説明

平坦なワークピースを両面加工する装置、ならびに複数の半導体ウェハを両面で同時に材料切削加工する方法

【課題】ロータディスクおよびワークピース(例えば半導体ウェハ)の摩耗と損傷の危険性を最小にすることのできる装置を提供することである。
【解決手段】一つの案内部(48)が、前記ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つのショルダ(50)によって形成され、該ショルダの直径はピン構成体の第1の比較的大きな直径と第2の比較的小さな直径との間にあり、
別の案内部(48)が、前記ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つの溝(15)の側面(56,58)によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上側作業ディスクと下側作業ディスクを備える、平坦なワークピースを両面加工する装置に関する。ここで両方の作業ディスクの少なくとも一方は駆動部によって回転駆動可能であり、作業ディスクはその間に作業スリットを形成し、この作業スリットの中には少なくとも一つの被加工ワークピースのための少なくとも一つの切欠部を備える少なくとも一つのロータディスクが配置されており、この少なくとも一つのロータディスクは周囲に歯部を有し、ギヤホイールまたはピンリングの少なくとも一つが回転されるときに、前記歯部によって前記ロータディスクは内側および外側のギヤホイールまたはピンリングにおいて回転され、前記ギヤホイールまたはピンリングはそれぞれ複数のギヤ構成体またはピン構成体を有し、それらの構成体とロータディスクの歯が回転時に係合する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置により平坦なワークピース、例えば半導体ウェハを材料切削加工し、例えばホーニング仕上げ、ラッピング仕上げ、バフ研磨または表面加工することができる。そのためにワークピースは、作業スリット内を回転して案内されるロータディスクの切欠部内にフローティング保持され、同時に両面加工される。ここでワークピースはサイクロイド運動を作業スリット内で描く。このような装置により平坦なワークピースを高精度で両面加工することができる。
【0003】
ロータディスクの外側歯部とギヤホイールの歯部ないしピンリングのピンとの間の接触により、歯部またはピンが摩耗する。したがってピンリングのためのDE 295 20 741 U1から、ピンリングのピンにスリーブを回転可能に支承し、ロータディスクがこのスリーブと係合することが公知である。この種の構成では、ロータディスク歯部とピンとの間にもはや摩擦負荷が発生しない。そのような接触はむしろスリーブとピンとの間に発生する。しかしスリーブは比較的に大きな長さにわたってピンに当接するから、平面負荷および生じる摩耗は相応に低下する。さらにスリーブは摩耗すれば簡単に交換することができる。これに対してピンの交換は比較的面倒である。このようなスリーブの別の構成がDE 101 59 848 B1およびDE 102 18 483 B4から公知である。EP 0 787 562 B1からは、プラスチック材料からなるスリーブが公知である。
【0004】
公知の装置には、ロータディスクの負荷により、歯部ないしピンとスリーブとが接触するためロータディスクの歯部が上方および下方に折り曲げられてしまうという問題がある。このことはワークピースならびに作業ディスクおよびそのコーティングの損傷を引き起こす。そのため耐久性が低いので、通常は望まれるプラスチックロータディスクにおいて不利である。さらに公知の装置では、ロータディスクの摩耗が早期に出現する。ロータディスク面の部分が歯部またはピンリングの領域で作業スリットから常に突出するので、この部分は作業スリットにより案内されないため不所望の垂直運動をすることがある。この運動は、ロータディスクのこの部分が作業スリットに再び入り込むときに、ロータディスク面と作業ディスクのエッジないしその作業コーティングとを不所望に接触させてしまう。そのためロータディスク面の損耗が酷くなってしまう。
【0005】
本発明は、複数の半導体ウェハを両面で同時に材料切削加工する方法を提供することでもある。
【0006】
本発明によれば、各半導体ウェハが、リング状の外側駆動ディスクおよびリング状の内側駆動ディスクによって回転される複数のロータディスクのうちの一つの溝内で自由運動し、これによりサイクロイド軌道で運動される。一方、駆動ディスクおよび/または半導体ウェハは、2つの回転するリング状作業ディスクの間で切削加工され、半導体ウェハの面の一部は加工中に、作業ディスクにより画定される作業スリットから一時的に離れる。
【0007】
エレクトロニクス、マイクロエレクトロニクス、マイクロエレクトロメカニクスのためには、出発材料(基板)として、大域的および局所的な平坦度、片側についての局所的平坦度(ナノトポロジ)、粗さおよび清浄度についての要求が極めて高い半導体ウェハが必要である。半導体ウェハは、半導体材料からなるウェハであり、この半導体材料は、例えば、ガリウムヒ素などの化合物半導体、ならびに時としてゲルマニウムのこともあるがケイ素が大部分を占める元素半導体である。
【0008】
従来技術によれば、半導体ウェハは順次連続する多数のプロセスステップで作製される。一般的に以下の製造シーケンスが使用される:
・単結晶半導体ロッドの生成(結晶成長)、
・ロッドを個別のウェハに切断(内部孔鋸または回転鋸)、
・機械的ウェハ加工(ラッピング、研磨)、
・化学的ウェハ加工(アルカリエッチングまたは酸エッチング)、
・化学機械的ウェハ加工:両面仕上げ(DSP)=切削研磨、柔らかな研磨布による片側の無研磨仕上げないし鏡面仕上げ、
・オプションとしてさらなる被覆ステップ(例えばエピタクシー、アニール)。
【0009】
半導体ウェハの機械的加工は最初に半導体ウェハの全体的平坦化のために行われ、さらに半導体ウェハの厚さが較正され」、先行の切断プロセスで生じた結晶損失表面層および処理跡(鋸跡、切り口跡)が切削される。
【0010】
機械的ウェハ加工のための従来技術で公知の方法は、研磨材料が結合されたカップ状研磨ディスクによる片面研磨(シングルサイドグランディング、SSG)、2つのカップ状研磨ディスクの間での半導体ウェハの両面同時研磨(ダブルサイドグランディング、DDG)、および2つのリング状作業ディスクの間で複数の半導体ウェハの両面を、研磨剤を含まないスラリーを添加してラッピングすることである。
【0011】
DE 103 44 602 A1とDE 10 2006 032 455 A1は、複数の半導体ウェハの両面をラッピングに似た運動により同時に研磨する方法を開示する。しかし、作業層(被覆、パッド)と強固に結合した研磨材を使用することを特徴とし、これが作業ディスクに適用される。この種の方法は、「ラッピング運動による精密研磨」または「遊星パッドグライディング」(PPG)と称される。
【0012】
両側の作業ディスクに接着される、PPGで使用される作業層は例えばUS 6,007,407 AおよびUS 6,599,177 B2に記載されている。加工中に半導体ウェハは薄い案内カゴ、いわゆるロータディスクに載置される。このロータディスクは半導体ウェハを収容するために相応の開口部を有する。ロータディスクは外側歯部を有し、この外側歯部は内側ギヤホイールと外側ギヤホイールを有するロール装置に係合し、このロール装置によって、上側作業ディスクと下側作業ディスクとの間に形成される作業スリット内を運動される。
【0013】
PPG法の実行可能性は、ロータディスクの特性と、回転運動中のロータディスクの案内によってほぼ決められる。
【0014】
半導体ウェハは加工中に、その表面の一部を作業スリットから一時的に突出しなければならない。ワークピースの面の一部が作業スリットから一時的に突出することを、「ワークピースオーバフロー」と称する。このことは、工具のすべての領域が均等に使用され、均等な形状に摩耗し、半導体ウェハが「球状」(半導体ウェハの縁部に向かっての厚さ低下)でない所望の平坦な形状を得ることを保証する。このことはラッピング研磨剤のないラッピングに対しても同様に当てはまる。
【0015】
しかし従来技術で公知のPPG研磨のための方法、ないしDE 103 44 602 A1とDE 10 2006 032 455 A1に記載された方法はこれに関して不利である。従来技術から公知の方法によっては、半導体ウェハを最外の縁部領域まで十分に平坦に作製することができない。このことはとくに要求の高い適用および将来の技術世代に対して当てはまる。
【0016】
ロータディスクは強い曲げのため、ロール装置からの噛み合いを外すまでその中央位置から垂直方向に変位する傾向を示すことが判明している。このことはとりわけ、ロータディスクに強いまたは大きな交番プロセス力が作用する場合に予期される。これは例えば切削率が高い場合、不利なプロセス運動が選択された場合、またはとくに微細な研磨剤が研磨パッドに使用される場合である。
【0017】
ロータディスクの変位は、これが小さな全体厚(加工すべき半導体ウェハの最終厚よりも最大でやや大きい)を有しており、そのため曲げに対して制限された強度しか有していない場合に助長される。さらにロータディスクは通常は、保護層の設けられたスチールコアから作製される。スチールコアがPPGで有利に使用される研磨材、すなわちダイヤモンドと直接接触すると、炭素が鉄に良く溶けるためダイヤモンド粒のマイクロエッジが摩耗し、そのため使用される作業層の切断性が急速に失われてしまう。
【0018】
作業層の高い摩耗を伴う頻繁な再研磨は、そのために生じる不安定なプロセス経過と共にこの種の被加工半導体ウェハの特性にも悪影響を与えることになり、そのためPPG法の使用を不経済にするだけでなく、将来的な技術世代に対しては使用不可能となろう。
