説明

建設機械及びその制御方法

【課題】 エンジン高回転時でのメータアウト絞りでの余分なエネルギーの消費を防止することを可能としつつ、応答遅れを防止すること。
【解決手段】 本発明による建設機械は、アクチュエータの操作を検出する操作検出手段と、油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測する流量不足検出/予測手段と、前記アクチュエータの操作が検出され、且つ、前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジン又はモータの回転数を増加させる制御手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低負荷時の無駄なエネルギーの消費を防止するために、メインポンプの吐出圧が所定閾値を下回った場合に、エンジンの目標回転速度を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−77877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジンの回転数を低減した状態で(例えばアイドル回転時に)アクチュエータが操作され、アタッチメントが自由落下方向に動かされた場合、油圧ポンプの吐出流量がアクチュエータの変位に追いつかず応答遅れが発生する場合がある。これに対して、流量制御弁のメータアウト絞りの開度を小さくすることで自由落下速度を制御する方法もある。しかしながら、このような方法では、エンジン高回転時にはこの絞りが管路損失となって余分なエネルギーの消費を招く。
【0005】
そこで、本発明は、エンジン高回転時でのメータアウト絞りでの余分なエネルギーの消費を防止することを可能としつつ、上述のような応答遅れを防止することを可能とする建設機械及びその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、アクチュエータの操作を検出する操作検出手段と、
油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測する流量不足検出/予測手段と、
前記アクチュエータの操作が検出され、且つ、前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジン又はモータの回転数を増加させる制御手段とを備えることを特徴とする、建設機械が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一局面によれば、エンジンがアイドル回転数で動作している状況下で、アクチュエータの操作を検出するステップと、
前記アクチュエータの操作が検出された場合に、油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測するステップと、
前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジンの回転数を増加させるステップとを含む、建設機械の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジン高回転時でのメータアウト絞りでの余分なエネルギーの消費を防止することを可能としつつ、上述のような応答遅れを防止することを可能とする建設機械及びその制御方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る建設機械1の構成例を示す図である。
【図2】建設機械1に搭載される油圧ポンプ制御装置100の油圧回路図の一例を示す図である。
【図3】図2の領域IIIの拡大図である。
【図4】全馬力制御の特性を示すP−Q線図である。
【図5】アームを単独操作した場合における油圧ポンプ制御装置100の状態を示す図である。
【図6】本実施例のメインコントローラ54により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明に係る建設機械1の構成例を示す図である。図1において、建設機械1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。また、上部旋回体3は、前方中央部に、ブーム4、アーム5及びバケット6、並びに、これらをそれぞれ駆動する油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9から構成される掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブレーカや破砕機等のような他のアタッチメントであってもよい。
【0012】
図2は、建設機械1に搭載される油圧ポンプ制御装置100の油圧回路図の一例を示す図である。油圧ポンプ制御装置100は、エンジン又は電動モータによって駆動される、一回転当たりの吐出量(cc/rev)が可変である二つの油圧ポンプ10L、10Rから、切換弁11L、12L、13L及び15Lを連通するセンターバイパス管路30L、又は、切換弁11R、12R、13R、14及び15Rを連通するセンターバイパス管路30Rを経てタンク22まで圧油を循環させる。
【0013】
また、切換弁11Lは、油圧ポンプ10Lが吐出する圧油を走行用油圧モータ42Lで循環させるために圧油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0014】
