説明

急勾配な上り坂の走行状態における車両の走行中のギアの選択方法

【課題】ギアを選択することによって、急勾配な上り坂の走行状態の状況をより最適にすること。
【解決手段】エンジン(1)のエンジン制御および伝達装置(9)のギアシフトのための命令出力信号を出すことをプログラムされた論理規則によって信号を処理するために、少なくとも1つの制御ユニット(45)と、を備え、急勾配な上り坂の走行状態を検出したときに、目標ギアが上り坂の走行状態に対して決定され、目標ギアは、車両において利用可能な最も低いギア比を有する利用可能な最も高いギアとなっており、少なくとも現在の状況を考慮して、少なくとも論理的に一定の車両速度を保つか、または少なくとも僅かに加速することが可能であり、およびシフトダウンの選択が行われるときに、目標ギアよりも低いギアが選択されない、および係合されないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急勾配な上り坂の走行状態を自動的に判別するとともに、自動機械伝動装置を有する大型車両のギア比を適宜選択する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、前記方法を実行するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
自動機械変速装置(AMT)型の自動変速機は、重量運搬車両において益々一般的になってきており、制御コンピュータおよび数多くの制御手段を有し、マイクロコンピュータ技術が進歩し続けておよびそれを可能にしており、例えば、サーボモータや、エンジン速度の精度−制御や、エンジンとギアボックスとギアボックスの連結部材の間の自動クラッチの接続および切断が、相互に関連して、滑らかなギアシフトが正確な回転速度で常に得られる。入力側の一組の遊星ギヤおよび流体力学トルクコンバータ基づく従来の自動変速機と比較して、この種の自動変速機が有する効果は、第1に、特に大型車両の使用に関して、それはより簡素でより頑丈で相当に低コストで製造することが可能であり、そして、第2に、それはより高い効率を有し、それは、より低燃料消費の見込みがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したタイプの自動機械変速装置は、運転手のギアのシフト作業を大いに減少させるとともに、車両の走行時に、運転手は、常に正しい次のギア比を選択することについて悩む必要がなくなる。全てのギアのシフト作業はAMTが行う。AMTは、通常、数ある全ての車両の走行状況のために、充分なギアの選択を提供するギアのシフト方法がプログラムされているにも関わらず、それでもギアの選択が適性でない状況が発生する可能性があり、そして、いくつかの特定の状況において、これは、運転手が苦境に陥る可能性や車両が停車する可能性や再びスタートできなくなる可能性がある。これは、駆動ホイールで制限された摩擦が原因である場合がある。
【0005】
そのような状況の例は、重い荷物を積載した車両が急勾配の上り坂を走行している状態のときである。通常、走行時のギアの自動的な選択の継続的な適合は、予め定められたギアシフト表に基づいており、これには、アクセルペダルの位置と、エンジン速度が用いられている。ギアのシフト表は、完了したギアシフト後の適切なエンジン速度を達成するために、一般的な調整がなされている。AMT−システムは、単純に特定の状況に最も適したギアの選択を試みる。これに関連して、最高水準の技術によるいくつかのAMT−システムは、現在の状況のみに基づいて最も適したギアを選択すると言われている。また、ギアの選択を改良するために異なる種類の予測機能を有するAMT−システムも存在しており、それは、いくつか先のギアシフトステップを意味しており、すなわちギアのシフト手順を予測することができる。
【0006】
これは、大型車両が上り坂の道路を登り始めるときに、進む抵抗の増加を検出できることを意味しており、プログラムされたギアのシフト方法は、一般的に、現在の牽引力及び加速に従って、特定数のギアステップをシフトダウンさせるために、AMTを動作させようとする(すなわち上り坂の状態において常に減速する)。
【0007】
車両が更に進み、および上り坂の勾配が急になり、および移動抵抗が今まで以上に増加するにつれて、シフト方法は、AMTに対していくつかのギアステップを更にシフトダウンさせるとともに、AMTの最高ギア比のうちの1つを係合させる。この選択された高いギア比は、予め決定されたギアのシフト表に基づいている。
