説明

建設機械用キャブ

【課題】 空調装置の外気フィルタ等を点検する点検カバーと乗降用のドアとを共通のヒンジを用いて連結し、レイアウト設計の自由度を高めるようにする。
【解決手段】 キャブボックス11の左側に位置する側面部15には、乗降口19を開閉するドア21をセンタピラー20との間にヒンジ36,37を介して設ける。また、ドア21の後側には側面部15の窓ガラス15Cよりも下側となる位置に、空調装置の外気フィルタを保守、点検するための点検用開口32を設けると共に、この点検用開口32を開閉する点検カバー33を設ける。そして、この点検カバー33は、ドア21の回動支点となるヒンジ37を共通して用いる構成とし、このヒンジ37によりキャブボックス11のセンタピラー20に回動可能に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルまたは油圧クレーン等に好適に用いられる建設機械用キャブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とから大略構成されている。また、上部旋回体のフレーム上には運転室を画成するキャブが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術による建設機械用キャブは、上面部、前面部、後面部および左,右の側面部を有したキャブボックスと、該キャブボックスの左,右の側面部のうち一方の側面部に回動可能に設けられオペレータが乗降する乗降口を開閉するドアと、前記キャブボックス内に設けられ外気を取入れつつ室内に調和空気を供給する空調装置とを備えている。
【0004】
また、他の従来技術として、キャブボックスの一方の側面部には、中間のピラーを挟んで前,後にドアと窓とを設け、これらのドアと窓とを前記中間のピラーにそれぞれヒンジ結合すると共に、これらのヒンジを共通(単一)のヒンジ軸を用いて回動可能に連結する構成としたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そして、この場合のドアと窓とは、共通のヒンジ軸を支点(回動中心)にしてそれぞれ独立して開閉され、ヒンジ結合に必要となる部品の点数を削減できるようにしているものである。
【0006】
【特許文献1】特開平4−27618号公報
【特許文献2】特開平9−136543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術(特許文献1)による建設機械用キャブは、空調装置に外気を取入れるための外気導入部を、床板の下側に位置して旋回フレームのサイドフレームに設ける構成としているので、前記外気導入部を空調装置の送風機等に接続するダクトの長さが長尺となり、組立時の作業性が悪い上に、メンテナンス時の作業性も低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者等は、オペレータ用の乗降口が設けられたキャブボックスの一方の側面部において、該乗降口の後側となる位置に外気導入部を設けることを検討した。しかし、この場合の外気導入部には、前記空調装置の送風機等に向けて清浄な空気を外気から取入れるために外気フィルタを設ける必要がある上に、この外気フィルタを保守、点検するための点検用開口と、該点検用開口をキャブの外側から開閉するための点検カバー等とを設ける必要がある。
【0009】
そして、このような点検カバーを前記側面部に開閉可能に設けるためには、該点検カバーをヒンジ結合するためのスペースを側面部に新しく確保する必要が生じ、前記側面部における乗降口の後側となる位置でのレイアウト設計が難しくなるという問題がある。
【0010】
一方、他の従来技術(特許文献2)では、キャブボックスの一方の側面部に中間のピラーを挟んで前,後にドアと窓とを設け、このドアと窓とを前記中間のピラーにそれぞれヒンジ結合すると共に、これらのヒンジを共通のヒンジ軸を用いて回動可能に連結する構成としている。
【0011】
これにより、他の従来技術は、ドアと窓との両者のヒンジの一部を兼用することができ、部品点数を削減できると共に、前記ドアと窓との間に位置する中間のピラーに余分なスペースを確保する必要がなくなり、レイアウト設計が容易になるという利点がある。
【0012】
しかし、例えば夏季等の周囲温度が高い作業現場にあっては、ドアと窓を共に開放状態にすることが頻繁にあり、このような場合には、前記ヒンジを共通化したドアと窓とが半開き状態で互いに干渉し合う虞れがある。このために、他の従来技術は、必ずしも実用的な構成を採用しているものではない。