切換弁11Rは、走行直進弁であり、下部走行体2を駆動する走行用油圧モータ42L、42Rと、上部旋回体3の何れかの油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9又は旋回用油圧モータ44である。)とが同時に操作された場合に、下部走行体2の直進性を高めるために油圧ポンプ10Lから左右の走行用油圧モータ42L、42Rに圧油を循環させるために圧油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0015】
また、切換弁12Lは、油圧ポンプ10Lが吐出する圧油を旋回用油圧モータ44で循環させるために圧油の流れを切り換えるスプール弁であり、切換弁12Rは、油圧ポンプ10Rが吐出する圧油を走行用油圧モータ42Rで循環させるために圧油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0016】
また、切換弁13L、13Rはそれぞれ、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油をブームシリンダ7へ供給し、また、ブームシリンダ7内の圧油をタンク22へ排出するために圧油の流れを切り換えるスプール弁であり、切換弁13Rは、ブーム操作レバー56が操作された場合に作動するスプール弁(以下、「第一速ブーム切換弁13R」とする。)であり、切換弁13Lは、ブーム操作レバー56が所定操作量以上で操作された場合に油圧ポンプ10Lの吐出する圧油を合流させるためのスプール弁(以下、「第二速ブーム切換弁13L」とする。)である。
【0017】
切換弁14は、油圧ポンプ10Rが吐出する圧油をバケットシリンダ9へ供給し、また、バケットシリンダ9内の圧油をタンク22へ排出するためのスプール弁である。
【0018】
また、切換弁15L、15Rはそれぞれ、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油をアームシリンダ8へ供給し、また、アームシリンダ8内の圧油をタンク22へ排出するために圧油の流れを切り換えるスプール弁であり、切換弁15Lは、アーム操作レバー50が操作された場合に作動するスプール弁(以下、「第一速アーム切換弁15L」とする。)であり、切換弁15Rは、アーム操作レバー50が所定操作量以上で操作された場合に油圧ポンプ10Rの吐出する圧油を合流させるためのスプール弁(以下、「第二速アーム切換弁15R」とする。)である。
【0019】
センターバイパス管路30L、30Rは、それぞれ、最も下流にある切換弁15L、15Rとタンク22との間にネガティブコントロール絞り20L、20Rを備え、油圧ポンプ10L、10Rが吐出した圧油の流れを制限することにより、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流において、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる圧油管路である。
【0020】
破線で示される制御圧管路32L、32Rは、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生させたネガコン圧を油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rに伝達するための制御圧管路である。
【0021】
ここで、図3を参照しながら、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rについて説明する。なお、図3は、図2における領域IIIの拡大図である。
【0022】
油圧ポンプ用レギュレータ40Rは、油圧ポンプ10Rの吐出量を制御すべく、油圧ポンプ10Rのポンプ容量を変化させるための斜板(ヨーク)を傾転駆動するための傾転アクチュエータ41Rと、傾転アクチュエータ41Rに圧油の給排を行うためのスプール弁機構60Rと、全馬力制御時にスプール弁機構60Rのスプール弁600Rを変位させるための全馬力制御部53Rと、ネガティブコントロール制御時にスプール弁600Rを変位させるためのネガコン制御部61Rと、傾転アクチュエータ41Rの駆動変位をスプール弁600Rにフィードバックするためのフィードバックレバー62Rとからなる駆動機構である。
【0023】
傾転アクチュエータ41Rは、一端に大径受圧部PR1を有すると共に他端に小径受圧部PR2を有する作動ピストン410Rと、大径受圧部PR1に対応する受圧室411Rと、小径受圧部PR2に対応する受圧室412Rとからなり、受圧室411Rにはスプール弁600Rを介して油圧ポンプ10Rの吐出圧P2が導入され、或いは受圧室411Rからスプール弁600Rを介して圧油が排出され、また、受圧室412Rには油圧ポンプ10Rの吐出圧P2が導入される。作動ピストン410Rは、受圧室411Rに圧油が導入されて受圧室412R側に変位すると油圧ポンプ10Rの斜板(ヨーク)を小流量側に傾転駆動する。
【0024】
スプール弁機構60Rは、油圧ポンプ10Rの吐出圧P2が導入される第一ポート、タンク22に連通する第二ポート、及び受圧室411Rに連通する出力ポートを有し、第一ポートと出力ポートとを連通する第一位置、第二ポートと出力ポートとを連通する第二位置、又は第一ポート及び第二ポートの何れをも出力ポートに連通しない中立位置に選択的に切り換えられるスプール弁600Rと、スプール弁600Rを第二位置に変位させる方向に付勢するばね601Rとからなる。