【0008】
与えられた道路の傾斜に対して、車両が道路の傾斜を登ることが可能な最低ギア比が存在する。シフトダウンした後のAMT−システムが前記最低ギア比よりも高いギア比に達した場合に、車両の速度は、最低限必要な速度よりも低いとなり、それは、燃料消費が増加するとともに、平均速度が低下されることになる。その低い車両速度は、交通渋滞を引き起こす可能性がある。この状況の他の欠点は、高いギア比とこのような高出力のトルクの大型車両であるために、車両の駆動車輪がスリップするという高い危険性がある。スリップは、車両が乾いたアスファルトの表面を走行中のときであっても引き起こされる可能性がある。駆動車輪の1つ以上がスリップし始めた場合に、急勾配の上り坂の途中で完全に停車する危険性が高い。車両がスリップによって停車した場合に、運転手は発進するための問題を抱える。発進しようとするときに、駆動車輪はスリップし、それは、運転手が、急勾配な上り坂の下方に車両を後退させることを意味している。
【0009】
車両の一般的な例は、例えば、60トンの総車体重量のトレーラーを備えるトラックである。トラックは、例えば、特許文献1に開示されたタイプの14個の前進ギア(2個の最も低いギアは、徐行ギアであってもよい)を有するAMTを備えていてもよい。
【特許文献1】国際公開第2002/064996号パンフレット(WO2002/064996)
【0010】
図1は、例えば、15%の傾斜(勾配)と、水平位置Aから上って水平位置Bまで約150メートルの長さを有する代表的な急勾配の上り坂を概略的に示す。運転手は、急勾配な上り坂が接近していることを見ると、更にトルクを増大(要求)させるために、運転手は、60トントラックに設けられたアクセルペダルの押圧を僅かに増加させる。
【0011】
前記60トントラックに対する一般的な最高水準のギアのシフト方法は、時速35kmの速度と6番目のギアが係合している車両が、位置Aを通過するときに、次のようにギアシフトを行う。地点Cにおいて、車両は道路の傾斜と減速を検出する。これでシフトダウンを始める。車両は重くて、道路は急勾配で、比較的急に減速されるため、プログラムされたシフト方法は、AMTに対して複数のギアステップをシフトダウンさせる。この場合に、それは、一般的にギア6からギア4までシフトダウンする。車両エンジンと車両における駆動車輪との解放により生じる(例えば、クラッチの解放、またはAMTをニュートラルとすることによって生じる)駆動中のトルクの中断による急な減速によって、AMTが選択されたギアを失敗しないという2ステップシフトダウンを保証する。選択された4番目のギアの係合は成功するが、しかし車両の減速は続いてしまう。
【0012】
選択したギアにAMTが係合を試みて係合できない場合には、ギアはミス(失敗)する。それは、現在の車両速度に対して高いギア(すなわち低いギア比)になってもよい。ギアをシフト中の急な車両の減速は、ギアの係合ができないことに対する原因である可能性がある。ミスされたギアは、これらの状況の下で車両の停車を導く可能性がある。
【0013】
位置Cにおいて、シフトダウンは前述したように開始され、位置Dにおいて、AMTがギア4に係合し、より高出力のトルクは、車両の駆動車輪に伝達され、そして、減速は位置Cと同程度ではないが、減速は続いている。地点Eにおいて、AMTが他のシフトダウンを開始するに従って、エンジン速度と車両速度は極めて低くなる。また、確実に選択されたギアを失敗しないようにするために、多数のステップのシフトダウンが選択される。この場合に、ギア1が選択され、それは、トラックが位置Bまで上り坂の全ての道を登りきるようにするため、少なくとも理論的には、駆動車輪に対して充分なトルクが伝達されることを意味する。前述した例を要約すると、急勾配な上り坂の走行状態の間の選択されたギアシフトの順序は6−4−1となっている。
【0014】
道路の表面と駆動車輪のタイヤとの間の摩擦が充分である場合には、トラックは、ギア1が係合されて、位置Bまで上り坂の全ての道を登りきれる。駆動車輪がスリップし始めた場合に、車両は推進力を失うとともに、車両は結局上り坂の途中で停車してしまい、発進するために困難な問題を有することになる。
【0015】