【0013】
しかも、この場合には、ドアと窓とを上,下方向に離間した少なくとも2組以上のヒンジを用いて開閉可能に連結しているために、これらのドアと窓とを中間のピラーにそれぞれヒンジ結合する作業に手間がかかり、組付け時の作業性を向上することができないという問題がある。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空調装置の外気フィルタ等を点検する点検カバーと乗降用のドアとを共通のヒンジを用いて連結することにより、両者をヒンジ結合する上でのスペースを容易に確保でき、レイアウト設計の自由度を高めることができるようにした建設機械用キャブを提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、外気フィルタ等の点検カバーを乗降用のドアに比較して大幅に小さく、軽量化することができ、1組のヒンジを用いて点検カバーを開閉可能に支持することができるようにした建設機械用キャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明は、建設機械のフレーム上に設けられオペレータが出入りする乗降口を有するキャブボックスと、該キャブボックスに回動可能に設けられ前記乗降口を開閉するドアと、前記キャブボックス内に設けられ外気を取入れつつ室内に調和空気を供給する空調装置とを備えてなる建設機械用キャブに適用される。
【0017】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャブボックスには、前記乗降口の後側に位置して前記空調装置の外気フィルタを保守、点検するための点検用開口と、該点検用開口を開閉する点検カバーとを設け、該点検カバーは、前記ドアの回動支点となるヒンジを共用して前記キャブボックスの側面部に対し回動可能に取付ける構成としたことにある。
【0018】
また、請求項2の発明によると、前記キャブボックスには、前,後方向の中間部位に上,下方向に延びるピラーを設け、該ピラーの前側には前記乗降口を設け、その後側には前記点検用開口を設け、前記ピラーには、前記ヒンジを共用して前記乗降口を開閉する前記ドアと前記点検用開口を開閉する前記点検カバーとを設ける構成としている。
【0019】
また、請求項3の発明によると、前記キャブボックスの乗降口を開閉するドアは、該ドアの上,下方向で互いに離間した複数のヒンジを用いて前記キャブボックスに取付けられ、これらの複数のヒンジのうち下側に位置するヒンジは、前記点検カバー用のヒンジを兼用する構成としている。
【0020】
さらに、請求項4の発明によると、前記点検カバーとドアとに共用するヒンジは、前記キャブボックスに取付けられる第1のヒンジ板と、前記ドアに取付けられる第2のヒンジ板と、前記点検カバーに取付けられる第3のヒンジ板と、前記第1のヒンジ板に対し前記第2のヒンジ板と第3のヒンジ板とを回動可能に連結する単一のヒンジ軸とにより構成している。
【発明の効果】
【0021】
上述の如く、請求項1に記載の発明によれば、キャブボックスのには、乗降口の後側に位置して空調装置の外気フィルタを保守、点検するための点検用開口と、該点検用開口を開閉する点検カバーとを設け、該点検カバーは、ドアの回動支点となるヒンジを共用して前記キャブボックスに対し回動可能に取付ける構成としているので、乗降用のドアに用いるヒンジと点検カバーのヒンジとは、その一部を兼用することができ、部品点数を削減して組立時の作業性を向上することができる。そして、このように一部を共通化したヒンジを用いて乗降用のドアと点検カバーとをそれぞれ開閉可能に連結することにより、キャブボックスに両者をヒンジ結合する上でのスペースを容易に確保でき、レイアウト設計の自由度を高めることができる。
【0022】