【0025】
全馬力制御部53Rは、スプール弁600Rを第一位置に変位させる方向に押圧可能なサーボピストン530Rと、サーボピストン530Rを押圧状態から復帰させるばね531Rと、サーボピストン530Rに設けられた受圧部PR3に対応し油圧ポンプ10Rの吐出圧P2が導入される受圧室532Rと、受圧部PR4に対応し油圧ポンプ10Lの吐出圧P1が導入される受圧室533Rと、受圧部PR5に対応し後述する電磁比例弁55の制御圧が導入される受圧室534Rとからなる。
【0026】
ネガコン制御部61Rは、スプール弁600Rを第一位置に変位させる方向に押圧可能なサーボピストン610Rと、サーボピストン610Rを押圧状態から復帰させるばね611Rと、サーボピストン610Rに設けられた受圧部PR6に対応し制御圧管路32Rの制御圧が導入される受圧室612Rとからなる。
【0027】
フィードバックレバー62Rは、サーボピストン530R又はサーボピストン610Rの変位によってスプール弁600Rが第一位置又は第二位置に切り換えられ、受圧室411Rに圧油が導入され或いは受圧室411Rから圧油が排出されることにより作動ピストン410Rが移動したときにその移動量を物理的にスプール弁600Rにフィードバックし、中立位置に復帰させるためのリンク機構である。
【0028】
なお、油圧ポンプ用レギュレータ40Lは、全馬力制御部53Lにおいて、受圧室532Lに油圧ポンプ10Lの吐出圧P1が導入される点、受圧室533Lに油圧ポンプ10Rの吐出圧P2が導入される点、及び受圧室534Rに後述する電磁比例弁57の制御圧が導入される点で油圧ポンプ用レギュレータ40Rと相違するが、その他の点では共通するため説明を省略する。
【0029】
このような構成により、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rは、サーボピストン530L、530R又はサーボピストン610L、610Rに導入される制御圧が大きいほど油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を減少させ、導入される制御圧が小さいほど油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させるようにする。
【0030】
図2に示すように、建設機械1における何れの油圧アクチュエータも利用されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油は、センターバイパス管路30L、30Rを通ってネガティブコントロール絞り20L、20Rに至り、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。
【0031】
その結果、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rは、ネガコン制御部61L、61Rに導入されたネガコン圧によりスプール弁600L、600Rを第一位置に変位させ、傾転アクチュエータ41L、41Rを駆動して、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を減少させ、吐出した圧油がセンターバイパス管路30L、30Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制するようにする。
【0032】
一方、建設機械1における何れかの油圧アクチュエータが利用された場合、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する圧油は、その油圧アクチュエータに対応する切換弁を介してその油圧アクチュエータに流れ込み、ネガティブコントロール絞り20L、20Rに至る量を減少或いは消滅させ、ネガティブコントロール絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。
【0033】
その結果、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させ、各油圧アクチュエータに十分な圧油を循環させ、各アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0034】
上述のような構成により、油圧ポンプ制御装置100は、待機モードにおいては、油圧ポンプ10L、10Rにおける無駄なエネルギー消費(油圧ポンプ10L、10Rの吐出する圧油がセンターバイパス管路30L、30Rで発生させるポンピングロス)を抑制しながらも、各種油圧アクチュエータを作動させる場合には、油圧ポンプ10L、10Rから必要十分な圧油を各種油圧アクチュエータに供給できるようにする。
【0035】
アーム操作レバー50は、コントロールポンプ52が吐出する圧油を利用してレバー操作量に応じた制御圧を、第一速アーム切換弁15Lのパイロットポート、及び第二速アーム切換弁15Rのパイロットポートにその制御圧を導入させる装置である。
【0036】
ブーム操作レバー56は、アーム操作レバー50と同様、コントロールポンプ52が吐出する圧油を利用してレバー操作量に応じた制御圧を、切換弁13L,13Rのパイロットポートにその制御圧を導入させる装置である。
【0037】