【0019】
ロータディスクのスチールコアに取り付けられた保護層は公知のように摩耗する。したがって保護層はできるだけ大きな有効厚を有するべきであり、これにより消費手段、すなわち「ロータディスク」の経済的寿命を実現する。さらに保護層は、作業層とロータディスクとの間のすべり摩擦を小さくするためにも必要である。
【0020】
適切な層は例えばポリウレタンからなる。この層は通例、柔らかく、ロータディスクの剛性には寄与しない。したがって残りのスチールコアは、PPGによって加工された後の半導体ウェハの最終厚より格段に薄い。
【0021】
PPGによって加工された後の直径が300mmである半導体ウェハの最終厚が例えば825μmであり、その際に使用されるロータディスクの全体厚が800μmであれば、この800μmのロータディスクの全体厚のうち、スチールコアの剛性寄与に割り振られるのは500〜600μmであり、両側の摩耗保護層に割り振られるのはそれぞれ100〜150μmである。
【0022】
比較のため、ラッピングによる加工後の半導体ウェハの最終厚が825μmであれば、ラッピングの際に使用されるロータディスクは完全に、剛性に寄与するスチールからなり、800μmの厚さを有する。
【0023】
同じ材料、同じ形状と同じ構造であれば、プレートの歪みは公知のようにその厚さの3乗で変化するから、PPGの場合の500μmの厚さのスチールコアを備えるロータディスクは、ラッピングの場合の800μmの厚さのロータディスクより約4倍の強度である。
【0024】
スチールコアが600μmの厚さのロータディスクについて、PPG中の歪みは、ラッピングの場合での800μmの厚さのロータディスクの2.4倍である。
【0025】
作業スリットでは、ロータディスクの位置の最大変位が、ロータディスク厚と半導体ウェハの目下の厚さとの差に制限される。これは典型的には最大100μmである。
【0026】
ロータディスクがリング状の作業スリットから内側および外側に突き出し、内側ピンリングと外側ピンリングを有するロール装置に係合する個所では、PPG方法の従来技術ではロータディスクの生じ得る歪みを制限する措置は執られない。所要のワークピースオーバフローのため、この案内されない領域はかなりの大きさである。
【0027】
ロータディスクの歪みは、半導体ウェハおよびロータディスクに対して次のような欠点をもたらし、したがって全体プロセスを不安定でクリティカルなものにする。
【0028】
a)半導体ウェハがオーバフロー時に、歪んだロータディスクの収容開口部から常に部分的に突き出し、作業スリットへの再進入時に再び復帰が強制される。このことは半導体ウェハをも変形させ、半導体ウェハを研磨布の外側ないし内側エッジに押圧する。このことは局所的な引っ掻き傷を形成し、研磨作用が高まるため縁部領域に幾何的深さ誤差を生じさせる。
【0029】
b)半導体ウェハが歪んだロータディスクから常に引き出され、再び装填されることにより、ロータディスクの収容開口部を毛羽立たせる。この収容開口部は通例、柔らかいプラスチックから作製されたインサートによりライニングされている。収容開口部のこのライニングがロータディスクから引き裂かれることさえある。いずれの場合も、使用されるロータディスクの使用寿命が甚だしく損なわれる。
【0030】
c)ロータディスクの収容開口部のライニングが粗化されると、収容開口部内での半導体ウェハの所望の自由回転が制動または停止される。このことはグローバル平坦性(例えばTTV=全体厚偏差)とローカル平坦性(ナノトポロジー)に関して、半導体ウェハの平坦性誤差を引き起こし得る。
【0031】
d)オーバフロー時に湾曲されるロータディスクは、作業スリットへの再進入の際に大きな力を研磨体、とりわけリング状作業スリットの外側エッジと内側エッジに及ぼす。それによって作業スリットが損傷することがある。研磨体(タイル)全体が外れ落ちたり、または少なくともその一部が剥離したりすることがある。この破片が半導体ウェハと作業スリットとの間に入り込むと、大きな点負荷のため、半導体ウェハが破壊される。
【0032】
e)歪んだロータディスクにおいて、作業スリットのエッジを通過するポイントでその保護層が大きく点負荷されると、過度に大きな局所摩耗が生じる。これはロータディスクの寿命を大きく制限し、この方法を不経済にする。保護層の摩耗が進むと、作業スリットが鈍くなる。このことは頻繁な再研磨を必要とし、時間と材料コストがかかる。したがってこの方法の経済性に対して不利である。頻繁な処理中断は、加工される半導体ウェハの特性に不利に作用する。
【0033】
JP 11254303 A2には、ロータディスクの案内装置が開示されている。この装置は2つの上側スペーサと下側スペーサからなり、これらのスペーサは円錐形またはくさび形に集中し、ラッピング機械の外側歯車の内側縁部に配置されている。このような装置によって、薄いロータディスクの変形が阻止される。そこに記載されたラッピングマシンの変形実施例は、通常はガラス基板加工に使用されるものであるが、重大な欠点を有し、ワークピースオーバフローによるラッピングおよびPPG研磨方法を実施するのには適さない。
【0034】
スラリーに切断研磨剤を含まないラッピングでも、研磨布に研磨剤がしっかり結合したPPG研磨でも、作業層(鋳造ラッピング板ないしは研磨布)は常時、摩耗を受ける。ラッピング板ないしは研磨布の高さが次第に低下すると、ロータディスクがラッピング板ないしは研磨布の間に形成される作業スリット内を運動する面の位置が連続的にずれる。
【0035】
JP 11254303 A2に開示された強制的案内装置は作業層の摩耗を増大させ、ロータディスクの運動面を変位させるので、ロータディスクの外側歯部領域を他の面にますます押しやる。このことは、外側歯車とねじ留めされたくさび形の案内ブロックが、ロータディスクを変形させ、作業ディスクをますます摩耗させることを意味する。このことは欠点である。
【0036】
そこでのさらなる欠点は、ロータディスクを交換するためには案内ブロックのねじを外さなければならないことである。このようなことがしばしば必要である。これも付加的なコストとなる。
【0037】
PPG研磨法では被覆されたロータディスクが通常、使用される。被覆は、剛性に寄与するロータディスクのコアと研磨布の研磨材(例えばダイヤモンド)とが直接接触するのを回避するために必要である。JP 11254303 A2に記載されたスペーサは、構造的にロータディスクに遠くから係合し、いずれの場合でもロータディスクの被覆部の縁部領域を通過する。JP 11254303 A2に記載された装置を使用すると、ロータディスクの案内の際に発生する垂直方向の束縛力のため、ロータディスクの被覆部は案内される領域でとくに大きな摩耗を受ける。JP 11254303 A2で提案された解決手段をPPG法に適用する際のさらなる欠点は、案内リングが遠くからロータディスクに係合し、そのためロータディスク被覆部(例えばポリウレタン)が損傷を受け得ることである。
【0038】
したがって従来技術では、ワークピースオーバフロー領域でのロータディスク湾曲の問題を満足のいくように解決する手段は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】DE 295 20 741 U1
【特許文献2】DE 101 59 848 B1
【特許文献3】DE 102 18 483 B4
【特許文献4】EP 0 787 562 B1
【特許文献5】DE 103 44 602 A1
【特許文献6】DE 10 2006 032 455 A1
【特許文献7】US 6,007,407 A
【特許文献8】US 6,599,177 B2
【特許文献9】JP 11254303 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明の基礎とする課題は、ロータディスクおよびワークピース(例えば半導体ウェハ)の摩耗と損傷の危険性を最小にすることのできる装置を提供することである。さらに本発明は、複数の半導体ウェハを同時に両面材料切削加工するための方法を提供するものであり、この方法はワークピースオーバフロー領域で運動面からロータディスクが変位するのを阻止する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明はこの課題を、上側作業ディスク(4b)と下側作業ディスク(4a)を備える、平坦なワークピース(1)を両面加工する装置であって、ここで両方の作業ディスク(4a,4b)の少なくとも一方は駆動部によって回転駆動可能であり、作業ディスク(4a,4b)はその間に作業スリット(64)を形成し、この作業スリットの中には、少なくとも一つの被加工ワークピース(1)のための少なくとも一つの切欠部(25)を備える少なくとも一つのロータディスク(5)が配置されており、この少なくとも一つのロータディスク(5)は周囲に歯部(10)を有し、ギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)の少なくとも一つが回転されるときに、前記歯部によって前記ロータディスクは内側および外側のギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)において回転され、前記ギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)はそれぞれ複数のギヤ構成体またはピン構成体を有し、それらの構成体と前記ロータディスク(5)の歯が回転時に係合し、前記ピン構成体の少なくとも一つは少なくとも一つの案内部(48)を有し、この案内部により少なくとも一つのロータディスク(5)の縁部の運動が少なくとも軸方向に制限される装置において、一つの案内部(48)が、ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つのショルダ(50)によって形成され、該ショルダはピン構成体の第1の比較的大きな直径と第2の比較的小さな直径との間にあり、別の案内部(48)が、ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つの溝(15)の側面(56,58)によって形成されている、ことによって解決する。