本発明の目的は、ギアを選択することによって、急勾配な上り坂の走行状態の状況をより最適にすることであり、平均速度を増加させ、かつ燃料消費を低下させるために、そして、車両の駆動車輪がスリップする状況が発生した場合に、スリップの危険性を最小にするとともに、同時に車両が上り坂の全行程を通って登りきることができるギアを選択する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による方法は、急勾配な上り坂の走行状態における車両の走行中のギアの選択方法であって、前記車両は、自動機械伝達装置に接続されたエンジン出力軸を有するエンジンと、車両の少なくとも1つの駆動されるホイールに接続される伝達出力軸と、前記エンジンのトルク要求のためのエンジン制御、前記伝達装置のギアシフト、およびクラッチの係合/解放ための命令出力信号を出すことをプログラムされた論理規則によって信号を処理するために、車両速度、前記伝達装置の係合比と、前記エンジンの回転速度、前記入力軸の回転速度、エンジントルク要求に対する絞り弁制御機器の変位と、を示す信号を含む入力信号を受信するための少なくとも1つの制御ユニットと、を備えることを特徴とする方法。急勾配な上り坂の走行状態を検出したときに、目標ギアが前記急勾配な上り坂の走行状態に対して決定され、前記目標ギアは、車両において利用可能な最も低いギア比を有する利用可能な最も高いギアとなっており、少なくとも現在の状況を考慮して、少なくとも論理的に一定の車両速度を保つか、または少なくとも僅かに加速することが可能であり、およびシフトダウンの選択が行われるときに、前記目標ギアよりも低いギアが選択されない、および係合されないようにする。
【0017】
本発明による方法の効果は、決定された目標ギアは、所定の検出された急勾配な上り坂の走行状態に対して、与えられた最適なギアであり、最も低い燃料消費、最も早い平均速度、駆動車輪のスリップに対して最小化された危険性、そして、それでも車両は、少なくとも論理的には、前記急勾配な上り坂の全行程を登りきることが可能である。すなわち、車両速度を一定に保つ、または上り坂の全行程で少なくとも僅かに加速する(少なくとも現在検出された状態によれば)。
【0018】
目標ギアが決定されているときに、更なるシフトダウン、または複数のシフトダウンは、前記目標ギアに適応し、その結果、目標ギアよりも低いギアには、所定の急勾配な上り坂の走行状態において係合しないようになっている。
【0019】
本発明による方法の一実施例によれば、前記急勾配な上り坂の走行状態の前記登録には、少なくとも現在の道路の傾斜と、現在の車両速度と、現在の絞り弁制御機器の位置と、車両の総重量と、の検出結果が含まれる。大部分のAMT−システムは、既にギア選択のための前記パラメータを使用しているとともに、本発明の急勾配な上り坂の走行状態を識別するための機能を有する新しいソフトウェアが、殆どの場合において必要とされている。
【0020】
本発明による方法の他の実施例によれば、前記目標ギアの決定は、少なくともパラメータとして、利用可能な車両のエンジン出力と、車両の総重量と、現在の道路の傾斜と、現在の車両速度と、利用可能な全てのギア比と、を含んでいる。
【0021】
本発明による方法の更なる実施例によれば、もはや上り坂の状態を登る要求が検出されないときには、前記目標ギアに対するシフトダウンの制限が取り消される。その車両は停車することができ、または係合された目標ギアが許容するよりもゆっくりと走行できる。
【0022】
本発明による方法の前述した最後の実施例の更なる展開において、前記「もはや上り坂の状態を登る要求がない」は、前記絞り弁制御機器の少なくとも一部または全部を解放したことの検出結果である。例えば、車両の運転手がなんらかの理由で停車、または少なくとも車両速度を減速させたい場合に、システムは、前記目標ギアに対するシフトダウンの制限を取消可能にしなければならない。この実施例の更なる展開において、前記絞り弁制御機器の少なくとも一部の解放は、絞り弁制御機器の全変位の少なくとも15%である。
【0023】
本発明による方法の更なる実施例によれば、制御ユニットは、急勾配な上り坂の走行状態の間の急勾配な上り坂の状態の変化を検出し、前記目標ギアの選択は、それに応じて更新されるか、または、取り消されるかのいずれか一方となる。
【0024】
本発明の更に好ましい実施例は、特許請求項1に続いて従属する従属特許請求項から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、添付された図面を参照して以下に詳細に記述され、実施例が目的とする更なる本発明の好ましい実施例と技術的な背景もまた示されている。
