床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置
【課題】従来の床版上面増厚工法と比較して薄い増厚でありながらも、床版の耐久性を高めて品質の向上を図ることができるうえ、施工に伴って生じる振動や騒音を小さくするようにした。
【解決手段】橋梁や高速道路などに使用される既設の床版1の表面を研掃し、研掃した床版1の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工し、コンクリート仕上げ装置10のスクリードプレート12に高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させるようにした。軟質コンクリート2は、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリート2の硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する材料とした。
【解決手段】橋梁や高速道路などに使用される既設の床版1の表面を研掃し、研掃した床版1の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工し、コンクリート仕上げ装置10のスクリードプレート12に高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させるようにした。軟質コンクリート2は、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリート2の硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する材料とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼橋などの橋梁に適用されるコンクリート床版が損傷した場合の床版補強方法として、床版上面増厚工法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この工法は、既設コンクリート床版の上面から数cmの深さまで切削し、その切削面をスチールショットによりブラスト処理した後、スチールファイバーなどの鋼繊維を混入した補強コンクリートを舗設して、新旧コンクリートを一体化させて増厚を行うことにより床版を補強する工法である。
【特許文献1】特開平9−59929号公報
【特許文献2】特開平8−333816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の床版上面増厚工法では、以下のような問題があった。
すなわち、収縮ひずみによるひび割れの発生を防ぐためにコンクリートに膨張材を添加していたが、その効果は十分ではなく、完全に収縮ひずみをなくすことはできず、コンクリートにひび割れが生じるおそれがあり、床版のコンクリートの品質をより向上させることが求められており、その点で改良の余地が残されていた。
また、コンクリートを舗設するためにエンジンを備えたコンクリート仕上げ装置を使用しているために、舗設時にコンクリート仕上げ装置から発生する振動や騒音が大きく、環境保全の観点から例えば都市内高速道路などの都心部にある床版には適用し難いといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、従来の床版上面増厚工法と比較して薄い増厚でありながらも、床版の耐久性を高めて品質の向上を図ることができる床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、施工に伴って生じる振動や騒音を小さくするようにした床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る床版補強方法では、既設の床版の表面を研掃する研掃工程と、研掃した床版の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリートを被覆施工する施工工程と、スクリードによって高周波振動を与えて軟質コンクリートを締め固めて既設の床版に一体化させる締め固め工程とを備えたことを特徴としている。
本発明では、スランプが10cm以上の軟質コンクリートを使用するため、薄層に敷き均した場合でも高周波振動を与えながら締め固めることで十分な強度と平坦性を得られるので、床版の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。そして、床版を研掃することで床版上面の劣化部分を除去するとともに床版面を粗面とすることができるので、旧コンクリートと新コンクリートとの付着強度を高めることができる。しかも、増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版の耐久性を向上させることができる。
【0006】
また、本発明に係る床版補強方法では、軟質コンクリートを締め固めた後の床版の厚さは、研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲で増大されていることが好ましい。
本発明では、軟質コンクリートの増厚量を研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲とすることで、その上にアスファルト舗装を仕上げた状態で、既設舗装上面との段差を小さくすることができることから、仕上げ作業後に段差をすり付ける必要がなく、そのまま車両を通行させることができるので、工事に伴う交通規制の時間を短縮することができる。
【0007】
また、本発明に係る床版補強方法では、スクリードの高周波振動数は100〜400Hzとすることが好ましい。
本発明では、高周波バイブレータ等を使用してスクリードを100〜400Hzの振動数で振動させて軟質コンクリートを締め固めることで、振動や騒音を抑制しつつ、所定強度を確保して薄層に仕上げることができる。
【0008】
また、本発明に係る床版補強方法では、スクリードは、床版上の移動速度が20〜100cm/minであることが好ましい。
本発明では、スクリードを20〜100cm/minの速度で移動させて軟質コンクリートを締め固めることで、仕上がり品質の低下を防ぐことができるうえ、施工速度を確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る床版補強方法では、軟質コンクリートは水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリートの硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現することが好ましい。
本発明では、短時間で交通荷重に耐え得るコンクリート強度が得られることから、床版補強工事の施工速度が上がり、施工効率を向上させることができ、工期を短縮できるうえ、交通規制時間を短くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る床版補強方法では、膨張性混和材は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92重量%であるクリンカ組成物および石膏を含むことが好ましい。
本発明では、コンクリートに含まれる膨張性混和材によりコンクリートの収縮が抑制されて自己収縮や乾燥収縮によるコンクリートの収縮ひずみが低減されるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することを防止できる。また、膨張性混和材に含まれる石膏とカルシウムアルミネートとの反応によりエトリンガイトが生成され、このエトリンガイトによりコンクリートの収縮を抑制することができるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することをさらに効果的に防止できる。
【0011】
また、本発明に係る床版補強方法では、水硬性組成物は、(1)カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む、または(2)3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含むことが好ましい。
本発明では、水硬性組成物に含まれるカルシウムサルホアルミネートによりコンクリートの強度が早期に発現されるので、床版上にコンクリートを打設した後の養生時間を短縮することができる。また、炭酸リチウムによりコンクリートの収縮ひずみ量を低減することができるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することをさらに効果的に防止できる。
【0012】
また、本発明に係る床版補強方法では、既設の床版はコンクリート床版または鋼床版であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るコンクリート仕上げ装置では、上記床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置であって、本体と、本体に支持されていてコンクリートを敷き均して締め固めるスクリードと、スクリードに高周波振動を付与する高周波バイブレータと、床版に対して本体及びスクリードを移動させる牽引用ウインチとを備えたことを特徴としている。
本発明では、スクリードプレートへの振動付与に高周波バイブレータを用いるとともにコンクリート仕上げ装置の動力源としてエンジンではなくて手動又は電動で操作する牽引用ウインチを用いることができるので、コンクリート打設に伴う振動および騒音の発生を抑制することができる。そして、スランプが10cm以上の軟質コンクリートを使用し、薄層に敷き均して高周波バイブレータによって振動を与えながら締め固めることで、床版の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。このように増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版の耐久性を向上させることができる。また、動力源にエンジンを使用しない小型、且つ軽量のコンクリート仕上げ装置となることから、クレーンなどの吊上げ用機械を使わずに人力でコンクリート仕上げ装置を施工箇所に載置することができ、施工幅員が狭い箇所であっても容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床版補強方法によれば、軟質コンクリートに高周波振動を与えて締め固めて、床版の増厚を薄層に仕上げることができる。そのため、増厚分の死荷重が小さくなり、床版の耐久性が高められて品質の向上を図ることができる。
また、本発明の床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置によれば、増厚を薄くすることで、スクリードに高周波バイブレータを取り付けた簡単且つ軽量な構造のコンクリート仕上げ装置を使用することができることから、従来のようなエンジンを搭載した大型のコンクリート仕上げ装置を使用する必要がなくなり、床版補強工事に伴って生じる騒音や振動を小さくすることができ、例えば都市内高速道路などの都心部のような施工現場でも採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置について、図1乃至図12に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による床版補強方法の概要を示す斜視図、図2は図1に示す施工中のコンクリート仕上げ装置の正面図、図3はコンクリート仕上げ装置の平面図、図4(a)は図3に示すA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図、図5は移動式コンクリート製造装置を示す側面図、図6(a)〜(d)は床版補強の施工工程を示す図、図7〜図12は試験例1の結果を示すグラフ等である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態による床版補強方法は、橋梁や高速道路などに使用される床版1上に、移動式コンクリート製造装置3(図5参照)により製造したコンクリート(以下、軟質コンクリート2とする)をコンクリート仕上げ装置10により敷き均して締め固める方法である。具体的な床版補強方法は、既設の床版1の表面を研掃し、研掃した床版1の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工し、スクリード(後述するスクリードプレート12)によって高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させる方法である。
【0017】
ここで、本実施の形態では、軟質コンクリート2の材料として、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材および繊維が用いられる。なお、本実施の形態の適用対象となる床版1は、橋面舗装の基盤となるものであって、コンクリート床版および鋼床版などとされる。
【0018】
先ず、コンクリート仕上げ装置10の構成について、図面に基づいて説明する。
図1乃至図4に示すように、コンクリート仕上げ装置10は、本体11と、本体11に支持されていて軟質コンクリート2を敷き均して締め固めるためのスクリードプレート12(スクリード)と、スクリードプレート12に振動を付与するための高周波バイブレータ13と、本体11に設けられた牽引用ウインチ14、14とから概略構成されている。
【0019】