また、乗降用のドアと点検カバーとは、他の従来技術で述べたドアと窓のように両者を共に開放状態に保持する必要性がなく、例えば点検カバーを開いて外気フィルタの保守、点検等を行うときには、例えばオペレータがキャブ内に乗降する必要がないので、乗降用のドアを閉扉状態とすることができ、点検カバーのみを開くことにより、ドアと点検カバーとが互いに干渉するような事態を防ぐことができる。しかも、この場合の点検カバーは、外気フィルタ等の点検用開口を開閉するものであるから、該点検カバーを乗降用のドアに比較して大幅に小さく形成し、軽量化することができる上に、例えば1組のヒンジを用いるだけで点検カバーを十分に支持でき、カバー開閉時の操作性を良好に保つことができる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によると、キャブボックスの前,後方向の中間部位には上,下方向に延びるピラーを設け、該ピラーの前側には乗降口を設けると共に、その後側には点検用開口を設け、前記ピラーには、ヒンジを共用することにより前記乗降口を開閉するドアと前記点検用開口を開閉する点検カバーとを設ける構成としているので、キャブボックスのピラーに設けた共用のヒンジにより、該ピラーの前側では乗降用のドアを開閉可能に支持でき、ピラーの後側では点検カバーを開閉可能に支持することができる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によると、キャブボックスの乗降口を開閉するドアは、該ドアの上,下方向で互いに離間した複数のヒンジを用いてキャブボックスに取付ける構成とし、これらの複数のヒンジのうち下側に位置するヒンジにより点検カバー用のヒンジを兼用しているので、例えば乗降用のドアに比較して大幅に小さく軽量化が可能な点検カバーを、前記複数のヒンジのうち下側に位置するヒンジによって十分に支持することができ、これによっても点検カバーを良好に開閉操作することができる。
【0025】
さらに、請求項4に記載の発明は、点検カバーとドアとに共用するヒンジを、第1〜第3のヒンジ板と、これらの第1〜第3のヒンジ板を回動可能に連結する単一のヒンジ軸とにより構成しているので、前記第1〜第3のヒンジ板のうち第1のヒンジ板をキャブボックスに取付け、第2のヒンジ板をドアに取付けると共に第3のヒンジ板を点検カバーに取付けることにより、前記キャブボックスに対して乗降用のドアと点検カバーとをそれぞれ回動(開閉)可能に支持することができ、このときの回動支点を単一のヒンジ軸により構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態による建設機械用キャブを、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0027】
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、図1に示すように自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、後述の作業装置7とにより大略構成されている。
【0028】
そして、油圧ショベル1の上部旋回体3は、建設機械のフレームを構成する旋回フレーム4を有し、該旋回フレーム4上には、後述のキャブ10と、キャブ10の後側に位置し、原動機および油圧ポンプ(図示せず)等を収容した建屋カバー5と、該建屋カバー5の後側に位置するカウンタウエイト6等とが設けられている。
【0029】
7は上部旋回体3の前部に設けられた作業装置で、該作業装置7は、旋回フレーム4の前部中央に俯仰動可能に設けられ、例えばバケット7A等を用いて土砂等の掘削作業を行うものである。
【0030】
10は運転室を画成するために旋回フレーム4上に設けられたキャブで、該キャブ10は、後述のキャブボックス11およびドア21と、キャブボックス11を下側から覆う後述の床板22等とにより構成されている。そして、キャブ10の内部には、後述の運転席23、操作レバー装置24,25および空調装置26等が設けられている。
【0031】
11はキャブ10の外殻をなすキャブボックスで、該キャブボックス11は、図2、図3に示すように箱形状のボックス構造をなして形成され、上側に覆う上面部12と、前側の前面部13と、後側の後面部14と、左,右両側に位置する側面部15,16とを有している。
【0032】
ここで、キャブボックス11の側面部15,16のうち、車両の後方からみて左側に位置する一方の側面部15は、図1に示すように上部旋回体3(車体)の左,右方向に関して作業装置7とは反対側に位置し、この側面部15には、オペレータがキャブ10内に乗降するためのドア21が後述の如く設けられている。
【0033】
そして、この側面部15は、例えば図3、図4に示すように薄肉の鋼板等からなる2枚のパネル15A,15B(以下、外側パネル15A,内側パネル15Bという)等を、スポット溶接等の手段で互いに接合することにより中空構造物として構成されている。
【0034】
