説明

情報削除支援装置、情報バックアップ装置および移動体用機器

【課題】記憶手段から情報を削除しても情報報知態様が変化することを防止し、記憶手段の記憶可能領域を効率よく使用できるようにする。
【解決手段】制御回路が、アクセス回数、走行回数、動作設定、目的地設定状態に応じて設定された削除優先度の高い複数の地図情報のうちの何れかの情報を地図情報記憶部の記憶可能領域から削除する(T10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図や道路やその案内や音楽や画像等に係る複数の報知用情報が記憶された記憶手段から当該情報を削除支援する情報削除支援装置、情報バックアップ装置および移動体用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に移動体用機器は、様々なアプリケーションを実現するため、音楽や画像等に係る情報を記憶可能な記憶手段を備えている。このうち例えばナビゲーション等の機能を搭載した移動体用機器は、地図や道路やその案内等に係る複数の報知用情報を格納できるように構成されるものがある。しかし、移動体用機器はその記憶可能な情報量に限度がある。記憶可能な情報量に制限があると新たな情報を記憶手段に記憶させるためには何らかの情報を削除する必要がある。
【0003】
しかしながらユーザは消去可能な情報を判別しづらい。そこで記憶可能な容量を超過するときには、合計の情報量が記憶手段の記憶容量内になるように変更、選択できるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示されている技術によれば、情報の種類および情報量を基準に地図情報などに対して優先度を設定し、これらの優先度にあわせて案内情報、地図情報などを変更できるようにしている。
【特許文献1】特開2003−97953号公報(0054段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術を採用すると、情報を配信する配信センタとの通信処理が常に必要となり、特に通信部を搭載していない装置では実行不可能である。また、特許文献1の技術では、情報の種類および情報量を基準に優先度を設定しているものの、このような優先度の設定方法では記憶手段の記憶可能領域の空き状態によっては情報報知態様が明らかに変化してしまう場合がある。
【0005】
例えば、特にナビゲーション機能を搭載した移動体用機器の場合には、以前まで交差点拡大図を表示できたとしても報知用情報が削除されることにより交差点拡大図を表示できなくなってしまうことがある。この場合には、ユーザにとって利便性が損なわれることとなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、記憶手段から情報を削除しても情報報知態様が変化してしまう不具合を防止し記憶手段の記憶可能領域を効率よく使用できるようにした情報削除支援装置、この支援装置により削除指示されると当該削除指示される報知用情報を記憶可能に構成された情報バックアップ装置、および情報削除対象となる報知用情報が記憶された記憶手段を備えた移動体用機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、次のように作用する。削除優先度設定手段は、地図や道路やその案内や音楽や画像等に係る複数の報知用情報が記憶された記憶手段に対する報知用情報へのアクセス回数に基づいて削除優先度を複数の報知用情報毎に設定する。そして指示手段により指示されると、削除優先度設定手段により設定された削除優先度に基づいて複数の報知用情報のうち少なくとも何れかの情報を削除することができる。したがって、アクセス回数に基づいて報知用情報を削除支援することができる。