説明

感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板

【課題】従来の感光性樹脂組成物では困難であった、柔軟性や屈曲性を損なうことなく、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性、を併せ持つ感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)成分は、可溶性ポリイミドであり、前記(B)成分は、キノンジアジド化合物であり、前記(C)成分にイソシアヌル酸環を有する特定の化合物を用いることにより、柔軟性や屈曲性を損なうことなく、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性、を併せ持つ感光性樹脂組成物を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板のカバーレイに好適な感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伸長著しいフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと省略する)においては、柔軟性、屈曲性に優れる素材が基材、カバーレイとして求められている。FPCのカバーレイには、微細加工に優れる感光性を持つことが望まれている。しかし感光性を付与すると、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性などの特徴が損なわれる。
【0003】
反り低減の為、シロキサン骨格を導入したポリイミドを用い、可塑性及び感光性を付与するため反応性希釈剤である(メタ)アクリレートなどのモノマーを併用したネガ型の感光性カバーレイが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、シロキサン骨格を導入すると、ポリイミド樹脂は難燃性を低下させる恐れがある。また(メタ)アクリレートなどのモノマーの使用も難燃性の低下が懸念され、さらには該モノマーが重合、架橋する事で柔軟性、屈曲性を損なう可能性がある。
【特許文献1】特開2003−140339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、従来の感光性樹脂組成物では困難であった、柔軟性や屈曲性を損なうことなく、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性を併せ持つ感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)成分が可溶性ポリイミドであり、前記(B)成分がキノンジアジド化合物であり、前記(C)成分が式(1)に示すイソシアヌル酸環を有する化合物であることを特徴とする。
【化1】

(式中Rはエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む有機基である。複数のRはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
【0006】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(A)成分がシロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドであることが好ましい。
【0007】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(A)成分がカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることが好ましい。
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(B)成分がナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(C)成分のRが式(2)に示す有機基であることが好ましい。
【化2】

(式中Rは下記式(3)又は式(4)であり、RはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基から選ばれる有機基である。nは1〜10であり、mは1又は2であり、Lは1〜10である。)
【化3】