【0042】
ショルダはとりわけ、ピン構成体ないしスリーブの長手軸に対して垂直に延在することができる。ここでショルダは斜めの面によって形成することもできる。溝も同様に、ピン構成体ないしスリーブの長手軸に対して垂直に延在することができる。溝は矩形の横断面を有することができる。ここでロータディスクの縁部は溝の側面によって案内され、軸方向に両側でその運動が制限される。ショルダと溝を組み合わせることにより、装置使用時のフレキシビリティが向上する。なぜなら、厚さの大きく異なるロータディスクを案内することができるからである。この場合、ある種のロータディスクが溝の中で案内され、場合により、別のかなり厚いロータディスクはショルダにより案内される。
【0043】
本発明のギヤまたはピン構成体はその外周について、長手方向(ないしは軸方向)に異なる直径を有することができる。
【0044】
ピン構成体は、実質的に円筒形状を有することができる。
【0045】
ピン構成体は外面に周囲を周回する案内部を有する。この案内部はロータディスクの軸方向運動を制限する。これによりロータディスクは実質的にロータディスク面に保持される。ギヤ構成体は相応の案内部を有することができる。この案内部によって、ロータディスクの縁部の運動を一方または両方の軸方向で、すなわち垂直方向で上方および/または下方に制限することができる。
【0046】
さらにこの制限は少なくとも一つの軸方向での運動を完全に阻止するか、または僅かな運動だけを許容することができる。
【0047】
したがって本発明によれば、案内部によってロータディスクの不所望の垂直運動、とりわけ作業スリットの外での垂直運動が十分に回避される。ロータディスクと被加工ワークピースの損傷の危険性が最小となる。
【0048】
この装置によって同時に両側が加工されるワークピースは、例えば半導体ウェハとすることができる。
【0049】
本発明の装置により材料切削加工を行うことができ、例えば研磨、ラッピング、バフ研磨またはホーニングを行うことができる。
【0050】
そのために作業ディスクは適切な作業層を有することができる。
【0051】
本発明によれば、とりわけ多数のロータディスクを設けることができる。これらのロータディスクはさらに複数の切欠部を複数のワークピースのために有することができる。
【0052】
ロータディスク内に保持されるワークピースは作業スリット内をサイクロイド軌道に沿って運動する。
【0053】
各ピン構成体は、本発明の案内部を有することができる。しかし、ピン構成体のいくつかにだけ案内部を設けることも考えられる。
【0054】
ギヤ構成体またはピン構成体はワンピースに、または複数のピースとして構成することができる。
【0055】
基本的に、ピン構成体がそれぞれ一つのピンからだけなり、このピンの外面に案内部が形成されていることが考えられる。
【0056】
しかしピン構成体が複数の部材からなることも考えられる。
【0057】
ここで概念、ギヤ構成体またはピン構成体は、ピンまたはギヤ自体だけでなく、例えば別個の、しかしこれと結合された構成部材も含む。
【0058】
同様に、少なくとも一つのギヤ構成体またはピン構成体が案内部を有するという特徴は、案内部を隣接するピンまたはギヤの間に設け、この案内部がピンまたはギヤと結合されていること、または結合されていないことも含む。
【0059】
この構成によれば、少なくとも一つの溝がピン構成体の比較的直径の大きな領域に形成されるようにしても良い。
【0060】
さらにピン構成体の比較的小さな直径は、ショルダから始めって直径を拡大することなくピン構成体の自由端部に終端することができる。
【0061】
さらに、ピンリングの少なくとも一つのピン構成体が、それぞれ一つのピンと、このピンに回転可能に支承されたスリーブからなると有利である。この場合、スリーブの少なくとも一つ、とりわけ全スリーブは外周に案内部を有する。
【0062】
スリーブはワンピースに、または複数のピースとして構成することができる。スリーブは直接回転するようにピンの上に配置することができる。またはスリーブは、スライドベアリングとして用いられる内ケースを介してピンの上に配置することができる。
【0063】
案内部はスリーブ自体の中に組み込むことができる。
【0064】
しかし、スリーブの外面に別の装置、例えばリングまたは類似のものを配置し、これが案内部を形成することももちろん考えられる。
【0065】
スリーブを使用することによって、それ自体公知のようにロータディスクとピンリングの摩耗を低減することができる。
【0066】
同時に、スリーブの少なくとも一つに形成された案内部によって、ロータディスクの摩耗と損傷の危険性がさらに低下される。
【0067】
スリーブはとりわけ外側ピンリングおよび内側ピンリングに、または一方のピンリングだけに設けることができる。
【0068】
スリーブはさらに、スチール材料(例えば硬化鋼材料、とりわけステンレス鋼材料)からなる。このような材料はとりわけ耐摩耗性である。
【0069】
しかしスリーブを他の材料、例えばプラスチック材料から作製することも考えられる。プラスチックを選択することによって金属摩滅が回避される。
【0070】
実施形態によれば、案内部の少なくとも一つは、半径方向に延在する少なくとも一つの案内面を有する。この案内面は半径方向平面内、すなわち水平面内に延在する。この場合、ロータディスクは加工時に半径方向の案内面に当接し、ロータディスクの縁部の運動が少なくとも一つの軸方向に制限される。
【0071】
さらに少なくとも一つのピン構成体ないしスリーブは、軸方向に相互に離間し、ピン構成体ないしスリーブの周囲に延在する複数の溝を有することができる。この溝の側面は、少なくとも一つのロータディスクの縁部の運動をそれぞれ軸方向に制限する。
【0072】
さらに溝は、ピン構成体ないしスリーブの長手軸に対して垂直に延在することができる。
【0073】
さらに溝は、異なる幅を有することができる。この場合、有効幅はそれぞれ案内すべきロータディスクの厚さに適合される。このようにしてピン構成体の高さを適切に適合することによって、厚さの異なるロータディスクを同じピン構成体ないしスリーブにより案内することができる。このことは装置のフレキシビリティを向上させる。
【0074】
もちろん本発明による半径方向案内面、ショルダおよび/または溝は相互に任意に組み合わせることができる。
【0075】
例えばピン構成体ないしスリーブは、それぞれ少なくとも一つのショルダおよび/または少なくとも一つの案内面および/または一つまたは複数の溝を有することができる。このことによって装置の使用領域が拡大される。とりわけ、厚さが非常に異なるロータディスクでも同じピン構成体により案内することができる。
【0076】
別の実施形態によれば少なくとも一つの溝は、案内される少なくとも一つのロータディスクの厚さより0.1mmから0.5mm大きい幅を有することができる。これによってロータディスクに対して溝開口内で僅かな遊びしか与えられず、このことは摩耗を低減する。
【0077】
別の実施形態によれば、少なくとも一つの案内面または少なくとも一つのショルダまたは少なくとも一つの溝は、少なくとも一つの周回する斜面を有する。このような斜面により、ロータディスクが案内部、例えば溝に進入することが容易になり、ひいては摩耗が少なくなる。ロータディスクとワークピースの損傷の危険性が、これによって低下する。
【0078】
斜面は、ショルダのエッジ、または溝開口の一方または両方のエッジに、ピン構成体ないしスリーブの周囲を周回するように形成することができる。
【0079】
斜面が、案内面またはショルダまたは溝に対して10°から45°の開口角を有すると有利であることが判明した。
【0080】
斜面を設ける代わりに、この目的のために少なくとも一つの案内面または少なくとも一つのショルダまたは少なくとも一つの溝が、丸められたエッジを有することができる。さらに相応して溝の場合にはもちろん、溝開口の両エッジを丸めることができる。
【0081】
本発明によりロータディスクの損傷の危険性が最小となるので有利には、このロータディスクを別の実施形態では非金属材料、例えばプラスチックから作製することが可能である。従来技術では、このような非金属製のロータディスクは、損傷の危険性があるのでほとんど不可能であった。
【0082】
さらに別の実施形態によれば、ギヤホイールまたはピンリングを、高さ調整できるホルダの上に支承することができる。この場合はリフト装置がホルダに対して設けられる。これにより、ギヤホイールまたはピンリングの高さ、ひいてはそれらのギヤ構成体ないしピン構成体の高さが調整される。ギヤまたはピンないしはスリーブが、例えば軸方向に離間した、厚さの異なる複数の案内部、例えば溝および/またはショルダを有すれば、高さ調整によってギヤホイールまたはピンリングを、厚さの異なるロータディスクに相応に調整することができる。
【0083】