これにより記憶手段から情報を削除しても情報報知態様が変化してしまう不具合を防止することができ、記憶手段の記憶可能領域を効率よく使用できるようになる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、削除優先度設定手段がアクセス回数に加え、移動体の移動した道路の移動回数をも加味して削除優先度を設定するため、移動回数の多い道路に係る報知用情報のみを記憶手段に残留させることができるようになる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、削除優先度設定手段はアクセス回数に加え、予め設定された要否設定をも加味して削除優先度を設定するため、ユーザが必要と感じている報知用情報を記憶手段に対して優先的に残留させることができるようになり、逆にユーザが不必要と感じている情報を優先的に削除できるようになる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、削除抑止指示手段は移動体が現在移動中もしくは移動予定の経路に係る報知用情報を削除抑止指示するため、たとえ削除優先度が高くても、移動体が現在移動中もしくは移動予定の経路に係る報知用情報については削除処理を強制的に行わないようにすることができる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、移動体の総走行距離が所定距離以上であったときに削除許可手段が報知用情報の削除を許可した後でない限り削除処理が行われないため、情報を不用意に削除してしまうことを防止することができる。
【0012】
請求項6記載の発明によれば、移動体用機器の起動回数が所定回数以上であったときに削除許可手段が報知用情報の削除を許可した後でない限り削除処理が行われないため、情報を不用意に削除してしまうことを防止できる。
【0013】
請求項7記載の発明によれば、バックアップ記憶手段が削除指示された報知用情報をバックアップして記憶できるため、誤って報知用情報が削除されてしまったような場合であっても削除された報知用情報を復帰させることができる。
【0014】
請求項8記載の発明によれば、複数の報知用情報に対するアクセス回数に基づいて設定された削除優先度に応じて報知用情報が削除可能に構成されている。これにより記憶手段から情報を削除しても情報報知態様が変化してしまう不具合を防止し、記憶手段の記憶可能領域を効率よく使用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の情報削除支援装置を車両用のナビゲーション装置に適用し、情報バックアップ装置としての外部メモリに対して情報をバックアップする構成に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
車両(移動体:例えば自動車)には、車両用のナビゲーション装置1が移動体用機器として搭載されている。図1は、全体の電気的構成を機能ブロックの組み合わせにより概略的に示している。この図1に示すように、ナビゲーション装置1は制御回路2を備え、当該制御回路2に対して、位置検出器3、記憶手段としての地図情報記憶部4、表示装置5、指示手段としての操作スイッチ群6、音声回路部7、リモコンセンサ8、バックアップ記憶手段(情報バックアップ装置)としての外部メモリ9を接続して構成されている。
【0017】
制御回路2は、CPU(図示せず)やメモリ2aなどを備えており、削除優先度設定手段、削除抑止指示手段として機能する構成である。制御回路2のメモリ2aにはナビゲーション(経路案内)用のプログラムなどが搭載され、プログラム実行時の処理情報の他に地図情報記憶部4から取得した地図情報などが一時的に格納されるようになっている。
【0018】
位置検出器3は、例えばGPS(Global Positioning System)用の人工衛星からのGPS信号を受信するGPS受信機10、ヨーレートを検出するためのジャイロスコープ11、車両の速度を検出するための車速センサ12を備えて構成される。尚、位置検出器3として図示しないが、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサ(Gセンサ)や、車両のピッチング方向の傾斜角を検出するための傾斜センサが前述検出構成要素に付加して構成される。位置検出器3は、これらの検出構成要素の検出信号を補間しながら高精度に位置検出するようになっている。
【0019】
地図情報記憶部4は、例えばハードディスクドライブにより構成されている。この地図情報記憶部4は、情報を読出/書込/消去/書換可能な大容量の記憶可能領域を備え、当該大容量の記憶領域を利用して地図情報を記憶保持する構成である。この地図情報は、地図表示のための地図描画用情報、マップマッチングや経路探索、経路誘導などの種々の処理に必要な道路情報、交差点の詳細情報からなる交差点情報、この交差点情報に対応して案内を行うための案内情報やその音声情報、背景レイヤを表示するための背景情報、地名、地域などの地点を表示するための地名情報のほかに、施設名称を例えば50音順に並べてなる施設情報、観光用の観光ガイド情報、電話番号と施設との対応を示す電話番号情報、など、地図、道路やその案内等に係る情報を対象としており、報知用情報に相当している。
