抗IGF−I受容体抗体
インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し、そして該受容体を阻害し、IGF−I、IGF−IIおよび血清が腫瘍細胞の増殖および生存に与える影響に拮抗し、そしてアゴニスト活性を実質的に欠いている、抗体、ヒト化抗体、表面再構成(resurfaced)抗体、抗体断片、誘導体化抗体、および該抗体と細胞傷害性剤のコンジュゲート。抗体およびその断片を、場合によって他の療法剤と組み合わせて、IGF−I受容体発現レベルが上昇した腫瘍、例えば乳癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌腫、滑膜肉腫、前立腺癌および膵臓癌の治療に用いることも可能であるし、そして誘導体化抗体を、IGF−I受容体発現レベルが上昇した腫瘍の診断および画像化に用いることも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本出願は、本明細書にその全体が援用される、親出願第10/170,390号、2002年6月14日出願の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
[02]本発明は、ヒト・インスリン様増殖因子I受容体(IGF−I受容体)に結合する抗体に関する。より詳細には、本発明は、IGF−I受容体の細胞機能を阻害する、抗IGF−I受容体抗体に関する。さらにより詳細には、本発明は、腫瘍細胞の増殖および生存に対するIGF−I、IGF−IIおよび血清の効果に拮抗し、そしてアゴニスト活性を実質的に欠いている、抗IGF−I受容体抗体に関する。本発明はまた、前記抗体の断片、前記抗体のヒト化バージョンおよび表面再構成(resurfaced)バージョン、前記抗体のコンジュゲート、抗体誘導体、並びに診断適用、研究適用および療法適用におけるこれらの使用にも関する。本発明はさらに、上述の抗体およびその断片から作成される、改善された抗体またはその断片に関する。別の側面において、本発明は、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに、そして該ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[03]インスリン様増殖因子I受容体(IGF−I受容体)は、膜貫通ヘテロ四量体タンパク質であり、2つの細胞外アルファ鎖および2つの膜貫通ベータ鎖を有し、これらの鎖がジスルフィド連結されてβ−α−α−β立体配置を形成している。IGF−I受容体の細胞外ドメインに、リガンドであるインスリン様増殖因子I(IGF−I)およびインスリン様増殖因子II(IGF−II)が結合すると、細胞内チロシンキナーゼ・ドメインが活性化され、受容体の自己リン酸化および基質リン酸化が生じる。IGF−I受容体は、インスリン受容体に相同であり、ベータ鎖チロシンキナーゼ・ドメインにおいて、84%の高い配列類似性を有し、そしてアルファ鎖細胞外システインリッチ・ドメインにおいて、48%の低い配列類似性を有する(Ulrich, A.ら, 1986, EMBO, 5, 2503−2512;Fujita−Yamaguchi, Y.ら, 1986, J. Biol. Chem., 261, 16727−16731;LeRoith, D.ら, 1995, Endocrine Reviews, 16, 143−163)。IGF−I受容体およびそのリガンド(IGF−IおよびIGF−II)は、胚形成の間の増殖および発生、成体における代謝、細胞増殖および細胞分化を含む、多くの生理学的プロセスにおいて、重要な役割を果たす(LeRoith, D., 2000, Endocrinology, 141, 1287−1288;LeRoith, D., 1997, New England J. Med., 336, 633−640)。
【0004】
[04]IGF−IおよびIGF−IIは、血液中では、主にIGF結合性タンパク質との複合体中に存在して、どちらも内分泌ホルモンとして機能し、そして局所的に産生されるパラ分泌および自己分泌増殖因子として機能する(Humbel, R.E., 1990, Eur. J. Biochem., 190, 445−462;Cohick, W.S.およびClemmons, D.R., 1993, Annu. Rev. Physiol. 55, 131−153)。
【0005】
[05]IGF−I受容体は、腫瘍細胞の増殖、トランスフォーメーションおよび生存の促進に関連付けられてきている(Baserga, R.ら, 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332, F105−F126;Blakesley, V.A.ら, 1997, Journal of Endocrinology, 152, 339−344;Kaleko, M., Rutter, W.J.,およびMiller, A.D. 1990, Mol. Cell. Biol., 10, 464−473)。したがって、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、滑膜肉腫および膵臓癌を含む、いくつかの種類の腫瘍は、通常より高いレベルのIGF−I受容体を発現することが知られる(Khandwala, H.M.ら, 2000, Endocrine Reviews, 21, 215−244;Werner, H.およびLeRoith, D., 1996, Adv. Cancer Res., 68, 183−223;Happerfield, L.C.ら, 1997, J. Pathol., 183, 412−417;Frier, S.ら, 1999, Gut, 44, 704−708;van Dam, P.A.ら, 1994, J. Clin. Pathol., 47, 914−919;Xie, Y.ら, 1999, Cancer Res., 59, 3588−3591;Bergmann, U.ら, 1995, Cancer Res., 55, 2007−2011)。IGF−IおよびIGF−IIは、in vitroで、肺癌、乳癌、結腸癌、骨肉腫および子宮頸癌などのいくつかのヒト腫瘍細胞株の強力なマイトジェンであることが示されてきている(Ankrapp, D.P.およびBevan, D.R., 1993, Cancer Res., 53, 3399−3404;Cullen, K.J., 1990, Cancer Res., 50, 48−53;Hermanto, U.ら, 2000, Cell Growth & Differentiation, 11, 655−664;Guo, Y.S.ら, 1995, J. Am. Coll. Surg., 181, 145−154;Kappel, C.C.ら, 1994, Cancer Res., 54, 2803−2807;Steller, M.A.ら, 1996, Cancer Res., 56, 1761−1765)。これらの腫瘍および腫瘍細胞株のいくつかはまた、高レベルのIGF−IまたはIGF−IIも発現し、これらが自己分泌方式またはパラ分泌方式で増殖を刺激することも可能である(Quinn, K.A.ら, 1996, J. Biol. Chem., 271, 11477−11483)。
【0006】
[06]疫学的研究によって、IGF−I血漿レベルの上昇(およびIGF結合性タンパク質−3の低レベル)と、前立腺癌、結腸癌、肺癌および乳癌のリスクの増加に相関関係があることが示されてきている(Chan, J.M.ら, 1998, Science, 279, 563−566;Wolk, A.ら, 1998, J. Natl. Cancer Inst., 90, 911−915;Ma, J.ら, 1999, J. Natl. Cancer Inst., 91, 620−625;Yu, H.ら, 1999, J. Natl. Cancer Inst., 91, 151−156;Hankinson, S.E.ら, 1998, Lancet, 351, 1393−1396)。癌予防のため、血漿中のIGF−Iレベルを低下させるか、またはIGF−I受容体の機能を阻害するための戦略が示唆されてきている(Wu, Y.ら, 2002, Cancer Res., 62, 1030−1035;Grimberg, AおよびCohen P., 2000, J. Cell. Physiol., 183, 1−9)。
【0007】
[07]IGF−I受容体は、増殖因子枯渇、足場非依存性(anchorage independence)または細胞傷害性薬剤処置によって引き起こされるアポトーシスから腫瘍細胞を保護する(Navarro, M.およびBaserga, R., 2001, Endocrinology, 142, 1073−1081;Baserga, R.ら, 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332, F105−F126)。IGF−I受容体の分裂促進活性、トランスフォーミング活性および抗アポトーシス活性に決定的なドメインは、突然変異分析によって同定されてきている。
【0008】
[08]例えば、IGF−I受容体のチロシン1251残基は、抗アポトーシス活性およびトランスフォーメーション活性に決定的であるが、分裂促進活性には決定的でないと同定されてきている(O’Connor, R.ら, 1997, Mol. Cell. Biol., 17, 427−435;Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。リガンドが活性化するIGF−I受容体の細胞内シグナル伝達経路は、インスリン受容体基質(IRS−1およびIRS−2)のチロシン残基のリン酸化を伴い、これによって、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI−3−キナーゼ)が膜に補充される。PI−3−キナーゼの、膜に結合したリン脂質産物が、セリン/スレオニンキナーゼであるAktを活性化し、Aktの基質には、アポトーシス促進性タンパク質BADが含まれ、BADは、リン酸化されると不活性状態になる(Datta, S.R., Brunet, A.およびGreenberg, M.E., 1999, Genes & Development, 13, 2905−2927;Kulik, G., Klippel, A.およびWeber, M.J., 1997, Mol. Cell. Biol. 17, 1595−1606)。MCF−7ヒト乳癌細胞におけるIGF−I受容体の分裂促進性シグナル伝達は、PI−3−キナーゼを必要とし、そしてマイトジェンが活性化するプロテインキナーゼには非依存性である一方、分化したラット褐色細胞腫PC12細胞における生存性シグナル伝達は、PI−3−キナーゼ経路、およびマイトジェンが活性化するプロテインキナーゼ経路の両方を必要とする(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171;Parrizas, M., Saltiel, A.R.およびLeRoith, D., 1997, J. Biol. Chem., 272, 154−161)。
【0009】
[09]アンチセンス戦略によってIGF−I受容体レベルを下方制御すると、黒色腫、肺癌腫、卵巣癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫および横紋筋肉腫などのいくつかの腫瘍細胞株の腫瘍形成性が、in vivoおよびin vitroで、減少することが示されてきている(Resnicoff, M.ら, 1994, Cancer Res., 54, 4848−4850;Lee, C.−T.ら, 1996, Cancer Res., 56, 3038−3041;Muller, M.ら, 1998, Int. J. Cancer, 77, 567−571;Trojan, J.ら, 1993, Science, 259, 94−97;Liu, X.ら, 1998, Cancer Res., 58, 5432−5438;Shapiro, D.N.ら, 1994, J. Clin. Invest., 94, 1235−1242)。同様に、IGF−I受容体の優性ネガティブ突然変異体は、IGF−I受容体を過剰発現しているトランスフォーメーションされたRat−1細胞のin vivo腫瘍形成性およびin vitro増殖を減少させることが報告されてきている(Prager, D.ら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 2181−2185)。
【0010】
[10]IGF−I受容体mRNAに対するアンチセンスを発現する腫瘍細胞を、生体拡散(biodiffusion)チャンバー中、動物に注射すると、大規模なアポトーシスが起こる。IGF−I受容体の阻害によるアポトーシスに対して、腫瘍細胞は、正常細胞より感受性であるという仮説に基づいて、この観察から、IGF−I受容体は魅力的な療法ターゲットとなる。(Resnicoff, M.ら, 1995, Cancer Res., 55, 2463−2469;Baserga, R., 1995, Cancer Res., 55,249−252)。
【0011】
[11]腫瘍細胞においてIGF−I受容体の機能を阻害する別の戦略は、IGF−I受容体の細胞外ドメインに結合し、そしてその活性化を阻害する、抗IGF−I受容体抗体を使用している。IGF−I受容体に対するマウス・モノクローナル抗体を作成する、いくつかの試みが報告されてきており、このうち、2つの阻害性抗体、IR3および1H7が入手可能であり、そしていくつかのIGF−I受容体研究において、これらの使用が報告されてきている。
【0012】
[12]IR3抗体は、マウスを免疫するために、インスリン受容体の部分的に精製された胎盤調製物を用いて作成されてきており、これによって、インスリン受容体結合に関して選択的な抗体IR1と、そしてIGF−I受容体(ソマトメジン−C受容体)の優先的な免疫沈降を示すが、またインスリン受容体の弱い免疫沈降も示す、2つの抗体、IR2およびIR3が得られた(Kull, F.C.ら, 1983, J. Biol. Chem., 258, 6561−6566)。
【0013】
[13]1H7抗体は、IGF−I受容体の精製された胎盤調製物でマウスを免疫することによって作成されてきており、これによって、阻害性抗体1H7に加えて、3つの刺激性抗体が得られた(Li, S.−L.ら, 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun., 196, 92−98;Xiong, L.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5356−5360)。
【0014】
[14]別の報告において、高レベルのIGF−I受容体を発現するトランスフェクションされた3T3細胞でマウスを免疫することによって、ヒトIGF−I受容体に特異的なマウス・モノクローナル抗体集団が得られており、これらの抗体は、結合競合研究によって、そしてトランスフェクションされた3T3細胞に対するIGF−I結合の阻害または刺激によって、7つのグループに分類された(Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。
【0015】
[15]上述のように、IR3抗体は、in vitroのIGF−I受容体研究で最も一般的に用いられる阻害性抗体であるが、ヒトIGF−I受容体を発現するトランスフェクションされた3T3細胞およびCHO細胞において、アゴニスト性活性を示すという欠点がある(Kato, H.ら, 1993, J. Biol. Chem., 268, 2655−2661;Steele−Perkins, G.およびRoth, R.A., 1990, Biochem. Biophys. Res. Commun., 171, 1244−1251)。同様に、Soosらに作成された抗体集団の中で、最も阻害性の抗体、24−57および24−60もまた、トランスフェクションされた3T3細胞において、アゴニスト性活性を示した(Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。IR3抗体は、損なわれていない(intact)細胞において、そして可溶化後に、発現された受容体へのIGF−Iの結合を阻害する(がIGF−IIの結合は阻害しない)ことが報告されているが、in vitroの細胞において、IGF−IおよびIGF−IIがDNA合成を刺激する能力の両方を阻害することが示されている(Steele−Perkins, G.およびRoth, R.A., 1990, Biochem. Biophys. Res. Commun., 171, 1244−1251)。キメラ・インスリン−IGF−I受容体構築物によって、IR3抗体の結合性エピトープがIGF−I受容体の223〜274の領域であると推測されている(Gustafson, T.A.およびRutter, W.J., 1990, J. Biol. Chem., 265, 18663−18667;Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。
【0016】
[16]MCF−7ヒト乳癌細胞株は、典型的には、in vitroでのIGF−IおよびIGF−IIの増殖反応を示すモデル細胞株として用いられる(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171)。MCF−7細胞において、IR3抗体は、血清不含条件において、外因性に添加されたIGF−IおよびIGF−IIの刺激性効果を、およそ80%、不完全に遮断する。また、IR3抗体は、10%血清中、MCF−7細胞の増殖を有意には阻害しない(25%未満)(Cullen, K.J.ら, 1990, Cancer Res., 50, 48−53)。in vitroで血清が刺激するMCF−7細胞の増殖が、IR3抗体によって弱くしか阻害されないのは、ヌードマウスにおいて、IR3抗体で処理しても、MCF−7異種移植片の増殖が、有意には阻害されないというin vivo研究の結果と関連がある可能性もある(Arteaga, C.L.ら, 1989, J. Clin. Invest., 84, 1418−1423)。
【0017】
[17]IR3および他の報告される抗体が、弱いアゴニスト性活性を持ち、そして(血清不含条件において外因性に添加されたIGF−IまたはIGF−IIによる刺激でなく)血清が刺激する、より生理学的な条件において、MCF−7細胞などの腫瘍細胞の増殖を有意に阻害することが不能であるため、血清が刺激する腫瘍細胞の増殖を有意に阻害するが、それ自体では有意なアゴニスト性活性を示さない、新規抗IGF−I受容体抗体に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
[18]したがって、本発明の目的は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し、そして該受容体と拮抗することによって、該受容体の細胞活性を阻害し、そしてまた、該受容体に対するアゴニスト活性を実質的に欠いている、抗体、抗体断片および抗体誘導体を提供することである。
【0019】
[19]したがって、第一の態様において、軽鎖および重鎖両方の可変領域のアミノ酸配列、軽鎖および重鎖の可変領域の遺伝子のcDNA配列、そのCDR(相補性決定領域)の同定、その表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段に関して、本明細書において完全に性質決定されている、ネズミ抗体EM164を提供する。
【0020】
[20]第二の態様において、抗体EM164の表面再構成(resurfaced)バージョンまたはヒト化バージョンであって、抗体の表面曝露残基またはその断片が、既知のヒト抗体表面により緊密に似るように、軽鎖および重鎖の両方で置換されている、前記バージョンを提供する。こうしたヒト化抗体は、ネズミEM164に比較して、療法剤または診断剤として、増加した有用性を有しうる。抗体EM164のヒト化バージョンはまた、軽鎖および重鎖両方の可変領域のそれぞれのアミノ酸配列、軽鎖および重鎖の可変領域の遺伝子のDNA配列、CDRの同定、これらの表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段の開示に関して、本明細書に完全に性質決定される。
【0021】
[21]第三の態様において、例えば血清、インスリン様増殖因子Iおよびインスリン様増殖因子IIなどの増殖刺激剤の存在下で、約80%より多く、癌細胞の増殖を阻害することが可能な抗体を提供する。
【0022】
[22]第四の態様において、それぞれ配列番号1〜3:
【0023】
【化1】
【0024】
に示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む重鎖;
および配列番号4〜6:
【0025】
【化2】
【0026】
に示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖を有する、抗体または抗体断片を提供する。
[23]第五の態様において、配列番号7:
【0027】
【化3】
【0028】
に示されるアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する重鎖を有する抗体を提供する。
[24]同様に、配列番号8:
【0029】
【化4】
【0030】
に示されるアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する軽鎖を有する抗体を提供する。
[25]第六の態様において、配列番号9〜12:
【0031】
【化5】
【0032】
の1つに対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構成軽鎖可変領域を有する抗体を提供する。
[26]同様に、配列番号13:
【0033】
【化6】
【0034】
に対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構成重鎖可変領域を有する抗体を提供する。
[27]第七の態様において、改善された特性を有する、本発明の抗体または抗体断片を提供する。例えば、本発明の抗体または断片の親和性成熟によって、IGF−I受容体に対して改善された親和性を有する抗体または抗体断片が調製される。
【0035】
[28]本発明はさらに、前記抗体のコンジュゲートであって、本発明の抗体または抗体のエピトープ結合性断片に、直接、あるいは切断可能リンカーまたは切断不能リンカーを介して、細胞傷害性剤が共有結合している、前記コンジュゲートを提供する。好ましい態様において、細胞傷害性剤は、タキソール、メイタンシノイド、CC−1065またはCC−1065類似体である。
【0036】
[29]本発明はさらに、研究適用または診断適用における使用のため、さらに標識された抗体またはその断片を提供する。好ましい態様において、標識は放射標識、蛍光団(fluorophore)、発色団、画像化剤または金属イオンである。
【0037】
[30]診断法であって、癌を有すると推測される被験者に、前記標識抗体または断片を投与して、そして被験者体内の標識分布を測定するかまたは監視する、前記方法もまた、提供する。
【0038】
[31]第八の態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートを、単独で、あるいは他の細胞傷害性剤または療法剤と組み合わせて投与することによって、癌を有する被験者を治療する方法を提供する。癌は、例えば乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、またはIGF−I受容体レベルが上昇していることがこれから決定されるであろう他の癌の1以上であることも可能である。
【0039】
[32]第九の態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートを、単独で、あるいは他の細胞傷害性剤または療法剤と組み合わせて投与することによって、癌を有する被験者を治療する方法を提供する。特に、好ましい細胞傷害性剤および療法剤には、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンが含まれる。より好ましくは、療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0040】
[33]癌は、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫、またはIGF−I受容体レベルが上昇していることがこれから決定されるであろう他の癌の1以上であることも可能である。
【0041】
[34]第十の態様において、本発明は、本明細書記載の1以上の要素、およびこれらの要素を使用するための使用説明書を含むキットを提供する。好ましい態様において、本発明のキットには、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤が含まれる。この好ましい態様のための使用説明書には、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌細胞の増殖を阻害するための使用説明書、並びに/あるいは本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌を有する患者を治療する方法のための使用説明書が含まれる。
【0042】
発明の詳細な説明
[62]本発明の発明者らは、細胞表面上のヒト・インスリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)に特異的に結合する新規抗体を発見しそして改善した。該抗体および断片は、受容体自体を活性化する能力を伴わずに、受容体の細胞機能を阻害するユニークな能力を有する。したがって、IGF−IRに特異的に結合し、そして阻害することが以前から知られていた抗体はまた、IGF−IRリガンドの非存在下であっても、受容体を活性化するのに対して、本発明の抗体または断片は、IGF−IRに拮抗するが、アゴニスト活性を実質的に欠いている。さらに、本発明の抗体および抗体断片は、血清の存在下で、80%を超えて、MCF−7細胞などのヒト腫瘍細胞の増殖を阻害し、これは以前から知られていた抗IGF−IR抗体を用いて得られる阻害より高い度合いである。
【0043】
[63]本発明は、ネズミ抗IGF−IR抗体、本明細書のEM164から出発し、該抗体は、軽鎖および重鎖両方のアミノ酸配列、CDRの同定、表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段に関して、完全に性質決定されている。
【0044】
[64]図15に、EM164の配列と並列させて、生殖系列配列を示す。比較によって、軽鎖のCDR1中および重鎖のCDR2中の各1つを含めて、EM164中のありうる体細胞突然変異が同定される。
【0045】
[65]抗体EM164軽鎖および重鎖、並びにヒト化バージョンの、一次アミノ酸配列およびDNA配列を本明細書に開示する。しかし、本発明の範囲は、これらの配列を含む抗体および断片に限定されない。その代わり、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し、そして該受容体の生物学的活性に拮抗するが、アゴニスト活性を実質的に欠いている、すべての抗体および断片が、本発明の範囲内に属する。したがって、抗体および抗体断片は、抗体EM164またはヒト化誘導体と、骨格のアミノ酸配列、CDR、軽鎖および重鎖が異なってもよく、そしてそれでも本発明の範囲内に属することもありうる。
【0046】