【化4】

【0010】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(D)成分として、リン系の難燃剤を含有することが好ましく、(D)成分が環状ホスファゼン化合物を含有することがより好ましい。
【0011】
本発明のフィルムは、上記感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の積層フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた上記フィルムと、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の積層フィルムにおいては、前記フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0014】
本発明の感光性インクは、上記感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、上記感光性樹脂組成物を用い構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明のフレキシブルプリント配線板においては、前記カバーレイが上記フィルム又は積層フィルムを用いて積層されたカバーレイであることが好ましい。
【0017】
本発明のフレキシブルプリント配線板においては、前記カバーレイが上記感光性インクを用いて形成されたカバーレイであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)成分が可溶性ポリイミドであり、前記(B)成分がキノンジアジド化合物であり、前記(C)成分が上記式(1)に示すイソシアヌル酸環を有する化合物であるので、柔軟性や屈曲性を損なうことなく、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性、を併せ持つ感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは、イソシアヌル酸骨格を有する特定の化合物が柔軟性や屈曲性を損なうことなく難燃性と低反り性とを併せ持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
具体的に説明すると、本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分は、その構造中にドライフィルムの反り改善効果を発現し得る有機基と、難燃性を発現し得る窒素含有の環構造とを含む。このため、(A)成分の可溶性ポリイミドと組み合わせた際にポリイミドのもつ柔軟性や屈曲性を損なうことない。よって(B)成分のキノンジアジド化合物のごとき感光剤と組み合わせると難燃性と低反り性を併せ持つ感光性樹脂組成物を発現することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の骨子は、(A)成分:可溶性ポリイミドと、(B)成分:キノンジアジド化合物と、(C)成分:イソシアヌル酸環を有する特定の化合物と、を組み合わせて配合してなる感光性樹脂組成物により、ポジ型の感光性ドライフィルム又は感光性インク、及び、該組成物を用いたカバーレイを具備した、反りが少なく難燃性を有するフレキシブルプリント配線板を提供することである。
【0022】
まず、(A)成分について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる(A)成分は、有機溶剤に可溶である樹脂を用いる。このような樹脂として、屈曲性に優れるポリイミドが好ましい。
【0023】
ポリイミドとしては(B)成分及び(C)成分及び/又はその他の添加剤と溶液中で調合可能である溶媒に可溶な、可溶性ポリイミドが好ましい。
【0024】
可溶性ポリイミドとは、有機溶剤に可溶なポリイミドを意味する。有機溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチスルホキシド、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はこれらの有機溶剤とトルエンの混合溶媒などが挙げられる。本発明において可溶性とは、具体的にはN−メチル−2−ピロリドン若しくはγ−ブチロラクトンに少なくとも5質量%以上、好ましくは10質量%以上溶解することを意味する。
【0025】
可溶性ポリイミドの構造に特に制限はないが、フィルムにした際の伸度、柔軟性、屈曲性などの機械物性、反り改善効果を考慮すると、シロキサン骨格を有することが好ましい。反り改善効果は、(C)成分の配合により達成されるが、シロキサン骨格を有することによる低弾性率化と低Tg化とによりさらに向上するものと考えられる。
【0026】
また、感光性樹脂組成物にした際の現像性の観点から、アルカリ可溶な樹脂を用いることが好ましい。可溶性ポリイミドにアルカリ可溶性を付与する目的で、可溶性ポリイミドにエステル基又はカルボキシル基及び/又は水酸基を導入することが好ましい。中でもカルボキシル基及び/又は水酸基を導入することが好ましい。
【0027】
本発明の可溶性ポリイミドは、例えば、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を原料にして得ることができる。
【0028】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、を用いることができる。また、カルボキシル基及び/又は水酸基を導入する目的で、カルボキシル基を有するジアミンや水酸基を有するジアミンを用いることができる。また、シロキサン骨格を導入する目的で、ジアミノシロキサンを用いることができる。
【0029】
芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタンが挙げられる。
【0030】
脂肪族ジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカンが挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有するジアミンとしては、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸が挙げられる。
【0032】
水酸基を有するジアミンとしては、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタンが挙げられる。
【0033】
ジアミノシロキサンとしては、式(5)で示される化合物が挙げられる。
【化5】

