微小共振器への結合光
光導波路およびこの光導波路に光学的に結合するように配置された光微小共振器を含む、光微小共振器装置を開示する。この導波路は、コアと、このコアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、導波路に結合された光微小共振器に基づく光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体キャビティ光共振器は、バイオセンシングを含め、検出用途においてますます注目を集めている。典型的に、これらの共振器は微小球、または平面導波路系ディスクもしくは環キャビティのいずれかからなる。これらのタイプの共振器のサイズは典型的には、微小球については約20ミクロンから数ミリメートルとなり、環型またはディスク型共振器については5ミクロンから数百ミクロンとなる。このような小さな球体、および環型またはディスク型共振器はしばしば微小共振器と称される。
【0003】
微小共振器系センサーの中で最も一般的な構成においては、微小共振器は光導波路(例えば1ミクロンから5ミクロンのサイズへテーパリングされているまたはエッチングされているといったように、形状に特別な仕様が施されている光ファイバーなど)に非常に近接して配置される。導波路へのテーパリング修正により導波路外に実質的な光場が生じ、光は微小共振器へ結合してその固有モードを励起することができる。共振器キャビティの形状に応じて、これらの固有モードは種々のタイプであってもよい。球形状およびディスクキャビティにとって、検出用途のための対象モードは、通常いわゆる「ウィスパリングギャラリーモード(WGM)」であり、キャビティの面上近傍に閉じ込められた進行波である。WGMがその面上近くに閉じ込められるため、それらは球体面上または近くの検体への結合に優れている。図2は、平面ディスク微小共振器キャビティ210内における光伝搬についてのWGM202電界配分を概略的に示す。電界強度Eは、断面線A−A’に沿ったWGM202について、図2に概略的に示される。
【0004】
単一モード導波路に基づいた環キャビティについて、横方向の経路が整数の波長に対応する制約下において、モードは単一横モードチャネル導波路である。ブラッグ格子反射体付きの単一モード導波路を使用するファブリー・ペロー共振器、またはマルチモード長方形キャビティなどのその他のキャビティ形状は、それらの固有モードとして周知の定常波共振を有する。
【0005】
低損失材料で作製され、高い表面反射率および線質を有する微小共振器を使用する場合、共振モード内に閉じ込められる光の損失は非常に低く、Q係数としても知られる線質係数について、109もの非常に高い値を達成することができる。高いQ係数により、その光は長時間共振器内で循環でき、このためキャビティモード中に非常に大きな場増強、および非常に長い有効光伝搬経路を導く。これによって、非線状光および検出用途に対し、このような装置が有用となる。検出用途において、検知される試料は、共振器の面上、またはその近傍に配置され、その微小共振器外で得られる共振電界のエバネセント部と相互作用する。電界の増強、および光と試料との間の相互作用長の増加により、微小共振器系光センサーは高い感度、および/または低い検出限界を特徴とする。
【0006】
微小球共振器がテーパリングされた光ファイバーに結合される最も一般的に追求される構成において、効果的かつ安定した結合を実現することに関して実践上の問題点がある。第1に、ファイバーの面の外側にある利用可能なファイバーコアの中に光場を作製するために、ファイバーを直径数ミクロンにまでテーパリングしなければならない。これは通常結果として、比較的長く(数cm)、脆弱なテーパー領域をもたらす。第2に、光学的結合およびQ係数が一定である場合、微小球とファイバーテーパーとの相対位置は、数ナノメートル内で一定に保持されなければならない。これは遊離球体およびテーパリングされたファイバーでは困難である。
【0007】
微小球に結合するために共通して使われる別の構成においては、斜め研磨を施したファイバーを微小球と接触させる。この場合、ファイバーテーパーの脆弱性に関連する問題は克服されるが、微小球をファイバーチップに適切に配置する上で、重大な困難が依然として存在する。さらに、微小球に結合されていない、いわゆる「スルーポート」信号を示す光は、ファイバーに閉じ込められず、それゆえ収集および分析が難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
微小共振器に対して導波路を結合するための方法および構造について改良の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光導波路と、この光導波路に光学的に結合するために配置された光微小共振器とを含む、光微小共振器装置を開示する。導波路は、コアと、このコアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む。
【0010】
本発明は、添付の図面とともに本発明の様々な実施形態の詳細な説明を熟考することによりさらに完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、特に光導波路が光微小共振器に結合される、光微小共振器装置に適用される。1つ以上の微小共振器への導波路の結合に基づく装置は、センサー、フィルター、通信装置、およびマイクロレーザーの状況において特に有用である。
【0012】
金属被覆導波路は既知であるが、本発明者はこれまでに微小共振器に結合されるものは見たことがなかった。金属被覆が他の被覆構造よりも高い程度の光学損失を有するため、歴史的に、おそらく金属被覆導波路を微小共振器に結合しようという提案はなされていない。光微小共振器とともに金属被覆導波路を使用することにより、許容される損失量で、金属被覆導波路からの光を微小共振器へ効果的に結合し、いくつかの実施形態による多くのその他の利益を得ることが可能であることが発見された。これと同様の利益がここへ述べられる。
【0013】
金属被覆層は異なる実施形態において異なる位置に配置される。導波路コア外側表面は、導波路コアの境界を画定する。金属被覆層は、コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある。いくつかの実施形態において、金属被覆は共振器に隣接したコア部分のみに沿った導波路コア上に存在する。金属被覆は、導波路の光学モードの形が修正される原因となり(カミノ,I.P.(I.P. Kaminow)ら『金属被覆光導波路:光学にあてはまる分析的および実験的研究(Metal-Clad Optical Waveguides: Analytical and Experimental Study, Applied Optics)』(1974年発行、13巻396ページ)参照)、金属からの誘電体コアの反対側の境界上に存在する電界の強度を増加することができる。金属被覆を、共振器の反対側のコアの境界上に配置した際、この電界強度の増強によって、共振器への結合強度を、従来の誘電体被覆によって達成されうる以上に増加することが可能となる。代わりに、導波路と共振器とのギャップは、妥当な結合を保持する間、(そのギャップによる加工をより容易にするため)増加することがある。
【0014】
共振器結合を促進するためのモードの重大なシフトを取得するが、それと同時に導波路の損失をあまりに強く増加させない金属は、操作の波長で屈折率「k」の虚数部の大きな値を有するものである。可視的で赤外線波長の近くにある大きなk値を有する金属の例は、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムである。
【0015】
このアプローチは、電界が金属面上に平行である基本モードに偏向した、横断方向電気「TE」の場合について主に利益となる。横断方向磁気「TM」偏向モード(電界が金属面上に対し垂直)の場合、金属層の存在は結果として、電界が金属面上近くに集中される「プラズモン」モードである基本的モードになり、それゆえその金属からコアの反対側に配置された共振器への結合は取得できない。高次TMモードと共振器の間に増強された結合を達成することは潜在的に可能であるが、一般的には高次TMモードの伝搬損失がTEモードよりも高いため、装置構造においてこのアプローチを使用することはあまり魅力的ではない。
【0016】
まず、我々は、結合システムの考察のための背景を提供するために、概して微小共振器導波路の例、およびそれらがセンサーとしていかに使用されるかを述べる。また、微小共振器に光学的に結合された金属被覆導波路の異なる構成および実施形態を、かかるシステムの利点とともに記載する。最後に、モデリングおよび実験結果を要約する。
【0017】
マイクロキャビティ導波路システム
マイクロキャビティ導波路装置100の例を図1Aに概略的に示す。光源102は導波路104に沿って検出器ユニット106へ光を方向づける。微小共振器110は導波路104に光学的に結合される。光源102からの光108は導波路104へ発光され、検出器ユニット106へ向けて伝搬する。微小共振器110は導波路104外側のいくらかの光108と一過性的に結合し、外側で結合された光112が微小共振器110内に伝搬する。導波路104とマイクロキャビティ内の光の強度112の外側の両結合は、1またはそれ以上の微小共振器の共振頻度に最大化される。
【0018】
光源102は任意の好適なタイプの光源であってもよい。効率と感度を向上させるため、光源が導波路104内に効率的に結合される光を生じることが有利であり、例えば光源はレーザーダイオードなどのレーザーであってもよく、または光源は発光ダイオードであってもよい。多くの場合、光源が調整可能な狭いスペクトラムを生成することは有利であるため、マイクロキャビティの共振器を精査するために波長を走査することができる。光源102は所望の波長または波長領域の光108を生じる。例えば微小共振器がセンサー内で用いられる場合、光源102は感知対象種と相互作用する波長の光を生じる。感知対象種は通例、共振器内を伝搬する光が感知対象種と相互作用するように、微小共振器110の表面に近接配置される。また光源102はランプと、ランプからの光を導波路104内に結合する好適な光学部品も一緒に備えてもよい。
【0019】
センサーとして使用されるマイクロキャビティ導波路システムの説明。
【0020】
センサーとしてマイクロキャビティ導波路システムを使用することに対するいくつかのアプローチがある。アプローチの選択は、検出される検体の化学、検出のための割当時間、試料調製技術などを含めさまざまな考慮によって判断される。
【0021】
1つのアプローチにおいて検出は、微小共振器110から検出器へ動く光108の強度または波長の監視に基づく。このアプローチは、検体分子が共振器表面と接触して、導波路モードのエバネセント場へ入った際に、それらがモードの実効屈折率、さらには同等の経路の長さを変更するという事実に基づいている。このことは結果として共振器の共振周波数の変化となる。共振周波数の変化は、入力波長を走査して得られた強度プロファイルを監視するか、または入力波長を一定(しかし、共振近く)に保持して検出器106に到達する光の強度の変化を検出するかのいずれかによって検出することができる。このアプローチは、検体が共振器に近位しているときに、信号の変化を促すために、タガントが検体に添付される必要がない点で、「標識不要」であるという利益を有する。
【0022】
装置100が蛍光センサーとして使用された際の代替案では、微小共振器110内で伝搬している光が、微小共振器表面の近位にある蛍光分子(蛍光染料など)によって吸収される。この染料は検体の存在を示すマーカーとしての役目を果たすために検体と関連する。より具体的な例においては、微小共振器の表面は、望ましい検体抗原に特異的な抗体で機能化してもよい。試料調製ステップの部分として蛍光染料に接合された検体抗原分子は、センサー装置100へ導かれる。抗原分子は微小共振器110上の抗体分子に結合し、それゆえ微小共振器110内で循環している光が蛍光分子と一過性的に結合する微小共振器110の十分近くへ蛍光染料分子を保持する。吸収された光は蛍光分子を励起して、分子はその後励起波長とは異なる波長で蛍光を放つ。蛍光の検出は検体抗原の存在を立証する。
【0023】
フルオロセンサーの別の例においては、検体抗原分子は蛍光染料に接合されないが、微小共振器表面に付着した抗体に結合することができる。蛍光分子に接合したより多くの抗体は、その後センサー内に導入されて抗原に結合する。また蛍光分子は微小共振器110内を伝搬する光とのエバネッセント相互作用により励起され、その後の蛍光の検出は検体抗原の存在および存在量を決定するのに用いてもよい。
【0024】
光源102は光を多数の異なる導波路に向けられてもよく、導波路104はそのような一例である。本発明によると、金属被覆導波路は光を微小共振器へ結合するために使用される。一実施形態において、図1A〜1Cの導波路は金属被覆導波路である。おそらく導波路104の全体は、金属被覆導波路ではない。代わりに、誘導体被覆導波路は、微小共振器に光学的に結合しているポイントに近い金属被覆導波路に結合することができる。残りの導波路104は任意の好適なタイプの導波路であってもよく、例えばシリカ基板内に形成された導波路などの基板内または上に形成された平面導波路またはチャネル導波路であってもよい。また導波路104は光ファイバーであってもよい。
【0025】
検出ユニット106は光検出器、例えば光を検出するフォトダイオードまたは光電子増倍管を含む。また検出ユニット106は光検出器に到達する光の波長を選択する波長感知装置を含んでもよい。波長選択装置は例えばフィルターまたは分光計であってもよい。ユーザが光検出器に入射する光の波長を能動的に変更することができるように、波長選択装置は波長調整が可能であってもよい。
【0026】
微小共振器110は導波路104に物理的に接触するか、または非常に近くにあるかのいずれかに配置されてもよく、結果として導波路104に沿って伝搬している光108の一部が微小共振器110にエバネッセント結合する。
【0027】
別のタイプの微小共振装置150を図1Bに概略的に示す。この装置150において微小共振器110からの光158は第2の導波路154内に結合されて検出器106に伝搬する。
【0028】