この課題は、複数の半導体ディスクを両面で同時に材料切削加工するための第1の本発明の方法によって解決される。ここでは各半導体ディスク(1)が、リング状の外側駆動ディスク(7a)およびリング状の内側駆動ディスク(7b)によって回転される複数のロータディスク(5)のうちの一つの溝内で自由運動し、これによりサイクロイド軌道を描き、一方、半導体ウェハ(1)は、回転する2つのリング状作業ディスク(4a,4b)との間で材料切削加工され、ロータディスク(5)および/または半導体ウェハ(1)の面(6)の一部は加工中に、前記2つの作業ディスク(4a,4b)により境界を画定された作業スリットを一次的に離れる方法において、ロータディスク(5)は、作業スリットの中央面に対して実質的に共面に延在する運動面内を案内され、ロータディスクおよび/または半導体ウェハの面の一部が作業スリットから、複数のスリーブの溝(15)にオーバフローするときに、前記作業スリット内をロータディスクは各運動面で案内され、前記スリーブ(12)は2つのギヤホイール(7a,7b)の少なくとも一つに取り付けられており、かつピン(11)に支承されている。
【0084】
さらにこの課題は、複数の半導体ディスクを両面で同時に材料切削加工するための第2の本発明の方法によって解決される。ここでは各半導体ディスク(1)が、リング状の外側駆動ディスク(7a)およびリング状の内側駆動ディスク(7b)によって回転される複数のロータディスク(5)のうちの一つの溝内で自由運動し、これによりサイクロイド軌道を描き、一方、半導体ウェハ(1)は、回転する2つのリング状作業ディスク(4a,4b)の間で材料切削加工され、前記作業ディスク(4a,4b)は作業層(3a,3b)を有しており、ロータディスク(5)および/または半導体ウェハ(1)の面(6)の一部は加工中に、前記作業層(3a,3b)により境界を画定された作業スリットを一次的に離れる方法において、ロータディスク(5)は、作業スリットの中央面に対して実質的に共面に延在する運動面内を案内され、該作業スリット内に2つの作業ディスク(4a,4b)はそれぞれ一つのリング状領域(18a,18b)を有し、該リング状領域は作業層(3a,3b)を含んでおらず、かつロータディスク(5)の案内を、ロータディスクおよび/または半導体ウェハ(11)が作業スリットからオーバフローする際に保証する。
【0085】
請求項1および2は有利には、半導体ウェハの両面研磨であり、各作業ディスクは研磨材料を備える作業層を有する(例えばPPG方法)。
【0086】
同様に有利には本発明の第1の方法では、半導体ウェハの両側が、研磨材料を含む懸濁液を供給してラッピングされる。
【0087】
最後に第1と第2の本発明の方法は、シリカゾルを含有する分散液を供給して両面つや出し仕上げすることに関する。この場合、各作業ディスクは研磨布を作業層として有する。両面つや出し仕上げでは、ワークピースオーバフローは発生しない。しかしロータディスクはDSPの場合も作業スリットから突き出る。したがってDSPの場合に対しても、本発明の第1の方法によりロータディスクを案内するのが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】平坦なワークピースを両面加工するための本発明の装置の基本構造を示す斜視図である。
【図2】従来技術によるピンリングのピン用のスリーブの側面図である。
【図3】本発明の第1実施例によるスリーブの側面図である。
【図4】本発明の別の実施例によるスリーブの側面図である。
【図5】本発明の別の実施例によるスリーブの側面図である。
【図6】本発明の別の実施例によるスリーブの側面図である。
【図7】本発明の別の実施例によるスリーブの側面図である。
【図8】図1に示されたスリーブの作動位置における部分側面図である。
【図9】ピンリングでのロータディスクの案内を例として示す図である。
【図10】溝切りされたピンスリーブによる本発明のロータディスク案内の実施例を示す図である。
【図11】作業ディスクのリング状に除去された作業層による本発明のロータディスク案内の実施例を示す図である。
【図12】従来技術でのロータディスクの歪み、ならびに支持リングによるロータディスクの案内を示す図である。
【図13】作業層、ロータディスク、ロール装置および半導体ウェハを備える下方作業ディスクから見た全体図である。
【図14】ロータディスクが本発明により案内されて加工された場合(6B)と、本発明により案内されないで加工された場合(6A,6C,6D)の厚さプロフィールと半導体ウェハ平面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下、本発明を図1から14に基づいて詳細に説明する。
【0090】
図中とくに指示しない限り、同じ参照符合が同じ対象を示す。
【0091】
図1には、平坦なワークピースを両面加工するための本発明の装置の基本構造が示されている。
【0092】
図1の例では、遊星機械運動部を備える両面加工機械42が示されている。この装置42は上側旋回アーム43を有し、この旋回アームは下側ベース44に支承された旋回装置45を介して、垂直軸を中心に旋回することができる。旋回アーム43には上側作業ディスク4bが支持されている。上側作業ディスク4bは、図1に詳細に図示しない駆動モータを介して回転駆動することができる。図1に図示しない上側作業ディスク4bの下側に作業ディスク4bは作業面を有する。この作業面には、実行すべき加工に応じて作業層を設けることができる。ベース44は支持体区間8を有し、この支持体区間は下側作業ディスク4aを支持する。下側作業ディスク4aの上側には同様に作業面がある。下側作業ディスク4aは、図示しない駆動モータを介して同様に、とりわけ上側作業ディスク4bに対して反対方向に回転駆動することができる。下側作業ディスク4aには複数のロータディスク5が配置されており、これらはそれぞれ被加工ワークピース(この場合は加工される半導体ウェハ)用の収容部25を有する。図示の実施例で、ロータディスク5はプラスチックからなる。ロータディスク5は外側歯部10を有し、この外側歯部を以てロータディスクは装置の内側ピンリング7bおよび外側ピンリング7aと噛合する。内側ピンリング7bと外側ピンリング7aはそれぞれ多数のピン構成体を有する。これらのピン構成体は図示の例ではそれぞれ、円筒状のピンおよびこのピンに回転可能に支承されたスリーブから形成されている。このようにしてロール装置が形成される。ここでロータディスク5は、下側作業ディスク4aが回転すると、内側ピンリング7bを介して同様に回転される。そしてロータディスク5の切欠部に配置されたワークピースがサイクロイド軌道に沿って運動する。
【0093】
加工のために被加工ワークピースがロータディスク5の切欠部25に装填される(図示せず)。旋回アーム43の旋回によって、2つの作業ディスク4a,4bが相互に同軸に配向される。そして2つの作業ディスクは間に作業スリットを形成し、この作業スリット内にロータディスク5がこれにより保持されたワークピースと共に配置される。回転する上側作業ディスク4bと下側作業ディスク4aが少なくとも一つある場合、続いて上側作業ディスク4bが高精度の負荷システムによってワークピース上に押し付けられる。次に上側作業ディスク4bと下側作業ディスク4aからそれぞれ押圧力が被加工ワークピースに作用し、ワークピースは両面が同時に加工される。この種の両面加工機械の構造と機能は、当業者にそれ自体公知である。
【0094】
図2には、従来技術によるスリーブ12’が示されている。公知のスリーブ12’は中空円筒の形状を有し、運転時に装置の内側および/または外側ピンリング7a,7bのピンに図1に示すように載置される。このときスリーブは、図2に一点鎖線で示した回転軸に沿って回転可能に、それぞれのピンの上に支承される。
【0095】
図3は、本発明の第1実施例によるスリーブ12の側面図である。
【0096】
図3に示されたスリーブ12も同様に実質的に円筒状の切欠部を有し、この切欠部を以てスリーブはピンリング7a,7bのピンに載せることができる。ここでは一方または両方のピンリング7a,7bのすべてのピンまたはいくつかのピンにこのようなスリーブ12を設けることができる。図3に示したスリーブは、その外面に案内部48を有する。この案内部は図示の例では、スリーブ12の周囲に延在するショルダ50によって、スリーブ12の第1の比較的に大きな直径と第2の比較的に小さな直径との間で形成される。ここで案内部48は、このショルダ50により半径方向に延在する案内面52を有する。運転時にロータディスク5の外側歯部は、スリーブ12の比較的に直径の小さい領域に係合する。半径方向の案内面52はロータディスク5の縁部の運動を、図での軸方向の運動が下方に向かって阻止されるように軸方向に制限する。
【0097】
図4には、本発明の別の実施例によるスリーブ12が示されている。案内部48としてこのスリーブ12は、スリーブ12の周囲に延在し、断面が矩形の溝15を有する。ロータディスク5はここでも、溝底部により形成された直径の比較的小さいスリーブ12の領域に係合する。溝15の側面56,58は、ロータディスク5の縁部の案内部を形成する。そして縁部は軸方向に上方にも下方にもこの溝から外れることができない。溝はロータディスク5に僅かな遊びを許容する。このために溝は幅wを有し、この幅wは溝15の中を案内されるロータディスク5の厚さよりも0.1mmから0.5mm大きい。
【0098】
図5に示された本発明のスリーブ12の実施例では、図4の実施例との相違として、異なる幅w1とw2を備える2つの周回する溝15が設けられている。2つの溝15によって、厚さの異なるロータディスク5を同じスリーブ12により案内することができる。このために図1に示した装置では、内側ピンリング7aと外側ピンリング7bを高さ調整可能なホルダを介して支承することができ、リフト装置がこのホルダのために設けられている。ストローク装置により、ピンリング7a,7bと、ピンに配置されたスリーブ12の高さを調整することができる。このようにしてピンと、このピンに回転可能に支承されたスリーブ12とを、それぞれ案内すべきロータディスク5に対する正しい高さ位置に配向することができる。
【0099】
