説明

抗骨粗鬆症組成物

【課題】 少量の摂取で骨密度を増加させることができ、特に閉経後の女性の急激な骨密度の低下を防止し、骨粗鬆症を予防することができる安全で効果の高い抗骨粗鬆症組成物を提供する。
【解決手段】 温州みかんなどのかんきつ類から果汁を絞った後の残渣に、酵素を添加し反応を行い反応液を遠心分離し上清を除去し乾燥することにより得られる、有効成分としてカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする抗骨粗鬆症組成物及びそれらを含有する飲食品、医薬品又は飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品、飼料、医薬品などに用い、摂取することにより動物の骨密度などを向上させるなどの効果が得られる抗骨粗鬆症組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、老齢に伴って骨密度が減少し、骨折しやすくなる骨粗鬆症が非常に問題となっている。骨粗鬆症は、骨塩量の減少から腰椎や大腿骨の骨折を引き起こし、寝たきりになる原因となり、特に、女性は閉経によるエストロゲン分泌の低減から骨塩量が急激に減少し、骨粗鬆症になりやすいことが明らかとなっている。骨粗鬆症の治療としては、一度減少した骨塩量を復活させることは容易ではなく、若年齢からの予防や、閉経後の急激な骨塩量の低下を予防することが非常に重要であると考えられている。
【0003】
骨粗鬆症の予防のためには、若年期からの骨量を増加させることが大切で、そのためには、適度な運動や日常の摂取する食品に注意する必要がある。食事に際しては、カルシウムを多く含む乳製品や魚類などを多く摂取することが重要である。更に、最近では、ビタミンK(例えば、特許文献1参照)、オリゴ糖類やミネラル類(例えば、特許文献2参照)、カゼインホスホペプチド(例えば、特許文献3参照)、大豆イソフラボン(例えば、非特許文献1参照)あるいはビタミンDなどをいわゆる健康食品として利用することも有効であると推奨されている。
【特許文献1】特開平10−056959号公報
【特許文献2】特開平7−252156号公報
【特許文献3】特開平5−284939号公報
【非特許文献1】加藤一彦、末満ひろみ、大豆たん白質研究、Vol.5、p134−137(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在までに少量の摂取で有効的に骨密度を増加させ、骨粗鬆症を予防するような食品素材はまだ開発されていない。また、大量に摂取すればある程度の効果が期待できる素材もあるが、大量に摂取することによる副作用の危険性が考えられるため、有効量に満たない摂取量で摂取しているのが現状であると考えられる。すなわち、副作用などの危険性が考えられない摂取量で、骨粗鬆症の予防ができ、骨密度を増加させることができる食品などの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、少量の摂取で骨密度を増加させることができ、特に閉経後の女性の急激な骨密度の低下を防止し、骨粗鬆症を予防することができる組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、カロテノイドとフラボノイド及び/又はその誘導体を有効成分として含有する組成物を摂取することで、骨粗鬆症に対する改善効果が高く、非常に安全な抗骨粗鬆症組成物を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、第1には、有効成分としてカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする抗骨粗鬆症組成物を要旨とするものであり、好ましくはカロテノイドがクリプトキサンチン又はその脂肪酸エステルである前記の抗骨粗鬆症組成物であり、また好ましくはフラボノイド及び/又はその誘導体が、ヘスペリジン、その誘導体及びヘスペレチンからなる群から選ばれる1又は2以上の物質である前記の抗骨粗鬆症組成物であり、また好ましくはカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体が、かんきつ類の果実の搾汁粕及び/又はその酵素処理物に由来するものである前記の抗骨粗鬆症組成物であり、第2には、前記の抗骨粗鬆症組成物を含有する飲食品、医薬品又は飼料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少量の摂取で骨粗鬆症に対する効果が高いため、大量摂取する必要がなく安全性が高いことに加え、飲食品へ配合する場合に、配合設計が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるカロテノイドとは、特に限定されるものではなく、例えば、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペン、ツナキサンチンなど、およびこれらの脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、キサントフィルのパルミトイルエステル、ミリストイルエステル、ラウリルエステルなどが挙げられる。これらの中で、クリプトキサンチン及びその脂肪酸エステル類が骨密度を増加させる効果が高く好ましい。