別のタイプの微小共振装置170を図1Cに概略的に示す。この装置170において第2の検出器172は微小共振器110からの光を検出するために微小共振器110の近くに位置されている。第2の検出器172に検出される光は導波路を介してではなく、むしろ周囲媒質(検知される液体検体など)を通り放射モードを介して第2の検出器172へ通過する。第2の検出器172によって検出される微小共振器110からの光は、例えば、微小共振器110内に循環している光によって、微小共振器の面上近くで、微小共振器110の外に散乱させるか、蛍光種の励起から生じる蛍光のいずれかであってもよい。第2の検出器172は、微小共振器110からの光のすべての波長を検出してもよいし、または例えば、第2の検出器172と微小共振器110の間に置かれた波長選択素子174の波長の利用を通じて、特定の波長領域内にある光を検出してもよい。波長選択素子174は例えば、微小共振器110内で共振する励起波長の光を拒絶するとともに蛍光波長の光を透過するフィルターであってもよい。また第2の検出器172を図1Bに示したような構成とともに用いてもよい。図1A〜1Cにおけるこれらの微小共振器装置は、本発明の微小共振器導波路結合構造を説明するための背景を提供するために描写された。
【0029】
金属被覆導波路を微小共振器に結合するための構成例
許容される光学損失量で、及びその他の多くの導波路型よりも容易な製造プロセスで、微小共振器構造をもたらす微小共振器に金属被覆導波路を結合できる方法について多くの異なる例がある。
【0030】
そのような結合の一例は図3、および図4で説明され、金属被覆光導波路308に垂直に結合された微小球共振器304を備える微小球導波路構造300である。図4は、図3の線4−4に沿った断面図である。図3および図4は、導波路の幅は微小球直径より典型的にはるかに小さいが、球体と導波路構造の詳細の両方を描写するためにここでは変形させられているため、原寸に比例していないことを留意されたい。図5〜12も、それらの例と同様に共振器のサイズより導波路の幅が典型的にはるかに小さいので、原寸に比例していない。金属被覆導波路308は、本例のシリコンウェハーである、基板310上に構成される。第1に、例えば、シリカの誘電体被覆層312はシリコンウェハー310上に成長する。その後、金属層316が、誘電体コア層320の成長後に作製される。金属層316は、光が基板へ貫通することを妨げるために、反射するインターフェイスとしての役目を果たすために選ばれる。一実施形態において、そのコア層はシリカである。そのコア320はコア隆起部324を形成するために部分的にエッチングされる。誘電体コア層320は誘電体被覆層312より高い屈折率を有する。そのコアの外側表面は境界を定め、金属層316はコアの境界の少なくとも一部の上にある。図3〜4の実施形態において、金属層は図3〜4に示す配向のためにコア320の底側の一部の上にある。
【0031】
上記の変形で、金属被覆が導波路の全体の長さに沿って存在する場合、誘電体被覆層は省いてもよい。その場合、その金属は、直接シリコンウェハー310上に堆積される。
【0032】
一実施形態において、金属層は150〜300ナノメートルの厚さの金である。一実施形態において、コア隆起部の幅は約4.6μmである。そのコア層の幅は1ミクロンから5ミクロンに変わってもよい。コア層の幅の変化により、下記にシミュレーションおよび実験的結果で説明されるときに実例説明されるように、異なる結合効率を達成できる。
【0033】
図4は図3の線4−4に沿って得られた図3の実施形態の断面図である。図4は、金属被覆層316が微小共振器304の下方にのみ存在することを示す。金属被覆層の使用によって、誘電体層に比べ光学損失が増加するため、金属被覆層316は本実施形態の微小共振器付近にのみ存在する。例えば、図3〜4の実施形態において、伝搬方向の金属被覆層の長さは約300ミクロンであり、微小球304は直径300ミクロンを有する。金属被覆層316は微小球304に対して中央に存在する。いくつかの実施形態において、金属被覆層(図4のw)は微小球の直径の0.1倍から全体の導波路の長さまでの範囲である。
【0034】
図3〜4のチャネル導波路構造308は、半導体製造技術を使用している平面基板上に一体となって作製される。次いで、球体と導波路との間の光学的結合が垂直方向に生じるハイブリッド構成を生成するために、微小球はチャネルの表面上に保留される。このアプローチは、ガラス微小球の高いQ係数を維持するが、微小球と導波路との結合をいかに正確に調整するかという問題は解決しない。(微小球とチャネル導波路との間の結合を調整することに対するアプローチは、米国公開特許出願第2005/0077513号で提案されている。)
【0035】
導波路に微小共振器を結合することに関する上記の問題の一部は、微小球共振器に基づいたハイブリッドシステムをあきらめることによって、並びに結合している導波路(1つまたは複数)および共振キャビティの両方が平面工程を介して作られる完全に集積されたシステムを使用することによって克服できる。この場合、導波路と共振器の位置の正確さおよび安定性という問題は解決される。しかしながら、導波路界がその導波路チャネルの外側に突出する小さな距離(約100〜300nm)のために、結合を調整することはさらに困難である。この小さな範囲の「エバネセント」場の理由は、小さな共振器内で低損失を達成するために必要とされる高い屈折率差である。小さいエバネセント場の結果として、導波路と共振器との間の良好な結合には、それらの間に一般的に1ミクロン未満の非常に狭いギャップが作製されることが必要である。特に導波路層は、典型的に数ミクロンの厚さであるため、そのような狭いギャップの正確かつ反復可能な作製は、非常に困難である。
【0036】
全体の微小共振器導波路構造がモノリシックに作られる説明がこれよりなされる。これは共振キャビティがディスクであるとき、または環であるとき、または球体よりもむしろ単一モードチャネルもしくはマルチモード平面導波路に基づいたその他の共振キャビティであるときに可能であり、そのため微小共振器および導波路は同じ平面基板上で作られる。このモノリシックアプローチは典型的にガラス、ポリマー、または半導体導波路で実現され、導波路と共振器の間の結合に優れた安定性を提供する。しかしながら、微小共振器を作製するために使用されるエッチングプロセスは、キャビティのQを格下げする分散損失を結果的に生じる表面の粗さをいつも引き起こす。このアプローチを用いて使って形成されたキャビティは、典型的に数千ものQ係数の値を有する。
【0037】
図5は金属被覆光導波路508に垂直に結合されたディスクまたは環微小共振器504を含む微小共振器導波路結合システム500の実施形態を示す。導波路508はこの例にあるシリコンウェハーである基板510上に構成された。まず、例えば、シリカの誘電体被覆層512は基板510上に成長する。次に、金属層516は堆積およびエッチングされ、共振器への結合が望ましい領域での局所的な金属被覆領域を提供する。次にバス導波路誘電体コア層520が堆積され、模様付けされる。続いて導波路コアは、誘電体被覆金属512よりも下に埋められ、所望により平らにされる。最後に、共振キャビティ504の高指数コア層が堆積され、模様付けされる。そのコア層520はコアの境界を定義する外側表面を有する。金属層516は、コア層の境界の少なくとも一部の上にあり、この場合は図5に示す配向に対しコア520の底面側である。金属層516は光が基板へ貫通することを妨げる高反射被覆として役目を果たし、バス導波路の中の光学モードに微小共振器へ向かって上方に結合強度を高めさせる。一実施形態において、コア層は屈折率を高めるためにドーパントを添加されたシリカでもある。バス導波路コア層520、および共振キャビティ層504は、誘電体被覆層512より高い屈折率を有する。
【0038】
図5の例は導波路に垂直に結合された微小共振器を有する。また図6に示すように、微小共振器導波路構造600によって側方結合関係を有することも可能である。環またはディスクとして作られた微小共振器604は金属被覆導波路608と結合されている。導波路608は基板610上で成長し、誘電体被覆層612及びバス導波路コア620を含む。金属被覆616は微小共振器604の反対側にあるバス導波路コア620の側面622上に配置される。この金属被覆616はバス導波路コア620にすぐ隣接した誘電体被覆612の上部にも配置される。ギャップ624は微小共振器604とバス導波路コア620の間に存在する。コアの側面622上にある金属被覆616は、結合を強化するために導波路モードを共振器へ向けて押す役割を果たす。
【0039】
図7は、追加の金属被覆部分702が微小共振器コア704の直下に存在することは除いて、図6とほぼ同一である微小共振器導波路結合構造700を示す。この構成において、共振器の光学モードは共振器の上面へ向けて押され、上面の電界が結果としてより強くなり、それゆえ微小共振器の表面感度を増加させる。金属被覆が共振器と接触しているためこの構造は他の実施形態よりも大きな光学損失を結果として生じる場合があるが、蛍光系センサーの場合のように、非常に高いQを達成することが重要でない場合に使用できることに留意されたい。図6と図7にある同一の参照番号は同一の要素を示す。
【0040】
図8は、図6の構造600と多くの類似点を有する微小共振器導波路構造800を示す。環またはディスクとして作られた微小共振器804は金属被覆導波路808と側方に沿って結合されている。金属被覆導波路808は基板810上で成長し、誘電体被覆層812およびバス導波路コア820を含む。金属被覆816は微小共振器804の反対側にあるバス導波路コア820の側面822上に配置される。ギャップ824は微小共振器804とバス導波路コア820の間に存在する。図6には存在しないが、図8で示された特徴は、金属被覆層816に隣接する補強構造828がある。補強構造828はバス導波路コア820と金属層816を強化および支持し、その結果信頼性を向上させる。一例において、補強構造828は導波路コア820と同じ金属である。
【0041】
図9もまた、金属被覆導波路908に側方に沿って結合された環またはディスクとして形成された微小共振器904を含む微小共振器導波路構造900を示す。導波路908は、基板910上に作られ、誘電体被覆層912およびバス導波路コア920を含む。金属被覆916は、バス導波路コア920にすぐ隣接している誘電体被覆912の上面と同様に、微小共振器904の反対側にあるバス導波路コア920の側面922上に配置されている。導波路908はまた、3側面上の金属被覆層916によって囲まれた補強構造928を含む。補強構造928は、バス導波路コア920を強化および支持し、その結果信頼性を向上させる。一例において、補強構造928は、金属層よりも大きな機械的強度を提供する誘電体物質である。加えて、導波路コアと同じ物質の部分930は追加の機械的安定を提供するために金属被覆916に隣接して存在し、その結果信頼性を向上させる。
【0042】
図10は、図9の構造900とほぼ同一の微小共振器導波路構造1000を示しており、ディスクまたは環微小共振器1004および導波路1008の側方に沿って結合している。しかしながら、誘電体充填物質1028は、金属被覆層1016に隣接して存在するだけではなく、構造1000の全上面にわたっておよびバス導波路コア1020と微小共振器1004の間のギャップ1024の中にも存在する。導波路1008は基板1010上に作られ、低い誘電体被覆層1012を含む。導波路1008は、導波路および金属構造に安定を追加するために、導波路コア物質部分1030を含む。誘電体充填構造1028は、微小共振器、導波路コア1020、および金属被覆1016構造を機械的に補強するための比較的低コスト技術を提供する。加えて、その充填物質1028の屈折率は、空気の屈折率よりも高いため、導波路の光の閉じ込めは弱められ、共振器と導波路の間の結合は強化される。微小共振器導波路構造1000がセンサーとして使用されることを許すため、微小共振器1004に到達するために、検体が誘電体充填物質1008を通って移動できるように、誘電体充填物質1028は、液体またはガスに対し透過性である。別のアプローチでは、充填物質は、正しい屈折率と厚さを有するように構成されるため、共振器界はその上面を突き通り、それゆえに充填物質1028の上面にある検体と結合することが可能である。
【0043】
図11は、ハイブリッド方式において単一チャネル導波路1108へ結合される3つの微小球共振器1102、1103、1104を有する微小共振器導波路構造1100を示す。構造1100は基板1110、誘電体被覆層1112、および導波路コア1120を含む。単一の金属被覆層部分1116はその導波路コア1120および3つの微小共振器1102、1103、1104部分の下方に配置されている。金属層の境界では、反射がいくらかの場合において、共振器の望まれた操作を妨げるということが予期されるので、1つの金属被覆層にわたって3つの微小共振器を一団とすることが望ましく、その結果複数の反射の発生を排除する。当然のことながら、いかなる数の共振器もこの方法で同一の金属被覆コアに結合されてよい。
【0044】
図12は、微小共振器導波路構造1200を示し、導波路コア1220の下の金属被覆1216が、その界を共振器側面上の上側被覆1228へ押すことにより、結合を向上させる。構造1200は導波路1208へ側方に沿って結合されたディスクまたは環微小共振器1204を含む。導波路コアの下に金属被覆1216を有する構造は、導波路コアの側面上に金属被覆を有する構造よりも作製が容易である。
【0045】
図12において、誘電体充填物質1228は、構造1200の上面として、およびバス導波路コア1220と微小共振器1204の間にあるギャップ1224の中に存在する。導波路1208は基板1210上に作られ、低い誘電体被覆層1212を含む。誘電体充填物質1228は、微小共振器および導波路コア1220を機械的に補強するための比較的低コスト技術を提供する。加えて、その充填物質1228の屈折率は空気の屈折率よりも高いため、導波路の光閉じ込めは弱められ、共振器と導波路の間の結合は強化される。微小共振器導波路構造1200をセンサーとして使用するために、誘電体充填物質1228は液体またはガスに対し透過性であり、その結果検体は誘電体充填物質1228を通って移動して微小共振器1204に到達できる。別のアプローチでは、充填物質は正しい屈折率と厚さを有するように構成されており、その結果共振器界がその上面を突き通り、それゆえに検体へ結合することが可能である。