図6に示された実施例は、図3の周回する半径方向案内面52を備える周回するショルダ50と、図4の周回する溝15とを組み合わせるものである。ここでもストローク装置により適切に高さ調整をすることによって、図6に示されたスリーブ12により比較的薄いロータディスク5を軸方向で両側に周回溝25内に制限することができ、かつかなりの厚さのロータディスクまたは他の工具の運動をショルダ50の半径方向案内面52によって軸方向に片側で制限することができる。このことは本発明の装置のフレキシビリティを向上させる。
【0100】
図7に示されたスリーブ12は図6に示されたスリーブにほぼ相当する。しかし図7のスリーブ12では、溝15が溝開口部の両エッジにそれぞれ周回する斜面60を有する。斜面60はそれぞれ溝に対して、とりわけ溝の側面56,58に対して10゜から45°の開口角を有する。溝15の面取は、ロータディスク5の溝15への収容を容易にし、ロータディスク5の損傷の危険性を低下させる。図7では相応する斜面60が溝エッジにだけ設けられているが、ショルダ50の半径方向案内面52も相応の斜面を有することができる。同様に図3から図6に示された実施例でも、スリーブ12に1つまたは複数の相応の斜面を設けることができる。斜面の代わりに、溝15のエッジおよび/または半径方向の案内面52を丸めることも考えられる。
【0101】
図8には例として、図7に示されたスリーブ12が部分的に、運転位置で概略的に示されている。もちろん個々の構成部材の比率は、分かりやすくするために実際どおりではない。ロータディスク5が切欠部25内にそれぞれワークピース62を保持し、ワークピースが上側作業ディスク4bと下側作業ディスク4aとの間の作業スリット64内で同時に両面加工されることが分かる。ロータディスク5の外側歯部10はスリーブ12と係合している。とりわけ溝底部により形成された、溝15内の比較的直径の小さい区間と係合している。ロータディスク5は溝15内で僅かな遊びを以て、その運動が両方の軸方向で制限されている。作業スリット64を外れる領域でロータディスク5が軸方向に大きく運動することがこのようにして確実に回避される。
【0102】
図示の実施例ではピンリング(7a,7b)を有する機械について説明し、相応してピン構成体がロータディスクに対する案内部を有していたが、本発明によれば同様に、ギヤ構成体を設けた機械、すなわち内側および外側ピンリングの代わりに内側および外側ギヤホイールを設けた機械も可能であることを述べておく。この場合は、ギヤ構成体が相応の案内部を有することができる。
【0103】
図13は、本発明の方法を実施するのに適する両面加工機械の下側作業ディスク4aの平面図である。
【0104】
図示の下側作業ディスク4aには、作業層支持体2aおよび作業層3aからなる下側作業層が取り付けられており、内側ピンリング7bおよび外側ピンリング7aから形成されたロール装置を備えている。このロール装置は、ワークピース1(半導体ウェハ)が装填されたワークピース案内ケージ(ロータディスク5)のためのものである。11と12は、ピンリングのピンとピンスリーブを示す。
【0105】
図13Bは、図13Aの部分28を詳細に示す。激しい接触による半導体ウェハ1の損傷(破壊、剥離)またはロータディスク5の金属材料による汚染を回避するために、ロータディスク5の収容開口部25はプラスチックインサート20により裏打ちされている。ロータディスク5の経路で半導体ウェハ1の一部6が作業層3aを越えて突出する。これはロータディスク5が回転するため、作業層の内側縁部または外側縁部を一時的に越えるからである。このことは「ワークピースオーバフロー」と称される。半導体ウェハ1は遊び27を以てロータディスク5の収容開口部25に装填されるから、半導体ウェハ1は自由に回転することができる。そのため加工が経過すると半導体ウェハ1のリング状領域24がオーバフローする。
【0106】
使い古すと作業層は、加工中に厚さを減少する。この厚さ減少は、半導体ウェハが加工の経過中に通過する円形リング面内で生じる。この円形リング面が円形リング形状の作業層内にある場合、半径方向で作業層を越えて「バスタブ状」の厚さプロフィールが生じる。そのため半導体ウェハの縁部では過度に強く材料切削が行われ(縁部減少)、これは不所望のことである。しかし作業層が通過する円形リング面内に完全に収まっていれば、半導体ウェハはワークピースオーバフローを起こすが縁部減少は生じない。
【0107】
ワークピースオーバフローは例えばDE 102 007 013 058 A1から公知である。
【0108】
ワークピースオーバフローのため、ロータディスクも比較的に大きな長さにわたり案内なしで、上側作業ディスクと下側作業ディスクにより形成された作業スリットから突き出てしまう。
【0109】
以下では従来技術でのロータディスクの歪みならびに作業スリット外での支持リングによるロータディスクの案内を概略的に示す(図12)。
【0110】
図12Aは、作業層支持体2b上に上側作業層3bを備える上側作業ディスク4b、作業層支持体2a上に下側作業層3aを備える下側作業ディスク4a、および半導体ウェハ1用の収容開口部25を備えるロータディスク5の断面を示す。半導体ウェハ1は外側ピンリング7aのピンスリーブ12とピン11で係合している。従来技術ではロータディスクが、オーバフロー領域6およびそこからロータディスクの外側歯部までは案内されない。ロータディスクが加工中に運動すると、ロール装置は大きな力をロータディスクに伝達する。このときにロータディスクは、案内されないオーバフロー領域で部分的にかなり湾曲する。このことは、大きなオーバフローが有利であるラッピングから公知である。
【0111】
PPG法では、この湾曲が次のことによってさらに助長される。すなわち、ロータディスクが剛性に寄与する薄いコア材料30、例えばスチールからだけなり、このコア材料が両側で摩耗保護層29により被覆されており、この摩耗保護層は剛性に寄与しないことによってさらに助長される(図12Cおよび図12D)。
【0112】
したがってPPG法に対しては、ロータディスクを運動面内で案内するための手段を備えないロール装置は不適切である。
【0113】
オーバフローでロータディスク案内を行わない従来技術(図12)では、ロータディスクが部分的に、その外側歯部10がピンリング7aのピン11とピンスリーブ12による案内を外れて、「スキップ」するまで湾曲する。さらに半導体ウェハ1が部分的に大きくロータディスク5から突き出し(17)、半導体ウェハ1は収容開口部によってもはや案内されなくなる。ロータディスク5がさらに回転し、作業ディスク4aと4bないしは作業層3aと3bがロータディスクを再び作業スリットへと強制すると、半導体ウェハ1のエッジが損傷したり、または破壊されたりすることがある。
【0114】
従来技術では適切なロータディスクが通例は、収容開口部を裏打ちするプラスチックインサートを有している。この例を図12Cが示す。したがって図12Dに示すように、作業スリットへの再進入の際に半導体ウェハは収容開口部に強制的に復帰されると、しばしばプラスチックインサート20が折れたり(22)、または半導体ウェハ自体が割れたり(23)することがある。このことは半導体ウェハ、ロータディスクの損傷または破壊につながり、そして両者の破片が作業スリットに入ることにより通例は作業層3aと3bも破壊される。
【0115】
適切な手段として、高さ調整可能(19)な支持リング31の形態の装置が図12Bに示されている。たしかにこの支持リングはロータディスクが過度に湾曲することを一方の方向で制限することができるが(16)、ピンリング案内部が上方に向かって不所望に去ること(41)は阻止されない。そのため図12Bの装置は、ロータディスクをオーバフロー領域内で確実に破損なしで、かつ小さな強制力で案内するという課題を十分に解決することができない。一方、この装置は冷却潤滑剤(水)および研磨スラリーが作業スリットから作業ディスクの縁部を越えて妨げられずに流出するのを阻止する。このことにより、研磨作用の失われたアクアプラーニングが生じることがあり、作業スリットがとりわけ不所望に加熱されてしまう。この種の加熱は作業ディスクの変形を引き起こすことがあり、これはこのように加工される半導体ウェハの達成可能な面平行性を損なう。したがって図12Bの支持リングをPPG法に使用することは、さほど有利ではない。
【0116】
図9はオーバフローでロータディスクを両側で案内する例を示す。
【0117】
図9Aは、下側案内リング13aおよび上側案内リング13bを示す。これらは高さ調整可能な外側ピンリング7aに取り付けられており、内側ピンリング7b(図示せず)も同じ構成である。両方の案内リングは開口部32を形成し、この開口部はロータディスク5の厚さよりもやや広く、有利にはロート状に加工されている。これによりロータディスクは容易に通ることができ、とりわけその外側歯部10が案内開口部32に停滞することはない。本発明の方法を実施するのに適する機械では、ピンリング7aと7bが高さ調整可能である(9)。これによってロータディスク案内部13aと13bは、ロータディスクが作業層の摩耗により位置変化しても、ロータディスクが強制的な湾曲なしで小さな力で案内されるように高さを常に再調整することができる。
【0118】
図9Bは、下側作業層3aと上側作業層3bがそれぞれ摩耗14a,14bした場合に、ロータディスクと半導体ウェハが作業スリット内で運動される平面が大きさ26だけシフトされる場合を示す。この案内装置13aと13bを同様に同じ大きさ26だけ再調整すると、ロータディスクは常に強制力なしでオーバフロー時に案内される。
【0119】
上側ロータディスク案内部13bは、図9Aと図9Bに示すようにピンスリーブ12の周囲を案内される。これにより上側ロータディスク案内部はピン11上での同じスリーブ位置を保証する。または上側ロータディスク案内部13bは図9Eに示すようにスリーブの間を通して案内することができる。この場合ピンスリーブ12は、上側ロータディスク案内部13bの相応の開口部34を通って突出する。