【0011】
また、本発明におけるフラボノイド及び/又はその誘導体とは、特に限定されるものではなく、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチン及びこれらの誘導体であるα−グルコシル化ヘスペリジン、α−グルコシル化ナリンジン、α−グルコシル化ルチン、及びヘスペリジン、ナリンジン、ルチンのアグリコンであるヘスペレチン、ナリンゲニン、ケルセチンなどが挙げられる。この中で、ヘスペリジン及びその誘導体、及びヘスペレチンが骨密度を増加させる効果が高く好ましい。
【0012】
本発明に用いられるカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体は、試薬として市販されているものを使用することができるが、以下に説明するようにかんきつ類の果実の搾汁粕あるいはそれを酵素処理して得られた酵素処理物から取得することもできる。
【0013】
本発明におけるかんきつ類の果実の搾汁粕とは、温州みかん、伊予柑、夏みかん、八朔、ポンカン、ネーブルオレンジ、レモン、バレンシアオレンジ、グレープフルーツ(これらと同等又は類似の品種のものも含む)などの果実を、インライン搾汁機、チョッパーヘルパー搾汁機、ブラウン搾汁機などにより搾汁した後、パドル型又はスクリュー型のフィニッシャーなどでろ過又は篩別、又は遠心分離により果汁を調製した搾汁残渣を集めることにより調製される。
【0014】
本発明におけるかんきつ類の搾汁粕の酵素処理物とは、前記果実から得られる搾汁残渣に酵素を添加し、カロテノイド又はフラボノイドを強化したもの(濃度を高めたもの)である。その具体的な製造方法の一例は以下の通りである。
【0015】
酵素処理に使用する酵素は、搾汁残渣に含まれる有機物、特に細胞壁などを構成する生体高分子などを分解することができるものであれば特に限定されず、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、マセレーションエンザイム(細胞壁崩壊酵素)などが用いられる。これらの中でも糖質加水分解酵素であるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、マレーションエンザイムが有効成分であるカロテノイド及びフラボノイドを強化する効率が高いために好ましい酵素である。添加する酵素剤は、これらの精製酵素を用いてもよいし、これらの活性を示す微生物菌体や培養物、これらの粗精製物を用いてもよい。また、市販酵素も用いることができ、例えば、ペクチナーゼには、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームSPC(新日本化学工業株式会社製)、ペクチネックスSRL(ノボザイムズジャパン株式会社製)、スミチームPMAC(新日本化学工業株式会社製)などを用いることができ、ヘミセルラーゼには、セルロシンGM5(エイチビィアイ株式会社製)、セルロシンHC(エイチビィアイ株式会社製)などを用いることができ、セルラーゼには、セルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社)、セルラーゼR10(ヤクルト薬品工業株式会社製)、スミチームCAP(新日本化学工業株式会社製)などを用いることができ、プロテアーゼには、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)、オリエンターゼ20A(エイチビィアイ株式会社製)などを用いることができる。
【0016】
これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上の酵素を混合して用いてもよい。添加する酵素の量は、特に限定されず酵素の反応性に応じて添加すればよい。例えば、ペクチナーゼを用いた場合であれば、搾汁残渣100gに対して1〜100,000ユニットであることが好ましく、更に10〜10,000ユニットであることが好ましい。
【0017】
上記酵素を添加したのち、攪拌などにより酵素と被抽出物を均一に混合して酵素反応を進行させる。このときの反応温度としては、酵素が失活せず、かつ腐敗の起こりにくい条件、またカロテノイド又はフラボノイド及びその誘導体が喪失しない条件下で行うことが望ましい。具体的には、温度は0℃〜90℃、好ましくは0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜70℃がよい。反応のpHとしては酵素の至適条件下で行うのが望ましいのは言うまでもなく、pH2〜12、好ましくはpH2.5〜8とするのがよい。反応時間は使用する搾汁残渣と酵素の量に依存するが、通常1〜48時間に設定するのが作業上好ましい。反応の際、この反応物を攪拌しながら反応を行ってもよいし、静置反応でもよい。
【0018】
本発明の抗骨粗鬆症組成物は、上記のかんきつ類の果実の搾汁粕及び/又はその酵素処理物にカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体が有効量含有している限り、そのまま本発明の抗骨粗鬆症組成物とすることもできるし、あるいは何らかの加工を行って抗骨粗鬆症組成物としてもよい。加工の具体例としては、反応物を固液分離した残渣、固液分離した残渣を乾燥させたもの、固液分離せず反応物そのままを乾燥させたものなどを用いてもよい。