本体11は、前後左右および底面が板部材で囲われるとともに、上面が開口した略直方体形状の箱状部材により構成されている。本体11の箱状部材の中にはカウンタウエイト(図示省略)などのおもりが配置されており、コンクリート打設時の反力を確保するようにしている。本体11の前後方向(進行方向)の長さは、本体前方に設けたスクリードプレート12による軟質コンクリート2への振動付与により軟質コンクリート2の仕上がり精度に影響が出ることのないように十分な長さとすることが好ましく、例えば概ね50〜60cm以上である。本体11の左右端部の前面内側には、断面L字状の第1柱状部材15が立設されている。本体11の外側底面11aは、打設された軟質コンクリート2を平坦に仕上げるための部分であり、平坦かつ平滑な面に形成されている。
【0020】
スクリードプレート12は、前後左右および底面が板部材で囲われていて上面が開口してなり、進行方向に直交する方向に長手方向を向けた略直方体形状の箱状部材により構成されている。スクリードプレート12の内側底面左右にはそれぞれ一対のアングルからなる基台16が設けられている。基台16における一対のアングルどうしは、防振ゴム19を介して接続されている。この防振ゴム19に用いる素材としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどの適宜のゴムを用いることができる。この防振ゴム19はスクリードプレート12に付与された振動が本体11に伝わりにくくする一方で、高周波バイブレータ13による荷重が軟質コンクリート2によく伝達させる作用を有することから、スクリードプレート12による押さえの効果と相まって、軟質コンクリート2を平坦かつ十分に締め固めることができ、仕上げ精度を良好にすることができるようになっている。
【0021】
そして、基台16の上面に第2柱状部材17がボルト止めで立設され、第1柱状部材15と第2柱状部材17とは、それぞれの上部同士が接続部材18によって固定されている。この接続部材18の一端部18aは、第1柱状部材15の上部に万力或いはボルトなどによってスクリードプレート12を本体11に対して上下方向に移動可能に取り付けられてなり、軟質コンクリート2の仕上がり高さに合わせてその高さ位置を調整することができる。通常、軟質コンクリート2の仕上がり厚さ寸法が40mm程度であれば、スクリードプレート12の外側底面12aの高さが本体11の外側底面11aの高さより略10mm程度上方位置となるように調整する。
【0022】
また、スクリードプレート12の外側底面12aの前部は、コンクリート仕上げ装置10の進行方向前側(図1、3、4(b)に示す矢印E方向)が高く後側が低くなるテーパ面12b(図4(b)参照)が形成されており、軟質コンクリート2打設時の材料が本体11の外側底面11a側に進入しやすくなっている。
【0023】
図3、図4(a)及び(b)に示すように、高周波バイブレータ13は、スクリードプレート12の箱状部材の内側底面中央部に取り付けられている。この高周波バイブレータ13を駆動することによりスクリードプレート12に振動を付与するようになっている。なお、本実施の形態では、振動数として100〜400Hzが好ましく、本高周波バイブレータ13では100〜240Hzの範囲で調節可能なものを採用している。
【0024】
また、図1及び図2に示すように、本体11の左右板部材の外側にはそれぞれL字状のブラケット20がボルトにより取り付けられており、各ブラケット20の上面には人力で巻き取り可能な牽引用ウインチ14が設けられている。すなわち、本コンクリート仕上げ装置10は、ウインチ14、14のそれぞれに巻き掛けられたワイヤロープ21の端部21aを構造物(ここでは既設床版1上のアンカー22)などに固定しておき、ウインチ14を人力で左右バランスよく回転させてワイヤロープ21を巻き取ることにより、コンクリート仕上げ装置10が上面を軟質コンクリート2の仕上がり高さに一致するように設けられた型枠23、23上を移動するように構成されている。ここで、ウインチ14の巻き取り速度、すなわち床版1上のスクリードプレート12の移動速度は、20〜100cm/minが好ましい(詳しくは後述する)。
【0025】
本実施の形態の軟質コンクリート2は、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリート2の硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する材料であり、上述したように打設時のスランプが10cm以上となる材料とである。この軟質コンクリート2の使用材料について、以下で具体的に説明する。
【0026】
(a)水硬性組成物
本実施の形態における図1に示す軟質コンクリート2に使用する水硬性組成物としては、カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)および無水石膏を含むカルシウムサルホアルミネート組成物と、炭酸リチウムとを含むものが好ましい。カルシウムサルホアルミネート組成物は、カルシウムサルホアルミネート3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むものであり、好ましくはカルシウムサルホアルミネート20〜40質量%および無水石膏5〜15質量%を含むものである。水硬性組成物における炭酸リチウムの配合量はカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して0.1〜3.0質量部であり、好ましくは0.5〜1.5質量部である。水硬性組成物における炭酸リチウムの配合量が0.1質量部未満であると軟質コンクリートの初期強度が十分に発現しなくなり、3.0質量部を超えると軟質コンクリートの収縮ひずみの低減効果に大きな変化が見られず製造コストが割高になってしまう。
【0027】
水硬性組成物に含まれる炭酸リチウムの比表面積(ブレーン比表面積)は、1000〜4000cm2/gであり、好ましくは2000〜3000cm2/gである。比表面積が1000cm2/g未満であると炭酸リチウムの粒子が粗くなるのでコンクリートに混練するときに炭酸リチウムが均質に分散しにくくなり、軟質コンクリートの強度が低下してしまう。比表面積が4000cm2/gを超えると、収縮ひずみの低減効果が十分には得られなくなってしまう。
【0028】
(b)骨材
本実施の形態の軟質コンクリートに使用する骨材としては、細骨材および粗骨材がある。細骨材としては、川砂、山砂および海砂などの天然砂と、砕砂および高炉スラグ細骨材などの人工砂を用いることができる。細骨材の粒径は、5mm以下であることが好ましい。軟質コンクリートにおける細骨材の配合量は、水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0〜500質量部であることが好ましく、100〜200質量部であることがより好ましい。粗骨材としては、砂利および砕石などを用いることができる。粗骨材の粒径は、5〜25mmであることが好ましく、特に5〜13mmであることが好ましい。軟質コンクリートにおける粗骨材の配合量は、コンクリート硬化後の機械的強度や生コンクリートの作業性などの観点から、水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0〜500質量部であることが好ましく、100〜200質量部であることがより好ましい。
【0029】
(c)膨張性混和材
本実施の形態の軟質コンクリートに使用する膨張性混和材としては、クリンカ組成物および石膏を含むものが好ましい。クリンカ組成物は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92質量%のものである。膨張性混和材中のクリンカ組成物に含まれる間隙物質は、セメントクリンカ鉱物中のエーライト(3CaO・SiO2)やビーライト(2CaO・SiO2)の間を埋める鉱物に類するものである。このような間隙物質としては、2CaO・Fe2O3などのカルシウムフェライト鉱物、3CaO・Al2O3などのカルシウムアルミネート鉱物、6CaO・Al2O3・Fe2O3、4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3などのカルシウムアルミノフェライト鉱物などが挙げられる。
【0030】
上述したようにクリンカ組成物中のCaOの含有割合は、クリンカ組成物の全質量に対して50〜92質量%である。CaOの含有割合が50質量%未満であると軟質コンクリートの早期強度発現が困難となるおそれがあり、92質量%を超えると相対的に間隙物質の含有量が減少して軟質コンクリートの収縮を低減することが困難となるおそれがある。
【0031】
膨張性混和材には、前記クリンカ組成物とともに石膏が含まれている。この石膏はカルシウムアルミネートと反応してエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を生成するため、これにより軟質コンクリートの収縮を抑制することができるとともに軟質コンクリートの初期強度(簡易蒸気養生時の脱型強度)を高めることができる。膨張性混和材における石膏の配合量は、クリンカ組成物100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。膨張性混和材に生石灰が含まれる場合の石膏の配合量は、クリンカ組成物と生石灰との合計量100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。石膏の配合量が5質量部未満であると軟質コンクリートの収縮を低減することが困難であり早期に強度が発現しないおそれがあり、50質量部を超えると軟質コンクリートに膨張ひび割れが生じるおそれがある。
【0032】
膨張性混和材は、さらに生石灰を含むことが好ましい。生石灰は水和反応に伴い膨張および発熱するため、軟質コンクリートの収縮をさらに抑制することができるとともに、膨張性混和材全体の発熱量が高まり軟質コンクリートの早期強度発現性をさらに向上させることができる。膨張性混和材に生石灰を含む場合の生石灰の含有量は、前記クリンカ組成物と生石灰との合計質量の80質量%以下であることが好ましい。生石灰の含有量が80質量%を超えると、水和反応による軟質コンクリートの膨張量が増大しすぎてしまうおそれがある。
【0033】
(d)繊維
本実施の形態の軟質コンクリートに含まれる繊維は、金属繊維または有機繊維である。これらの繊維が含まれることにより、膨張性混和材により膨張した軟質コンクリートを拘束して軟質コンクリートの収縮を防止することができるとともに、軟質コンクリートの膨張を制御して軟質コンクリートが膨張しすぎないようにすることができる。金属繊維としては、鋼繊維、アモルファス繊維、ステンレス繊維などを挙げることができるが、これらのうち軟質コンクリートをより効果的に拘束することができる鋼繊維を使用することが好ましい。有機繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維などを挙げることができるが、これらのうち軟質コンクリートをより効果的に拘束することができるビニロン繊維を使用することが好ましい。
【0034】
金属繊維または有機繊維の配合量は、軟質コンクリートの体積に対して0.7〜2.0体積%であることが好ましい。これらの繊維の配合量が0.7体積%未満であると軟質コンクリートの強度が低下するおそれがあり、2.0体積%を超えると水硬性組成物との混練作業のワーカビリティが低下するおそれがある。
金属繊維または有機繊維の繊維長は、15〜60mmであることが好ましく、30mm程度であることがより好ましい。繊維長が15mm未満であると軟質コンクリートを効果的に拘束できないおそれがあり、繊維長が60mmを超えると水硬性組成物と金属繊維または有機繊維とを混練する際にファイバーボールが生じやすくなるおそれがある。
金属繊維または有機繊維の直径は、0.62〜0.90mmであることが好ましい。直径が0.62mm未満であると金属繊維または有機繊維の強度が不足してこれらの繊維が張力を受けたときに切れてしまうおそれがあり、直径が0.90mmを超えると軟質コンクリート中の金属繊維または有機繊維の本数が相対的に少なくなるため、いずれの場合も軟質コンクリートを効果的に拘束できないおそれがある。
【0035】
(e)凝結遅延剤
本実施の形態の軟質コンクリートは、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材との合計100質量部に対して、クエン酸換算で0.5〜3.0質量部のクエン酸もしくはその塩、酒石酸換算で0.05〜1.5質量部の酒石酸もしくはその塩および/またはヘプトン酸換算で0.05〜1.5質量部のヘプトン酸もしくはその塩をさらに含んでいることが好ましい。
【0036】
本実施の形態の軟質コンクリートの混練方法としては、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材とをあらかじめ混合しておきこれに水を加えて混練する方法、および前記水硬性組成物に水を加えて混練しておきこれに前記膨張性混和材を添加してさらに混練する方法がある。本発明においては凝結遅延剤としてクエン酸(クエン酸塩)、酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)を添加することが好ましい。特に、酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)はクエン酸と同様に凝結遅延作用を有しているが、水硬性組成物と膨張性混和材と酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)とをあらかじめ混合しておきその後に水を添加したとしても、エトリンガイトが急激に生成することはなく軟質コンクリートの急結を防止することができる。これにより、十分な可使時間を確保することができるとともに膨張性混和材を軟質コンクリートに均一に混和させることができるため、より効果的に軟質コンクリートの収縮ひずみを抑制することができる。