[66]モデリングによって、抗体EM164のCDRが同定され、そしてその分子構造が予測されてきている。この場合もやはり、CDRはエピトープ認識に重要であるが、本発明の抗体および断片に必須ではない。したがって、例えば本発明の抗体の親和性成熟によって産生された、改善された特性を有する抗体および断片を提供する。
【0047】
[67]多様な抗体および抗体断片、並びに抗体模倣体は、特定のCDRセットに隣接する可変領域配列および定常領域配列内の突然変異、欠失および/または挿入によって、容易に産生可能である。したがって、例えば、既定のCDRセットに関して、異なる重鎖で置換することによって、異なるクラスのAbを作成することも可能であり、したがって、例えば、IgG1〜4、IgM、IgA1〜2、IgD、IgE抗体タイプおよびアイソタイプを産生することも可能である。同様に、完全に合成されたフレームワーク内に、既定のCDRセットを包埋することによって、本発明の範囲内の人工的抗体を産生することも可能である。用語「可変」は、本明細書において、抗体間で配列が異なり、そして抗原に対する特定の抗体各々の結合および特異性に際して用いられる、可変ドメインの特定の部分を指すのに用いられる。しかし、可変性は、通常、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布するのではない。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより保存される部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのフレームワーク領域を含み、主として、3つのCDRに連結されたベータ・シート立体配置を採用し、CDRは、ベータ・シート構造を連結し、そしてある場合にはベータ・シート構造の一部を形成する、ループを形作る。各鎖のCDRは、FR領域によって非常に近接して一緒に保持され、そして他方の鎖由来のCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(E.A. Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 1991, NIH)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合には、直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を示す。
【0048】
[68]表面再構成およびCDR移植などのいくつかの技術を用いて、ヒト化抗体、または他の哺乳動物による非拒絶のために適応させた抗体を、産生することも可能である。表面再構成技術においては、分子モデリング、統計解析および突然変異誘発を組み合わせて、ターゲット宿主の既知の抗体の表面に似るように、可変領域の非CDR表面を調節する。抗体表面を再構成する戦略および方法、並びに異なる宿主内で抗体の免疫原性を減少させる他の方法は、本明細書にその全体が援用される、米国特許5,639,641に開示される。CDR移植技術においては、ネズミ重鎖および軽鎖のCDRを、完全にヒトであるフレームワーク配列内に移植する。
【0049】
[69]本発明にはまた、本明細書中に記載される抗体の機能上の同等物も含まれる。機能上の同等物は、抗体のものに匹敵する結合特性を有し、そして例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体および一本鎖抗体、並びにそれらの断片を含む。こうした機能上の同等物を産生する方法が、PCT出願WO 93/21319、欧州特許出願第239,400号;PCT出願WO 89/09622;欧州特許出願338,745;および欧州特許出願EP 332,424に開示され、これら出願は、それぞれ全体が本明細書に援用される。
【0050】
[70]機能上の同等物には、本発明の抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を持つポリペプチドが含まれる。「実質的に同じ」は、アミノ酸配列に適用された場合、本明細書において、PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444−2448(1988)にしたがって、FASTA検索法によって決定されるように、別のアミノ酸配列と、少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を持つ配列と定義される。
【0051】
[71]キメラ抗体は、好ましくは、ヒトの抗体定常領域から実質的にまたは独占的に得られた定常領域、およびヒト以外の哺乳動物の可変領域配列から実質的にまたは独占的に得られた可変領域を有する。抗体のヒト化型は、例えばマウス抗体の、相補性決定領域をヒトのフレームワークドメイン内に置換することによって作成され、例えばPCT公報第WO92/22653号を参照されたい。ヒト化抗体は、好ましくは、対応するヒト抗体領域に実質的にまたは独占的に由来する、定常領域、および相補性決定領域(CDR)以外の可変領域、並びにヒト以外の哺乳動物に実質的にまたは独占的に由来するCDRを有する。
【0052】
[72]機能上の同等物には、一本鎖抗体(scFv)としても知られる、一本鎖抗体断片もまた含まれる。これらの断片は、1以上の相互連結リンカーを伴いまたは伴わずに、抗体可変軽鎖配列(VL)の少なくとも1つの断片に係留された(tethered)、抗体可変重鎖アミノ酸配列(VH)の少なくとも1つの断片を含有する。こうしたリンカーは、ひとたび(VL)ドメインおよび(VH)ドメインが連結されたならば、一本鎖抗体断片が由来する全抗体のターゲット分子結合特異性が維持されるように、これらのドメインが適切に三次元フォールディングされることを確実にするよう選択された、短い柔軟なペプチドであることも可能である。一般的に、(VL)配列または(VH)配列のカルボキシル末端は、こうしたペプチド・リンカーによって、相補(VL)配列および(VH)配列のアミノ末端に、共有結合されていることも可能である。分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリーまたは類似の技術によって、一本鎖抗体断片を生成することも可能である。真核細胞、または細菌を含む原核細胞いずれかにおいて、これらのタンパク質を産生することも可能である。
【0053】
[73]一本鎖抗体断片は、本明細書記載の全抗体の可変領域または相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つを有するアミノ酸配列を含有するが、これらの抗体の定常ドメインのある程度またはすべてを欠く。これらの定常ドメインは、抗原結合に必要ではないが、全抗体構造の主要部分を構成する。一本鎖抗体断片は、したがって、定常ドメインの一部またはすべてを含有する抗体の使用に関連する不具合のある程度を克服することも可能である。例えば、一本鎖抗体断片は、生物学的分子および重鎖定常領域間の望ましくない相互作用、または他の望ましくない生物学的活性を持たない傾向がある。さらに、一本鎖抗体断片は、全抗体よりかなり小さく、そしてしたがって、全抗体より毛細血管透過性が高いことから、より効率的に局在し、そしてターゲット抗原結合部位に結合することが可能になる。また、抗体断片は、原核細胞において、比較的大規模に産生可能であり、したがって産生が容易である。さらに、一本鎖抗体断片は比較的サイズが小さいことから、全抗体よりも、レシピエントにおいて免疫応答を誘発する可能性が低くなる。
【0054】
[74]機能上の同等物には、さらに、全抗体のものと同じかまたは匹敵する結合特性を有する抗体の断片が含まれる。こうした断片は、Fab断片またはF(ab’)2断片の一方または両方を含有することも可能である。好ましくは、抗体断片は、全抗体の6つの相補性決定領域すべてを含有するが、3つ、4つまたは5つのCDRなど、こうした領域すべてより少ない領域を含有する断片もまた、機能性である。さらに、機能上の同等物は、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそのサブクラスのいずれか1つのメンバーであることも可能であるし、また機能上の同等物をこれらのクラスおよびサブクラスと組み合わせることも可能である。
【0055】
[75]本明細書記載の抗IGF−I受容体抗体EM164およびそのヒト化変異体のアミノ酸配列および核酸配列の知識を用いて、ヒトIGF−I受容体にやはり結合し、そしてIGF−I受容体の細胞機能を阻害する、他の抗体を作成することも可能である。いくつかの研究によって、最初の抗体配列の知識に基づいて、抗体配列中の多様な位置で、1以上のアミノ酸変化を導入した際の、結合および発現レベルなどの特性に対する影響が調査されてきている(Yang, W.P.ら, 1995, J. Mol. Biol., 254, 392−403;Rader, C.ら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 8910−8915;Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539)。
【0056】
[76]これらの研究において、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、エラープローン(error-prone)PCR、DNAシャッフリング、または大腸菌(E. coli)のミューテーター株などの方法を用い、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワーク領域において、重鎖および軽鎖の遺伝子配列を変化させることによって、最初の抗体の変異体が生成された(Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539;Adey, N.B.ら, 1996, 第16章, pp.277−291, “Phage Display of Peptides and Proteins”中, Kay, B.K.ら監修, Academic Press)。最初の抗体の配列を変化させるこれらの方法によって、親和性が改善された第二の抗体が生じている(Gram, H.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3576−3580;Boder, E.T.ら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 10701−10705;Davies, J.およびRiechmann, L., 1996, Immunotechnolgy, 2, 169−179;Thompson, J.ら, 1996, J. Mol. Biol., 256, 77−88;Short, M.K.ら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 16365−16370;Furukawa, K.ら, 2001, J. Biol. Chem., 276, 27622−27628)。
【0057】
[77]抗体の1以上のアミノ酸残基を変化させる類似の指定戦略(directed strategy)によって、本発明記載の抗体配列を用いて、機能が改善された抗IGF−I受容体抗体を作成することも可能である。
【0058】
[78]本発明のコンジュゲートは、細胞傷害性剤に連結された、本明細書に開示する抗体、断片、およびその類似体を含む。好ましい細胞傷害性剤は、メイタンシノイド、タキサンおよびCC−1065類似体である。in vitro法によってコンジュゲートを調製することも可能である。細胞傷害性剤を抗体に連結するため、連結基を用いる。適切な連結基が当該技術分野に周知であり、そしてこれには、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、感光基、ペプチダーゼ不安定性基およびエステラーゼ不安定性基が含まれる。好ましい連結基は、ジスルフィド基およびチオエーテル基である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、または抗体および細胞傷害性剤の間にチオエーテル結合を形成することによって、コンジュゲートを構築することも可能である。
【0059】
[79]好ましい細胞傷害性剤の中に、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体がある。適切なメイタンシノイドの例には、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体が含まれる。適切なメイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;第4,256,746号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,362,663号;第4,364,866号;第4,450,254号;第4,322,348号;第4,371,533号;第6,333,410号;第5,475,092号;第5,585,499号および第5,846,545号に開示される。
【0060】
[80]タキサンもまた、好ましい細胞傷害性剤である。本発明での使用に適したタキサンが、米国特許第6,372,738号および第6,340,701号に開示される。
[81]CC−1065およびその類似体もまた、本発明での使用に好ましい細胞傷害性薬剤である。CC−1065およびその類似体は、米国特許第6,372,738号;第6,340,701号;第5,846,545号および第5,585,499号に開示される。
【0061】
[82]こうした細胞傷害性コンジュゲートの調製のための魅力的な候補はCC−1065であり、これはストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された、強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、ドキソルビシン、メトトレキセートおよびビンクリスチンなどの一般的に用いられる抗癌薬剤より、in vitroで約1000倍強力である(B.K. Bhuyanら, Cancer Res., 42, 3532−3537(1982))。
【0062】
[83]メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、およびカリケアマイシンなどの細胞傷害性薬剤もまた、本発明のコンジュゲートの調製に適しており、そして薬剤分子を、血清アルブミンなどの中間キャリアー分子を通じて、抗体分子に連結することもまた可能である。
【0063】
[84]診断適用のため、本発明の抗体は、典型的には、検出可能部分で標識されるであろう。検出可能部分は、直接または間接的いずれかで検出可能シグナルを生じることが可能ないかなるものであることも可能である。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S、または131Iなどの放射性同位体;フルオレセイン・イソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリンなどの蛍光化合物または化学発光化合物;あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼなどの酵素であることも可能である。
【0064】
[85]検出可能部分に抗体をコンジュゲート化するため、当該技術分野に知られるいかなる方法を使用することも可能であり、こうした方法には、Hunterら, Nature 144:945(1962);Davidら, Biochemistry 13:1014(1974);Painら, J. Immunol. Meth. 40:219(1981);およびNygren, J. Histochem. and Cytochem. 30:407(1982)が含まれる。
【0065】
[86]競合結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなどの、いかなる既知のアッセイ法で、本発明の抗体を使用することも可能である(Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, pp.147−158(CRC Press, Inc., 1987))。
【0066】
[87]本発明の抗体はまた、in vivo画像化にも有用であり、この場合、放射線不透過(radio−opaque)剤または放射性同位体などの検出可能部分で標識した抗体を被験者に、好ましくは血流中に投与し、そして宿主中の標識抗体の存在および位置をアッセイする。この画像化技術は、悪性腫瘍の病期決定および治療に有用である。核磁気共鳴、放射線学、または当該技術分野に知られる他の検出手段のいずれによるものであれ、宿主において検出可能である、いかなる部分で抗体を標識することも可能である。
【0067】
[88]本発明の抗体はまた、アフィニティー精製剤としても有用である。このプロセスでは、当該技術分野に周知の方法を用いて、Sephadex樹脂またはろ紙などの適切な支持体上に抗体を固定する。
【0068】
[89]本発明の抗体はまた、細胞におけるIGF−I受容体の機能を阻害することに基づいて、生物学的研究における試薬としても有用である。
[90]療法適用のため、薬学的に許容しうる投薬型で、本発明の抗体またはコンジュゲートを被験者に投与する。これらは、ボーラスとして、またはある期間に渡る連続注入によって静脈内に、筋肉内経路、皮下経路、関節内経路、滑膜内経路、クモ膜下腔内経路、経口経路、局所経路、または吸入経路によって、投与可能である。また、腫瘍内経路、腫瘍周辺経路、病巣内経路、または病巣周辺経路によって抗体を投与して、局所、並びに全身性の療法効果を発揮することも可能である。適切な薬学的に許容しうるキャリアー、希釈剤、および賦形剤が周知であり、そして臨床状況を保証するものとして、当業者によって決定可能である。適切なキャリアー、希釈剤および/または賦形剤の例には:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが含まれる。本発明の方法をin vitro、in vivo、またはex vivoで実施することも可能である。
【0069】
[91]他の療法処置において、1以上のさらなる療法剤と、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートを同時投与するか、または連続投与することも可能である。適切な療法剤には、限定されるわけではないが、細胞傷害性剤または細胞分裂停止剤が含まれる。タキソールは、細胞傷害性剤でもあり、好ましい療法剤である。
【0070】
[92]癌療法剤は、宿主への損傷を最小限にしつつ、癌細胞を殺すかまたはその増殖を制限することを模索する剤である。したがって、こうした剤は、癌細胞特性における、健康な宿主細胞とのいかなる相違(例えば代謝、血管形成または細胞表面抗原提示)を利用することも可能である。腫瘍形態形成における相違が、介入の潜在的な箇所である:例えば、第二の療法剤は、固形腫瘍内部の血管形成を遅延させ、それによってその増殖速度を遅らせる際に有用な、抗VEGF抗体などの抗体であることも可能である。他の療法剤には、限定されるわけではないが、グラニセトロンHClなどの補助剤(adjuncts)、酢酸ロイプロリドなどのアンドロゲン阻害剤、ドキソルビシンなどの抗生物質、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤、インターフェロン・アルファ−2aなどの代謝拮抗剤、タキソールなどの細胞傷害性剤、rasファルネシル・トランスフェラーゼ阻害剤などの酵素阻害剤、アルデスロイキンなどの免疫調節剤、およびメルファランHClなどのナイトロジェンマスタード誘導体等が含まれる。
【0071】
[93]抗癌効力を改善するために、EM164と組み合わせることも可能な療法剤には、腫瘍学治療に用いられる多様な剤が含まれ(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、エポチロン、並びに細胞傷害性薬剤および細胞表面受容体に対する抗体のコンジュゲートがある。好ましい療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0072】
[94]1以上のさらなる療法剤を、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートの前に、これらと同時に、またはこれらの後に投与することも可能である。当業者は、各療法剤に関して、投与の特定の順番に利点がありうることを理解するであろう。同様に、当業者は、各療法剤に関して、剤、および本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートを投与する間の時間の長さが、多様であろうことを理解するであろう。
【0073】
[95]当業者は、各療法剤の投薬量が、剤の独自性に応じることを理解するであろうが、好ましい投薬量は、約10mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートル、より好ましくは約50mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの範囲であることも可能である。白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン)などの好ましい剤に関しては、好ましい投薬量は、約10mg/平方メートル〜約400mg/平方メートルであり、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)に関しては、好ましい投薬量は、約20mg/平方メートル〜約150mg/平方メートルであり、ゲムシタビンに関しては、好ましい投薬量は、約100mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルであり、そしてカンプトテシンに関しては、好ましい投薬量は、約50mg/平方メートル〜約350mg/平方メートルである。これらおよび他の療法剤の投薬量は、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートが、療法剤と同時にまたは連続して投与されるかどうかに応じる可能性もある。
【0074】
[96]本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および1以上のさらなる療法剤の投与は、同時投与されるかまたは連続投与されるかいずれであっても、療法適用に関して、上述するように行うことも可能である。同時投与に適した薬学的に許容しうるキャリアー、希釈剤、および賦形剤は、同時投与される特定の療法剤の独自性に応じることが、当業者に理解されるであろう。
【0075】
[97]凍結乾燥型でなく、水性投薬型で存在する場合、抗体は、典型的には、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で配合されるであろうが、これらの範囲外の広い変動が許容される。疾患治療のため、抗体またはコンジュゲートの適切な投薬量は、上に定義されるような治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的または療法目的で投与されるかどうか、以前の療法の経過、患者の病歴および抗体に対する応答、並びに主治医の自由裁量に応じるであろう。抗体を一度にまたは一連の治療に渡って、患者に適切に投与する。
【0076】
[98]疾患の種類および重症度に応じて、例えば1以上の別個の投与によるか、または連続注入によるかいずれであっても、好ましくは約1mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの抗体が、患者に投与する、最初の候補投薬量であり、より好ましくは、1もしくはそれより多くの分散投与(separate administration)または連続注入のいずれかによる約10mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの抗体である。数日以上に渡る反復投与では、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで、治療を反復する。しかし、他の投薬措置が有用である可能性もあり、そしてこれらも排除されない。
【0077】
[99]本発明にはまた、本明細書記載の要素の1以上、およびこれらの要素を使用するための使用説明書を含むキットも含まれる。好ましい態様において、本発明のキットには、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤が含まれる。この好ましい態様の使用説明書には、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて癌細胞の増殖を阻害するための使用説明書、並びに/あるいは本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌を有する患者を治療する方法のための使用説明書が含まれる。
【0078】
[100]好ましくは、キットに用いられる抗体は、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有するか、または抗体はエピトープ結合性断片であり、抗体および断片はどちらも、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する。キット中で用いられる抗体および抗体断片はまた、EM164抗体の表面再構成バージョン、EM164抗体のヒト化バージョン、あるいは少なくとも1つのヌクレオチド突然変異、欠失または挿入を有する、EM164抗体の改変されたバージョンであることも可能である。これらの3つのバージョンの抗体および抗体断片は、EM164抗体と同じ結合特異性を保持する。
【0079】
[101]好ましくは、キットに用いられる療法剤は、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される。より好ましくは、療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0080】
[102]本発明のキットの要素は、キットに適した形であり、例えば溶液または凍結乾燥粉末である。キットの要素の濃度または量は、キットの各要素の同一性および意図される使用に応じて多様であることが、当業者には理解されるであろう。
【0081】
[103]キットの使用説明書に言及される癌およびそれに由来する細胞には、乳癌、結腸癌、卵巣癌、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫が含まれる。
【実施例】
【0082】
実施例
[104]本発明は、ここで、以下の実施例に言及することによって記載されるが、実施例は例示でしかなく、そして本発明を限定することは意図されない。
【0083】
(実施例1)
ネズミEM164抗体
[105]この第一の実施例において、本発明のネズミ抗体の完全一次アミノ酸構造およびcDNA配列、並びにその結合特性および組換え型でのその発現手段を開示する。したがって、免疫学的技術分野の一般の当業者が、過度な実験を伴わずに前記抗体を調製可能であるように、本発明の抗体およびその調製法の完全な開示を提供する。
【0084】
A. 抗IGF−I受容体モノクローナル抗体ハイブリドーマの生成
[106]多数のIGF−I受容体(細胞あたり〜107)を発現するため、Y1251F突然変異を持つヒトIGF−I受容体を発現する細胞株を免疫に用いた。IGF−I受容体の細胞質ドメインにおけるY1251F突然変異によって、トランスフォーメーションおよび抗アポトーシス・シグナル伝達の欠失が生じたが、IGF−I結合、およびIGF−Iが刺激する分裂促進シグナル伝達には影響はなかった(O’Connor, R.ら, 1997, Mol. Cell. Biol., 17, 427−435;Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。本実施例の抗体は、IGF−I受容体の細胞外ドメインに結合し、これはY1251F突然変異体および野生型受容体の両方で同一であったため、この突然変異は、その他の点では、抗体生成に影響を及ぼさなかった。
