説明

感放射線性樹脂組成物及び重合体

【課題】焦点深度が広く、LWRが小さく、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難い感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位(1)(Rはメチル基等、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基等)、一般式(2)で表される繰り返し単位(2)(Rはメチル基等、Rは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基等)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含む重合体(A)と、感放射線性の酸発生剤(B)と、を含有する感放射線性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、及び重合体に関する。更に詳しくは、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、その他のフォトリソグラフィー工程に使用される感放射線性樹脂組成物、及びこの感放射線性樹脂組成物に好適に含有される重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーに代表される遠紫外線や電子線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする化学反応により、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成させる組成物である。
【0003】
例えば、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を光源として用いる場合には、248nm領域での吸収が小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)(以下、「PHS」と記す場合がある。)を基本骨格とする重合体を構成成分とする化学増幅型感放射線性樹脂組成物が用いられている。この組成物によれば、高感度、高解像度、且つ良好なパターン形成を実現することが可能である。
【0004】
しかし、更なる微細加工を目的として、より短波長の光源、例えば、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を光源として用いる場合には、193nm領域に大きな吸収を示すPHS等の芳香族化合物を使用することが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、ArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料としては、193nm領域に大きな吸収を有しない脂環式炭化水素を骨格中に有する重合体、特に、その繰り返し単位中にラクトン骨格を有する重合体を構成成分とする樹脂組成物が用いられている。
【0006】
上記のような感放射線性樹脂組成物としては、例えば、その繰り返し単位中に、メバロニックラクトンやγ−ブチロラクトンをはじめとする特定のラクトン骨格を有する重合体を構成成分とする感放射線性樹脂組成物が開示されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4146972号公報
【特許文献2】特開平9−73173号公報
【特許文献3】特許第3712218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の組成物は、その繰り返し単位中にラクトン骨格を有することで、レジストとしての解像性能が飛躍的に向上することが見出されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が線幅90nm以下のレベルまで進展している現在にあっては、単に解像性能が高いのみならず、他の性能も要求されるようになってきている。例えば、現在、レジストパターンの微細化技術の一つとして、液浸露光の実用化が進められており、この液浸露光にも対応可能なレジスト材料が求められている。具体的には、焦点深度(DOF:Depth Of Focus)が広い、ライン幅の粗さ(LWR:Line Width Roughness)が小さい、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難い等の多様な要求特性を満足させる材料の開発が求められている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、焦点深度が広く、LWR及びMEEFが小さく、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難い感放射線性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、焦点深度が広く、LWRが小さく、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難い感放射線性樹脂組成物を調製可能な重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の繰り返し単位を含む重合体を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す感放射線性樹脂組成物、及び重合体が提供される。
【0012】
[1]下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含む重合体(A)と、感放射線性の酸発生剤(B)と、を含有する感放射線性樹脂組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよい。
【0015】
【化2】

【0016】
前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよく、少なくとも一つのRは水素原子以外の基であり、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中に一以上の極性基を有する。
【0017】
[2]前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRは、ヒドロキシル基を有する基、又はカルボニル基を有する基である前記[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0018】
[3]下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含む重合体。
【0019】
【化3】

【0020】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよい。
【0021】
【化4】

【0022】
前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよく、少なくとも一つのRは水素原子以外の基であり、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中に一以上の極性基を有する。
【0023】
[4]前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRは、ヒドロキシル基を有する基、又はカルボニル基を有する基である前記[3]に記載の重合体。
【発明の効果】
【0024】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、焦点深度が広く、LWRが小さく、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難いといった効果を奏するものである。
【0025】
本発明の重合体は、焦点深度が広く、LWRが小さく、現像時の溶け残りが少なく現像欠陥が発生し難い感放射線性樹脂組成物を調製可能であるといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
1.重合体(A):
本発明の重合体(重合体(A))は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)、前記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含むものである。本発明の重合体は、化学増幅型レジストとして用いられる感放射線性樹脂組成物に含有される樹脂成分として有用なものである。化学増幅型レジストとして用いられる感放射線性樹脂組成物には、通常、樹脂成分以外の成分として酸発生剤が含有されている。本発明の重合体を含有させた感放射線性樹脂組成物を化学増幅型レジストとして用いた場合には、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、重合体中の酸解離性基が解離してカルボキシル基を生じる。その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、この露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のフォトレジストパターンを形成することができる。
【0028】
(繰り返し単位(1))
本発明の重合体(A)には、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)が含まれている。
【0029】
【化5】

【0030】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよい。
【0031】
繰り返し単位(1)としては、下記一般式(1−1)〜(1−18)で表される繰り返し単位が特に好ましい。なお、下記一般式(1−1)〜(1−18)中のRは、前記一般式(1)中のRと同義である。
【0032】
【化6】