(式(5)において、Rは2価の有機基であり、kは1〜30の整数である。Rで示される2価の有機基としては、炭化水素基、芳香族基が挙げられる。炭化水素基は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などである。芳香族基は、フェニレン基などである。)
【0034】
(A)成分の可溶性ポリイミドにおいて、ジアミノシロキサンに由来する部位の含有量は、すべてのジアミンに由来する部位を100mol%とした時、難燃性の観点から60mol%以下であることが好ましい。
【0035】
なお、これらのジアミン成分は、単独又は組み合わせて用いることができる。
【0036】
好ましいジアミン成分としては、溶媒可溶性の観点より、芳香族ジアミンのなかでもエーテル基又はスルホン基をもつジアミン成分が好ましい。このようなジアミンとは、例えば、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンである。また、アルカリ溶解性の観点よりカルボキシル基をもつジアミンが好ましい。このようなジアミンとは、例えば、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンである。また、低反り性の観点よりジアミノシロキサンが好ましい。このようなジアミノシロキサンとしては、例えば、式(5)中のkが5から25であり、Rがプロピレン基であるものが好ましい。
【0037】
テトラカルボン酸二無水物としては、エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0038】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物が挙げられる。
【0039】
また、エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,2−(フェニレン)ビス(トリメリテート無水物)、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)が挙げられる。エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、可溶性ポリイミド中にエステル基を導入する際に用いることができる。
【0040】
脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホンが挙げられる。
【0041】
これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独又は組み合わせて用いることができる。
【0042】
好ましいテトラカルボン酸二無水物成分としては、溶媒可溶性及び低反り性の観点より、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分のなかでもエーテル基又はエステル基を有するテトラカルボン酸二無水物成分が好ましい。このようなテトラカルボン酸二無水物とは例えば、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,2−(フェニレン)ビス(トリメリテート無水物)である。
【0043】
本発明の可溶性ポリイミドの末端は、性能に影響を与えない構造であれば、特に限定されない。ポリイミドを製造する際に用いる酸二無水物、ジアミンに由来する末端でも良く、その他の酸無水物、アミン化合物などにより末端を封止しても良い。
【0044】
本発明に係るポリイミドの数平均分子量は、難燃性、ポリイミド含有樹脂組成物の粘度、成型性の観点から、1000以上1000000以下であることが好ましい。ここで、数平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。前記分子量は5000以上500000以下がより好ましく、10000以上300000以下がもっとも好ましい。
本発明に係る可溶性ポリイミドの共重合様式は、ブロック構造でもランダム構造でも良い。
【0045】
本発明に係る可溶性ポリイミドは、例えば上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を適当な溶媒中で混合してポリイミド前駆体であるポリアミド酸を合成した後、その反応液を加熱してイミド化することにより得ることができる。カバーレイとした際の低反り性、アルカリ現像性を考慮するとシロキサン骨格、カルボキシル基及び又は水酸基の導入が好ましい。
【0046】
本発明に係る可溶性ポリイミドは、酸二無水物とジアミンを反応させ、ポリアミド酸を合成した後に、加熱(加熱イミド化)することによって得ることができる。また酸二無水物とジアミンを反応させ、ポリアミド酸を合成し、続いて触媒を添加した後にイミド化(化学的イミド化)させることによっても、得ることができる。この中で、化学的イミド化が、より低温でイミド化を完結できる点で好ましい。
【0047】
次に、酸二無水物とジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法について説明し、続いて触媒を添加した後にイミド化させる方法を例にあげて、本発明に係る可溶性ポリイミドの製造条件について説明する。
【0048】
ポリアミド酸を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法により得られる。まずジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0.5〜96時間好ましくは0.5〜30時間攪拌する。この際モノマー濃度は、0.5質量%以上95質量%以下、好ましくは1質量%以上90質量%以下である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、ポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0049】
前記ポリアミド酸の製造の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0050】
ポリアミド酸製造の際の反応温度は、0℃以上250℃以下が好ましい。0℃以上あれば反応が開始され、また250℃以下であれば副反応などの影響が無い。好ましくは15℃以上220℃以下、さらに好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0051】
ポリアミド酸の反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0052】
次に、ポリアミド酸に触媒を添加し(化学的)イミド化し、本発明に係る可溶性ポリイミドを得る方法について説明する。
【0053】
本発明に係る可溶性ポリイミドを製造する際のイミド化触媒は特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンのような三級アミンのなどが挙げられる。また、必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。この中でも特に、反応性の高さの観点からγ−バレロラクトンとピリジンの混合系が特に好ましい。
【0054】
イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸を100質量部とすると、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0055】
反応溶媒としては、ポリアミド酸の製造に使用したものと同じものを用いることができる。その場合、ポリアミド酸溶液をそのまま用いることができる。また、ポリアミド酸の製造に用いたものと異なる溶媒を用いても良い。
【0056】
反応溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。
【0057】
特に好ましい溶媒としては炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0058】
本発明に係る可溶性ポリイミドの製造においては、反応温度は15℃以上250℃以下で実施することが好ましい。15℃以上あれば反応が開始され、また250℃以下であれば触媒の失活が無い。好ましくは20℃以上220℃以下、さらに好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0059】
反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0060】
イミド化反応に伴い生成する水は、水と共沸する溶剤、例えばトルエンやキシレンと共に反応系外に取り除くことができる。
【0061】
得られた反応液はそのままポリイミドワニスとして本発明の感光性樹脂組成物の調合に用いることができる。
【0062】
また製造終了後にポリイミドを回収する場合は、反応溶液中の溶媒を減圧留去することで行うことができる。
【0063】
ポリイミドを精製する場合は、ポリイミドの精製方法として、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンが残る場合、それらを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈精製法を実施することができる。更に特別に高純度なポリイミドが必要な場合は、二酸化炭素超臨界法による抽出法も可能である。回収もしくは精製したポリイミドを用いても、前記可溶性ポリイミドが均一に溶解及び/又は分散し得る溶媒とを含む樹脂組成物を得ることができる。
【0064】
ポリイミドを含有する樹脂組成物を構成する溶媒は、本発明に係る可溶性ポリイミドを均一に溶解及び/又は分散させ得るものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含塩素化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物などが挙げられる。また、必要に応じて、1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミドの溶解性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0065】
可溶性ポリイミドと溶媒とからなる樹脂組成物における可溶性ポリイミドの濃度は、樹脂成型体が製造される濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚の観点からポリイミドの濃度が1質量%以上、樹脂成型体の膜厚の均一性から可溶性ポリイミドの濃度が90質量%以下であることが好ましい。得られる樹脂成型体の膜厚の観点から、2質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0066】
次に(B)成分について説明する。
本発明で使用される感光剤としては、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化するものなどが挙げられる。このような化合物としては、キノンジアジド構造を含有する化合物などが挙げられる。
【0067】
キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。この中で、溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましい。
【0068】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、スルホン酸基の置換位置が4位の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルと5位の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルがあり、いずれを用いても良いが、低反り性の観点から1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルが好ましい。
【0069】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルは、フェノール性水酸基を有する化合物を原料として用い、スルホン酸でエステル化して得ることができる。例えば、フェノール性水酸基の官能基数1molに対して1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸もしくはその酸塩化物もしくはそのスルホン酸塩、又は5位の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸もしくはその酸塩化物もしくはそのスルホン酸塩を、アセトンなど適当な溶剤中で混合することによって得ることができる。このとき、トリエチルアミンなど塩基性の触媒を用いても良い。スルホン酸によるエステル化率としては、0.60以上0.98以下が溶解抑止能と露光後のアルカリ溶解性の観点から好ましい。
【0070】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、1官能フェノール類、2官能フェノール類、トリヒドロキシベンゾフェノン類、テトラヒドロキシベンゾフェノン類、ペンタヒドロキシベンゾフェノン類、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン類、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が挙げられる。
【0071】
1官能フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、フェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、フェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、o−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、o−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、m−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、m−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、p−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、p−メチルフェニル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、などが挙げられる。
【0072】
2官能フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0073】
トリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0074】
テトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0075】
ペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0076】
ヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0077】
(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類としては、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0078】
(B)成分としては、低そり性、現像性を考慮すると、式(6)で示される化合物が好ましい。
【化6】