【0037】
水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対する酒石酸(酒石酸塩)、またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)の配合量が酒石酸換算またはヘプトン酸換算で0.05質量部未満であると、軟質コンクリートの可使時間を十分に確保することができないおそれがある。配合量が1.5質量部を超えると、凝結不良を起こして軟質コンクリートの強度が十分に発現しなかったり、場合によっては硬化しなくなったりするおそれがある。
酒石酸(酒石酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.15〜1.2質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。ヘプトン酸(ヘプトン酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.2〜1.2質量部であることがより好ましく、0.25〜1.0質量部であることが特に好ましい。
【0038】
本実施の形態の軟質コンクリートは、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材との合計100質量部に対して、ホウ酸換算で0.01〜0.3質量部のホウ酸またはその塩を含むものであってもよい。軟質コンクリートに前記範囲内でホウ酸を含ませることにより、軟質コンクリート硬化時の水和熱を低減することができ軟質コンクリートの練り上がり温度を低下させることができるので、夏期などにおける高温環境下であっても容易に軟質コンクリートの出荷および施工を行うことができる。
【0039】
水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対するホウ酸(ホウ酸塩)の配合量がホウ酸換算で0.01質量部未満であると、軟質コンクリート硬化時の水和熱を効果的に低減することができないおそれがあり、0.3質量部を超えると、軟質コンクリートの強度が低下したり凝結遅延が発生したりするおそれがある。ホウ酸(ホウ酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.05〜0.2質量部であることがより好ましく、0.1〜0.15質量部であることが特に好ましい。
【0040】
次に、上述した軟質コンクリートの製造に用いられる移動式コンクリート製造装置について、図面に基づいて説明する。
図5に示すように、移動式コンクリート製造装置3は、コンクリート材料補給装置30およびコンクリート材料混練装置40からなり、それぞれ車両に搭載されている。
【0041】
コンクリート材料補給装置30は、水硬性組成物を貯蔵する第1容器31と、第1容器31から水硬性組成物を取り出してコンクリート材料混練装置40へ搬送する第1フィーダ32と、骨材を貯蔵する第2容器33と、第2容器33から骨材を取り出してコンクリート材料混練装置40へ搬送する第2フィーダ34と、第1容器31から取り出された水硬性組成物をコンクリート材料混練装置40へ搬送してこの水硬性組成物の搬送量を測定する第1計量装置35と、第2容器33から取り出された骨材をコンクリート材料混練装置40へ搬送してこの骨材の搬送量を測定する第2計量装置36とを備えている。
【0042】
コンクリート材料混練装置40は、コンクリート材料補給装置30から搬送された水硬性組成物を受け入れてこの水硬性組成物の受け入れ量を測定する第3容器41と、第3容器41から水硬性組成物を取り出す第3フィーダ42と、コンクリート材料補給装置30から搬送された骨材を受け入れてこの骨材の受け入れ量を測定する第4容器43と、第4容器43から骨材を取り出す第4フィーダ44と、供給された水を受け入れてこの水の受け入れ量を測定する第5容器45と、第3フィーダ42が第3容器41から取り出した水硬性組成物と第4フィーダ44が第4容器43から取り出した骨材と第5容器45から供給された水とを受け入れて混練する第6容器46と、第6容器46の下側に配置されてこの第6容器46で得られた生コンクリートを排出する第5フィーダ47とを備えている。
なお、これらのコンクリート材料補給装置30およびコンクリート材料混練装置40は、図5のようにそれぞれ別個の車両に搭載してもよいし、両装置を1台の車両にまとめて搭載してもよい。
【0043】
次に、本実施の形態のコンクリート仕上げ装置10を用いた軟質コンクリート2の施工手順、すなわち床版補強方法について、図6などを用いて具体的に説明する。
ここでは、コンクリート床版に適用する場合であって、例えば1日の施工量は施工幅員3.5m×施工延長30m程度とする。
【0044】
先ず、図6(a)に示すように、既設の橋面舗装(アスファルト混合物層4)を図示しない路面切削機により切削して除去する。このとき、既設コンクリート床版1Aの損傷を避けかつアスファルト混合物層4を完全に除去するために、2層に分けて切削作業を行う。次に、コンクリート床版1A上のレイタンスなどの新旧コンクリートの付着に支障となる部分を路面切削機により約10mmの深さまで切削して除去する。図6(a)において、符号1aの二点鎖線が切削前の位置、符号1bの実線が切削後の位置を示している。
その後、コンクリート床版1Aの表面をショットブラストにより研掃してモルタル分を取り除いて、床版面に骨材が見える状態とする工程を行う(研掃工程)。このときの鋼球(スチールショット)の投射密度は、150kg/cm2程度とする。
【0045】
続いて、図6(b)及び(c)に示すように、研掃したコンクリート床版1Aの表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工する(施工工程)。具体的には、図6(b)に示すように、軟質コンクリート2を打設する領域の周囲に木製などの型枠23を設けて、この型枠23の上面23aが軟質コンクリート2の仕上がり高さ(符号2aの位置)と一致するように高さを調整する(図2参照)。
【0046】
そして、図6(c)及び図1に示すように、施工起点部の型枠23上にコンクリート仕上げ装置10を載置して、コンクリート仕上げ装置10の両端部に設けた牽引用ウインチ14、14からワイヤロープ21を巻き出し、その端部21aを既設コンクリート床版1A上に打ち込んだアンカー22に固定する。そして、施工現場内で移動式コンクリート製造装置3(図5参照)を用いて製造した軟質コンクリート2を一輪車などで運搬して、コンクリート仕上げ装置10の進行方向前方の既設コンクリート床版1A上に供給してレーキなどで押し拡げて敷き均す。
【0047】
続いて、図6(c)に示すように、スクリードプレート12によって高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させる工程を行う(締め固め工程)。具体的には、図1に示すように、コンクリート仕上げ装置10の高周波バイブレータ13を駆動した後、牽引用ウインチ14、14を人力で左右バランスよく回転させてワイヤロープ21、21を巻き取って仕上げ装置10を型枠23に沿って前進(図1に示す矢印E方向に移動)させ、軟質コンクリート2がスクリードプレート12により締め固められながら後方へ送られ、本体11の外側底面11aにより敷き均されて平坦に仕上げられ、所定の厚さで軟質コンクリート2が増厚されることになる。軟質コンクリート2の打設終了後、ただちに被膜養生剤を散布して、養生マットで全面を覆って養生する。
【0048】
次いで、軟質コンクリート2の硬化後、コンクリート内部への水の浸透を防ぐために、防水層の施工を行う。防水層としてはシート系防水層と塗膜系防水層があり、防水性およびアスファルト混合物層とコンクリートとの接着性がよいものを使用する。
そして、図6(d)に示すように、防水層の施工後には、施工領域周辺の既設アスファルト混合物層4の高さと一致するようにしてアスファルト混合物層4を敷設して作業が完了となる。
【0049】
このように、本床版補強方法では、スランプが10cm以上の軟質コンクリート2を使用するため、薄層に敷き均して高周波バイブレータ13によってスクリードプレート12に100〜400Hzの高周波振動を与えながら締め固めることで、床版1の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。なお、振動数が100Hz未満の場合には、材料が大きく波打ってしまい軟質コンクリート2の締固めが不十分となり、所定のコンクリート強度が得られないことが想定される。さらに、振動数が400Hzを越える場合には、騒音と振動が大きくなるといった不具合が生じることになる。
【0050】
そして、床版1を研掃することで床版上面の劣化部分を除去するとともに床版面を粗面とすることができるので、旧コンクリートと新コンクリートとの付着強度を高めることができる。しかも、増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版1の耐久性を向上させることができる。
【0051】
そして、スクリードプレート12(コンクリート仕上げ装置10)を20〜100cm/minの移動速度とすることで、仕上がり品質の低下を防ぐことができるうえ、施工速度を確保することができる。なお、移動速度が20cm/min未満では、軟質コンクリート2の品質には問題ないが、施工速度が遅くなることから工期に影響を及ぼすことになる。また、施工速度が100cm/minを越えると、コンクリートの締固めが十分でなく、仕上がり面が悪くなるうえ、強度不足となって品質が低下することになる。
【0052】
ここで、軟質コンクリート2を締め固めた後の床版1の厚さは、研掃前の床版1の厚さから10〜50mmの範囲で増大されるように設定することが好ましい。このように施工することで、増厚された軟質コンクリート2の上にアスファルト舗装を仕上げた状態で、既設舗装上面との段差を小さくすることができることから、仕上げ作業後に段差をすり付ける必要がなく、そのまま車両を通行させることができるので、工事に伴う交通規制の時間を短縮することができる。つまり、増大される厚さが10mm未満の場合には、既設舗装上面との段差が大きくなるとともに、仕上がった軟質コンクリート2が薄すぎて交通荷重に耐え得る強度を確保できないおそれがある。また、増大される厚さが50mmを超える場合には、既設舗装上面との段差が大きくなるとともに、死荷重も大きくなり例えば橋梁が床版の重さに耐えられないおそれがある。
【0053】
また、スクリードプレート12への振動付与に高周波バイブレータ13を用いるとともにコンクリート仕上げ装置10の動力源としてエンジンではなくて人力で操作する牽引用ウインチ13を用いるので、コンクリート打設に伴う振動および騒音の発生を抑制することができる。そのため、工事箇所の周辺住民に対する環境保全に対応することができ、都市部の工事や夜間の工事に本床版補強方法を採用することができる。
また、コンクリート仕上げ装置10が動力源にエンジンを使用しない小型、且つ軽量な構造となることから、クレーンなどの吊上げ用機械を使わずに人力でコンクリート仕上げ装置を施工箇所に載置することができ、施工幅員が狭い箇所であっても容易に施工することができる。
【0054】
さらに、本施工方法では、スクリードプレート12と本体11との間の適切な位置に防振ゴム19が取り付けられているので、高周波バイブレータ13による振動が本体11に伝わりにくくなるとともにスクリードプレート12には効率よく伝わり、少ない数の高周波バイブレータ13でも十分に軟質コンクリート2を平坦かつ十分に締め固めることができ、高周波バイブレータ13の数が少ないことにより騒音の発生を抑制することができるという利点もある。
【0055】
次に、本実施の形態の床版補強方法を鋼床版に適用する場合の施工手順について説明するが、基本的にはコンクリート床版に適用する場合と同様の施工方法である。
先ず、既設の橋面舗装(表層のアスファルト混合物層および基層のグースアスファルト混合物層)を路面切削機により除去する。次に、基層の下の防水層を平爪バケットを装着したパワーショベルにより剥ぎ取る。その後、切削後の鋼床版面をショットブラストにより研掃して、残留する防水層を取り除く。このときのスチールショットの投射密度は、150kg/cm2程度とする。研掃作業の終了後、鋼床版面への水の浸透を防ぐために、防水層の施工を行う。防水層としてはシート系防水層と塗膜系防水層があり、防水性およびアスファルト混合物層と鋼床版との接着性がよいものを使用する。
【0056】
次いで、図1に示すように、軟質コンクリート2の打設箇所に型枠23を設置して、この型枠23の上面23aが軟質コンクリート2の仕上がり高さとなるように高さを調整する。そして、施工起点部の型枠23上にコンクリート仕上げ装置10を載置して、仕上げ装置10に設けた牽引用ウインチ14のワイヤロープ21を巻き出して、その端部21aを鋼床版上に溶接した鉄棒(アンカー22に相当)に固定する。施工現場内で移動式コンクリート製造装置3(図5参照)を用いて製造した軟質コンクリート2を一輪車などで運搬して、仕上げ装置10前方の既設鋼床版上に供給し、これを仕上げ装置10により所定の厚さおよび幅員となるように敷き均して平坦に仕上げる。軟質コンクリート2の打設終了後、ただちに被膜養生剤を散布して、養生マットで全面を覆って養生する。
【0057】
(試験例1)
次に、上述した本実施の形態の増厚補強の効果を確認するために、次のような試験を行った。
