説明

建物における空調システム

【課題】省エネルギーでランニングコストが安い空調システムの一つとして、太陽熱を集熱して空気を暖め、この暖気をダクトにより居室に供給して暖房を行う空調システムがあるが、このような空調システムは、暖房のみを考慮していて、冷房については考慮していない。
【解決手段】そこで本発明では、複数の居室2(2a,2b,2c,…)を有する建物1において、各居室の少なくとも一部の対応する壁3(3a,3b,3c,…)を中空コンクリート壁により構成して、中空コンクリート壁の中空部により各居室を通る空気通路5を構成し、各居室に給湯するヒートポンプ給湯機8を建物の屋上に設置すると共に、屋根に小屋裏空間7を暖めるための太陽熱集熱装置9を設置し、冬期に小屋裏空間内の空気を前記空気通路に供給可能とすると共に、夏期に前記ヒートポンプ給湯機と熱交換した空気を前記空気通路に供給可能とする給気機構10を構成した空調システムを提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は建物における空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】省エネルギーでランニングコストが安い空調システムの一つとして、太陽熱を集熱して空気を暖め、この暖気をダクトにより居室に供給して暖房を行う空調システムがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような空調システムは、暖房のみを考慮していて、冷房については考慮していない。本発明はこのような課題を簡単な構成のシステムにより解決することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために本発明では、複数の居室を有する建物において、各居室の少なくとも一部の対応する壁を中空壁により構成して、中空壁の中空部により各居室を通る空気通路を構成し、各居室に給湯するヒートポンプ給湯機を建物の屋上に設置すると共に、屋根に小屋裏空間を暖めるための太陽熱集熱装置を設置し、冬期に小屋裏空間内の空気を前記空気通路に供給可能とすると共に、夏期に前記ヒートポンプ給湯機と熱交換した空気を前記空気通路に供給可能とする給気機構を構成した建物における空調システムを提案する。
【0005】本発明では、上記構成において、中空壁は、コンクリート壁や、金属等の材質により構成した壁とすることができる。
【0006】本発明によれば、夏期においては、各居室に給湯を行うためのヒートポンプ給湯機を夜間電力を利用して運転し、その際にヒートポンプ給湯機との熱交換により発生する、外気よりも低い温度の冷気を給気機構により中空コンクリート壁に通すことにより、中空コンクリート壁の蓄熱効果により夜だけでなく日中まで穏やかな輻射冷房を行うことができる。また冬期においては、昼間に太陽熱集熱装置により小屋裏空間を暖め、暖められた小屋裏空間の暖気を給気機構により中空コンクリート壁に通すことにより、中空コンクリート壁の蓄熱効果により昼間だけでなく夜間でも穏やかな輻射暖房を行うことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1〜図3は本発明の空調システムを概念的に示すもので、符号1は複数の居室2(2a,2b,2c,…)を有する建物を示すものである。これらの居室2(2a,2b,2c,…)は、少なくとも一部の対応する壁3(3a,3b,3c,…)を中空コンクリート壁により構成しており、この中空コンクリート壁の中空部4により、各室2(2a,2b,2c,…)を通る空気通路5を構成している。符号6は建物1の屋根、7は小屋裏空間であり、建物1の屋上部の小屋屋根6の内部分に、各室に給湯するヒートポンプ給湯機8、即ちセントラルヒートポンプ給湯機を設置すると共に、屋根6には小屋裏空間7を暖めるための太陽熱集熱装置9を設置している。そして小屋裏空間7には、冬期において小屋裏空間7内の空気を前記空気通路5に供給可能とすると共に、夏期においてヒートポンプ給湯機8と熱交換した空気を前記空気通路5に供給可能とする給気機構10を設置している。給気機構10は、ファン11と上記空気通路5を接続するダクト12により構成している。尚、図2ではダクト12と空気通路5とが離れているように描かれているが、適宜の構造において接続されているものである。