【0085】
[107]Y1251F突然変異体ヒトIGF−I受容体遺伝子と一緒にピューロマイシン抵抗性遺伝子をトランスフェクションすることによって、IGF−I受容体欠損マウスの3T3様細胞から、Y1251F突然変異を含むヒトIGF−I受容体を発現する細胞株を生成し、そしてピューロマイシン(2.5マイクログラム/ml)を用いて、そして高IGF−I受容体発現に関するFACS分取によって、選択した(Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。大部分の細胞には毒性である、25マイクログラム/mlなどの高濃度のピューロマイシンを用いて、高レベルのIGF−I受容体発現を有する細胞株をさらに選択した。生存コロニーを摘み取り、そして高レベルのIGF−I受容体発現を示すものを選択した。
【0086】
[108]Y1251F突然変異体ヒトIGF−I受容体過剰発現細胞(5x105細胞、0.2mlのPBSに懸濁)で、第0日に、6ヶ月齢のCAF1/Jメスマウスを腹腔内経路で免疫した。0.2mlの細胞懸濁物を用いて動物に以下のように追加免疫した:第2日、1x106細胞;第5日、2x106細胞;第7日、第9日、第12日、および第23日、1x107細胞。第26日にマウスを屠殺し、そして脾臓を取り除いた。
【0087】
[109]2枚のすりガラス・スライド間で脾臓をすりつぶして、単細胞懸濁物を得て、これを、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する血清不含RPMI培地(SFM)で洗浄した。脾臓細胞ペレットを10mlの水中の0.83%(w/v)塩化アンモニウム溶液に、氷上で10分間再懸濁して、赤血球細胞を溶解し、そして次いで、血清不含培地(SFM)で洗浄した。脾臓細胞(1.2x108)を、非分泌性マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8.653(ATCC、メリーランド州ロックビル;カタログ番号CRL1580)由来の骨髄腫細胞(4x107)と一緒に、試験管中でプールし、そして血清不含RPMI−1640培地(SFM)で洗浄した。上清を取り除いて、そして細胞ペレットを残った培地に再懸濁した。試験管を37℃の水の入ったビーカーに入れ、そして穏やかに振盪しながら、1.5mlのポリエチレングリコール溶液(75mM HEPES、pH8中、50%PEG(w/v)、平均分子量1500)を滴下速度0.5ml/分で、ゆっくりと添加した。1分間待った後、10mlのSFMを以下のように添加した:最初の1分間に渡って1ml、次の1分間に渡って2ml、そして次の1分間に渡って7ml。次いで、さらに10mlを1分間に渡ってゆっくりと添加した。遠心分離によって細胞をペレットにし、SFMで洗浄し、そして5%ウシ胎児血清(FBS)、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%ハイブリドーマ・クローニング上清(HCS)を補ったRPMI−1640増殖培地に再懸濁した。ウェルあたり200μl中、2x105脾臓細胞で、細胞を96ウェル平底組織培養プレートに植え付けた。5〜7日後、ウェルあたり100μlを取り除き、そしてヒポキサンチン/チミジン(HT)および5%FBSを補った増殖培地で置き換えた。免疫およびハイブリドーマ産生に用いた一般的な条件は、J. LangoneおよびH. Vunakis(監修, Methods in Enzymology, Vol. 121, “Immunochemical Techniques, PartI”;1986;Academic Press,フロリダ)、並びにE. HarlowおよびD. Lane(“Antibodies:A Laboratory Manual”;1988;Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載される。当業者に周知であるように、免疫およびハイブリドーマ産生の他の技術もまた使用可能である。
【0088】
[110]以下に記載するように、ELISAによって精製ヒトIGF−I受容体に対する結合に関して、そして、ELISAおよびFACSスクリーニングによって、ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞に対する特異的結合に関して、およびヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対する結合の欠如に関して、ハイブリドーマ・クローン由来の培養上清をスクリーニングした。ヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対するよりも、ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞に、より高い結合親和性を示すクローンを増殖させ、そしてサブクローニングした。上記結合アッセイによって、サブクローンの培養上清をさらにスクリーニングした。この方法によって、サブクローン3F1−C8−D7(EM164)を選択し、そして以下に記載するように、重鎖および軽鎖遺伝子をクローニングし、そして配列決定した。
【0089】
[111]以下の方法によって、IGF−I受容体に対する結合に関して、ハイブリドーマ・クローンからの上清のスクリーニングに使用するため、ヒトIGF−I受容体を単離した。スルホ−NHS−LC−ビオチン、スルホ−NHS−SS−ビオチン、またはNHS−PEO4−ビオチンなどのビオチン化試薬を用いて、組換えIGF−Iを修飾することによって、ビオチン化IGF−Iを調製した。ビオチン化IGF−Iをストレプトアビジン−アガロースビーズ上に吸収させ、そしてヒト野生型またはY1251F突然変異体IGFRを過剰発現する細胞由来の溶解物とインキュベーションした。ビーズを洗浄し、そして2〜4M尿素およびTriton X−100またはオクチル−β−グルコシドなどの界面活性剤を含有する緩衝液を用いて溶出した。溶出したIGF−I受容体をPBSに対して透析し、そして還元条件下でSDS−PAGEによって純度に関して分析すると、それぞれ約135kDaおよび95kDaの分子量のIGF−I受容体のアルファ鎖およびベータ鎖のバンドが示された。
【0090】
[112]精製IGF−I受容体に対するハイブリドーマ上清の結合に関してチェックするため、Immulon−4HB ELISAプレート(Dynatech)を精製ヒトIGF−I受容体試料(アフィニティー精製試料の尿素/オクチル−β−グルコシド溶出からの透析によって調製したもの)でコーティングし、pH9.5の50mM CHES緩衝液で希釈した(100μl;4℃、一晩)。200μlのブロッキング緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.5、および0.1% Tween−20を含有するTBS−T緩衝液中、10mg/ml BSA)でウェルをブロッキングし、そしてハイブリドーマ・クローン由来の上清(100μl;ブロッキング緩衝液で希釈)と約1時間〜12時間インキュベーションし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗マウスIgG Fc抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.8μg/ml;Jackson ImmunoResearch Laboratories)とインキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した(0.1Mクエン酸緩衝液、pH4.2中、0.5mg/ml ABTS、0.03%H2O2)。典型的には、3F1ハイブリドーマ・サブクローン由来の上清は、発色3分以内に、約1.2吸光単位のシグナルを生じ、これはいくつかの他のハイブリドーマ・クローンからの上清に関して得られた0.0の値とは対照的であった。このELISAの一般的な条件は、E. HarlowおよびD. Lane(“Using Antibodies:A Laboratory Manual”;1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載されるような抗体結合および検出のための標準的ELISA条件と同様であり、この条件もまた、使用可能である。
【0091】
[113]ヒトY1251F−IGF−I受容体を過剰発現する細胞株に対して、そしてヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞株に対して、ELISAを用いて、ヒトIGF−I受容体に特異的に結合し、そしてヒト・インスリン受容体に特異的に結合しないハイブリドーマ上清のスクリーニングを行った。どちらの細胞株もIGF−I受容体欠損マウスの3T3様細胞から生成した。迅速なトリプシン/EDTA処理によって、組織培養フラスコから、IGF−I受容体過剰発現細胞およびインスリン受容体過剰発現細胞を別個に採取し、10%FBSを含有する増殖培地に懸濁し、遠心分離によってペレットにし、そしてPBSで洗浄した。植物性血球凝集素(phytohemagglutinin)(20μg/ml PHAの100μl)でコーティングしたImmulon−2HBプレートのウェルに、洗浄した細胞(約1〜3x106細胞/mlの100μl)を添加し、遠心分離し、そしてPHAでコーティングしたウェルに10分間接着させた。細胞を含むプレートを軽く叩いてPBSを取り除き、そして次いで37℃で一晩乾燥させた。PBS中の5mg/ml BSA溶液で、ウェルを37℃で1時間ブロッキングし、そして次いで、PBSで穏やかに洗浄した。次いで、IGF−I受容体過剰発現細胞を含有するウェル、およびインスリン受容体過剰発現細胞を含有するウェルに、ハイブリドーマ・クローンからの上清のアリコット(100μl;ブロッキング緩衝液で希釈)を添加し、そして周囲温度で1時間インキュベーションした。PBSでウェルを洗浄し、ヤギ抗マウスIgG Fc抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.8μg/ml)と1時間インキュベーションし、その後、洗浄し、そして次いでABTS/H2O2基質を用いて結合を検出した。典型的には、IGF−I受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して、3F1ハイブリドーマ・サブクローンからの上清は、発色12分以内に、0.88吸光単位のシグナルを生じ、これはヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して得られた0.22吸光単位の値とは対照的であった。
【0092】
[114]製造者の指定にしたがって、Integra CL350フラスコ(Integra Biosciences、メリーランド州)中でハイブリドーマを増殖させて、精製EM164抗体を提供した。抗体標準を用いた、ELISAによる、そしてSDS−PAGE/クーマシーブルー染色による定量化に基づいて、Integraフラスコから採取した上清中、約0.5〜1mg/mlの収量の抗体を得た。3M NaClを含有する100mM Tris緩衝液、pH8.9で装填および洗浄し、その後、150mM NaClを含有する100mM酢酸溶液で溶出する、標準的精製条件下で、プロテインA−アガロースビーズ・カラム上のアフィニティー・クロマトグラフィーによって、抗体を精製した。抗体を含有する溶出分画を、冷2M K2HPO4溶液で中和し、そしてPBS中、4℃で透析した。280nmの吸光度を測定することによって抗体濃度を決定した(消光係数=1.4mg−1mlcm−1)。還元条件下のSDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色によって、精製抗体試料を分析すると、それぞれ約55kDaおよび25kDaの抗体重鎖および軽鎖のバンドのみが示された。精製抗体のアイソタイプは、カッパ軽鎖を伴うIgG1であった。
【0093】
B. EM164抗体の結合特性
[115]ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞を用い、そしてヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞を用いた、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって、精製EM164抗体の特異的結合を立証した(図1)。丸底96ウェルプレート中、IGF−I受容体を過剰発現する細胞を用い、そしてインスリン受容体を過剰発現する細胞を用いて(2x105細胞/ml)、100μl冷FACS緩衝液(ダルベッコのMEM培地中の1mg/ml BSA)中でEM164抗体(50〜100nM)を1時間インキュベーションした。遠心分離によって細胞をペレットにし、そしてそっと叩くことによって冷FACS緩衝液で洗浄し、次いでヤギ抗マウスIgG抗体−FITCコンジュゲート(100μl;FACS緩衝液中、10μg/ml)と氷上で1時間インキュベーションした。細胞をペレットにし、洗浄し、そしてPBS中の1%ホルムアルデヒド溶液120μlに再懸濁した。FACSCalibur読取装置(BD Biosciences)を用いて、プレートを分析した。
【0094】
[116]IGF−I受容体を過剰発現する細胞をEM164抗体とインキュベーションすると、強い蛍光シフトが得られたが、これはインスリン受容体を過剰発現する細胞をEM164抗体とインキュベーションした際の有意でないシフトとは対照的であり(図1)、これによって、EM164抗体が、IGF−I受容体への結合において、選択的であり、そしてインスリン受容体に結合しないことが立証された。対照抗体、抗IGF−I受容体抗体1H7(Santa Cruz Biotechnology)および抗インスリン受容体アルファ抗体(BD Pharmingen Laboratories)は、それぞれ、IGF−I受容体を過剰発現する細胞およびインスリン受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して、蛍光シフトを生じた(図1)。EM164抗体、およびIGF−I受容体を発現するヒト乳癌MCF−7細胞を用いたFACSアッセイによってもまた、強い蛍光シフトが観察され(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171)、これによってEM164抗体が、ヒト腫瘍細胞表面上のヒトIGF−I受容体に結合することが示された。
【0095】
[117]直接コーティングされたIGF−I受容体(上述のように、ビオチン化IGF−Iを用いてアフィニティー精製したもの)または間接的に捕捉されるビオチン化IGF−I受容体いずれかを用いて、いくつかの濃度で抗体の結合をELISA滴定することによって、ヒトIGF−I受容体とEM164抗体の結合に関する解離定数(Kd)を決定した。PEO−マレイミド−ビオチン試薬(Pierce、Molecular Biosciences)を用いて、界面活性剤で可溶化した、IGF−I受容体を過剰発現する細胞由来の溶解物をビオチン化することによって、ビオチン化IGF−I受容体を調製し、NHS−アガロースビーズ上に固定した抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体を用いて、これをアフィニティー精製し、そしてNP−40界面活性剤を含有する緩衝液中の2〜4M尿素で溶出し、そしてPBS中で透析した。
【0096】
[118]Immulon−2HBプレートを炭酸緩衝液(150mM炭酸ナトリウム、350mM重炭酸ナトリウム)中の1μg/mlストレプトアビジン100μlで、4℃で一晩コーティングすることによって、ビオチン化IGF−I受容体とEM164抗体の結合に関するKdを決定した。ストレプトアビジンでコーティングしたウェルを、200μlのブロッキング緩衝液(TBS−T緩衝液中の10mg/ml BSA)でブロッキングし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてビオチン化IGF−I受容体(10〜100ng)と周囲温度で4時間インキュベーションした。次いで、間接的に捕捉されたビオチン化IGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そしてブロッキング緩衝液中、いくつかの濃度(5.1x10−13M〜200nM)のEM164抗体と周囲温度で2時間インキュベーションし、そして次いで4℃で一晩インキュベーションした。次に、ウェルをTBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗マウスIgGH+L抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.5μg/ml)とインキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した。一部位結合に関して、非線形回帰によって、Kd値を概算した。
【0097】
[119]E. HarlowおよびD. Lane(“Using Antibodies:A Laboratory Manual”;1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載されるように、抗体のパパイン消化によって調製された、EM164抗体のFab断片を用いて、同様の結合滴定を行った。
【0098】
[120]ビオチン化ヒトIGF−I受容体へのEM164抗体の結合に関する結合滴定曲線は、0.1nMのKd値を生じた(図2)。EM164抗体のFab断片もまた、ヒトIGF−I受容体に非常に緊密に結合し、Kd値は0.3nMであり、これによって、IGF−I受容体へのEM164抗体の単量体結合もまた、非常に強いことが示された。
【0099】
[121]EM164抗体によるIGF−I受容体の結合に関する解離定数がこのように極端に低い値であるのは、固定IGF−I受容体に結合した抗体を1〜2日間、長く洗浄した後に、強い結合シグナルが観察されることによって確証されるように、部分的に、koff速度が非常に遅いためであった。
【0100】
[122]プロテインG−アガロースビーズ(Pierce Chemical Company)上に固定されたEM164抗体と、界面活性剤で可溶化されたヒト乳癌MCF−7細胞の溶解物をインキュベーションすることによって立証されるように、EM164抗体をIGF−I受容体の免疫沈降に用いることも可能である。ウサギ・ポリクローナル抗IGF−I受容体ベータ鎖(C末端)抗体(Santa Cruz Biotechnology)およびヤギ抗ウサギIgG抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用い、次いで洗浄し、そして増進化学発光(ECL)検出を行って、EM164抗体免疫沈降物のウェスタンブロットを検出した。MCF−7細胞からのEM164免疫沈降物のウェスタンブロットは、約95kDaのIGF−I受容体のベータ鎖および約220kDaのプロ−IGF−I受容体に対応するバンドを示した。他の細胞種に関して、同様の免疫沈降を行って、EM164抗体結合の種特異性をチェックしたところ、cos−7細胞(アフリカミドリザル(African green monkey))由来のIGF−I受容体にはやはり結合したが、3T3細胞(マウス)、CHO細胞(チャイニーズハムスター)またはヤギ線維芽細胞(ヤギ)のIGF−I受容体には結合しなかった。EM164抗体は、MCF−7細胞由来の溶解物のウェスタンブロットにおいて、SDS変性ヒトIGF−I受容体を検出せず、これによってEM164抗体が、天然の非変性ヒトIGF−I受容体のコンホメーション・エピトープに結合することが示された。
【0101】
[123]L1ドメインおよびL2ドメインに隣接するシステインリッチ・ドメイン(残基1〜468)を含み、これに16量体C末端ピース(残基704〜719)が融合し、そしてC末端エピトープタグで終わる、一部切除(truncated)アルファ鎖構築物を用いて、EM164抗体の結合ドメインをさらに性質決定した。残基469〜703を欠く、このより小さいIGF−I受容体は、天然全長IGF−I受容体に比較して、より緊密ではないが、IGF−Iに結合すると報告されている(Molina, L.ら, 2000, FEBS Letters, 467, 226−230;Kristensen, C.ら, 1999, J. Biol. Chem., 274, 37251−37356)。したがって、残基1〜468を含み、これに残基704〜719のC末端ピースが融合して、そしてC末端mycエピトープタグが隣接する、一部切除IGF−I受容体アルファ鎖構築物を調製した。この構築物を発現する安定細胞株、そしてまたヒト胚性腎臓293T細胞中で該構築物を一過性に発現する細胞株を構築した。この一部切除IGF−I受容体アルファ鎖構築物に対して、EM164抗体が強く結合することが観察された。試験した2つの抗体のうち、IR3(Calbiochem)もまた、この一部切除アルファ鎖に結合したが、1H7抗体(Santa Cruz Biotechnology)は結合せず、これによって、EM164抗体のエピトープが、1H7抗体のエピトープとは明らかに別個であることが示された。
【0102】
C. MCF−7細胞に対するIGF−1結合の、EM164抗体による阻害
[124]ヒト乳癌MCF−7細胞に対するIGF−Iの結合は、EM164抗体によって阻害された(図3)。MCF−7細胞を、血清不含培地中、5μg/mlのEM164抗体を伴いまたは伴わずに2時間インキュベーションし、その後、50ng/mlのビオチン化IGF−Iと37℃で20分間インキュベーションした。次いで、細胞を血清不含培地で2回洗浄して、未結合ビオチン−IGF−Iを取り除き、そして次いで、1%NP−40およびプロテアーゼ阻害剤を含有する50mM HEPES、pH7.4に溶解した。マウス・モノクローナル抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体でImmulon−2HB ELISAプレートをコーティングし、そしてこれを、溶解物からIGF−I受容体および結合したビオチン−IGF−Iを捕捉するのに用いた。IGF−I受容体のベータ鎖の細胞質C末端ドメインに、コーティングされた抗体が結合しても、IGF−I受容体の細胞外ドメインへのビオチン−IGF−Iの結合には干渉しなかった。ウェルを洗浄し、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートとインキュベーションし、再び洗浄し、そして次いでABTS/H2O2基質を用いて検出した。5μg/ml EM164抗体による、MCF−7細胞へのIGF−I結合の阻害は、本質的に定量的であり、そしてビオチン−IGF−Iを欠く対照を用いて得たELISAバックグラウンドのものとほぼ同等であった。
【0103】
[125]EM164抗体による、MCF−7細胞へのIGF−I結合の阻害に関する上述のアッセイに加えて、以下のアッセイによって、EM164抗体が、結合したIGF−IをMCF−7細胞から置換する(displacing)のに非常に有効であることが立証され、これは生理学的条件下で、アンタゴニスト性抗IGF−I受容体抗体が、結合した内因性生理学的リガンド(IGF−IまたはIGF−IIなど)を置換するのが望ましいことに適っている。このIGF−I置換アッセイにおいて、12ウェルプレート中で増殖させたMCF−7細胞を血清枯渇させ、そして次いで血清不含培地中、ビオチン化IGF−I(20〜50ng/ml)と37℃(または4℃)で1〜2時間インキュベーションした。次いで、結合したビオチン化IGF−Iを伴う細胞を、EM164抗体または対照抗体(10〜100μg/ml)で、37℃(または4℃)で30分間〜4時間処理した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、そして1%NP−40を含有する溶解緩衝液中、4℃で溶解した。上述のようにELISAを行って、溶解物からIGF−I受容体を捕捉し、そして次いで、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用いて、受容体に結合したビオチン化IGF−Iを検出した。このELISAによって、EM164抗体が、先に結合していたビオチン化IGF−Iを細胞から、37℃ではほぼ完全に(30分以内に90%、そして4時間以内に〜100%)、そして4℃2時間では約50%、置換可能であることが立証された。別の実験において、NCI−H838肺癌細胞をビオチン−IGF−Iとインキュベーションし、次いで洗浄し、そしてEM164抗体と4℃で2時間インキュベーションすると、結合したビオチン−IGF−Iが80%減少した。したがって、EM164抗体は、先に結合していたIGF−Iを癌細胞から置換するのに非常に有効であり、このことは、結合した内因性生理学的リガンドを置換することによって、IGF−I受容体に拮抗するために、療法的に重要であろう。
【0104】
[126]EM164抗体とMCF−7細胞を4℃で2時間(または37℃で30分間)インキュベーションすると、抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体(Santa Cruz Biotechnology;sc−713)を用いたウェスタンブロット分析に基づいて、IGF−I受容体の有意な下方制御が生じなかったが、EM164抗体とより長い時間、37℃で2時間インキュベーションすると、IGF−I受容体の25%の下方制御が生じた。したがって、この短時間の実験において、4℃および37℃両方で、EM164抗体によって、IGF−I結合が阻害され、そして結合したIGF−Iが置換されたのは、EM164抗体の結合による受容体の下方制御では説明不能である。EM164抗体によって、IGF−IのIGF−I受容体への結合が強力に阻害され、そして先に結合していたIGF−Iが置換される機構は、結合部位の共有を通じてか、または立体的閉鎖(steric occlusion)を通じてか、またはアロステリック効果を通じてかのいずれかで、結合に関して競合することである可能性がある。
【0105】
D. EM164抗体による、IGF−I受容体が仲介する細胞シグナル伝達の阻害
[127]乳癌MCF−7細胞および骨肉腫SaOS−2細胞をEM164抗体で処理すると、IGF−I受容体自己リン酸化の阻害によって、そしてインスリン受容体基質1(IRS−1)、AktおよびErk1/2などの下流エフェクターのリン酸化の阻害によって示されるように、細胞内IGF−I受容体シグナル伝達がほぼ完全に阻害された(図4〜6)。
【0106】
[128]図4において、MCF−7細胞を、標準的な培地中、12ウェルプレート中で3日間増殖させ、そして次いで、血清不含培地中、20μg/ml EM164抗体(または抗B4対照抗体)で3時間処理し、次いで50ng/ml IGF−Iで、37℃で20分間刺激した。次いで、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を含有する氷冷溶解緩衝液(50mM HEPES緩衝液、pH7.4、1%NP−40、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、100mMフッ化ナトリウム、10mMピロリン酸ナトリウム、2.5mM EDTA、10μMロイペプチン、5μMペプスタチン、1mM PMSF、5mMベンズアミジン、および5μg/mlアプロチニン)中で細胞を溶解した。抗IGF−I受容体ベータ鎖C末端モノクローナル抗体TC123でELISAプレートをあらかじめコーティングし、そして溶解物試料と周囲温度で5時間インキュベーションして、IGF−I受容体を捕捉した。次いで、捕捉したIGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そしてビオチン化抗ホスホチロシン抗体(PY20;0.25μg/ml;BD Transduction Laboratories)と30分間インキュベーションし、次いで洗浄し、そしてストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(0.8μg/ml)と30分間インキュベーションした。ウェルを洗浄し、そしてABTS/H2O2基質で検出した。対照抗B4抗体を用いると、IGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化の阻害は示されなかった。対照的に、EM164抗体で処理すると、IGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化が完全に阻害された(図4)。