(式中Qはそれぞれ独立に水素又は式(7)又は式(8)から選ばれる1価の有機基である。ただし、複数のQのうち少なくとも一つは式(7)又は式(8)から選ばれる有機基である。)
【化7】

【化8】

【0079】
(B)成分は、(A)成分100質量部に対して15質量部以上30質量部以下であることが好ましい。この範囲において、難燃性及び感光性が良好である。
【0080】
次に(C)成分について説明する。
(C)成分は式(1)で示される、エチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む有機基を有しイソシアヌル酸環有する化合物である。このような化合物でも式(2)に示す特定のRを有する化合物が、難燃性と低反り性の観点より好ましい。
【化9】

(式中Rはエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む有機基である。複数のRはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
【化10】

(式中Rは下記式(3)又は式(4)に示される有機基であり、RはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基から選ばれる有機基である。nは1から10であり、mは1又は2であり、Lは1から10である。)
【0081】
nは1から10の数である。分布がある場合はその平均値を表す。nが大きいほど可塑化効果が高く低反りが発現しやすくなる。Lは1から10の数である。分布がある場合はその平均値を表す。Lが大きいほどアルカリ現像液への溶解性が高くなり、Lが小さいほどアルカリ現像液への溶解抑止能が高くなる。mは1から2の数である。分布がある場合はその平均値を表す。mが1に近いほうが低反り効果が高い。
【0082】
は式(3)又は式(4)に示される有機基であり、柔軟性の観点より式(3)が好ましい。RはHである場合アルカリ溶解性高く、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基などアルキル基になるとアルカリ溶解抑止効果が発現する。
【化11】