【0020】
これらの地図情報は、主要な都市間を結ぶための高速道路や主要国道などの広い範囲の道路情報を含む広範囲に渡る第1情報(基本情報:広域情報)、この範囲よりも狭範囲の地域(例えば、中部地域、関東地域、関西地域等)の範囲に渡る第2情報(中域情報)、この範囲の情報よりも狭範囲の地域(例えば、愛知、東京、沖縄等)に係る詳細な道路や交差点等の情報を示す第3情報(詳細道路情報:狭域情報)、等のように広範囲から狭範囲に渡り、階層的および段階的に地図情報記憶部4に対して記憶されている。このうち第3情報は、交差点に対応して当該交差点に対する進入方向および進出方向に対応した案内情報やその案内に係る音声情報が対応付けられた状態で地図情報記憶部4に記憶されている。これらの地図情報は、道路態様の変化に応じて書き換える必要が生じることがある。したがって、ハードディスクドライブなどのように情報を書換可能な記憶装置を用いることが望ましい。
【0021】
表示装置5は、地図画面などを表示するための液晶ディスプレイ等により構成されており車両の運転席近傍に設置される。この表示装置5の表示画面には、通常時において縮尺を複数段階に変更可能な道路地図が表示されると共に、その表示に重ね合わせて、車両の現在位置および進行方向を示すポインタが表示されるようになっている。また、周知のダイクストラ法を用いて行われる目的地までの経路計算結果に基づいた経路案内機能の実行時には、道路地図に重ね合わせた状態で進むべき案内ルートが表示されるようになっている。
【0022】
さらにユーザ(一般には車両の運転者)による目的地や経由地などの地点検索およびこの地点を入力するための各種のメニュー画面および入力画面(詳細は後述する)、並びに各種のメッセージ、インフォメーションやヘルプ画面なども表示されるようになっている。
操作スイッチ群6は、表示装置5の周辺に配設されたメカニカルスイッチや、当該表示装置5の表示画面上に形成されたタッチパネルなどからなり、各種情報や設定事項などの操作に係るコマンドや、文字情報や地図の指定指示情報を制御回路2に与えるために設けられている。
【0023】
音声回路部7は、音声合成回路等を備え、スピーカ13およびマイク14を接続しており、制御回路2からの音声情報に応じた出力信号を発生してスピーカ13から音声を報知したり、マイク14からの音声情報を入力する構成となっている。リモコンセンサ8は、リモコン15からの操作信号を受信して制御回路2に与えるようになっている。
【0024】
外部メモリ9は、フラッシュメモリなどの情報書換可能な不揮発性メモリや予備のハードディスクドライブにより構成されており、例えば他規格の情報記録媒体に対応するためのプログラムソフトを記憶したり特定の情報(走行軌跡の履歴やデジタルカメラにより取込まれた任意の画像情報など)の保存や呼出などを行うために設けられている。
【0025】
制御回路2は、操作スイッチ群6やリモコンセンサ8を通じて入力されたコマンド信号に基づいて、周知の地図表示機能、経路計算機能、経路案内機能、電話番号検索機能、郵便番号検索機能、マップコード(登録商標)のような固有コードを利用した検索機能、50音検索機能、ジャンル別検索機能、最寄り施設検索機能、目的地登録機能、地点登録機能など、多種多様な支援機能に係る処理を実行するように構成されている。
【0026】
上記構成の作用について、図2ないし図4をも参照しながら説明する。
本実施形態においては、地図情報記憶部4に対するアクセス回数、道路(移動体の移動経路)の走行回数、動作設定(各種ガイドの要否設定)、および目的地設定に基づいて削除優先度を設定し、この削除優先度に基づいて情報を削除指示可能なところに特徴があるため、以下の説明ではこの部分を中心に説明する。
【0027】
周知のように、ナビゲーション装置1は、位置検出器3により現在位置を検出して制御回路2が現在位置を特定し、制御回路2が地図情報記憶部4に記憶された地図情報を参照し、地図描画用情報や道路情報および案内情報等を現在位置を示すマーカと共に表示装置5の表示画面に対して表示するように制御したり、必要に応じて音声情報をスピーカ13を通じて報知するように制御する。
【0028】
