説明

微生物および植物の混合物由来の原料油の生成方法、前記方法に従って生成される油、ならびにそのようにして生成された油、および適宜さらに精製された油の特定の使用

【課題】本発明は、微生物および植物由来の原料油の生成方法、前記方法に従って生成される油、ならびにそのようにして生成された油、および適宜さらに精製された油の、食品、補助食品、あるいは化粧品組成物または医薬組成物における特定の使用に関する。
【解決手段】a)微生物を培養し、b)a)からのバイオマスを回収し、c)得られた該バイオマスを、a)から得られた該バイオマスと異なる第2のバイオマスと混合し、およびd)該2種類のバイオマスを圧縮することによって、油を残ったプレスケーキから得ることを特徴とし、ARA、DPA、DHA、EPA、GLA、SAまたはDHGLAを含む群から選択される多価不飽和脂肪酸を含有する油の生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物および植物の混合物由来の原料油の生成方法、そのようにして生成された油、ならびにそのようにして生成され、適宜さらに精製された油の、食品、補助食品、または化粧品組成物もしくは医薬組成物における特定の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アラキドン酸(ARA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ステアリドン酸(SA)、またはジホモγリノレン酸(DHGLA)などの長鎖多価不飽和脂肪酸を含有する油は、微生物の培養によって得ることができる。このために、通常は前述の脂肪酸の1種類または複数に富んだ1種類の微生物が培養され、バイオマスが培地から回収され、消化され、油が単離される。今まで使用されてきた、油をバイオマスから単離するための方法は、とりわけ有機溶媒、例えばヘキサンまたは超臨界液体を用いる抽出方法である。一般に油は、乾燥バイオマスをヘキサンでパーコレーションすることによってバイオマスから抽出される。有機溶媒を用いたこのような抽出プロセスは、例えば、WO97/37032(特許文献1)、WO97/43362(特許文献2)、EP515460(特許文献3)、および他の文献に記載されている。特に詳細な説明はまた、Journal of Dispersion Science and Technology、10、561〜579、1989、「Biotechnological Processes for the Production of PUFAs」(非特許文献1)にみられる。
【0003】
通常の目的は、特に食品または医薬/化粧品に使用する場合、完成した油中のトリグリセリドの割合を可能な限り高くすることである。リン脂質および遊離脂肪酸は、完成した油中の不純物としてみなされる。同様に、溶媒は、完成した油中に任意の相当な量で存在すべきでない。高いリン脂質含有量を有するバイオマスを使用する場合、必要により、追加の溶媒(例えばエタノール)を添加せずに、溶媒としても働く天然に存在するトリグリセリドを用いて、リン脂質を抽出することが可能である。特に、PUFAを含有するリン脂質は、単離することが困難であり高価ではあるが、多くの用途に望ましい。
【0004】
この理由から、溶媒を用いたPUFAの抽出には、いくつかの基本的な欠点がある。すなわち、例えば抽出中、PUFAは、高温溶媒と、または蒸留中に大気酸素と反応し、したがって非常に望ましくはないが、二重結合の不要な酸化によって、特定の分解生成物を形成する可能性がある(劣化)。さらに、溶媒が完全に分離される場合、一般には高温での熱処理が必要となり、さらにこれらの条件が分解を促進する。有機溶媒が使用される場合、常に爆発の危険性があり、それによって高価な安全対策が必要となる。ヘキサンは、神経毒素として問題となっている。したがって、モニタリングしなければならない法定限度値があり、それによってさらにコストが上昇する。対応する廃棄物の処分もコストが集約する。
【0005】
さらに、例えばヘキサンなどの溶媒は、トリグリセリドではない、したがって後で全く分離できない、またはかなりの費用をかけないと分離できない不純物であるバイオマスからの他の構成成分を放出することもできる。
【0006】
したがって、溶媒が分離された後に得られる原料油は、その油が食用油および/または医薬目的で使用されるものである場合、次いでさらなる精製を必要とする。精製ステップは、不純物を少なくとも部分的に除去するために、脱ガム(脱スライム)、アルカリ性溶液との中和、脱色、脱ワックス、および脱臭を含む。しかし、このことは、高度不飽和脂肪酸を含有する油が、不飽和脂肪酸中に物理化学反応が生じ得る条件に曝露されることを意味する。
