説明

感光性樹脂組成物およびそれを用いた感光性材料

【課題】高解像性の感光性材料の感度を上げること。
【解決手段】下記化合物(1)式で表される化合物を含有する感光性樹脂組成物。
また、この感光性樹脂組成物を用いることにより高感度な感光性材料を提供できる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリント配線板等の製造に用いられる高感度な感光性材料およびそれに用いられる感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エッチングやメッキ等のプリント配線板の製造工程においては、ドライフィルム・レジストなどの感光性材料が広く用いられている。プリント配線板の高密度化に伴って、感光性材料には高解像性が求められている。高解像性の感光性材料に用いられる感光性組成物としては、下記に化合物(2)として示す光開始剤化合物2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾ−ル二量体(以下B−CIMと略する)
【0003】
【化2】

を用いた感光性組成物が報告されており(米国特許第3,479,185号)、この系統の化合物であるヘキサアリルビスイミダゾ−ル(以下HABIと略する)は、ドライフィルム・レジスト用の開始剤として一般的に使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし近年においては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1(BDMB)のような高感度なαアミノケトン系列の光開始剤化合物が普及しつつある。この系統の化合物に比較すると、HABI系統の光開始剤化合物は感度が低い。
【0005】
またB−CIMは溶剤に対する溶解性が低く、数十分間撹拌して完全に溶解して用いる必要があり、作業性が悪かった。
【0006】
本発明は、解像度性に優れたHABI系列の化合物で、従来のB−CIMより顕著に感度の高い化合物を提供することと、併せて溶剤溶解性の良好な化合物を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは高感度な開始剤を求めてHABI系列に属する化合物を多数合成し、溶剤溶解性の優れた化合物を選択し、感光性樹脂組成物および感光性材料を作製して相対感度を比較する探索実験をおこなった結果、下記化合物(1)として示す
【0008】
【化3】

【0009】
化合物が類似構造の化合物に比べて顕著に高い溶剤溶解性と感度とを併せ持つことを見出して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、(A)カルボキシル基を有するバインダ−ポリマ−と、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、さらに(C)光開始剤として上記化合物(1)式で示した光開始剤化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物であり、またこれらの感光性樹脂組成物を用いたことを特徴とする感光性材料である。
【0011】
本発明の光開始剤化合物は、従来のB−CIMよりははるかに優れた感度を示す。
【0012】
本発明における(A)カルボキシル基を有するポリマ−としては、例えばメタクリル酸とスチレン、アルキル又は置換アルキルのアクリレ−ト、メタクリレ−ト等の共重合物が挙げられる。共重合物の平均分子量は10,000〜100,000が好ましい。
【0013】
本発明における(B)重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物としては、ビニルモノマ−が挙げられる。1官能ビニルモノマ−としてモノアクリレ−トやモノメタクリレ−ト、2官能ビニルモノマ−としてジアクリレ−トやジメタクリレ−ト、多官能ビニルモノマ−としてα、β-不飽和カルボン酸を多価アルコ−ルやグリシジル基含有化合物と反応して得られる化合物が挙げられる。
【0014】
本発明における(A)成分の配合量は重量部で、(B)成分の0.6〜4倍とすることが好ましい。
【0015】
本発明における(C)光開始剤化合物の配合量は重量部で、(A)成分と(B)成分の総重量の0.005〜0.15倍とすることが好ましい。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物には、添加剤としてN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンや、N−フェニルグリシンのようなN−アリ−ル−α−アミノ酸を用いても良く、さらに、熱重合阻止剤や密着性付与剤、発色剤を必要に応じて添加しても良い。
【0017】
本発明の感光性材料は、本発明の感光性樹脂組成物の溶液を基板となる金属の表面上に液体レジストとして塗布、乾燥して感光層とすることにより作成される。この感光性材料上にリソグラフィー技術によってデバイスパターンを描き、エッチング、メッキ等の加工によってプリント配線板を製造することができる。さらに公知の方法によってポリエチレンテフタレ−トなどの重合性フィルム上に塗布、乾燥してドライフィルムを作製し、基板となる金属の表面上にラミネ−トすることによって感光層とし、感光性材料とすることもできる。
【0018】
塗布しやすい溶液を作成するために感光性樹脂組成物は、アセトン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン、トルエン、メタノ−ル、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テル、ジメチルホルムアミドなどの溶剤、またはこれらの混合溶剤で希釈する事ができる。塗布は、ロ−ルコ−タ−、エアナイフコ−タ−、バ−コ−タ−、スピンコ−タ−などでおこなうことができる。乾燥は60〜130℃で行うことができる。乾燥後の感光層の厚さは5〜100μmであることが好ましい。
【0019】
感光層の露光には高圧水銀灯などの光源から発生する光が用いられる。感光層の現像には炭酸ナトリウム等のアルカリ性水溶液などが用いられる。エッチング、メッキは公知の方法でおこなわれる。感光層の剥離には強アルカリ性水溶液などが用いられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明について、実施例により具体的に説明する。
【0021】
【実施例】
(実施例1)
【0022】
本発明の光開始剤化合物、2−(2−トリフルオロメチルフェニル)−4,5−ビス(4−メソキシフェニル)イミダゾ−ル二量体は特公平5−60570明細書記載の方法にて合成し、融点194〜198度の黄褐色の粉末として得られた。アセトニトリル中での紫外吸収スペクトルを図1に示す。
【0023】
紫外吸収スペクトルの最大吸収波長は234nmであった。この化合物は紫外線の照射により、淡緑色のラジカル発色を示した。
【0024】
メタクリル酸とメタクリル酸エチル、スチレンを共重合させて、分子量60,000のカルボキシル基を有する共重合物を作成した。この共重合物100gを(A)成分とし、これに、(B)成分と溶剤を表1に示したように配合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0025】
【表1】