【0046】
微小共振器の特徴
微小共振器は、10μmから5ミリメートルの範囲の直径を典型的に有するが、多くの場合、10μm〜500μmの範囲である。微小共振器は、環共振器、球体共振器、トロイド共振器、ディスク共振器、レーストラック状共振器、長方形状共振器、多角形状共振器、またはファブリ・ペローキャビティ共振器である。微小球共振器の一般的直径は、平面製造技術で作られた共振器がより小さく作られるのに対し、300μmである。
【0047】
いくつかの実施形態において、微小共振器の表面は、より表面感度のために改善される。例えば、同一所有者の米国公開番号第2005/0078731号は、ウィスパリングギャラリーモードを有する微小共振器の表面へ導入できる物質の量を増加させる多孔質微小共振器を記述している。
【0048】
一般的導波路の特徴
導波路は、導波路の外側の光の場の強度を増すためにテーパリングされていることが多く、このことにより微小共振器内に結合する光量を増加させる。光ファイバー導波路の場合、ファイバーは伸ばしながら熱せられおよびテーパリングされ、または合計の厚さが約1〜5μmとなるまで化学的にエッチングされる。同様に平面またはチャネル導波路では、導波路コアの厚さまたは幅を光が微小共振器に結合される領域において低減されてもよい。導波路の大きさが低減されることに加えて、導波路の周囲のクラッドの厚さも低減し得る。
【0049】
微小共振器と導波路テーパーの間の安定した相対的な位置は取得するのに難しいことがありうる。微小共振器と導波路の安定した相対的な位置を確立することについて様々なアプローチが同一所有者および同時系属米国公開特許出願第2005/0077513号でより具体的に論じられている。
【0050】
導波路がコア隆起部を含むところに、そのコア隆起部に関係した金属被覆層を配置するための多くのオプションがある。一実施形態において、金属コーティングは、コア隆起部の下に配置されている。別の実施形態において、金属被覆層は、コア隆起部分の少なくとも一部の下方にある。さらに別の実施形態において、金属被覆層は、コア隆起部の側面部分少なくとも一部の上にある。
【0051】
一実施形態において、導波路コアは、以下の物質:シリカ、シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、チタニア、ジルコニア、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、およびポリマーから、1つ以上を含む。シリカ物質は、シリカ内にゲルマニウム、リン、またはチタンなどのドーパントを有することができる。
【0052】
金属層は、装置が操作される光学周波数範囲内で優れた反射物として作用するいかなる金属であってもよい。すなわち、屈折率の虚数部が、一般的に5以上の大きいものである。しかしながら、低い伝搬損失をさらに達成するために、一般的にk/nが5より大きいような、屈折率の実数部に対して屈折率の虚数部の比率のより大きいものが望まれる。
【0053】
表Iは、波長が633nmまたは1550nmのいずれか、またはその両方で測定されたいくつかの金属に対する光学定数nとkの値を提供する。また表Iは、いくつかの金属に対するk/nの比率を表す。さらに、表Iは1550ナノメートル時のそれぞれの表皮厚を表す。表皮厚は次のように計算される。
【0054】
【数1】
【0055】
金属の光学定数の測定は、特定の材料試料、測定技術、およびその他の因子によって変わり得るということに注意することが重要である。結果として、表Iの値は他の情報から見つけられた光学定数と異なる場合がある。
【0056】
【表1】
【0057】
被覆層にふさわしい金属は、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムおよびこれらの元素の合金、を含む。金、銀、アルミニウム、銅、およびこれらの合金は、これらに基づく波長が低損失であるため、1550nmにおいての金属被覆層として特に有用である。
【0058】
これらの金属は、光学損失に対する場増強利益のバランスを保つために選ばれる。金属被覆の追加によって生じる微小共振器装置への全体の光学損失は、どれだけの長さにわたって導波路領域が結合するために金属でコーティングされるかに依存し、これは同様に共振器のサイズに依存する。結合領域は、多くの実施形態において、10から100ミクロンの長さの範囲にある。減衰/ミリメートルに対する最小値を見積もるために、最長値の100ミクロンを選ぶ場合、「低損失」は10dB/mmより低いものとして定義することが妥当である。100dB/mm(10ミクロン長における1dBに相当する)の損失が許容範囲であるならば、本質的に、本明細書に記載された金属のいずれもが機能する。許容される損失量は、どれだけの力が利用可能であるかに、どれだけその信号が強いかに、騒音源に、およびその他の要因に依存するシステムレベルの問題であるため、ある程度までは、低損失および許容され得る損失量の定義は任意である。もちろん、場増強および減衰は波長に依存し、そのため金属の選択は動作波長に依存する。
【0059】
計算に基づいて、次の傾向が明らかになる:
1)動作波長についてkが>5の際、たいていの場増強は取得される。kが2またはそのあたりまで落ちることにはいくつかの利益があるが、最高の成果にはk>5が必要である。
【0060】
2)k/nが>5の際、その損失は10dB/mmより低いと予測される。
【0061】
これらの原則は、一般的に使用される対象の波長:1550nmおよび633nmに適用される。1550nmの波長の操作で優れた場増強を提供する金属のリストは、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムのようになる。損失<10dB/mmの場合、このリストは、金、銀、アルミニウム、ナトリウム、および銅となる。明らかに、化学的理由から、ナトリウムの使用は容易ではない。633nmの動作波長では、良好な場増強を提供する金属のリストは、アルミニウムとロジウムである。このうち、アルミニウムだけが10dB/mm以下の損失も与える。
【0062】
いくつかの実施形態において、金属被覆層は模様が付けられている。いくつかの実施形態において、金属誘電体被覆層は模様が付けられている。金属層についての厚さの必要性は、金属への電界透過(electric field penetration)の深さによって決定され、表皮厚(1/電界のe崩壊長)によって述べられる。意図が結合で増強である金属被覆導波路において能力を最適にするために、その金属は、不十分な電界がコアの反対側の金属の側面へ透過しないのに十分な厚みを有するべきである。1550nmで作用する波長において、典型的な金属の表皮厚は20〜50nmである。金属の片側へ光学モードを制限するために、約2つの表皮厚を超える厚さが望ましい。それゆえに、金属の特性次第で、最少厚さは40〜100nmが妥当である。しかしながら、最小限の厚さを大きく超えた場合、金属の正確な厚さの制御は必要とされないことを留意されたい。金属の厚さが動作波長において少なくとも2倍の表皮厚である場合、結果は、屈折力の2パーセント未満が金属の誤った側面上、すなわちコアの反対側にあるというものになる。
【0063】
基板上の段階的遷移は、従来の導波路と金属被覆導波路の間にあるいくつかの実施形態において存在する。一例における金属被覆導波路はテーパーの1つの側面上に金属被覆層を有する光ファイバーテーパーである。
【0064】
チャネル導波路の微小共振器への結合を組み立てる方法
前述のとおり、微小共振器へ金属被覆チャネル導波路の結合を組み立てるための2つの第一次カテゴリーがある:ハイブリッドおよびモノリシックである。どちらのアプローチにおいても最初の基板が提供され、その上に導波路が作成され、導波路は、少なくとも一側面部分上にコアおよび金属被覆層を含む。その後、微小共振器が導波路と光学的な結合関係になるように、微小共振器を配置する。2つの選択肢とは、導波路および共振器がモノリシック光集積回路として作製されるか、または導波路および共振器が別々に作製されてハイブリッド光回路として組み立てられる、ということである。
【0065】
ARROW構造上での金属被覆導波路の利点
集積光チャネル導波路などの非ファイバー導波路の、微小球共振器との一般的利用は見出されていないが、これは微小球への光の適切な結合を得るのに十分に大きな導波路の外側で利用可能な光場を作製することが困難であるためである。微小球が使用されているチャネル導波路の一例は、反共振反射光導波路(ARROW)として知られる。より特別な型のARROWは、ストリップ線台反共振反射光導波路(Stripline Pedestal Anti-Resonant Reflecting Optical Waveguide)(SPARROW)である。ARROW構造は、SiおよびSiO2などの物質の高屈折率および低屈折率の層が交互に積み重なった高い反射性を有する基板から、導波路コアを光学的に隔離しており、その厚さは垂直に方向を持ったガイド波長の4分の1であると定義されている。ARROW構造を述べている初期の書類は米国特許第4,715,672号(デュゲ(Duguay)ら)である。米国特許第6,657,731号(タパリアン(Tapalian)ら)は、化学センサー内の微小共振器へ光を結合するためのSPARROW導波路の使用を記載する。ARROW構造の欠点は、ARROW構造は製造の間の厚さ制御を必要とする複数層を含んでいるということであり、それゆえに、相当に時間を消費し、および製造するのに複雑である。
【0066】
金属被覆導波路は、ARROW構造に比べ製造することが非常に容易である。本発明によると、高いまたは低い屈折率の金属が交互に成長する複数層よりもむしろ、単一の金属層を使用してもよい。さらに、本発明の金属被覆層の場合、いくつかの最小値よりも厚いことのみが必要で、構造が有する性能に逆影響を与えることがないのに対し、ARROW構造の場合は、反射層の厚さの非常に正確な制御を必要とする。
【0067】
従来の導波路とARROWの間に段階的なオンチップ遷移を作製することは非常に難しい。しかしながら、金属層の厚みがより小さいために、従来の導波路と金属被覆導波路の間に段階的なオンチップ遷移を作製することはより容易である。また図6〜10に示すように、側面結合を増強するために、導波路隆起部の側面上に金属コーティングを適用することは、そこへ多層反射物を堆積することよりも簡単である。
【0068】
モデリングと実験の結果
一連のモデリング実験は典型的な金属被覆導波路の特徴を究明するために行われた。この目的のために、分析的アプローチが使用され、並びに、有効モデル指数、場振幅、および様々な金属被覆導波路構造のための伝搬損失を解決するための市販のビーム伝搬法(BPM)ソフトウェアが使用された。具体的には、Rソフトデザイングループ(RSoft Design Group, Inc.)(ニューヨーク州オッシニング(Ossining, New York))から入手可能なビームPROP(商標)ソフトウェアがBPMソフトウェアとして使用された。
【0069】
モデリング実験の1つの目標は、共振器が配置される側にあるコアの外側の導波路電界振幅の割合を測定することであった。この値は、導波路モードと共振器モードの間の結合の強度に関係するため、重要であると考えられている。相対電界の増加は、参照構造に対する特定された構造のためのこの統合された振幅の比率として定義される。
【0070】
分析的アプローチは、金属被覆スラブ導波路構造の特性を調査することによって一般的傾向を求めるために使用された(カミノ(Kaminow)ら「金属被覆光導波路:分析的および実験的調査(Metal-Clad Optical Waveguides: Analytical and Experimental Study)」(『応用光学(Applied Optics)』、1974年発行、13巻396ページ)参照)。この構造は3つの層、すなわち、非常に厚い金属層と、屈折率1.5で厚さ1ミクロンのコア層と、屈折率1.33で非常に厚い上面誘電体被覆層とから成る。参照の構造は金属層にある屈折率1.45の層を除いて同一である。上面被覆層における相対電界上昇および633nmと1550nmの波長に対する計算された減衰は、図13A〜Cおよび図14A〜Cで示される。
【0071】
図13Aは、633nmの波長で、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた上面被覆層における相対電界の増加を示す。
【0072】
図13Bおよび13Cは、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた633nmの波長での毎ミリメーターデシベル単位のTEO偏光の減衰を示す。図13Cは図13Bと同じデータを示すが、両軸により細かい目盛りを使用している。
【0073】
図14Aは、1550nmの波長で、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた上面被覆層における相対電界の増加を示す。図14Bおよび14Cは、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対するプロットされた1550nmの波長での毎ミリメーターデシベル単位のTEO偏光の減衰を示す。図14Cは図14Bと同じデータを示すが、両軸に細かい目盛りを使用している。
【0074】
ビーム伝搬ソフトウェアを使用する数値のモデリングは、実質のチャネル導波路構成内の金属被覆の利益を計測するために行われた(分析が簡単に分析的に行われたスラブ導波路構成に反するものとして)。図15は、数的モデリングが行われたチャネル導波路構成1500を示す。
【0075】
チャネル導波路構造は、コア1502を含み、そのコアはそれぞれに1.5および2ミクロンの幅と高さを有し、屈折率は1.53であった。金属層1504の屈折率と厚さの始まりはそれぞれ0.56+i11.5および200nmであった。この開始点から、厚さと金属の屈折率虚数部は従属関係を探すために変えられた。コア1502は、屈折率1.45を有するシリカ基板1510上に置く。上部の被覆1508は屈折率1.33を有する水である。相対電界の増加は右側被覆領域1506で計測された。すべてのケースに対し、波長は1550ナノメートルであった。相対電界の増加の計測のための参照構造は金属をもたないケースである。結果として、その他のモデル内において金属領域であるものの屈折率は、参照構造の1.33である。