この制御中において、制御回路2は図2に示す制御動作を行う。図2は、ナビゲーション装置の制御回路の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。この図2に示すように、制御回路2は、地図情報記憶部4に記憶された情報の削除要求がある(ステップT2:YES)まで削除優先度更新処理(ステップT1:図3参照)を繰り返し行う。
【0029】
図3は、削除優先度更新処理の詳細な動作を示している。また図4は、アクセス回数や道路(移動体の移動経路)の走行回数、動作設定(各種ガイドの要否設定)の状態、および目的地設定状態や、削除優先度の状態をテーブルTにより示している。尚、このテーブルTは制御回路2のメモリ2a内に記憶されている。
【0030】
図3に示すように、制御回路2は、地図情報を参照し、地図情報記憶部4の記憶データに対するアクセス要求が発生すれば(ステップS1:YES)、アクセス回数(図4参照)をカウントアップする(ステップS2)。アクセス発生の機会は少なくとも2通りあり、(1)位置検出器3により現在位置が検出され、制御回路2が当該検出された現在位置周辺に係る地図情報を参照した時点等、もしくは、(2)ユーザの指示により地図情報を参照した時点(例えば、地図情報の拡大縮小指示などにより全国の地図情報の全体もしくは詳細な一部を参照指示した時点)等である。尚、制御回路2は、ユーザの指示があれば全国の地図情報を参照可能に構成されている。
【0031】
また、制御回路2は、アクセスした情報に係る地域が現在位置(周辺)を含む地域である(ステップS3:YES)ときには、走行回数のカウントアップを行う(ステップS4)。
さらに制御回路2は、操作スイッチ群6による操作指示信号を受付け、動作設定の変更が行われたときには(ステップS5:YES)ステップS6に移行する。ステップS6において、制御回路2は音声情報が非使用と予め選択指示されているか否かを判定する。この使用/不使用の設定状態はテーブルTに記憶されており、ユーザにより変更指示可能である(図4中のナビ動作設定参照)。制御回路2は音声情報が非使用と判定したときには(ステップS6:YES)、音声情報の削除優先度をカウントアップする(ステップS7)。
【0032】
さらに制御回路2は、操作スイッチ群6による操作指示信号を受付け、目的地の設定が行われたときには(ステップS8:YES)、その現在位置から目的地に至る経路を設定した後に、この経路に係る情報(該当地域の情報)を削除不可に設定する(ステップS9)。
【0033】
図4には、テーブルTの具体例を示している。この図4の行Y1〜Y14は、基本情報、詳細道路情報(東京)、詳細道路情報(愛知)、詳細道路情報(沖縄)、…、案内情報(東京)、案内情報(愛知)、音声情報、施設情報、観光ガイド情報、の複数の報知用情報の各情報に対する設定および削除優先度を示している。削除優先度については、数字が低いほど削除優先度が高いことを示している。図4において、基本情報は前述の第1情報(広域情報)に対応しており、各地域の詳細道路情報や案内情報は前述の第2情報(中域情報)もしくは第3情報(狭域情報)に対応している。
【0034】
図4の列X1は、各情報の削除可否設定状態を示している。この図4の列X1に示すように、第1情報(基本情報:広域情報)は削除不可に設定されているが、その他の第2情報(中域情報)や第3情報(狭域情報)は削除可に設定されている。図4の列X2は、各情報に対するアクセス回数を示している。この図4の列X2に示すように、アクセス回数が図3のステップS2のカウントアップ回数に応じて設定されている。
【0035】
図4の列X3は、各情報の走行回数を示している。この図4の列X3に示すように、走行回数が図3のステップS4のカウントアップ回数に応じて設定されている。図4の列X4は、ナビゲーション装置の動作設定状態を示している。この図4の列X4に示すように、ユーザによる操作指示に応じて音声情報や観光ガイド情報が非使用に設定されている。
【0036】
図4の列X5は、各情報に対応した目的地設定状態を示している。この図4の列X5に示すように、目的地が「愛知県」の一部に設定されていれば、この目的地設定状態に応じて「詳細道路情報(愛知)」および「案内情報(愛知)」の各情報を使用中との旨を示す「1」が対応して設定されている。
【0037】
