説明

感光性樹脂組成物、その用途及びその使用方法

【課題】本発明はフォトリソグラフィ工程における現像とその後の乾燥時に、塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等がない硬化膜を与える感光性樹脂組成物を目的としている。
【解決手段】1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)または1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)、及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造部分を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)または1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)、及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物に関する。該感光性樹脂組成物は、特に成形用材料、皮膜形成用材料等に好適に用いられる。あるいは電気絶縁を目的とした材料に好適に用いられる。そして、具体的にはプリント(配線回路)基板製造の際のソルダーレジスト、層間絶縁材料、アルカリ現像可能なその他レジスト材料、接着剤、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
プリント基板は、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざし、高精度化、高密度化が求められており、それに伴い回路を被覆する皮膜形成用材料、所謂、ソルダーレジストへの要求も益々高くなっている。例えば、はんだ等を使用する基板製造時や作動時の素子の発熱に耐え得る耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持による信頼性、メッキ等の化学的処理に耐え得る性能等について従来の要求よりも高い性能が要求され、より強靭な硬化物性能を有する皮膜形成用材料が求められている。
【0003】
一方、近年、フレキシブル基板といった柔軟なプリント配線基板の使途も拡大している。フレキシブル基板の場合は、回路の保護は、所謂、カバーレイフイルムをラミネートして用いるのが一般的である。しかし、製造の手間がかかる等の生産性に課題を残している。
【0004】
これに対し、塗工、光パターニング、現像可能なソルダーレジスト型の皮膜形成用材料をラミネートに使用する試みが行われているが、その皮膜は剛直であり、現在までに曲げに追従できる材料であると同時にその他の必要とされる諸特性を満たす材料は見出されていない。
【0005】
非特許文献1には、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸及び光酸発生剤について記載されている。これらの化合物は一般的に溶剤への溶解性が低く、N−メチルピロリドン等の極性溶剤の使用が必要であり、そうすると、これらの高沸点の溶剤系を用いたワニスを基板に塗工し乾燥させる工程において、その揮発性の悪さが問題となり、乾燥塗膜中に溶剤が多量に残留してしまう。これらの極性溶剤は一般的に水溶性であるため、次工程の現像工程で残留溶剤が流出し、パターニング不良を起こすだけではなく、現像時に残る塗膜が水を吸収してしまい、その乾燥時に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等を起こしやすい。
【0006】
特許文献1には、ポリイミドと光酸発生剤、更に不飽和二重結合を有する反応性希釈剤からなる組成物が開示されている。しかし、ここで用いられている反応性希釈剤はドライフイルムとしての可塑性を向上させることを目的としており、脂肪族系の二官能アクリレートである。通常、二官能アクリレートはアミド酸との相溶性に問題があり、樹脂組成物中の配合量を多くすることができない。比較的良好な相溶性を有するポリアルキレングリコール系ジアクリレート等の比較的極性の高い希釈剤では、現像時に塗膜が膨潤してしまいやすく良好な現像特性を維持することが難しく、更に、現像時に残る塗膜が水を吸収してしまい、その乾燥時に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等の塗膜欠陥を起こすことがあり、この結果、絶縁を長期にわたって維持するという絶縁信頼性を保つことが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−107419号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】最新感光性ポリイミド(2002年1月28日発行、日本ポリイミド研究会編集、(株)エヌ・ティー・エス発行)第6章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、活性エネルギー線で硬化し、次いで現像することでパターンを形成する工程であるフォトリソグラフィ工程の現像とその後の乾燥時に、塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等がない硬化膜を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題に鑑み、アミド酸、ある特定構造を有する反応性希釈剤及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物が優れた性能を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造部分を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物に関する。
【0011】
更に、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造部分を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物に関する。
【0012】
更に、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)が2個の芳香族アミノ基を有する化合物である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0013】
更に、成形用材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0014】
更に、皮膜形成用材料である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0015】