【0107】
[129]インスリン受容体基質1(IRS−1)のリン酸化の阻害を立証するため、固定抗IRS−1抗体を用いて溶解物からIRS−1を捕捉するELISAを用い、次いで、リン酸化IRS−1に結合する、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI−3キナーゼ)の会合したp85サブユニットを測定した(Jackson, J.G.ら, 1998, J. Biol. Chem., 273, 9994−10003)。図5において、MCF−7細胞を、血清不含培地中の5μg/ml抗体(EM164またはIR3)で2時間処理し、次いで50ng/ml IGF−Iで、37℃で10分間刺激した。コーティングしたヤギ抗ウサギIgG抗体と、ELISAプレート上でインキュベーションすることによって、抗IRS−1抗体(ウサギ・ポリクローナル;Upstate Biotechnology)を間接的に捕捉し、これを次いで、4℃で一晩インキュベーションすることによって、細胞溶解物試料からIRS−1を捕捉するのに用いた。次いで、ウェルをマウス・モノクローナル抗p85−PI−3キナーゼ抗体(Upstate Biotechnology)と4時間インキュベーションし、その後、ヤギ抗マウスIgG抗体−HRPコンジュゲートで30分間処理した。次いでウェルを洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて検出した(図5)。図5に示すように、EM164抗体は、IR3抗体よりも、IGF−Iが刺激するIRS−1リン酸化を阻害するのにより有効であり、そしてIGF−Iの非存在下で、EM164抗体を細胞とインキュベーションした際に、EM164抗体は、IRS−1リン酸化に対していかなるアゴニスト活性も示さなかった。
【0108】
[130]AktおよびErk1/2などの他の下流エフェクターの活性化もまた、溶解物のウェスタンブロットおよびリン酸化特異的抗体(ウサギ・ポリクローナル抗ホスホSer473 Aktポリクローナル抗体および抗ホスホ−ERK1/2抗体;Cell Signaling Technology)を用いて示されるように、SaOS−2細胞(図6)において、およびMCF−7細胞において、用量依存方式で、EM164抗体に阻害された。汎ERK抗体によって、すべてのレーンに等量のタンパク質が装填されたことが立証された(図6)。EM164抗体でSaOS−2細胞を処理すると、EGFが刺激するErk1/2のリン酸化は阻害されず、したがって、EM164抗体によるIGF受容体シグナル伝達経路の阻害が特異的であることが立証された。
【0109】
E. IGF−I、IGF−IIおよび血清が刺激するヒト腫瘍細胞の増殖および生存の、EM164抗体による阻害
[131]IGF−Iに対する増殖反応および生存反応に関して、血清不含条件下で、いくつかのヒト腫瘍細胞株を試験した。これらの細胞株を、IGF−I、IGF−II、または血清の存在下、EM164抗体で処理し、そして2〜4日後、MTTアッセイを用いて、増殖反応および生存反応を測定した。血清を含む標準的な培地中、96ウェルプレート中で、およそ1500細胞をプレーティングし、翌日、培地を血清不含培地と交換した(トランスフェリンおよびBSAを補った血清不含RPMI培地、またはDufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171に特定されるようなフェノールレッド不含培地)。血清不含培地中で1日増殖させた後、約75μlの10μg/ml抗体と細胞を30分間〜3時間インキュベーションし、その後、25μlのIGF−I(またはIGF−IIまたは血清)溶液を添加して、10ng/ml IGF−I、または20ng/ml IGF−II、または0.04〜10%血清の最終濃度にした。いくつかの実験では、EM164抗体を添加する前に、細胞をまず、IGF−Iで15分間刺激するか、またはIGF−IおよびEM164抗体の両方を一緒に添加した。次いで、細胞をさらに2〜3日間増殖させた。次いで、MTT(3−(4,5)−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;25μlのPBS中の5mg/ml溶液)を添加し、そして細胞を2〜3時間、インキュベーターに戻した。次いで培地を取り除き、そして100μl DMSOと交換し、混合し、そしてプレートの吸光度を545nmで測定した。いくつかのヒト腫瘍細胞株は、IGF−IまたはIGF−IIまたは血清を添加すると、増殖反応および生存反応を示し、これはEM164抗体によって有意に阻害され、この阻害には、抗体をIGF−Iの前に添加するか、またはIGF−Iを抗体の前に添加するか、またはIGF−Iおよび抗体を一緒に添加するかどうかは関わりなかった(表1)。
【0110】
表1. IGF−Iが刺激する腫瘍細胞の増殖および生存の、EM164抗体による阻害
【0111】
【表1】
【0112】
a5〜10μg/mlのEM164抗体を含有する血清不含培地中、10ng/mlのIGF−Iに反応した細胞の3〜4日間の増殖/生存のMTTアッセイ。
b対照(血清を含むが抗体を含まないもの)との比較に基づいた、MTTアッセイまたはコロニー形成アッセイによる、5〜10μg/mlのEM164抗体の存在下の1.25〜10%血清中の細胞増殖の阻害;細胞による自己分泌/パラ分泌IGF刺激を計上するため、対照(血清を含まないが抗体を含むもの、および血清を含むが抗体を含まないもの)に基づいて、MCF−7細胞、NCI−H838細胞およびSK−N−SH細胞に関して、阻害の度合いを定量的に測定した。NDは、データがないか、または染色が困難であるため、データが劣っていることを示す。
[132]EM164抗体は、IGF−Iまたは血清が刺激する、乳癌MCF−7細胞の増殖および生存を強く阻害した(図7および図8)。別の実験において、EM164抗体は、IGF−IIが刺激する、MCF−7細胞の増殖および生存を強く阻害した。IR3抗体などの商業的に入手可能な抗体を用いた先の報告では、血清が刺激するMCF−7細胞の増殖および生存を、こうした抗体が弱くしか阻害しないことが示されており、これは、IR3および1H7抗体に関して、図7で確認したとおりである(Cullen, K.J.ら, 1990, Cancer Res., 50, 48−53)。対照的に、EM164抗体は、血清またはIGFが刺激するMCF−7細胞の強力な阻害剤であった。図8に示すように、EM164抗体は、広い範囲の血清濃度(0.04〜10%血清)に渡って、MCF−7細胞の増殖および生存を阻害するのに同等に有効である。
【0113】
[133]細胞を計数することによって、EM164抗体によるMCF−7細胞の増殖阻害を測定した。したがって、12ウェルプレートにおいて、10μg/mlのEM164抗体の存在下または非存在下、10%のFBSを含むRPMI培地中に、約7500の細胞をプレーティングした。増殖5日後、未処理対照試料の細胞数は20.5x104細胞であり、対照的に、EM164抗体で処理した試料では、わずか1.7x104細胞であった。EM164抗体で処理すると、5日間で、MCF−7細胞の増殖は、約12倍まで阻害された。EM164抗体によるこの阻害は、MCF−7細胞の6日間のアッセイにおいて、IR3抗体を用いて報告された2.5倍の阻害より有意に高かった(Rohlik, Q.T.ら, 1987, Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 276−281)。
【0114】
[134]IGF−Iおよび血清が刺激する、非小細胞肺癌株NCI−H838の増殖および生存もまた、対照抗B4抗体に比較して、EM164抗体によって、強く阻害された(図9)。血清不含培地において、EM164抗体で処理すると、NCI−H838細胞およびMCF−7細胞の両方に関して、未処理試料より小さいシグナルが生じ、これはおそらく、EM164抗体が、これらの細胞の自己分泌およびパラ分泌IGF−IおよびIGF−II刺激も阻害したためであろう(図7および図9)。EM164抗体で処理すると、HT29結腸癌細胞のコロニーサイズもまた、非常に減少した。
【0115】
[135]EM164抗体は、したがって、MCF−7細胞およびNCI−H838細胞などの腫瘍細胞の、血清が刺激する増殖を80%を超えて阻害するのに有効である点で、すべての既知の抗IGF−I受容体抗体の中でもユニークである。
【0116】
[136]EM164抗体は、細胞周期のG0/G1期で細胞増殖停止を引き起こし、そしてIGF−Iの分裂促進効果を無効にした。細胞周期解析のため、MCF−7細胞を、EM164(20μg/ml)の存在下または非存在下、IGF−I(20ng/ml)で1日間処理し、そして次いでヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリーによって分析した。図25に示すように、EM164の非存在下、IGF−I刺激に反応した細胞のサイクリング(細胞の41%がS期にあり、そして50%がG0/G1期にあった)は、EM164処理細胞で抑制された(細胞の9%のみがS期にあり、そして77%がG0/G1期にあった)。
【0117】
[137]細胞増殖の阻害に加えて、EM164抗体処理によって、細胞のアポトーシスが生じた。アポトーシス測定のため、EM164の存在下または非存在下、IGF−Iまたは血清と1日間インキュベーションしたNCI−H838肺癌細胞において、カスパーゼによるサイトケラチンCK18タンパク質の切断を測定した(図26)。EM164の非存在下、IGF−Iまたは血清を添加すると、IGF−Iがない対照に比較して、カスパーゼ切断されたCK18のシグナルはより低く、IGF−Iおよび血清が、カスパーゼの活性化を妨げることが示された。EM164の非存在下よりEM164の存在下で得られる切断CK18のレベルがより大きいことから示されるように、EM164で処理すると、IGF−Iおよび血清の抗アポトーシス効果が抑制された。
【0118】
F.他の細胞傷害性剤および細胞分裂停止剤と併用した、EM164抗体による、ヒト腫瘍細胞増殖および生存の相乗的阻害
[138]タキソールとEM164抗体を併用投与すると、タキソール単独よりも、非小細胞肺癌Calu6細胞の増殖および生存に、有意により阻害性になった。同様に、カンプトテシンとEM164抗体を併用すると、結腸癌HT29細胞の増殖および生存に対して、カンプトテシン単独よりも、有意により阻害性になった。EM164抗体単独では、有機化学毒性薬剤と同程度に細胞に毒性であるとは期待されないことから、EM164抗体の主に細胞分裂停止効果および化学毒性薬剤の細胞傷害性効果の間の相乗作用は、臨床設定における併用癌療法において、非常に有効でありうる。
【0119】
[139]EM164抗体と抗EGF受容体抗体(KS77)の併用効果は、HT−3細胞、RD細胞、MCF−7細胞、およびA431細胞などのいくつかの腫瘍細胞株の増殖および生存に対して、EM164抗体またはKS77抗体単独のいずれより、有意により阻害性であった。したがって、IGF−I受容体およびEGF受容体などの2つの増殖因子受容体の中和抗体を併用した相乗効果もまた、臨床的癌治療に有用でありうる。
【0120】
[140]表1に示すような多様なヒト癌細胞株の増殖および生存を阻害する際の単一剤としてのEM164抗体の効力に基づいて、EM164抗体と他の抗癌療法剤を併用して、さらなる効力研究を行った。多様な癌細胞株に対するこれらの研究において、EM164抗体および他の抗癌療法剤の併用治療によって、EM164または他の療法剤単独のいずれよりもさらに高い、抗癌効力が生じた。したがって、EM164と他の療法剤のこれらの併用は、癌細胞の増殖および生存を阻害する際に非常に有効である。抗癌効力を改善するため、EM164と併用可能である療法剤には、腫瘍学治療に用いられる多様な剤が含まれ(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、エポチロン、並びに細胞傷害性薬剤および細胞表面受容体に対する抗体のコンジュゲートがある。
【0121】
[141]これらの併用療法のため、アルキル化剤、白金剤、ホルモン療法、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗微小管剤、分化剤、抗血管新生療法または抗血管形成療法、放射線療法、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のアゴニストおよびアンタゴニスト、細胞表面受容体に対する阻害性抗体または小分子阻害剤、並びに他の化学療法剤(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)などの、多様な作用機構の抗癌剤1以上と、EM164を併用する。1つの例において、LHRHアンタゴニストであるアンチド(0.1〜10マイクロモル濃度(micromolar))およびEM164抗体(0.1〜10ナノモル濃度(nanomolar))を併用すると、EM164またはアンチド単独のいずれよりも、MCF−7乳癌細胞の増殖が有意に阻害された。白金剤との併用療法の例において、EM164抗体(10マイクログラム/ml)およびシスプラチン(0.1〜60マイクログラム/ml)の併用治療によって、EM164抗体またはシスプラチン単独のいずれかによる阻害に比較して、MCF−7乳癌細胞の増殖および生存が、より多く阻害された。
【0122】
[142]EM164抗体と他の療法剤とのこれらの併用は、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む、いくつかの種類の癌に対して有効である。EM164抗体および療法剤を、同時にまたは連続して、癌療法のために投与することも可能である。
【0123】
[143]IGF−I受容体を過剰発現する腫瘍に、細胞傷害性薬剤をターゲティング搬送する際、EM164抗体と細胞傷害性薬剤とのコンジュゲートもまた有用である。IGF−I受容体を過剰発現する腫瘍の治療および画像化に、EM164抗体と放射標識または他の標識のコンジュゲートを用いることも可能である。
【0124】
G.免疫不全マウスにおけるヒト癌異種移植片中、単一剤としてのまたは抗癌剤と併用した、EM164処置の効果
[144]1x107 Calu−6細胞を皮下注射することによって、免疫不全マウスにおいて、ヒト非小細胞肺癌Calu−6異種移植片を確立した。図10に示すように、処置群あたり5匹のマウスを用いて、確立された100mm3 Calu−6異種移植片を含有するこれらのマウスを、EM164抗体単独(0.8mg/マウスを1週2回で6回、静脈内注射)で、またはタキソール単独(2日ごとに、タキソールを5回、腹腔内注射;15mg/kg)で、またはタキソールおよびEM164抗体処置併用で、またはPBS単独(200μl/マウスを1週2回で6回、静脈内注射)で処置した。PBS対照に比較して、EM164抗体処置によって、腫瘍増殖は、有意に遅延された。マウスの体重測定に基づくと、EM164抗体の毒性はまったく観察されなかった。タキソール単独処置は、第14日までは有効であったが、その後、腫瘍は再び増殖し始めた。しかし、タキソールおよびEM164抗体の併用処置群では、タキソール単独処置群に比較して、腫瘍増殖は有意に遅延された。
【0125】
[145]PBS中の107 BxPC−3細胞を皮下注射することによって、5週齢メスSCID/ICRマウス(Taconic)において、ヒト膵臓癌異種移植片を確立した(第0日)。次いで、5つの処置群各々で、5匹のマウスを用いて、確立された80mm3の腫瘍を所持するマウスを、EM164単独(第12日、第16日、第19日、第23日、第26日、第29日、第36日、第43日、第50日、第54日、第58日、第61日および第64日に、側面尾静脈に0.8mg/マウスを13回、静脈内注射)で、ゲムシタビン単独(第12日および第19日に、150mg/kg/マウスを2回、腹腔内注射)で、上記スケジュールにしたがってゲムシタビンおよびEM164併用で、PBS単独で、そして対照抗体単独(EM164と同じスケジュールにしたがって)で処置した。図27に示すように、EM164単独処置、またはゲムシタビンとの併用処置によって、EM164処置群では、5匹の動物のうち4匹で、そして併用処置群では5匹の動物すべてで、腫瘍異種移植片の完全な退行がまず生じた。測定可能な腫瘍再増殖は、EM164群では第43日、そして併用処置群では第68日になってようやく、1より多い動物で見られ、第74日に対照処置群と比較すると、有意に小さい平均腫瘍体積を生じた(それぞれP=0.029および0.002;両側T検定;図27)。別の研究において、EM164抗体処置(単独または抗EGF受容体抗体との併用;腹腔内注射)は、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片の増殖を阻害した。
【0126】
[146]ネズミEM164およびヒト化EM164抗体は、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片増殖の同等の阻害を示しており、したがって、ヒト化EM164の効力が、in vivoで、ネズミEM164の効力と同等であることが立証された。EM164抗体の異なる投与様式を比較すると、EM164抗体の腹腔内投与および静脈内投与はどちらも、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片増殖の同等の阻害を示した。別の異種移植片研究において、マウスにおいて確立されたA−673ヒト横紋筋肉腫/ユーイング肉腫異種移植片をEM164抗体で処置すると、増殖が有意に遅延された。
【0127】
H. EM164抗体の軽鎖および重鎖のクローニングおよび配列決定
[147]EM164ハイブリドーマ細胞から総RNAを精製した。4〜5μgの総RNA、およびオリゴdTプライマーまたはランダム六量体プライマーのいずれかを用いて、逆転写酵素反応を行った。
【0128】
[148]Coら(J. Immunol., 148, 1149−1154(1992))に記載されるRACE法を用いて、そしてWangら(J. Immunol. Methods, 233, 167−177(2000))に記載されるような縮重プライマーを用いて、PCR反応を行った。RACE PCR法は、第一鎖cDNAの3’端にポリGテールを付加する中間工程を必要とする。RT反応物をQianeasy(Qiagen)カラムで精製し、そして50μlの1xNEB緩衝液4中に溶出した。溶出液に対して、1xNEB緩衝液4中、0.25mM CoCl2、1mM dGTP、および5単位の末端転移酵素(NEB)で、dGテール付加反応を行った。混合物を37℃で30分間インキュベーションし、そして次いで、反応物の1/5(10μl)を、PCR反応に直接添加して、テンプレートDNAとして利用した。
【0129】
[149]RACEおよび縮重PCR反応は、プライマーおよびテンプレートが異なることを除いて、同一であった。RACE PCRテンプレートには末端転移酵素反応を直接用い、一方、縮重PCR反応には、RT反応混合物を直接用いた。
【0130】
[150]RACE反応および縮重PCR反応両方において、同じ3’軽鎖プライマー:
【0131】
【化7】
【0132】
および3’重鎖プライマー:
【0133】
【化8】
【0134】
を用いた。
[151]RACE PCRにおいて、1つのポリC 5’プライマー:
【0135】
【化9】
【0136】
を重鎖および軽鎖両方に用い、一方、縮重5’端PCRプライマーは、軽鎖に関しては:
【0137】
【化10】
【0138】
であり、そして重鎖に関しては:
【0139】
【化11】
【0140】
の等量混合物であった。
【0141】
[152]上記プライマー配列において、混合塩基は以下のように定義される:H=A+T+C、S=g+C、Y=C+T、K=G+T、M=A+C、R=A+g、W=A+T、V=A+C+G。
【0142】
[153]以下のプログラムを用いて、PCR反応を行った:1)94℃3分間、2)94℃15秒間、3)45℃1分間、4)72℃2分間、5)工程2に戻って29周期、6)72℃10分間の最終伸長工程で終了。
【0143】
[154]PCRプライマーによって生成した制限酵素を用いて、pBluescriptII SK+(Stratagene)にPCR産物をクローニングした。
[155]慣用的手段によって、いくつかの個々の軽鎖クローンおよび重鎖クローンを配列決定して、ポリメラーゼが生成しうる配列エラーを同定し、そして回避した(図12および図13)。Chothia規範的(canonical)分類定義を用いて、3つの軽鎖および重鎖CDRを同定した(図12〜図14)。
【0144】
[156]NCBI IgBlastデータベースを検索すると、抗IGF−I受容体抗体軽鎖可変領域が、おそらく、マウスIgVk Cr1生殖系列遺伝子に由来し、一方、重鎖可変領域が、おそらく、IgVh J558.c生殖系列遺伝子に由来することが示された(図15)。
【0145】
[157]ネズミEM164抗体のタンパク質配列決定を行って、図12および図13に示す配列を確認した。精製したEM164抗体の重鎖および軽鎖のタンパク質バンドを、ゲル(SDS−PAGE、還元条件)からPVDF膜にトランスファーし、PVDF膜から切り出し、そしてタンパク質配列決定によって分析した。軽鎖のN末端配列は、エドマン配列決定によって:DVLMTQTPLS(配列番号20)であることが決定され、これは、EM164ハイブリドーマから得たクローニング軽鎖遺伝子のN末端配列にマッチした。
【0146】
[158]重鎖のN末端は、遮断されていてエドマン・タンパク質配列決定が不能であることが見出された。ポストソース分解(PSD)を介して、マス1129.5(M+H+、モノアイソトピック)の重鎖のトリプシン消化ペプチド断片を断片化し、そしてその配列は、GRPDYYGSSK(配列番号21)であることが決定された。ポストソース分解(PSD)を介して、マス2664.2(M+H+、モノアイソトピック)の重鎖の別のトリプシン消化ペプチド断片もまた断片化し、そしてその配列は:SSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYFAR(配列番号22)であることが同定された。これらの配列はどちらも、EM164ハイブリドーマから得られるクローニング重鎖遺伝子のCDR3およびフレームワーク3(FR3)のものに完全にマッチする。
【0147】
I. EM164抗体の組換え発現
[159]軽鎖および重鎖の対配列を単一の哺乳動物発現ベクターにクローニングした(図16)。ヒト可変配列のPCRプライマーは制限部位を生成し、この制限部位によってpBluescriptIIクローニングベクター中にありつつ、ヒト・シグナル配列が付着することが可能になり、そして軽鎖または重鎖に関して、それぞれ、EcoRI部位およびBsiWI部位またはHindIII部位およびApaI部位を用いて、哺乳動物発現プラスミドに可変配列をクローニングした(図16)。軽鎖可変配列を、ヒトIgK定常領域上にインフレームでクローニングし、そして重鎖可変配列を、ヒトIgガンマ1定常領域配列中にクローニングした。最終発現プラスミドにおいて、ヒトCMVプロモーターは、軽鎖および重鎖のcDNA配列両方の発現を駆動した。当該技術分野に周知の方法にしたがって、組換えマウスEM164抗体の発現および精製を進めた。
【0148】
(実施例2)
EM164抗体のヒト化バージョン
[160]療法剤または診断剤として適切なヒト化バージョンを提供するため、EM164抗体の表面再構成を、一般的に、米国特許5,639,641に開示される原理および方法にしたがって、そして以下のように、進めた。
【0149】
A.表面予測
[161]解明された構造を持つ抗体セットの可変領域残基の溶媒アクセス可能性を用いて、ネズミ抗IGF−I受容体抗体(EM164)可変領域の表面残基を予測した。127のユニークな抗体構造ファイル・セットのアミノ酸溶媒アクセス可能性(表2)をMCソフトウェア・パッケージで計算した(Pedersenら, 1994, J. Mol. Biol., 235, 959−973)。127の構造のこのセットから、配列並列によって、10の最も類似の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を決定した。各可変領域残基に関して、平均溶媒アクセス可能性を計算し、そして30%を超える平均アクセス可能性の位を表面残基と見なした。2つの同一な隣接残基を持つ構造に関してのみ、個々の残基のアクセス可能性を計算することによって、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を持つ位をさらに調べた。
【0150】
表2−抗IGF−I受容体抗体(EM164)の表面を予測するのに用いた、Brookhavenデータベース由来の127の抗体構造
【0151】
【表2】
【0152】
B.分子モデリング:
[162]オックスフォード分子ソフトウェア・パッケージAbMを用いて、ネズミEM164の分子モデルを生成した。最も類似のアミノ酸配列を持つ抗体の構造ファイル、軽鎖の2jel、そして重鎖の1nqbを用いて、抗体フレームワークを構築した。非冗長解明構造を含有するC−α構造データベースを検索することによって、非規範的CDRを構築した。CDRから5Å以内に位置する残基を決定した。
【0153】
C.ヒトAb選択
[163]ネズミEM164の表面位を、Kabatデータベース中のヒト抗体配列の対応する位と比較した(Johnson, G.およびWu, T.T.(2001)Nucleic Acids Research, 29:205−206)。抗体データベース管理ソフトウェアSR(Searle 1998)を用いて、天然重鎖および軽鎖ヒト抗体対から抗体表面残基を抽出し、そして並列させた。CDRから5Å以内に来る位を特に考慮して、最も同一の表面残基を持つヒト抗体表面を選択して、ネズミ抗IGF−I受容体抗体表面残基を置換した。
【0154】
D. PCR突然変異誘発
[164]ネズミEM164 cDNAクローン(上記)に対してPCR突然変異誘発を行って、表面再構成ヒトEM164(本明細書においてhuEM164)を構築した。huEM164のすべての試験されるバージョンに必要な8アミノ酸変化を作成するため、プライマーセットを設計し、そしてこれとは別に2つの5Å残基変化を作成するため、さらなるプライマーを設計した(表3)。以下のプログラムを用いて、PCR反応を行った:1)94℃1分間、2)94℃15秒間、3)55℃1分間、4)72℃1分間、5)工程2に戻って29周期、6)72℃4分間の最終伸長工程で終了。対応する制限酵素でPCR産物を消化し、そして上述のように、pBluescriptクローニングベクターにクローニングした。クローンを配列決定して、望ましいアミノ酸変化を確認した。
【0155】
表3−4つのヒト化EM164抗体を構築するのに用いたPCRプライマー
【0156】
【表3】
【0157】
E.可変領域表面残基