【0007】
しかし、溶媒が使用されないバイオマスの抽出方法も存在する。例えばEP−A−1178118(特許文献4)を参照されたい。そこに記載される方法によれば、バイオマスの水性懸濁液が生成され、遠心分離によって油相がその水相から分離されることから、溶媒の使用が回避される。水相は、細胞壁の残骸およびバイオマスに由来する一定量の水溶性材料を含有する。この方法の大きな欠点は、原料油が、例えば極性脂質、タンパク質残渣などの数々の不純物を含有することである。したがって、このやり方で得られる原料油は、先に植物油および微生物油について記載したような通常の方法を使用して、精製しなければならない。
【0008】
WO2004/022678(特許文献5)に、PUFAを含有する微生物油を生成するための方法が記載されており、その方法では、PUFAを含有する油は、微生物のバイオマスから圧縮によって得られる。残ったプレスケーキは、担体油と混合され、再び圧縮されるが、この担体油は、プレスケーキからいかなる残りのPUFAをも放出する助けとなるものであり、第1の圧縮油よりPUFA濃度の低い第2の圧縮油が得られる。2種類の油を様々な重量割合で混合することによって、それぞれの所望の用途に適合するPUFA濃度を得ることができる。したがってここでは、第2の油は、原則として溶媒として使用される。原則としてこの方法は、上記の従来技術に当てはまる欠点と同じ欠点がある。
【0009】
概して、いくつかのバイオマス、特に例えばウルケニア種などの微生物のバイオマスの圧縮は困難であり、しばしば高圧および高温などの激しい条件を要する。このことは収率および質を犠牲とする。
【0010】
さらにこのことは、悪臭による著しい公害を生じ、また生産工場内の職員にとって危険なものとなっている。
【0011】
さらに、担体油それ自体が酸化する可能性があり、それによって質が損なわれることになる。最悪の場合には、担体油それ自体が酸化によって発火する(PUFAが大きい表面を長時間空気に曝露して保存されるときの周知の問題(例えば活性炭、粘土))。
【特許文献1】WO97/37032
【特許文献2】WO97/43362
【特許文献3】EP515460
【特許文献4】EP−A−1178118
【特許文献5】WO2004/022678
【非特許文献1】Journal of Dispersion Science and Technology、10、561〜579、1989、「Biotechnological Processes for the Production of PUFAs」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、安定な油の生成方法を提供するという点で従来技術の欠点を回避することであり、その油は、バイオマスに由来し、かつトリアシルグリセリドまたはリン脂質の形態で比較的純粋な状態かつ高収率で存在する、1種類または複数の多価不飽和脂肪酸を含有し、その油は最小限にしか分解されない。
【0013】
油を食用油として使用すべき場合、高い割合のトリグリセリドが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらならびに他の目的は、当業者にとっては明らかに、論じられている従来技術の欠点に起因するものであるが、請求項1の全ての特徴を備えた方法によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい設計例は、従属請求項および同等の請求項に記載され特許請求される。
【0016】
本方法は、微生物の培地から、特に真菌または微細藻類の培地から得られ、不飽和脂肪酸ARA、DHGLA、DPA、DHA、またはEPAの少なくとも1種類を含有する1種類または複数のバイオマスを、第2の異なるバイオマスと混合し、その2種類のバイオマスを圧縮することによって油を得ることを特徴とする。
【0017】
本発明の目的では、油は、脂質または脂肪とも理解されるべきである。
【0018】
得られる原料油から、当業者には容易に理解されるプロセスステップを使用して、トリグリセリドまたはリン脂質などの個々の構成成分を、所望の用途に応じて精製することができる。
【0019】
したがって、本発明は、本発明の方法を用いて得ることができる原料油と、例えばトリグリセリド混合物またはリン脂質画分などの、やはり得られる個々の画分の両方に関する。
【0020】
本発明の好ましい設計例によれば、第2のバイオマスは、ヒマワリ種子である。
【0021】