更に、電気絶縁材料組成物である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
更に、感光性ソルダーレジスト組成物である前記の感光性樹脂組成物に関する。
【0017】
更に、前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物に関する。
【0018】
更に、前記の感光性樹脂組成物の硬化物の層を有する多層材料に関する。
【0019】
更に、前記の感光性樹脂組成物を基板に塗工後、必要により溶剤を乾燥させ、次いで光パターニングを行い、アルカリ水溶液により現像処理をした後、光または熱で不飽和二重結合を重合反応させて硬化膜を得ることを特徴とする感光性樹脂組成物の使用方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、光パターニングが可能でありながら強靭な硬化物性能を有し、更にはフレキシブル基板に求められる柔軟性も併せ持つ硬化物を与えることができる。従って、皮膜形成用材料、アルカリ現像可能なレジスト材料、例えば、プリント(配線回路)基板製造の際のソルダーレジスト、層間絶縁材料、接着剤、成型材料として、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等用の成分として適している。更に、この組成物は、優れた絶縁信頼性を兼ね備えていることから電気的な絶縁を目的とする材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)または1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)、及び光酸発生剤(C)を含む。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物に含有されるアミド酸(A)の製造に使用される1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)とは、本発明の樹脂組成物の目的に応じて適宜選択されるものであり、単独若しくは2種類以上を同時に使用することができる。
【0023】
該化合物(a)としては、1分子中に2個の芳香族アミノ基を有する化合物が好ましく、例えば、フェニレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン等単環型芳香族ジアミン類、ナフタレンジアミン、ビフェニレンジアミン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジアミン、ジアニシジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(メチルアミノフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシアミノフェニル)エーテル、ビス(カルボキシアミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(アミノフェニル)メタン、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)スルフィド、ビス(アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン等の二環型芳香族ジアミン類、ビス(ヒドロキシアミノフェニル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシアミノフェノキシ)ベンゼン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビス[[アミノフェノキシ]フェニル]プロパン、ビス[[アミノフェノキシ]フェニル]スルホン等の多環型芳香族ジアミン類、及び、それらの誘導体が挙げられる。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物に含有されるアミド酸(A)の製造に使用される1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とは、本発明の樹脂組成物の目的に応じて適宜選択されるものであり、単独若しくは2種類以上を同時に使用することができる。
【0025】
該化合物(b)としては、例えば、ピロメリット酸無水物等の単環型芳香族四塩基酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ナフチルテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、ジオールビストリメリット酸無水物類(例えば、ヘキサンジオールビストリメリット酸無水物等)等の二環型芳香族四塩基酸二無水物類、ビスフタル酸フルオレン無水物、ビフェノールビストリメリット酸無水物等の多環型芳香族四塩基酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。更に、これらの内の芳香族四塩基酸二無水物の芳香核水添反応による脂環式四塩基酸二無水物類も好適に使用できる。
【0026】
該化合物(a)と該化合物(b)とを反応させアミド酸(A)を得ることができる。この反応は公知一般の方法及び反応条件が使用できる。この反応に際し、適宜溶剤を使用することができる。該溶剤としては反応に影響を与えず、原料及び得られるアミド酸(A)が溶解するものであれば特に限定されない。
【0027】
一般にアミド酸(A)は低極性溶剤への溶解性が乏しいため、該溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ブチレングリコール等のグリコール系溶剤等の所謂、高極性溶剤が好ましい。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)または1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)は、フォトリソグラフィ工程の現像及びその後の乾燥時に塗膜の発泡、膨れ、剥がれ等を防ぐために使用する。
【0029】
該反応性希釈剤(B)としては、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
該反応性希釈剤(B’)における脂肪族複素環としてはN、O、S等のヘテロ原子を1個以上含む3〜10員環の基が挙げられ、該反応性希釈剤(B’)としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光酸発生剤(C)とは、例えば、活性エネルギー線の照射により酸性基を発生し、樹脂の特性変化をもたらすことを目的として加えられるものである。例えば、本発明の樹脂組成物の活性エネルギー線照射部と非照射部について、溶剤やアルカリ水溶液への溶解性を変化させ、パターニングをすることが可能となる。
