説明

感光性レジストパターンの形成方法、及び半導体装置の製造方法

【課題】露光時の剥れが抑制される感光性レジストパターンの形成方法、及びそれを利用した半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸溶液又はアルカリ溶液によりウエットエッチング処理を施す工程と、ウエットエッチング処理が施されたシリコン基板の表面に対して、水酸基で終端させる表面処理を施す工程と、水酸基で終端させる表面処理が施されたシリコン基板の表面に対して、水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理を施す工程と、水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理が施されたシリコン基板の表面に対して、感光性レジストパターンを形成する工程と、を有する感光性レジストパターンの形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性レジストパターンの形成方法、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板上に、感光性レジストパターンを形成する際には、下地(レジストパターンを形成するシリコン基板の表面)を疎水化して密着性を向上させるために、レジスト形成直前に、脱水処理(ベーク処理)や、HMDSを塗布や噴霧したりして表面処理を行っている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−74696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レジスト形成直前に、脱水処理(ベーク処理)や、HMDSを塗布や噴霧したりして表面処理を行っても、感光性レジストパターンを形成する面にドライエッチングが施された場合、感光性レジストパターンとシリコン基板の表面との密着性が不足し、感光性レジストパターン形成時の露光の光エネルギーによって局所的に剥れてしまうという問題がある。これは、特に、感光性レジストパターンを厚膜(例えば10μm以上)に形成する場合に顕著に発生する。
【0005】
そこで、本発明の課題は、露光時の剥れが抑制される感光性レジストパターンの形成方法、及びそれを利用した半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の感光性レジストパターンの形成方法は、
ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸溶液又はアルカリ溶液によりウエットエッチング処理を施す工程と、
前記ウエットエッチング処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、水酸基で終端させる表面処理を施す工程と、
前記水酸基で終端させる表面処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、前記水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理を施す工程と、
前記水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、感光性レジストパターンを形成する工程と、
を有する感光性レジストパターンの形成方法である。
【0007】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、
上記本発明のレジストパターンの形成方法により、シリコン基板の表面に感光性レジストパターンを形成する工程を有する半導体装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法を示すフロー図である。
【0010】
本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法は、まず、例えば、図1に示すように、ドライエッチングが施されたシリコン基板(例えばシリコンウエハ等)を準備する。
ドライエッチングは、例えば、例えばRIE等が挙げられ、半導体素子の作製の際、例えば、シリコン基板表面の薄膜化等、所望の目的で施されたものである。
なお、以下、シリコン基板の表面とは、感光性レジストパターンを形成する感光性レジストパターンの形成対象領域の表面を意味する。
【0011】
次に、ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸素雰囲気でアッシング処理を施す。酸素雰囲気でのアッシング処理は、具体的には、例えば、真空中で高圧高周波を印加して酸素プラズマを発生させる方法により行う。
このアッシング処理により、ドライエッチングによりシリコン基板に付着した有機物を除去される。
【0012】
次に、アッシング処理が施されたシリコン基板の表面に対して、フッ硝酸によりエッチング処理を施す。フッ硝酸によるエッチング処理は、具体的には、フッ硝酸として例えばフッ酸・硝酸の混酸、フッ酸・硝酸・酢酸の混酸等を準備し、これをシリコン基板の表面に接触させることにより行う。
このフッ硝酸によるエッチング処理により、シリコン基板の表面がその表面から数十nm程度の厚みで除去(ライトウエットエッチング)される。
【0013】
ここで、本ウエットエッチング処理は、シリコン基板の表面がその表面から数十nm程度の厚みで除去(ライトウエットエッチング)できれば、フッ硝酸によるウエットエッチング処理に限られず、例えば、その他、酸溶液又はアルカリ溶液(例えば、濃度15〜25%程度の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液や、KOHの水溶液)によりウエットエッチング処理を行ってもよい。