[165]Pedersenら(J. Mol. Biol., 235, 959−973, 1994)およびRoguskaら(Protein Eng., 9, 895−904, 1996)に記載される抗体表面再構成技術は、ネズミ抗体可変配列の表面残基を予測することから始まる。表面残基は、総表面領域の少なくとも30%が水分子にアクセス可能であるアミノ酸と定義される。
【0158】
[166]127の抗体構造ファイル・セット中、10の最も相同な抗体を同定した(図17および図18)。これらの並列配列に関して、各Kabat位の溶媒アクセス可能性を平均し、そして各残基の相対的アクセス可能性の分布を図19に示した。軽鎖および重鎖の両方が、少なくとも30%の平均相対アクセス可能性を持つ26の残基を有する(図19):したがって、これらの残基は、EM164の予測される表面残基であった。いくつかの残基は、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を有し、そして残基の両側に隣接する2つの残基が同一である抗体のみを平均することによって、これらをさらに調べた(表4および表5)。このさらなる解析後も、上に同定する表面残基の元来のセットは変化しないままであった。
【0159】
表4−EM164抗体の軽鎖および重鎖の可変配列の表面残基および平均アクセス可能性
【0160】
【表4】
【0161】
表5
【0162】
【表5】
【0163】
検討中の残基の両側に隣接する2つの残基が同一である抗体サブセットを平均することによって、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を有する残基を、さらに解析した。これらのボーダーライン表面位およびその新しい平均アクセス可能性を提供する。NAは、10の最も類似の抗体において、同一の隣接残基がない残基を指す。
【0164】
F.どの残基がCDRから5Å以内に収まるかを決定する分子モデリング
[167]AbMソフトウェア・パッケージで生成した上述の分子モデルを分析して、どのEM164表面残基が、CDRから5Å以内にあるかを決定した。ネズミEM164抗体の表面を再構成するため、CDR外の表面残基はすべて、ヒト対応物に変化させなければならないが、CDRから5Å以内の残基はまた抗原特異性にも寄与しうるため、特に気をつけて扱われる。したがって、これらの後者の残基を同定し、そしてヒト化プロセス全体に渡って、注意深く検討しなければならない。表面再構成に用いたCDR定義は、重鎖CDR2に関してAbM定義、そして残りの5つのCDRに関してKabat定義を組み合わせている(図14)。表6は、EM164モデルの軽鎖または重鎖の配列いずれかにおいて、CDR残基いずれかから5Å以内にあった残基を示す。
【0165】
表6 CDRから5Å以内にあるEM164抗体フレームワーク表面残基
CDRから5Å以内のEM164表面残基
【0166】
【表6】
【0167】
G.最も相同なヒト表面の同定
[168]抗体データベースに対して、特定される残基位のみの検索の手はずを整えるSRソフトウェアを用いて、Kabat抗体配列データベース内で、EM164を表面再構成する候補ヒト抗体表面を同定した。天然対形成を保持するため、軽鎖および重鎖両方の表面残基を一緒に比較した。Kabatデータベースの最も相同なヒト表面を配列同一性の順位で並列させた。トップの5つの表面を表7に提供する。次いで、これらの表面を比較して、このうちどれがCDRから5Å以内に最小の変化しか必要としないかを同定した。白血病B細胞抗体、CLL1.69は、最少数の表面残基変化(総数10)しか必要とせず、そしてこれらの残基のうち2つのみがCDRから5Å以内に存在した。
【0168】
[169]EM164の全長可変領域配列もまた、Kabatヒト抗体データベースに対して並列させ、そして再び、CLL1.69が最も類似のヒト可変領域配列と同定された。総合すると、これらの配列比較によって、ヒト白血病B細胞抗体CLL1.69は、EM164のヒト表面として好ましい選択と同定された。
【0169】
表7−Kabatデータベースから抽出されたトップの5つのヒト配列
【0170】
【表7】
【0171】
SR(Pedersen 1993)によって並列を生成した。CDRから5Å以内にあるEM164表面残基を下線で示す。
【0172】
H.ヒト化EM164遺伝子の構築
[170]上述のようなPCR突然変異誘発技術を用いて、EM164の10の表面残基変化(表7)を作成した。CLL1.69の表面残基のうち8つは、CDRから5Å以内にはないため、ヒト化EM164のすべてのバージョンで、これらの残基をネズミからヒトに変化させた(表8および表9)。CDRから5Å以内の2つの軽鎖表面残基(Kabatの3位および45位)をヒトに変化させるかまたはネズミのままにした。総合すると、これらのオプションによって、構築したEM164の4つのヒト化バージョンが生成される(図22および図23)。
【0173】
[171]4つのヒト化バージョンのうち、バージョン1.0は、10のヒト表面残基をすべて有する。CDR近傍の変化に関して、最も保存的なバージョンは、バージョン1.1であり、このバージョンは、CDRから5Å以内にあるネズミ表面残基の両方を保持した。4つのヒト化EM164抗体遺伝子を、一過性トランスフェクションおよび安定トランスフェクションに使用するため、抗体発現プラスミドにクローニングした(図16)。
【0174】
表8−ヒト化EM164抗体のバージョン1.0〜1.3の残基変化
【0175】
【表8】
【0176】
I.全長IGF−I受容体への、そして一部切除IGF−I受容体アルファ鎖への結合に関する、ネズミEM164抗体とヒト化EM164抗体バージョンの親和性の比較
[172]上述のように、ビオチン化全長ヒトIGF−I受容体またはmyc−エピトープタグ化一部切除IGF−I受容体アルファ鎖を用いた結合競合アッセイを通じて、ヒト化EM164抗体バージョン1.0〜1.3の親和性を、ネズミEM164抗体のものと比較した。ヒト胚性腎臓293T細胞において、適切な発現ベクターの一過性トランスフェクションによって、ヒト化EM164抗体試料を得て、そして精製したヒト化抗体標準を用いたELISAによって抗体濃度を決定した。ELISA結合競合測定のため、ヒト化抗体試料および多様な濃度のネズミEM164抗体の混合物を、間接的に捕捉されたビオチン化全長IGF−I受容体またはmyc−エピトープタグ化一部切除IGF−I受容体アルファ鎖とインキュベーションした。平衡化後、ヤギ抗ヒトFab’2抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用いて、結合したヒト化抗体を検出した。理論的には傾き=(Kd ヒト化Ab/Kd ネズミAb)を持つ直線を生じる、([結合したネズミAb]/[結合したヒト化Ab])対([ネズミAb]/[ヒト化Ab])のプロットを用いて、ヒト化抗体およびネズミ抗体の相対的親和性を決定した。
【0177】
[173]典型的な競合アッセイを図11に示す。Immulon−2HB ELISAプレートを、ウェルあたり100μlの炭酸緩衝液中、5μg/mlストレプトアビジンで、周囲温度で7時間コーティングした。ストレプトアビジンでコーティングしたウェルを、200μlのブロッキング緩衝液(TBS−T緩衝液中、10mg/ml BSA)で1時間ブロッキングし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてビオチン化IGF−I受容体(ウェルあたり5ng)と、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、間接的に捕捉したビオチン化IGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そして100μlのブロッキング緩衝液中、ヒト化EM164抗体(15.5ng)およびネズミ抗体(0ng、または16.35ng、または32.7ng、または65.4ng、または163.5ng)の混合物と、周囲温度で2時間インキュベーションし、そして次いで、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、ウェルをTBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗ヒトFab’2抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、1μg/ml)と1時間インキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した。
【0178】
[174]([結合したネズミAb]/[結合したヒト化Ab])対([ネズミAb]/[ヒト化Ab])のプロットは、0.52の傾き(=Kd ヒト化Ab/Kd ネズミAb)を持つ直線(r2=0.996)を生じた。したがって、ヒト化抗体バージョン1.0は、ネズミEM164抗体より緊密にIGF−I受容体に結合した。全長IGF−I受容体への、または一部切除IGF−I受容体アルファ鎖への結合に関して、ネズミEM164抗体とヒト化EM164抗体のバージョン1.0、1.1、1.2および1.3の競合に関して、約0.5〜0.8の範囲の勾配の類似の値が得られたことから、EM164抗体のヒト化バージョンがすべて類似の親和性を有し、これはすべて、親ネズミEM164抗体のものより優れていたことが示された。重鎖中に92F→C突然変異を持つEM164抗体のキメラバージョンは、ネズミEM164抗体との類似の結合競合において、約3の傾きを示したことから、EM164の92F→C突然変異体が、IGF−I受容体への結合に関して、ネズミEM164抗体より3倍低い親和性を有することが示された。ヒト化EM164 v1.0抗体は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ネズミEM164抗体と同様の阻害を示した(図24)。血清が刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ヒト化EM164 v1.0抗体による阻害は、ネズミEM164抗体による阻害と同様であった。
【0179】
表9
【0180】
【表9】
【0181】
EM164Abの異なるバージョンの軽鎖および重鎖の可変領域ポリペプチドに関して、Kabat番号付け系を用いる。アミノ酸残基は、ポリペプチド鎖における位にしたがって、フレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)にグループ分けされる。
【0182】
Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 1991, NIH Publication No.91−3242から採用。
【0183】
J.本明細書記載のネズミ抗体配列およびヒト化抗体配列から出発して、改善された抗IGF−I受容体抗体を提供するプロセス
[175]抗IGF−I受容体抗体EM164およびそのヒト化変異体のアミノ酸配列および核酸配列を用いて、改善された特性を有し、そしてやはり本発明の範囲内である、他の抗体を作成した。こうした改善された特性には、IGF−I受容体への親和性増加が含まれる。いくつかの研究によって、最初の抗体配列の知識に基づいて、抗体配列の多様な位で、1以上のアミノ酸変化を導入した際の、結合および発現レベルなどの特性に対する影響が調査されてきている(Yang, W.P.ら, 1995, J. Mol. Biol., 254, 392−403;Rader, C.ら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 8910−8915;Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539)。
【0184】
[176]これらの研究において、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、エラープローンPCR、DNAシャッフリング、または大腸菌のミューテーター株などの方法を用い、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワーク領域において、重鎖および軽鎖の遺伝子配列を変化させることによって、最初の抗体の変異体が生成された(Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539;Adey, N.B.ら, 1996, 第16章, pp.277−291, “Phage Display of Peptides and Proteins”中, Kay, B.K.ら監修, Academic Press)。最初の抗体の配列を変化させるこれらの方法により、標準的なスクリーニング技術の使用を通じて、親和性が改善された第二の抗体が生じている(Gram, H.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3576−3580;Boder, E.T.ら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 10701−10705;Davies, J.およびRiechmann, L., 1996, Immunotechnolgy, 2, 169−179;Thompson, J.ら, 1996, J. Mol. Biol., 256, 77−88;Short, M.K.ら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 16365−16370;Furukawa, K.ら, 2001, J. Biol. Chem., 276, 27622−27628)。
【0185】
[177]抗体の1以上のアミノ酸残基を変化させる類似の指定戦略によって、本発明記載の抗体配列を用いて、機能が改善された抗IGF−I受容体抗体を作成することも可能であり、例えば療法剤の付着に用いる、共有修飾のための好都合な付着点にある未結合(free)アミノ基またはチオール基など、適切な基を有する抗体がある。
【0186】
K.ネズミ抗体、キメラ抗体および他の抗IGF−I受容体抗体のための代替発現系
[178]ヒト化抗体(上記)を発現するのに用いたものと類似の哺乳動物プラスミドから、ネズミ抗IGF−I受容体抗体もまた、発現させた。発現プラスミドは、軽鎖カッパ配列および重鎖ガンマ−1配列を含むネズミ定常領域を有することが知られる(McLeanら, 2000, Mol Immunol., 37, 837−845)。単純な制限消化およびクローニングによって、抗体可変領域いずれか、例えばネズミ抗IGF−I受容体抗体を受け入れるように、これらのプラスミドを設計した。通常は、発現プラスミド中のものと適合する制限部位を生成するため、抗IGF−I受容体抗体のさらなるPCRが必要であった。
【0187】
[179]全長ネズミ抗IGF−I受容体抗体を発現する別のアプローチは、キメラ抗IGF−I受容体抗体発現プラスミドのヒト定常領域を置換することであった。可変領域のカセット、並びに軽鎖および重鎖両方の定常領域のカセットを用いて、キメラ発現プラスミド(図16)を構築した。制限消化によって、抗体可変配列をこの発現プラスミドにクローニングしたのとちょうど同じように、別の制限消化を用いて、定常領域配列いずれかにおいてクローニングした。例えば、抗IGF−I抗体可変領域のクローニングのため、本明細書に記載するRNAなど、ネズミ・ハイブリドーマRNAから、カッパ軽鎖cDNAおよびガンマ−1重鎖cDNAをクローニングした。同様に、Kabatデータベースにおいて入手可能な配列から、適切なプライマーを設計した(表10を参照されたい)。例えば、RT−PCRを用いて、定常領域配列をクローニングし、そしてこれらの断片をキメラ抗IGF−I受容体抗体発現プラスミドにクローニングするのに必要な制限部位を生成した。次いで、このプラスミドを用いて、CHO細胞株などの標準的哺乳動物発現系において、全長ネズミ抗IGF−I受容体抗体を発現した。
【0188】
表10−それぞれ、ネズミ・ガンマ−1定常領域およびネズミ・カッパ定常領域をクローニングするため設計したプライマー
【0189】
【表10】
【0190】
Kabatデータベースにおいて入手可能な配列からプライマーを設計した(Johnson, GおよびWu, T.T.(2001)Nucleic Acids Research, 29:205−206)。
【0191】
寄託の記述
[180]ネズミEM164抗体を作成するハイブリドーマを、ブダペスト条約の条項のもとに、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、PO Box 1549, Manassas, VA 20108に、2002年6月14日に寄託し、そしてATCC寄託番号PTA−4457を割り当てられた。
【0192】
[181]特定の特許および印刷刊行物が本開示において言及されており、これらの解説は、本明細書にそれぞれ完全に援用される。
[182]本発明は、詳細に、そして特定の態様に関連して記載されてきているが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な変化および修飾が実行可能であることが明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】[35]図1は、ヒトY1251F IGF−I受容体またはヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対する精製EM164抗体の特異的結合の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す。
【図2】[36]図2は、ビオチン化ヒトIGF−I受容体に対するEM164抗体の結合に関する結合滴定曲線を示す。
【図3】[37]図3は、ヒト乳癌MCF−7細胞に対するビオチン化IGF−Iの結合の、EM164抗体による阻害を示す。
【図4】[38]図4は、MCF−7細胞においてIGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化の、EM164抗体による阻害を示す。
【図5】[39]図5は、MCF−7細胞においてIGF−Iが刺激するIRS−1リン酸化の、EM164抗体による阻害を示す。
【図6】[40]図6は、SaOS−2細胞においてIGF−Iが刺激するシグナル伝達の、EM164抗体による阻害を示す。
【図7】[41]図7は、MTTアッセイによって評価されるような、異なる増殖条件下でのMCF−7細胞の増殖および生存に対するEM164抗体の効果を示す。
【図8】[42]図8は、多様な濃度の血清存在下、MCF−7細胞の増殖および生存に対するEM164抗体の効果を示す。
【図9】[43]図9は、IGF−Iが刺激するおよび血清が刺激するNCI−H838細胞増殖および生存の、EM164抗体による阻害を示す。
【図10】[44]図10は、マウスにおけるCalu−6肺癌異種移植片の増殖に対する、EM164抗体、タキソール、またはEM164抗体およびタキソールの組み合わせでの処置の効果を示す。
【図11】[45]図11は、ヒト化EM164抗体(v.1.0)およびネズミEM164抗体の結合の間の競合を示す。
【図12】[46]図12は、ネズミ抗IGF−I受容体抗体EM164の軽鎖のリーダー領域および可変領域のcDNA配列(配列番号49)およびアミノ酸配列(配列番号50)を示す。矢印はフレームワーク1の始まりをマークする。Kabatにしたがう3つのCDR配列を下線で示す。
【図13】[47]図13は、ネズミ抗IGF−I受容体抗体EM164の重鎖のリーダー領域および可変領域のcDNA配列(配列番号51)およびアミノ酸配列(配列番号52)を示す。矢印はフレームワーク1の始まりをマークする。Kabatにしたがう3つのCDR配列を下線で示す。
【図14】[48]図14は、Chothia規範的クラス定義によって決定されるような、抗体EM164の軽鎖および重鎖のCDRアミノ酸配列を示す。重鎖CDRのAbMモデリング・ソフトウェア定義もまた示す。軽鎖:CDR1は配列番号4であり、CDR2は配列番号5であり、そしてCDR3は配列番号6である。重鎖:CDR1は配列番号1であり、CDR2は配列番号2であり、そしてCDR3は配列番号3である。AbM重鎖:CDR1は配列番号53であり、CDR2は配列番号54であり、そしてCDR3は配列番号55である。
【図15】[49]図15は、Cr1(配列番号56)およびJ588.c(配列番号57)遺伝子の生殖系列配列と並列させた、抗IGF−I受容体抗体EM164の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す。ダッシュ記号(−)は配列同一性を示す。
【図16】[50]図16は、組換えEM164キメラ抗体および組換えヒト化EM164抗体を構築し、そして発現するのに用いたプラスミドを示す。A)軽鎖クローニングプラスミド、B)重鎖クローニングプラスミド、C)哺乳動物抗体発現プラスミド。
【図17】[51]図17は、EM164の表面残基を予測するのに用いた構造ファイル・セットにおいて、127の抗体からスクリーニングした10の最も相同な軽鎖アミノ酸配列を示す。eml64 LC(配列番号58)、2jel(配列番号59)、2pcp(配列番号60)、1nqb(配列番号61)、1kel(配列番号62)、1hyx(配列番号63)、1igf(配列番号64)、1tet(配列番号65)、1clz(配列番号66)、1bln(配列番号67)、1cly(配列番号68)、コンセンサス(配列番号69)。
【図18】[52]図18は、EM164の表面残基を予測するのに用いた構造ファイル・セットにおいて、127の抗体からスクリーニングした10の最も相同な重鎖アミノ酸配列を示す。em164 HC(配列番号70)、1nqb(配列番号71)、1ngp(配列番号72)、1fbi(配列番号73)、1afv(配列番号74)、1yuh(配列番号75)、1plg(配列番号76)、1d5b(配列番号77)、1ae6(配列番号78)、1axs(配列番号79)、3hfl(配列番号80)、コンセンサス(配列番号81)。
【図19】[53]図19は、10の最も相同な構造からの、(A)軽鎖および(B)重鎖の可変領域残基各々の平均アクセス可能性を示す。数字は、Kabat抗体配列位番号を示す。
【図20】[54]図20は、ネズミEM164(muEM164)およびヒト化EM164(huEM164)抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列を示す。muEM164(配列番号82)、huEM164 V1.0(配列番号83)、huEM164 V1.1(配列番号84)、huEM164 V1.2(配列番号85)、huEM164 V1.3(配列番号86)。
【図21】[55]図21は、ネズミ(muEM164、配列番号87)およびヒト化EM164抗体(huEM164、配列番号88)の重鎖可変領域アミノ酸配列を示す。
【図22】[56]図22は、軽鎖(DNA、配列番号89、アミノ酸、配列番号90)および重鎖(DNA、配列番号91、アミノ酸、配列番号92)両方のhuEM164 v1.0の可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図23−1】[57]図23は、ヒト化EM164 v1.1(DNA、配列番号93;アミノ酸、配列番号94)、v1.2(DNA、配列番号95;アミノ酸、配列番号96)およびv1.3(DNA、配列番号97;アミノ酸、配列番号98)の軽鎖可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図23−2】[57]図23は、ヒト化EM164 v1.1(DNA、配列番号93;アミノ酸、配列番号94)、v1.2(DNA、配列番号95;アミノ酸、配列番号96)およびv1.3(DNA、配列番号97;アミノ酸、配列番号98)の軽鎖可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図24】[58]図24は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ヒト化EM164 v1.0抗体およびネズミEM164抗体による阻害を示す。
【図25】[59]図25は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞のサイクリングを、EM164が抑制することを示す。
【図26】[60]図26は、IGF−1および血清の抗アポトーシス効果を、EM164が抑制することを示す。CK18タンパク質の切断レベルが増加していることによって立証されるように、EM164で処理すると、アポトーシス細胞死が生じる。
【図27】[61]図27は、免疫不全マウスにおけるヒトBxPC−3膵臓癌異種移植片の増殖に対する、EM164抗体、ゲムシタビン、またはEM164抗体およびゲムシタビンの組み合わせでの処理の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
[01]本出願は、本明細書にその全体が援用される、親出願第10/170,390号、2002年6月14日出願の一部継続出願である。
【0002】
発明の分野
[02]本発明は、ヒト・インスリン様増殖因子I受容体(IGF−I受容体)に結合する抗体に関する。より詳細には、本発明は、IGF−I受容体の細胞機能を阻害する、抗IGF−I受容体抗体に関する。さらにより詳細には、本発明は、腫瘍細胞の増殖および生存に対するIGF−I、IGF−IIおよび血清の効果に拮抗し、そしてアゴニスト活性を実質的に欠いている、抗IGF−I受容体抗体に関する。本発明はまた、前記抗体の断片、前記抗体のヒト化バージョンおよび表面再構成(resurfaced)バージョン、前記抗体のコンジュゲート、抗体誘導体、並びに診断適用、研究適用および療法適用におけるこれらの使用にも関する。本発明はさらに、上述の抗体およびその断片から作成される、改善された抗体またはその断片に関する。別の側面において、本発明は、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに、そして該ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[03]インスリン様増殖因子I受容体(IGF−I受容体)は、膜貫通ヘテロ四量体タンパク質であり、2つの細胞外アルファ鎖および2つの膜貫通ベータ鎖を有し、これらの鎖がジスルフィド連結されてβ−α−α−β立体配置を形成している。IGF−I受容体の細胞外ドメインに、リガンドであるインスリン様増殖因子I(IGF−I)およびインスリン様増殖因子II(IGF−II)が結合すると、細胞内チロシンキナーゼ・ドメインが活性化され、受容体の自己リン酸化および基質リン酸化が生じる。IGF−I受容体は、インスリン受容体に相同であり、ベータ鎖チロシンキナーゼ・ドメインにおいて、84%の高い配列類似性を有し、そしてアルファ鎖細胞外システインリッチ・ドメインにおいて、48%の低い配列類似性を有する(Ulrich, A.ら, 1986, EMBO, 5, 2503−2512;Fujita−Yamaguchi, Y.ら, 1986, J. Biol. Chem., 261, 16727−16731;LeRoith, D.ら, 1995, Endocrine Reviews, 16, 143−163)。IGF−I受容体およびそのリガンド(IGF−IおよびIGF−II)は、胚形成の間の増殖および発生、成体における代謝、細胞増殖および細胞分化を含む、多くの生理学的プロセスにおいて、重要な役割を果たす(LeRoith, D., 2000, Endocrinology, 141, 1287−1288;LeRoith, D., 1997, New England J. Med., 336, 633−640)。
【0004】
[04]IGF−IおよびIGF−IIは、血液中では、主にIGF結合性タンパク質との複合体中に存在して、どちらも内分泌ホルモンとして機能し、そして局所的に産生されるパラ分泌および自己分泌増殖因子として機能する(Humbel, R.E., 1990, Eur. J. Biochem., 190, 445−462;Cohick, W.S.およびClemmons, D.R., 1993, Annu. Rev. Physiol. 55, 131−153)。