【0076】
図15の金属被覆構造について、その意図は、参照構造と比べ、コアの右側の水被覆領域内における電界の量を増加することである。
【0077】
図16は、図15に示すチャネル導波路の例についての金の層の厚さに関する実数部および虚数部の伝搬定数の従属関係をグラフで示す。図17は金の層の厚さを変更した場合の、図15に示すチャネル導波路の例の右側被覆金属領域の相対電界の増加を示す。
【0078】
図16および17は、図15の構造例において、比較的薄い金属層が使用できることを実証する。例えば、一実施形態において、金属層の厚さは20nmより大きい。別の実施形態において、金属層の厚さは40nmよりも大きい。さらに別の実施形態において、金属被覆の厚さは50nmよりも大きい。別の実施形態の場合、金属被覆層の厚さは80nmより大きい。50nmより大きい金属被覆層の場合、その構造によって、より薄い金属層によって生じうる金属被覆を介したモードの損失および漏れを回避することができる。与えられた構造に対して必要とされる金属の実際の厚さは、導波路の型、形状、および層屈折率、並びに使用される金属、および動作波長に依存する。
【0079】
図18は、金属屈折率の虚数部が変わり、屈折率の実数部が0.56で一定する間の、図15に示す構造例に対する伝搬損失を示す。図18の結果は、屈折率の実数部が0.5であったケースについての図14Bに示す分析的モデルの結果に非常によく一致する。
【0080】
実験は金属被覆導波路へ結合された微小共振器の観測されたQ係数を測定するために実行された。観測されたQ係数(quality factor)は、
【0081】
【数2】
【0082】
によって定義される(式中、
【0083】
【数3】
【0084】
が共振周波数であり、
【0085】
【数4】
【0086】
は、特定モードに対するキャビティ減衰レートである)。このことは関数
【0087】
【数5】
【0088】
を使用して実験的に決定される(式中、
【0089】
【数6】
【0090】
は、それぞれ共振波長および1/2幅である)。
【0091】
また、
【0092】
【数7】
【0093】
である(式中、
【0094】
【数8】
【0095】
は、共振器の固有のQ係数であり、
【0096】
【数9】
【0097】
は、導波路への結合による寄与である)。
【0098】
導波路を通して透過される光の一部は、測定可能であり等式
【0099】
【数10】
【0100】
を満たす。最大光強度は導波路から
【0101】
【数11】
【0102】
の場合、引き出されるということに留意されたい。
【0103】
再配列は
【0104】
【数12】
【0105】
および、
【0106】
【数13】
【0107】
を与える。
【0108】
テストされた例は、図3および4の例で、微小球共振器が直径300ミクロンを有し、および導波路が厚さ300ナノメートルの金被覆層を含むものであった。導波路のコアの厚さは異なる実験に対し変えられた。コア隆起部の幅は4.6ミクロンであった。この実験配列は図1Aで示すものと似ていた。それぞれの実験において、金被覆導波路108は微小共振器110と接触するように配置され、両方は水に浸された。ダイオード波長可変レーザーが980nmでのレーザー波長を有する光原102として使用された。レーザーによって放たれた光の波長は、レーザー内側の圧電アクチュエーター(piezo-actuator)を作動させる電圧を変えることによって調整された。波長が、1以上の微小共振器のウィスパリングギャラリーモード112で共振時であったとき、その微小共振器へ結合されたレーザー力の総量は増加され、検知器106においてパワードロップを導いた。
【0109】
図19は、コアの厚さが2.0ミクロンの厚さであるレーザー波長調整の機能を有する検知器で検知された信号を示す。微小共振器の観測されたQ係数は、これら結果から約7×106となると推定され、その効率はほぼ100%となった。微小共振器の固有のQ係数は1.4×107と計算された。
【0110】
この結果は、高いQ係数を有する微小共振器を金属被覆導波路へ有効的に結合することができることを立証する。
【0111】
異なる実施形態において、コアの厚さは2.5ミクロンの厚さであった。微小共振器システムのQ係数は約3×106であり、結合効率は78%であった。別の実験ではコアの厚さが3ミクロンの厚さであるところで行われた。微小共振器システムのQ係数は、約1.5×106であり、結合効率は、ほぼ60%であった。別の実施形態において、コアの厚さは4ミクロンの厚さであった。微小共振器システムのQ係数は、約5×106であり、結合効率は30%であった。
【0112】
これらの実験の間、微小球共振器と結合された金被覆導波路の光の減衰または損失は、ARROW構造の導波路の減衰または損失と比較可能であるということが発見された。さらに、その金被覆導波路はTE偏光のみを透過するということが発見された。
【0113】
上記のように、本発明は微小共振器に適用され、微小共振器が検出用途において使用される場合に特に役立つと考えられる。本発明は、上に記載した特定の実施例に限られるとみなすべきではなく、添付の請求項で明確に提示されているとおり、本発明のあらゆる態様を網羅していると理解すべきである。本明細書を検討すれば、本発明を適用可能なさまざまな変更例、均等なプロセス、多数の構造を本発明に関連する当業者には容易に明らかになろう。特許請求の範囲はこのような修正および装置を網羅しようとするものである。
【0114】
上記明細書は完全な構造の説明および本発明の使用を提供する。本発明の実施形態の多くは、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことが可能であるため、本発明は特許請求の範囲に属する。
【0115】
本発明は多くの方法で改善されうるが、具体例を例として図面に示し、詳細に示す。しかしながら、本発明を、記載される特定の実施形態に限定することを意図しないことが理解されよう。逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の趣旨と範疇に含まれる全ての修正物、等価物、および代替物を網羅することである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1A】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図1B】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図1C】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図2】光線モデル、および平面ディスクに対するウィスパリングギャラリーモード内に伝搬している光の電界配信の概略図。
【図3】微小球共振器に結合された金属被覆導波路の実施形態の概略図。
【図4】図3の実施形態の線4−4に沿った側面断面の概略図。
【図5】金属被覆導波路に垂直に結合された平面(ディスクまたは環)微小共振器の実施形態の概略図。
【図6】金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図7】より優れた表面感度のために共振器が改善された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図8】導波路を強化するために金属被覆がギャップ内に配置された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図9】導波路を強化するために金属および誘電体被覆がギャップ内に配置された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図10】導波路と強化するために金属および誘電体被覆がギャップ内に配置されるとともに、追加の強化を加えるために誘電体被覆が構造の上面にわたる、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図11】金属被覆導波路に垂直に結合された3つの球形微小共振器の概略図。
【図12】導波路コアの下に金属が配置され、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図13A】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図13B】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図13C】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14A】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14B】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14C】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図15】図16〜18に示された結果である、数的モデリングが行われたチャネル導波路構造の図。
【図16】金属が金であり、1550nmの波長での、図15の金属層の厚さの実効モード屈折率の従属関係のビーム伝搬法(BPM)による計測。
【図17】金属層の厚さに応じて、図15に示された金属被覆導波路についての相対電界の増強のBPM計測。
【図18】金属の屈折率虚数部に応じて、図15に示された金属被覆導波路についての伝搬損失のBPM計測。
【図19】本発明の原理による、金属被覆導波路に結合された微小球からなる微小共振器の実施形態のための、実験的に取得された共振プロットを示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、導波路に結合された光微小共振器に基づく光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体キャビティ光共振器は、バイオセンシングを含め、検出用途においてますます注目を集めている。典型的に、これらの共振器は微小球、または平面導波路系ディスクもしくは環キャビティのいずれかからなる。これらのタイプの共振器のサイズは典型的には、微小球については約20ミクロンから数ミリメートルとなり、環型またはディスク型共振器については5ミクロンから数百ミクロンとなる。このような小さな球体、および環型またはディスク型共振器はしばしば微小共振器と称される。
【0003】
微小共振器系センサーの中で最も一般的な構成においては、微小共振器は光導波路(例えば1ミクロンから5ミクロンのサイズへテーパリングされているまたはエッチングされているといったように、形状に特別な仕様が施されている光ファイバーなど)に非常に近接して配置される。導波路へのテーパリング修正により導波路外に実質的な光場が生じ、光は微小共振器へ結合してその固有モードを励起することができる。共振器キャビティの形状に応じて、これらの固有モードは種々のタイプであってもよい。球形状およびディスクキャビティにとって、検出用途のための対象モードは、通常いわゆる「ウィスパリングギャラリーモード(WGM)」であり、キャビティの面上近傍に閉じ込められた進行波である。WGMがその面上近くに閉じ込められるため、それらは球体面上または近くの検体への結合に優れている。図2は、平面ディスク微小共振器キャビティ210内における光伝搬についてのWGM202電界配分を概略的に示す。電界強度Eは、断面線A−A’に沿ったWGM202について、図2に概略的に示される。
【0004】
単一モード導波路に基づいた環キャビティについて、横方向の経路が整数の波長に対応する制約下において、モードは単一横モードチャネル導波路である。ブラッグ格子反射体付きの単一モード導波路を使用するファブリー・ペロー共振器、またはマルチモード長方形キャビティなどのその他のキャビティ形状は、それらの固有モードとして周知の定常波共振を有する。
【0005】
低損失材料で作製され、高い表面反射率および線質を有する微小共振器を使用する場合、共振モード内に閉じ込められる光の損失は非常に低く、Q係数としても知られる線質係数について、109もの非常に高い値を達成することができる。高いQ係数により、その光は長時間共振器内で循環でき、このためキャビティモード中に非常に大きな場増強、および非常に長い有効光伝搬経路を導く。これによって、非線状光および検出用途に対し、このような装置が有用となる。検出用途において、検知される試料は、共振器の面上、またはその近傍に配置され、その微小共振器外で得られる共振電界のエバネセント部と相互作用する。電界の増強、および光と試料との間の相互作用長の増加により、微小共振器系光センサーは高い感度、および/または低い検出限界を特徴とする。
【0006】
微小球共振器がテーパリングされた光ファイバーに結合される最も一般的に追求される構成において、効果的かつ安定した結合を実現することに関して実践上の問題点がある。第1に、ファイバーの面の外側にある利用可能なファイバーコアの中に光場を作製するために、ファイバーを直径数ミクロンにまでテーパリングしなければならない。これは通常結果として、比較的長く(数cm)、脆弱なテーパー領域をもたらす。第2に、光学的結合およびQ係数が一定である場合、微小球とファイバーテーパーとの相対位置は、数ナノメートル内で一定に保持されなければならない。これは遊離球体およびテーパリングされたファイバーでは困難である。
【0007】
微小球に結合するために共通して使われる別の構成においては、斜め研磨を施したファイバーを微小球と接触させる。この場合、ファイバーテーパーの脆弱性に関連する問題は克服されるが、微小球をファイバーチップに適切に配置する上で、重大な困難が依然として存在する。さらに、微小球に結合されていない、いわゆる「スルーポート」信号を示す光は、ファイバーに閉じ込められず、それゆえ収集および分析が難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
微小共振器に対して導波路を結合するための方法および構造について改良の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光導波路と、この光導波路に光学的に結合するために配置された光微小共振器とを含む、光微小共振器装置を開示する。導波路は、コアと、このコアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む。