【0026】
本実施例において、車両は内燃エンジン1を備えており、例えばディーゼルエンジンでは、クラッチケース4に囲まれて、単式ディスク乾板クラッチ3に接続されるクランクシャフト2を備える。クランクシャフト2は、ギアボックス9の筐体8内に回転可能に設けられた入力軸7に、相対的に回転不能に接続される。また、主軸10と中間軸11とは、ギアボックス筐体8内に回転可能に設けられる。ギアホイールは、入力軸に回転可能に取り付けられるとともに、結合スリーブを備える同期装置の補助により軸に係止可能となっており、それは、相対的に回転不能に取り付けられているが、接続されるハブに軸方向に移動可能な状態となっており、出力軸に対して相対的に回転不能になっている。前記結合スリーブを用いることで、主軸に回転可能に取り付けられたギアホイールを、入力軸7と連係して係止することができる。中間位置にて前記結合スリーブを用いることで、両方のギアホイールはそれぞれの軸から離間される。前述したギアホイールは、同期装置および結合スリーブとともに、スプリッタ・ギアを構成する。
【0027】
中間軸11に回転可能に保持する状態で配置されるのは、更なるギアホイールであり、それは、主軸10に回転可能に取り付けられたそれぞれのギアホイールと各々係合され、そして、後方のギアホイールを更なる結合スリーブを用いることで主軸に係止させることができる。主軸の出力端部は、プロペラシャフトを介して駆動される少なくとも1対のホイールが配置される。
【0028】
全ての結合スリーブは、サーボ手段を用いることで移動可能であり、それは、前述した種類の伝達装置において利用されるタイプのピストン−シリンダ装置を空気作用により動作させることができる。それは、I−シフトとしての名称で販売されている。
【0029】
制御ユニット45は、プログラムされた論理規則による伝達装置の入力軸7と出力軸との間の異なるギア比を係合させるために、異なる空気作用により動作するピストン−シリンダ装置を制御するように配置されている。
【0030】
エンジン1から伝えられるトルクは、周知の方法の絞り弁制御機器48(通常はアクセルペダル)によって制御される。アクセルペダルの位置は、角度センサ49から得られる。また、制御ユニット45は、アクセルペダルの位置によって決まる燃料の供給(すなわちエンジン速度およびトルク)を制御し、例えば、クラッチと同期スプリッタ・ギアが調整されることによって、空気を空気式ピストン−シリンダ装置に供給する。
【0031】
ギアのセレクタ・レバー46が自動ギア選択モードに位置しているときに、ギアの選択およびシフトの決定は、車両速度、エンジン速度、車両速度の変化率、エンジン速度の変化率、絞り弁制御機器の位置、絞り弁制御機器の位置の変化率、車両のブレーキングシステム、現在の係合しているギア比、および従来技術から公知である同様なもののような特定の測定および/または算出されたパラメータに基づいて、制御ユニット45によって自動的に行われる。
【0032】
本発明の実施例における車両内の制御ユニット45は、急勾配な上り坂の走行状態が発生するときを検出するためのプログラムがなされている。前記急勾配な上り坂の走行状態の登録には、少なくとも現在の道路の傾斜と、現在の車両速度と、車両の総重量、およびアクセルペダルの位置の検出結果が含まれる。本発明によれば、アクセルペダルが最大(またはほぼ最大)の変位位置(またはエンジンに伝達される最大トルク、またはほぼ最大トルク)に押し込まれた場合でも、車両が減速するときに、急勾配な上り坂の状態が登録され、予め決定されたギア比よりも大きなギア比に係合させるため、車両は、車両の総重量を有しつつ、前記検出した道路の傾斜を有する上り坂を登りきることができる。14個の前進ギアを有するAMTにおいて、前記予め決定されたギア比は、例えば、1個の対応するギア7である。例えば、車両が理論的に前記上り坂を登りきること可能なギアステップは、1から6のギアである。
【0033】
制御ユニット45が急勾配な上り坂の走行状態を検出するときに、目標ギアは、前記上り坂の走行状態に対して決定される。目標ギアは、車両において利用可能な最も低いギア比を有する利用可能な最も高いギアであり、少なくとも現在の状況を考慮して、少なくとも論理的に一定の車両速度を保つか、または少なくとも僅かに加速することが可能である。本発明によれば、制御ユニット45は、目標ギアよりも低いギアが選択されない、および係合されないようにするために、更なるシフトダウンの選択に適応させるようにプログラムされている。