しかし、第2のバイオマスそれ自体は、微生物バイオマスであってもよい。
【0022】
さらなる好ましい一態様によれば、微生物バイオマスは、乾燥した後に、第2のバイオマスと混合される。さらなる好ましい一態様によれば、微生物バイオマスは、以下の微生物、モルティエラ(Mortierella)、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)(過渦毛藻類)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)(ラビリンチュラ網)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ナンノクロロプシス(Nanochloropsis)、ユーグレナ(Euglena)、テトラヒメナ(Tetrahymena)、スピルリナ(Spirulina)、ならびに好ましくはウルケニア(Ulkenia)種の培地から得られる。
【0023】
ヒマワリ種子が使用されるとき、圧縮プロセスはかなり簡素化されることがわかっている。これは、1つにはヒマワリ種子がバイオマスの消化を促進する追加の摩擦剤として働く事実に起因する。さらに、ヒマワリ種子それ自体が、高い質の植物油に富んでいる。この油は、圧縮手順の過程で放出され、一方では粉砕機の潤滑剤として働き、したがって圧縮を容易にし、また放出されるヒマワリ油が、それと同時に、微生物バイオマス中のトリグリセリドとして存在する高い割合の多価不飽和脂肪酸用の溶媒として働く。
【0024】
有利には、種子/バイオマス中の抗酸化物質は、生成物にさらなる安定化の影響をもたらすことができる。したがって、例えばクリプテコジニウムは、DHA油を強度に安定化することができる抗酸化物質を形成する。したがって、全く驚くべきことには、その方法は、穏やかなやり方で優れた収率を伴って多価不飽和脂肪酸に富む利用可能な微生物油を製造するための、簡単な手法を提供する。
【0025】
またその際、添加されるヒマワリ種子の量を調節することによって異なる濃度のPUFAを含有し、それと同時に異なる量のヒマワリ油部分も含有する油を得ることができる。したがって、具体的には特定の用途に適合された、デザイナーオイルを開発することができる。
【0026】
例えば、第2のバイオマスとして、高い割合のARA(アラキドン酸)を含有する、例えば真菌モルティエラを使用することも可能である。例えばウルケニアを第1のバイオマスとして使用する場合、DHAおよびARAを含有する油が得られる。さらにそれらの割合は、各バイオマスの相対的割合が互いに変えられることから、変更することができる。ヒマワリ種子または他の油性植物が追加のバイオマスとして使用される場合、植物油中に含有される抗酸化物質は、PUFAを含有する油の保存安定性に好ましい効果をもたらす。
【0027】
したがって、本発明は、本発明の方法を使用して生成することができる油、ならびに食品、補助食品、医薬品、および化粧品におけるそれらの使用にも関する。
【0028】
したがって、本発明によれば、これらの油は1種類または複数の微生物バイオマスに由来し、理想的には圧縮前に、脂肪種子、好ましくはヒマワリ種子と共に混合および/または粉砕される。
【0029】
したがって、油の生成は、バイオマス混合物の直接的な圧縮で行われる。必要ならば、得られたこの油は、所望の油を得るために物理的精製にかけられる。
【0030】
本発明の目的では、物理的精製とは、その結果リン脂質および遊離脂肪酸が減少することを意味し、酸を使用せず、中和を伴わない脱スライム処理と理解される。したがって、ARAを含有するバイオマスを使用する場合、その油は脂肪酸およびリン脂質を実質上完全に含まず、それゆえ所望の純度に応じて、脱スライム処理が不要であることが認められた。
【0031】
しかし、DHAを含有するバイオマスを使用した場合、特にリン脂質を除去するために、脱スライム処理が必要であった。
【0032】
得られた油は、例えば、特に小児の栄養のための食品、または補助食品としての使用に適している。ただしそれらは、化粧品または医薬品に使用することもできる。
【0033】
しかし、圧縮後に残るバイオマスは、例えば動物の飼料として、特に家畜に使用することができるプロセス製品である。
【0034】