また、キャブボックス11の側面部15には、図3に示すように前,後に離間してフロントピラー17とリヤピラー18とが設けられ、該フロントピラー17とリヤピラー18との間には、後述のセンタピラー20が設けられている。そして、キャブボックス11の側面部15には、フロントピラー17とセンタピラー20との間に位置してドア用開口部となる乗降口19が形成され、該乗降口19は、後述のドア21によって開,閉されるものである。
【0035】
一方、リヤピラー18とセンタピラー20との間には、図2、図3に示すように側面部15の一部をなす窓ガラス15Cが取付けられている。また、キャブボックス11の側面部15には、図2に示す如く窓ガラス15Cの下側となる位置に後述の点検用開口32、点検カバー33等が設けられている。
【0036】
なお、キャブボックス11の右側に位置する他方の側面部16についても、左側の側面部15とほぼ同様に2枚のパネル等を互いに接合することにより中空構造物として構成されるものである。
【0037】
20はキャブボックス11の側面部15に設けられた中間のピラーとなるセンタピラーで、該センタピラー20は、図3、図4に示す如く外側パネル15Aと内側パネル15Bとの間で中空構造体として形成され、乗降口19の後側位置を上,下方向に延びている。そして、センタピラー20には、図3、図4に示す如く横断面が略L字状に屈曲したヒンジ取付部20Aが形成され、このヒンジ取付部20Aには後述のヒンジ36,37がボルト、溶接等の手段で取付けられている。
【0038】
即ち、センタピラー20は、キャブボックス11(側面部15)の前,後方向の中間部位に上,下方向に延び、ピラー20の前側は乗降口19となり、ピラー20の後側には後述の点検用開口32が設けられる。そして、ピラー20のヒンジ取付部20Aには、後述のヒンジ37によりドア21と点検カバー33とがそれぞれ開閉可能に取付けられるものである。
【0039】
21はキャブボックス11の側面部15に設けられた乗降用のドアで、該ドア21は、図3に示す如く2枚の金属パネル等を互いに接合することにより形成されたドア枠体21Aと、該ドア枠体21Aの内側に取付けられたドア21用の窓ガラス21Bとにより構成されている。
【0040】
そして、ドア21は、ドア枠体21Aの後端面部が後述のヒンジ36,37等を用いてセンタピラー20に回動可能に取付けられ、オペレータの乗降時等にキャブボックス11の乗降口19を開,閉するものである。また、ドア枠体21Aの前部側には、フロントピラー17との間にドア21を閉扉状態に保持するドアロック装置(図示せず)等が設けられている。
【0041】
22はキャブ10の一部を構成する床板で、該床板22は、図3に示すようにキャブボックス11の前面部13、後面部14および左,右の側面部15,16の下端に取付けられ、キャブボックス11を下側から覆うものである。そして、床板22は、キャブ10内に乗込んだオペレータに足場(床面)を提供するものである。
【0042】
23はキャブボックス11内に位置して床板22上に設けられた運転席で、該運転席23は、図3に示す如くキャブ10内のほぼ中央部に配置され、オペレータの座席となるものである。また、運転席23の左,右両側には、操作レバー装置24,25が設けられ、これらの操作レバー装置24,25には、例えば作業装置7等を作動制御するための操作レバー24A,25A等が設けられている。
【0043】
26は運転席23の後側に位置してキャブボックス11内に設けられた空調装置で、該空調装置26は、図3に示す如く内部に冷房用のエバポレータ、暖房用のヒータコア(いずれも図示せず)等を収容したユニットケース27と、該ユニットケース27内に空気を流通させる送風機28と、該送風機28の吸込側に接続された吸気ダクト29と、該吸気ダクト29の先端側に設けられ後述の外気フィルタ31が着脱可能に取付けられるフィルタケース30等とにより構成されている。
【0044】
ここで、フィルタケース30は、図4に示す如く一側が後述するフィルタ取付穴32Bの周囲で側面部15の内側パネル15Bに溶接等の手段を用いて固着され、フィルタケース30の他側は、吸気ダクト29の流入側(先端側)に接続されている。そして、空調装置26の送風機28は、吸気ダクト29から吸込んだ空気をユニットケース27内の前記エバポレータまたはヒータコアに流通させ、冷気または暖気からなる調和空気をユニットケース27の吹出口27A(図3参照)等からキャブ10内に向けて供給するものである。
【0045】