【0033】
重合体(A)には、例示された繰り返し単位(1)のうちの一種のみが含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。重合体(A)に含まれる繰り返し単位(1)の割合は、重合体(A)を構成する全繰り返し単位中、5〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、20〜70%であることが特に好ましい。繰り返し単位(1)の含有割合が80モル%超であると、形成されるレジスト膜の基板に対する密着性が低下し、パターン倒れやパターン剥れを起こし易くなる傾向にある。一方、繰り返し単位(1)の含有割合が5モル%未満であると、レジストとしての解像性能が劣化する傾向にある。
【0034】
(繰り返し単位(2))
重合体(A)には、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)が含まれている。
【0035】
【化7】

【0036】
前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよく、少なくとも一つのRは水素原子以外の基である。また、前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中には一以上の極性基を有する。なお、前記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)には、通常、ラクトン構造が含まれることはない。
【0037】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中には一以上の極性基が導入されている。この繰り返し単位(2)を構成単位として含む重合体(A)は、感放射線性樹脂組成物に含有される樹脂成分として用いた場合に、レジストの露光部のアルカリ現像液(アルカリ水溶液)に対する溶解性が促進される。これは、繰り返し単位(2)の所定箇所に導入された前述の一以上の極性基(官能基)が、レジストの露光部のアルカリ現像液(アルカリ水溶液)に対する溶解性の促進に寄与したからであると推測される。従って、本発明の重合体を含有する感放射線性組成物(本発明の感放射線性樹脂組成物)を用いると、アルカリ現像液による現像時の溶け残りが少なく、現像欠陥が極めて発生し難いといった顕著な効果を奏する。
【0038】
前記極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、シアノ基、アルキルエステル基、及び芳香族エステル基等の、炭化水素基に比べて極性を示す基を挙げることができる。なお、アルカリ現像液による現像時の溶け残りを更に少なくするとともに、現像欠陥の発生率を更に低減させるといった観点からは、前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRは、ヒドロキシル基(好ましくは2級又は3級ヒドロキシル基)を有する基、又はカルボニル基を有する基であることが好ましい。
【0039】
繰り返し単位(2)としては、下記一般式(2−1)〜(2−15)で表される繰り返し単位が特に好ましい。なお、下記一般式(2−1)〜(2−15)中のRは、前記一般式(2)中のRと同義である。
【0040】
【化8】

【0041】
重合体(A)には、例示された繰り返し単位(2)のうちの一種のみが含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。重合体(A)に含まれる繰り返し単位(2)の割合は、重合体(A)を構成する全繰り返し単位中、1〜50モル%であることが好ましく、1〜45モル%であることが更に好ましく、1〜40%であることが特に好ましい。繰り返し単位(2)の含有割合が50モル%超であると、レジストとしての解像性能が劣化する傾向にある。一方、繰り返し単位(2)の含有割合が1モル%未満であると、現像時の溶け残りが多くなり現像欠陥が発生し易くなる傾向にある。
【0042】
(繰り返し単位(3))
重合体(A)には、その一部に環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)が含まれている。なお、「環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)」の具体例としては、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0043】
【化9】