【0120】
さらなる変形実施例では、上側ロータディスク案内部13bをマシンフレーム8(図9C)または上側作業ディスク4b(図9D)に取り付ける。前者の場合、上側案内部13bは後調整することができない。したがって下側案内部13aの案内の際に案内スリット32が、作業層3aと3bの摩耗の経過と共に作業層摩耗の大きさだけ拡大し、ロータディスク案内部はやや緩くなる。しかしこのことは有害ではない。なぜなら本方法を実施するのに適する最大で1mmの典型的な有効高さを有する作業層を使用すれば、ロータディスクはどのような場合でも、半導体ウェハが収容開口部から外れ、プラスチックインサートが損傷し、またはロータディスクがロール装置との係合を外れるまで湾曲することができないからである。後者の場合(図9D)、上側作業層3bの摩滅14bにより、上側ロータディスク案内部13bがロータディスク5をやや下方に押すようになる。しかしこれも無害な程度である。さらなる欠点は、上側ロータディスク案内部13bの下側ロータディスク案内部13aおよびとりわけロータディスク5に対する相対速度が大きいことである。下側ロータディスク案内部13aおよびロータディスク5は、緩慢に回転する外側ピンリング7aないし内側ピンリング7bにより決定される回転速度で実質的に回転する。
【0121】
図10は、本発明の第1の方法を実施する実施例を示す。
【0122】
図10Aは、周回する溝15を有するピンスリーブ12を示す。溝の谷の直径は、ロータディスク5の外側歯部10の直径に等しい。有利には溝15は外に向かって広がっており(33)、したがってロータディスク5はロール過程中に容易に入ることができる。同様に有利にはピンスリーブ12には複数の溝15が設けられており、使用の結果、摩滅すると溝が交換される。本発明によれば有利には、外側ピンリング7aだけに溝切りされたスリーブ12が設けられている。なぜならここではロータディスク5に作用するトルクが比較的に大きいので、ロータディスク5を外側ピンリング7aおよび内側ピンリング7bから形成されるロール装置に容易に装填し、再び取り出すことができるからである。しかし両方のピンリングに溝切りされたスリーブ12を設けることも有利である。
【0123】
図10Bは、下側作業層3aと上側作業層3bが摩滅14a,14bした後の本発明による溝切りされたスリーブ12を示す。摩滅により生じた、ロータディスク5と半導体ウェハ1の運動面のずれ26が、ピンリング7aの高さ調整9により補償されており、これによりロータディスク5は平坦に、強制的な歪みなしで少ない力で案内される。しかしピンリング7aの高さ調整9はさほど有利ではない。多重に溝切りされたスリーブ12を使用する場合、ロータディスク5の交換時にこれを別の溝15に装填するのが有利である。図10F参照。ピンリング7aの高さ調整9は必ずしも必要ではない。
【0124】
図10Cから10Eは本発明の溝切りされたスリーブ12の実施例を、溝15の数(図10C、図10D)と、固定されたピン11だけを備え、自由に回転するスリーブ12のない簡単なロール装置の場合で示す(図10E)。
【0125】
PPG研磨装置の内側ピンリング7aと外側ピンリング7bのピン11ないしピンスリーブ12は、作業スリット内でロータディスク5を回転し、運動させるために必要なすべての力を伝達する。したがって(回転可能な)ピンスリーブ12とロータディスク5の外側歯部の側面との間には大きな押圧力が発生し、ピンリング7a/7bが固定力を備える場合、付加的に摩擦力が発生する(回転しない運動)。したがってピン/ピンスリーブ11/12および歯面は高い材料強度を有していなければならない。したがってロータディスク5に所要の剛性を与える、ロータディスク5のコアの材料は通例、(硬化された)スチール、別の硬化された材料、または硬質プラスチックからなる(繊維強化)化合物からなり、この強度条件をいずれにしろ満たす。ピン11およびピンスリーブ12に対しても、強度が高く、摩耗の少ない類似の材料が有利である。したがってピン11およびピンスリーブ12は有利には、スチールまたは他の(硬化された)材料、とりわけ有利には硬質合金(超硬合金、タングステン鋼等)からなる。金属摩耗によるワークピースの汚染を回避しなければならないクリティカルな適用では、硬質化合プラスチック、とりわけガラス繊維またはカーボン繊維強化PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または他の熱または熱硬化性化合ブラスチックからなるスリーブ12を使用するのが有利である。さらに摩耗強度の高いおよび/または動摩擦の小さい材料、例えば繊維強化ポリアミド(ナイロン)、アラミド(PAI、PEI)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニル(PPS)、ポリスルホン(PSU)からなるものも有利である。
【0126】
ピン11が回転可能なスリーブ12を支持し、スリーブはロータディスク5の回転時に発生する、ギヤホイール7a/7bとロータディスク5の外側歯部との間の相対運動の共回転に従うことのできるように構成されたピンリングの実施例がとくに有利である。スリーブ12がとくに軽く低摩耗でピン11で回転できるようにするため、スリーブ12を複数のピースから構成することができる。この場合、外側は前記の適切な硬質材料からなり、ロータディスク5と係合し、内側は動摩擦係数の小さい材料(例えばポロプロピレンPP、ポリエチレンPE、ポリアミド{ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66}、ポリエチレンエステルPET、ポリテトラフルオロエチレンPTFE(テフロン)、ポリフッ化ビニリデンPVDF等)からなる。内側摩擦層は、内側被覆の形態、プレスまたは接着された内側スリーブまたは内側リングの形態に構成することができる。
【0127】
スリーブ12は有利にはピン11のねじ留めされたキャップにより、または外側ピンリング7a/7b全体と結合したリングによりルーズに垂直に案内される。したがってスリーブがピンから脱落することはなく、このピン上を多少の遊びを以て垂直方向に同形に、一つの平面で案内することができる。
【0128】
ロータディスク5は有利には硬化材料(例えば硬化スチール)からなり、ピンリング7a/7bのスリーブ12との外側歯部の係合面は非常に小さい。このことによりピンスリーブ12は大きな摩耗を受ける。とりわけ外側ピンリング7aの摩耗が大きい。なぜならそこでは高められたトルクが伝達されるからである(比較的に大きな梃子)。
【0129】
有利には多重に溝切りされたスリーブ12が使用される。なぜなら摩耗後に別の溝15を使用することができ、スリーブ全体を交換する必要がないからである。図10Fは、例えばスリーブ12の上側の溝が損耗した後に下側の溝が使用されていることを示す。使用される溝15の選択は、有利にはピンリング7aと7bの高さ調整9の後にロータディスクを相応の溝に装填することによって行われる。
【0130】
PPG研磨法では、被覆部の設けられたロータディスクが使用される。この被覆部はロータディスクの(金属)コアが作業層の研磨剤と接触するのを阻止する。ワークピースをPPG研磨法により加工する間、ロータディスクは作業スリット内の作業層(研磨布)上で研磨される。このときにロータディスクの被覆部にはせん断力および摩擦力が発生する。被覆部の輪郭エッジではこの力がとくに大きく、とりわけ有害な剥離力が発生する。被覆部の剥離またはロータディスク層の輪郭エッジでの大きな摩耗を回避するために、被覆部、本発明では部分面の被覆部が次のように構成される。すなわち、輪郭エッジの長さができるだけ短く、輪郭の経過ができるだけ小さな曲率を有するように構成される。したがって有利には、ロータディスクの外側歯部の経過に沿ったリング状の領域が被覆されないままである。例えばこの被覆部は円形に構成され、外側歯部の谷までしか伸長していない。とりわけ有利には、この種の円形被覆部の直径は、外側歯部の谷径よりもやや小さい。(一方、被覆部のない領域は、ロータディスクの湾曲のために、露出している金属ロータディスクコアの部分が研磨布のダイヤモンドと接触するまで大きくてはならない。外側歯部の谷内で被覆されないままの歯に加えて、露出したリング状領域の幅は有利には0から5mmである。)
【0131】
ロータディスクをワークピースオーバフロー領域で案内するために、溝切りされたピンスリーブまたはピンの形態にある本発明の有利な実施形態では、案内溝は外側歯部の歯面に沿ってだけロータディスクと接触する。したがって溝切りされたピンまたはピンスリーブがロータディスクの被覆部と接触することはない。これにより被覆部は温存され、付加的な摩耗に曝されない。とくに有利にはロータディスクの被覆部は、層硬度が50から90Shore A、とくに有利には60から70Shore Aの熱硬化性ポリウレタン・エラストマーを有する。
【0132】
図11は、本発明の第2の方法を実施するための装置の実施例を示す。ここでは、ロータディスクの案内が、リング状に除去された作業層によって行われる。すなわち作業層のリング状領域または作業層を含まない作業層支持体のリング状領域によって行われる。本発明の第2の方法を実施するのに適する作業層は有利には、厚い支持体層2a(下側)2b(上側)および薄い作業層3aと3bjからなり、作業層が研磨剤を含み、材料切削に作用する。ロータディスクの案内はこの実施例では次のようにして達成される。すなわち作業層3aと3bは、所望のワークピースオーバフローが達成されるようにセットバックされており、しかし作業層支持体2a(下側作業層)と2b(上側作業層)は作業ディスクの縁部まで、またはそれを越えて形成されており、これによりロータディスク5は作業層支持体2aまたは2bの一方に支持されて、それ以上の湾曲が阻止され、僅かな大きさ16しか撓むことができないようにして達成される。図11Bは、作業層の摩耗14a,14bが進んでも湾曲が効果的に制限されていることを示す。本発明の方法を実施するのに適する作業層の有効高さが小さいので、ロータディスク5の最大湾曲は有利には、その外側歯部10がピンリング7a(外側)および7b(内側、図示せず)のピンスリーブ12に常に係合しているほど小さい。