本試験では、あらかじめ損傷を与えたRC床版の上面に膨張材を含む本実施の形態の軟質コンクリート2を用いて増厚補強を行い、補強前後の静的載荷試験および輪荷重走行疲労試験を実施することにより、補強効果および疲労損傷の程度を確認した。
【0058】
(1)静的載荷試験
本試験で使用するRC床版は、橋軸方向長さが3000mm、橋軸直角方向幅が2000mm、中央部の床版厚が160mm、試験時の床版支間が1800mmである。主鉄筋、配力鉄筋にはそれぞれD16、D13のSD295A鉄筋を使用し、床版内における鉄筋の配置間隔は、引張側主鉄筋が150mm、圧縮側主鉄筋が300mm、引張側配力鉄筋が125mm、圧縮側配力鉄筋が250mmとした。このRC床版に対して予備載荷を行いあらかじめ損傷を与え、これに本発明の軟質コンクリートを用いて増厚補強(増厚量40mm)を行い、その後に静的載荷試験を行った。
【0059】
静的載荷試験は、クランク式輪荷重走行試験機を用いて行った。本試験機は載荷能力が最大で294kN、荷重走行範囲が床版の中心から1000mm、荷重走行速度が30往復/minである。荷重走行範囲には軌道装置を配置した。本載荷試験では、装置中の載荷ブロックにより300mm×120mmの載荷面積を確保した。これは設計B活荷重の後輪(500mm×200mm)の0.6倍縮尺であり、この面積を採用することにより加速試験を実現した。
【0060】
本載荷試験におけるRC床版の支持条件は、橋軸方向の二辺を単純支持、橋軸直角方向の二辺を横桁による弾性支持とした。横桁の剛性は、輪荷重走行疲労試験において実橋梁に近い挙動を示すことを期待して、床版の挙動が半無限版と同等になるように設定した。RC床版の四隅には、荷重載荷時に発生する床版端部の浮き上がりを防止するために、浮き上がり防止装置を取り付けた。
【0061】
RC床版に対する予備載荷は、137.2kNで50,000回の輪荷重を走行させて行った。床版中央の98kN換算たわみの経時変化を図7に示す。図中には、全断面有効および引張側コンクリート無視時の理論活荷重たわみをHuberの版理論式より求めた結果を示した。活荷重たわみは全断面有効から始まり、引張側無視まで漸増して、引張側コンクリート無視時の理論たわみに対する活荷重たわみ比(たわみ劣化度)が0.99に到達した時点で載荷を終了した。
【0062】
増厚補強を施す直前と直後のRC床版の中央に輪荷重を静的載荷した。図8に示す98kNに換算した活荷重たわみの床版中央線上橋軸方向における分布より、活荷重たわみが補強前後で約56%低減されたことが分かる。この試験結果より、本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強を行うことにより、床版のたわみ量が低減され床版1Bに作用する交通荷重による応力を抑制することができ、その耐久性が向上することが推定できる。
【0063】
(2)輪荷重走行疲労試験
本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強されたRC床版に対して、輪荷重走行疲労試験を実施した。このときの床版中央におけるたわみの経時変化は図9に示すとおりであり、引張側コンクリート無視時の理論たわみを超えると急激にたわみが上昇して押し抜きせん断破壊した。また、RC床版下面のひび割れ発生状況は図10に示すとおりであり、二方向ひび割れが進展して実際の橋梁におけるひび割れ発生状況を再現できた。ひび割れについて定量的な評価をするためにひび割れの長さを計測し、床版下面の面積で除することでひび割れ密度Cdを求めた。ひび割れ密度Cdを測定した結果は図11に示すとおりであり、無補強床版と比較するとほぼ同様のひび割れの増加傾向を辿っている。
【0064】
疲労耐久性を測定した結果、本実施の形態の軟質コンクリートで補強した床版と無補強床版は同様の損傷過程を辿ったと考えられ、輪荷重走行疲労試験によって得られた結果をS−N関係図にプロットした(図12参照)。この試験結果より、本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強を行うことにより、無補強床版と比較して押し抜きせん断耐力および疲労寿命(耐久性)が向上することが確認できた。
【0065】
(試験例2)
次に、上述した本実施の形態の騒音低減効果を確認するために、次のような試験を行った。
試験例2では、上述したコンクリート仕上げ装置10(図1など参照)を使用して敷き均しを行った場合(実施例)と、エンジンを搭載したオフレール式(タイヤ走行式)のフィニッシャ(コンクリート仕上げ装置)を使用して敷き均しを行った場合(比較例)との騒音を、それぞれについて施工箇所の側方で測定した。比較例のフィニッシャは、フェーゲル社製「CFM45001」、定格出力70ps/DIN、定格回転数2,500rpmを使用した。
【0066】
表1に示すように、測定箇所は、施工箇所から側方に5m離れた位置、10mの位置、15mの位置の3箇所とした。その結果、比較例では77〜87dBであるのに対して、実施例では68〜73dBの値となり、実施例が比較例より平均してほぼ10dB程度低減できることが確認された。とくに、施工箇所に近い5mの位置では、実施例と比較例との差が14〜17dBとなり、低減効果が大きいことが確認された。
【0067】
【表1】
【0068】
(試験例3)
次に、上述した本実施の形態の効果を確認するために、次のような試験を行った。
上述した床版1(図1及び図2など参照)に見立てた幅1m×長さ3m×厚さ0.2mのコンクリート版を2基、準備し、その表面をショットブラストにより研掃してモルタル分を取り除き、表面に骨材が見える状態とした。そして、コンクリート版の周囲に幅30mm×高さ150mmの木製の型枠を配置してアンカーにより固定した。
本試験で使用するコンクリートの配合は、表2に示すとおりである。ここで、本実施の形態による配合Aは膨張材を含む本実施の形態のコンクリートであり、比較例による配合Bは膨張材を含まない一般的なコンクリートである。
【0069】
【表2】
【0070】
コンクリートの打設は、上述したコンクリート仕上げ装置10(図1〜図4参照)を用いて行った。本試験で使用するコンクリートは、トラックの荷台にコンクリート材料補給装置およびコンクリート材料混練装置を搭載した移動式コンクリート製造装置を用いて行った。コンクリートの打設終了後、そのコンクリートの表面に養生剤を散布したのちビニルシートで覆って養生を行った。このようにして打設したコンクリートについて、スランプ試験、圧縮強度試験および付着強度試験を行った結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
この試験結果より、次のことがいえる。すなわち、スランプに関しては、膨張材を含む本実施の形態のコンクリートは膨張材を含まない一般的なコンクリートと同程度の値を示しており、コンクリートを打設するに当たっての十分なワーカビリティをもつものと考えられる。圧縮強度および付着強度に関しては、本実施の形態のコンクリートでは一般的なコンクリートと比較して各材齢において大きな値を示しており、膨張材を混入することによりコンクリートの強度が改善されたものと考えられる。
【0073】
なお、表3に示すように、移動式コンクリート製造装置より排出した直後のスランプが約8cmと小さい値となっているが、これはコンクリートの流動性を確保するためにコンクリートに混入した混和剤の効果が発現するまでに多少時間がかかるためである。軟質コンクリートを打設する時点では排出後十分に時間が経過しており、混和剤の効果により軟質コンクリートのスランプ10cm以上が確保されることになる。つまり、本試験の配合のコンクリートでは、排出後10分程度でコンクリートを打設することが好ましい。
【0074】
上述のように本実施の形態による床版補強方法では、軟質コンクリート2に高周波振動を与えて締め固めて、床版1の増厚を薄層に仕上げることができる。そのため、増厚分の死荷重が小さくなり、床版の耐久性が高められて品質の向上を図ることができる。
また、本実施の形態による床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置では、増厚を薄くすることで、スクリードプレート12に高周波バイブレータ13を取り付けた簡単且つ軽量な構造のコンクリート仕上げ装置10を使用することができることから、従来のようなエンジンを搭載した大型のコンクリート仕上げ装置を使用する必要がなくなり、床版補強工事に伴って生じる騒音や振動を小さくすることができ、例えば都市内高速道路などの都心部のような施工現場でも採用することができる。
【0075】
以上、本発明による床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では水硬性組成物として、カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む材料としているが、これに限定されることはなく、例えば、3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含む速硬性セメントを採用することができる。
【0076】
そして、コンクリート仕上げ装置10の大きさ、形状、高周波バイブレータ13の取り付け位置、数量、牽引用ウインチ14の取り付け位置などの具体的な構成その他は、実施すべき床版の施工条件を考慮して最適に設計すればよい。
また、本実施の形態では型枠23を軟質コンクリートの仕上がり高さ(図2に示す符号2a)の基準として用いたが、これに限定されるものではない。例えば、コンクリート仕上げ装置10の本体11の外側底面11aの両端部に、仕上げ装置10の進行方向と平行な長尺状の板部材(エンドプレート)を鉛直に設けて、この板部材の高さをコンクリートの仕上がり厚さとなるようにし、この板部材の下端部を施工基面となる既設床版面に当接させながら仕上げ装置10を前進させて軟質コンクリート2を打設するようにしてもよい。
【0077】
また、左右一対の牽引用ウインチ14、14を常時は連動して回転するようにしておき、必要に応じて左右別々に回転するように切り替えられるような構成とすることもできる。また、ウインチ14は人力で回転させるものに限定されるものではなく、たとえば電動モータなどの騒音や振動の少ない動力源により駆動する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態による床版補強方法の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す施工中のコンクリート仕上げ装置の正面図である。
【図3】コンクリート仕上げ装置の平面図である。
【図4】(a)は図3に示すA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図である。
【図5】移動式コンクリート製造装置を示す側面図である。
【図6】(a)〜(d)は床版補強の施工工程を示す図である。
【図7】試験例1の結果を示すグラフである。
【図8】試験例1の結果を示すグラフである。
【図9】試験例1の結果を示すグラフである。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例1の結果を示すグラフである。
【図12】試験例1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1 床版
2 軟質コンクリート
3 移動式コンクリート製造装置
10 コンクリート仕上げ装置
11 本体
11a 外側底面
12 スクリードプレート(スクリード)
13 高周波バイブレータ
14 牽引用ウインチ
23 型枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼橋などの橋梁に適用されるコンクリート床版が損傷した場合の床版補強方法として、床版上面増厚工法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この工法は、既設コンクリート床版の上面から数cmの深さまで切削し、その切削面をスチールショットによりブラスト処理した後、スチールファイバーなどの鋼繊維を混入した補強コンクリートを舗設して、新旧コンクリートを一体化させて増厚を行うことにより床版を補強する工法である。
【特許文献1】特開平9−59929号公報
【特許文献2】特開平8−333816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の床版上面増厚工法では、以下のような問題があった。
すなわち、収縮ひずみによるひび割れの発生を防ぐためにコンクリートに膨張材を添加していたが、その効果は十分ではなく、完全に収縮ひずみをなくすことはできず、コンクリートにひび割れが生じるおそれがあり、床版のコンクリートの品質をより向上させることが求められており、その点で改良の余地が残されていた。
また、コンクリートを舗設するためにエンジンを備えたコンクリート仕上げ装置を使用しているために、舗設時にコンクリート仕上げ装置から発生する振動や騒音が大きく、環境保全の観点から例えば都市内高速道路などの都心部にある床版には適用し難いといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、従来の床版上面増厚工法と比較して薄い増厚でありながらも、床版の耐久性を高めて品質の向上を図ることができる床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、施工に伴って生じる振動や騒音を小さくするようにした床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る床版補強方法では、既設の床版の表面を研掃する研掃工程と、研掃した床版の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリートを被覆施工する施工工程と、スクリードによって高周波振動を与えて軟質コンクリートを締め固めて既設の床版に一体化させる締め固め工程とを備えたことを特徴としている。