【0026】
暗所にて上記の溶液に本発明の光開始剤化合物6.4gと、アセトン25gを添加した。添加した化合物は容易に溶解した。
【0027】
(比較例1)
実施例1の光開始剤化合物の代わりに、化学構造が類似した光開始剤化合物 2−(2、3−ジクロロフェニル)−4,5−ビス(4−メソキシフェニル)イミダゾ−ル二量体6.4gとアセトン25gを添加して、添加した化合物を溶解しようと試みたが、2時間撹拌しても、さらにアセトンを50g追加しても一部のみしか溶解できなかった。
【0028】
(実施例2)
実施例1で作成した感光性樹脂組成物の溶液をガラス繊維エポキシ樹脂銅張積層板(住友ベ−クライト製)上にバ−・コ−タ−で塗工し、100℃のオ−ブンで10分間乾燥させて膜厚20μmの感光層を作成した。この塗工基板をホットプレ−トで加温し、25μmのPETフィルム(東レ製)を真空で吸引密着させて、レジスト膜を模した感光性材料を作製した。
【0029】
この感光性材料の上にネガとしてスト−ファ−21段ステップタブレット(電子写真学会製)を載せ、その上に2.3mmの石英ガラス板(誠工特殊ガラス製)を置いて真空で引いてネガと感光性材料を密着させた。高圧水銀灯ランプを有する並行露光機(ウシオ電気製)で600mj/cm2露光した。
次に、20℃の室内で1%炭酸ナトリウム水溶液に90秒浸漬して振とうすることにより、未露光部分を容易に溶解除去することができた。塗工基板上に形成された光硬化膜の厚さを接触式膜厚計(東京精密製)で測定した。参考としてB−CIMの場合も同様に感光性樹脂組成物を調整し、同様の方法で塗工基板上に光硬化膜を形成させ測定した。ステップタブレットの各段の膜厚を測定して、最大膜厚の50%以上を残したステップタブレット段のもっとも高い段数を感度の指標として表2に示した。
【0030】
【表2】

【0031】
表2の段数の差違によって、本発明の感光性材料が高感度であることが実証された。
【0032】
【発明の効果】
本発明の感光性樹脂組成物は容易に調整でき、高感度である。
本発明の感光性材料によって、プリント配線板等に、良好なレジスト・パタ−ンを作成できる。
【0033】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1で作成した化合物を測定した紫外吸収スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を有するポリマ−、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、さらに(C)光開始剤化合物として下記化合物(1)として示す
【化1】

2−(2−トリフルオロメチルフェニル)−4,5−ビス(4−メソキシフェニル)イミダゾ−ル二量体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物
【請求項2】
請求項1記載の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布・乾燥してなる感光性材料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−171015(P2006−171015A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−166045(P2000−166045)
【出願日】平成12年6月2日(2000.6.2)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】