【化12】

【0083】
これらを考慮するとnは2から8が好ましく、Lは2から8が好ましく、mは1から1.5が好ましく、Rは式(3)が好ましく、Rはメチル基が好ましい。
【0084】
また式(1)に示される化合物中に複数あるRはそれぞれ同じでも異なっていても良い。例えば式(2)中のn、m、L、R、Rがそれぞれ異なるRを同一分子内に有していても良い。また式(1)に示される化合物を複数併用しても良い。
【0085】
好ましい(C)成分としては、例えばRに式(9)に示される構造を持つ化合物が挙げられる。
【化13】

(式中n’は2から8であり、L’は2から8である。)
【0086】
(C)成分は、(A)成分100質量部に対して2質量部以上20質量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは3質量部以上10質量部以下である。この範囲において、難燃性及び低反り性が良好である。
【0087】
次に(D)成分について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は(D)成分の添加によって更に難燃性を高めることができる。(D)成分はリン系の難燃剤が好ましく、なかでもリン酸エステル化合物及び、又はホスファゼン化合物が、該組成物の柔軟性、屈曲性の観点より好ましい。リン酸エステル化合物もしくはホスファゼン化合物の中でも、耐熱安定性の観点より環状ホスファゼン化合物が更に好ましい。
【0088】
リン酸エステル化合物としては芳香族リン酸エステル、アルキルリン酸エステル又はアルコキシリン酸エステルが好ましい。
【0089】
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリイソプロピルフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(以下、「RDP」ともいう。)などが挙げられる。
【0090】
アルキルリン酸エステルとしては、例えば、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート(以下、「TIBP」ともいう。)、などが挙げられる。
【0091】
アルコキシリン酸エステルとしてはトリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(ブトキシブチル)ホスフェート(以下、「TBXP」ともいう。)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0092】
ホスファゼン化合物としては、耐熱安定性の観点より環状化合物が好ましい。例えば式(10)で示される化合物の中から選ばれる化合物が好ましい。
【化14】