31はフィルタケース30内に着脱可能に設けられる外気フィルタで、該外気フィルタ31は、図4に示す如く後述のフィルタ取付穴32Bを介してフィルタケース30内に挿嵌され、外部の空気を清浄化(外気中のダストを除去)した状態で吸気ダクト29内へと矢示A方向に流通させるものである。
【0046】
この場合、外気フィルタ31には、その左,右両側部に二又状をなす係止爪31A,31Aが設けられている。そして、外気フィルタ31は、これらの係止爪31Aを図4に示す如くフィルタ取付穴32Bの周壁に掛止めすることにより、フィルタケース30内に抜止め状態で装着される。
【0047】
一方、フィルタケース30内から外気フィルタ31を取出すときには、後述の点検カバー33を矢示B方向に大きく開いた状態で、オペレータの指先等を後述の点検用開口32内に挿入して各係止爪31Aを把持し、フィルタ取付穴32Bに対する係止爪31Aの掛止めを解除する。これにより、外気フィルタ31は、フィルタケース30、フィルタ取付穴32Bから脱着され、矢示C方向に取出された後に、外気フィルタ31の保守、点検、交換作業等が行われるものである。
【0048】
32はキャブボックス11の側面部15に設けられた点検用開口で、該点検用開口32は、図4に示す如くセンタピラー20の後側に位置して側面部15の外側パネル15Aに形成され、前,後方向に略長方形状をなして延びる点検穴32Aと、該点検穴32Aの内側に位置して側面部15の内側パネル15Bに形成され、点検穴32Aよりも小さい寸法の角穴からなるフィルタ取付穴32Bとにより構成されている。
【0049】
そして、このフィルタ取付穴32Bは、図4に示す如くフィルタケース30の一側開口を構成し、その周壁(内側パネル15B)には外気フィルタ31の各係止爪31Aが前述の如く着脱可能に掛止めされるものである。また、点検用開口32の点検穴32Aは、図2中に点線で示す如く側面部15の後部側で窓ガラス15Cの下側となる位置に配設され、後述の点検カバー33によって開,閉されるものである。
【0050】
33は点検用開口32を外側から覆うようにキャブボックス11の側面部15に開閉可能に設けられた点検カバーで、該点検カバー33は、図4に示す如く長さ方向一側(前部側)に後述のヒンジ37が取付けられ、このヒンジ37を回動支点として矢示B方向に開,閉されるものである。そして、点検カバー33の前部側には、ヒンジ37を取付けるためのねじ座33Aが図4、図6に示す如く設けられている。
【0051】
また、点検カバー33には、図2に示す如く上,下方向に細長く延びるスリット形状をなした複数の外気取入孔33B,33B,…が形成され、これらの外気取入孔33Bは、図4に示すように外気フィルタ31よりも前側にオフセットされた位置に配設されている。そして、これらの外気取入孔33Bは、外気フィルタ31に向け外気を図4中の矢示A1 ,A1 方向へと斜めに迂回させて流通させるものである。
【0052】
34は点検カバー33の後部側に設けられたロック装置で、該ロック装置34は、図5に示すストッパ35にロック爪34Aを係合させることにより、点検カバー33を側面部15の外側パネル15Aに閉扉状態でロックするものである。この場合、ストッパ35は、側面部15の外側パネル15Aに溶接等の手段で固着されている。
【0053】
また、点検カバー33を開くときには、オペレータがロック装置34のキー溝にキー(図示せず)を差し込み、図5に示す軸線O−Oを中心にしてロック爪34Aを回転することにより、ストッパ35に対するロック爪34Aの係合が解除され、点検カバー33を図4中の矢示B方向に開くことが可能となる。そして、外気フィルタ31等の保守、点検を行うときには、点検カバー33を大きく開くことにより、側面部15の点検用開口32は外部に開放され、保守、点検用のスペースが確保されるものである。
【0054】
36,37はドア21を側面部15のセンタピラー20に開閉可能に連結した蝶番等からなる2組のヒンジで、該ヒンジ36,37は、図2に示す如く側面部15のセンタピラー20とドア21のドア枠体21Aとの間に上,下に離間して取付けられ、ドア21を開閉可能に支持するものである。
【0055】
ここで、2組のヒンジ36,37のうち下側に位置するヒンジ37は、図4、図6に示すようにドア21と点検カバー33とに共用され、両者のヒンジを兼用するものである。そして、ヒンジ37は、図7、図8に示す如く3枚のヒンジ板37A,37B,37Cと、これらのヒンジ板37A〜37Cを回動可能に連結する単一のヒンジ軸37Dとにより構成されている。