【0008】以上の構成において、夏期においては、各室に給湯を行うためのヒートポンプ給湯機8を夜間電力を利用して運転する。通常の空気熱源ヒートポンプ給湯機8の運転においては、ヒートポンプの構成要素である蒸発器と熱交換した空気の温度が低下して、外気の温度25℃より約5℃低い冷気が発生する。例えば夏期の夜間の外気温度に対して約20℃の冷気が発生する。そこで本発明ではヒートポンプ給湯機8と共に給気機構10を運転して、冷気をファン11からダクト12を介して空気通路5に流し、下部に構成した放出部13から外気に放出する。このように空気通路5を流れる冷気は、空気通路5を構成するコンクリート壁から熱を奪うため、各居室2(2a,2b,2c,…)においては、壁3(3a,3b,3c,…)により穏やかな輻射冷房が行われ、就寝中の快適な室内環境がヒートポンプ給湯機8の運転中保たれると共に、コンクリート壁は、冷気により熱を奪われて温度が低下し、冷熱としての蓄熱がなされるので、ヒートポンプ給湯機8を運転停止しても暫くの間は、快適な室内環境が保たれる。
【0009】次に冬期においては、昼間に太陽熱集熱装置9により小屋裏空間7を暖め、暖められた小屋裏空間7の空気を上述と同様に給気機構10により空気通路5に流す。このように空気通路5を流れる暖気は、空気通路5を構成するコンクリート壁に熱を与えるため、各居室2(2a,2b,2c,…)において、壁3(3a,3b,3c,…)により穏やかな輻射暖房が行われる。この場合にも、コンクリート壁には蓄熱がなされるため、太陽熱集熱装置9により太陽熱が集熱されなくなっても暫くの間は、輻射暖房が継続する。冬期において、ヒートポンプ給湯機8の運転により発生する冷気は、適宜の機構により外気に放出するようにすれば、小屋裏空間7内の空気の冷却を防止して、昼間における前述の暖房の効果を減殺しない。
【0010】尚、本発明の空調システムは、他の空調機14との併用により、相補的、効果的な冷暖房を行うことができるものである。
【0011】
【発明の効果】本発明の空調システムは以上のとおりであるので、次のような効果がある。a.太陽熱を利用した暖房と、ヒートポンプ給湯機の排熱を利用した冷房の両動作を実現することができる。b.輻射を利用した穏やかでクリーンな冷暖房効果が得られる。c.太陽熱及びヒートポンプ給湯機の排熱を利用するので、ランニングコストが低く、省エネルギーに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の空調システムの実施の形態を概念的に示す断面図である。
【図2】 本発明の空調システムの実施の形態を概念的に示す斜視図である。
【図3】 本発明の空調システムの実施の形態を概念的に示す平面図である。
【符号の説明】
1 建物
2 居室
3 壁
4 中空部
5 空気通路
6 屋根
7 小屋裏空間
8 ヒートポンプ給湯機
9 太陽熱集熱装置
10 給気機構
11 ファン
12 ダクト
13 放出部
14 空調機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の居室を有する建物において、各居室の少なくとも一部の対応する壁を中空壁により構成して、中空壁の中空部により各居室を通る空気通路を構成し、各居室に給湯するヒートポンプ給湯機を建物の屋上に設置すると共に、屋根に小屋裏空間を暖めるための太陽熱集熱装置を設置し、冬期に小屋裏空間内の空気を前記空気通路に供給可能とすると共に、夏期に前記ヒートポンプ給湯機と熱交換した空気を前記空気通路に供給可能とする給気機構を構成したことを特徴とする建物における空調システム
【請求項2】 中空壁は、コンクリート壁であることを特徴とする請求項1記載の建物における空調システム
【請求項3】 中空壁は、金属等の材質により構成した壁であることを特徴とする請求項1記載の建物における空調システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−257182(P2000−257182A)
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−61406
【出願日】平成11年3月9日(1999.3.9)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】