【0010】
本発明は、添付の図面とともに本発明の様々な実施形態の詳細な説明を熟考することによりさらに完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、特に光導波路が光微小共振器に結合される、光微小共振器装置に適用される。1つ以上の微小共振器への導波路の結合に基づく装置は、センサー、フィルター、通信装置、およびマイクロレーザーの状況において特に有用である。
【0012】
金属被覆導波路は既知であるが、本発明者はこれまでに微小共振器に結合されるものは見たことがなかった。金属被覆が他の被覆構造よりも高い程度の光学損失を有するため、歴史的に、おそらく金属被覆導波路を微小共振器に結合しようという提案はなされていない。光微小共振器とともに金属被覆導波路を使用することにより、許容される損失量で、金属被覆導波路からの光を微小共振器へ効果的に結合し、いくつかの実施形態による多くのその他の利益を得ることが可能であることが発見された。これと同様の利益がここへ述べられる。
【0013】
金属被覆層は異なる実施形態において異なる位置に配置される。導波路コア外側表面は、導波路コアの境界を画定する。金属被覆層は、コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある。いくつかの実施形態において、金属被覆は共振器に隣接したコア部分のみに沿った導波路コア上に存在する。金属被覆は、導波路の光学モードの形が修正される原因となり(カミノ,I.P.(I.P. Kaminow)ら『金属被覆光導波路:光学にあてはまる分析的および実験的研究(Metal-Clad Optical Waveguides: Analytical and Experimental Study, Applied Optics)』(1974年発行、13巻396ページ)参照)、金属からの誘電体コアの反対側の境界上に存在する電界の強度を増加することができる。金属被覆を、共振器の反対側のコアの境界上に配置した際、この電界強度の増強によって、共振器への結合強度を、従来の誘電体被覆によって達成されうる以上に増加することが可能となる。代わりに、導波路と共振器とのギャップは、妥当な結合を保持する間、(そのギャップによる加工をより容易にするため)増加することがある。
【0014】
共振器結合を促進するためのモードの重大なシフトを取得するが、それと同時に導波路の損失をあまりに強く増加させない金属は、操作の波長で屈折率「k」の虚数部の大きな値を有するものである。可視的で赤外線波長の近くにある大きなk値を有する金属の例は、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムである。
【0015】
このアプローチは、電界が金属面上に平行である基本モードに偏向した、横断方向電気「TE」の場合について主に利益となる。横断方向磁気「TM」偏向モード(電界が金属面上に対し垂直)の場合、金属層の存在は結果として、電界が金属面上近くに集中される「プラズモン」モードである基本的モードになり、それゆえその金属からコアの反対側に配置された共振器への結合は取得できない。高次TMモードと共振器の間に増強された結合を達成することは潜在的に可能であるが、一般的には高次TMモードの伝搬損失がTEモードよりも高いため、装置構造においてこのアプローチを使用することはあまり魅力的ではない。
【0016】
まず、我々は、結合システムの考察のための背景を提供するために、概して微小共振器導波路の例、およびそれらがセンサーとしていかに使用されるかを述べる。また、微小共振器に光学的に結合された金属被覆導波路の異なる構成および実施形態を、かかるシステムの利点とともに記載する。最後に、モデリングおよび実験結果を要約する。
【0017】
マイクロキャビティ導波路システム
マイクロキャビティ導波路装置100の例を図1Aに概略的に示す。光源102は導波路104に沿って検出器ユニット106へ光を方向づける。微小共振器110は導波路104に光学的に結合される。光源102からの光108は導波路104へ発光され、検出器ユニット106へ向けて伝搬する。微小共振器110は導波路104外側のいくらかの光108と一過性的に結合し、外側で結合された光112が微小共振器110内に伝搬する。導波路104とマイクロキャビティ内の光の強度112の外側の両結合は、1またはそれ以上の微小共振器の共振頻度に最大化される。
【0018】
光源102は任意の好適なタイプの光源であってもよい。効率と感度を向上させるため、光源が導波路104内に効率的に結合される光を生じることが有利であり、例えば光源はレーザーダイオードなどのレーザーであってもよく、または光源は発光ダイオードであってもよい。多くの場合、光源が調整可能な狭いスペクトラムを生成することは有利であるため、マイクロキャビティの共振器を精査するために波長を走査することができる。光源102は所望の波長または波長領域の光108を生じる。例えば微小共振器がセンサー内で用いられる場合、光源102は感知対象種と相互作用する波長の光を生じる。感知対象種は通例、共振器内を伝搬する光が感知対象種と相互作用するように、微小共振器110の表面に近接配置される。また光源102はランプと、ランプからの光を導波路104内に結合する好適な光学部品も一緒に備えてもよい。
【0019】
センサーとして使用されるマイクロキャビティ導波路システムの説明。
【0020】
センサーとしてマイクロキャビティ導波路システムを使用することに対するいくつかのアプローチがある。アプローチの選択は、検出される検体の化学、検出のための割当時間、試料調製技術などを含めさまざまな考慮によって判断される。
【0021】
1つのアプローチにおいて検出は、微小共振器110から検出器へ動く光108の強度または波長の監視に基づく。このアプローチは、検体分子が共振器表面と接触して、導波路モードのエバネセント場へ入った際に、それらがモードの実効屈折率、さらには同等の経路の長さを変更するという事実に基づいている。このことは結果として共振器の共振周波数の変化となる。共振周波数の変化は、入力波長を走査して得られた強度プロファイルを監視するか、または入力波長を一定(しかし、共振近く)に保持して検出器106に到達する光の強度の変化を検出するかのいずれかによって検出することができる。このアプローチは、検体が共振器に近位しているときに、信号の変化を促すために、タガントが検体に添付される必要がない点で、「標識不要」であるという利益を有する。
【0022】
装置100が蛍光センサーとして使用された際の代替案では、微小共振器110内で伝搬している光が、微小共振器表面の近位にある蛍光分子(蛍光染料など)によって吸収される。この染料は検体の存在を示すマーカーとしての役目を果たすために検体と関連する。より具体的な例においては、微小共振器の表面は、望ましい検体抗原に特異的な抗体で機能化してもよい。試料調製ステップの部分として蛍光染料に接合された検体抗原分子は、センサー装置100へ導かれる。抗原分子は微小共振器110上の抗体分子に結合し、それゆえ微小共振器110内で循環している光が蛍光分子と一過性的に結合する微小共振器110の十分近くへ蛍光染料分子を保持する。吸収された光は蛍光分子を励起して、分子はその後励起波長とは異なる波長で蛍光を放つ。蛍光の検出は検体抗原の存在を立証する。
【0023】
フルオロセンサーの別の例においては、検体抗原分子は蛍光染料に接合されないが、微小共振器表面に付着した抗体に結合することができる。蛍光分子に接合したより多くの抗体は、その後センサー内に導入されて抗原に結合する。また蛍光分子は微小共振器110内を伝搬する光とのエバネッセント相互作用により励起され、その後の蛍光の検出は検体抗原の存在および存在量を決定するのに用いてもよい。
【0024】
光源102は光を多数の異なる導波路に向けられてもよく、導波路104はそのような一例である。本発明によると、金属被覆導波路は光を微小共振器へ結合するために使用される。一実施形態において、図1A〜1Cの導波路は金属被覆導波路である。おそらく導波路104の全体は、金属被覆導波路ではない。代わりに、誘導体被覆導波路は、微小共振器に光学的に結合しているポイントに近い金属被覆導波路に結合することができる。残りの導波路104は任意の好適なタイプの導波路であってもよく、例えばシリカ基板内に形成された導波路などの基板内または上に形成された平面導波路またはチャネル導波路であってもよい。また導波路104は光ファイバーであってもよい。
【0025】
検出ユニット106は光検出器、例えば光を検出するフォトダイオードまたは光電子増倍管を含む。また検出ユニット106は光検出器に到達する光の波長を選択する波長感知装置を含んでもよい。波長選択装置は例えばフィルターまたは分光計であってもよい。ユーザが光検出器に入射する光の波長を能動的に変更することができるように、波長選択装置は波長調整が可能であってもよい。
【0026】
微小共振器110は導波路104に物理的に接触するか、または非常に近くにあるかのいずれかに配置されてもよく、結果として導波路104に沿って伝搬している光108の一部が微小共振器110にエバネッセント結合する。
【0027】
別のタイプの微小共振装置150を図1Bに概略的に示す。この装置150において微小共振器110からの光158は第2の導波路154内に結合されて検出器106に伝搬する。
【0028】
別のタイプの微小共振装置170を図1Cに概略的に示す。この装置170において第2の検出器172は微小共振器110からの光を検出するために微小共振器110の近くに位置されている。第2の検出器172に検出される光は導波路を介してではなく、むしろ周囲媒質(検知される液体検体など)を通り放射モードを介して第2の検出器172へ通過する。第2の検出器172によって検出される微小共振器110からの光は、例えば、微小共振器110内に循環している光によって、微小共振器の面上近くで、微小共振器110の外に散乱させるか、蛍光種の励起から生じる蛍光のいずれかであってもよい。第2の検出器172は、微小共振器110からの光のすべての波長を検出してもよいし、または例えば、第2の検出器172と微小共振器110の間に置かれた波長選択素子174の波長の利用を通じて、特定の波長領域内にある光を検出してもよい。波長選択素子174は例えば、微小共振器110内で共振する励起波長の光を拒絶するとともに蛍光波長の光を透過するフィルターであってもよい。また第2の検出器172を図1Bに示したような構成とともに用いてもよい。図1A〜1Cにおけるこれらの微小共振器装置は、本発明の微小共振器導波路結合構造を説明するための背景を提供するために描写された。
【0029】
金属被覆導波路を微小共振器に結合するための構成例
許容される光学損失量で、及びその他の多くの導波路型よりも容易な製造プロセスで、微小共振器構造をもたらす微小共振器に金属被覆導波路を結合できる方法について多くの異なる例がある。
【0030】
そのような結合の一例は図3、および図4で説明され、金属被覆光導波路308に垂直に結合された微小球共振器304を備える微小球導波路構造300である。図4は、図3の線4−4に沿った断面図である。図3および図4は、導波路の幅は微小球直径より典型的にはるかに小さいが、球体と導波路構造の詳細の両方を描写するためにここでは変形させられているため、原寸に比例していないことを留意されたい。図5〜12も、それらの例と同様に共振器のサイズより導波路の幅が典型的にはるかに小さいので、原寸に比例していない。金属被覆導波路308は、本例のシリコンウェハーである、基板310上に構成される。第1に、例えば、シリカの誘電体被覆層312はシリコンウェハー310上に成長する。その後、金属層316が、誘電体コア層320の成長後に作製される。金属層316は、光が基板へ貫通することを妨げるために、反射するインターフェイスとしての役目を果たすために選ばれる。一実施形態において、そのコア層はシリカである。そのコア320はコア隆起部324を形成するために部分的にエッチングされる。誘電体コア層320は誘電体被覆層312より高い屈折率を有する。そのコアの外側表面は境界を定め、金属層316はコアの境界の少なくとも一部の上にある。図3〜4の実施形態において、金属層は図3〜4に示す配向のためにコア320の底側の一部の上にある。
【0031】
上記の変形で、金属被覆が導波路の全体の長さに沿って存在する場合、誘電体被覆層は省いてもよい。その場合、その金属は、直接シリコンウェハー310上に堆積される。
【0032】
一実施形態において、金属層は150〜300ナノメートルの厚さの金である。一実施形態において、コア隆起部の幅は約4.6μmである。そのコア層の幅は1ミクロンから5ミクロンに変わってもよい。コア層の幅の変化により、下記にシミュレーションおよび実験的結果で説明されるときに実例説明されるように、異なる結合効率を達成できる。
【0033】
図4は図3の線4−4に沿って得られた図3の実施形態の断面図である。図4は、金属被覆層316が微小共振器304の下方にのみ存在することを示す。金属被覆層の使用によって、誘電体層に比べ光学損失が増加するため、金属被覆層316は本実施形態の微小共振器付近にのみ存在する。例えば、図3〜4の実施形態において、伝搬方向の金属被覆層の長さは約300ミクロンであり、微小球304は直径300ミクロンを有する。金属被覆層316は微小球304に対して中央に存在する。いくつかの実施形態において、金属被覆層(図4のw)は微小球の直径の0.1倍から全体の導波路の長さまでの範囲である。
【0034】
図3〜4のチャネル導波路構造308は、半導体製造技術を使用している平面基板上に一体となって作製される。次いで、球体と導波路との間の光学的結合が垂直方向に生じるハイブリッド構成を生成するために、微小球はチャネルの表面上に保留される。このアプローチは、ガラス微小球の高いQ係数を維持するが、微小球と導波路との結合をいかに正確に調整するかという問題は解決しない。(微小球とチャネル導波路との間の結合を調整することに対するアプローチは、米国公開特許出願第2005/0077513号で提案されている。)
【0035】