【0034】
これは、図1と同じ重量と構成を有する車両のときに(例えば、総重量が60トン、およびトレーラーが接続される)、同じ出発点で(例えば、時速35km、および6番目のギアが係合される)、本発明によるAMTを備えた状態で、図1と同じ急勾配な上り坂に進入するときに、以下の事が起こる。
【0035】
図3は、図1に示す上り坂と同じ上り坂を示している。水平位置A3において、車両は時速35kmの車両速度と、6番目のギアが係合されて通過する。位置C3において、車両は、道路の傾斜及び減速を検出する。これは、本発明における急勾配な上り坂の走行状態の登録を始めるとともに、目標ギアの決定を開始する。この特定の上り坂の状態に対して、制御ユニット45は、ギア3が目標ギアであることを決定する。
【0036】
車両が重いので、図3における道路は、急勾配および比較的高さが障害となっており、プログラムされたシフト方法は、ギアが「ミス」(失敗)する危険性があるので、AMTに複数のギアステップをシフトダウンさせる。制御ユニット45は、少なくとも2つのギアステップのシフトダウンがなければならないと判断する。しかし、目標ギアは、現在係合されている6番目のギアから3つのギアステップ下であるため、それは、次のギアが係合したときに、同じ急勾配な上り坂の走行状態がさらなる時間に渡って持続されると仮定すると、本発明における制御ユニット45は、通常のギアのシフト方法を適応(改変)させて、その結果、次に選択されるギアは、この特定の上り坂の状態では、目標ギア(すなわちギア3)となる。目標ギアは、ここにあるこの特定の急勾配な上り坂の走行状態に対して選択された最適なギアであり、すなわちギア3は、ここで最も低い燃料消費と、最も速い平均速度と、最も最小化された駆動されるホイールのスリップに対する危険性と、を与え、さらになお、車両は、少なくとも論理的に前記急勾配な上り坂の走行状態を切り抜けることが可能であり、すなわち車両速度を一定に保ち、または水平位置B3まで登りきるために、上り坂の全行程で少なくとも僅かに加速することができる。
【0037】
位置D3にて、本発明におけるAMTは、目標ギア3に係合され、そして、より高い出力トルクは、車両の駆動車輪に伝達され、そして、減速度は位置Cほど大きくならない。減速は結局しないようになり、そして、少なくとも一定の車両速度、または車両の僅かな加速に変化する。このように、少なくとも論理的に充分な(位置C3において有利な状態)トルクが駆動車輪に伝達される。そのためトラックは、位置B3まで上り坂の全行程を通って登りきることができる。本願発明の実施例を要約すると、例示された急勾配な上り坂の走行状態の間に選択されたギアのシフト手順は、6−4−1の代わりに本発明の6−3となっており、それは最高水準の技術であるAMTの成果である。
【0038】
制御ユニット45が目標ギアを決定するときに、この手順は、少なくともパラメータ:利用可能な車両のエンジン出力、車両の総重量、現在の道路の傾斜、現在の車両速度、および利用可能な全てのギア比(すなわちエンジンと駆動車輪の間)を含んでいる。目標ギアは、プログラム方式、または予め定められた制御ユニット45に格納されたテーブルから抽出することによって、オンラインで算出することができる。そして、そのテーブルは、車両に組み込まれる前に、車両の製造会社によって製作される。
【0039】
本発明の更なる発展した実施例では、制御ユニット45は、もはや上り坂の状態を登る要求がないことを検出するようにプログラムされている。そのような状態が検出されるときに、制御ユニット45は、前記目標ギアのシフトダウンの制限を取り消すようにプログラムされている。もはや上り坂の状態を登る要求がないことの成立は、制御ユニット45が前記絞り弁制御機器48の少なくとも一部または全部を解放したことを検出した結果となっている。前記目標ギアの前記シフトダウンの制限の取り消しは、少なくとも、例えば、絞り弁制御機器48の全変位(ガンマ γ)の15%の変位(移動)である絞り制御機器48の少なくとも一部の解放(アルファ α)によって開始可能である。
【0040】