【0019】
さらに、溶剤や水、超臨界二酸化炭素などを用いて有効成分を抽出した抽出物を抗骨粗鬆症組成物としてもよい。溶剤を用いて抽出する場合には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、エーテル類、ピリジン類、ポリエーテル類などを用いて抽出すればよい。これらの中でも、安全性の観点から、アセトン、エタノール、ヘキサンを用いるのが特に好ましい。
【0020】
有効成分の純度を上げるためには、引き続いて不純物類を取り除く操作をほどこしてもよい。そのための方法としては、例えば水洗浄、有機溶媒洗浄、シリカゲルカラムや樹脂カラム、逆相カラムなどを通す方法、活性炭処理、極性の異なる溶媒による分配、再結晶法、真空蒸留法などが挙げられる。特に、酵素処理反応物を固液分離し、更に水を添加した後、再度固液分離することにより、酵素処理で生成した糖などの反応生成物を容易に除去することができる水洗浄が好ましい方法である。
【0021】
本発明の抗骨粗鬆症組成物における、カロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体の含有量としては、カロテノイドは0.00001質量%〜70質量%、好ましくは0.0001質量%〜50質量%、更に好ましくは0.001質量%〜30質量%含有されていればよく、フラボノイド及び/又はその誘導体は0.01質量%〜90質量%、好ましくは0.1質量%〜70質量%、更に好ましくは1質量%〜30質量%含有されていればよい。カロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体の比率は、1:1〜1:10,000が好ましく、1:2〜1:1,000がより好ましく、1:10〜1:500が最も好ましい。
【0022】
クリプトキサンチンとカロテン含量の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。すなわち、HPLC装置として、島津製作所製LC−10Aを用い、ウォーターズ社製ResolveC18(φ3.9×150mm)カラムを接続し、メタノールを等量加えた試料を導入した。移動相には、メタノール:酢酸エチル=7:3、カラム温度30℃、流速1.0ml/min、検出波長450nmで含有量を分析した。
【0023】
フラボノイド含量の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。すなわち、HPLC装置として、島津製作所製LC−10Aを用い、旭化成工業社製AsahipakODP−50(φ4.6×150mm)カラムを接続し、0.1NNaOHに溶解させた試料を蒸留水で10倍に希釈し導入した。移動相には、水:アセトニトリル=8:2、カラム温度30℃、流速1.5ml/min、検出波長285nmで含有量を分析した。
【0024】
本発明の抗骨粗鬆症組成物においては、カロテノイドやフラボノイド類の成分以外に骨密度を改善する効果のある物質を含有させてもよい。その場合の配合量は、カロテノイド及びフラボノイド類以外の物質の量として、0.01質量%〜90質量%で配合することが好ましい。カロテノイド及びフラボノイド類以外の骨密度を改善する効果のある物質としては、今まで公知の物質を用いることができるが、例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロースなどのオリゴ糖類、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンCなどのビタミン類、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛などのミネラル類、ダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステインなどの大豆イソフラボン、大豆胚軸抽出物、カゼインホスホペプチドなどのペプチド類を単独又はそれらを組み合わせて配合させることが好ましい。
【0025】
本発明の抗骨粗鬆症組成物を経口摂取する方法は、本発明の、抗骨粗鬆症組成物単独でそのまま摂取してもよいし、粉末、錠剤、顆粒、カプセル剤、ゲル、ソフトカプセル剤、ペースト、シロップ、懸濁液、乳化液、ドリンク剤などに加工して摂取してもよい。経口摂取する場合の摂取量の目安は、1日あたりカロテノイドを0.01mg〜50mg、フラボノイド及び/又はその誘導体を0.1mg〜1g、好ましくはカロテノイドを0.1mg〜10mg、フラボノイド及び/又はその誘導体を1mg〜100mg摂取するようにすればよい。
【0026】
本発明の別の発明は、上記した本発明の抗骨粗鬆症組成物を含有する飲食品、飼料および医薬品である。医薬品としては、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、シロップ剤、内服液剤、トローチ剤などの形態で摂取することができる。抗骨粗鬆症組成物の含有量は、0.1質量%〜90質量%の範囲で適時決定すればよいが、上記した1日あたりの摂取量の目安を摂取できるように製剤設計することが好ましい。
【0027】