【0056】
そして、これらのヒンジ板37A〜37Cのうち第1のヒンジ板37Aは、図6に示すようにセンタピラー20のヒンジ取付部20Aに複数のボルト38等を用いて取付けられ、第2のヒンジ板37Bは、ドア枠体21Aの後端面部にボルト39等を用いて取付けられている。また、第3のヒンジ板37Cは、図6ないし図8に示すように途中部位が略く字状に屈曲され、点検カバー33のねじ座33Aにボルト40等を用いて取付けられるものである。
【0057】
これにより、ドア21は、ヒンジ軸37Dを回動支点としてヒンジ板37Bと共に図6中の矢示D方向に開,閉され、点検カバー33は、ヒンジ板37Cと共にヒンジ軸37Dを回動支点として矢示B方向に開,閉される。なお、ヒンジ36,37のうち上側に位置するヒンジ36は、図2に示す如くドア21の専用となるもので、通常の蝶番(例えば、2枚のヒンジ板とヒンジ軸とからなる蝶番)等により構成されている。
【0058】
41はドア21を全開位置に保持するドアキャッチャで、該ドアキャッチャ41は、図2に示す如くセンタピラー20の後側に位置してキャブボックス11の側面部15に設けられ、その取付位置は側面部15の窓ガラス15Cよりも下側で点検カバー33よりも上側となっている。
【0059】
42はドア21から外側に突出して設けられたフックで、該フック42は、図2に示す如くドア21の窓ガラス21Bよりも下側に位置してドア枠体21Aに取付けられ、ドアキャッチャ41に係脱可能に掛止めされるものである。即ち、ドア21を図6中に示す矢示D方向に大きく開き、ドア21を全開状態としたときにフック42がドアキャッチャ41に掛止めされ、ドア21は全開状態に保持されるものである。
【0060】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0061】
まず、作業現場等ではキャブ10内でオペレータが走行用の操作レバーを傾転操作することにより、例えば下部走行体2を作動させて車両を前,後進させる。そして、土砂等の掘削作業時には、図3に示す操作レバー24A,25A等を傾転操作して作業装置7を作動させたり、上部旋回体3を旋回動作させたりするものである。
【0062】
また、このような油圧ショベル1のキャブ10は、オペレータの乗降時以外のときには通常、ドア21を閉扉したままの状態に保持される。しかし、オペレータの好み等に応じて、キャブボックス11の側面部15に設けた乗降口19をドア21により開いたままの状態で掘削作業等を行うことがある。
【0063】
そして、この場合には、図2に示すドア21を大きく開いてフック42をドアキャッチャ41に掛止めすることにより、ドア21を全開状態に保持することができ、乗降口19を通じてキャブ10内の通気性を確保した状態で土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0064】
一方、ドア21を閉じた状態で掘削作業等を行う場合には、キャブ10内の空調装置26を作動させることにより、キャブ10内の温度をオペレータの好みに応じた適温に調節できる。そして、この場合には送風機28による空気の吸引によって、外気がフィルタケース30内の外気フィルタ31を通じて吸気ダクト29内に吸込まれ、外気フィルタ31で清浄化された空気がユニットケース27内のエバポレータまたはヒータコアを流通する。
【0065】
このときにユニットケース27内を流れる空気は、エバポレータで冷却されるか、またはヒータコアで暖められることにより冷気または暖気からなる調和空気をとなって、ユニットケース27の吹出口27A(図3参照)等からキャブ10内に供給される。これにより、キャブ10内の温度をオペレータの好みに応じた適温に調節することができ、キャブ10内での居住性を高めることができる。
【0066】
しかし、油圧ショベル1の作業現場は、周囲に細かい砂粒、塵埃等のダストが飛散し続ける場合が多く、このときのダストは、例えば点検カバー33の外気取入孔33Bから外気フィルタ31に向けて外気と共に図4中の矢示A1 方向に吸込まれる。このため、外気フィルタ31には多量のダストが付着し、目詰まり等を起こし易い。
【0067】
そこで、外気フィルタ31の保守、点検等を行うメンテナンス作業時には、ヒンジ37のヒンジ軸37Dを支点として点検カバー33を図4中の矢示B方向に大きく開き、側面部15の点検用開口32を外部に開放する。そして、この状態でオペレータの指先等を点検用開口32内に挿入して各係止爪31Aを把持し、フィルタ取付穴32Bに対する係止爪31Aの掛止めを解除することにより、外気フィルタ31をフィルタケース30、フィルタ取付穴32Bから矢示C方向に取出すことができる。
