説明

形状測定装置

【課題】測定範囲および測定精度を調整・変更可能なプローブを備えた形状測定装置を提供する。
【解決手段】ワークに直線状の光を照射する光照射部と、光照射部から照射された光のワークからの反射光を撮像する撮像素子32と、ワークからの反射光を撮像素子32の撮像面に結像させる結像レンズ31と、を備え、光照射部の光照射面と、結像レンズ31の主点を含む主平面と、撮像素子32の撮像面とが、シャインプルーフの条件を満たした形状測定装置であって、撮像素子32の撮像面を複数の領域(S1〜S3)に分割し、測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、複数の領域から測定に利用する領域を画像取得領域として選択する制御部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プローブによってワークの表面を非接触に走査して、ワークの表面形状を測定する形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
プローブは、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子、結像レンズ、ラインレーザ等を備えて構成されたものであって、シャインプルーフの原理を利用して測定を行っている。
シャインプルーフの原理とは、図6に示すように、撮像素子の撮像面、結像レンズの主点を含む主平面、及びワークに照射されるラインレーザの照射面をそれぞれ延長した面が、一点で交わるように配置されている場合、撮像素子の撮像面上全体が合焦状態となるというものである。
【0003】
こうしたシャインプルーフの原理を利用したプローブでは、測定精度(分解能)と測定範囲とがトレードオフの関係にある。即ち、ラインレーザの照射面上にあるワークを撮像素子で測定する場合、使用する結像レンズの光学倍率によりその撮像範囲が決定される。
このため、図7に示すように、広い範囲を測定する場合には、低倍率の結像レンズが用いられ、狭い範囲を高精度で測定する場合には、高倍率の結像レンズが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−534969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記したようなプローブにおいては、ラインレーザや結像レンズは製造過程で当該プローブに固定され、一旦固定されると変更することはできない構成であった。このため、プローブの測定精度と測定範囲とは、固定された結像レンズの光学倍率と撮像素子の大きさにより、一義的に決定されることとなっていた。
そのため、測定を行いたいワークのサイズに合せて、適切な測定範囲(あるいは測定精度)を有するプローブに取り替える必要が生じ、測定範囲(測定精度)の仕様が異なるプローブを複数種類用意する必要があった。
このように、所望の測定範囲(測定精度)が異なるだけで複数種類のプローブを用意することは、膨大なコストが発生すると共に付け替えを行うたびにアライメント作業等を行う必要があり、設置工数の増大につながっていた。
【0006】
本発明の課題は、測定範囲および測定精度を調整・変更可能なプローブを備えた形状測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、
請求項1に記載の発明は、
ワークに直線状の光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射された光のワークからの反射光を撮像する撮像素子と、
前記ワークからの反射光を前記撮像素子の撮像面に結像させる結像レンズと、を備え、
前記光照射部の光照射面と、前記結像レンズの主点を含む主平面と、前記撮像素子の撮像面とが、シャインプルーフの条件を満たした形状測定装置であって、
前記撮像素子の撮像面を複数の領域に分割し、測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、前記複数の領域から測定に利用する領域を画像取得領域として選択する画像取得領域選択手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の形状測定装置において、
測定精度及び/又は測定範囲の大きさを指示する指示手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像素子の撮像面を複数の領域に分割し、測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、複数の領域から測定に利用する領域を画像取得領域として選択する画像取得領域選択手段を備えている。
このため、結像レンズを変更することなく、測定範囲や測定精度を調整・変更できる。
よって、測定範囲や測定精度の仕様が異なるプローブを複数種類用意する必要がなく、コストが低減される。また、プローブの付け替え作業等を行う必要がないため、設置工数の低減を図ることができる。また、従来までの高速スキャンを維持することができる。
従って、形状測定装置の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の形状測定装置の全体構成図である。
【図2】形状測定装置の光学プローブの構成を説明するための図である。
【図3】形状測定装置の動作を説明するための図である。
【図4】撮像部を説明するための図である。
【図5】光学プローブの制御構成を示すブロック図である。
【図6】シャインプルーフの原理を説明するための図である。
【図7】測定精度と測定範囲との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0012】
先ず、構成について説明する。