図4の列X6は、アクセス回数のみに基づいて設定された削除優先度の一例を示している。この図4の列X6によれば、観光ガイド情報、施設情報、音声情報、詳細道路情報(愛知)、案内情報(愛知)、…、詳細道路情報(東京)、…、詳細道路情報(沖縄)、…、案内情報(東京)、の順に削除優先度が高い。これは、アクセス回数が多い順に削除優先度が低く設定されるためである。
【0038】
図4の列X7は、アクセス回数および走行回数に基づいて設定された削除優先度の一例を示している。この図4の列X7によれば、観光ガイド情報、施設情報、音声情報、詳細道路情報(愛知)、案内情報(愛知)、詳細道路情報(沖縄)、…、詳細道路情報(東京)、…、案内情報(東京)、の順に削除優先度が高い。これは、走行回数が多い順に削除優先度が低く設定されるためである。この列X7を列X6と比較すると、列X6の詳細道路情報(沖縄)の削除優先度が列X7に比較して低く設定されている。これは、ユーザによるアクセス回数は多いものの、実際に走行した走行回数が少ない(0回)ためである。
【0039】
図4の列X8は、アクセス回数、走行回数および動作設定状態に基づいて設定された削除優先度の一例を示している。この図4の列X8によれば、列X7に比較して音声情報と施設情報の削除優先度が入れ替わっている(図4中の符号Z参照)。つまり、音声情報が非使用に設定されているため、削除優先度が施設情報の削除優先度に比較して高く設定されている。
【0040】
図4の列X9は、アクセス回数、走行回数、動作設定状態および目的地設定状態に基づいて設定された削除優先度の一例を示している。この図4の列X9によれば、列X8の設定状態に比較して詳細道路情報(愛知)や案内情報(愛知)が「削除不可」に設定されている。これは、目的地が「愛知県」の一部に設定されているときの例を示しているためである。同様に図示しないが、車両が現在走行中もしくは走行予定の経路についての詳細道路情報や案内情報についても「削除不可」に設定されている。
【0041】
目的地設定を加味しないと詳細道路情報(愛知)や案内情報(愛知)の削除優先度が比較的高い(列X8参照)が、目的地設定を加味すると強制的に削除不可に設定されるため、後述の削除処理の際に強制的に削除処理が実施されなくなる。したがって、車両が現在走行中もしくは走行予定の経路についての地図情報については削除処理を強制的に行わないようにすることができる。尚、これら図4に示す削除優先度に対して、アクセス回数や走行回数、動作設定状態、目的地設定に応じた所定の重み付け係数を乗算して設定しても良い。
【0042】
図2に戻って再説明すると、制御回路2は、地図情報記憶部4内の記憶可能領域の空き容量を常に監視し、空き容量が所定容量よりも少なくなったときに削除要求を発生させるが、この削除要求がある(ステップT2:YES)まで、前述した削除優先度更新処理を逐次行っている(ステップT1)。
【0043】
これと同時に、車両内においては車両の総走行距離を車速センサ12等により測定しており、さらに制御回路2はナビゲーション装置1を起動した起動回数をカウントしている。制御回路2は、ナビゲーション装置1の起動回数(使用頻度)が所定回数(例えば100回)以上であること、もしくは、車両の総走行距離が所定距離(例えば3000km)以上であることを条件(ステップT3)として、ステップT4以降の処理(削除指示受付処理、バックアップ処理、削除処理、等)を許可する。
【0044】
これは、ナビゲーション装置1を起動した起動回数が少なかったり車両の総走行距離が短かければ、設定された削除優先度の信頼度も劣るためであり、信頼度の劣る削除優先度設定情報に基づいて情報を削除してしまうと、ユーザが本来必要とする情報まで削除されてしまう虞があるためである。すなわち、ナビゲーション装置1の起動回数が多かったり車両の総走行距離が長いと削除優先度の設定状態の信頼度も上がり、この削除優先度の設定状態に基づいて情報を削除しても情報報知態様が以前の設定状態と異なるという問題を生じる可能性が低くなるためである。これにより、情報を不用意に削除してしまうことを防止できる。
【0045】
制御回路2は、テーブルTを参照して削除優先度を解析し(ステップT4)、削除優先度の高い順に削除候補リストを表示装置5の表示画面に表示し(ステップT5)、ユーザによる削除指示を受付開始する(ステップT6)。このとき制御回路2は、テーブルTを参照して削除優先度に削除不可と設定された報知用情報については削除抑止指示を行い、削除不可と設定された地図情報(報知用情報)を表示装置5の表示画面に表示させることがない。したがってユーザは当該地図情報を削除不可能となり、ナビゲーション装置1がナビゲーション機能を達成するのに欠かせない地図情報が削除されず、情報を誤って削除してしまうことを防止できる。