【0068】
そして、この状態で外気フィルタ31の保守、点検を行い、例えば新品または洗浄後の外気フィルタ31と交換することによって、外気フィルタ31の取換え作業等を容易に行うことができ、その後は点検カバー33を閉じることにより、側面部15の点検用開口32を外側から点検カバー33で覆うことができる。
【0069】
かくして、本実施の形態によれば、ドア21を側面部15のセンタピラー20に開閉可能に連結する上,下2組のヒンジ36,37のうち下側に位置するヒンジ37を、ドア21と点検カバー33とに共用し、両者に対してヒンジ37を兼用させる構成としている。
【0070】
即ち、この場合のヒンジ37を、図7、図8に示す如く3枚のヒンジ板37A,37B,37Cと、該ヒンジ板37A〜37Cを回動可能に連結する単一のヒンジ軸37Dとにより構成している。そして、ヒンジ板37A〜37Cのうち第1のヒンジ板37Aを、図6に示す如くセンタピラー20のヒンジ取付部20Aにボルト38等を用いて取付け、第2のヒンジ板37Bをドア枠体21Aの後端面部にボルト39等を用いて取付け、第3のヒンジ板37Cは、点検カバー33のねじ座33Aにボルト40等を用いて取付ける構成としている。
【0071】
これにより、キャブボックス11の側面部15に設けたセンタピラー20に対して乗降用のドア21と点検カバー33とを、ヒンジ37を用いてそれぞれ互いに独立して回動(開閉)可能に支持することができ、このときの回動支点を単一のヒンジ軸37Dにより構成することができる。
【0072】
そして、センタピラー20のヒンジ取付部20Aにボルト38等で取付けられた第1のヒンジ板37Aにより、第2のヒンジ板37Bに取付けられたドア21と、第3のヒンジ板37Cに取付けられた点検カバー33とをヒンジ軸37Dを介して開閉可能に連結しているため、ヒンジ37のヒンジ板37Aとヒンジ軸37Dを、ドア21と点検カバー33とに共通して用いることができ、部品点数を削減して組立時の作業性を向上することができる。
【0073】
また、このように一部を共通化したヒンジ37を用いて乗降用のドア21と点検カバー33とをそれぞれ開閉可能に連結することにより、キャブボックス11の側面部15に設けたセンタピラー20に対し、両者をヒンジ結合する上でのスペースを容易に確保でき、レイアウト設計の自由度を高めることができる。
【0074】
また、乗降用のドア21と点検カバー33とは、他の従来技術で述べたドアと窓のように両者を共に開放状態に保持する必要性がない。即ち、点検カバー33を開いて外気フィルタ31の保守、点検等を行うときには、例えばオペレータがキャブ10内に乗降する必要がない。
【0075】
このため、外気フィルタ31の保守、点検等を行うときには、キャブボックス11の一方の側面部15において、乗降用のドア21を閉扉状態に保持することができ、点検カバー33のみを開くことにより、ドア21と点検カバー33とが互いに干渉するような事態を防ぐことができる。
【0076】
しかも、この場合の点検カバー33は、外気フィルタ31をキャブ10の外部に出し入れして交換作業等を行うために点検用開口32を開,閉できればよいものである。このため、点検カバー33を乗降用のドア21に比較して大幅に小さく形成でき、軽量化することができる。これにより、ドア21を開閉可能に支持する上,下1組のヒンジ36,37のうち、下側のヒンジ37を用いるだけで点検カバー33を十分に支持でき、点検カバー33を良好に開閉操作することができる。
【0077】
従って、本実施の形態によれば、空調装置26の外気フィルタ31等を点検する点検カバー33と乗降用のドア21とを共通のヒンジ37を用いて連結することにより、両者をヒンジ結合する上でのスペースを容易に確保でき、キャブ10をレイアウト設計する上での自由度を高めることができる。また、外気フィルタ31等の点検カバー33は、乗降用のドア21に比較して大幅に小さく、軽量化することができるので、1組のヒンジ37を用いて点検カバー33を開閉可能に支持することができる。
【0078】
なお、前記実施の形態では、キャブボックス11を、上面部12、前面部13、後面部14および左,右の側面部15,16からなる略四角形の箱形状に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば略五角形または多角形の箱形状にキャブボックスを形成してもよく、略円形状のボックス構造をなすキャブボックスであってもよい。