(式中、xはそれぞれ3から5の数である。)
これらの(D)成分は単独又は組み合わせて用いることができる。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を逸脱しない量的、質的範囲内で、既に公知である添加剤を必要に応じて添加することができる。具体的に添加剤としては、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
【0094】
密着性向上剤としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、スルフィド化合物が挙げられるが、好ましくは2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールが挙げられる。イミダゾールシランとしては例えば、日鉱金属株式会社製のIM−1000が好ましい。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性フィルム又は感光性インクに好適に用いることができる。感光性フィルム又は感光性インクを製造するという観点からは、感光性樹脂組成物における可溶性ポリイミドの濃度は、1質量%以上90質量%以下が好ましい。可溶性ポリイミドの濃度は、カバーレイとした際のカバーレイ膜厚の観点から1質量%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から90質量%以下が好ましい。得られるカバーレイ膜厚の観点から、2質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性フィルムに好適に用いることができる。
まず、本発明に係る感光性樹脂組成物を基材にコートし感光性ドライフィルムを作成する。前記基材としては、感光性ドライフィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材はキャリアフィルムとして用いられる。キャリアフィルムとしては、耐熱性樹脂、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及び、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0097】
コート方法としては、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてオーブン、ホットプレートなどにより加熱処理を行い、溶剤を乾燥させ、キャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。
【0098】
また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムにおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0099】
次いで、本発明の感光性ドライフィルムを、配線を有する基材に、前記配線を覆うように圧着し、任意の基材上にカバーレイを形成することができる。
【0100】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性インクに好適に用いることができる。感光性インクとして用いる場合は、任意の基材上にスクリーン印刷にて塗布後乾燥して任意の基材上にカバーレイ形成する事ができる。スクリーン印刷法とは公知の印刷法で、パターンを形成したスクリーン上にスキージ等を用いてインクを通過させて印刷する方法である。
【0101】
上記方法によって形成された任意の基材上に形成されたカバーレイは、少なくとも露光、アルカリ現像の工程を経て、焼成などの処理が施される。
【0102】
本発明に係るプリント配線板における配線を有する任意の基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいはポリイミドフィルムなどのフレキシブルな基板などが挙げられる。この中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板が好ましい。
【0103】
カバーレイの形成方法としては、感光性フィルムを用いる場合は、前記配線を有する基材の配線側と本発明の感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネートなどを行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着し得る温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃以上400℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上150℃以下である。
【0104】
なお、感光性インクを用いる場合は前述したスクリーン印刷法が好適に用いられる。
【0105】
本発明に係るカバーレイは、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ポジ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、光照射に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0106】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、光照射部位を溶解し得る溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0107】
本発明に係るカバーレイは、光照射後、アルカリ現像にてポジ型のフォトリソグラフィーを行った後、必要に応じ再度光照射(以下、「後露光」と表記する)を施すことができる。後露光に用いる光源としては、先の光照射と同様のものを用いることができる。本発明に係るカバーレイは、後露光を施すことにより、更に基板の反りやめっき耐性が改善する。
【0108】
次いで、本発明のカバーレイを形成したプリント配線板を必要に応じて焼成することによりカバーレイを具備するプリント配線板を形成する。焼成は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、30℃以上400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃以上300℃以下である。
【0109】
前記焼成における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。前記プリント配線板の製造において、前記焼成に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には1時間から8時間の範囲で実施される。
【0110】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、カバーレイとして反りが充分に抑制され、かつ現像性も良好であり、硬化体とした際に耐薬品性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。
【0111】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
<合成例使用試薬>
合成例において、用いた試薬であるシリコーンジアミン(KF−8010)(信越化学工業社製)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、「MBAA」ともいう。)(和歌山精化社製)、オキシジフタル酸二無水物(以下、「ODPA」ともいう。)(和光純薬工業社製)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、「APB」ともいう。)(三井化学社製)、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、「TMEG」ともいう。)(新日本理化社製)、1、5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(和歌山精化社製)(以下「DA5MG」ともいう。)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ−ブチロラクトン(和光純薬工業社製、特級)、ピリジン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ−バレロラクトン(和光純薬工業社製、一級)、は特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0112】
<配合例使用試薬>
(B)成分として、式(11)にて示される化合物を用いた。これをB−1とする。
【化15】

(式中、Qの約97%が式(8)でありそれ以外が水素である。)
【0113】
(C)成分として、式(12)、式(13)に示される化合物を用いた。それぞれC−1、C−2とする。
【化16】