本発明では、スランプが10cm以上の軟質コンクリートを使用するため、薄層に敷き均した場合でも高周波振動を与えながら締め固めることで十分な強度と平坦性を得られるので、床版の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。そして、床版を研掃することで床版上面の劣化部分を除去するとともに床版面を粗面とすることができるので、旧コンクリートと新コンクリートとの付着強度を高めることができる。しかも、増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版の耐久性を向上させることができる。
【0006】
また、本発明に係る床版補強方法では、軟質コンクリートを締め固めた後の床版の厚さは、研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲で増大されていることが好ましい。
本発明では、軟質コンクリートの増厚量を研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲とすることで、その上にアスファルト舗装を仕上げた状態で、既設舗装上面との段差を小さくすることができることから、仕上げ作業後に段差をすり付ける必要がなく、そのまま車両を通行させることができるので、工事に伴う交通規制の時間を短縮することができる。
【0007】
また、本発明に係る床版補強方法では、スクリードの高周波振動数は100〜400Hzとすることが好ましい。
本発明では、高周波バイブレータ等を使用してスクリードを100〜400Hzの振動数で振動させて軟質コンクリートを締め固めることで、振動や騒音を抑制しつつ、所定強度を確保して薄層に仕上げることができる。
【0008】
また、本発明に係る床版補強方法では、スクリードは、床版上の移動速度が20〜100cm/minであることが好ましい。
本発明では、スクリードを20〜100cm/minの速度で移動させて軟質コンクリートを締め固めることで、仕上がり品質の低下を防ぐことができるうえ、施工速度を確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る床版補強方法では、軟質コンクリートは水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリートの硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現することが好ましい。
本発明では、短時間で交通荷重に耐え得るコンクリート強度が得られることから、床版補強工事の施工速度が上がり、施工効率を向上させることができ、工期を短縮できるうえ、交通規制時間を短くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る床版補強方法では、膨張性混和材は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92重量%であるクリンカ組成物および石膏を含むことが好ましい。
本発明では、コンクリートに含まれる膨張性混和材によりコンクリートの収縮が抑制されて自己収縮や乾燥収縮によるコンクリートの収縮ひずみが低減されるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することを防止できる。また、膨張性混和材に含まれる石膏とカルシウムアルミネートとの反応によりエトリンガイトが生成され、このエトリンガイトによりコンクリートの収縮を抑制することができるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することをさらに効果的に防止できる。
【0011】
また、本発明に係る床版補強方法では、水硬性組成物は、(1)カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む、または(2)3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含むことが好ましい。
本発明では、水硬性組成物に含まれるカルシウムサルホアルミネートによりコンクリートの強度が早期に発現されるので、床版上にコンクリートを打設した後の養生時間を短縮することができる。また、炭酸リチウムによりコンクリートの収縮ひずみ量を低減することができるので、床版上に打設したコンクリートにひび割れが発生することをさらに効果的に防止できる。
【0012】
また、本発明に係る床版補強方法では、既設の床版はコンクリート床版または鋼床版であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るコンクリート仕上げ装置では、上記床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置であって、本体と、本体に支持されていてコンクリートを敷き均して締め固めるスクリードと、スクリードに高周波振動を付与する高周波バイブレータと、床版に対して本体及びスクリードを移動させる牽引用ウインチとを備えたことを特徴としている。
本発明では、スクリードプレートへの振動付与に高周波バイブレータを用いるとともにコンクリート仕上げ装置の動力源としてエンジンではなくて手動又は電動で操作する牽引用ウインチを用いることができるので、コンクリート打設に伴う振動および騒音の発生を抑制することができる。そして、スランプが10cm以上の軟質コンクリートを使用し、薄層に敷き均して高周波バイブレータによって振動を与えながら締め固めることで、床版の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。このように増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版の耐久性を向上させることができる。また、動力源にエンジンを使用しない小型、且つ軽量のコンクリート仕上げ装置となることから、クレーンなどの吊上げ用機械を使わずに人力でコンクリート仕上げ装置を施工箇所に載置することができ、施工幅員が狭い箇所であっても容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床版補強方法によれば、軟質コンクリートに高周波振動を与えて締め固めて、床版の増厚を薄層に仕上げることができる。そのため、増厚分の死荷重が小さくなり、床版の耐久性が高められて品質の向上を図ることができる。
また、本発明の床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置によれば、増厚を薄くすることで、スクリードに高周波バイブレータを取り付けた簡単且つ軽量な構造のコンクリート仕上げ装置を使用することができることから、従来のようなエンジンを搭載した大型のコンクリート仕上げ装置を使用する必要がなくなり、床版補強工事に伴って生じる騒音や振動を小さくすることができ、例えば都市内高速道路などの都心部のような施工現場でも採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置について、図1乃至図12に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による床版補強方法の概要を示す斜視図、図2は図1に示す施工中のコンクリート仕上げ装置の正面図、図3はコンクリート仕上げ装置の平面図、図4(a)は図3に示すA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図、図5は移動式コンクリート製造装置を示す側面図、図6(a)〜(d)は床版補強の施工工程を示す図、図7〜図12は試験例1の結果を示すグラフ等である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態による床版補強方法は、橋梁や高速道路などに使用される床版1上に、移動式コンクリート製造装置3(図5参照)により製造したコンクリート(以下、軟質コンクリート2とする)をコンクリート仕上げ装置10により敷き均して締め固める方法である。具体的な床版補強方法は、既設の床版1の表面を研掃し、研掃した床版1の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工し、スクリード(後述するスクリードプレート12)によって高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させる方法である。
【0017】
ここで、本実施の形態では、軟質コンクリート2の材料として、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材および繊維が用いられる。なお、本実施の形態の適用対象となる床版1は、橋面舗装の基盤となるものであって、コンクリート床版および鋼床版などとされる。
【0018】
先ず、コンクリート仕上げ装置10の構成について、図面に基づいて説明する。
図1乃至図4に示すように、コンクリート仕上げ装置10は、本体11と、本体11に支持されていて軟質コンクリート2を敷き均して締め固めるためのスクリードプレート12(スクリード)と、スクリードプレート12に振動を付与するための高周波バイブレータ13と、本体11に設けられた牽引用ウインチ14、14とから概略構成されている。
【0019】
本体11は、前後左右および底面が板部材で囲われるとともに、上面が開口した略直方体形状の箱状部材により構成されている。本体11の箱状部材の中にはカウンタウエイト(図示省略)などのおもりが配置されており、コンクリート打設時の反力を確保するようにしている。本体11の前後方向(進行方向)の長さは、本体前方に設けたスクリードプレート12による軟質コンクリート2への振動付与により軟質コンクリート2の仕上がり精度に影響が出ることのないように十分な長さとすることが好ましく、例えば概ね50〜60cm以上である。本体11の左右端部の前面内側には、断面L字状の第1柱状部材15が立設されている。本体11の外側底面11aは、打設された軟質コンクリート2を平坦に仕上げるための部分であり、平坦かつ平滑な面に形成されている。
【0020】
スクリードプレート12は、前後左右および底面が板部材で囲われていて上面が開口してなり、進行方向に直交する方向に長手方向を向けた略直方体形状の箱状部材により構成されている。スクリードプレート12の内側底面左右にはそれぞれ一対のアングルからなる基台16が設けられている。基台16における一対のアングルどうしは、防振ゴム19を介して接続されている。この防振ゴム19に用いる素材としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどの適宜のゴムを用いることができる。この防振ゴム19はスクリードプレート12に付与された振動が本体11に伝わりにくくする一方で、高周波バイブレータ13による荷重が軟質コンクリート2によく伝達させる作用を有することから、スクリードプレート12による押さえの効果と相まって、軟質コンクリート2を平坦かつ十分に締め固めることができ、仕上げ精度を良好にすることができるようになっている。
【0021】
そして、基台16の上面に第2柱状部材17がボルト止めで立設され、第1柱状部材15と第2柱状部材17とは、それぞれの上部同士が接続部材18によって固定されている。この接続部材18の一端部18aは、第1柱状部材15の上部に万力或いはボルトなどによってスクリードプレート12を本体11に対して上下方向に移動可能に取り付けられてなり、軟質コンクリート2の仕上がり高さに合わせてその高さ位置を調整することができる。通常、軟質コンクリート2の仕上がり厚さ寸法が40mm程度であれば、スクリードプレート12の外側底面12aの高さが本体11の外側底面11aの高さより略10mm程度上方位置となるように調整する。
【0022】
また、スクリードプレート12の外側底面12aの前部は、コンクリート仕上げ装置10の進行方向前側(図1、3、4(b)に示す矢印E方向)が高く後側が低くなるテーパ面12b(図4(b)参照)が形成されており、軟質コンクリート2打設時の材料が本体11の外側底面11a側に進入しやすくなっている。
【0023】
図3、図4(a)及び(b)に示すように、高周波バイブレータ13は、スクリードプレート12の箱状部材の内側底面中央部に取り付けられている。この高周波バイブレータ13を駆動することによりスクリードプレート12に振動を付与するようになっている。なお、本実施の形態では、振動数として100〜400Hzが好ましく、本高周波バイブレータ13では100〜240Hzの範囲で調節可能なものを採用している。
【0024】
また、図1及び図2に示すように、本体11の左右板部材の外側にはそれぞれL字状のブラケット20がボルトにより取り付けられており、各ブラケット20の上面には人力で巻き取り可能な牽引用ウインチ14が設けられている。すなわち、本コンクリート仕上げ装置10は、ウインチ14、14のそれぞれに巻き掛けられたワイヤロープ21の端部21aを構造物(ここでは既設床版1上のアンカー22)などに固定しておき、ウインチ14を人力で左右バランスよく回転させてワイヤロープ21を巻き取ることにより、コンクリート仕上げ装置10が上面を軟質コンクリート2の仕上がり高さに一致するように設けられた型枠23、23上を移動するように構成されている。ここで、ウインチ14の巻き取り速度、すなわち床版1上のスクリードプレート12の移動速度は、20〜100cm/minが好ましい(詳しくは後述する)。