【0032】
即ち、光の照射に伴い酸性基を発生させる化合物を用いることで、照射部のアルカリ水溶液等の現像液への溶解性を向上させて照射部を溶解させ、一方、非照射部は現像液への溶解性が乏しいままとすることで、所謂、ポジ型の感光特性を付与することができる。
【0033】
該光酸発生剤(C)としては、例えば、光により転移反応を起こしカルボキシ基を発生するキノンジアジド系化合物が挙げられる。これらは、フェノール性水酸基を複数有するポリヒドロキシ化合物とナフトキノンジアジドスルホン酸塩化物等からエステル化反応により得られ、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン若しくは2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの6−ジアゾ−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホン酸エステル等を挙げることができる。市販の化合物としては、例えば、東洋合成工業製のPC−5、NT−200、4NT−300やダイトーケミックス製のDTEP−300、DTEP−350、PA−6等が挙げられる。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物は、活性エネルギー線によって容易にポジ型またはネガ型の特性変化を生じる。ここで活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮して、これらの内、紫外線、レーザー光線、可視光線または電子線が好ましい。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物が使用される成形用材料とは、未硬化の該組成物を型にいれ若しくは型を押し付けて物体を成形したのち、活性エネルギー線によりポジ型またはネガ型の反応を起こさせ成形させるもの、若しくは未硬化の組成物にレーザー光線等の焦点光等を照射し、ネガ型の特性変化を起こさせ成形させるものを指す。
【0036】
平面状に成形したシート;素子を保護するための封止材;未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂、ナノインプリント材料;更には、難燃性と高い信頼性を求められ且つハロゲン化合物が忌避される電気絶縁を目的とした封止材料等が挙げられる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物が使用される皮膜形成用材料とは、基板表面を被覆することを目的として利用されるものである。例えば、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料;ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料;ラミネート用や光ディスク用等の各種接着剤及び粘着剤等の接着材料;ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等が挙げられる。更には、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基板に塗工しフイルム化した後、本来目的とする基板に貼合し皮膜を形成させる、所謂、ドライフイルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物はポジ型での使用が好ましい。
本発明には前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物もふくまれ、また、該硬化物の層を有する多層材料も含まれる。
【0039】
一般的に絶縁材料組成物は、基板上に該組成物の皮膜層を形成させ、電子回路やその部品等において対象とする2箇所の間で電気抵抗が大きく、電圧を掛けても電流が流れない状態にする活性エネルギー硬化型樹脂組成物を指す。本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線板のオーバーコート材や多層基板の層間絶縁膜、半導体工業における固体素子への絶縁膜やパッシベーション膜の成型材料及び半導体集積回路や多層プリント配線板等の層間絶縁材料、基板保護のために用いられるソルダーレジスト等に用いられる。特に高い難燃性が求められるフレキシブル基板には特に好適である。即ち、高い難燃性を付与できるだけでなく、長期にわたる絶縁の安定性を発揮することができるためである。
【0040】
一般に、基板上に絶縁の必要な部分と導通が必要な部分とがあり、これらをそれぞれ必要に応じてパターニングしなければならない場合、印刷法によりパターンを成形することもできるが、精細なパターニングが困難であり高密度の基板作成には向かない。その際には、本発明の感光性樹脂組成物を絶縁材料として使用して基板上に皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画することで精細なパターニングを可能とすることができる。特に難燃性と高い信頼性を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途等のパターニングが必要な絶縁材料としての使用が好ましい。
【0041】
このほかにも本発明の感光性樹脂組成物は、同様に高い難燃性を求められる光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基板等にも利用することが可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%を示す。25℃の粘度測定はE型粘度計を使用した。
【0043】
合成例1:アミド酸(A−1)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた300ml反応器にて、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)として4,4’−オキシジアニリン18.00g(90.00mmol)をN−メチルピロリドン87.8g中、80℃で1時間攪拌し溶解させた。その後、1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)としてピロメリット酸無水物19.63g(90.00mmol)を仕込み、更に、80℃にて5時間反応してアミド酸(A−1)を得た。このアミド酸化合物(A−1)の粘度(25℃)は63Pa・sであった。
【0044】