ここで、使用される第2のバイオマスが、微生物バイオマス用のさらなる消化剤として作用するということが、特に有利である。通常のケースとして、微生物バイオマスが単独で圧縮される場合には、通常、圧縮プロセスが非常に強く求められる。圧縮は、しばしばかなりの高圧高温で実施されるが、そのことは、得られる原料油の質にとって、特に起こり得る多価不飽和脂肪酸の酸化反応に関して、良からぬことである。ヒマワリ種子が第2の追加のバイオマスとして使用される場合、ヒマワリ種子の殻は、摩擦剤および消化剤として働き、低圧低温で作用することができ、それによって、得られるPUFA油の質が著しく改善される。これらの効果は、第2のバイオマスが少量添加されるときにさえみられる。
【0035】
ここで、脂肪種子の油が、PUFAを含有する微生物トリグリセリド用の溶媒として働き、その結果、本発明の方法を用いた1つの好ましい設計例によれば、トリグリセリドを放出させるための溶媒の使用を省略することができる。
【0036】
本発明によれば、ヒマワリ種子が第2のバイオマスとして添加される場合、特に好ましい。しかし、他の第2のバイオマスを使用することもでき、このことは当業者には明らかである。特に、第2のバイオマスは植物バイオマスであり、特に好ましいのは、植物の実、例えばオリーブ、ナッツ、植物の葉、植物の幹、および植物の茎、ならびに豆、殻等の形態のバイオマスである。
【0037】
特に好ましくは、これらは典型的な脂肪種子である。典型的な脂肪種子のリストは、当業者に周知のテキストにみることができ、本明細書では繰り返す必要はない。上記のように、ヒマワリ種子が特に好ましい。本発明によって得られる油は、リン脂質、遊離脂肪酸、顔料、ポリマー、および他の物質、すなわちトリアシルグリセリドではないバイオマス由来の物質を、特に少量有する。
【0038】
したがって、本発明の方法は、PUFAを含有する安定な、高度に精製された油の、特に選択的な生成方法である。したがって特に好ましい一態様では、本発明は、脱スライム、中和、脱ワックス、および脱色などの激しく、煩雑なプロセスなしに、PUFAを含有する高質な油を得る方法に関する。
【0039】
ただし、本発明の油は、それが適切な場合はいつでも、例えばケイ酸塩などの加工剤を使用する精製ステップにかけられる。加工剤を用いる処理は、例えばろ過中に行うことができる。
【0040】
最終的に、油は、例えば比較的低温での蒸気連行による蒸留または分子蒸留によって脱臭される。これによって、得られた油は、特に少ない割合のトランス脂肪酸を含有する結果になる。
【0041】
本発明の方法はまた、植物油の加工の際にも発生するような、例えば脱ろう、精製、漂白、脱臭等の通常のプロセス用の有機溶媒を、圧縮後に使用することを含む。これらの方法は全て当業者には周知であり、本発明の目的のためにここで説明する必要はない。
【0042】
この方法は、好ましくは窒素層の下、第2のバイオマス中に天然に存在し、またはプロセス中に添加されるトコフェロールもしくはトコトリエノールの存在下で実施されるので、含有されるPUFAは、全てのプロセスにわたって大気酸素の有害な影響から保護される。
【0043】
必要に応じて溶媒の除去後、特に畜産のために、バイオマスを制限なしに補助食品として使用することができる。
【0044】
2種類のバイオマスが圧縮の前に一緒に粉砕される場合、特に好ましいことがわかっている。このことは、第2のバイオマスが比較的大きい種子を有する脂肪種子である場合は特に重要である。ヒマワリ種子が第2のバイオマスとして好ましく使用される場合、残りの粒径が250μm未満になるまで、そのバイオマスを粉砕することが特に好ましいことがわかっている。この粉砕の過程において、当然のことながら、含有されるトリグリセリドの一部分は、既に油の形態で放出している。粉砕に関しては、例えばボールミルまたはコロイドミルを使用することができる。本明細書で特に重要なのは、粉砕の継続時間、バイオマス粒子の寸法、粉砕中の温度、および2種類バイオマス量の間の比である。脂肪種子、特にヒマワリ種子の形態の第2のバイオマスは硬質の構成成分を有するので、粉砕中、実際これらがバイオマスにダメージを与え、油がバイオマスから一部放出されることが明らかである。
【0045】
このことは特に好ましい効果であり、それによって穏やかな分解が可能になり、同時に、予備的な収率を伴う分解が可能になる。この理由から、この粉砕の段階も、本発明の特に好ましい設計例である。本明細書では、第2のバイオマスの得られる粒子が平均500μm未満、好ましくは300μm未満、特に好ましくは200μm未満である場合が好ましい。これらの寸法は、最初に存在していたバイオマスの少なくとも90%にあたる。
【0046】
粉砕工程は、使用されるバイオマスの90%が所望の粒径を有するまで継続される。
【0047】
粉砕中の温度は、通常第2のバイオマスから得られる油の融点より高くなるように選択される。例えば第2のバイオマスがヒマワリ種子である場合には、この温度は、ヒマワリ油の融点より高い温度が選択される。この温度は好ましくは20〜80℃である。