また、本発明の飲食品とは、一般食品に加えて、特定保健用食品、健康食品、機能性食品などすべての食品および/又は飲料が含まれる。該食品および/又は飲料は特に限定されるものではなく、例えば、上記医薬品的な形態のものに加えて、パン、うどん、そば、ご飯等主食となるもの、チーズ、ウインナー、ソーセージ、ハム、魚介加工品等の食品類、アイスクリーム、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルト、グミ、チョコレート、ビスケットなどの菓子類、清涼飲料水、調味料類、酒類、栄養ドリンク、コーヒー、茶、牛乳、果汁飲料、清涼飲料などの飲料が挙げられる。抗骨粗鬆症組成物の含有量は、0.1質量%〜70質量%の範囲で適時決定すればよいが、上記した1日あたりの摂取量の目安を摂取できるように配合量を決定することが好ましい。
【0028】
飼料としては、本発明の抗骨粗鬆症組成物に、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦などの穀類、ふすま、米ぬかなどのぬか類、コーングルテンミール、コーンジャムミールなどの粕類、脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉などの動物性飼料類、ビール酵母などの酵母類、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム類、ビタミン類、油脂類、アミノ酸類、糖類などを配合することにより製造することができる。飼料の形態としては、ペットフード、家畜飼料、養殖魚用飼料などに用いることができる。抗骨粗鬆症組成物の含有量は、0.01質量%〜20質量%の範囲で適時決定すればよく、1日あたり、体重1kgあたりカロテノイドを0.001mg〜10mg、フラボノイド及び/又はその誘導体を0.01mg〜100mg摂取できるように、飼料原料などに添加することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を記す。例として、温州みかん搾汁残渣の酵素処理物を使用した例(実施例1)とβ−クリプトキサンチン及びα−グルコシルヘスペリジン混合物を使用した例(実施例2)について記す。本発明はこの実施例にその範囲を限定するものではない。なお、本実施例中で示すクリプトキサンチン、カロテン及びフラボノイドの含量は、上述した方法により測定された値である。
【0030】
実施例1
温州みかんから果汁を絞った後の残渣(ミカンジュース粕、水分率約90%)8kgに、食品加工用ペクチナーゼ酵素剤スミチームPX(新日本化学工業株式会社製、ユニット数:ペクチナーゼ5,000u/g、アラバナーゼ90u/g)10gとセルラーゼ、ヘミセルラーゼ酵素剤であるセルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製、ユニット数:セルラーゼ30,000u/g)10gを添加し、よくかき混ぜて室温で8時間静置反応を行った。この反応液を遠心分離し、上清を除去した後、水を添加して撹拌し、再度遠心分離により上清を除去し、ドラムドライヤーを用いて、ドラム温度110℃、1回転/分の回転速度で乾燥した。粉砕機で粉砕した粉末50g中には、β−クリプトキサンチン(フリー体換算)が0.5質量%、β−カロテンが0.05質量%、ヘスペリジンが15質量%含まれていた。この組成物を卵巣摘出ラットに投与し、骨粗鬆症に対する効果を確認した。
【0031】
実施例2
温州みかんから果汁を絞った後の残渣(ミカンジュース粕、水分率約90%)8kgを凍結乾燥し、これにエタノール5Lを加えて、1時間撹拌し、β−クリプトキサンチンを抽出した。ろ過して、エタノール画分を回収し、エバポレーターを用いてエタノールを留去し、温州みかんエキスを得た。このエキス中には、β−クリプトキサンチン(フリー体換算)が5質量%、β−カロテンが0.5質量%含まれていた。この温州みかんエキスを20質量%、α−グルコシルヘスペリジン(酵素処理ヘスペリジン、東洋精糖株式会社製)を30質量%、デキストリン(マルデックス、日本澱粉工業株式会社製)を50質量%配合した粉末を調製した。この組成物を卵巣摘出ラットに投与し、骨粗鬆症に対する効果を確認した。
【0032】
比較例1
温州みかんから果汁を絞った後の残さ(ミカンジュース粕、水分率約90%)8kgを凍結乾燥し、これにエタノール5Lを加えて、1時間撹拌し、β−クリプトキサンチンを抽出した。ろ過して、エタノール画分を回収し、エバポレーターを用いてエタノールを留去し、温州みかんエキスを得た。このエキス中には、β―クリプトキサンチン(フリー体換算)が5質量%、β−カロテンが0.5質量%含まれていた。この温州みかんエキスを20質量%、デキストリン(マルデックス、日本澱粉工業株式会社製)を80質量%配合した粉末を調製した。この組成物を卵巣摘出ラットに投与し、骨粗鬆症に対する効果を確認した。
【0033】
比較例2
α−グルコシルヘスペリジン(酵素処理ヘスペリジン、東洋精糖株式会社製)を30質量%、デキストリンを70質量%配合した粉末を調製した。この組成物を卵巣摘出ラットに投与し、骨粗鬆症に対する効果を確認した。
【0034】
試験例1
12週齢のSD系雌ラットを1群5匹に群分けし、卵巣摘出手術(OVX)を施した後、実施例1,実施例2の抗骨粗鬆症組成物、及び比較例1、比較例2の組成物を水に懸濁し胃ゾンデを用いて、0.01g/kg体重で毎日強制経口投与した。飼料はAIN-93組成を用い、飲料水と共に自由摂取させた。対照群として、偽手術を施し、胃ゾンデで水を強制経口投与したSham群と、卵巣摘出手術を施した後、胃ゾンデで水を強制経口投与したOVX群をコントロールとした。