【0044】
前記一般式(3)中、Rは、相互に独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。なかでもメチル基が好ましい。また、複数のRは、相互に独立して、水素原子、又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1〜5の鎖状炭化水素基を示す。「炭素数1〜5の鎖状炭化水素基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数3〜5の分岐状アルキル基等を挙げることができる。
【0045】
前記一般式(3)中、nは2〜4の整数を示す。即ち、環状炭酸エステル構造は、n=2(エチレン基)の場合は5員環構造、n=3(プロピレン基)の場合は6員環構造、n=4(ブチレン基)の場合は7員環構造となる。
【0046】
前記一般式(3)中、Aは、単結合、置換若しくは非置換の炭素数が1〜30である2価若しくは3価の鎖状炭化水素基、置換若しくは非置換の炭素数が3〜30である2価若しくは3価のヘテロ原子を含んでいてもよい脂環式炭化水素基、又は置換若しくは非置換の炭素数が6〜30である2価若しくは3価の芳香族炭化水素基を示す。
【0047】
Aが単結合の場合、重合体を構成する(メタ)アクリル酸の酸素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する炭素原子と、が直接結合されることになる。
【0048】
本明細書にいう「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味するものとする。「炭素数が1〜30である2価の鎖状炭化水素基」としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサレン基等の直鎖状アルキレン基;1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基等の分岐状アルキレン基;等を挙げることができる。「炭素数が1〜30である3価の鎖状炭化水素基」としては、前記官能基から水素原子が1個脱離した基等を挙げることができる。
【0049】
Aが鎖状炭化水素基である場合の構造の具体例としては、重合体を構成する(メタ)アクリル酸の酸素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する炭素原子とが、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を介して結合されている構造を挙げることができる(後述する繰り返し単位(3−1)〜(3−6)を参照)。なお、これらの鎖状炭化水素基は、置換基を有するものであってもよい(後述する繰り返し単位(3−15)を参照)。
【0050】
Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する炭素原子とが結合されて、環構造が形成されていてもよい。換言すれば、環状炭酸エステル構造が、有橋環やスピロ環の一部を構成していてもよい。前記環構造に環状炭酸エステル構造中の2つの炭素原子が含まれる場合には、有橋環が形成され、環状炭酸エステル中の1つの炭素原子のみが含まれる場合には、スピロ環が形成される。後述する繰り返し単位(3−7)、(3−9)、及び(3−16)〜(3−21)は、Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する2つの炭素原子と、を含む有橋環が形成されている例である。一方、後述する繰り返し単位(3−10)は、Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する1つの炭素原子と、によってスピロ環が形成されている例である。なお、前記環構造は、例えば酸素(O)や窒素(N)等のヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい(後述する繰り返し単位(3−16)〜(3−21)を参照)。
【0051】
本明細書にいう「脂環式炭化水素基」とは、環構造中に、脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。但し、この「脂環式炭化水素基」は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【0052】
「2価の脂環式炭化水素基」としては、例えば、1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基等、1,4−シクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等の炭素数3〜10の単環型シクロアルキレン基;1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の多環型シクロアルキレン基;等を挙げることができる。「3価の脂環式炭化水素基」としては、前記官能基から水素原子が1個脱離した基等を挙げることができる。
【0053】
Aが脂環式炭化水素基である場合の構造としては、重合体を構成する(メタ)アクリル酸の酸素原子と、環状炭酸エステルを構成する炭素原子とが、シクロペンチレン基を介して結合されているもの(後述する繰り返し単位(3−10)を参照)、ノルボルニレン基を介して結合されているもの(後述する繰り返し単位(3−11)及び(3−12)を参照)、置換テトラデカヒドロフェナントリル基を介して結合されているもの(後述する繰り返し単位(3−13)を参照)等を挙げることができる。
【0054】
なお、後述する繰り返し単位(3−11)及び(3−12)は、Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステルを構成する2つの炭素原子と、を含む有橋環が形成されている例である。一方、後述する繰り返し単位(3−10)及び(3−13)は、Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステルを構成する1つの炭素原子と、によってスピロ環が形成されている例である。
【0055】
本明細書にいう「芳香族炭化水素基」とは、環構造中に芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。但し、この「芳香族炭化水素基」は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0056】
「2価の芳香族炭化水素基」としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基等のアリーレン基等を挙げることができる。「3価の芳香族炭化水素基」としては、前記官能基から水素原子が1個脱離した基等を挙げることができる。
【0057】
Aが芳香族炭化水素基である例としては、重合体を構成する(メタ)アクリル酸の酸素原子と、環状炭酸エステルを構成する炭素原子とが、ベンジレン基を介して結合されているもの(後述する繰り返し単位(3−14)を参照)等を挙げることができる。この繰り返し単位(3−14)は、Aに含まれる炭素原子と、環状炭酸エステル構造を形成する2つの炭素原子と、を含む有橋環が形成されている例である。
【0058】
繰り返し単位(3)を与える単量体は、例えば、Tetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された、従来公知の方法により合成することができる。
【0059】
繰り返し単位(3)の特に好ましい例としては、下記一般式(3−1)〜(3−21)で表される繰り返し単位(3−1)〜(3−21)を挙げることができる。なお、下記一般式(3−1)〜(3−21)中のRは、前記一般式(3)中のRと同義である。
【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
重合体(A)には、例示された繰り返し単位(3)のうちの一種のみが含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。重合体(A)に含まれる繰り返し単位(3)の割合は、重合体(A)を構成する全繰り返し単位中、5〜80モル%であることが好ましく、5〜70モル%であることが更に好ましく、5〜50モル%であることが特に好ましい。重合体(A)に含まれる繰り返し単位(3)の割合を上記の範囲内とすることによって、レジストとしての現像性、低欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性等を向上させることができる。なお、繰り返し単位(3)の含有率が5モル%未満であると、レジストとしての現像性、低欠陥性が低下するおそれがある。一方、80モル%超であると、レジストとしての解像性、低LWR、低PEB温度依存性が低下するおそれがある。
【0063】
なお、「低欠陥性」とは、フォトリソグラフィー工程において欠陥が生じ難いことを意味する。フォトリソグラフィー工程における「欠陥」としては、ウォーターマーク欠陥、ブロッブ欠陥、バブル欠陥等を挙げることができる。デバイス製造において、これらの欠陥が大量に発生した場合には、デバイスの歩留まりに大きな影響を与えることとなり好ましくない。
【0064】
更に、「ウォーターマーク欠陥」とは、レジストパターン上に液浸液の液滴痕が残る欠陥であり、「ブロッブ欠陥」とは、現像液に一度溶けた樹脂がリンスのショックで析出し、基板に再付着した欠陥であり、「バブル欠陥」とは、液浸露光時、液浸液が泡(バブル)を含むことで光路が変化し、所望のパターンが得られない欠陥である。
【0065】
(その他の繰り返し単位)
本発明の重合体(A)には、本発明の重合体の効果を損なわない範囲内で必要に応じて、前述の繰り返し単位(1)〜(3)以外のその他の繰り返し単位が含まれていてもよい。但し、重合体(A)を構成する繰り返し単位中には、通常、ラクトン構造が含まれることはない。また、本発明の重合体(A)は、本質的に、繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、及び繰り返し単位(3)からなるものであることが好ましい。
【0066】
その他の繰り返し単位の具体例としては、下記一般式(4)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0067】
【化12】