本発明の他の更なる発展した実施例では、制御ユニット45は、所定の予め決定された時間以後の前記急勾配な上り坂の走行状態の間、または制御ユニットが、急勾配な上り坂の状態を検出した後に、例えば、道路の傾斜の変化のような前記パラメータを連続的に検出する場合に、急勾配な上り坂の状態を検出することを繰り返すようにプログラムされている。本発明の実施例において道路の傾斜の増加は、おそらく最初に選択された目標ギアよりも低いギア(より高いギア比を有する)である目標ギアの新しい選択を開始させる。道路の傾斜の減少は、より高く選択された目標ギア(より低いギア比を有する)を与えることができ、または、道路勾配(傾斜)の減少が充分に大きければ、その急勾配な上り坂ではない走行状態が成立されたことを優先し、そのため目標ギアのシフトダウンの制限は取り消される。
【0041】
図4は、図1および図3においてそれぞれ示された上り坂の状況で、ギア(ギア番号)および対応するギア比の直接的な比較を示している。左の列(カラム)は、「従来技術」による前述した最高水準の技術によるギアの選択の手順の例を示し、右の列(カラム)は、前述した本発明によるギアの選択の手順の例を示している。
【0042】
同じ上り坂の状態に対する最高水準の技術によるギアの選択の手順(選ばれたギア番号)の更なる例は、以下に与えられる:
a)9−6−4−2
b)9−6−4−1
c)9−6−3
d)9−7−5−2
e)8−6−4−1
f)7−5−2
g)7−4−2
h)7−4−1
【0043】
そして、ここで、例えば、目標ギア3が選ばれる本発明による同じ上り坂の状態に対するギアの選択の手順の更なる例を続ける:
i)9−7−3
j)9−6−3
k)8−6−3
l)8−5−3
m)7−5−3
n)7−6−3
【0044】
図5は、不揮発性メモリ520と、プロセッサ510と、読み出しおよび書き込みメモリ560と、を備える本発明の実施例における装置500を示す。メモリ520は、装置500を制御するためのコンピュータプログラムが記憶された第1メモリ部530を有している。装置500を制御するためのメモリ部530内のコンピュータプログラムは、オペレーティング・システムとすることができる。
【0045】
装置500は、例えば、制御ユニット45のような制御ユニット内に組み込むことができる。データ処理ユニット510は、例えば、マイクロコンピュータを備える。
【0046】
また、メモリ520は、本発明における目的ギアの選択機能を制御するためのプログラムが記憶されている第2メモリ部540を有している。変形例では、目的ギアの選択機能を制御するためのプログラムは、例えば、CD、または交換可能な半導体メモリのような別体の不揮発性データ記憶媒体550に記憶されている。プログラムは、実行可能な状態で、または圧縮された状態で記憶されてもよい。
【0047】
後述することは明確なように、データ処理ユニット510は、特定の機能を走らせる。それは自明であり、データ処理ユニット510は、メモリ540に記憶されているプログラムの特定の一部、または不揮発性記録媒体550に記憶されているプログラムの特定の一部を走らせる。
【0048】
データ処理ユニット510は、データバス514を介してメモリ550と通信できるように構成されている。また、データ処理ユニット510は、データバス512を介してメモリ520と通信できるように構成される。更に、データ処理ユニット510は、データバス511を介してメモリ560と通信できるように構成されている。また、データ処理ユニット510は、データバス515を用いてデータポート590と通信できるように構成されている。
【0049】
本発明における方法は、データ処理ユニット510、メモリ540に記憶されているプログラムまたは不揮発性記録媒体550に記憶されているプログラムを走らせるデータ処理ユニット510によって、実行させることができる。
【0050】
本発明は、前述した実施例に限定されるように見なすべきではなく、しかし、むしろ特許請求項の範囲内であれば、数多くの更なる変形および変更が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】前述したように、急勾配な上り坂状態が発生する代表的な急勾配の上り坂を示す概略図であり、従来技術のギアのシフト方法に関連した上り坂の重要な位置を指し示している。
【図2】本発明における駆動伝達系を示す概略図である。
【図3】図1と同じ急勾配の上り坂を示す概略図であるが、本発明のギアのシフト方法に関連した上り坂の重要な位置を指し示している。
【図4】図1および図3において各々示された上り坂の状況で選択されたギアステップと、対応するギア比と、の直接的な比較を示す図である。