【0133】
作業層を備える作業層支持体を部分的に被覆することは、とりわけ製造技術的に面倒である。
【0134】
したがって図11Cの構成でとくに有利には、作業層3a(下側)と3b(上側)および作業層支持体2aと2bがワンピースであり、所要のワークピースオーバフロー6のための所望の大きさまで全面で使用され、付加的なリング18a(下側作業ディスク)および18b(上側作業ディスク)が取り付けられている。
【0135】
有利には、作業層の外側エッジの外に取り付けられる外側リング18aと18b(図11C)、および作業層の内側エッジ内に取り付けられる内側リング(図示せず)が使用される。
【0136】
ここで有利には外側リングと内側リングは同じリング幅を有する。なぜならワークピースオーバフローの程度は外側と内側とで通常は同じだからである。
【0137】
ここで外側リングの内径は、作業層3a/3bを備える作業層支持体2a/2bの外径と同じか、またはそれより大きい。内側リングの外径は、作業層3a/3bを備える作業層支持体2a/2bの内径と同じか、またはそれより小さい。
【0138】
とくに有利には、外側リングの外側縁部および内側リングの内側縁部は、作業ディスク4a(下側)と4b(上側)の外側エッジないし内側エッジを越えて突出しており、外側ピンリング(7a)と内側ピンリング7b(図示せず)上にあるスリーブ12のできるだけ近傍にある。これによりロータディスクの案内はできるだけ大きな領域にわたって行われ、ロータディスクの最大の湾曲は非常に小さくなる(図11Cの16)。
【0139】
本発明は有利には半導体ウェハに関連するものである。
【0140】
従来技術によるPPGによって作製される半導体ウェハは一連の不所望な特性を有する。この不所望な特性は、半導体ウェハの高負荷での適用を妨げる。
【0141】
図12Dに示したように半導体ウェハ1が、オーバフロー6のときに湾曲(17)するロータディスク5の収容開口部25から移動し、作業スリットに再進入しても、半導体ウェハの破壊23、ドータディスクの損傷、またはプラスチックインサート20の損失22には必ずしもつながらない。しばしば半導体ウェハは、短時間だけ非常に高まった圧力の下でだけ下側3aまたは上側作業層3bの外側縁部または内側縁部を越えるように強制され、作業スリットへの再進入の際にロータディスクの収容開口部25に飛び込むように戻る。このことにより縁部領域に短時間だけの高まった研磨作用が発生し、このことはオーバフロー領域で厚さを特徴的に低減させる。
【0142】
図14Aは、本発明の方法により加工されていない半導体ウェハの厚さプロフィールを示す。プロットされているのは、半径R(単位mm)に対する局所的厚さD(単位μm)である。半導体ウェハが作業スリットに再進入する個所では研磨作用が作業層の縁部(38)によって高まり、厚さが減少している(35)。ロータディスクの収容開口部における半導体ウェハの固有回転に基づいて、この「再進入マーク」は半導体ウェハを中心に間隔(38)をおいて円形状に分布する。半導体ウェハがこの収容開口部へ強制的に戻り跳躍することによって、プラスチックインサート20がしばしば局所的に損傷を受け、通常は粗化される。ロータディスクの収容開口部25における半導体ウェハの固有回転は、摩擦の増大により抑制され、オーバフロー領域では一つの平坦部40しか発生しない(図14C、左)。この平坦部は半導体ウェハの半径方向厚さプロフィールにおいて片側(非対称)の厚さ減少を示す(図14C、右)。図14cは、左に半導体ウェハの平面図を、右に切断軸A−A’に沿って得られた半導体ウェハの厚さプロフィールを示す。
【0143】
さらに本発明のPPG法によって加工されない半導体ウェハではしばしば、PPG加工による加工マーク(研磨溝)が非等方性に分布する。37は、半導体ウェハのオーバフロー領域における研磨工具運動に沿った優先方向により刻まれた研磨マークを示す(図14D,左)。これらのマークは、リング状の作業ディスクの外側縁部と内側縁部の湾曲により、半導体ウェハの縁部に向かってもっぱら接線方向に延在していることが分かる。この非等方性の仕上げは必ずしも半導体ウェハの非対称の厚さまたは形状変化として発生するのではなく、局所的に高まった粗度および表面下損傷として現れる(図14D、右の厚さプロフィール39)。
【0144】
本発明の方法により加工された半導体ウェハではロータディスクがストレスなしで運動面を案内される。この半導体ウェハは上記のような欠陥を備えていない(図14B)。厚さプロフィールは対称であり、半導体ウェハの表面は等方性に仕上げられており、局所的な粗化、過度の研磨マークまたは縁部領域の平坦化も発生しない。不利であるのはときどき、半導体ウェハの厚さが縁部領域に向かって僅かに減少するのが観察されることである。しかしその大きさと曲率は、本発明により加工された半導体ウェハの高品質を格別に損なうものではない(図14Bの左)。
【0145】
したがって本発明の方法により、半導体ウェハは等方性、回転対称性、平坦性、および一定の厚さに関してとくに良好な特性を有し、とりわけ要求の高い適用に適する。
【実施例】
【0146】
例として研磨機械Peter Wolters AC-1500P3を使用した。この装置の技術的特徴は、DE 10007389 A1に記載されている。
【0147】
これと強固に結合した研磨剤を備える研磨布が使用される。このような研磨布は、US 6,007,407 AおよびUS 5,958,794 Aに開示されている。
【0148】
加工すべきワークピースとして、直径が300mmの単結晶シリコンウェハが使用された。このシリコンウェハは915μmの初期厚を有する。PPG研磨では、90μmの材料切削が行われる。したがって加工後のシリコンウェハの最終厚は825μmである。
【0149】
使用されたロータディスクは、厚みが600μmのスチールコアを有し、それぞれ片側100μmの厚さのPU摩耗保護層により両面が被覆されている。
【0150】
作業ディスクの選択されたプロセス圧は種々の負荷状況でシミュレートして100〜300daNであり、平均切削率は10〜20μm/分であった。
【0151】
冷却剤として脱イオン水(DI水)が使用された。流量はそれぞれ生じる切削率に応じて3から20リットル/分であり、そこから加工中に種々異なる入熱が生じた。
【0152】
第1の例で相応のプロセスが、ロータディスク案内なしで行われた。
【0153】
すでに第一回の走行で、ロータディスクからスリーブの剥離、研磨タイルまたはその一部の剥離によりシリコンウェハの縁部が損傷した。
【0154】
第2の例では、研磨布被覆の除去されたプロセスが行われた。
【0155】
ここではシリコンウェハに損傷は生じなかったが、外側縁部領域では半導体ウェハがやや粗化された。シリコンウェハの幾何形状は正常であった。
【0156】
第2の例では、溝切りされたピンスリーブによる外側ピンリング上でのロータディスク案内によってプロセスが行われた。
【0157】
シリコンウェハは良好な幾何形状、ディスク縁部までの均質な研磨像を示し、半導体ウェハエッジの損傷はなかった。ロータディスク、インサート、被覆部の損傷/粗化もなく、外側研磨タイルの衝突ないし剥離もない多数の走行が可能であった。
【符号の説明】
【0158】
1 ワークピース(とりわけ半導体ウェハ)
2a 下側作業層支持体
2b 上側作業層支持体
3a 下側作業層
3b 上側作業層
4a 下側作業ディスク
4b 上側作業ディスク
5ワークピース用の案内ケージ(ロータディスク)
6 ワークピースオーバフロー
7a 外側ピンリング/ギヤホイール
7b 内側ピンリング/ギヤホイール
8 マシンベース
9 ピンリング高さ調整
10 ワークピース案内ケージの外側歯部
11 ピン
12 ピンスリーブ
13a 下側ロータディスク案内部
13b 上側ロータディスク案内部
14a 下側作業層の損耗による厚さ減少
14b 上側作業層の損耗による厚さ減少
15 溝
16 ワークピース案内ケージの制限された歪み
17 案内ケージからのワークピースの突出
18a ワークピースオーバフロー/リング下側で分離された作業層支持体
18b ワークピースオーバフロー/リング上側で分離された作業層支持体
19 案内ケージ支持リングの高さ調整
20 プラスチック成形部(インサート)
21 案内ケージからのワークピースの移動
22 案内ケージからのプラスチック成形部の飛び出し
23 半導体ウェハの破損
24 オーバフローした半導体ウェハの縁部領域
25 半導体ウェハ用の収容開口部
26 案内装置の再調整
27 収容開口部内の半導体ウェハの遊び
28 部分(詳細表示)
29 ロータディスクの摩耗保護層
30 ロータディスクの(スチール)コア
31 支持リング
32 ロータディスク用の案内装置の開口部
33 ロート状の溝開口部
34 ピンスリーブ用のロータディスク案内部内の開口
35 作業層縁部における過度の研磨作用のため厚さの減少した半導体ウェハ
36 半導体ウェハの厚さの僅かな減少
37 加工跡(研磨剤なし:異方性の粗度)
38 ワークピースオーバフロー時に作業層の縁部を越える半導体ウェハの領域
39 高められた粗度
40 縁部領域における半導体ウェハの厚さの局所的減少
41 ワークピース案内ケージの制限されない歪み
42 両面加工機械
43 上側旋回アーム
44 ベース
45 旋回装置
46 回転軸
48 スリーブの案内部
50 スリーブの周囲にあるショルダ
52 案内面
56,58 溝の側面