【化17】

【0114】
(D)成分としてTBXP(大八化学社製)、TIBP(味の素ファインテクノ社製)、RDP(味の素ファインテクノ社製)、ラビトルFP−100(伏見製薬社製)、ラビトルFP−300(伏見製薬社製)を用いた。
【0115】
添加剤として、IM−1000(日鉱金属株式会社製)、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(新中村化学工業株式会社製:NKオリゴ EA7420/PGMAC 数平均分子量約3200/固形分70%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30%、重合禁止剤含有)(以下NKオリゴと表記)、ポリエチレングリコール600(和光純薬工業社製)(以下PEGと表記する)を用いた。
【0116】
<数平均分子量測定>
数平均分子量の測定法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件により測定を行った。溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0117】
また、前記分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0118】
<ドライフィルム製造方法>
本発明における感光性樹脂組成物のコート方法は、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法により、行った。易剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、DIAFOIL、T100H25)に前記感光性樹脂組成物を滴下し、クリアランスを調整しコートを行った。コートした前記フィルムを、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で30分間乾燥することにより、感光性ドライフィルムを得た。
【0119】
<フィルム積層条件>
本発明におけるフィルム積層は、真空プレス機(名機製作所製)を用いて行った。プレス温度120℃、プレス圧1.1MPa、プレス時間1分間にて行った。
【0120】
<膜厚測定>
膜厚測定は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて行った。
各評価に用いたドライフィルムの膜厚は何れも12μm−15μmであった。
【0121】
<フォトリソグラフィー評価>
フォトリソグラフィー評価は、銅張積層板上に、感光性ドライフィルム(感光層の厚さ約15μm)を用いて、上記の積層条件でラミネートした後に、ポジ型マスクを用いて照射量1.3J/cmにて露光を行い、続いて1%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーし次いで水をスプレーすることで現像処理を行った。現像後、酸リンス及び水洗を行い、エアブローで乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて評価することにより行った。100μm径の円形パターンが形成可能なものを○とし、形成できなかったものを×とした。
【0122】
必要に応じ現像後のサンプルに後露光を施した。後露光はマスクを用いずに照射量2.0J/cm2にて露光を行った。
【0123】
<難燃性試験>
難燃性試験は以下の手順で行った。前述のコート方法によって、カプトン(登録商標)フィルムの片面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で30分間乾燥し、次いで反対の面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で30分間乾燥させることにより、カプトンフィルムの両面に感光性樹脂組成物をコートした後、アルカリ現像工程を想定し、擬似的にアルカリ現像液に晒し、表2に示す条件で後露光、焼成を行いサンプルを作成した。このサンプルフィルムを20cm×5cmに切り取り、UL94 VTM試験により難燃性の評価を行った。各試料の残炎時間が10秒以下で、かつ12.5cmの標線まで燃焼しなかったサンプルを○と評価し、各試料の残炎時間が10秒以上あるいは12.5cmの標線まで燃焼したサンプルを×と評価した。
【0124】
<反り評価>
反りの評価は、カプトン上に感光性ドライフィルムを上記の積層条件で積層し、アルカリ現像工程を想定し、擬似的にアルカリ現像液に晒し、表2に示す条件で後露光、焼成を行いサンプルを作成し、50mm×50mmの大きさに切り出し、水平な面に静置した際、裾部分の浮きが10mm以下の場合を○とし、10mmより大きい場合を×とした。
【0125】
<屈曲性評価>
銅張積層板上に、感光性ドライフィルム(感光層の厚さ約15μm)を用いて、上記の積層条件でラミネートした後にアルカリ現像工程を想定し、擬似的にアルカリ現像液に晒し、表2に示す条件で後露光、焼成を行いサンプルを作成したサンプルをはぜ折りし、クラック若しくは剥離が発生せず10回以上はぜ折りが可能であったものを○とし、9回以下のものを×とした。
【0126】
<めっき耐性評価>
前記の方法で製造した感光性ドライフィルムを、銅張積層板に前記積層条件にてラミネートした後に、400μm径の円形パターンのあるポジ型マスクを介しフォトリソグラフィー評価と同様に露光、現像後、400μm径の円形パターンを形成した。表2に示す条件で後露光、焼成を行いサンプルを作成し、下記条件にてすずめっき耐性評価を行った。
脱脂:サンプルを、酸性脱脂液(FRクリーナー)に30℃にて5分間浸漬。
水洗:サンプルを室温にて1分間精製水に浸漬。
ソフトエッチ:サンプルを10質量%過硫酸ナトリウム水溶液に室温にて30秒間浸漬。
水洗:サンプルを室温にて1分間精製水に浸漬。
酸処理:サンプルを10vol%硫酸水溶液に室温にて30秒間浸漬。
水洗:サンプルを室温にて1分間精製水に浸漬。
すずめっき:サンプルをすずめっき液(ローム・アンド・ハース電子材料社製、LT−34)に80℃にて5分間浸漬。
水洗:サンプルを50℃にて1分間精製水に浸漬。
【0127】
試験後に、円孔からのめっき液の顕著な染み込みや膨れ、剥がれが無いものを◎、パターンの淵から薬液の染み込みが0〜10μm程度のものを○、10μm〜30μmの染み込みが見られるもの及び、30μm以上のめっき液の染み込みや膨れ、剥がれ等が観察されたものを×とした。
【0128】
<(A)成分合成例>
[合成例1]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(22.50mmol)及びODPA(59.96mmol)、γ―ブチロラクトン(120mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ―バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、シリコーンジアミン(KF−8010、52.50mmol)及びDA5MG(14.98mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(29.98mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30質量%となるようにγ―ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミドのγ―ブチロラクトン溶液を得た。ポリイミド中シロキサン構造に由来する部位の質量(%)は約53質量%であった。これをポリマー1とする。
【0129】
[合成例2]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、シリコーンジアミン(KF−8010、15.0mmol)、γ−ブチロラクトン(100mL)を入れ、続いてODPA(20.0mmol)を加え、23℃で2時間撹拌した。続いて、トルエン(15mL)、ピリジン(11.38mmol)、γ−バレロラクトン(7.49mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、MBAA(10.0mmol)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、エチレンビス(トリメリテ−ト)二無水物(8.6mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(5mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25質量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミドのγ−ブチロラクトン溶液を得た。ポリイミド中シロキサン構造に由来する部位の質量(%)は約50質量%であった。これをポリマー2とする。
【0130】
[合成例3]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、シリコーンジアミン(15.0mmol)、γ−ブチロラクトン(100mL)を入れ、続いてエチレンビス(トリメリテ−ト)二無水物(20.0mmol)を加え、23℃で2時間撹拌した。続いて、トルエン(15mL)、ピリジン(11.38mmol)、γ−バレロラクトン(7.49mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、MBAA(10.0mmol)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(8.6mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(5mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25質量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミドのγ―ブチロラクトン溶液を得た。ポリイミド中シロキサン構造に由来する部位の質量(%)は約48質量%であった。これをポリマー3とする。
【0131】
[配合例]
表1に従い配合を行った。ポリマーはポリマー成分の質量が表1の部数になるようにポリマーワニスの状態で配合した。
【表1】