【0046】
ユーザが操作スイッチ群6を操作し、削除可能と考える報知用情報を削除候補リストから選択すると、制御回路2は削除指示が行われた(ステップT6:指示受付)と判断する。次に削除認証用のパスワードが入力されると(ステップT7)、制御回路2はバックアップメモリとしての外部メモリ9が接続されているか否かを判定し(ステップT8)、外部メモリ9が接続されていれば、外部メモリ9に対して削除指示された報知用情報を記憶させる。報知用情報をバックアップ処理した後、制御回路2は、削除指示された報知用情報を地図情報記憶部4から削除する(ステップT10)。
【0047】
すなわち、地図情報記憶部4の記憶可能領域の空き容量が少なくなったときには、削除優先度の高い順に削除指示可能になり、ユーザが不必要と考えた報知用情報の中から選択的に削除できるようになる。これにより、地図情報記憶部4から情報を削除しても、ユーザの選択の範囲内で情報を削除することができ、情報報知態様が変化することを防止でき、地図情報記憶部4の記憶領域を効率よく使用できるようになる。
【0048】
本実施形態によれば、ユーザにより削除指示されると、アクセス回数、走行回数、動作設定、目的地設定状態に応じて設定された削除優先度の高い複数の地図情報のうちの何れかの情報を地図情報記憶部4の記憶可能領域から削除しているので、利用頻度の低い不必要な地図情報を削除することができる。これにより、情報報知態様の変化を生じることがなくなり、地図情報記憶部4の記憶領域を効率よく利用できるようになる。
【0049】
尚、道路(移動体の移動経路)の走行回数(移動回数)、動作設定(各種ガイドの要否設定)状態、および目的地設定状態をも加味して情報の削除優先度を設定する実施形態を示したが、これに限られず、これらの設定条件は必要に応じて設ければ良い。
【0050】
アクセス回数および走行回数を加味して削除優先度を設定すると、走行回数の多い詳細道路情報(東京)が地図情報記憶部4に残留される可能性が高くなる。したがって、アクセス回数のみで設定された削除優先度に比較してより必要な情報のみを地図情報記憶部4に残留させることが可能となる。すなわち、例えばユーザが東京在住であって何れの場所にもドライブしないとき等には、東京近辺以外の他地域の地図情報の削除優先度が高くなり、ユーザが望めば他地域の情報を削除することができる。
【0051】
逆に走行回数を加味することなくアクセス回数のみで削除優先度を設定すると、走行回数の少ない地域に係る詳細道路情報(沖縄)の削除優先度を低く設定することができ、参照回数の多い詳細道路情報(沖縄)をも地図情報記憶部4に残す可能性を高くすることができる。したがって、この場合、例えばユーザが東京在住で沖縄県内をドライブ旅行に出かけることもないが、沖縄県の地図を何度も参照している場合であったときなどには、地図情報が削除される可能性が低くなるため、ユーザが望めば当該地域に係る情報を地図情報記憶部4に残留させることができる。
【0052】
予めユーザにより設定された動作設定状態を加味して削除優先度を設定すると、ユーザが必要と感じている地図情報を地図情報記憶部4に残留させる可能性を高くすることができ、逆にユーザが不必要と感じている情報を優先的に削除できるようになる。
【0053】
車両が現在走行中もしくは走行予定の経路についての地図情報を削除しないようにするため、たとえ削除優先度が高くても車両が現在走行中もしくは走行予定の経路についての地図情報については削除処理を強制的に行わないようにすることができる。
【0054】
また、車両の総走行距離が所定距離以上であったときに地図情報の削除処理を許可した後でない限り削除処理が行われないため、情報を不用意に削除してしまうことを防止することができる。
【0055】
また、ナビゲーション装置1を起動した起動回数が所定回数以上であったときに地図情報の削除処理を許可した後でない限り削除処理が行われないため、情報を不用意に削除してしまうことを防止することができる。
【0056】
外部メモリ9が削除指示された詳細道路情報や案内情報をバックアップして記憶するため、誤って地図情報が削除されてしまったような場合でも削除された地図情報を復帰させることができる。ユーザが詳細道路情報や案内情報、音声情報等を選択して削除できるようになっているため、ユーザが自身で所望の地図情報を削除できるようになる。