【図5】本発明の実施例で使用されているコンピュータ装置を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急勾配な上り坂の走行状態における車両の走行中のギアの選択方法であって、前記車両は、自動機械伝達装置(9)に接続されたエンジン出力軸を有するエンジン(1)と、車両の少なくとも1つの駆動されるホイールに接続される伝達出力軸と、
前記エンジン(1)のエンジン制御および前記伝達装置(9)のギアシフトのための命令出力信号を出すことをプログラムされた論理規則によって信号を処理するために、
−前記伝達装置の係合比と、
−エンジントルク要求に対する絞り弁制御機器(48)の変位と、
−および、車両速度、前記エンジンの回転速度、および前記入力軸の回転速度の内、少なくとも1つと、
を示す信号を含む入力信号を受信するための少なくとも1つの制御ユニット(45)と、を備え、
急勾配な上り坂の走行状態を検出したときに、目標ギアが前記上り坂の走行状態に対して決定され、前記目標ギアは、車両において利用可能な最も低いギア比を有する利用可能な最も高いギアとなっており、少なくとも現在の状況を考慮して、少なくとも論理的に一定の車両速度を保つか、または少なくとも僅かに加速することが可能であり、およびシフトダウンの選択が行われるときに、前記目標ギアよりも低いギアが選択されない、および係合されないようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記急勾配な上り坂の走行状態の登録には、少なくとも現在の道路の傾斜と、現在の車両速度と、現在の絞り弁制御機器の位置と、車両の総重量と、の検出結果が含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標ギアの決定は、少なくともパラメータとして、利用可能な車両のエンジン出力と、車両の総重量と、現在の道路の傾斜と、現在の車両速度と、利用可能な全てのギア比と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
もはや上り坂の状態を登る要求が検出されないときには、前記目標ギアに対するシフトダウンの制限が取り消されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記もはや上り坂の状態を登る要求がないことの成立は、前記絞り弁制御機器(48)の少なくとも一部または全部を解放したことの検出結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記絞り弁制御機器(48)の少なくとも一部の解放は、絞り弁制御機器(48)の全変位の少なくとも15%であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
急勾配な上り坂の走行状態の間の制御ユニット(45)は、急勾配な上り坂の状態の変化を検出したときに、前記目標ギアの選択は、それに応じて更新されるか、または、取り消されるかのいずれか一方となっていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、請求項1に記載の方法を実行するプログラムコードを備えるコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、コンピュータ−読取媒体に格納され、請求項1に記載の方法を実行するコンピュータコードを備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
コンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラム製品における前記コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、請求項1に記載の方法を実行するコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−518601(P2009−518601A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544290(P2008−544290)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001892
【国際公開番号】WO2007/067115
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】