導波路に微小共振器を結合することに関する上記の問題の一部は、微小球共振器に基づいたハイブリッドシステムをあきらめることによって、並びに結合している導波路(1つまたは複数)および共振キャビティの両方が平面工程を介して作られる完全に集積されたシステムを使用することによって克服できる。この場合、導波路と共振器の位置の正確さおよび安定性という問題は解決される。しかしながら、導波路界がその導波路チャネルの外側に突出する小さな距離(約100〜300nm)のために、結合を調整することはさらに困難である。この小さな範囲の「エバネセント」場の理由は、小さな共振器内で低損失を達成するために必要とされる高い屈折率差である。小さいエバネセント場の結果として、導波路と共振器との間の良好な結合には、それらの間に一般的に1ミクロン未満の非常に狭いギャップが作製されることが必要である。特に導波路層は、典型的に数ミクロンの厚さであるため、そのような狭いギャップの正確かつ反復可能な作製は、非常に困難である。
【0036】
全体の微小共振器導波路構造がモノリシックに作られる説明がこれよりなされる。これは共振キャビティがディスクであるとき、または環であるとき、または球体よりもむしろ単一モードチャネルもしくはマルチモード平面導波路に基づいたその他の共振キャビティであるときに可能であり、そのため微小共振器および導波路は同じ平面基板上で作られる。このモノリシックアプローチは典型的にガラス、ポリマー、または半導体導波路で実現され、導波路と共振器の間の結合に優れた安定性を提供する。しかしながら、微小共振器を作製するために使用されるエッチングプロセスは、キャビティのQを格下げする分散損失を結果的に生じる表面の粗さをいつも引き起こす。このアプローチを用いて使って形成されたキャビティは、典型的に数千ものQ係数の値を有する。
【0037】
図5は金属被覆光導波路508に垂直に結合されたディスクまたは環微小共振器504を含む微小共振器導波路結合システム500の実施形態を示す。導波路508はこの例にあるシリコンウェハーである基板510上に構成された。まず、例えば、シリカの誘電体被覆層512は基板510上に成長する。次に、金属層516は堆積およびエッチングされ、共振器への結合が望ましい領域での局所的な金属被覆領域を提供する。次にバス導波路誘電体コア層520が堆積され、模様付けされる。続いて導波路コアは、誘電体被覆金属512よりも下に埋められ、所望により平らにされる。最後に、共振キャビティ504の高指数コア層が堆積され、模様付けされる。そのコア層520はコアの境界を定義する外側表面を有する。金属層516は、コア層の境界の少なくとも一部の上にあり、この場合は図5に示す配向に対しコア520の底面側である。金属層516は光が基板へ貫通することを妨げる高反射被覆として役目を果たし、バス導波路の中の光学モードに微小共振器へ向かって上方に結合強度を高めさせる。一実施形態において、コア層は屈折率を高めるためにドーパントを添加されたシリカでもある。バス導波路コア層520、および共振キャビティ層504は、誘電体被覆層512より高い屈折率を有する。
【0038】
図5の例は導波路に垂直に結合された微小共振器を有する。また図6に示すように、微小共振器導波路構造600によって側方結合関係を有することも可能である。環またはディスクとして作られた微小共振器604は金属被覆導波路608と結合されている。導波路608は基板610上で成長し、誘電体被覆層612及びバス導波路コア620を含む。金属被覆616は微小共振器604の反対側にあるバス導波路コア620の側面622上に配置される。この金属被覆616はバス導波路コア620にすぐ隣接した誘電体被覆612の上部にも配置される。ギャップ624は微小共振器604とバス導波路コア620の間に存在する。コアの側面622上にある金属被覆616は、結合を強化するために導波路モードを共振器へ向けて押す役割を果たす。
【0039】
図7は、追加の金属被覆部分702が微小共振器コア704の直下に存在することは除いて、図6とほぼ同一である微小共振器導波路結合構造700を示す。この構成において、共振器の光学モードは共振器の上面へ向けて押され、上面の電界が結果としてより強くなり、それゆえ微小共振器の表面感度を増加させる。金属被覆が共振器と接触しているためこの構造は他の実施形態よりも大きな光学損失を結果として生じる場合があるが、蛍光系センサーの場合のように、非常に高いQを達成することが重要でない場合に使用できることに留意されたい。図6と図7にある同一の参照番号は同一の要素を示す。
【0040】
図8は、図6の構造600と多くの類似点を有する微小共振器導波路構造800を示す。環またはディスクとして作られた微小共振器804は金属被覆導波路808と側方に沿って結合されている。金属被覆導波路808は基板810上で成長し、誘電体被覆層812およびバス導波路コア820を含む。金属被覆816は微小共振器804の反対側にあるバス導波路コア820の側面822上に配置される。ギャップ824は微小共振器804とバス導波路コア820の間に存在する。図6には存在しないが、図8で示された特徴は、金属被覆層816に隣接する補強構造828がある。補強構造828はバス導波路コア820と金属層816を強化および支持し、その結果信頼性を向上させる。一例において、補強構造828は導波路コア820と同じ金属である。
【0041】
図9もまた、金属被覆導波路908に側方に沿って結合された環またはディスクとして形成された微小共振器904を含む微小共振器導波路構造900を示す。導波路908は、基板910上に作られ、誘電体被覆層912およびバス導波路コア920を含む。金属被覆916は、バス導波路コア920にすぐ隣接している誘電体被覆912の上面と同様に、微小共振器904の反対側にあるバス導波路コア920の側面922上に配置されている。導波路908はまた、3側面上の金属被覆層916によって囲まれた補強構造928を含む。補強構造928は、バス導波路コア920を強化および支持し、その結果信頼性を向上させる。一例において、補強構造928は、金属層よりも大きな機械的強度を提供する誘電体物質である。加えて、導波路コアと同じ物質の部分930は追加の機械的安定を提供するために金属被覆916に隣接して存在し、その結果信頼性を向上させる。
【0042】
図10は、図9の構造900とほぼ同一の微小共振器導波路構造1000を示しており、ディスクまたは環微小共振器1004および導波路1008の側方に沿って結合している。しかしながら、誘電体充填物質1028は、金属被覆層1016に隣接して存在するだけではなく、構造1000の全上面にわたっておよびバス導波路コア1020と微小共振器1004の間のギャップ1024の中にも存在する。導波路1008は基板1010上に作られ、低い誘電体被覆層1012を含む。導波路1008は、導波路および金属構造に安定を追加するために、導波路コア物質部分1030を含む。誘電体充填構造1028は、微小共振器、導波路コア1020、および金属被覆1016構造を機械的に補強するための比較的低コスト技術を提供する。加えて、その充填物質1028の屈折率は、空気の屈折率よりも高いため、導波路の光の閉じ込めは弱められ、共振器と導波路の間の結合は強化される。微小共振器導波路構造1000がセンサーとして使用されることを許すため、微小共振器1004に到達するために、検体が誘電体充填物質1008を通って移動できるように、誘電体充填物質1028は、液体またはガスに対し透過性である。別のアプローチでは、充填物質は、正しい屈折率と厚さを有するように構成されるため、共振器界はその上面を突き通り、それゆえに充填物質1028の上面にある検体と結合することが可能である。
【0043】
図11は、ハイブリッド方式において単一チャネル導波路1108へ結合される3つの微小球共振器1102、1103、1104を有する微小共振器導波路構造1100を示す。構造1100は基板1110、誘電体被覆層1112、および導波路コア1120を含む。単一の金属被覆層部分1116はその導波路コア1120および3つの微小共振器1102、1103、1104部分の下方に配置されている。金属層の境界では、反射がいくらかの場合において、共振器の望まれた操作を妨げるということが予期されるので、1つの金属被覆層にわたって3つの微小共振器を一団とすることが望ましく、その結果複数の反射の発生を排除する。当然のことながら、いかなる数の共振器もこの方法で同一の金属被覆コアに結合されてよい。
【0044】
図12は、微小共振器導波路構造1200を示し、導波路コア1220の下の金属被覆1216が、その界を共振器側面上の上側被覆1228へ押すことにより、結合を向上させる。構造1200は導波路1208へ側方に沿って結合されたディスクまたは環微小共振器1204を含む。導波路コアの下に金属被覆1216を有する構造は、導波路コアの側面上に金属被覆を有する構造よりも作製が容易である。
【0045】
図12において、誘電体充填物質1228は、構造1200の上面として、およびバス導波路コア1220と微小共振器1204の間にあるギャップ1224の中に存在する。導波路1208は基板1210上に作られ、低い誘電体被覆層1212を含む。誘電体充填物質1228は、微小共振器および導波路コア1220を機械的に補強するための比較的低コスト技術を提供する。加えて、その充填物質1228の屈折率は空気の屈折率よりも高いため、導波路の光閉じ込めは弱められ、共振器と導波路の間の結合は強化される。微小共振器導波路構造1200をセンサーとして使用するために、誘電体充填物質1228は液体またはガスに対し透過性であり、その結果検体は誘電体充填物質1228を通って移動して微小共振器1204に到達できる。別のアプローチでは、充填物質は正しい屈折率と厚さを有するように構成されており、その結果共振器界がその上面を突き通り、それゆえに検体へ結合することが可能である。
【0046】
微小共振器の特徴
微小共振器は、10μmから5ミリメートルの範囲の直径を典型的に有するが、多くの場合、10μm〜500μmの範囲である。微小共振器は、環共振器、球体共振器、トロイド共振器、ディスク共振器、レーストラック状共振器、長方形状共振器、多角形状共振器、またはファブリ・ペローキャビティ共振器である。微小球共振器の一般的直径は、平面製造技術で作られた共振器がより小さく作られるのに対し、300μmである。
【0047】
いくつかの実施形態において、微小共振器の表面は、より表面感度のために改善される。例えば、同一所有者の米国公開番号第2005/0078731号は、ウィスパリングギャラリーモードを有する微小共振器の表面へ導入できる物質の量を増加させる多孔質微小共振器を記述している。
【0048】
一般的導波路の特徴
導波路は、導波路の外側の光の場の強度を増すためにテーパリングされていることが多く、このことにより微小共振器内に結合する光量を増加させる。光ファイバー導波路の場合、ファイバーは伸ばしながら熱せられおよびテーパリングされ、または合計の厚さが約1〜5μmとなるまで化学的にエッチングされる。同様に平面またはチャネル導波路では、導波路コアの厚さまたは幅を光が微小共振器に結合される領域において低減されてもよい。導波路の大きさが低減されることに加えて、導波路の周囲のクラッドの厚さも低減し得る。
【0049】
微小共振器と導波路テーパーの間の安定した相対的な位置は取得するのに難しいことがありうる。微小共振器と導波路の安定した相対的な位置を確立することについて様々なアプローチが同一所有者および同時系属米国公開特許出願第2005/0077513号でより具体的に論じられている。
【0050】
導波路がコア隆起部を含むところに、そのコア隆起部に関係した金属被覆層を配置するための多くのオプションがある。一実施形態において、金属コーティングは、コア隆起部の下に配置されている。別の実施形態において、金属被覆層は、コア隆起部分の少なくとも一部の下方にある。さらに別の実施形態において、金属被覆層は、コア隆起部の側面部分少なくとも一部の上にある。
【0051】
一実施形態において、導波路コアは、以下の物質:シリカ、シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、チタニア、ジルコニア、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、およびポリマーから、1つ以上を含む。シリカ物質は、シリカ内にゲルマニウム、リン、またはチタンなどのドーパントを有することができる。
【0052】
金属層は、装置が操作される光学周波数範囲内で優れた反射物として作用するいかなる金属であってもよい。すなわち、屈折率の虚数部が、一般的に5以上の大きいものである。しかしながら、低い伝搬損失をさらに達成するために、一般的にk/nが5より大きいような、屈折率の実数部に対して屈折率の虚数部の比率のより大きいものが望まれる。
【0053】
表Iは、波長が633nmまたは1550nmのいずれか、またはその両方で測定されたいくつかの金属に対する光学定数nとkの値を提供する。また表Iは、いくつかの金属に対するk/nの比率を表す。さらに、表Iは1550ナノメートル時のそれぞれの表皮厚を表す。表皮厚は次のように計算される。
【0054】
【数1】
【0055】
金属の光学定数の測定は、特定の材料試料、測定技術、およびその他の因子によって変わり得るということに注意することが重要である。結果として、表Iの値は他の情報から見つけられた光学定数と異なる場合がある。
【0056】
【表1】
【0057】
被覆層にふさわしい金属は、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムおよびこれらの元素の合金、を含む。金、銀、アルミニウム、銅、およびこれらの合金は、これらに基づく波長が低損失であるため、1550nmにおいての金属被覆層として特に有用である。
【0058】
これらの金属は、光学損失に対する場増強利益のバランスを保つために選ばれる。金属被覆の追加によって生じる微小共振器装置への全体の光学損失は、どれだけの長さにわたって導波路領域が結合するために金属でコーティングされるかに依存し、これは同様に共振器のサイズに依存する。結合領域は、多くの実施形態において、10から100ミクロンの長さの範囲にある。減衰/ミリメートルに対する最小値を見積もるために、最長値の100ミクロンを選ぶ場合、「低損失」は10dB/mmより低いものとして定義することが妥当である。100dB/mm(10ミクロン長における1dBに相当する)の損失が許容範囲であるならば、本質的に、本明細書に記載された金属のいずれもが機能する。許容される損失量は、どれだけの力が利用可能であるかに、どれだけその信号が強いかに、騒音源に、およびその他の要因に依存するシステムレベルの問題であるため、ある程度までは、低損失および許容され得る損失量の定義は任意である。もちろん、場増強および減衰は波長に依存し、そのため金属の選択は動作波長に依存する。