【0025】
本実施の形態の軟質コンクリート2は、水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、水硬性組成物は軟質コンクリート2の硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する材料であり、上述したように打設時のスランプが10cm以上となる材料とである。この軟質コンクリート2の使用材料について、以下で具体的に説明する。
【0026】
(a)水硬性組成物
本実施の形態における図1に示す軟質コンクリート2に使用する水硬性組成物としては、カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)および無水石膏を含むカルシウムサルホアルミネート組成物と、炭酸リチウムとを含むものが好ましい。カルシウムサルホアルミネート組成物は、カルシウムサルホアルミネート3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むものであり、好ましくはカルシウムサルホアルミネート20〜40質量%および無水石膏5〜15質量%を含むものである。水硬性組成物における炭酸リチウムの配合量はカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して0.1〜3.0質量部であり、好ましくは0.5〜1.5質量部である。水硬性組成物における炭酸リチウムの配合量が0.1質量部未満であると軟質コンクリートの初期強度が十分に発現しなくなり、3.0質量部を超えると軟質コンクリートの収縮ひずみの低減効果に大きな変化が見られず製造コストが割高になってしまう。
【0027】
水硬性組成物に含まれる炭酸リチウムの比表面積(ブレーン比表面積)は、1000〜4000cm2/gであり、好ましくは2000〜3000cm2/gである。比表面積が1000cm2/g未満であると炭酸リチウムの粒子が粗くなるのでコンクリートに混練するときに炭酸リチウムが均質に分散しにくくなり、軟質コンクリートの強度が低下してしまう。比表面積が4000cm2/gを超えると、収縮ひずみの低減効果が十分には得られなくなってしまう。
【0028】
(b)骨材
本実施の形態の軟質コンクリートに使用する骨材としては、細骨材および粗骨材がある。細骨材としては、川砂、山砂および海砂などの天然砂と、砕砂および高炉スラグ細骨材などの人工砂を用いることができる。細骨材の粒径は、5mm以下であることが好ましい。軟質コンクリートにおける細骨材の配合量は、水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0〜500質量部であることが好ましく、100〜200質量部であることがより好ましい。粗骨材としては、砂利および砕石などを用いることができる。粗骨材の粒径は、5〜25mmであることが好ましく、特に5〜13mmであることが好ましい。軟質コンクリートにおける粗骨材の配合量は、コンクリート硬化後の機械的強度や生コンクリートの作業性などの観点から、水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0〜500質量部であることが好ましく、100〜200質量部であることがより好ましい。
【0029】
(c)膨張性混和材
本実施の形態の軟質コンクリートに使用する膨張性混和材としては、クリンカ組成物および石膏を含むものが好ましい。クリンカ組成物は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92質量%のものである。膨張性混和材中のクリンカ組成物に含まれる間隙物質は、セメントクリンカ鉱物中のエーライト(3CaO・SiO2)やビーライト(2CaO・SiO2)の間を埋める鉱物に類するものである。このような間隙物質としては、2CaO・Fe2O3などのカルシウムフェライト鉱物、3CaO・Al2O3などのカルシウムアルミネート鉱物、6CaO・Al2O3・Fe2O3、4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3などのカルシウムアルミノフェライト鉱物などが挙げられる。
【0030】
上述したようにクリンカ組成物中のCaOの含有割合は、クリンカ組成物の全質量に対して50〜92質量%である。CaOの含有割合が50質量%未満であると軟質コンクリートの早期強度発現が困難となるおそれがあり、92質量%を超えると相対的に間隙物質の含有量が減少して軟質コンクリートの収縮を低減することが困難となるおそれがある。
【0031】
膨張性混和材には、前記クリンカ組成物とともに石膏が含まれている。この石膏はカルシウムアルミネートと反応してエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を生成するため、これにより軟質コンクリートの収縮を抑制することができるとともに軟質コンクリートの初期強度(簡易蒸気養生時の脱型強度)を高めることができる。膨張性混和材における石膏の配合量は、クリンカ組成物100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。膨張性混和材に生石灰が含まれる場合の石膏の配合量は、クリンカ組成物と生石灰との合計量100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。石膏の配合量が5質量部未満であると軟質コンクリートの収縮を低減することが困難であり早期に強度が発現しないおそれがあり、50質量部を超えると軟質コンクリートに膨張ひび割れが生じるおそれがある。
【0032】
膨張性混和材は、さらに生石灰を含むことが好ましい。生石灰は水和反応に伴い膨張および発熱するため、軟質コンクリートの収縮をさらに抑制することができるとともに、膨張性混和材全体の発熱量が高まり軟質コンクリートの早期強度発現性をさらに向上させることができる。膨張性混和材に生石灰を含む場合の生石灰の含有量は、前記クリンカ組成物と生石灰との合計質量の80質量%以下であることが好ましい。生石灰の含有量が80質量%を超えると、水和反応による軟質コンクリートの膨張量が増大しすぎてしまうおそれがある。
【0033】
(d)繊維
本実施の形態の軟質コンクリートに含まれる繊維は、金属繊維または有機繊維である。これらの繊維が含まれることにより、膨張性混和材により膨張した軟質コンクリートを拘束して軟質コンクリートの収縮を防止することができるとともに、軟質コンクリートの膨張を制御して軟質コンクリートが膨張しすぎないようにすることができる。金属繊維としては、鋼繊維、アモルファス繊維、ステンレス繊維などを挙げることができるが、これらのうち軟質コンクリートをより効果的に拘束することができる鋼繊維を使用することが好ましい。有機繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維などを挙げることができるが、これらのうち軟質コンクリートをより効果的に拘束することができるビニロン繊維を使用することが好ましい。
【0034】
金属繊維または有機繊維の配合量は、軟質コンクリートの体積に対して0.7〜2.0体積%であることが好ましい。これらの繊維の配合量が0.7体積%未満であると軟質コンクリートの強度が低下するおそれがあり、2.0体積%を超えると水硬性組成物との混練作業のワーカビリティが低下するおそれがある。
金属繊維または有機繊維の繊維長は、15〜60mmであることが好ましく、30mm程度であることがより好ましい。繊維長が15mm未満であると軟質コンクリートを効果的に拘束できないおそれがあり、繊維長が60mmを超えると水硬性組成物と金属繊維または有機繊維とを混練する際にファイバーボールが生じやすくなるおそれがある。
金属繊維または有機繊維の直径は、0.62〜0.90mmであることが好ましい。直径が0.62mm未満であると金属繊維または有機繊維の強度が不足してこれらの繊維が張力を受けたときに切れてしまうおそれがあり、直径が0.90mmを超えると軟質コンクリート中の金属繊維または有機繊維の本数が相対的に少なくなるため、いずれの場合も軟質コンクリートを効果的に拘束できないおそれがある。
【0035】
(e)凝結遅延剤
本実施の形態の軟質コンクリートは、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材との合計100質量部に対して、クエン酸換算で0.5〜3.0質量部のクエン酸もしくはその塩、酒石酸換算で0.05〜1.5質量部の酒石酸もしくはその塩および/またはヘプトン酸換算で0.05〜1.5質量部のヘプトン酸もしくはその塩をさらに含んでいることが好ましい。
【0036】
本実施の形態の軟質コンクリートの混練方法としては、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材とをあらかじめ混合しておきこれに水を加えて混練する方法、および前記水硬性組成物に水を加えて混練しておきこれに前記膨張性混和材を添加してさらに混練する方法がある。本発明においては凝結遅延剤としてクエン酸(クエン酸塩)、酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)を添加することが好ましい。特に、酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)はクエン酸と同様に凝結遅延作用を有しているが、水硬性組成物と膨張性混和材と酒石酸(酒石酸塩)および/またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)とをあらかじめ混合しておきその後に水を添加したとしても、エトリンガイトが急激に生成することはなく軟質コンクリートの急結を防止することができる。これにより、十分な可使時間を確保することができるとともに膨張性混和材を軟質コンクリートに均一に混和させることができるため、より効果的に軟質コンクリートの収縮ひずみを抑制することができる。
【0037】
水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対する酒石酸(酒石酸塩)、またはヘプトン酸(ヘプトン酸塩)の配合量が酒石酸換算またはヘプトン酸換算で0.05質量部未満であると、軟質コンクリートの可使時間を十分に確保することができないおそれがある。配合量が1.5質量部を超えると、凝結不良を起こして軟質コンクリートの強度が十分に発現しなかったり、場合によっては硬化しなくなったりするおそれがある。
酒石酸(酒石酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.15〜1.2質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが特に好ましい。ヘプトン酸(ヘプトン酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.2〜1.2質量部であることがより好ましく、0.25〜1.0質量部であることが特に好ましい。
【0038】
本実施の形態の軟質コンクリートは、前記水硬性組成物と前記膨張性混和材との合計100質量部に対して、ホウ酸換算で0.01〜0.3質量部のホウ酸またはその塩を含むものであってもよい。軟質コンクリートに前記範囲内でホウ酸を含ませることにより、軟質コンクリート硬化時の水和熱を低減することができ軟質コンクリートの練り上がり温度を低下させることができるので、夏期などにおける高温環境下であっても容易に軟質コンクリートの出荷および施工を行うことができる。
【0039】
水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対するホウ酸(ホウ酸塩)の配合量がホウ酸換算で0.01質量部未満であると、軟質コンクリート硬化時の水和熱を効果的に低減することができないおそれがあり、0.3質量部を超えると、軟質コンクリートの強度が低下したり凝結遅延が発生したりするおそれがある。ホウ酸(ホウ酸塩)の配合量は、前記水硬性組成物と膨張性混和材との合計100質量部に対して0.05〜0.2質量部であることがより好ましく、0.1〜0.15質量部であることが特に好ましい。
【0040】
次に、上述した軟質コンクリートの製造に用いられる移動式コンクリート製造装置について、図面に基づいて説明する。
図5に示すように、移動式コンクリート製造装置3は、コンクリート材料補給装置30およびコンクリート材料混練装置40からなり、それぞれ車両に搭載されている。
【0041】
コンクリート材料補給装置30は、水硬性組成物を貯蔵する第1容器31と、第1容器31から水硬性組成物を取り出してコンクリート材料混練装置40へ搬送する第1フィーダ32と、骨材を貯蔵する第2容器33と、第2容器33から骨材を取り出してコンクリート材料混練装置40へ搬送する第2フィーダ34と、第1容器31から取り出された水硬性組成物をコンクリート材料混練装置40へ搬送してこの水硬性組成物の搬送量を測定する第1計量装置35と、第2容器33から取り出された骨材をコンクリート材料混練装置40へ搬送してこの骨材の搬送量を測定する第2計量装置36とを備えている。
【0042】