60 溝エッジの斜面
62 ワークピース
64 作業スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側作業ディスク(4b)と下側作業ディスク(4a)とを備え、平坦なワークピース(1)を両面加工する装置であって、
両方の作業ディスク(4a,4B)の少なくとも一方は駆動部によって回転駆動可能であり、
前記作業ディスク(4a,4B)はその間に作業スリット(64)を形成し、該作業スリットの中には、少なくとも一つの被加工ワークピース(1)のための少なくとも一つの切欠部(25)を備える少なくとも一つのロータディスク(5)が配置されており、
該少なくとも一つのロータディスク(5)は周囲に歯部(10)を有し、ギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)の少なくとも一つが回転されるときに、前記歯部によって前記ロータディスクは内側および外側のギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)において回転され、
前記ギヤホイールまたはピンリング(7a,7b)はそれぞれ複数のギヤ構成体またはピン構成体を有し、それらの構成体と前記ロータディスク(5)の歯が回転時に係合し、
前記ピン構成体の少なくとも一つは少なくとも一つの案内部(48)を有し、該案内部により少なくとも一つのロータディスク(5)の縁部の運動が少なくとも軸方向に制限される装置において、
一つの案内部(48)が、前記ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つのショルダ(50)によって形成され、該ショルダの直径はピン構成体の第1の比較的大きな直径と第2の比較的小さな直径との間にあり、
別の案内部(48)が、前記ピン構成体の周囲に延在する少なくとも一つの溝(15)の側面(56,58)によって形成されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記少なくとも一つの溝(15)は、前記ピン構成体の比較的に直径の大きな領域に形成されている、ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、
前記ピン構成体の比較的小さな直径は、前記ショルダから始めって直径を拡大することなく前記ピン構成体の自由端部に終端する、ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載の装置において、
前記ピンリング(7a,7b)の少なくとも一つのピン構成体が、それぞれ一つのピンと、該ピンに回転可能に支承されたスリーブ(12)から形成されており、
前記スリーブ(12)の少なくとも一つは外周に案内部(48)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つの案内部(48)は、半径方向に延在する少なくとも一つの案内面(52)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つのピン構成体は、軸方向に相互に離間し、該ピン構成体の周囲に延在する複数の溝(15)を有し、
該溝の側面(56,58)は、少なくとも一つのロータディスク(5)の縁部の運動をそれぞれ軸方向に制限する、ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記溝(15)は種々異なる幅(w)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つの溝(15)は、前記少なくとも一つのロータディスク(5)の厚さより0.1mmから0.5mm大きい幅(w)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つのショルダ(50)または溝(15)は、周回する少なくとも一つの斜面(60)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記斜面(60)は、前記ショルダ(50)または溝(15)に対して10゜から45°の開口角を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項5から10までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つの案内面(52)は、少なくとも一つの周回する斜面(60)を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記斜面(60)は、前記案内面(52)に対して10゜から45°の開口角を有する、ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つのショルダ(50)または溝(15)は、少なくとも一つの丸められたエッジを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項5から13までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つの案内面(52)は、少なくとも一つの丸められたエッジを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項記載の装置において、
前記少なくとも一つのロータディスク(5)は非金属材料からなる、ことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項記載の装置において、
前記ギヤホイールまたはピンリングは、高さ調整できるホルダの上に支承されており、リフト装置が前記ホルダに対して設けられている、ことを特徴とする装置。
【請求項17】
複数の半導体ウェハを同時に両面材料切削加工する、請求項1から16までのいずれか一項記載の装置の使用法。
【請求項18】
複数の半導体ウェハを同時に両面材料切削加工する方法であって、
各半導体ディスク(1)が、リング状の外側駆動ディスク(7a)およびリング状の内側駆動ディスク(7b)によって回転される複数のロータディスク(5)のうちの一つの溝内で自由運動し、これによりサイクロイド軌道を描き、
一方、半導体ウェハ(1)は、回転する2つのリング状作業ディスク(4a,4b)の間で材料切削加工され、前記作業ディスク(4a,4b)は作業層(3a,3b)を有しており、
前記ロータディスク(5)および/または半導体ウェハ(1)の面(6)の一部は加工中に、前記作業層(3a,3b)により境界を画定された作業スリットを一次的に離れる方法において、
該作業スリット内に前記2つの作業ディスク(4a,4b)はそれぞれ一つのリング状領域(18a,18b)を有し、
該リング状領域は前記作業層(3a,3b)を含んでおらず、かつ前記ロータディスク(5)の案内を、該ロータディスクおよび/または前記半導体ウェハ(11)が前記作業スリットからオーバフローする際に保証する、ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、
材料切削加工時には半導体ウェハ(1)が両面で研磨され、
各作業ディスク(4)は、研磨材料を備える作業層を有する方法。
【請求項20】
請求項18記載の方法であって、
材料切削加工時には、シリカゾルを含有する分散液を供給して両面つや出し仕上げが行われ、
各作業ディスク(4)は研磨布を作業層(3)として有する方法。
【請求項21】
請求項18記載の方法であって、
ロータディスク(5)の案内は、リング状にセットバックされた作業層(3a,3b)によって行われ、
これにより所望のワークピースオーバフロー(6)が達成され、作業層支持体(2a,2b)は作業ディスクの縁部まで、またはこれを越えるまで形成されている方法。
【請求項22】
請求項18記載の方法であって、
作業層(3a,3b)と作業層支持体(2a,2b)は所要のワークピースオーバフロー(6)のために全面で使用され、付加的に下側リング(18a)が下側作業ディスク(4a)に、上側リング(18b)が上側作業ディスク(4b)に取り付けられており、前記リングは作業層を支持しない方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、
外側リング(18a,18b)は作業層の外側エッジの外に、内側リングは作業層の内側エッジの中に取り付けられている方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、
外側リングと内側リングは同じリング幅を有する方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法であって、
外側リングの内径は、作業層(3a,3b)を備える作業層支持体(2a,2b)の外径と同じか、またはそれより大きく、
内側リングの外径は、作業層(3a,3b)を備える作業層支持体(2a,2b)の内径と同じか、またはそれより小さい方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−99830(P2010−99830A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−243308(P2009−243308)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【出願人】(508085486)ペーター ヴォルタース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Peter Wolters GmbH
【住所又は居所原語表記】Buesumer Strasse 96, D−24768 Rendsburg, Germany
【Fターム(参考)】