【0068】
前記一般式(4)中、R12は水素又はメチル基を示し、R13は炭素数1〜20のアルキル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、前記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)は除く。
【0069】
前記一般式(4)中、R13で示される「炭素数1〜20のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基等の直鎖状アルキル基;i−プロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の単環型シクロアルキル基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基等の複数の環構造を有する多環型シクロアルキル基を挙げることができる。
【0070】
これらの単環型及び多環型シクロアルキル基は、少なくとも1個の水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、及び炭素数3〜12のシクロアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基によって置換されていてもよい。
【0071】
「炭素数1〜4のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状アルキル基;i−プロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数3〜4の分岐状アルキル基等を挙げることができる。また、「炭素数3〜12のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等を挙げることができる。
【0072】
その他の繰り返し単位を与える単量体の好ましい例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等を挙げることができる。
【0073】
樹脂(A)には、例示されたその他の繰り返し単位のうちの一種が単独で含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。
【0074】
(重合体(A)の製造方法)
重合体(A)は、ラジカル重合等の常法に従って製造(合成)することができる。例えば、(1)単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(2)単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを、反応溶媒又は単量体を含有する溶液にそれぞれ滴下して重合反応させる方法;(3)それぞれの単量体を含有する、複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを、反応溶媒又は単量体を含有する溶液にそれぞれ滴下して重合反応させる方法;等の方法で合成することが好ましい。なお、重合反応に際しての各種条件や使用可能な溶媒等については、一般的な重合体の合成方法に準じて適宜設定・選択すればよい。
【0075】
重合反応により得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、前記重合溶媒として例示した溶媒を単独で又は二種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して重合体(A)を回収することもできる。即ち、重合反応終了後、重合溶液を適宜濃縮して、例えば、メタノール/ヘプタン等の二液に分離する溶媒系を選択して加え、重合溶液から低分子成分を除去し、適宜必要な溶媒系(プロピレングリコールモノメチルエーテル等)に置換し、目的の重合体(A)の溶液を回収する。
【0076】
なお、重合体(A)には、単量体由来の低分子量成分が含まれるが、その含有率は、重合体(A)の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0077】
この低分子量成分の含有率が0.1質量%以下である場合には、この重合体(A)を使用してレジスト膜を作製して液浸露光を行う際に、レジスト膜に接触した水に溶出する溶出物の量を少なくすることができる。更に、レジスト保管時に、レジスト中に異物が析出することがほとんどなく、レジスト塗布時においても塗布ムラが発生することがほとんどない。従って、レジストパターン形成時における欠陥の発生を十分に抑制することができる。
【0078】
なお、本明細書において、単量体由来の「低分子量成分」というときは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)が、500以下の成分を意味するものとする。具体的には、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等の成分である。この「低分子量成分」は、例えば、水洗、液−液抽出等の化学的精製法;化学的精製法と、限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等により除去することができる。
【0079】
また、この低分子量成分は、重合体(A)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析することにより定量することができる。なお、重合体(A)は、低分子量成分の他、ハロゲン、金属等の不純物の含有割合が少ないほど好ましく、それにより、レジストとしたときの感度、解像度、プロセス安定性、及びパターン形状等を更に改善することができる。
【0080】
一方、重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜30,000であることが更に好ましく、1,000〜20,000であることが特に好ましい。重合体(A)のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向にある。一方、重合体(A)のMwが100,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向にある。
【0081】
また、重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1.0〜5.0であり、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。
【0082】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、一種類の重合体(A)が含有されていてもよく、二種以上の重合体(A)が含有されていてもよい。
【0083】
2.感放射線性樹脂組成物:
本発明の感放射線性酸発生剤は、前述の重合体(A)、及び感放射線性の酸発生剤(B)を必須成分として含有するものであり、化学増幅型レジストとして有用なものである。化学増幅型レジストにおいては、露光により酸発生剤(B)から発生した酸の作用によって、樹脂成分である重合体(A)中の酸解離性基が解離してカルボキシル基を生じる。その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、この露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のフォトレジストパターンが形成される。
【0084】
(酸発生剤(B))
酸発生剤(B)は、露光により酸を発生する、感放射線性の酸発生剤である。この酸発生剤は、露光により発生した酸によって、感放射線性樹脂組成物に含有される重合体(A)中に存在する酸解離性基を解離させて(保護基を脱離させて)、重合体(A)をアルカリ可溶性とする。そして、その結果、レジスト被膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、これによりポジ型のレジストパターンが形成される。
【0085】
酸発生剤(B)としては、レジスト用の組成物に含有させることのできる通常の酸発生剤を使用することができ、特に制限はない。酸発生剤(B)としては、下記一般式(B−1)で表される化合物を含むものが好ましい。
【0086】
【化13】