合成例2:アミド酸(A−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた300ml反応器にて、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン12.00g(41.05mmol)をN−メチルピロリドン56.18g中、80℃で1時間攪拌し溶解させた。その後、1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物12.08g(41.05mmol)を仕込み、更に、80℃にて5時間反応してアミド酸(A−2)を得た。このアミド酸化合物(A−2)の粘度(25℃)は30Pa・sであった。
【0045】
合成例3:アミド酸(A−3)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた300ml反応器にて、1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)として4,4’−ビス(アミノフェニル)メタン20.00g(100.9mmol)をN−メチルピロリドン93.31g中、80℃で1時間攪拌し溶解させた。その後、1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)としてブタンテトラカルボン酸無水物19.99g(100.9mmol)を仕込み、更に、80℃にて5時間反応してアミド酸(A−3)を得た。このアミド酸化合物(A−3)の粘度(25℃)は0.8Pa・sであった。
【0046】
実施例1〜3、比較例1〜3
合成例1〜3で得られたアミド酸とその他成分を、下記表1の組成で混合して樹脂組成物を得た。
[表1]

DTEP−350 :ダイトーケミックス製 ジアゾナフトキノン系感光剤
PA−6 :ダイトーケミックス製 ジアゾナフトキノン系感光剤
RM−1001 :日本化薬製 アクリロイルモルフォリン
R−128H :日本化薬製 フェニルグリシジルエーテルアクリレート
ライトエステルTHF:共栄社化学製 テトラヒドロフルフリルメタクリレート
【0047】
ポジ型ソルダーレジスト用組成物の評価
実施例1及び比較例1として示した各組成物を、スクリーン印刷法により25ミクロンの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて紫外線を照射した。次に、現像液として1%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(温度:30℃)を用いて180秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。水洗後、200℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い、硬化物を得た。得られた塗膜を目視で確認し、その結果を表2に示した。
【0048】
実施例2及び比較例2として示した各組成物を、スクリーン印刷法により25ミクロンの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて紫外線を照射した。次に、現像液として、1%水酸化ナトリウム水溶液(温度:30℃)を用いて180秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。水洗後、200℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い、硬化物を得た。得られた塗膜を目視で確認し、その結果を表2に示した。
【0049】
実施例3及び比較例3として示した各組成物を、スクリーン印刷法により25ミクロンの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、紫外線を照射した。次に、現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液(温度:30℃)を用いて240秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。水洗後、200℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い、硬化物を得た。得られた塗膜を目視で確認し、その結果を表2に示した。
【0050】
[表2]

○ ‥塗膜に異常は見られない
泡 ‥塗膜に発泡が見られる
ひび‥塗膜にひびが見られる
【0051】
上記の結果から明らかなように、特定の反応性希釈剤を感光性樹脂組成物に含有させることで良好な硬化塗膜を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の使用によりソルダーレジストとしての基本的特性である硬化膜の平滑性が劇的に改善し、本発明の感光性樹脂組成物はソルダーレジストとしての使用にも適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の芳香族炭化水素環を有する反応性希釈剤(B)及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)と1分子中に2個の酸無水物構造を有する化合物(b)とを反応させて得られるアミド酸(A)、1分子中に1個の不飽和二重結合と1〜4個の脂肪族複素環を有する反応性希釈剤(B’)及び光酸発生剤(C)を含む感光性樹脂組成物。
【請求項3】
1分子中に2個のアミノ基を有する化合物(a)が2個の芳香族アミノ基を有する化合物である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
成形用材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
皮膜形成用材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
電気絶縁材料組成物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
感光性ソルダーレジスト組成物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項9】
請求項8記載の感光性樹脂組成物の硬化物の層を有する多層材料。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板に塗工後、必要により溶剤を乾燥させ、次いで光パターニングを行い、更にアルカリ水溶液により現像処理をした後、光または熱で不飽和二重結合を重合反応させて硬化膜を得ることを特徴とする感光性樹脂組成物の使用方法。

【公開番号】特開2011−253044(P2011−253044A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126748(P2010−126748)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】