但し、例えば、シリコン基板に保護目的のレジスト膜が形成されている場合、アルカリ溶液によるウエットエッチング処理を行うと、当該レジスト膜を溶かしてしまうことがあることから、酸溶液、特に、フッ硝酸によるウエットエッチング処理が好適である。
【0014】
次に、エッチング処理が施されたシリコン基板の表面に対して、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)により表面処理を施す。TMAHによる表面処理は、具体的には、例えば、TMAHを少なくとも含むアルカリ溶液(例えば、TMAH濃度2.83%)を準備し、これをシリコン基板の表面に液盛りして行う。
TMAHによる表面処理により、シリコン基板の表面が水酸基(−OH基)で終端される。
なお、通常、TMAHはポジレジストの現像液として使用されており、その処理シーケンスは現像処理と同方法でよい。
【0015】
ここで、本TMAHによる表面処理は、シリコン基板の表面が水酸基(−OH基)で終端させる表面処理であれば、特に制限はなく、例えば、その他、アルカリ溶液(例えば低濃度のKOHの水溶液等)による表面処理を行ってもよい。
但し、シリコン基板のエッチング量を抑え、シリコン基板の表面への水酸基(−OH基)終端を効率良く行う観点からは、TMAHによる表面処理がよい。
【0016】
次に、TMAHによる表面処理が施されたシリコン基板の表面に対して、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)により表面処理を施す。HMDSによる表面処理(疎水化処理)は、具体的には、例えば、液状のHMDSをシリコン基板の表面に塗布して加熱する方法、液状のHMDSを不活性ガス(例えば窒素ガス等)によりハブリングによりHMDS蒸気を発生させ、このHMDS蒸気を加熱したシリコン基板の表面に吹き付ける方法等により行う。
HMDSによる表面処理により、シリコン基板の表面に終端させた水酸基(−OH基)の水素原子(H)が取れ、−Si(CHに置換され、アンモニア(NH)が生成する。その結果、シリコン基板の表面に−O−Si(CHが終端される。
【0017】
ここで、本HMDSによる表面処理は、シリコン基板の表面に終端させた水酸基(−OH基)の水素原子(H)を有機珪素化合物基(例えば、−Si(R):Rは炭素数1〜3程度のアルキル基を示す)で置換させる表面処理であれば、特に制限はなく、その他、表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
但し、表面処理剤の入手性等の観点からは、HMDSによる表面処理がよい。
【0018】
次に、HMDSによる表面処理が施されたシリコン基板の表面に対して、感光性レジストパターンを形成する。感光性レジストパターンの形成は、具体的には、例えば、フォトリソグラフィー法に従って、感光性レジストをシリコン基板の表面に塗布して感光性レジスト膜を形成した後、所望のフォトマスクを用い、感光性レジスト膜に対して露光・現像することにより行う。
ここで、用いる感光性レジストとしては、例えば、AZ社のAZ_P4620等が好適に挙げられる。
【0019】
以上説明した本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法では、ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸溶液又はアルカリ溶液によりウエットエッチング処理(本実施形態ではフッ硝酸によるウエットエッチング処理)、シリコン基板の表面を水酸基で終端させる表面処理(本実施形態ではTMAHによる表面処理)、シリコン基板の表面に終端された水酸基を有機珪素化合物基で置換させる表面処理(本実施形態ではHMDSによる表面処理)を順次行った後、これら各処理が施されたシリコン基板の表面に対して、感光性レジストパターンを形成することで、感光性レジストパターンにおける露光時の剥れが抑制される。
また、酸溶液又はアルカリ溶液によりウエットエッチング処理(本実施形態ではフッ硝酸によるウエットエッチング処理)を施す前に、ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸素雰囲気でアッシング処理を施すことで、ドライエッチングによりシリコン基板に付着した有機物が除去されることから、より効果的に、感光性レジストパターンにおける露光時の剥れが抑制される。
【0020】
ここで、以下、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法に従った試験例を示す。
【0021】
−試験例1−
以下の手順で、各処理を行い、感光性レジストパターンを形成した。
そして、感光性レジストパターンを形成する際に、レジスト剥れが生じない最低露光エネルギーについて調べた。具体的には、感光性レジスト膜の塗布形成後、露光する際、露光エネルギーを300mJ/cm〜800mJ/cmの範囲で順次上昇させ、感光性レジストの剥れが生じた露光エネルギーを剥れが生じない最低露光エネルギーとし、これを調べた。結果を表1に示す。
【0022】
1)シリコンウエハの準備する。
2)ドライエッチング(条件;Power:1800W.Bias:50W、Pressure:4Pa、SF:500sccm、C:200sccm、O:100sccm、ただしガスはSF(8sec)→C(2sec)→O(1sec)の順番で繰り返し、トータルで7min程度流す。)より、シリコンウエハ表面を厚み5μmでエッチング処理する。
3)シリコンウエハ表面に対して、酸素雰囲気下でアッシング処理(条件;Power:800W、O:100sccm)する。