【0087】
前記一般式(B−1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、又は炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基を示し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、又は炭素数1〜10のアルカンスルホニル基を示し、Rは、相互に独立して、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは非置換のフェニル基、又は置換若しくは非置換のナフチル基を示す。但し、2個のRが相互に結合して炭素数2〜10の2価の基を形成していてもよい。kは0〜2の整数を示し、rは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、Xは所定のアニオンを示す。
【0088】
前記一般式(B−1)中、R、R、及びRで表される「炭素数1〜10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。また、R及びRで表される「炭素数1〜10のアルコキシル基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
【0089】
前記一般式(B−1)中、Rで表される「炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基」としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等が好ましい。また、Rで表される「炭素数1〜10のアルカンスルホニル基」としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が好ましい。
【0090】
前記一般式(B−1)中、Rで表される「置換又は非置換のフェニル基」としては、フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基等が好ましい。また、Rで表される「置換又は非置換のナフチル基」としては、1−ナフチル基、1−(4−メトキシナフチル)基、1−(4−エトキシナフチル)基、1−(4−n−プロポキシナフチル)基、1−(4−n−ブトキシナフチル)基、2−(7−メトキシナフチル)基、2−(7−エトキシナフチル)基、2−(7−n−プロポキシナフチル)基、2−(7−n−ブトキシナフチル)基等が好ましい。また、2個のRが相互に結合して形成される「炭素数2〜10の2価の基」としては、2個のRが相互に結合し、前記一般式(B−1)中の硫黄原子とともに5員環又は6員環を形成した構造が好ましく、5員環(テトラヒドロチオフェン環)が更に好ましい。
【0091】
なお、前記一般式(B−1)中のRは、メチル基、エチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、及び1−ナフチル基、並びに2個のRが相互に結合し、前記一般式(B−1)中の硫黄原子とともに5員環(テトラヒドロチオフェン環)を形成した構造が好ましい。
【0092】
前記一般式(B−1)のカチオン部位としては、トリフェニルスルホニウムカチオン、トリ−1−ナフチルスルホニウムカチオン、トリ−tert−ブチルフェニルスルホニウムカチオン、4−フルオロフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、ジ−4−フルオロフェニル−フェニルスルホニウムカチオン、トリ−4−フルオロフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、4−メタンスルホニルフェニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、4−シクロヘキサンスルホニル−ジフェニルスルホニウムカチオン、1−ナフチルジメチルスルホニウムカチオン、1−ナフチルジエチルスルホニウムカチオン、1−(4−ヒドロキシナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−メチルナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−メチルナフチル)ジエチルスルホニウムカチオン、1−(4−シアノナフチル)ジメチルスルホニウムカチオン、1−(4−シアノナフチル)ジエチルスルホニウムカチオン、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−メトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−エトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−n−プロポキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−メトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−エトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−n−プロポキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン、2−(7−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が好ましい。
【0093】
一方、前記一般式(B−1)のアニオン部位としては、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パーフルオロ−n−ブタンスルホネートアニオン、パーフルオロ−n−オクタンスルホネートアニオン、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートアニオン、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネートアニオン、1−アダマンチルスルホネートアニオンの他、下記式(b−1)〜(b−7)で示されるアニオン等が好ましい。
【0094】
【化14】