【0048】
微生物バイオマスと第2のバイオマスとの間の重量比は、100:1〜1:100の間である。前述のように、2種類のバイオマスの比は、得られる油中のPUFA濃度の決定において非常に重要である。本明細書では、間違いなく、設計による最終油中に1〜10%の間のPUFA含有量が実現する比が好ましい。というのは、これらはほとんどの医薬、化粧、および食品技術利用において有利な濃度だからである。例えば、バイオマスを搾ることによって、PUFA40%超が得られるバイオマスが得られる場合には、微生物バイオマスと第2のバイオマス、特に脂肪種子との間の好ましい比は、得られる油がPUFA約10%を含有するように選択することができる。これに関して、第2のバイオマスの油の通常の収率を考慮に入れなければならないが、そのことは従来の脂肪種子の場合、当業者には大した問題なしにいつでも思い付くはずである。
【0049】
次いで、得られる油は、不溶性の小粒子を除去するために精密ろ過を必要とすることがある。これに関して、当業者は多くの異なる方法を知っているはずである。例えば油を、ろ過助剤としてのミネラル吸着剤、例えばシリカろ過に曝露することができる。
【0050】
最後に、揮発性物質を除去し、ろ過した油を発酵させないようにする。このことは同様に、従来技術で周知の方法を使用して行うことができるが、PUFAにいかなる損害も与えないために、穏やかな条件が使用されるべきである。例えば、好ましくは真空下での蒸気連行による蒸留、または分子蒸留を使用することができる。
【0051】
そのようにして得られた油を、例えばヒトの栄養のために、実にそのままで、または例えば魚油もしくはサラダ油などの他の油との混合物の形態で、あるいはサラダドレッシングもしくはマヨネーズなどの乳濁液の形態で、食品組成物に使用することができる。それは、母乳ではない乳児用の調整粉乳または幼児の授乳後のミルクとして働く、若者または大人用のダイエット用ミルクの構成成分であってよい。同様に、経口、経腸または非経口投与、あるいは局所、皮膚、または眼科使用のための医薬組成物に組み込むことができる。化粧用の局所または経口組成物の成分であってもよい。最後に、動物の栄養飼料、例えば乾燥フードまたは湿潤フードとして、あるいはミルクとして使用することもできる。さらに、残ったバイオマスは、動物の飼料として有利に使用し、上記の目的で使用することができる。
【0052】
さらに、圧縮によって放出されなかった量の油を得ることができるように、残ったバイオマスからの抽出を、溶媒、好ましくは有機溶媒、特に好ましくは非水和性の非極性溶媒(ヘキサンが特に好ましい)を使用して有利に行うことができる。このようなバイオマスのヘキサン抽出は、従来技術で詳説されており、包括的な説明は、例えばMartek社のEP0515460にみられる。
【0053】
専門家の分野では、ヘキサン抽出に加えて、好ましくはトリグリセリド含有量が高い油を、圧縮後に残ったプレスケーキから得られるという点で適している他の一連の抽出方法、例えばクロロホルム/メタノール、または超臨界COによる抽出が周知である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微生物を培養し、
b)a)からのバイオマスを回収し、
c)得られた該バイオマスを、a)から得られた該バイオマスと異なる第2のバイオマスと混合し、および
d)該2種類のバイオマスを圧縮することによって、油を残ったプレスケーキから得る
ことを特徴とし、
ARA、DPA、DHA、EPA、GLA、SAまたはDHGLAを含む群から選択される多価不飽和脂肪酸を含有する油の生成方法。
【請求項2】
工程d)の後、前記残ったプレスケーキを、油用の溶媒、好ましくは有機溶媒、特に好ましくは非水混和性の非極性溶媒(ただしヘキサンが特に好ましい)で抽出し、該油を抽出後に該溶媒から得る請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程d)で得た前記油を、請求項2記載の方法によって得た油と混合する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記2種類のバイオマスから得られる前記油の内より低い融点を有する油、特に前記第2のバイオマスから得られる前記油の融点よりも少なくとも5℃、好ましくは10℃高い温度、特に好ましくは20℃および80℃の間の温度で行うことを特徴とする前記請求項の一項記載の方法。
【請求項5】