【0057】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形もしくは拡張が可能である。
報知用情報は地図情報に限られず音楽情報、各種画像情報等にも適用できる。ステップT2やステップT3の判定処理や、ステップT8およびT9のバックアップ処理は必要に応じて設ければ良い。
【0058】
ナビゲーション装置1に無線通信部を接続し外部に設けられたサーバ(図示せず)と通信可能に構成することで、当該サーバをバックアップ記憶手段(情報バックアップ装置)として機能するように構成しても良い。すなわち、ナビゲーション装置1には必要に応じて、外部と無線通信可能な無線通信部を接続して構成しても良い。
地図情報記憶部4をハードディスクドライブに適用したが、これに限られることなく、情報を削除可能な記憶媒体に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】動作を概略的に示すフローチャート(その1)
【図3】動作を概略的に示すフローチャート(その2)
【図4】削除優先度テーブルの一例を示す図
【符号の説明】
【0060】
図面中、1はナビゲーション装置(移動体用機器、情報削除支援装置)、2は制御回路(削除優先度設定手段、削除抑止指示手段)、4は地図情報記憶部(記憶手段)、6は操作スイッチ群(指示手段)、9は外部メモリ(情報バックアップ装置)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図や道路やその案内や音楽や画像等に係る複数の報知用情報が記憶された記憶手段を搭載した移動体用機器について前記記憶手段の記憶情報を削除支援する情報削除支援装置において、
前記記憶手段に対する前記報知用情報へのアクセス回数に基づいて削除優先度を前記複数の報知用情報毎に設定する削除優先度設定手段と、
この削除優先度設定手段により設定された削除優先度に基づいて前記複数の報知用情報のうち少なくとも何れかの情報を削除するように指示可能に構成された指示手段とを備えたことを特徴とする情報削除支援装置。
【請求項2】
前記削除優先度設定手段は、前記アクセス回数に加え、前記移動体が移動した道路の移動回数をも加味して削除優先度を設定することを特徴とする請求項1記載の情報削除支援装置。
【請求項3】
前記削除優先度設定手段は、前記アクセス回数に加え、予め設定された要否設定をも加味して削除優先度を設定することを特徴とする請求項1または2記載の情報削除支援装置。
【請求項4】
前記移動体が現在移動中もしくは移動予定の経路に係る報知用情報を削除抑止指示する削除抑止指示手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の情報削除支援装置。
【請求項5】
前記移動体の総走行距離が所定距離以上であることを条件として前記報知用情報の削除を許可する削除許可手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の情報削除支援装置。
【請求項6】
前記移動体用機器を起動する起動回数が所定回数以上であることを条件として前記報知用情報の削除を許可する削除許可手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の情報削除支援装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載の情報削除支援装置の指示手段により削除指示された報知用情報を記憶可能なバックアップ記憶手段を備えたことを特徴とする情報バックアップ装置。
【請求項8】
地図や道路やその案内や音楽や画像等に係る複数の報知用情報が記憶された記憶手段であって、前記複数の報知用情報に対するアクセス回数に基づいて設定された削除優先度に応じて前記報知用情報が削除可能に構成された記憶手段を備えたことを特徴とする移動体用機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−163166(P2007−163166A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356422(P2005−356422)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】