【0079】
また、前記実施の形態では、建設機械用キャブを油圧ショベル1の上部旋回体3に設けるキャブ10に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械用キャブに適用してもよい。また、浚渫船等の船体上に上部旋回体と作業装置とを備えた型式の建設機械用キャブ等にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態によるキャブが適用された油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】図1中のキャブを拡大して示す正面図である。
【図3】キャブを図2中の矢示 III−III 方向からみた断面図である。
【図4】キャブボックスの一方の側面部を図2中の矢示IV−IV方向からみた拡大断面図である。
【図5】点検カバーのロック装置等を図2中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】図4中のヒンジ等を拡大して示す要部断面図である。
【図7】図6中のヒンジを単体として示す斜視図である。
【図8】図7とは異なる方向からみたヒンジの斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 旋回フレーム(フレーム)
7 作業装置
10 キャブ
11 キャブボックス
15 側面部
19 乗降口
20 センタピラー(ピラー)
20A ヒンジ取付部
21 ドア
22 床板
23 運転席
26 空調装置
29 吸気ダクト
30 フィルタケース
31 外気フィルタ
32 点検用開口
33 点検カバー
36,37 ヒンジ
37A 第1のヒンジ板
37B 第2のヒンジ板
37C 第3のヒンジ板
37D ヒンジ軸
38,39,40 ボルト
41 ドアキャッチャ
42 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のフレーム上に設けられオペレータが出入りする乗降口を有するキャブボックスと、該キャブボックスに回動可能に設けられ前記乗降口を開閉するドアと、前記キャブボックス内に設けられ外気を取入れつつ室内に調和空気を供給する空調装置とを備えてなる建設機械用キャブにおいて、
前記キャブボックスには、前記乗降口の後側に位置して前記空調装置の外気フィルタを保守、点検するための点検用開口と、該点検用開口を開閉する点検カバーとを設け、
該点検カバーは、前記ドアの回動支点となるヒンジを共用して前記キャブボックスの側面部に対し回動可能に取付ける構成としたことを特徴とする建設機械用キャブ。
【請求項2】
前記キャブボックスには、前,後方向の中間部位に上,下方向に延びるピラーを設け、該ピラーの前側には前記乗降口を設け、その後側には前記点検用開口を設け、前記ピラーには、前記ヒンジを共用して前記乗降口を開閉する前記ドアと前記点検用開口を開閉する前記点検カバーとを設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械用キャブ。
【請求項3】
前記キャブボックスの乗降口を開閉するドアは、該ドアの上,下方向で互いに離間した複数のヒンジを用いて前記キャブボックスに取付けられ、これらの複数のヒンジのうち下側に位置するヒンジは、前記点検カバー用のヒンジを兼用する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械用キャブ。
【請求項4】
前記点検カバーとドアとに共用する前記ヒンジは、前記キャブボックスに取付けられる第1のヒンジ板と、前記ドアに取付けられる第2のヒンジ板と、前記点検カバーに取付けられる第3のヒンジ板と、前記第1のヒンジ板に対し前記第2のヒンジ板と第3のヒンジ板とを回動可能に連結する単一のヒンジ軸とにより構成してなる請求項1,2または3に記載の建設機械用キャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−57245(P2006−57245A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237567(P2004−237567)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】