【0005】
[05]IGF−I受容体は、腫瘍細胞の増殖、トランスフォーメーションおよび生存の促進に関連付けられてきている(Baserga, R.ら, 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332, F105−F126;Blakesley, V.A.ら, 1997, Journal of Endocrinology, 152, 339−344;Kaleko, M., Rutter, W.J.,およびMiller, A.D. 1990, Mol. Cell. Biol., 10, 464−473)。したがって、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、滑膜肉腫および膵臓癌を含む、いくつかの種類の腫瘍は、通常より高いレベルのIGF−I受容体を発現することが知られる(Khandwala, H.M.ら, 2000, Endocrine Reviews, 21, 215−244;Werner, H.およびLeRoith, D., 1996, Adv. Cancer Res., 68, 183−223;Happerfield, L.C.ら, 1997, J. Pathol., 183, 412−417;Frier, S.ら, 1999, Gut, 44, 704−708;van Dam, P.A.ら, 1994, J. Clin. Pathol., 47, 914−919;Xie, Y.ら, 1999, Cancer Res., 59, 3588−3591;Bergmann, U.ら, 1995, Cancer Res., 55, 2007−2011)。IGF−IおよびIGF−IIは、in vitroで、肺癌、乳癌、結腸癌、骨肉腫および子宮頸癌などのいくつかのヒト腫瘍細胞株の強力なマイトジェンであることが示されてきている(Ankrapp, D.P.およびBevan, D.R., 1993, Cancer Res., 53, 3399−3404;Cullen, K.J., 1990, Cancer Res., 50, 48−53;Hermanto, U.ら, 2000, Cell Growth & Differentiation, 11, 655−664;Guo, Y.S.ら, 1995, J. Am. Coll. Surg., 181, 145−154;Kappel, C.C.ら, 1994, Cancer Res., 54, 2803−2807;Steller, M.A.ら, 1996, Cancer Res., 56, 1761−1765)。これらの腫瘍および腫瘍細胞株のいくつかはまた、高レベルのIGF−IまたはIGF−IIも発現し、これらが自己分泌方式またはパラ分泌方式で増殖を刺激することも可能である(Quinn, K.A.ら, 1996, J. Biol. Chem., 271, 11477−11483)。
【0006】
[06]疫学的研究によって、IGF−I血漿レベルの上昇(およびIGF結合性タンパク質−3の低レベル)と、前立腺癌、結腸癌、肺癌および乳癌のリスクの増加に相関関係があることが示されてきている(Chan, J.M.ら, 1998, Science, 279, 563−566;Wolk, A.ら, 1998, J. Natl. Cancer Inst., 90, 911−915;Ma, J.ら, 1999, J. Natl. Cancer Inst., 91, 620−625;Yu, H.ら, 1999, J. Natl. Cancer Inst., 91, 151−156;Hankinson, S.E.ら, 1998, Lancet, 351, 1393−1396)。癌予防のため、血漿中のIGF−Iレベルを低下させるか、またはIGF−I受容体の機能を阻害するための戦略が示唆されてきている(Wu, Y.ら, 2002, Cancer Res., 62, 1030−1035;Grimberg, AおよびCohen P., 2000, J. Cell. Physiol., 183, 1−9)。
【0007】
[07]IGF−I受容体は、増殖因子枯渇、足場非依存性(anchorage independence)または細胞傷害性薬剤処置によって引き起こされるアポトーシスから腫瘍細胞を保護する(Navarro, M.およびBaserga, R., 2001, Endocrinology, 142, 1073−1081;Baserga, R.ら, 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332, F105−F126)。IGF−I受容体の分裂促進活性、トランスフォーミング活性および抗アポトーシス活性に決定的なドメインは、突然変異分析によって同定されてきている。
【0008】
[08]例えば、IGF−I受容体のチロシン1251残基は、抗アポトーシス活性およびトランスフォーメーション活性に決定的であるが、分裂促進活性には決定的でないと同定されてきている(O’Connor, R.ら, 1997, Mol. Cell. Biol., 17, 427−435;Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。リガンドが活性化するIGF−I受容体の細胞内シグナル伝達経路は、インスリン受容体基質(IRS−1およびIRS−2)のチロシン残基のリン酸化を伴い、これによって、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI−3−キナーゼ)が膜に補充される。PI−3−キナーゼの、膜に結合したリン脂質産物が、セリン/スレオニンキナーゼであるAktを活性化し、Aktの基質には、アポトーシス促進性タンパク質BADが含まれ、BADは、リン酸化されると不活性状態になる(Datta, S.R., Brunet, A.およびGreenberg, M.E., 1999, Genes & Development, 13, 2905−2927;Kulik, G., Klippel, A.およびWeber, M.J., 1997, Mol. Cell. Biol. 17, 1595−1606)。MCF−7ヒト乳癌細胞におけるIGF−I受容体の分裂促進性シグナル伝達は、PI−3−キナーゼを必要とし、そしてマイトジェンが活性化するプロテインキナーゼには非依存性である一方、分化したラット褐色細胞腫PC12細胞における生存性シグナル伝達は、PI−3−キナーゼ経路、およびマイトジェンが活性化するプロテインキナーゼ経路の両方を必要とする(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171;Parrizas, M., Saltiel, A.R.およびLeRoith, D., 1997, J. Biol. Chem., 272, 154−161)。
【0009】
[09]アンチセンス戦略によってIGF−I受容体レベルを下方制御すると、黒色腫、肺癌腫、卵巣癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫および横紋筋肉腫などのいくつかの腫瘍細胞株の腫瘍形成性が、in vivoおよびin vitroで、減少することが示されてきている(Resnicoff, M.ら, 1994, Cancer Res., 54, 4848−4850;Lee, C.−T.ら, 1996, Cancer Res., 56, 3038−3041;Muller, M.ら, 1998, Int. J. Cancer, 77, 567−571;Trojan, J.ら, 1993, Science, 259, 94−97;Liu, X.ら, 1998, Cancer Res., 58, 5432−5438;Shapiro, D.N.ら, 1994, J. Clin. Invest., 94, 1235−1242)。同様に、IGF−I受容体の優性ネガティブ突然変異体は、IGF−I受容体を過剰発現しているトランスフォーメーションされたRat−1細胞のin vivo腫瘍形成性およびin vitro増殖を減少させることが報告されてきている(Prager, D.ら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 2181−2185)。
【0010】
[10]IGF−I受容体mRNAに対するアンチセンスを発現する腫瘍細胞を、生体拡散(biodiffusion)チャンバー中、動物に注射すると、大規模なアポトーシスが起こる。IGF−I受容体の阻害によるアポトーシスに対して、腫瘍細胞は、正常細胞より感受性であるという仮説に基づいて、この観察から、IGF−I受容体は魅力的な療法ターゲットとなる。(Resnicoff, M.ら, 1995, Cancer Res., 55, 2463−2469;Baserga, R., 1995, Cancer Res., 55,249−252)。
【0011】
[11]腫瘍細胞においてIGF−I受容体の機能を阻害する別の戦略は、IGF−I受容体の細胞外ドメインに結合し、そしてその活性化を阻害する、抗IGF−I受容体抗体を使用している。IGF−I受容体に対するマウス・モノクローナル抗体を作成する、いくつかの試みが報告されてきており、このうち、2つの阻害性抗体、IR3および1H7が入手可能であり、そしていくつかのIGF−I受容体研究において、これらの使用が報告されてきている。
【0012】
[12]IR3抗体は、マウスを免疫するために、インスリン受容体の部分的に精製された胎盤調製物を用いて作成されてきており、これによって、インスリン受容体結合に関して選択的な抗体IR1と、そしてIGF−I受容体(ソマトメジン−C受容体)の優先的な免疫沈降を示すが、またインスリン受容体の弱い免疫沈降も示す、2つの抗体、IR2およびIR3が得られた(Kull, F.C.ら, 1983, J. Biol. Chem., 258, 6561−6566)。
【0013】
[13]1H7抗体は、IGF−I受容体の精製された胎盤調製物でマウスを免疫することによって作成されてきており、これによって、阻害性抗体1H7に加えて、3つの刺激性抗体が得られた(Li, S.−L.ら, 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun., 196, 92−98;Xiong, L.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5356−5360)。
【0014】
[14]別の報告において、高レベルのIGF−I受容体を発現するトランスフェクションされた3T3細胞でマウスを免疫することによって、ヒトIGF−I受容体に特異的なマウス・モノクローナル抗体集団が得られており、これらの抗体は、結合競合研究によって、そしてトランスフェクションされた3T3細胞に対するIGF−I結合の阻害または刺激によって、7つのグループに分類された(Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。
【0015】
[15]上述のように、IR3抗体は、in vitroのIGF−I受容体研究で最も一般的に用いられる阻害性抗体であるが、ヒトIGF−I受容体を発現するトランスフェクションされた3T3細胞およびCHO細胞において、アゴニスト性活性を示すという欠点がある(Kato, H.ら, 1993, J. Biol. Chem., 268, 2655−2661;Steele−Perkins, G.およびRoth, R.A., 1990, Biochem. Biophys. Res. Commun., 171, 1244−1251)。同様に、Soosらに作成された抗体集団の中で、最も阻害性の抗体、24−57および24−60もまた、トランスフェクションされた3T3細胞において、アゴニスト性活性を示した(Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。IR3抗体は、損なわれていない(intact)細胞において、そして可溶化後に、発現された受容体へのIGF−Iの結合を阻害する(がIGF−IIの結合は阻害しない)ことが報告されているが、in vitroの細胞において、IGF−IおよびIGF−IIがDNA合成を刺激する能力の両方を阻害することが示されている(Steele−Perkins, G.およびRoth, R.A., 1990, Biochem. Biophys. Res. Commun., 171, 1244−1251)。キメラ・インスリン−IGF−I受容体構築物によって、IR3抗体の結合性エピトープがIGF−I受容体の223〜274の領域であると推測されている(Gustafson, T.A.およびRutter, W.J., 1990, J. Biol. Chem., 265, 18663−18667;Soos, M.A.ら, 1992, J. Biol. Chem., 267, 12955−12963)。
【0016】
[16]MCF−7ヒト乳癌細胞株は、典型的には、in vitroでのIGF−IおよびIGF−IIの増殖反応を示すモデル細胞株として用いられる(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171)。MCF−7細胞において、IR3抗体は、血清不含条件において、外因性に添加されたIGF−IおよびIGF−IIの刺激性効果を、およそ80%、不完全に遮断する。また、IR3抗体は、10%血清中、MCF−7細胞の増殖を有意には阻害しない(25%未満)(Cullen, K.J.ら, 1990, Cancer Res., 50, 48−53)。in vitroで血清が刺激するMCF−7細胞の増殖が、IR3抗体によって弱くしか阻害されないのは、ヌードマウスにおいて、IR3抗体で処理しても、MCF−7異種移植片の増殖が、有意には阻害されないというin vivo研究の結果と関連がある可能性もある(Arteaga, C.L.ら, 1989, J. Clin. Invest., 84, 1418−1423)。
【0017】
[17]IR3および他の報告される抗体が、弱いアゴニスト性活性を持ち、そして(血清不含条件において外因性に添加されたIGF−IまたはIGF−IIによる刺激でなく)血清が刺激する、より生理学的な条件において、MCF−7細胞などの腫瘍細胞の増殖を有意に阻害することが不能であるため、血清が刺激する腫瘍細胞の増殖を有意に阻害するが、それ自体では有意なアゴニスト性活性を示さない、新規抗IGF−I受容体抗体に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
[18]したがって、本発明の目的は、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し、そして該受容体と拮抗することによって、該受容体の細胞活性を阻害し、そしてまた、該受容体に対するアゴニスト活性を実質的に欠いている、抗体、抗体断片および抗体誘導体を提供することである。
【0019】
[19]したがって、第一の態様において、軽鎖および重鎖両方の可変領域のアミノ酸配列、軽鎖および重鎖の可変領域の遺伝子のcDNA配列、そのCDR(相補性決定領域)の同定、その表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段に関して、本明細書において完全に性質決定されている、ネズミ抗体EM164を提供する。
【0020】
[20]第二の態様において、抗体EM164の表面再構成(resurfaced)バージョンまたはヒト化バージョンであって、抗体の表面曝露残基またはその断片が、既知のヒト抗体表面により緊密に似るように、軽鎖および重鎖の両方で置換されている、前記バージョンを提供する。こうしたヒト化抗体は、ネズミEM164に比較して、療法剤または診断剤として、増加した有用性を有しうる。抗体EM164のヒト化バージョンはまた、軽鎖および重鎖両方の可変領域のそれぞれのアミノ酸配列、軽鎖および重鎖の可変領域の遺伝子のDNA配列、CDRの同定、これらの表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段の開示に関して、本明細書に完全に性質決定される。
【0021】
[21]第三の態様において、例えば血清、インスリン様増殖因子Iおよびインスリン様増殖因子IIなどの増殖刺激剤の存在下で、約80%より多く、癌細胞の増殖を阻害することが可能な抗体を提供する。
【0022】
[22]第四の態様において、それぞれ配列番号1〜3:
【0023】
【化1】
【0024】
に示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む重鎖;
および配列番号4〜6:
【0025】
【化2】
【0026】
に示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖を有する、抗体または抗体断片を提供する。
[23]第五の態様において、配列番号7:
【0027】
【化3】
【0028】
に示されるアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する重鎖を有する抗体を提供する。
[24]同様に、配列番号8:
【0029】
【化4】
【0030】
に示されるアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有する軽鎖を有する抗体を提供する。
[25]第六の態様において、配列番号9〜12:
【0031】
【化5】
【0032】
の1つに対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構成軽鎖可変領域を有する抗体を提供する。
[26]同様に、配列番号13:
【0033】
【化6】
【0034】
に対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化または表面再構成重鎖可変領域を有する抗体を提供する。
[27]第七の態様において、改善された特性を有する、本発明の抗体または抗体断片を提供する。例えば、本発明の抗体または断片の親和性成熟によって、IGF−I受容体に対して改善された親和性を有する抗体または抗体断片が調製される。
【0035】
[28]本発明はさらに、前記抗体のコンジュゲートであって、本発明の抗体または抗体のエピトープ結合性断片に、直接、あるいは切断可能リンカーまたは切断不能リンカーを介して、細胞傷害性剤が共有結合している、前記コンジュゲートを提供する。好ましい態様において、細胞傷害性剤は、タキソール、メイタンシノイド、CC−1065またはCC−1065類似体である。
【0036】
[29]本発明はさらに、研究適用または診断適用における使用のため、さらに標識された抗体またはその断片を提供する。好ましい態様において、標識は放射標識、蛍光団(fluorophore)、発色団、画像化剤または金属イオンである。
【0037】
[30]診断法であって、癌を有すると推測される被験者に、前記標識抗体または断片を投与して、そして被験者体内の標識分布を測定するかまたは監視する、前記方法もまた、提供する。
【0038】
[31]第八の態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートを、単独で、あるいは他の細胞傷害性剤または療法剤と組み合わせて投与することによって、癌を有する被験者を治療する方法を提供する。癌は、例えば乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、またはIGF−I受容体レベルが上昇していることがこれから決定されるであろう他の癌の1以上であることも可能である。
【0039】
[32]第九の態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片または抗体コンジュゲートを、単独で、あるいは他の細胞傷害性剤または療法剤と組み合わせて投与することによって、癌を有する被験者を治療する方法を提供する。特に、好ましい細胞傷害性剤および療法剤には、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンが含まれる。より好ましくは、療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0040】
[33]癌は、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫、またはIGF−I受容体レベルが上昇していることがこれから決定されるであろう他の癌の1以上であることも可能である。
【0041】
[34]第十の態様において、本発明は、本明細書記載の1以上の要素、およびこれらの要素を使用するための使用説明書を含むキットを提供する。好ましい態様において、本発明のキットには、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤が含まれる。この好ましい態様のための使用説明書には、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌細胞の増殖を阻害するための使用説明書、並びに/あるいは本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌を有する患者を治療する方法のための使用説明書が含まれる。
【0042】
発明の詳細な説明
[62]本発明の発明者らは、細胞表面上のヒト・インスリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)に特異的に結合する新規抗体を発見しそして改善した。該抗体および断片は、受容体自体を活性化する能力を伴わずに、受容体の細胞機能を阻害するユニークな能力を有する。したがって、IGF−IRに特異的に結合し、そして阻害することが以前から知られていた抗体はまた、IGF−IRリガンドの非存在下であっても、受容体を活性化するのに対して、本発明の抗体または断片は、IGF−IRに拮抗するが、アゴニスト活性を実質的に欠いている。さらに、本発明の抗体および抗体断片は、血清の存在下で、80%を超えて、MCF−7細胞などのヒト腫瘍細胞の増殖を阻害し、これは以前から知られていた抗IGF−IR抗体を用いて得られる阻害より高い度合いである。
【0043】
[63]本発明は、ネズミ抗IGF−IR抗体、本明細書のEM164から出発し、該抗体は、軽鎖および重鎖両方のアミノ酸配列、CDRの同定、表面アミノ酸の同定、並びに組換え型でのその発現手段に関して、完全に性質決定されている。
【0044】
[64]図15に、EM164の配列と並列させて、生殖系列配列を示す。比較によって、軽鎖のCDR1中および重鎖のCDR2中の各1つを含めて、EM164中のありうる体細胞突然変異が同定される。
【0045】
[65]抗体EM164軽鎖および重鎖、並びにヒト化バージョンの、一次アミノ酸配列およびDNA配列を本明細書に開示する。しかし、本発明の範囲は、これらの配列を含む抗体および断片に限定されない。その代わり、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し、そして該受容体の生物学的活性に拮抗するが、アゴニスト活性を実質的に欠いている、すべての抗体および断片が、本発明の範囲内に属する。したがって、抗体および抗体断片は、抗体EM164またはヒト化誘導体と、骨格のアミノ酸配列、CDR、軽鎖および重鎖が異なってもよく、そしてそれでも本発明の範囲内に属することもありうる。
【0046】
[66]モデリングによって、抗体EM164のCDRが同定され、そしてその分子構造が予測されてきている。この場合もやはり、CDRはエピトープ認識に重要であるが、本発明の抗体および断片に必須ではない。したがって、例えば本発明の抗体の親和性成熟によって産生された、改善された特性を有する抗体および断片を提供する。
【0047】
[67]多様な抗体および抗体断片、並びに抗体模倣体は、特定のCDRセットに隣接する可変領域配列および定常領域配列内の突然変異、欠失および/または挿入によって、容易に産生可能である。したがって、例えば、既定のCDRセットに関して、異なる重鎖で置換することによって、異なるクラスのAbを作成することも可能であり、したがって、例えば、IgG1〜4、IgM、IgA1〜2、IgD、IgE抗体タイプおよびアイソタイプを産生することも可能である。同様に、完全に合成されたフレームワーク内に、既定のCDRセットを包埋することによって、本発明の範囲内の人工的抗体を産生することも可能である。用語「可変」は、本明細書において、抗体間で配列が異なり、そして抗原に対する特定の抗体各々の結合および特異性に際して用いられる、可変ドメインの特定の部分を指すのに用いられる。しかし、可変性は、通常、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布するのではない。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより保存される部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのフレームワーク領域を含み、主として、3つのCDRに連結されたベータ・シート立体配置を採用し、CDRは、ベータ・シート構造を連結し、そしてある場合にはベータ・シート構造の一部を形成する、ループを形作る。各鎖のCDRは、FR領域によって非常に近接して一緒に保持され、そして他方の鎖由来のCDRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(E.A. Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 1991, NIH)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合には、直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を示す。
【0048】
[68]表面再構成およびCDR移植などのいくつかの技術を用いて、ヒト化抗体、または他の哺乳動物による非拒絶のために適応させた抗体を、産生することも可能である。表面再構成技術においては、分子モデリング、統計解析および突然変異誘発を組み合わせて、ターゲット宿主の既知の抗体の表面に似るように、可変領域の非CDR表面を調節する。抗体表面を再構成する戦略および方法、並びに異なる宿主内で抗体の免疫原性を減少させる他の方法は、本明細書にその全体が援用される、米国特許5,639,641に開示される。CDR移植技術においては、ネズミ重鎖および軽鎖のCDRを、完全にヒトであるフレームワーク配列内に移植する。
【0049】
[69]本発明にはまた、本明細書中に記載される抗体の機能上の同等物も含まれる。機能上の同等物は、抗体のものに匹敵する結合特性を有し、そして例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体および一本鎖抗体、並びにそれらの断片を含む。こうした機能上の同等物を産生する方法が、PCT出願WO 93/21319、欧州特許出願第239,400号;PCT出願WO 89/09622;欧州特許出願338,745;および欧州特許出願EP 332,424に開示され、これら出願は、それぞれ全体が本明細書に援用される。
【0050】
[70]機能上の同等物には、本発明の抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を持つポリペプチドが含まれる。「実質的に同じ」は、アミノ酸配列に適用された場合、本明細書において、PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444−2448(1988)にしたがって、FASTA検索法によって決定されるように、別のアミノ酸配列と、少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を持つ配列と定義される。