工程d)の後、前記油を溶媒なしで、およびアルカリ性または酸性媒体を使用せずに穏やかに精製し、
a)ケイ酸塩を使用して処理する、および/または
b)シリカろ過を使用して処理する、および/または
c)蒸気連行による蒸留下で脱臭する
少なくとも1つの工程を実行することを特徴とする前記請求項の一項記載の方法。
【請求項6】
前記第1のバイオマスは、以下の微生物:モルティエラ(Mortierella)、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)(過渦毛藻類)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)(ラビリンチュラ網)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ナンノクロロプシス(Nanochloropsis)、ユーグレナ(Euglena)、テトラヒメナ(Tetrahymena)、スピルリナ(Spirulina)、クロレラ(Chlorella)およびウルケニア(Ulkenia)からの少なくとも1種類のバイオマスを含み、ウルケニアが好ましいことを特徴とする前記請求項の一項記載の方法。
【請求項7】
工程c)の前記第2のバイオマスは、ヒマワリ、菜種、ルリヂサ、オオマツヨイグサ、アマニ、ブラッククミン、大豆、パーム核、ヤシ、エゴマ、ベニバナ、小麦胚芽、トウモロコシ、オリーブ、パーム核、ゴマを含む群から選択される脂肪種子であり、ヒマワリ種子が特に好ましいことを特徴とする前記請求項の一項記載の方法。
【請求項8】
前記2種類のバイオマスを前記圧縮工程の開始前に一緒に粉砕することを特徴とする前記請求項の一項記載の方法。
【請求項9】
前記粉砕を、前記2種類のバイオマスから得られる油のうちより低い融点を有する油、特に前記第2のバイオマスから得られる油の融点よりも少なくとも5℃、好ましくは10℃高い温度、特に好ましくは20℃および80℃の間の温度で実施することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の一項記載の方法に従って生成することができる油。
【請求項11】
添加される有機溶媒を相当量は含有しておらず、好ましくは0.2ppm未満含有する請求項10記載の油。
【請求項12】
PUFAを1〜50重量パーセント含有する請求項10および/または11記載の油。
【請求項13】
リン脂質を5重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満、特に好ましくは1重量パーセント未満含有する請求項10、11および/または12記載の油。
【請求項14】
遊離脂肪酸を5重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満、特に好ましくは1重量パーセント未満を含有する請求項10、11、12および/または13記載の油。
【請求項15】
請求項1の工程d)から得られるプレスケーキ。
【請求項16】
請求項1ないし9の一項記載の方法に従って得られる原料油から得られるリン脂質に富む組成物。
【請求項17】
請求項10ないし14の少なくとも一項記載の前記油の、食品および/または補助食品としての使用。
【請求項18】
請求項10ないし14の少なくとも一項記載の前記油の、ヒトまたは動物用の医薬品の製造のための使用。
【請求項19】
請求項10ないし14の少なくとも一項記載の前記油の、ヒトまたは動物用の化粧品としての使用。
【請求項20】
請求項15記載の前記プレスケーキの、ヒトまたは動物用の食品および/または補助食品としての、ヒトまたは動物用の医薬品の製造のための、および/またはヒトまたは動物用の化粧品としての使用。
【請求項21】
完全な非経口栄養を提供するための調整粉乳である請求項17記載の食品。

【公表番号】特表2008−525341(P2008−525341A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547313(P2007−547313)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013688
【国際公開番号】WO2006/069668
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507212492)ヌートリノーヴァ ニュートリション スペシャルティーズ アンド フード イングリーディエンツ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】