全馬力制御部53L、53Rは、油圧ポンプ10L、10Rの合計吸収馬力がエンジン又は電動モータの出力馬力を超えることがないよう油圧ポンプ10L、10Rの吐出量をそれぞれの吐出圧に応じて制御する機構であり、油圧ポンプ10L、10Rにおける吐出圧P1、P2の導入を受けて、油圧ポンプ10L、10Rが吐出量Q1、Q2で圧油を吐出するよう、油圧ポンプ用レギュレータ40L、40Rのスプール弁600L、600Rを変位させて傾転アクチュエータ41L、41Rを駆動して、油圧ポンプ10L、10Rの斜板(ヨーク)を傾転駆動させる。なお、吐出圧P1、P2と吐出量Q1、Q2との間の関係は、所定のP(吐出圧)−Q(吐出量)線図で予め決定されているものとする。
【0038】
図4は、全馬力制御の特性を示すP−Q線図であり、油圧ポンプ10L、10Rの双方に適用される通常時P−Q線図である。
【0039】
図4に示すように、例えば、アーム操作レバー50のレバー操作量が所定値以上となり、ネガティブコントロール絞り20Lの上流におけるネガコン圧が所定値未満となり(油圧ポンプ10Lに対し最大吐出量を要求することになる。)、油圧ポンプ10Lの吐出量の制御がネガコン圧による制御から全馬力制御部53Lによる制御に移行した場合、油圧ポンプ10Lの吐出圧PがP1、油圧ポンプ10Rの吐出圧がP2であれば、全馬力制御部53Lは、油圧ポンプ10Lの吐出量Qが(P1+P2)/2におけるQ1(=Q2)となるよう、油圧ポンプ用レギュレータ40Lの傾転アクチュエータ41Lに対して相応の圧油を供給する。
【0040】
また、油圧ポンプ10Rの吐出量の制御もネガコン圧による制御から全馬力制御部53Rによる制御に移行し、油圧ポンプ10Lの吐出圧PがP1、油圧ポンプ10Rの吐出圧PがP2であれば、全馬力制御部53Rは、油圧ポンプ10Rの吐出量Qが(P1+P2)/2におけるQ2(=Q1)となるよう、油圧ポンプ用レギュレータ40Rの傾転アクチュエータ41Rに対して相応の制御圧を供給する。
【0041】
メインコントローラ54は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであり、以下で説明する各種制御を実行する。
【0042】
また、メインコントローラ54は、アーム操作レバー50を開き方向に操作した場合に発生する制御圧を測定する圧力センサS1、及び、アーム操作レバー50を閉じ方向に操作した場合に発生する制御圧を測定する圧力センサS2の出力に基づいてアーム操作レバー50のレバー操作量を検出する。
【0043】
同様に、メインコントローラ54は、ブーム操作レバー56を上げ方向に操作した場合に発生する制御圧を測定する圧力センサS3、及び、ブーム操作レバー56を下げ方向に操作した場合に発生する制御圧を測定する圧力センサS4の出力に基づいてブーム操作レバー56のレバー操作量を検出する。
【0044】
更に、メインコントローラ54は、油圧ポンプ10Lの吐出圧を測定する圧力センサS5、及び、油圧ポンプ10Rの吐出圧を測定する圧力センサS6の出力に基づいて油圧ポンプ10L、10Rにおける圧油の吐出状態を検出する。
【0045】
図5は、アーム操作レバー50を閉じ方向に最大限傾倒させた場合における油圧ポンプ制御装置100の状態を示し、油圧ポンプ10Lは、全馬力制御部53Lの制御の下、第一速アーム切換弁15Lを経てアームシリンダ8のヘッド側に最大吐出量で圧油を供給しながら、アームシリンダ8のロッド側からアームシリンダ8内の圧油を圧油タンク22に排出させ、同時に、油圧ポンプ10Rは、主としてセンターバイパス管路30Rを通過する圧油を、第二速アーム切換弁15R経由でアームシリンダ8のヘッド側に合流させている。
【0046】
ところで、このような建設機械1において、エンジンのアイドル回転時にアクチュエータの操作を行うことで、アタッチメントを自由落下方向に動かした場合(例えば、図5に示すように、アーム操作レバー50を閉じ方向に操作して、アーム5を自由落下方向に動かした場合)、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量がアクチュエータの変位に追いつかず応答遅れが発生する場合がある。尚、このような応答遅れは、アーム5の自由落下方向への操作に限らず、他の操作(例えば、バケット6の閉じ操作や、ブーム4の一速下げ操作等)でも生じる。これに対して、流量制御弁(例えばアーム5の場合、第一速アーム切換弁15L)で管路を絞ることで(即ちメータアウト絞りにより)自由落下速度を制御する方法もある。しかしながら、このような方法では、エンジン高回転時にはこの絞りが管路損失となって余分なエネルギーの消費を招く。
【0047】
そこで、本実施例では、以下で詳説するように、エンジン高回転時でのメータアウト絞りでの余分なエネルギーの消費を防止するためにメータアウト絞りの開度を大きく維持した場合でも、上述のような応答遅れを防止することを可能とする。
【0048】
図6は、本実施例のメインコントローラ54により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
ステップ600では、現在設定されているエンジン回転数Ne_setが所定の閾値Ne_th以上か否かが判定される。エンジン回転数Ne_setは、例えばユーザがスロットルボリューム(図示せず)を操作することで設定される。所定の閾値Ne_thは、上述の応答遅れの原因となるような油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量の不足を起こさないエンジン回転数である。所定の閾値Ne_thは、油圧ポンプ10L、10Rの性能等のような各種要因に依存するので、試験等により適合されてもよい。現在設定されているエンジン回転数Ne_setが所定の閾値Ne_th以上である場合には、ステップ608に進み、現在設定されているエンジン回転数Ne_setが所定の閾値Ne_th未満である場合は、ステップ602に進む。尚、アイドル回転数は、所定の閾値Ne_thよりも小さい。従って、現在設定されているエンジン回転数Ne_setがアイドル回転数である場合には、ステップ602に進むことになる。