コンクリート材料混練装置40は、コンクリート材料補給装置30から搬送された水硬性組成物を受け入れてこの水硬性組成物の受け入れ量を測定する第3容器41と、第3容器41から水硬性組成物を取り出す第3フィーダ42と、コンクリート材料補給装置30から搬送された骨材を受け入れてこの骨材の受け入れ量を測定する第4容器43と、第4容器43から骨材を取り出す第4フィーダ44と、供給された水を受け入れてこの水の受け入れ量を測定する第5容器45と、第3フィーダ42が第3容器41から取り出した水硬性組成物と第4フィーダ44が第4容器43から取り出した骨材と第5容器45から供給された水とを受け入れて混練する第6容器46と、第6容器46の下側に配置されてこの第6容器46で得られた生コンクリートを排出する第5フィーダ47とを備えている。
なお、これらのコンクリート材料補給装置30およびコンクリート材料混練装置40は、図5のようにそれぞれ別個の車両に搭載してもよいし、両装置を1台の車両にまとめて搭載してもよい。
【0043】
次に、本実施の形態のコンクリート仕上げ装置10を用いた軟質コンクリート2の施工手順、すなわち床版補強方法について、図6などを用いて具体的に説明する。
ここでは、コンクリート床版に適用する場合であって、例えば1日の施工量は施工幅員3.5m×施工延長30m程度とする。
【0044】
先ず、図6(a)に示すように、既設の橋面舗装(アスファルト混合物層4)を図示しない路面切削機により切削して除去する。このとき、既設コンクリート床版1Aの損傷を避けかつアスファルト混合物層4を完全に除去するために、2層に分けて切削作業を行う。次に、コンクリート床版1A上のレイタンスなどの新旧コンクリートの付着に支障となる部分を路面切削機により約10mmの深さまで切削して除去する。図6(a)において、符号1aの二点鎖線が切削前の位置、符号1bの実線が切削後の位置を示している。
その後、コンクリート床版1Aの表面をショットブラストにより研掃してモルタル分を取り除いて、床版面に骨材が見える状態とする工程を行う(研掃工程)。このときの鋼球(スチールショット)の投射密度は、150kg/cm2程度とする。
【0045】
続いて、図6(b)及び(c)に示すように、研掃したコンクリート床版1Aの表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリート2を被覆施工する(施工工程)。具体的には、図6(b)に示すように、軟質コンクリート2を打設する領域の周囲に木製などの型枠23を設けて、この型枠23の上面23aが軟質コンクリート2の仕上がり高さ(符号2aの位置)と一致するように高さを調整する(図2参照)。
【0046】
そして、図6(c)及び図1に示すように、施工起点部の型枠23上にコンクリート仕上げ装置10を載置して、コンクリート仕上げ装置10の両端部に設けた牽引用ウインチ14、14からワイヤロープ21を巻き出し、その端部21aを既設コンクリート床版1A上に打ち込んだアンカー22に固定する。そして、施工現場内で移動式コンクリート製造装置3(図5参照)を用いて製造した軟質コンクリート2を一輪車などで運搬して、コンクリート仕上げ装置10の進行方向前方の既設コンクリート床版1A上に供給してレーキなどで押し拡げて敷き均す。
【0047】
続いて、図6(c)に示すように、スクリードプレート12によって高周波振動を与えて軟質コンクリート2を締め固めて既設の床版1に一体化させる工程を行う(締め固め工程)。具体的には、図1に示すように、コンクリート仕上げ装置10の高周波バイブレータ13を駆動した後、牽引用ウインチ14、14を人力で左右バランスよく回転させてワイヤロープ21、21を巻き取って仕上げ装置10を型枠23に沿って前進(図1に示す矢印E方向に移動)させ、軟質コンクリート2がスクリードプレート12により締め固められながら後方へ送られ、本体11の外側底面11aにより敷き均されて平坦に仕上げられ、所定の厚さで軟質コンクリート2が増厚されることになる。軟質コンクリート2の打設終了後、ただちに被膜養生剤を散布して、養生マットで全面を覆って養生する。
【0048】
次いで、軟質コンクリート2の硬化後、コンクリート内部への水の浸透を防ぐために、防水層の施工を行う。防水層としてはシート系防水層と塗膜系防水層があり、防水性およびアスファルト混合物層とコンクリートとの接着性がよいものを使用する。
そして、図6(d)に示すように、防水層の施工後には、施工領域周辺の既設アスファルト混合物層4の高さと一致するようにしてアスファルト混合物層4を敷設して作業が完了となる。
【0049】
このように、本床版補強方法では、スランプが10cm以上の軟質コンクリート2を使用するため、薄層に敷き均して高周波バイブレータ13によってスクリードプレート12に100〜400Hzの高周波振動を与えながら締め固めることで、床版1の増厚を例えば40mm程度と薄くすることができる。なお、振動数が100Hz未満の場合には、材料が大きく波打ってしまい軟質コンクリート2の締固めが不十分となり、所定のコンクリート強度が得られないことが想定される。さらに、振動数が400Hzを越える場合には、騒音と振動が大きくなるといった不具合が生じることになる。
【0050】
そして、床版1を研掃することで床版上面の劣化部分を除去するとともに床版面を粗面とすることができるので、旧コンクリートと新コンクリートとの付着強度を高めることができる。しかも、増厚分が薄層となることから、死荷重が小さくなり床版1の耐久性を向上させることができる。
【0051】
そして、スクリードプレート12(コンクリート仕上げ装置10)を20〜100cm/minの移動速度とすることで、仕上がり品質の低下を防ぐことができるうえ、施工速度を確保することができる。なお、移動速度が20cm/min未満では、軟質コンクリート2の品質には問題ないが、施工速度が遅くなることから工期に影響を及ぼすことになる。また、施工速度が100cm/minを越えると、コンクリートの締固めが十分でなく、仕上がり面が悪くなるうえ、強度不足となって品質が低下することになる。
【0052】
ここで、軟質コンクリート2を締め固めた後の床版1の厚さは、研掃前の床版1の厚さから10〜50mmの範囲で増大されるように設定することが好ましい。このように施工することで、増厚された軟質コンクリート2の上にアスファルト舗装を仕上げた状態で、既設舗装上面との段差を小さくすることができることから、仕上げ作業後に段差をすり付ける必要がなく、そのまま車両を通行させることができるので、工事に伴う交通規制の時間を短縮することができる。つまり、増大される厚さが10mm未満の場合には、既設舗装上面との段差が大きくなるとともに、仕上がった軟質コンクリート2が薄すぎて交通荷重に耐え得る強度を確保できないおそれがある。また、増大される厚さが50mmを超える場合には、既設舗装上面との段差が大きくなるとともに、死荷重も大きくなり例えば橋梁が床版の重さに耐えられないおそれがある。
【0053】
また、スクリードプレート12への振動付与に高周波バイブレータ13を用いるとともにコンクリート仕上げ装置10の動力源としてエンジンではなくて人力で操作する牽引用ウインチ13を用いるので、コンクリート打設に伴う振動および騒音の発生を抑制することができる。そのため、工事箇所の周辺住民に対する環境保全に対応することができ、都市部の工事や夜間の工事に本床版補強方法を採用することができる。
また、コンクリート仕上げ装置10が動力源にエンジンを使用しない小型、且つ軽量な構造となることから、クレーンなどの吊上げ用機械を使わずに人力でコンクリート仕上げ装置を施工箇所に載置することができ、施工幅員が狭い箇所であっても容易に施工することができる。
【0054】
さらに、本施工方法では、スクリードプレート12と本体11との間の適切な位置に防振ゴム19が取り付けられているので、高周波バイブレータ13による振動が本体11に伝わりにくくなるとともにスクリードプレート12には効率よく伝わり、少ない数の高周波バイブレータ13でも十分に軟質コンクリート2を平坦かつ十分に締め固めることができ、高周波バイブレータ13の数が少ないことにより騒音の発生を抑制することができるという利点もある。
【0055】
次に、本実施の形態の床版補強方法を鋼床版に適用する場合の施工手順について説明するが、基本的にはコンクリート床版に適用する場合と同様の施工方法である。
先ず、既設の橋面舗装(表層のアスファルト混合物層および基層のグースアスファルト混合物層)を路面切削機により除去する。次に、基層の下の防水層を平爪バケットを装着したパワーショベルにより剥ぎ取る。その後、切削後の鋼床版面をショットブラストにより研掃して、残留する防水層を取り除く。このときのスチールショットの投射密度は、150kg/cm2程度とする。研掃作業の終了後、鋼床版面への水の浸透を防ぐために、防水層の施工を行う。防水層としてはシート系防水層と塗膜系防水層があり、防水性およびアスファルト混合物層と鋼床版との接着性がよいものを使用する。
【0056】
次いで、図1に示すように、軟質コンクリート2の打設箇所に型枠23を設置して、この型枠23の上面23aが軟質コンクリート2の仕上がり高さとなるように高さを調整する。そして、施工起点部の型枠23上にコンクリート仕上げ装置10を載置して、仕上げ装置10に設けた牽引用ウインチ14のワイヤロープ21を巻き出して、その端部21aを鋼床版上に溶接した鉄棒(アンカー22に相当)に固定する。施工現場内で移動式コンクリート製造装置3(図5参照)を用いて製造した軟質コンクリート2を一輪車などで運搬して、仕上げ装置10前方の既設鋼床版上に供給し、これを仕上げ装置10により所定の厚さおよび幅員となるように敷き均して平坦に仕上げる。軟質コンクリート2の打設終了後、ただちに被膜養生剤を散布して、養生マットで全面を覆って養生する。
【0057】
(試験例1)
次に、上述した本実施の形態の増厚補強の効果を確認するために、次のような試験を行った。
本試験では、あらかじめ損傷を与えたRC床版の上面に膨張材を含む本実施の形態の軟質コンクリート2を用いて増厚補強を行い、補強前後の静的載荷試験および輪荷重走行疲労試験を実施することにより、補強効果および疲労損傷の程度を確認した。
【0058】
(1)静的載荷試験
本試験で使用するRC床版は、橋軸方向長さが3000mm、橋軸直角方向幅が2000mm、中央部の床版厚が160mm、試験時の床版支間が1800mmである。主鉄筋、配力鉄筋にはそれぞれD16、D13のSD295A鉄筋を使用し、床版内における鉄筋の配置間隔は、引張側主鉄筋が150mm、圧縮側主鉄筋が300mm、引張側配力鉄筋が125mm、圧縮側配力鉄筋が250mmとした。このRC床版に対して予備載荷を行いあらかじめ損傷を与え、これに本発明の軟質コンクリートを用いて増厚補強(増厚量40mm)を行い、その後に静的載荷試験を行った。
【0059】
静的載荷試験は、クランク式輪荷重走行試験機を用いて行った。本試験機は載荷能力が最大で294kN、荷重走行範囲が床版の中心から1000mm、荷重走行速度が30往復/minである。荷重走行範囲には軌道装置を配置した。本載荷試験では、装置中の載荷ブロックにより300mm×120mmの載荷面積を確保した。これは設計B活荷重の後輪(500mm×200mm)の0.6倍縮尺であり、この面積を採用することにより加速試験を実現した。
【0060】
本載荷試験におけるRC床版の支持条件は、橋軸方向の二辺を単純支持、橋軸直角方向の二辺を横桁による弾性支持とした。横桁の剛性は、輪荷重走行疲労試験において実橋梁に近い挙動を示すことを期待して、床版の挙動が半無限版と同等になるように設定した。RC床版の四隅には、荷重載荷時に発生する床版端部の浮き上がりを防止するために、浮き上がり防止装置を取り付けた。
【0061】
RC床版に対する予備載荷は、137.2kNで50,000回の輪荷重を走行させて行った。床版中央の98kN換算たわみの経時変化を図7に示す。図中には、全断面有効および引張側コンクリート無視時の理論活荷重たわみをHuberの版理論式より求めた結果を示した。活荷重たわみは全断面有効から始まり、引張側無視まで漸増して、引張側コンクリート無視時の理論たわみに対する活荷重たわみ比(たわみ劣化度)が0.99に到達した時点で載荷を終了した。
【0062】
増厚補強を施す直前と直後のRC床版の中央に輪荷重を静的載荷した。図8に示す98kNに換算した活荷重たわみの床版中央線上橋軸方向における分布より、活荷重たわみが補強前後で約56%低減されたことが分かる。この試験結果より、本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強を行うことにより、床版のたわみ量が低減され床版1Bに作用する交通荷重による応力を抑制することができ、その耐久性が向上することが推定できる。
【0063】
(2)輪荷重走行疲労試験
本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強されたRC床版に対して、輪荷重走行疲労試験を実施した。このときの床版中央におけるたわみの経時変化は図9に示すとおりであり、引張側コンクリート無視時の理論たわみを超えると急激にたわみが上昇して押し抜きせん断破壊した。また、RC床版下面のひび割れ発生状況は図10に示すとおりであり、二方向ひび割れが進展して実際の橋梁におけるひび割れ発生状況を再現できた。ひび割れについて定量的な評価をするためにひび割れの長さを計測し、床版下面の面積で除することでひび割れ密度Cdを求めた。ひび割れ密度Cdを測定した結果は図11に示すとおりであり、無補強床版と比較するとほぼ同様のひび割れの増加傾向を辿っている。
【0064】
疲労耐久性を測定した結果、本実施の形態の軟質コンクリートで補強した床版と無補強床版は同様の損傷過程を辿ったと考えられ、輪荷重走行疲労試験によって得られた結果をS−N関係図にプロットした(図12参照)。この試験結果より、本実施の形態の軟質コンクリートを用いて増厚補強を行うことにより、無補強床版と比較して押し抜きせん断耐力および疲労寿命(耐久性)が向上することが確認できた。
【0065】
(試験例2)
次に、上述した本実施の形態の騒音低減効果を確認するために、次のような試験を行った。