【0059】
計算に基づいて、次の傾向が明らかになる:
1)動作波長についてkが>5の際、たいていの場増強は取得される。kが2またはそのあたりまで落ちることにはいくつかの利益があるが、最高の成果にはk>5が必要である。
【0060】
2)k/nが>5の際、その損失は10dB/mmより低いと予測される。
【0061】
これらの原則は、一般的に使用される対象の波長:1550nmおよび633nmに適用される。1550nmの波長の操作で優れた場増強を提供する金属のリストは、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、およびバナジウムのようになる。損失<10dB/mmの場合、このリストは、金、銀、アルミニウム、ナトリウム、および銅となる。明らかに、化学的理由から、ナトリウムの使用は容易ではない。633nmの動作波長では、良好な場増強を提供する金属のリストは、アルミニウムとロジウムである。このうち、アルミニウムだけが10dB/mm以下の損失も与える。
【0062】
いくつかの実施形態において、金属被覆層は模様が付けられている。いくつかの実施形態において、金属誘電体被覆層は模様が付けられている。金属層についての厚さの必要性は、金属への電界透過(electric field penetration)の深さによって決定され、表皮厚(1/電界のe崩壊長)によって述べられる。意図が結合で増強である金属被覆導波路において能力を最適にするために、その金属は、不十分な電界がコアの反対側の金属の側面へ透過しないのに十分な厚みを有するべきである。1550nmで作用する波長において、典型的な金属の表皮厚は20〜50nmである。金属の片側へ光学モードを制限するために、約2つの表皮厚を超える厚さが望ましい。それゆえに、金属の特性次第で、最少厚さは40〜100nmが妥当である。しかしながら、最小限の厚さを大きく超えた場合、金属の正確な厚さの制御は必要とされないことを留意されたい。金属の厚さが動作波長において少なくとも2倍の表皮厚である場合、結果は、屈折力の2パーセント未満が金属の誤った側面上、すなわちコアの反対側にあるというものになる。
【0063】
基板上の段階的遷移は、従来の導波路と金属被覆導波路の間にあるいくつかの実施形態において存在する。一例における金属被覆導波路はテーパーの1つの側面上に金属被覆層を有する光ファイバーテーパーである。
【0064】
チャネル導波路の微小共振器への結合を組み立てる方法
前述のとおり、微小共振器へ金属被覆チャネル導波路の結合を組み立てるための2つの第一次カテゴリーがある:ハイブリッドおよびモノリシックである。どちらのアプローチにおいても最初の基板が提供され、その上に導波路が作成され、導波路は、少なくとも一側面部分上にコアおよび金属被覆層を含む。その後、微小共振器が導波路と光学的な結合関係になるように、微小共振器を配置する。2つの選択肢とは、導波路および共振器がモノリシック光集積回路として作製されるか、または導波路および共振器が別々に作製されてハイブリッド光回路として組み立てられる、ということである。
【0065】
ARROW構造上での金属被覆導波路の利点
集積光チャネル導波路などの非ファイバー導波路の、微小球共振器との一般的利用は見出されていないが、これは微小球への光の適切な結合を得るのに十分に大きな導波路の外側で利用可能な光場を作製することが困難であるためである。微小球が使用されているチャネル導波路の一例は、反共振反射光導波路(ARROW)として知られる。より特別な型のARROWは、ストリップ線台反共振反射光導波路(Stripline Pedestal Anti-Resonant Reflecting Optical Waveguide)(SPARROW)である。ARROW構造は、SiおよびSiO2などの物質の高屈折率および低屈折率の層が交互に積み重なった高い反射性を有する基板から、導波路コアを光学的に隔離しており、その厚さは垂直に方向を持ったガイド波長の4分の1であると定義されている。ARROW構造を述べている初期の書類は米国特許第4,715,672号(デュゲ(Duguay)ら)である。米国特許第6,657,731号(タパリアン(Tapalian)ら)は、化学センサー内の微小共振器へ光を結合するためのSPARROW導波路の使用を記載する。ARROW構造の欠点は、ARROW構造は製造の間の厚さ制御を必要とする複数層を含んでいるということであり、それゆえに、相当に時間を消費し、および製造するのに複雑である。
【0066】
金属被覆導波路は、ARROW構造に比べ製造することが非常に容易である。本発明によると、高いまたは低い屈折率の金属が交互に成長する複数層よりもむしろ、単一の金属層を使用してもよい。さらに、本発明の金属被覆層の場合、いくつかの最小値よりも厚いことのみが必要で、構造が有する性能に逆影響を与えることがないのに対し、ARROW構造の場合は、反射層の厚さの非常に正確な制御を必要とする。
【0067】
従来の導波路とARROWの間に段階的なオンチップ遷移を作製することは非常に難しい。しかしながら、金属層の厚みがより小さいために、従来の導波路と金属被覆導波路の間に段階的なオンチップ遷移を作製することはより容易である。また図6〜10に示すように、側面結合を増強するために、導波路隆起部の側面上に金属コーティングを適用することは、そこへ多層反射物を堆積することよりも簡単である。
【0068】
モデリングと実験の結果
一連のモデリング実験は典型的な金属被覆導波路の特徴を究明するために行われた。この目的のために、分析的アプローチが使用され、並びに、有効モデル指数、場振幅、および様々な金属被覆導波路構造のための伝搬損失を解決するための市販のビーム伝搬法(BPM)ソフトウェアが使用された。具体的には、Rソフトデザイングループ(RSoft Design Group, Inc.)(ニューヨーク州オッシニング(Ossining, New York))から入手可能なビームPROP(商標)ソフトウェアがBPMソフトウェアとして使用された。
【0069】
モデリング実験の1つの目標は、共振器が配置される側にあるコアの外側の導波路電界振幅の割合を測定することであった。この値は、導波路モードと共振器モードの間の結合の強度に関係するため、重要であると考えられている。相対電界の増加は、参照構造に対する特定された構造のためのこの統合された振幅の比率として定義される。
【0070】
分析的アプローチは、金属被覆スラブ導波路構造の特性を調査することによって一般的傾向を求めるために使用された(カミノ(Kaminow)ら「金属被覆光導波路:分析的および実験的調査(Metal-Clad Optical Waveguides: Analytical and Experimental Study)」(『応用光学(Applied Optics)』、1974年発行、13巻396ページ)参照)。この構造は3つの層、すなわち、非常に厚い金属層と、屈折率1.5で厚さ1ミクロンのコア層と、屈折率1.33で非常に厚い上面誘電体被覆層とから成る。参照の構造は金属層にある屈折率1.45の層を除いて同一である。上面被覆層における相対電界上昇および633nmと1550nmの波長に対する計算された減衰は、図13A〜Cおよび図14A〜Cで示される。
【0071】
図13Aは、633nmの波長で、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた上面被覆層における相対電界の増加を示す。
【0072】
図13Bおよび13Cは、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた633nmの波長での毎ミリメーターデシベル単位のTEO偏光の減衰を示す。図13Cは図13Bと同じデータを示すが、両軸により細かい目盛りを使用している。
【0073】
図14Aは、1550nmの波長で、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対してプロットされた上面被覆層における相対電界の増加を示す。図14Bおよび14Cは、金属の屈折率の実数部の6つの異なる値について、金属の屈折率の虚数部に対するプロットされた1550nmの波長での毎ミリメーターデシベル単位のTEO偏光の減衰を示す。図14Cは図14Bと同じデータを示すが、両軸に細かい目盛りを使用している。
【0074】
ビーム伝搬ソフトウェアを使用する数値のモデリングは、実質のチャネル導波路構成内の金属被覆の利益を計測するために行われた(分析が簡単に分析的に行われたスラブ導波路構成に反するものとして)。図15は、数的モデリングが行われたチャネル導波路構成1500を示す。
【0075】
チャネル導波路構造は、コア1502を含み、そのコアはそれぞれに1.5および2ミクロンの幅と高さを有し、屈折率は1.53であった。金属層1504の屈折率と厚さの始まりはそれぞれ0.56+i11.5および200nmであった。この開始点から、厚さと金属の屈折率虚数部は従属関係を探すために変えられた。コア1502は、屈折率1.45を有するシリカ基板1510上に置く。上部の被覆1508は屈折率1.33を有する水である。相対電界の増加は右側被覆領域1506で計測された。すべてのケースに対し、波長は1550ナノメートルであった。相対電界の増加の計測のための参照構造は金属をもたないケースである。結果として、その他のモデル内において金属領域であるものの屈折率は、参照構造の1.33である。
【0076】
図15の金属被覆構造について、その意図は、参照構造と比べ、コアの右側の水被覆領域内における電界の量を増加することである。
【0077】
図16は、図15に示すチャネル導波路の例についての金の層の厚さに関する実数部および虚数部の伝搬定数の従属関係をグラフで示す。図17は金の層の厚さを変更した場合の、図15に示すチャネル導波路の例の右側被覆金属領域の相対電界の増加を示す。
【0078】
図16および17は、図15の構造例において、比較的薄い金属層が使用できることを実証する。例えば、一実施形態において、金属層の厚さは20nmより大きい。別の実施形態において、金属層の厚さは40nmよりも大きい。さらに別の実施形態において、金属被覆の厚さは50nmよりも大きい。別の実施形態の場合、金属被覆層の厚さは80nmより大きい。50nmより大きい金属被覆層の場合、その構造によって、より薄い金属層によって生じうる金属被覆を介したモードの損失および漏れを回避することができる。与えられた構造に対して必要とされる金属の実際の厚さは、導波路の型、形状、および層屈折率、並びに使用される金属、および動作波長に依存する。
【0079】
図18は、金属屈折率の虚数部が変わり、屈折率の実数部が0.56で一定する間の、図15に示す構造例に対する伝搬損失を示す。図18の結果は、屈折率の実数部が0.5であったケースについての図14Bに示す分析的モデルの結果に非常によく一致する。
【0080】
実験は金属被覆導波路へ結合された微小共振器の観測されたQ係数を測定するために実行された。観測されたQ係数(quality factor)は、
【0081】
【数2】
【0082】
によって定義される(式中、
【0083】
【数3】
【0084】
が共振周波数であり、
【0085】
【数4】
【0086】
は、特定モードに対するキャビティ減衰レートである)。このことは関数
【0087】
【数5】
【0088】
を使用して実験的に決定される(式中、
【0089】
【数6】
【0090】
は、それぞれ共振波長および1/2幅である)。
【0091】
また、
【0092】
【数7】
【0093】
である(式中、
【0094】
【数8】
【0095】
は、共振器の固有のQ係数であり、
【0096】
【数9】
【0097】
は、導波路への結合による寄与である)。
【0098】
導波路を通して透過される光の一部は、測定可能であり等式
【0099】
【数10】
【0100】
を満たす。最大光強度は導波路から
【0101】
【数11】
【0102】
の場合、引き出されるということに留意されたい。
【0103】
再配列は
【0104】
【数12】
【0105】
および、
【0106】
【数13】
【0107】
を与える。
【0108】
テストされた例は、図3および4の例で、微小球共振器が直径300ミクロンを有し、および導波路が厚さ300ナノメートルの金被覆層を含むものであった。導波路のコアの厚さは異なる実験に対し変えられた。コア隆起部の幅は4.6ミクロンであった。この実験配列は図1Aで示すものと似ていた。それぞれの実験において、金被覆導波路108は微小共振器110と接触するように配置され、両方は水に浸された。ダイオード波長可変レーザーが980nmでのレーザー波長を有する光原102として使用された。レーザーによって放たれた光の波長は、レーザー内側の圧電アクチュエーター(piezo-actuator)を作動させる電圧を変えることによって調整された。波長が、1以上の微小共振器のウィスパリングギャラリーモード112で共振時であったとき、その微小共振器へ結合されたレーザー力の総量は増加され、検知器106においてパワードロップを導いた。
【0109】
図19は、コアの厚さが2.0ミクロンの厚さであるレーザー波長調整の機能を有する検知器で検知された信号を示す。微小共振器の観測されたQ係数は、これら結果から約7×106となると推定され、その効率はほぼ100%となった。微小共振器の固有のQ係数は1.4×107と計算された。
【0110】
この結果は、高いQ係数を有する微小共振器を金属被覆導波路へ有効的に結合することができることを立証する。
【0111】
異なる実施形態において、コアの厚さは2.5ミクロンの厚さであった。微小共振器システムのQ係数は約3×106であり、結合効率は78%であった。別の実験ではコアの厚さが3ミクロンの厚さであるところで行われた。微小共振器システムのQ係数は、約1.5×106であり、結合効率は、ほぼ60%であった。別の実施形態において、コアの厚さは4ミクロンの厚さであった。微小共振器システムのQ係数は、約5×106であり、結合効率は30%であった。
【0112】
これらの実験の間、微小球共振器と結合された金被覆導波路の光の減衰または損失は、ARROW構造の導波路の減衰または損失と比較可能であるということが発見された。さらに、その金被覆導波路はTE偏光のみを透過するということが発見された。