本実施形態の形状測定装置100は、図1に示すように、制御装置101と、操作部102と、ホストシステム103と、装置本体部104と、を備えて構成されている。
【0013】
制御装置101は、装置本体部104を駆動制御すると共に、装置本体部104から必要な測定座標値等を取り込む。
【0014】
操作部102は、ユーザが、制御装置101を介して装置本体部104を手動操作するのに使用される。
【0015】
ホストシステム103は、各種画面を表示する表示部103aと、ユーザからの操作指令の入力とを行う操作部103bと、用紙に印刷を行うためのプリンタ部と等を備えて構成される。
表示部103aは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、操作部103bからの操作信号に従って、画面上に各種設定画面や、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部103bは、例えば、各種キーを有するキーボードにより構成され、手指等による操作に応じて操作信号を制御装置101に出力する。
かかるホストシステム103は、指示手段として、ユーザが、例えば、測定精度や測定範囲の大きさ(広さ)等を任意に指示する指示操作を行う場合などに使用される。
また、ホストシステム103は、制御装置101での測定手順を指示するパートプログラムを編集・実行すると共に、制御装置101を介して取り込まれた測定座標値等に幾何形状を当てはめるための計算を行ったり、パートプログラムを記録・送信する機能を備えている。
【0016】
装置本体部104は、除振台上に載置された定盤を有し、当該定盤上をXYZ方向に駆動する光学プローブP等を備えている。
【0017】
光学プローブPは、ワークの表面を非接触に走査してワークの表面形状を測定する。
光学プローブPは、シャインプルーフの原理を利用して測定を行うものであり、撮像部30の撮像素子32(後述)の撮像面上全体が合焦状態となっている。
光学プローブPは、図2に示すように、筐体1内に、制御部10と、光照射部20と、撮像部30と、等を備えて構成されている。
【0018】
光照射部20は、光源、コリメータレンズ、ロッドレンズ(何れも図示省略)等を備えて構成され、ワークに対して直線状の光を照射する。
具体的に、光源から出射された所定波長のレーザ光は、コリメータレンズにより平行光となり、ロッドレンズにより直線状の光に変換された後、ワークに直線状の光として照射される。なお、ロッドレンズの代わりにシリンドリカルレンズを用いることも可能である。
そして、光照射部20からワークに直線状のレーザ光を照射すると、ワークの表面の凹凸形状に沿ってレーザ光の反射光が変形し、ワークをある平面で切断したときの輪郭が照らし出されることとなる。
【0019】
撮像部30は、光照射部20からワークに対して照射された光の照射方向に対して、所定の角度を成す方向に配置され、ワーク表面の形状に沿って反射された光を当該所定の角度から受光する。
撮像部30は、図3(a)に示すように、所定の角度でワークを撮像するので、図3(b)に示すように、ワークの表面形状に沿ったレーザ光の反射光の画像が撮像されることとなる。
【0020】
具体的に、撮像部30は、図4に示すように、結像レンズ31と、撮像素子32と等を備えて構成されている。
なお、図4は、結像レンズ31と撮像素子32との光学的な位置関係を示した概念図であって、図4における破線が撮像素子32の撮像面を示し、一点鎖線が結像レンズ31の主点を含む主平面を示している。また、二点鎖線は、ワークに照射される光照射部20の照射面を示している。
【0021】
結像レンズ31は、ワークからの反射光を撮像素子32の撮像面に結像させる。
結像レンズ31としては、どのような光学倍率のものであっても使用可能であるが、低倍率の結像レンズであるほど、広い範囲を測定可能な範囲とすることができるため好ましい。
【0022】
撮像素子32は、結像レンズ31を介してワークの画像(ワークからの反射光)を撮像するイメージセンサ(図示省略)を備えている。
イメージセンサは、例えば、直交する2方向にそれぞれ1024個、1280個の行列状のCMOS受光素子を有して構成されている。
イメージセンサは、1つ乃至複数の行(または列)に配置されている受光素子のみを同時に受光させ、この行単位(または列単位)の受光を列方向(または行方向)に順次行う、いわゆるローリングシャッター機能を有している。
撮像素子32は、制御部10(後述)の制御により、その撮像面の一部が画像取得領域として選択され、当該画像取得領域の画素のみ読み出されて使用されるようになっている。
【0023】
制御部10は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、記憶部13等を備えて構成され、光照射部20及び撮像部30の動作の統括制御を行っている。
【0024】
CPU11は、例えば、記憶部13に記憶されている各種処理プログラムに従って、各種の制御処理を行う。
【0025】
RAM12は、CPU11により演算処理されたデータを格納するワークメモリエリアを形成している。
【0026】
記憶部13は、例えば、CPU11によって実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU11によって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形で記憶部13に記憶されている。
【0027】
具体的には、記憶部13には、例えば、画像取得領域選択プログラム131等が記憶されている。
【0028】
画像取得領域選択プログラム131は、例えば、CPU11に、撮像素子32の撮像面を複数の領域に分割し、測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、分割した複数の領域から測定に利用する領域を画像取得領域として選択する機能を実現させるプログラムである。