【0132】
[サンプル調整例]
表2の条件にて後露光及び焼成を行い各種サンプルを調整した。
【表2】

【0133】
[評価例]
上記記載の条件にて、フォトリソグラフィー、難燃性、反り、屈曲性、めっき耐性の評価を行った。結果は表3に示す。
【表3】

【0134】
表3から明らかなように本発明の感光性樹脂組成物は、柔軟性や屈曲性を損なうことなく、FPCのカバーレイとした時の難燃性、低反り性、を併せ持つ感光性樹脂組成物を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)成分が可溶性ポリイミドであり、前記(B)成分がキノンジアジド化合物であり、前記(C)成分が式(1)に示すイソシアヌル酸環を有する化合物であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中Rはエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む有機基である。複数のRはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
【請求項2】
前記(A)成分がシロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分がカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分がナフトキノンジアジド化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分のRが式(2)に示す有機基であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中Rは下記式(3)又は式(4)であり、RはH、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基から選ばれる有機基である。nは1〜10であり、mは1又は2であり、Lは1〜10である。)
【化3】

【化4】

【請求項6】
(D)成分として、リン系の難燃剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)成分が環状ホスファゼン化合物を含有することを特徴とする請求項6記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含有することを特徴とするフィルム。
【請求項9】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項8記載のフィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項10】
前記フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項9記載の積層フィルム。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を含有することを特徴とする感光性インク。
【請求項12】
配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、請求項1から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用い構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項13】
前記カバーレイが請求項8から請求項10のいずれかに記載のフィルム又は積層フィルムを用いて積層されたカバーレイであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項14】
前記カバーレイが請求項11に記載の感光性インクを用いて形成されたカバーレイであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2009−276526(P2009−276526A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127201(P2008−127201)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】