【0050】
ステップ602では、作業機の動作があるか否か、即ち各種アクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9等)の操作が検出された否かが判定される。この作業機の動作の有無は、圧力センサS1、S2、S3、S4の出力値に基づいて判断されてもよい(図示しないバケット操作レバーについても同様である)。また、作業機の動作の有無は、ネガコン圧の変動を監視することで判断されてもよい。この場合、ネガコン圧は、例えばセンターバイパス管路30L、30Rにおけるネガティブコントロール絞り20L、20Rの手前側に圧力センサを配置することで監視されてもよい。或いは、作業機の動作の有無は、メインの圧力センサS5及び圧力センサS6の出力値の変動を検出することで、判断されてもよい。或いは、アーム操作レバー50やブーム操作レバー56等が電気レバーである場合、作業機の動作の有無は、圧力センサS1、S2、S3、S4に代えて、電気レバーからの電気信号に基づいて判断されてもよい。或いは、アーム操作レバー50やブーム操作レバー56等のリンク機構部に回動センサが付いている場合には、作業機の動作の有無は、当該回動センサの出力信号に基づいて判断されてもよい。作業機の動作がある場合には、ステップ604に進み、作業機の動作がない場合には、ステップ608に進む。
【0051】
ステップ604では、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じるか否かが判定される。この判定は、例えば油圧ポンプ10Lの吐出圧を測定する圧力センサS5、及び、油圧ポンプ10Rの吐出圧を測定する圧力センサS6の出力に基づいて実行されてもよい。例えば、油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧が所定の閾値P_th以下であるか否かが判定されてもよい。所定の閾値P_thは、上述の応答遅れが生じる際の油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧に対応してよく、試験等により適合されてもよい。この場合、上述の応答遅れが生じる際の油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧は、各種アクチュエータに応じて異なりうるので、操作されたアクチュエータ(ステップ602にて判断)に応じて所定の閾値P_thが可変されてもよい。また、所定の閾値P_thは、現在設定されているエンジン回転数Ne_setに応じて可変されてもよい。これは、上述の応答遅れが生じる際の油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧は、現在のエンジン回転数Ne_setに依存して変化しうるためである。また、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じるか否かは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧(油圧ポンプ10L、10Rと切換弁11L,11Rとの間の圧力)に代えて、各種アクチュエータとその切換弁との間の圧力を検出することで判定されてもよい。このような圧力が低下した場合も、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量が不足すると判断できるためである。油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じると判定した場合は、ステップ606に進み、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じないと判定した場合は、ステップ608に進む。
【0052】
ステップ606では、目標エンジン回転数Ne_targetが所定の閾値Ne_thに設定される。これにより、エンジン回転数が所定の閾値Ne_thまで上昇される。ここで、所定の閾値Ne_thとは、上述の応答遅れの原因となるような油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量の不足を起こさないエンジン回転数である。従って、ステップ606によりエンジン回転数が所定の閾値Ne_thまで上昇されることで、上述の如く、上述の応答遅れが防止される。尚、目標エンジン回転数Ne_targetが所定の閾値Ne_thに設定される状態は、その後、ステップ602で否定判定されるまで維持される。即ち操作が終了した段階で、目標エンジン回転数Ne_targetが現在設定されているエンジン回転数Ne_setに戻される。
【0053】
ステップ608では、目標エンジン回転数Ne_targetが現在設定されているエンジン回転数Ne_setに維持される。このように図6に示す処理によれば、ステップ600で否定判定された場合でも、ステップ602,604,606のいずれかで否定判定された場合には、上述の応答遅れが生じないと判断され、目標エンジン回転数Ne_targetが現在設定されているエンジン回転数Ne_setに維持される。