4)フッ硝酸(フッ酸:硝酸:酢酸=1:130:5(質量比))により、シリコンウエハ表面を厚み数十nmでライトウエットエッチング処理する。
5)シリコンウエハ表面に対して、液状のTMAHを液盛して、TMAHによる表面処理(条件:室温で(液盛後1min放置→スピン回転)を3回繰返す)を行う。
6)シリコンウエハ表面に対して、液状のHMDSを塗布して、HMDSによる表面処理(条件:室温で2秒程度塗布してスピン回転)を行う。
7)シリコンウエハ表面に対して、ポジ型の感光性レジスト(AZ_P4620、粘度:400cp)を塗布して、厚み10μmの感光性レジスト膜を形成する。
8)感光性レジスト膜に対して、露光する(300mJ/cm〜800mJ/cm)。
9)現像液(TMAH:2.38%)を用いて、露光後の感光性レジスト膜を現像し、感光性レジストパターンを形成する。
【0023】
−比較例2〜4−
表1に従って、アッシング処理、フッ硝酸によるエッチング処理、TMAHによる表面処理について、未処理(表1中、有無で標記)とする以外は、試験例1と同様にして、感光性レジストパターンを形成し、レジスト剥れが生じない最低露光エネルギーについて調べた。表1に結果示す。
【0024】
【表1】

【0025】
上記結果から、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法に従った試験例1では、比較例に比べ、レジスト剥れが生じない最低露光エネルギーが大きいことがわかる。
なお、アッシング処理を施さない以外は試験例1と同様にして感光性レジストパターンを形成したところ、比較例に比べ、レジスト剥れが生じない最低露光エネルギーが大きくなる結果が得られた。
【0026】
以上により、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法では、感光性レジストパターンにおける露光時の剥れが抑制されることがわかる。
【0027】
一方、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法を利用した本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法により、シリコン基板の表面に感光性レジストパターンを形成する工程を有するものである。
感光性レジストパターンは、例えば、半導体装置の保護膜、エッチング処理の際のマスク等に利用されることから、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、感光性レジストパターンを形成する工程は、例えば、半導体装置の保護膜を形成する工程、エッチング処理の際のマスクを形成する工程等として有する。
【0028】
なお、本実施形態に係る感光性レジストパターンの形成方法及びそれを利用した半導体装置の製造方法は、限定的に解釈されるものではなく、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸溶液又はアルカリ溶液によりウエットエッチング処理を施す工程と、
前記ウエットエッチング処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、水酸基で終端させる表面処理を施す工程と、
前記水酸基で終端させる表面処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、前記水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理を施す工程と、
前記水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理が施された前記シリコン基板の表面に対して、感光性レジストパターンを形成する工程と、
を有する感光性レジストパターンの形成方法。
【請求項2】
前記ウエットエッチング処理を施す工程が、フッ硝酸によりウエットエッチング処理を施す工程である請求項1に記載の感光性レジストパターンの形成方法。
【請求項3】
前記水酸基で終端させる表面処理を施す工程が、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)により表面処理を施す工程である請求項1又は2に記載の感光性レジストパターンの形成方法。
【請求項4】
前記水酸基の水素原子を有機珪素化合物基で置換させる表面処理を施す工程が、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)により表面処理を施す工程である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性レジストパターンの形成方法。
【請求項5】
前記ウエットエッチング処理を施す前に、前記ドライエッチングが施されたシリコン基板の表面に対して、酸素雰囲気でアッシング処理を施す工程をさらに有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性レジストパターンの形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法により、シリコン基板の表面に感光性レジストパターンを形成する工程を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−59924(P2012−59924A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201831(P2010−201831)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】