければならない。従って、その基準値を求めるための高さ方向等の初期設定を合わせることが必要となる。
【0045】
図11のレーザ光線装置の配置は、X軸又はY軸方向に個別にテーブル6が移動したとき、測定工具8はレーザ光線31を直角方向に横切り遮断することで位置検出ができる。図12の配置は、レーザ光線装置30をテーブル6上にワークの加工領域9を挟んで対向方向の縁部に2セット配置した例である。この例は、テーブルをX軸とY軸とで同時制御移動したときに測定工具8が、レーザ光線31を直角方向に横切り遮断することで位置検出ができる。図11、図12の場合も測定工具8は、前述した形状のものを使用するので、位置検出、演算、補正処理は、加工前と加工後に前述した通り行えばよい。
【0046】
以上説明したように、レーザ光線を利用する測定により、加工前と加工後の座標値の差をX軸、Y軸、Z軸の3軸を同時に容易に求めることができる。このことから、加工の流れの途中で位置補正を行うことができる。特に熱変位補正においては、実際のデータを直接補正に反映できることとなり、加工物を高精度に維持させることが可能である。
【0047】
以上、実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態で説明した内容に限定されないことはいうまでもない。例えば、前述したNC工作機械1の主軸は、1軸方向のみの移動と説明したが、固定、又は1軸以上移動するものであれば良い。また、テーブルも2軸方向に移動可能なものとしたが、固定、又は1軸以上移動するものであれば良い。要するに、NC工作機械の主軸とテーブルとの間で、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行うNC工作機械であれば良い。
【0048】
また、レーザ光線の光線軸の配置方向を45度の例で説明したが、これに限定されないことはいうまでもない。前述した測定具8の先端は、円錐形状であったが、三角錐、四角錐等の多角錐であっても良い。何故ならば、この角錐の軸線方向の座標位置が計算できるからである。その意味において、角錐の軸線方向の座標位置が計算できるからである。その意味において、測定具8の先端形状は、レーザー光線を遮断するときの投影される軸線方向の座標位置が計算できるものであればいかなる形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、位置測定装置を備えたNC工作機械の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、テーブル上のレーザ光線をX軸方向において測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図3】図3は、テーブル上のレーザ光線をY軸方向において測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図4】図4は、加工前にテーブル上のレーザ光線をX軸のA方向とA1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図5】図5は、加工後にテーブル上のレーザ光線をX軸のA方向とA1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図6】図6は、Z軸方向の変位量ΔZ1を求めるための構成を加工前と加工後において図解で示す説明図である。
【図7】図7は、テーブル上のレーザ光線をX軸、Y軸の同時制御でレーザ光線に直交するB方向とB1方向から測定工具に相対移動させ遮断させた状態を示す説明図である。
【図8】図8は、X軸、Y軸の同時制御の場合で、加工前と加工後の測定工具のレーザ光線遮断位置の円錐円径を求めるための説明図である。
【図9】図9は、X軸、Y軸の同時制御の場合で、Z方向の変位量ΔZ2を求めるための構成を加工前と加工後において図解で示す説明図である。
【図10】図10は、テーブル上にレーザ光線をクロスする方向に配置した他の実施の形態例を示す説明図である。
【図11】図11は、テーブル上に複数のレーザ光線装置を配置した他の実施の形態の説明図で、光線軸がX軸又はY軸に平行になるような対向位置に配置した例を示す。
【図12】図12は、テーブル上に複数のレーザ光線装置を配置した他の実施の形態の説明図で、X軸とY軸の同時制御で光線軸を横切り遮断する方向に対向して配置した例を示す。
【符号の説明】
【0050】
1…NC工作機械
4…回転主軸
5…主軸ヘッド
6…テーブル
7…サドル
8…測定工具
9…ワークの加工範囲
10…測定装置
11…レーザ光線
12…発光器
13…受光器
15…円錐形状部
16…NC装置
30…レーザ光線装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられる発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する工程と、
前記主軸(4)に取り付けられた測定工具(8)を、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断する工程と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときにスキップ信号を送出する工程と、
前記スキップ信号により前記3軸の各軸の座標値を測定する工程と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を更新する工程と
からなる工作機械の位置補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記発光器と前記受光器が少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項4】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)を遮断する部分が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の工作機械の位置補正方法において、
前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項6】
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられ発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する測定手段と、
前記主軸(4)に取り付け、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断することができる測定工具(8)と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときのスキップ信号を送出する送出手段(17)と、
前記送出手段からのスキップ信号を受けて前記3軸の各軸の座標値を検出する位置検出手段(18)と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を求める演算手段(19、20,21)と
からなる工作機械の位置測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記発光器と前記受光器は少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)の遮断部が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の工作機械の位置測定装置において、
前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項1】
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられる発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する工程と、
前記主軸(4)に取り付けられた測定工具(8)を、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断する工程と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときにスキップ信号を送出する工程と、
前記スキップ信号により前記3軸の各軸の座標値を測定する工程と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を更新する工程と
からなる工作機械の位置補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記発光器と前記受光器が少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項4】
請求項1に記載の工作機械の位置補正方法において、
前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)を遮断する部分が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の工作機械の位置補正方法において、
前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする工作機械の位置補正方法。
【請求項6】
主軸(4)とテーブル(6)との間でX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に相対移動を行い、前記テーブル(6)上に搭載されたワークを加工する工作機械において、
前記テーブル(6)上に設けられ発光器(12)と受光器(13)との間にレーザ光線(11)を照射する測定手段と、
前記主軸(4)に取り付け、前記テーブル(6)との相対移動で前記レーザ光線(11)に対し略直角な方向から前記レーザ光線(11)に向かって移動させ、前記レーザ光線(11)を遮断することができる測定工具(8)と、
前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を遮断したときのスキップ信号を送出する送出手段(17)と、
前記送出手段からのスキップ信号を受けて前記3軸の各軸の座標値を検出する位置検出手段(18)と、
前記測定された前記3軸の各座標値と過去に同様に測定された前記3軸の各座標値との差異を演算処理して、前記主軸(4)と前記テーブル(6)との間の変位を求め、求められた前記変位を基に前記主軸(4)及び/又は前記テーブル(6)の位置の補正値を求める演算手段(19、20,21)と
からなる工作機械の位置測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記発光器と前記受光器は少なくとも2対あり、前記レーザ光線はそれぞれが前記テーブル(6)上面に平行でかつ、テーブルを平面視した場合にテーブルの略中央で交差するように照射されていることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記発光器と前記受光器は一体的に設けられ、それらがテーブル上面に複数設けられていることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の工作機械の位置測定装置において、
前記測定工具(8)は、前記レーザ光線(11)の遮断部が円錐形状(15)を構成していることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の工作機械の位置測定装置において、
前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、前記レーザ光線(11)を遮断する工程は、1つのレーザ光線につき前記X軸方向又は前記Y軸方向又はX軸とY軸を合成した方向に相対移動動作を行い、前記測定工具(8)が前記レーザ光線(11)を片側から遮断し、その遮断した位置を測定し、さらに前記測定工具(8)が、前記レーザ光線(11)に対し、その遮断した方向とは反対の方向から前記レーザ光線を遮断し、その遮断した位置を測定する工程であることを特徴とする工作機械の位置測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−233785(P2009−233785A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82493(P2008−82493)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】
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