【0051】
[71]キメラ抗体は、好ましくは、ヒトの抗体定常領域から実質的にまたは独占的に得られた定常領域、およびヒト以外の哺乳動物の可変領域配列から実質的にまたは独占的に得られた可変領域を有する。抗体のヒト化型は、例えばマウス抗体の、相補性決定領域をヒトのフレームワークドメイン内に置換することによって作成され、例えばPCT公報第WO92/22653号を参照されたい。ヒト化抗体は、好ましくは、対応するヒト抗体領域に実質的にまたは独占的に由来する、定常領域、および相補性決定領域(CDR)以外の可変領域、並びにヒト以外の哺乳動物に実質的にまたは独占的に由来するCDRを有する。
【0052】
[72]機能上の同等物には、一本鎖抗体(scFv)としても知られる、一本鎖抗体断片もまた含まれる。これらの断片は、1以上の相互連結リンカーを伴いまたは伴わずに、抗体可変軽鎖配列(VL)の少なくとも1つの断片に係留された(tethered)、抗体可変重鎖アミノ酸配列(VH)の少なくとも1つの断片を含有する。こうしたリンカーは、ひとたび(VL)ドメインおよび(VH)ドメインが連結されたならば、一本鎖抗体断片が由来する全抗体のターゲット分子結合特異性が維持されるように、これらのドメインが適切に三次元フォールディングされることを確実にするよう選択された、短い柔軟なペプチドであることも可能である。一般的に、(VL)配列または(VH)配列のカルボキシル末端は、こうしたペプチド・リンカーによって、相補(VL)配列および(VH)配列のアミノ末端に、共有結合されていることも可能である。分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリーまたは類似の技術によって、一本鎖抗体断片を生成することも可能である。真核細胞、または細菌を含む原核細胞いずれかにおいて、これらのタンパク質を産生することも可能である。
【0053】
[73]一本鎖抗体断片は、本明細書記載の全抗体の可変領域または相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つを有するアミノ酸配列を含有するが、これらの抗体の定常ドメインのある程度またはすべてを欠く。これらの定常ドメインは、抗原結合に必要ではないが、全抗体構造の主要部分を構成する。一本鎖抗体断片は、したがって、定常ドメインの一部またはすべてを含有する抗体の使用に関連する不具合のある程度を克服することも可能である。例えば、一本鎖抗体断片は、生物学的分子および重鎖定常領域間の望ましくない相互作用、または他の望ましくない生物学的活性を持たない傾向がある。さらに、一本鎖抗体断片は、全抗体よりかなり小さく、そしてしたがって、全抗体より毛細血管透過性が高いことから、より効率的に局在し、そしてターゲット抗原結合部位に結合することが可能になる。また、抗体断片は、原核細胞において、比較的大規模に産生可能であり、したがって産生が容易である。さらに、一本鎖抗体断片は比較的サイズが小さいことから、全抗体よりも、レシピエントにおいて免疫応答を誘発する可能性が低くなる。
【0054】
[74]機能上の同等物には、さらに、全抗体のものと同じかまたは匹敵する結合特性を有する抗体の断片が含まれる。こうした断片は、Fab断片またはF(ab’)2断片の一方または両方を含有することも可能である。好ましくは、抗体断片は、全抗体の6つの相補性決定領域すべてを含有するが、3つ、4つまたは5つのCDRなど、こうした領域すべてより少ない領域を含有する断片もまた、機能性である。さらに、機能上の同等物は、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそのサブクラスのいずれか1つのメンバーであることも可能であるし、また機能上の同等物をこれらのクラスおよびサブクラスと組み合わせることも可能である。
【0055】
[75]本明細書記載の抗IGF−I受容体抗体EM164およびそのヒト化変異体のアミノ酸配列および核酸配列の知識を用いて、ヒトIGF−I受容体にやはり結合し、そしてIGF−I受容体の細胞機能を阻害する、他の抗体を作成することも可能である。いくつかの研究によって、最初の抗体配列の知識に基づいて、抗体配列中の多様な位置で、1以上のアミノ酸変化を導入した際の、結合および発現レベルなどの特性に対する影響が調査されてきている(Yang, W.P.ら, 1995, J. Mol. Biol., 254, 392−403;Rader, C.ら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 8910−8915;Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539)。
【0056】
[76]これらの研究において、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、エラープローン(error-prone)PCR、DNAシャッフリング、または大腸菌(E. coli)のミューテーター株などの方法を用い、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワーク領域において、重鎖および軽鎖の遺伝子配列を変化させることによって、最初の抗体の変異体が生成された(Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539;Adey, N.B.ら, 1996, 第16章, pp.277−291, “Phage Display of Peptides and Proteins”中, Kay, B.K.ら監修, Academic Press)。最初の抗体の配列を変化させるこれらの方法によって、親和性が改善された第二の抗体が生じている(Gram, H.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3576−3580;Boder, E.T.ら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 10701−10705;Davies, J.およびRiechmann, L., 1996, Immunotechnolgy, 2, 169−179;Thompson, J.ら, 1996, J. Mol. Biol., 256, 77−88;Short, M.K.ら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 16365−16370;Furukawa, K.ら, 2001, J. Biol. Chem., 276, 27622−27628)。
【0057】
[77]抗体の1以上のアミノ酸残基を変化させる類似の指定戦略(directed strategy)によって、本発明記載の抗体配列を用いて、機能が改善された抗IGF−I受容体抗体を作成することも可能である。
【0058】
[78]本発明のコンジュゲートは、細胞傷害性剤に連結された、本明細書に開示する抗体、断片、およびその類似体を含む。好ましい細胞傷害性剤は、メイタンシノイド、タキサンおよびCC−1065類似体である。in vitro法によってコンジュゲートを調製することも可能である。細胞傷害性剤を抗体に連結するため、連結基を用いる。適切な連結基が当該技術分野に周知であり、そしてこれには、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、感光基、ペプチダーゼ不安定性基およびエステラーゼ不安定性基が含まれる。好ましい連結基は、ジスルフィド基およびチオエーテル基である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、または抗体および細胞傷害性剤の間にチオエーテル結合を形成することによって、コンジュゲートを構築することも可能である。
【0059】
[79]好ましい細胞傷害性剤の中に、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体がある。適切なメイタンシノイドの例には、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体が含まれる。適切なメイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;第4,256,746号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,362,663号;第4,364,866号;第4,450,254号;第4,322,348号;第4,371,533号;第6,333,410号;第5,475,092号;第5,585,499号および第5,846,545号に開示される。
【0060】
[80]タキサンもまた、好ましい細胞傷害性剤である。本発明での使用に適したタキサンが、米国特許第6,372,738号および第6,340,701号に開示される。
[81]CC−1065およびその類似体もまた、本発明での使用に好ましい細胞傷害性薬剤である。CC−1065およびその類似体は、米国特許第6,372,738号;第6,340,701号;第5,846,545号および第5,585,499号に開示される。
【0061】
[82]こうした細胞傷害性コンジュゲートの調製のための魅力的な候補はCC−1065であり、これはストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された、強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、ドキソルビシン、メトトレキセートおよびビンクリスチンなどの一般的に用いられる抗癌薬剤より、in vitroで約1000倍強力である(B.K. Bhuyanら, Cancer Res., 42, 3532−3537(1982))。
【0062】
[83]メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、およびカリケアマイシンなどの細胞傷害性薬剤もまた、本発明のコンジュゲートの調製に適しており、そして薬剤分子を、血清アルブミンなどの中間キャリアー分子を通じて、抗体分子に連結することもまた可能である。
【0063】
[84]診断適用のため、本発明の抗体は、典型的には、検出可能部分で標識されるであろう。検出可能部分は、直接または間接的いずれかで検出可能シグナルを生じることが可能ないかなるものであることも可能である。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S、または131Iなどの放射性同位体;フルオレセイン・イソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリンなどの蛍光化合物または化学発光化合物;あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼなどの酵素であることも可能である。
【0064】
[85]検出可能部分に抗体をコンジュゲート化するため、当該技術分野に知られるいかなる方法を使用することも可能であり、こうした方法には、Hunterら, Nature 144:945(1962);Davidら, Biochemistry 13:1014(1974);Painら, J. Immunol. Meth. 40:219(1981);およびNygren, J. Histochem. and Cytochem. 30:407(1982)が含まれる。
【0065】
[86]競合結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなどの、いかなる既知のアッセイ法で、本発明の抗体を使用することも可能である(Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, pp.147−158(CRC Press, Inc., 1987))。
【0066】
[87]本発明の抗体はまた、in vivo画像化にも有用であり、この場合、放射線不透過(radio−opaque)剤または放射性同位体などの検出可能部分で標識した抗体を被験者に、好ましくは血流中に投与し、そして宿主中の標識抗体の存在および位置をアッセイする。この画像化技術は、悪性腫瘍の病期決定および治療に有用である。核磁気共鳴、放射線学、または当該技術分野に知られる他の検出手段のいずれによるものであれ、宿主において検出可能である、いかなる部分で抗体を標識することも可能である。
【0067】
[88]本発明の抗体はまた、アフィニティー精製剤としても有用である。このプロセスでは、当該技術分野に周知の方法を用いて、Sephadex樹脂またはろ紙などの適切な支持体上に抗体を固定する。
【0068】
[89]本発明の抗体はまた、細胞におけるIGF−I受容体の機能を阻害することに基づいて、生物学的研究における試薬としても有用である。
[90]療法適用のため、薬学的に許容しうる投薬型で、本発明の抗体またはコンジュゲートを被験者に投与する。これらは、ボーラスとして、またはある期間に渡る連続注入によって静脈内に、筋肉内経路、皮下経路、関節内経路、滑膜内経路、クモ膜下腔内経路、経口経路、局所経路、または吸入経路によって、投与可能である。また、腫瘍内経路、腫瘍周辺経路、病巣内経路、または病巣周辺経路によって抗体を投与して、局所、並びに全身性の療法効果を発揮することも可能である。適切な薬学的に許容しうるキャリアー、希釈剤、および賦形剤が周知であり、そして臨床状況を保証するものとして、当業者によって決定可能である。適切なキャリアー、希釈剤および/または賦形剤の例には:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが含まれる。本発明の方法をin vitro、in vivo、またはex vivoで実施することも可能である。
【0069】
[91]他の療法処置において、1以上のさらなる療法剤と、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートを同時投与するか、または連続投与することも可能である。適切な療法剤には、限定されるわけではないが、細胞傷害性剤または細胞分裂停止剤が含まれる。タキソールは、細胞傷害性剤でもあり、好ましい療法剤である。
【0070】
[92]癌療法剤は、宿主への損傷を最小限にしつつ、癌細胞を殺すかまたはその増殖を制限することを模索する剤である。したがって、こうした剤は、癌細胞特性における、健康な宿主細胞とのいかなる相違(例えば代謝、血管形成または細胞表面抗原提示)を利用することも可能である。腫瘍形態形成における相違が、介入の潜在的な箇所である:例えば、第二の療法剤は、固形腫瘍内部の血管形成を遅延させ、それによってその増殖速度を遅らせる際に有用な、抗VEGF抗体などの抗体であることも可能である。他の療法剤には、限定されるわけではないが、グラニセトロンHClなどの補助剤(adjuncts)、酢酸ロイプロリドなどのアンドロゲン阻害剤、ドキソルビシンなどの抗生物質、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤、インターフェロン・アルファ−2aなどの代謝拮抗剤、タキソールなどの細胞傷害性剤、rasファルネシル・トランスフェラーゼ阻害剤などの酵素阻害剤、アルデスロイキンなどの免疫調節剤、およびメルファランHClなどのナイトロジェンマスタード誘導体等が含まれる。
【0071】
[93]抗癌効力を改善するために、EM164と組み合わせることも可能な療法剤には、腫瘍学治療に用いられる多様な剤が含まれ(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、エポチロン、並びに細胞傷害性薬剤および細胞表面受容体に対する抗体のコンジュゲートがある。好ましい療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0072】
[94]1以上のさらなる療法剤を、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートの前に、これらと同時に、またはこれらの後に投与することも可能である。当業者は、各療法剤に関して、投与の特定の順番に利点がありうることを理解するであろう。同様に、当業者は、各療法剤に関して、剤、および本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートを投与する間の時間の長さが、多様であろうことを理解するであろう。
【0073】
[95]当業者は、各療法剤の投薬量が、剤の独自性に応じることを理解するであろうが、好ましい投薬量は、約10mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートル、より好ましくは約50mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの範囲であることも可能である。白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン)などの好ましい剤に関しては、好ましい投薬量は、約10mg/平方メートル〜約400mg/平方メートルであり、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)に関しては、好ましい投薬量は、約20mg/平方メートル〜約150mg/平方メートルであり、ゲムシタビンに関しては、好ましい投薬量は、約100mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルであり、そしてカンプトテシンに関しては、好ましい投薬量は、約50mg/平方メートル〜約350mg/平方メートルである。これらおよび他の療法剤の投薬量は、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲートが、療法剤と同時にまたは連続して投与されるかどうかに応じる可能性もある。
【0074】
[96]本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および1以上のさらなる療法剤の投与は、同時投与されるかまたは連続投与されるかいずれであっても、療法適用に関して、上述するように行うことも可能である。同時投与に適した薬学的に許容しうるキャリアー、希釈剤、および賦形剤は、同時投与される特定の療法剤の独自性に応じることが、当業者に理解されるであろう。
【0075】
[97]凍結乾燥型でなく、水性投薬型で存在する場合、抗体は、典型的には、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で配合されるであろうが、これらの範囲外の広い変動が許容される。疾患治療のため、抗体またはコンジュゲートの適切な投薬量は、上に定義されるような治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的または療法目的で投与されるかどうか、以前の療法の経過、患者の病歴および抗体に対する応答、並びに主治医の自由裁量に応じるであろう。抗体を一度にまたは一連の治療に渡って、患者に適切に投与する。
【0076】
[98]疾患の種類および重症度に応じて、例えば1以上の別個の投与によるか、または連続注入によるかいずれであっても、好ましくは約1mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの抗体が、患者に投与する、最初の候補投薬量であり、より好ましくは、1もしくはそれより多くの分散投与(separate administration)または連続注入のいずれかによる約10mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの抗体である。数日以上に渡る反復投与では、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで、治療を反復する。しかし、他の投薬措置が有用である可能性もあり、そしてこれらも排除されない。
【0077】
[99]本発明にはまた、本明細書記載の要素の1以上、およびこれらの要素を使用するための使用説明書を含むキットも含まれる。好ましい態様において、本発明のキットには、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤が含まれる。この好ましい態様の使用説明書には、本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて癌細胞の増殖を阻害するための使用説明書、並びに/あるいは本発明の抗体、抗体断片またはコンジュゲート、および療法剤を用いて、癌を有する患者を治療する方法のための使用説明書が含まれる。
【0078】
[100]好ましくは、キットに用いられる抗体は、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有するか、または抗体はエピトープ結合性断片であり、抗体および断片はどちらも、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する。キット中で用いられる抗体および抗体断片はまた、EM164抗体の表面再構成バージョン、EM164抗体のヒト化バージョン、あるいは少なくとも1つのヌクレオチド突然変異、欠失または挿入を有する、EM164抗体の改変されたバージョンであることも可能である。これらの3つのバージョンの抗体および抗体断片は、EM164抗体と同じ結合特異性を保持する。
【0079】
[101]好ましくは、キットに用いられる療法剤は、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される。より好ましくは、療法剤は、白金剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ゲムシタビン、またはカンプトテシンである。
【0080】
[102]本発明のキットの要素は、キットに適した形であり、例えば溶液または凍結乾燥粉末である。キットの要素の濃度または量は、キットの各要素の同一性および意図される使用に応じて多様であることが、当業者には理解されるであろう。
【0081】
[103]キットの使用説明書に言及される癌およびそれに由来する細胞には、乳癌、結腸癌、卵巣癌、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫が含まれる。
【実施例】
【0082】
実施例
[104]本発明は、ここで、以下の実施例に言及することによって記載されるが、実施例は例示でしかなく、そして本発明を限定することは意図されない。
【0083】
(実施例1)
ネズミEM164抗体
[105]この第一の実施例において、本発明のネズミ抗体の完全一次アミノ酸構造およびcDNA配列、並びにその結合特性および組換え型でのその発現手段を開示する。したがって、免疫学的技術分野の一般の当業者が、過度な実験を伴わずに前記抗体を調製可能であるように、本発明の抗体およびその調製法の完全な開示を提供する。
【0084】
A. 抗IGF−I受容体モノクローナル抗体ハイブリドーマの生成
[106]多数のIGF−I受容体(細胞あたり〜107)を発現するため、Y1251F突然変異を持つヒトIGF−I受容体を発現する細胞株を免疫に用いた。IGF−I受容体の細胞質ドメインにおけるY1251F突然変異によって、トランスフォーメーションおよび抗アポトーシス・シグナル伝達の欠失が生じたが、IGF−I結合、およびIGF−Iが刺激する分裂促進シグナル伝達には影響はなかった(O’Connor, R.ら, 1997, Mol. Cell. Biol., 17, 427−435;Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。本実施例の抗体は、IGF−I受容体の細胞外ドメインに結合し、これはY1251F突然変異体および野生型受容体の両方で同一であったため、この突然変異は、その他の点では、抗体生成に影響を及ぼさなかった。
【0085】
[107]Y1251F突然変異体ヒトIGF−I受容体遺伝子と一緒にピューロマイシン抵抗性遺伝子をトランスフェクションすることによって、IGF−I受容体欠損マウスの3T3様細胞から、Y1251F突然変異を含むヒトIGF−I受容体を発現する細胞株を生成し、そしてピューロマイシン(2.5マイクログラム/ml)を用いて、そして高IGF−I受容体発現に関するFACS分取によって、選択した(Miura, M.ら, 1995, J. Biol. Chem., 270, 22639−22644)。大部分の細胞には毒性である、25マイクログラム/mlなどの高濃度のピューロマイシンを用いて、高レベルのIGF−I受容体発現を有する細胞株をさらに選択した。生存コロニーを摘み取り、そして高レベルのIGF−I受容体発現を示すものを選択した。
【0086】
[108]Y1251F突然変異体ヒトIGF−I受容体過剰発現細胞(5x105細胞、0.2mlのPBSに懸濁)で、第0日に、6ヶ月齢のCAF1/Jメスマウスを腹腔内経路で免疫した。0.2mlの細胞懸濁物を用いて動物に以下のように追加免疫した:第2日、1x106細胞;第5日、2x106細胞;第7日、第9日、第12日、および第23日、1x107細胞。第26日にマウスを屠殺し、そして脾臓を取り除いた。
【0087】
[109]2枚のすりガラス・スライド間で脾臓をすりつぶして、単細胞懸濁物を得て、これを、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する血清不含RPMI培地(SFM)で洗浄した。脾臓細胞ペレットを10mlの水中の0.83%(w/v)塩化アンモニウム溶液に、氷上で10分間再懸濁して、赤血球細胞を溶解し、そして次いで、血清不含培地(SFM)で洗浄した。脾臓細胞(1.2x108)を、非分泌性マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8.653(ATCC、メリーランド州ロックビル;カタログ番号CRL1580)由来の骨髄腫細胞(4x107)と一緒に、試験管中でプールし、そして血清不含RPMI−1640培地(SFM)で洗浄した。上清を取り除いて、そして細胞ペレットを残った培地に再懸濁した。試験管を37℃の水の入ったビーカーに入れ、そして穏やかに振盪しながら、1.5mlのポリエチレングリコール溶液(75mM HEPES、pH8中、50%PEG(w/v)、平均分子量1500)を滴下速度0.5ml/分で、ゆっくりと添加した。1分間待った後、10mlのSFMを以下のように添加した:最初の1分間に渡って1ml、次の1分間に渡って2ml、そして次の1分間に渡って7ml。次いで、さらに10mlを1分間に渡ってゆっくりと添加した。遠心分離によって細胞をペレットにし、SFMで洗浄し、そして5%ウシ胎児血清(FBS)、ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%ハイブリドーマ・クローニング上清(HCS)を補ったRPMI−1640増殖培地に再懸濁した。ウェルあたり200μl中、2x105脾臓細胞で、細胞を96ウェル平底組織培養プレートに植え付けた。5〜7日後、ウェルあたり100μlを取り除き、そしてヒポキサンチン/チミジン(HT)および5%FBSを補った増殖培地で置き換えた。免疫およびハイブリドーマ産生に用いた一般的な条件は、J. LangoneおよびH. Vunakis(監修, Methods in Enzymology, Vol. 121, “Immunochemical Techniques, PartI”;1986;Academic Press,フロリダ)、並びにE. HarlowおよびD. Lane(“Antibodies:A Laboratory Manual”;1988;Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載される。当業者に周知であるように、免疫およびハイブリドーマ産生の他の技術もまた使用可能である。