【0029】
具体的に、CPU11は、図4に示すように、予め設定された分割数に応じて、撮像素子32の撮像面(有効撮像領域)を複数の領域に分割して認識している。このため、測定範囲も、その分割された領域ごとに設定されることとなる。
図4は、撮像素子32の撮像面が3つの領域S1、S2、S3に分割された様子を示している。この場合、測定範囲は、領域S1に対応する測定範囲H1、領域S2に対応する測定範囲H2、領域S3に対応する測定範囲H3に分けられることとなる。なお、このとき、シャインプルーフ光学系の特性から、S1>S2>S3(H1>H2>H3)の順に高精度の測定が可能である。
【0030】
そして、ユーザがホストシステム103を用いて、測定精度及び/又は測定範囲の大きさを指示する指示操作を行うと、CPU11は、画像取得領域選択プログラム131を実行し、指示操作に応じて、3つの領域S1、S2、S3から、画像取得領域を選択する。
例えば、測定精度を「高い」と指示した場合には、領域S1が画像取得領域として選択される。
また、測定精度を「高い」とし、測定範囲を「広く」と指示した場合には、領域S2が画像取得領域として選択される。
また、測定範囲を「広く」と指示した場合には、領域S3が画像取得領域として選択される。
即ち、CPU11は、ユーザの指示に応じて、どの程度の測定精度で、どの程度の大きさの測定範囲を測定するのかを選択する。
【0031】
CPU11は、かかる画像取得領域選択プログラム131を実行することで、画像取得領域選択手段として機能している。
【0032】
次に、作用について説明する。
本実施形態においては、上記したように、例えば、高精度に測定を行いたい場合には、撮像素子32の撮像面における領域S1を利用することで、光学倍率の高い領域で測定が行われるため、高精度測定が可能である。
また、例えば、広い測定範囲で測定を行いたい場合には、撮像素子32の撮像面における領域S3を利用することで、光学倍率の低い領域で測定が行われるため、広範囲測定が可能である。
このように、結像レンズ31(光学プローブP)の交換を行わなくても、適切な測定範囲(あるいは測定精度)にて測定を行うことができる。
更に、撮像素子32においては、上記のような、撮像素子32の撮像面の一領域のみ利用する部分読み出しを行った場合、全画素を読み出す場合と比べてフレームレートを高めることができるので、高速スキャンを実現することが可能である。
従って、市販の公知の撮像素子を利用して、高速スキャンを実現することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザが測定精度及び/又は測定範囲の大きさを指示すると、制御部10は、撮像素子32の撮像面が複数の領域(S1〜S3)に分割し、指示された測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、測定に利用する画像取得領域を選択する。
このため、結像レンズ31を変更することなく、測定範囲や測定精度を調整・変更できる。
よって、測定範囲や測定精度の仕様が異なる光学プローブを複数種類用意する必要がなく、コストが低減される。また、光学プローブの付け替え作業等を行う必要がないため、設置工数の低減を図ることができる。また、従来までの高速スキャンを維持することができる。
従って、形状測定装置の使い勝手を向上させることができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、撮像素子32の撮像面を3つの領域S1〜S3に分割して認識する構成を例示しているが、分割数はこれに限定されるものではなく、2つ以上であれば良い。また、オーバラップするように領域を分割することとしても良い。
【0035】
また、上記実施形態においては、ユーザが測定精度や測定範囲を指示する構成を例示して説明したが、ワーク形状に応じて、測定精度や測定範囲を自動決定する機能を搭載することとしても良い。この場合、例えば、予め読み込まれたCADデータによりワークの起伏等を認識し、測定精度や測定範囲が決定される。
【符号の説明】
【0036】
100 形状測定装置
101 制御装置
102 操作部
103 ホストシステム
103a 表示部
103b 操作部
104 装置本体部
P 光学プローブ
1 筐体
10 制御部(画像取得領域選択手段)
11 CPU
13 記憶部
131 画像取得領域選択プログラム(画像取得領域選択手段)
20 光照射部
30 撮像部
31 結像レンズ
32 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに直線状の光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射された光のワークからの反射光を撮像する撮像素子と、
前記ワークからの反射光を前記撮像素子の撮像面に結像させる結像レンズと、を備え、
前記光照射部の光照射面と、前記結像レンズの主点を含む主平面と、前記撮像素子の撮像面とが、シャインプルーフの条件を満たした形状測定装置であって、
前記撮像素子の撮像面を複数の領域に分割し、測定精度及び/又は測定範囲の大きさに応じて、前記複数の領域から測定に利用する領域を画像取得領域として選択する画像取得領域選択手段を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
測定精度及び/又は測定範囲の大きさを指示する指示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225700(P2012−225700A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91731(P2011−91731)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】