【0054】
尚、図6に示す例では、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じるか否かを判定することで、現時点より先に油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じる状態を予測するものであった。かかる構成によれば、上述の応答遅れを事前に防止することができる。しかしながら、油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が現に生じている状態を検出する構成であってもよい。この場合には、実際に油圧ポンプ10L、10Rの吐出流量に不足が生じた場合にだけ、エンジン回転数が上昇されることになる。
【0055】
以上説明した本実施例の建設機械1によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0056】
上述の如く、本実施例によれば、油圧ポンプ10L、10Rからアクチュエータ(ブームシリンダ7、アームシリンダ8等)への圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、油圧ポンプ10L、10Rに接続されるエンジンの回転数を増加されるので、メータアウト絞りの開度を大きくした場合でも、圧油の供給流量の不足に起因した応答遅れを効果的に防止することができる。これにより、メータアウト絞りの開度を大きく設定することが可能であり、エンジン高回転時の吐出流量が不足しない状況下では、余分なエネルギーが消費されるのを防止することが可能である。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0058】
例えば、図6に示す例では、油圧ポンプ10L、10Rがエンジンに連結されている構成を想定し、エンジンの回転数を上昇させることで圧油の供給流量の不足を防止している。しかしながら、油圧ポンプ10L及び/又は10Rが、エンジンとは切り離された電動モータにより駆動される場合、エンジンの回転数に代えて又は加えて、電動モータの回転数を同様に増加させればよい。
【符号の説明】
【0059】
1 建設機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10L、10R 油圧ポンプ
11L、11R 切換弁
12L、12R 切換弁
13L、13R 切換弁
14 切換弁
15L、15R 切換弁
20L、20R ネガティブコントロール絞り
22 タンク
30L、30R センターバイパス管路
32L、32R 制御圧管路
40L、40R 油圧ポンプ用レギュレータ
41L、41R 傾転アクチュエータ
42L、42R 走行用油圧モータ
44 旋回用油圧モータ
50 アーム操作レバー
52 コントロールポンプ
53L、53R 全馬力制御部
54 メインコントローラ
55,57 電磁比例弁
56 ブーム操作レバー
60R スプール弁機構
61L、61R ネガコン制御部
100 油圧ポンプ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの操作を検出する操作検出手段と、
油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測する流量不足検出/予測手段と、
前記アクチュエータの操作が検出され、且つ、前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジン又はモータの回転数を増加させる制御手段とを備えることを特徴とする、建設機械。
【請求項2】
前記制御手段は、エンジンがアイドル回転数で動作している状況下で、前記アクチュエータの操作が検出され、且つ、前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジンの回転数を増加させる、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記流量不足検出/予測手段は、前記油圧ポンプの吐出圧が所定閾値を下回った場合に、前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測する、請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
エンジンがアイドル回転数で動作している状況下で、アクチュエータの操作を検出するステップと、
前記アクチュエータの操作が検出された場合に、油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足を検出又は予測するステップと、
前記油圧ポンプから前記アクチュエータへの圧油の供給流量の不足が検出又は予測された場合に、前記油圧ポンプに接続されるエンジンの回転数を増加させるステップとを含む、建設機械の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219653(P2012−219653A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83680(P2011−83680)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】