【0095】
酸発生剤(B)は、既に例示したカチオン及びアニオンの組合せで構成される。但し、その組合せは特に限定されるものでない。酸発生剤(B)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
なお、本発明の感放射線性樹脂組成物には、酸発生剤(B)以外の酸発生剤(その他の酸発生剤)を併用してもよい。その他の酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物等を挙げることができる。
【0097】
酸発生剤(B)とその他の酸発生剤の総使用量は、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部である。酸発生剤(B)とその他の酸発生剤の総使用量が0.1質量部未満であると、感度及び現像性が低下する傾向にある。一方、30質量部超であると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンを得難くなる傾向にある。また、その他の酸発生剤の使用割合は、酸発生剤(B)とその他の酸発生剤との総量に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0098】
(酸拡散抑制剤(C))
本発明の感放射線性樹脂組成物には、これまでに説明した重合体(A)及び酸発生剤(B)に加えて、更に酸拡散抑制剤(C)を含有させることができる。この酸拡散抑制剤(C)は、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制するものである。このような酸拡散抑制剤(C)を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。
【0099】
酸拡散抑制剤(C)としては、レジスト用の組成物に含有させることのできる通常の酸拡散抑制剤を使用することができ、特に制限はない。酸拡散抑制剤(C)の具体例としては、下記一般式(C−1)で表される窒素含有化合物(C−1)を挙げることができる。
【0100】
【化15】