【0113】
上記のように、本発明は微小共振器に適用され、微小共振器が検出用途において使用される場合に特に役立つと考えられる。本発明は、上に記載した特定の実施例に限られるとみなすべきではなく、添付の請求項で明確に提示されているとおり、本発明のあらゆる態様を網羅していると理解すべきである。本明細書を検討すれば、本発明を適用可能なさまざまな変更例、均等なプロセス、多数の構造を本発明に関連する当業者には容易に明らかになろう。特許請求の範囲はこのような修正および装置を網羅しようとするものである。
【0114】
上記明細書は完全な構造の説明および本発明の使用を提供する。本発明の実施形態の多くは、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことが可能であるため、本発明は特許請求の範囲に属する。
【0115】
本発明は多くの方法で改善されうるが、具体例を例として図面に示し、詳細に示す。しかしながら、本発明を、記載される特定の実施形態に限定することを意図しないことが理解されよう。逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の趣旨と範疇に含まれる全ての修正物、等価物、および代替物を網羅することである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1A】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図1B】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図1C】微小共振器系装置の実施形態の概略図。
【図2】光線モデル、および平面ディスクに対するウィスパリングギャラリーモード内に伝搬している光の電界配信の概略図。
【図3】微小球共振器に結合された金属被覆導波路の実施形態の概略図。
【図4】図3の実施形態の線4−4に沿った側面断面の概略図。
【図5】金属被覆導波路に垂直に結合された平面(ディスクまたは環)微小共振器の実施形態の概略図。
【図6】金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図7】より優れた表面感度のために共振器が改善された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図8】導波路を強化するために金属被覆がギャップ内に配置された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図9】導波路を強化するために金属および誘電体被覆がギャップ内に配置された、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図10】導波路と強化するために金属および誘電体被覆がギャップ内に配置されるとともに、追加の強化を加えるために誘電体被覆が構造の上面にわたる、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図11】金属被覆導波路に垂直に結合された3つの球形微小共振器の概略図。
【図12】導波路コアの下に金属が配置され、金属被覆導波路に側方に沿って結合された平面微小共振器の概略図。
【図13A】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図13B】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図13C】633nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14A】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14B】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図14C】1550nmの波長での相対電界の増強および導波路減衰における金属被覆の屈折率の実数部および虚数部の効果を示す、スラブ導波路構造の例のモデリング結果。
【図15】図16〜18に示された結果である、数的モデリングが行われたチャネル導波路構造の図。
【図16】金属が金であり、1550nmの波長での、図15の金属層の厚さの実効モード屈折率の従属関係のビーム伝搬法(BPM)による計測。
【図17】金属層の厚さに応じて、図15に示された金属被覆導波路についての相対電界の増強のBPM計測。
【図18】金属の屈折率虚数部に応じて、図15に示された金属被覆導波路についての伝搬損失のBPM計測。
【図19】本発明の原理による、金属被覆導波路に結合された微小球からなる微小共振器の実施形態のための、実験的に取得された共振プロットを示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む光導波路と、
前記導波路に光学的に結合するように配置された光微小共振器と、を備える、光微小共振器装置。
【請求項2】
前記光微小共振器が、球体共振器、トロイド共振器、環共振器、ディスク共振器、レーストラック状共振器、長方形状共振器、多角形状共振器、およびファブリ・ペローキャビティ共振器から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項3】
前記光導波路コアが、基板上に配置された誘電体隆起部である、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項4】
前記金属被覆層が、前記光導波路コア隆起部の少なくとも一部の下方にある、請求項3に記載の微小共振器装置。
【請求項5】
前記金属被覆層が、前記微小共振器の位置とは反対側にある前記光導波路コア隆起部の境界の少なくとも一部の上にある、請求項3に記載の微小共振器装置。
【請求項6】
前記導波路コアがシリカから成る、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項7】
前記導波路コアが、シリコン、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、チタニア、ジルコニア、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、およびポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項8】
前記金属被覆層が、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、バナジウム、およびこれらの金属の合金から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項9】
前記金属被覆層が、金、銀、アルミニウム、銅、およびこれらの合金から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項10】
前記金属被覆層が動作波長において前記金属の表皮厚の2倍を超える厚さを有する、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項11】
前記導波路および前記微小共振器が両方配置される基板をさらに含む、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項12】
誘電体被覆導波路と前記金属被覆導波路との間に、少なくとも1つの遷移をさらに含む、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項13】
前記金属被覆層が、前記共振器に隣接したコア部分のみに沿った前記導波路コア上に存在する、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項14】
前記導波路が、前記共振器の反対側にある光ファイバーテーパーの境界上に前記金属被覆層を有する前記テーパーを備える光ファイバーである、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項15】
前記導波路が、前記微小共振器に側方に沿って結合している、請求項11に記載の微小共振器装置。
【請求項16】
前記導波路が、前記微小共振器に垂直に結合している、請求項11に記載の微小共振器装置。
【請求項17】
光微小共振器装置であって、
隆起部を含む誘電体コアと、
前記コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む光導波路であって、前記金属被覆層が動作波長において前記金属の表皮厚の2倍を超える厚さを有する、光導波路と、
光学的に前記導波路に結合するように配置された光微小共振器とを備え、
前記金属被覆層は前記光導波路コア隆起部の第1の側面の少なくとも一部の上にあり、前記微小共振器は前記コア隆起部の反対側にある第2の側面の上に配置され、
前記金属被覆層は、前記共振器に隣接したコアの部分のみに沿った前記導波路コア上に存在する、光微小共振器装置。
【請求項1】
コアと、前記コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む光導波路と、
前記導波路に光学的に結合するように配置された光微小共振器と、を備える、光微小共振器装置。
【請求項2】
前記光微小共振器が、球体共振器、トロイド共振器、環共振器、ディスク共振器、レーストラック状共振器、長方形状共振器、多角形状共振器、およびファブリ・ペローキャビティ共振器から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項3】
前記光導波路コアが、基板上に配置された誘電体隆起部である、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項4】
前記金属被覆層が、前記光導波路コア隆起部の少なくとも一部の下方にある、請求項3に記載の微小共振器装置。
【請求項5】
前記金属被覆層が、前記微小共振器の位置とは反対側にある前記光導波路コア隆起部の境界の少なくとも一部の上にある、請求項3に記載の微小共振器装置。
【請求項6】
前記導波路コアがシリカから成る、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項7】
前記導波路コアが、シリコン、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、チタニア、ジルコニア、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、およびポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項8】
前記金属被覆層が、アルミニウム、金、インジウム、銀、ロジウム、ナトリウム、イリジウム、マグネシウム、銅、レニウム、鉛、モリブデン、白金、亜鉛、ニッケル、ストロンチウム、ニオビウム、タンタル、イッテルビウム、オスミウム、コバルト、鉄、バナジウム、およびこれらの金属の合金から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項9】
前記金属被覆層が、金、銀、アルミニウム、銅、およびこれらの合金から成る群から選択される、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項10】
前記金属被覆層が動作波長において前記金属の表皮厚の2倍を超える厚さを有する、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項11】
前記導波路および前記微小共振器が両方配置される基板をさらに含む、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項12】
誘電体被覆導波路と前記金属被覆導波路との間に、少なくとも1つの遷移をさらに含む、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項13】
前記金属被覆層が、前記共振器に隣接したコア部分のみに沿った前記導波路コア上に存在する、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項14】
前記導波路が、前記共振器の反対側にある光ファイバーテーパーの境界上に前記金属被覆層を有する前記テーパーを備える光ファイバーである、請求項1に記載の微小共振器装置。
【請求項15】
前記導波路が、前記微小共振器に側方に沿って結合している、請求項11に記載の微小共振器装置。
【請求項16】
前記導波路が、前記微小共振器に垂直に結合している、請求項11に記載の微小共振器装置。
【請求項17】
光微小共振器装置であって、
隆起部を含む誘電体コアと、
前記コアの1つの境界の少なくとも一部の上にある金属被覆層とを含む光導波路であって、前記金属被覆層が動作波長において前記金属の表皮厚の2倍を超える厚さを有する、光導波路と、
光学的に前記導波路に結合するように配置された光微小共振器とを備え、
前記金属被覆層は前記光導波路コア隆起部の第1の側面の少なくとも一部の上にあり、前記微小共振器は前記コア隆起部の反対側にある第2の側面の上に配置され、
前記金属被覆層は、前記共振器に隣接したコアの部分のみに沿った前記導波路コア上に存在する、光微小共振器装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2009−531736(P2009−531736A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502803(P2009−502803)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/004999
【国際公開番号】WO2007/126512
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/004999
【国際公開番号】WO2007/126512
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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