【0035】
4週間、経口投与を実施した後、屠殺し、大腿骨を取り出し、骨重量、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による骨密度及び骨乾燥重量当りのCa量を測定した。体重増加量は、OVXを施した群は増体量がSham群に比べて有意に多かったが、OVXを施した群間では有意差は認められなかった。骨重量、骨密度及びCa量の測定結果について、それぞれ、図1、図2、図3に示す。
【0036】
上記試験例から、明らかなようにカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする抗骨粗鬆症組成物を、卵巣摘出を施した骨粗鬆症モデルラットに投与することにより、水摂取のみのコントロールに対して有意に骨重量、骨密度、骨塩量が増加することが明らかである。また、これらの効果は、カロテノイド単独又はフラボノイド誘導体単独で投与した場合よりも非常に強く、少量の摂取で骨粗鬆症に対する優れた効果を期待できる組成物である。
【0037】
実施例3(錠剤)
実施例1で製造した酵素処理温州みかん搾汁残渣を用いて、以下の配合割合でよく混合した後、打錠し、錠剤を製造した。(%は、質量%を示す。)
原料 温州みかん搾汁残渣 40%
卵殻カルシウム 5%
結晶セルロース 10%
還元麦芽糖 43%
ショ糖脂肪酸エステル 2%
【0038】
実施例4(ビスケット)
実施例1で製造した酵素処理温州みかん搾汁残渣を用いて、以下の配合割合でよく混合し、練り上げた後、成型、オーブンで焼き上げ、ビスケットを製造した。(%は、質量%を示す。)
原料 温州みかん搾汁残渣 5%
小麦粉 50%
砂糖 20%
液卵 5%
バター 18.5%
炭酸カルシウム 1%
食塩 0.5%
【0039】
実施例5(飼料)
実施例1で製造した酵素処理温州みかん搾汁残渣を用いて、以下の配合割合で混合し、養豚用飼料を製造した。(%は、質量%を示す。)
原料 温州みかん搾汁残渣 2%
トウモロコシ 65%
ダイズ粕 16.5%
フスマ 15.2%
炭酸カルシウム 0.6%
リン酸二石灰 0.05%
塩化ナトリウム 0.3%
ビタミン・ミネラル混合物 0.35%
(ビタミン・ミネラル混合物の1kg中の含量:硝酸チアミン1.5mg、リボフラビン10.5mg、塩酸ピリドキシン0.75mg、ニコチン酸アミド9mg、D−パントテン酸カルシウム16.4mg、塩酸コリン86.4mg、ビタミンA10,000IU、ビタミンD32,000IU、酢酸トコフェロール10mg、Mn50mg、Fe50mg、Cu10mg、Zn50mg、I1mg)
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】卵巣摘出手術を施したラットに、実施例1及び2並びに比較例1及び2の組成物を4週間強制投与したもの及びSham群、OVX群における大腿骨の骨重量を示す図である。
【図2】卵巣摘出手術を施したラットに、実施例1及び2並びに比較例1及び2の組成物を4週間強制投与したもの及びSham群、OVX群における大腿骨の骨密度を示す図である。
【図3】卵巣摘出手術を施したラットに、実施例1及び2並びに比較例1及び2の組成物を4週間強制投与したもの及びSham群、OVX群における大腿骨のCa量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてカロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする抗骨粗鬆症組成物。
【請求項2】
カロテノイドが、クリプトキサンチン又はその脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の抗骨粗鬆症組成物。
【請求項3】
フラボノイド及び/又はその誘導体が、ヘスペリジン、その誘導体及びヘスペレチンからなる群から選ばれた1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項1記載の抗骨粗鬆症組成物。
【請求項4】
カロテノイドと、フラボノイド及び/又はその誘導体が、かんきつ類の果実の搾汁粕及び/又はその酵素処理物に由来するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗骨粗鬆症組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗骨粗鬆症組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗骨粗鬆症組成物を含有することを特徴とする医薬品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗骨粗鬆症組成物を含有することを特徴とする飼料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−104090(P2006−104090A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290533(P2004−290533)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】