【0101】
前記一般式(C−1)中、R10及びR11は相互に独立して、水素原子、炭素数が1〜20である1価の鎖状炭化水素基、炭素数が3〜20である1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数が6〜20である1価の芳香族炭化水素基を示す。なお、2つのR10が結合されて、環構造が形成されていてもよい。
【0102】
前記一般式(C−1)で表される窒素含有化合物の具体例としては、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N、N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−tert−ブチル基含有アミノ化合物;
【0103】
N−t−アミロキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N、N‘−ジ−t−アミロキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−アミロキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−tert−アミル基含有アミノ化合物;等を挙げることができる。
【0104】
これらの化合物のなかでも、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾールが好ましく、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾールが好ましい。なお、これらの酸拡散抑制剤(C)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
酸拡散抑制剤(C)の含有量は、レジストとしての高い感度を確保する観点から、重合体(A)100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、5質量部未満であることが更に好ましい。酸拡散抑制剤(C)の含有量が重合体(A)100質量部に対して10質量部を超えると、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。なお、酸拡散抑制剤(C)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して0.001質量部未満であると、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0106】
(溶剤(D))
本発明の感放射線性樹脂組成物には、これまでに説明した重合体(A)及び酸発生剤(B)に加えて、通常、溶剤(E)が含有される。この溶剤(E)は、重合体(A)、酸発生剤(B)、及び必要に応じて含有される酸拡散抑制剤(C)等の各成分を溶解可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0107】
溶剤(D)の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0108】
シクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、イソホロン等の環状のケトン類;2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸sec−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸t−ブチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類の他、
【0109】
n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、
【0110】
トルエン、キシレン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
【0111】
これらのなかでも、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。他には、ケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらの溶剤(D)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
(添加剤(E))
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤(E)として界面活性剤、増感剤、染料、顔料、接着助剤等を含有させることも好ましい。
【0113】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分であり、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(B)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものである。即ち、増感剤を含有させると、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させることができるために好ましい。増感剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0115】
感放射線性樹脂組成物に染料や顔料を含有させると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるために好ましい。また、感放射線性樹脂組成物に接着助剤を含有させると、レジスト層と基板との接着性を改善することができるために好ましい。なお、上記以外の添加剤(E)としては、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0116】
(フォトレジストパターンの形成方法)
フォトレジストパターンは、例えば、以下に示すようにして形成することが一般的である。即ち、(1)感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成した後(工程(1))、(2)形成されたフォトレジスト膜に(必要に応じて液浸媒体を介し)、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射して露光し(工程(2))、基盤(露光されたフォトレジスト膜)を加熱し(工程(3))、次いで(4)現像すれば(工程(4))、フォトレジストパターンを形成することができる。
【0117】
工程(1)では、感放射線性樹脂組成物、又はこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、基板(シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等)上に塗布することにより、フォトレジスト膜を形成する。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように樹脂組成物溶液を塗布した後、プレベーク(PB)することにより塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト膜を形成する。
【0118】
工程(2)では、工程(1)で形成されたフォトレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光させる。なお、この際には、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、なかでも、ArFエキシマレーザーが好ましい。
【0119】
工程(3)は、ポストエクスポージャーベーク(PEB)とも呼ばれ、工程(2)でフォトレジスト膜の露光された部分において、酸発生剤から発生した酸が重合体を脱保護する工程である。これにより、露光された部分(露光部)と露光されていない部分(未露光部)のアルカリ現像液に対する溶解性に差が生じる。PEBは、通常50℃から180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0120】
工程(4)では、露光されたフォトレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0121】
また、液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(4)の前に溶剤により剥離する、溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、工程(4)の現像と同時に剥離する、現像液剥離型保護膜(例えば、国際公開第2005/069076号、国際公開第2006/035790号参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0123】
1.各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法:
[重量平均分子量(Mw)]:
東ソー社製GPCカラム(商品名「G2000HXL」:2本、商品名「G3000HXL」:1本、商品名「G4000HXL」:1本)を使用し、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0124】
[数平均分子量(Mn)]:
東ソー社製GPCカラム(商品名「G2000HXL」:2本、商品名「G3000HXL」:1本、商品名「G4000HXL」:1本)を使用し、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0125】
13C−NMR分析]:
それぞれの重合体について、核磁気共鳴装置(商品名「JNM−ECX400」、日本電子社製)を使用し、13C−NMR分析を行った。
【0126】
[感度(単位:mJ/cm)]:
8インチのウエハー表面に、下層反射防止膜形成剤(商品名「ARC29A」、日産化学社製)を用いて、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成した。調製した感放射線性樹脂組成物をこの基板の表面にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2に示す温度で90秒間SB(Soft Bake)を行い、膜厚120nmのレジスト被膜を形成した。形成したレジスト被膜を、フルフィールド縮小投影露光装置(商品名「S306C」、ニコン社製、開口数:0.78)を使用し、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す温度で90秒間PEBを行った後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、「TMAH水溶液」ともいう)により25℃で60秒現像した後、水洗及び乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。寸法90nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅90nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量(mJ/cm)を最適露光量とし、この最適露光量(mJ/cm)を「感度」とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(商品名「S9220」、日立ハイテクノロジーズ社製)を使用した。
【0127】
[焦点深度(DOF)]:
最適露光量にて90nm1L/1Sマスクパターンで解像されるパターン寸法が、マスクの設計寸法の±10%以内となる場合のフォーカスの振れ幅を密集ライン焦点深度とした。具体的には、密集ライン焦点深度が0.40μm以上の場合「良好」、0.40μm未満の場合「不良」と評価した。なお、パターン寸法の観測には前記走査型電子顕微鏡を用いた。
【0128】
[LWR(単位:nm)]:
前述の走査型電子顕微鏡を使用し、最適露光量にて解像した90nm1L/1Sのパターンをパターン上部から観察し、任意の10点のポイントで線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWRとした。このLWRの値が小さいほど、形成されたパターンの形状が良好であると評価することができる。なお、LWRが8.0nm以下の場合「良好」、8.0nmを超える場合「不良」と評価した。
【0129】
[現像欠陥数(単位:個/Wafer)]:
現像欠陥数は、欠陥検査装置(商品名「KLA2351」、ケー・エル・エー・テンコール社製)を用いる下記方法により評価した。欠陥検査用ウエハーは、次のように作製した。下層反射防止膜形成剤(商品名「ARC29」、ブルワー・サイエンス社製)を膜厚770Åとなるようにコートし、ウエハー基板を作製した。調製した感放射線性樹脂組成物をこの基板上に膜厚0.12μmで塗布し、表2に示す温度で90秒間SB(Soft Bake)を行った。フルフィールド露光装置(商品名「S306C」、ニコン社製)を用い、5mm×5mmのブランク露光を行い、ウエハー全面を露光させた。露光後、130℃/90秒の条件でPEBを行った後、2.38%のTMAH水溶液により25℃で30秒間現像した後、水洗及び乾燥して、欠陥検査用ウエハーを作製した。なお、上記の塗布、焼成、及び現像は、コータ/デベロッパ(商品名「CLEAN TRACK ACT8」、東京エレクトロン社製)を用い、全てインラインで実施した。
【0130】
前述の欠陥検査装置を使用し、前述の方法により作製した欠陥検査用ウエハーの露光部における現像欠陥の欠陥総数を検査した。欠陥総数の検査は、アレイモードで観察し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出されるクラスター及びアンクラスターの欠陥総数を検出することにより行った。前述の欠陥検査装置は、0.15μm以上の欠陥を検出できるように感度を設定した。現像欠陥数が30個/Wafer以下の場合「良好」、30個/Waferを超える場合「不良」と評価した。
【0131】
2.重合体(A)の合成:
以下に示す単量体(M−1)〜(M−7)を使用し、重合体(A−1)〜(A−7)を合成した。なお、単量体(M−1)及び(M−2)は繰り返し単位(1)に対応する単量体であり、単量体(M−4)〜(M−6)は繰り返し単位(2)に対応する単量体であり、単量体(M−3)は繰り返し単位(3)に対応する単量体である。
【0132】
【化16】