試験例2では、上述したコンクリート仕上げ装置10(図1など参照)を使用して敷き均しを行った場合(実施例)と、エンジンを搭載したオフレール式(タイヤ走行式)のフィニッシャ(コンクリート仕上げ装置)を使用して敷き均しを行った場合(比較例)との騒音を、それぞれについて施工箇所の側方で測定した。比較例のフィニッシャは、フェーゲル社製「CFM45001」、定格出力70ps/DIN、定格回転数2,500rpmを使用した。
【0066】
表1に示すように、測定箇所は、施工箇所から側方に5m離れた位置、10mの位置、15mの位置の3箇所とした。その結果、比較例では77〜87dBであるのに対して、実施例では68〜73dBの値となり、実施例が比較例より平均してほぼ10dB程度低減できることが確認された。とくに、施工箇所に近い5mの位置では、実施例と比較例との差が14〜17dBとなり、低減効果が大きいことが確認された。
【0067】
【表1】
【0068】
(試験例3)
次に、上述した本実施の形態の効果を確認するために、次のような試験を行った。
上述した床版1(図1及び図2など参照)に見立てた幅1m×長さ3m×厚さ0.2mのコンクリート版を2基、準備し、その表面をショットブラストにより研掃してモルタル分を取り除き、表面に骨材が見える状態とした。そして、コンクリート版の周囲に幅30mm×高さ150mmの木製の型枠を配置してアンカーにより固定した。
本試験で使用するコンクリートの配合は、表2に示すとおりである。ここで、本実施の形態による配合Aは膨張材を含む本実施の形態のコンクリートであり、比較例による配合Bは膨張材を含まない一般的なコンクリートである。
【0069】
【表2】
【0070】
コンクリートの打設は、上述したコンクリート仕上げ装置10(図1〜図4参照)を用いて行った。本試験で使用するコンクリートは、トラックの荷台にコンクリート材料補給装置およびコンクリート材料混練装置を搭載した移動式コンクリート製造装置を用いて行った。コンクリートの打設終了後、そのコンクリートの表面に養生剤を散布したのちビニルシートで覆って養生を行った。このようにして打設したコンクリートについて、スランプ試験、圧縮強度試験および付着強度試験を行った結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
この試験結果より、次のことがいえる。すなわち、スランプに関しては、膨張材を含む本実施の形態のコンクリートは膨張材を含まない一般的なコンクリートと同程度の値を示しており、コンクリートを打設するに当たっての十分なワーカビリティをもつものと考えられる。圧縮強度および付着強度に関しては、本実施の形態のコンクリートでは一般的なコンクリートと比較して各材齢において大きな値を示しており、膨張材を混入することによりコンクリートの強度が改善されたものと考えられる。
【0073】
なお、表3に示すように、移動式コンクリート製造装置より排出した直後のスランプが約8cmと小さい値となっているが、これはコンクリートの流動性を確保するためにコンクリートに混入した混和剤の効果が発現するまでに多少時間がかかるためである。軟質コンクリートを打設する時点では排出後十分に時間が経過しており、混和剤の効果により軟質コンクリートのスランプ10cm以上が確保されることになる。つまり、本試験の配合のコンクリートでは、排出後10分程度でコンクリートを打設することが好ましい。
【0074】
上述のように本実施の形態による床版補強方法では、軟質コンクリート2に高周波振動を与えて締め固めて、床版1の増厚を薄層に仕上げることができる。そのため、増厚分の死荷重が小さくなり、床版の耐久性が高められて品質の向上を図ることができる。
また、本実施の形態による床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置では、増厚を薄くすることで、スクリードプレート12に高周波バイブレータ13を取り付けた簡単且つ軽量な構造のコンクリート仕上げ装置10を使用することができることから、従来のようなエンジンを搭載した大型のコンクリート仕上げ装置を使用する必要がなくなり、床版補強工事に伴って生じる騒音や振動を小さくすることができ、例えば都市内高速道路などの都心部のような施工現場でも採用することができる。
【0075】
以上、本発明による床版補強方法およびそれに用いられるコンクリート仕上げ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では水硬性組成物として、カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む材料としているが、これに限定されることはなく、例えば、3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含む速硬性セメントを採用することができる。
【0076】
そして、コンクリート仕上げ装置10の大きさ、形状、高周波バイブレータ13の取り付け位置、数量、牽引用ウインチ14の取り付け位置などの具体的な構成その他は、実施すべき床版の施工条件を考慮して最適に設計すればよい。
また、本実施の形態では型枠23を軟質コンクリートの仕上がり高さ(図2に示す符号2a)の基準として用いたが、これに限定されるものではない。例えば、コンクリート仕上げ装置10の本体11の外側底面11aの両端部に、仕上げ装置10の進行方向と平行な長尺状の板部材(エンドプレート)を鉛直に設けて、この板部材の高さをコンクリートの仕上がり厚さとなるようにし、この板部材の下端部を施工基面となる既設床版面に当接させながら仕上げ装置10を前進させて軟質コンクリート2を打設するようにしてもよい。
【0077】
また、左右一対の牽引用ウインチ14、14を常時は連動して回転するようにしておき、必要に応じて左右別々に回転するように切り替えられるような構成とすることもできる。また、ウインチ14は人力で回転させるものに限定されるものではなく、たとえば電動モータなどの騒音や振動の少ない動力源により駆動する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態による床版補強方法の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す施工中のコンクリート仕上げ装置の正面図である。
【図3】コンクリート仕上げ装置の平面図である。
【図4】(a)は図3に示すA−A線断面図、(b)は同じくB−B線断面図である。
【図5】移動式コンクリート製造装置を示す側面図である。
【図6】(a)〜(d)は床版補強の施工工程を示す図である。
【図7】試験例1の結果を示すグラフである。
【図8】試験例1の結果を示すグラフである。
【図9】試験例1の結果を示すグラフである。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例1の結果を示すグラフである。
【図12】試験例1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1 床版
2 軟質コンクリート
3 移動式コンクリート製造装置
10 コンクリート仕上げ装置
11 本体
11a 外側底面
12 スクリードプレート(スクリード)
13 高周波バイブレータ
14 牽引用ウインチ
23 型枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の床版の表面を研掃する研掃工程と、該研掃した床版の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリートを被覆施工する施工工程と、スクリードによって高周波振動を与えて前記軟質コンクリートを締め固めて前記既設の床版に一体化させる締め固め工程とを備えたことを特徴とする床版補強方法。
【請求項2】
前記軟質コンクリートを締め固めた後の前記床版の厚さは、前記研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲で増大されている請求項1に記載の床版補強方法。
【請求項3】
前記スクリードの高周波振動数は100〜400Hzとする請求項1または2に記載の床版補強方法。
【請求項4】
前記スクリードは、前記床版上の移動速度が20〜100cm/minである請求項1乃至3のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項5】
前記軟質コンクリートは水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、前記水硬性組成物は前記軟質コンクリートの硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する請求項1乃至4のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項6】
前記膨張性混和材は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92重量%であるクリンカ組成物および石膏を含む請求項5に記載の床版補強方法。
【請求項7】
前記水硬性組成物は、(1)カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む、または(2)3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含む請求項5または6に記載の床版補強方法。
【請求項8】
前記既設の床版はコンクリート床版または鋼床版である請求項1乃至7のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置であって、本体と、該本体に支持されていてコンクリートを敷き均して締め固める前記スクリードと、該スクリードに高周波振動を付与する高周波バイブレータと、前記床版に対して前記本体及びスクリードを移動させる牽引用ウインチとを備えたことを特徴とするコンクリート仕上げ装置。
【請求項1】
既設の床版の表面を研掃する研掃工程と、該研掃した床版の表面にスランプ10cm以上の軟質コンクリートを被覆施工する施工工程と、スクリードによって高周波振動を与えて前記軟質コンクリートを締め固めて前記既設の床版に一体化させる締め固め工程とを備えたことを特徴とする床版補強方法。
【請求項2】
前記軟質コンクリートを締め固めた後の前記床版の厚さは、前記研掃前の床版の厚さから10〜50mmの範囲で増大されている請求項1に記載の床版補強方法。
【請求項3】
前記スクリードの高周波振動数は100〜400Hzとする請求項1または2に記載の床版補強方法。
【請求項4】
前記スクリードは、前記床版上の移動速度が20〜100cm/minである請求項1乃至3のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項5】
前記軟質コンクリートは水、水硬性組成物、骨材、膨張性混和材及び繊維を含むと共に、前記水硬性組成物は前記軟質コンクリートの硬化速度として施工後2〜3時間で10N/mm2以上の圧縮強度を発現する請求項1乃至4のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項6】
前記膨張性混和材は、3CaO・SiO2−2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、3CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物、2CaO・SiO2−CaO−間隙物質系組成物およびCaO−間隙物質系組成物から選ばれる1種または2種以上の組成物を含み、かつCaOの含有割合が50〜92重量%であるクリンカ組成物および石膏を含む請求項5に記載の床版補強方法。
【請求項7】
前記水硬性組成物は、(1)カルシウムサルホアルミネート(3CaO・3Al2O3・CaSO4)3〜60質量%および無水石膏1〜40質量%を含むカルシウムサルホアルミネート組成物100質量部に対して、比表面積が1000〜4000cm2/gの炭酸リチウム0.1〜3.0質量部を含む、または(2)3CaO・SiO2、11CaO・7Al2O3・CaF、C2S等を含む請求項5または6に記載の床版補強方法。
【請求項8】
前記既設の床版はコンクリート床版または鋼床版である請求項1乃至7のいずれかに記載の床版補強方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された床版補強方法に用いられるコンクリート仕上げ装置であって、本体と、該本体に支持されていてコンクリートを敷き均して締め固める前記スクリードと、該スクリードに高周波振動を付与する高周波バイブレータと、前記床版に対して前記本体及びスクリードを移動させる牽引用ウインチとを備えたことを特徴とするコンクリート仕上げ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−35900(P2009−35900A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200007(P2007−200007)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPOコーポレーション (130)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPOコーポレーション (130)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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