【0133】
(合成例1:重合体(A−1))
単量体(M−1)27.21g(50モル%)、単量体(M−4)5.49g(10モル%)、及び単量体(M−3)17.30g(40モル%)を2−ブタノン100gに溶解させた。更に、開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.28g(5モル%)を加えて単量体溶液を調製した。
【0134】
温度計及び滴下漏斗を備えた500mLの三口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分間窒素パージした。その後、フラスコ内をマグネティックスターラーで撹拌しながら80℃まで加熱した。滴下漏斗を使用して、単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷により30℃以下となるまで冷却した。冷却後、重合溶液を1000gのメタノールに投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を200gのメタノールに投入してスラリー状態とし、2回洗浄した。白色粉末を再度ろ別し、50℃で17時間乾燥して白色粉末状の重合体(A−1)を得た(38g、収率:76%)。得られた重合体(A−1)のMwは7221、Mw/Mnは1.70、及び13C−NMR分析により測定した、各単量体に由来する繰り返し単位の含有率は、単量体(M−1):単量体(M−4):単量体(M−3)=50.6:9.7:39.7(モル%)であった。
【0135】
(合成例2〜7:重合体(A−2)〜(A−7))
表1に示す配合処方としたこと以外は、前述の合成例1の場合と同様の操作により重合体(A−2)〜(A−7)を得た。得られた重合体(A−2)〜(A−7)の収率、Mw、Mw/Mn、及び各単量体に由来する繰り返し単位の含有率を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
3.感放射線性樹脂組成物の調製:
前述の合成例により合成した重合体(A−1)〜(A−7)、及び以下に示す各成分(酸発生剤(B)、酸拡散抑制剤(C)、及び溶剤(D))を使用し、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0138】
<酸発生剤(B)>
B−1:トリフェニルスルホニウム 2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
【0139】
<酸拡散抑制剤(C)>
C−1:N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0140】
<溶剤(D)>
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
D−2:シクロヘキサノン
D−3:γ−ブチロラクトン
【0141】
(実施例1)
合成例1で得た重合体(A−1)100部、酸発生剤(B−1)7.5部、及び酸拡散抑制剤(C−1)を混合して混合物を得た。得られた混合物に、溶剤(D−1)1500部、溶剤(D−2)650部、及び溶剤(D−3)30部を添加し、混合物を溶解させて混合溶液を得た。得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(実施例1)を調製した。調製した感放射線性樹脂組成物(実施例1)の感度の測定結果は、27.5mJ/cm、DOFの評価結果は「良好」、LWRの評価結果は「良好」、及び現像欠陥の評価結果は「良好」であった。
【0142】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
表2に示す配合処方としたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様の操作により感放射線性樹脂組成物(実施例2〜4、比較例1〜3)を調製した。並びにDOF、LWR、及び現像欠陥の評価結果を表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
表2に示す結果から、実施例1〜4の感放射線性樹脂組成物は、比較例1〜3の感放射線性樹脂組成物に比して優れた感度を有するものであることが明らかである。また、実施例1〜4の感放射線性樹脂組成物を用いた場合は、比較例1〜3の感放射線性樹脂組成物を用いた場合に比して、DOF、LWR、及び現像欠陥性能等のレジスト諸性能が向上することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザー、及びArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料として好適に用いることができる。また、液浸露光にも対応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含む重合体(A)と、
感放射線性の酸発生剤(B)と、
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよい)
【化2】

(前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよく、少なくとも一つのRは水素原子以外の基であり、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中に一以上の極性基を有する)
【請求項2】
前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRは、ヒドロキシル基を有する基、又はカルボニル基を有する基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(1)、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(2)、及び環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(3)を含む重合体。
【化3】

(前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよい)
【化4】

(前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を示し、複数のRは相互に独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して炭素数4〜20の2価の炭化水素基を形成してもよく、少なくとも一つのRは水素原子以外の基であり、水素原子を除く少なくともいずれかのRの末端又は途中に一以上の極性基を有する)
【請求項4】
前記一般式(2)中、水素原子を除く少なくともいずれかのRは、ヒドロキシル基を有する基、又はカルボニル基を有する基である請求項3に記載の重合体。

【公開番号】特開2010−160348(P2010−160348A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2797(P2009−2797)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】