【0088】
[110]以下に記載するように、ELISAによって精製ヒトIGF−I受容体に対する結合に関して、そして、ELISAおよびFACSスクリーニングによって、ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞に対する特異的結合に関して、およびヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対する結合の欠如に関して、ハイブリドーマ・クローン由来の培養上清をスクリーニングした。ヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対するよりも、ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞に、より高い結合親和性を示すクローンを増殖させ、そしてサブクローニングした。上記結合アッセイによって、サブクローンの培養上清をさらにスクリーニングした。この方法によって、サブクローン3F1−C8−D7(EM164)を選択し、そして以下に記載するように、重鎖および軽鎖遺伝子をクローニングし、そして配列決定した。
【0089】
[111]以下の方法によって、IGF−I受容体に対する結合に関して、ハイブリドーマ・クローンからの上清のスクリーニングに使用するため、ヒトIGF−I受容体を単離した。スルホ−NHS−LC−ビオチン、スルホ−NHS−SS−ビオチン、またはNHS−PEO4−ビオチンなどのビオチン化試薬を用いて、組換えIGF−Iを修飾することによって、ビオチン化IGF−Iを調製した。ビオチン化IGF−Iをストレプトアビジン−アガロースビーズ上に吸収させ、そしてヒト野生型またはY1251F突然変異体IGFRを過剰発現する細胞由来の溶解物とインキュベーションした。ビーズを洗浄し、そして2〜4M尿素およびTriton X−100またはオクチル−β−グルコシドなどの界面活性剤を含有する緩衝液を用いて溶出した。溶出したIGF−I受容体をPBSに対して透析し、そして還元条件下でSDS−PAGEによって純度に関して分析すると、それぞれ約135kDaおよび95kDaの分子量のIGF−I受容体のアルファ鎖およびベータ鎖のバンドが示された。
【0090】
[112]精製IGF−I受容体に対するハイブリドーマ上清の結合に関してチェックするため、Immulon−4HB ELISAプレート(Dynatech)を精製ヒトIGF−I受容体試料(アフィニティー精製試料の尿素/オクチル−β−グルコシド溶出からの透析によって調製したもの)でコーティングし、pH9.5の50mM CHES緩衝液で希釈した(100μl;4℃、一晩)。200μlのブロッキング緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.5、および0.1% Tween−20を含有するTBS−T緩衝液中、10mg/ml BSA)でウェルをブロッキングし、そしてハイブリドーマ・クローン由来の上清(100μl;ブロッキング緩衝液で希釈)と約1時間〜12時間インキュベーションし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗マウスIgG Fc抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.8μg/ml;Jackson ImmunoResearch Laboratories)とインキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した(0.1Mクエン酸緩衝液、pH4.2中、0.5mg/ml ABTS、0.03%H2O2)。典型的には、3F1ハイブリドーマ・サブクローン由来の上清は、発色3分以内に、約1.2吸光単位のシグナルを生じ、これはいくつかの他のハイブリドーマ・クローンからの上清に関して得られた0.0の値とは対照的であった。このELISAの一般的な条件は、E. HarlowおよびD. Lane(“Using Antibodies:A Laboratory Manual”;1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載されるような抗体結合および検出のための標準的ELISA条件と同様であり、この条件もまた、使用可能である。
【0091】
[113]ヒトY1251F−IGF−I受容体を過剰発現する細胞株に対して、そしてヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞株に対して、ELISAを用いて、ヒトIGF−I受容体に特異的に結合し、そしてヒト・インスリン受容体に特異的に結合しないハイブリドーマ上清のスクリーニングを行った。どちらの細胞株もIGF−I受容体欠損マウスの3T3様細胞から生成した。迅速なトリプシン/EDTA処理によって、組織培養フラスコから、IGF−I受容体過剰発現細胞およびインスリン受容体過剰発現細胞を別個に採取し、10%FBSを含有する増殖培地に懸濁し、遠心分離によってペレットにし、そしてPBSで洗浄した。植物性血球凝集素(phytohemagglutinin)(20μg/ml PHAの100μl)でコーティングしたImmulon−2HBプレートのウェルに、洗浄した細胞(約1〜3x106細胞/mlの100μl)を添加し、遠心分離し、そしてPHAでコーティングしたウェルに10分間接着させた。細胞を含むプレートを軽く叩いてPBSを取り除き、そして次いで37℃で一晩乾燥させた。PBS中の5mg/ml BSA溶液で、ウェルを37℃で1時間ブロッキングし、そして次いで、PBSで穏やかに洗浄した。次いで、IGF−I受容体過剰発現細胞を含有するウェル、およびインスリン受容体過剰発現細胞を含有するウェルに、ハイブリドーマ・クローンからの上清のアリコット(100μl;ブロッキング緩衝液で希釈)を添加し、そして周囲温度で1時間インキュベーションした。PBSでウェルを洗浄し、ヤギ抗マウスIgG Fc抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.8μg/ml)と1時間インキュベーションし、その後、洗浄し、そして次いでABTS/H2O2基質を用いて結合を検出した。典型的には、IGF−I受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して、3F1ハイブリドーマ・サブクローンからの上清は、発色12分以内に、0.88吸光単位のシグナルを生じ、これはヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して得られた0.22吸光単位の値とは対照的であった。
【0092】
[114]製造者の指定にしたがって、Integra CL350フラスコ(Integra Biosciences、メリーランド州)中でハイブリドーマを増殖させて、精製EM164抗体を提供した。抗体標準を用いた、ELISAによる、そしてSDS−PAGE/クーマシーブルー染色による定量化に基づいて、Integraフラスコから採取した上清中、約0.5〜1mg/mlの収量の抗体を得た。3M NaClを含有する100mM Tris緩衝液、pH8.9で装填および洗浄し、その後、150mM NaClを含有する100mM酢酸溶液で溶出する、標準的精製条件下で、プロテインA−アガロースビーズ・カラム上のアフィニティー・クロマトグラフィーによって、抗体を精製した。抗体を含有する溶出分画を、冷2M K2HPO4溶液で中和し、そしてPBS中、4℃で透析した。280nmの吸光度を測定することによって抗体濃度を決定した(消光係数=1.4mg−1mlcm−1)。還元条件下のSDS−PAGEおよびクーマシーブルー染色によって、精製抗体試料を分析すると、それぞれ約55kDaおよび25kDaの抗体重鎖および軽鎖のバンドのみが示された。精製抗体のアイソタイプは、カッパ軽鎖を伴うIgG1であった。
【0093】
B. EM164抗体の結合特性
[115]ヒトIGF−I受容体を過剰発現する細胞を用い、そしてヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞を用いた、蛍光活性化細胞分取(FACS)によって、精製EM164抗体の特異的結合を立証した(図1)。丸底96ウェルプレート中、IGF−I受容体を過剰発現する細胞を用い、そしてインスリン受容体を過剰発現する細胞を用いて(2x105細胞/ml)、100μl冷FACS緩衝液(ダルベッコのMEM培地中の1mg/ml BSA)中でEM164抗体(50〜100nM)を1時間インキュベーションした。遠心分離によって細胞をペレットにし、そしてそっと叩くことによって冷FACS緩衝液で洗浄し、次いでヤギ抗マウスIgG抗体−FITCコンジュゲート(100μl;FACS緩衝液中、10μg/ml)と氷上で1時間インキュベーションした。細胞をペレットにし、洗浄し、そしてPBS中の1%ホルムアルデヒド溶液120μlに再懸濁した。FACSCalibur読取装置(BD Biosciences)を用いて、プレートを分析した。
【0094】
[116]IGF−I受容体を過剰発現する細胞をEM164抗体とインキュベーションすると、強い蛍光シフトが得られたが、これはインスリン受容体を過剰発現する細胞をEM164抗体とインキュベーションした際の有意でないシフトとは対照的であり(図1)、これによって、EM164抗体が、IGF−I受容体への結合において、選択的であり、そしてインスリン受容体に結合しないことが立証された。対照抗体、抗IGF−I受容体抗体1H7(Santa Cruz Biotechnology)および抗インスリン受容体アルファ抗体(BD Pharmingen Laboratories)は、それぞれ、IGF−I受容体を過剰発現する細胞およびインスリン受容体を過剰発現する細胞とのインキュベーションに際して、蛍光シフトを生じた(図1)。EM164抗体、およびIGF−I受容体を発現するヒト乳癌MCF−7細胞を用いたFACSアッセイによってもまた、強い蛍光シフトが観察され(Dufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171)、これによってEM164抗体が、ヒト腫瘍細胞表面上のヒトIGF−I受容体に結合することが示された。
【0095】
[117]直接コーティングされたIGF−I受容体(上述のように、ビオチン化IGF−Iを用いてアフィニティー精製したもの)または間接的に捕捉されるビオチン化IGF−I受容体いずれかを用いて、いくつかの濃度で抗体の結合をELISA滴定することによって、ヒトIGF−I受容体とEM164抗体の結合に関する解離定数(Kd)を決定した。PEO−マレイミド−ビオチン試薬(Pierce、Molecular Biosciences)を用いて、界面活性剤で可溶化した、IGF−I受容体を過剰発現する細胞由来の溶解物をビオチン化することによって、ビオチン化IGF−I受容体を調製し、NHS−アガロースビーズ上に固定した抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体を用いて、これをアフィニティー精製し、そしてNP−40界面活性剤を含有する緩衝液中の2〜4M尿素で溶出し、そしてPBS中で透析した。
【0096】
[118]Immulon−2HBプレートを炭酸緩衝液(150mM炭酸ナトリウム、350mM重炭酸ナトリウム)中の1μg/mlストレプトアビジン100μlで、4℃で一晩コーティングすることによって、ビオチン化IGF−I受容体とEM164抗体の結合に関するKdを決定した。ストレプトアビジンでコーティングしたウェルを、200μlのブロッキング緩衝液(TBS−T緩衝液中の10mg/ml BSA)でブロッキングし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてビオチン化IGF−I受容体(10〜100ng)と周囲温度で4時間インキュベーションした。次いで、間接的に捕捉されたビオチン化IGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そしてブロッキング緩衝液中、いくつかの濃度(5.1x10−13M〜200nM)のEM164抗体と周囲温度で2時間インキュベーションし、そして次いで4℃で一晩インキュベーションした。次に、ウェルをTBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗マウスIgGH+L抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、0.5μg/ml)とインキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した。一部位結合に関して、非線形回帰によって、Kd値を概算した。
【0097】
[119]E. HarlowおよびD. Lane(“Using Antibodies:A Laboratory Manual”;1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク)に記載されるように、抗体のパパイン消化によって調製された、EM164抗体のFab断片を用いて、同様の結合滴定を行った。
【0098】
[120]ビオチン化ヒトIGF−I受容体へのEM164抗体の結合に関する結合滴定曲線は、0.1nMのKd値を生じた(図2)。EM164抗体のFab断片もまた、ヒトIGF−I受容体に非常に緊密に結合し、Kd値は0.3nMであり、これによって、IGF−I受容体へのEM164抗体の単量体結合もまた、非常に強いことが示された。
【0099】
[121]EM164抗体によるIGF−I受容体の結合に関する解離定数がこのように極端に低い値であるのは、固定IGF−I受容体に結合した抗体を1〜2日間、長く洗浄した後に、強い結合シグナルが観察されることによって確証されるように、部分的に、koff速度が非常に遅いためであった。
【0100】
[122]プロテインG−アガロースビーズ(Pierce Chemical Company)上に固定されたEM164抗体と、界面活性剤で可溶化されたヒト乳癌MCF−7細胞の溶解物をインキュベーションすることによって立証されるように、EM164抗体をIGF−I受容体の免疫沈降に用いることも可能である。ウサギ・ポリクローナル抗IGF−I受容体ベータ鎖(C末端)抗体(Santa Cruz Biotechnology)およびヤギ抗ウサギIgG抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用い、次いで洗浄し、そして増進化学発光(ECL)検出を行って、EM164抗体免疫沈降物のウェスタンブロットを検出した。MCF−7細胞からのEM164免疫沈降物のウェスタンブロットは、約95kDaのIGF−I受容体のベータ鎖および約220kDaのプロ−IGF−I受容体に対応するバンドを示した。他の細胞種に関して、同様の免疫沈降を行って、EM164抗体結合の種特異性をチェックしたところ、cos−7細胞(アフリカミドリザル(African green monkey))由来のIGF−I受容体にはやはり結合したが、3T3細胞(マウス)、CHO細胞(チャイニーズハムスター)またはヤギ線維芽細胞(ヤギ)のIGF−I受容体には結合しなかった。EM164抗体は、MCF−7細胞由来の溶解物のウェスタンブロットにおいて、SDS変性ヒトIGF−I受容体を検出せず、これによってEM164抗体が、天然の非変性ヒトIGF−I受容体のコンホメーション・エピトープに結合することが示された。
【0101】
[123]L1ドメインおよびL2ドメインに隣接するシステインリッチ・ドメイン(残基1〜468)を含み、これに16量体C末端ピース(残基704〜719)が融合し、そしてC末端エピトープタグで終わる、一部切除(truncated)アルファ鎖構築物を用いて、EM164抗体の結合ドメインをさらに性質決定した。残基469〜703を欠く、このより小さいIGF−I受容体は、天然全長IGF−I受容体に比較して、より緊密ではないが、IGF−Iに結合すると報告されている(Molina, L.ら, 2000, FEBS Letters, 467, 226−230;Kristensen, C.ら, 1999, J. Biol. Chem., 274, 37251−37356)。したがって、残基1〜468を含み、これに残基704〜719のC末端ピースが融合して、そしてC末端mycエピトープタグが隣接する、一部切除IGF−I受容体アルファ鎖構築物を調製した。この構築物を発現する安定細胞株、そしてまたヒト胚性腎臓293T細胞中で該構築物を一過性に発現する細胞株を構築した。この一部切除IGF−I受容体アルファ鎖構築物に対して、EM164抗体が強く結合することが観察された。試験した2つの抗体のうち、IR3(Calbiochem)もまた、この一部切除アルファ鎖に結合したが、1H7抗体(Santa Cruz Biotechnology)は結合せず、これによって、EM164抗体のエピトープが、1H7抗体のエピトープとは明らかに別個であることが示された。
【0102】
C. MCF−7細胞に対するIGF−1結合の、EM164抗体による阻害
[124]ヒト乳癌MCF−7細胞に対するIGF−Iの結合は、EM164抗体によって阻害された(図3)。MCF−7細胞を、血清不含培地中、5μg/mlのEM164抗体を伴いまたは伴わずに2時間インキュベーションし、その後、50ng/mlのビオチン化IGF−Iと37℃で20分間インキュベーションした。次いで、細胞を血清不含培地で2回洗浄して、未結合ビオチン−IGF−Iを取り除き、そして次いで、1%NP−40およびプロテアーゼ阻害剤を含有する50mM HEPES、pH7.4に溶解した。マウス・モノクローナル抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体でImmulon−2HB ELISAプレートをコーティングし、そしてこれを、溶解物からIGF−I受容体および結合したビオチン−IGF−Iを捕捉するのに用いた。IGF−I受容体のベータ鎖の細胞質C末端ドメインに、コーティングされた抗体が結合しても、IGF−I受容体の細胞外ドメインへのビオチン−IGF−Iの結合には干渉しなかった。ウェルを洗浄し、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートとインキュベーションし、再び洗浄し、そして次いでABTS/H2O2基質を用いて検出した。5μg/ml EM164抗体による、MCF−7細胞へのIGF−I結合の阻害は、本質的に定量的であり、そしてビオチン−IGF−Iを欠く対照を用いて得たELISAバックグラウンドのものとほぼ同等であった。
【0103】
[125]EM164抗体による、MCF−7細胞へのIGF−I結合の阻害に関する上述のアッセイに加えて、以下のアッセイによって、EM164抗体が、結合したIGF−IをMCF−7細胞から置換する(displacing)のに非常に有効であることが立証され、これは生理学的条件下で、アンタゴニスト性抗IGF−I受容体抗体が、結合した内因性生理学的リガンド(IGF−IまたはIGF−IIなど)を置換するのが望ましいことに適っている。このIGF−I置換アッセイにおいて、12ウェルプレート中で増殖させたMCF−7細胞を血清枯渇させ、そして次いで血清不含培地中、ビオチン化IGF−I(20〜50ng/ml)と37℃(または4℃)で1〜2時間インキュベーションした。次いで、結合したビオチン化IGF−Iを伴う細胞を、EM164抗体または対照抗体(10〜100μg/ml)で、37℃(または4℃)で30分間〜4時間処理した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、そして1%NP−40を含有する溶解緩衝液中、4℃で溶解した。上述のようにELISAを行って、溶解物からIGF−I受容体を捕捉し、そして次いで、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用いて、受容体に結合したビオチン化IGF−Iを検出した。このELISAによって、EM164抗体が、先に結合していたビオチン化IGF−Iを細胞から、37℃ではほぼ完全に(30分以内に90%、そして4時間以内に〜100%)、そして4℃2時間では約50%、置換可能であることが立証された。別の実験において、NCI−H838肺癌細胞をビオチン−IGF−Iとインキュベーションし、次いで洗浄し、そしてEM164抗体と4℃で2時間インキュベーションすると、結合したビオチン−IGF−Iが80%減少した。したがって、EM164抗体は、先に結合していたIGF−Iを癌細胞から置換するのに非常に有効であり、このことは、結合した内因性生理学的リガンドを置換することによって、IGF−I受容体に拮抗するために、療法的に重要であろう。
【0104】
[126]EM164抗体とMCF−7細胞を4℃で2時間(または37℃で30分間)インキュベーションすると、抗IGF−I受容体ベータ鎖抗体(Santa Cruz Biotechnology;sc−713)を用いたウェスタンブロット分析に基づいて、IGF−I受容体の有意な下方制御が生じなかったが、EM164抗体とより長い時間、37℃で2時間インキュベーションすると、IGF−I受容体の25%の下方制御が生じた。したがって、この短時間の実験において、4℃および37℃両方で、EM164抗体によって、IGF−I結合が阻害され、そして結合したIGF−Iが置換されたのは、EM164抗体の結合による受容体の下方制御では説明不能である。EM164抗体によって、IGF−IのIGF−I受容体への結合が強力に阻害され、そして先に結合していたIGF−Iが置換される機構は、結合部位の共有を通じてか、または立体的閉鎖(steric occlusion)を通じてか、またはアロステリック効果を通じてかのいずれかで、結合に関して競合することである可能性がある。
【0105】
D. EM164抗体による、IGF−I受容体が仲介する細胞シグナル伝達の阻害
[127]乳癌MCF−7細胞および骨肉腫SaOS−2細胞をEM164抗体で処理すると、IGF−I受容体自己リン酸化の阻害によって、そしてインスリン受容体基質1(IRS−1)、AktおよびErk1/2などの下流エフェクターのリン酸化の阻害によって示されるように、細胞内IGF−I受容体シグナル伝達がほぼ完全に阻害された(図4〜6)。
【0106】
[128]図4において、MCF−7細胞を、標準的な培地中、12ウェルプレート中で3日間増殖させ、そして次いで、血清不含培地中、20μg/ml EM164抗体(または抗B4対照抗体)で3時間処理し、次いで50ng/ml IGF−Iで、37℃で20分間刺激した。次いで、プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤を含有する氷冷溶解緩衝液(50mM HEPES緩衝液、pH7.4、1%NP−40、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、100mMフッ化ナトリウム、10mMピロリン酸ナトリウム、2.5mM EDTA、10μMロイペプチン、5μMペプスタチン、1mM PMSF、5mMベンズアミジン、および5μg/mlアプロチニン)中で細胞を溶解した。抗IGF−I受容体ベータ鎖C末端モノクローナル抗体TC123でELISAプレートをあらかじめコーティングし、そして溶解物試料と周囲温度で5時間インキュベーションして、IGF−I受容体を捕捉した。次いで、捕捉したIGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そしてビオチン化抗ホスホチロシン抗体(PY20;0.25μg/ml;BD Transduction Laboratories)と30分間インキュベーションし、次いで洗浄し、そしてストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(0.8μg/ml)と30分間インキュベーションした。ウェルを洗浄し、そしてABTS/H2O2基質で検出した。対照抗B4抗体を用いると、IGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化の阻害は示されなかった。対照的に、EM164抗体で処理すると、IGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化が完全に阻害された(図4)。
【0107】
[129]インスリン受容体基質1(IRS−1)のリン酸化の阻害を立証するため、固定抗IRS−1抗体を用いて溶解物からIRS−1を捕捉するELISAを用い、次いで、リン酸化IRS−1に結合する、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI−3キナーゼ)の会合したp85サブユニットを測定した(Jackson, J.G.ら, 1998, J. Biol. Chem., 273, 9994−10003)。図5において、MCF−7細胞を、血清不含培地中の5μg/ml抗体(EM164またはIR3)で2時間処理し、次いで50ng/ml IGF−Iで、37℃で10分間刺激した。コーティングしたヤギ抗ウサギIgG抗体と、ELISAプレート上でインキュベーションすることによって、抗IRS−1抗体(ウサギ・ポリクローナル;Upstate Biotechnology)を間接的に捕捉し、これを次いで、4℃で一晩インキュベーションすることによって、細胞溶解物試料からIRS−1を捕捉するのに用いた。次いで、ウェルをマウス・モノクローナル抗p85−PI−3キナーゼ抗体(Upstate Biotechnology)と4時間インキュベーションし、その後、ヤギ抗マウスIgG抗体−HRPコンジュゲートで30分間処理した。次いでウェルを洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて検出した(図5)。図5に示すように、EM164抗体は、IR3抗体よりも、IGF−Iが刺激するIRS−1リン酸化を阻害するのにより有効であり、そしてIGF−Iの非存在下で、EM164抗体を細胞とインキュベーションした際に、EM164抗体は、IRS−1リン酸化に対していかなるアゴニスト活性も示さなかった。
【0108】
[130]AktおよびErk1/2などの他の下流エフェクターの活性化もまた、溶解物のウェスタンブロットおよびリン酸化特異的抗体(ウサギ・ポリクローナル抗ホスホSer473 Aktポリクローナル抗体および抗ホスホ−ERK1/2抗体;Cell Signaling Technology)を用いて示されるように、SaOS−2細胞(図6)において、およびMCF−7細胞において、用量依存方式で、EM164抗体に阻害された。汎ERK抗体によって、すべてのレーンに等量のタンパク質が装填されたことが立証された(図6)。EM164抗体でSaOS−2細胞を処理すると、EGFが刺激するErk1/2のリン酸化は阻害されず、したがって、EM164抗体によるIGF受容体シグナル伝達経路の阻害が特異的であることが立証された。
【0109】
E. IGF−I、IGF−IIおよび血清が刺激するヒト腫瘍細胞の増殖および生存の、EM164抗体による阻害
[131]IGF−Iに対する増殖反応および生存反応に関して、血清不含条件下で、いくつかのヒト腫瘍細胞株を試験した。これらの細胞株を、IGF−I、IGF−II、または血清の存在下、EM164抗体で処理し、そして2〜4日後、MTTアッセイを用いて、増殖反応および生存反応を測定した。血清を含む標準的な培地中、96ウェルプレート中で、およそ1500細胞をプレーティングし、翌日、培地を血清不含培地と交換した(トランスフェリンおよびBSAを補った血清不含RPMI培地、またはDufourny, B.ら, 1997, J. Biol. Chem., 272, 31163−31171に特定されるようなフェノールレッド不含培地)。血清不含培地中で1日増殖させた後、約75μlの10μg/ml抗体と細胞を30分間〜3時間インキュベーションし、その後、25μlのIGF−I(またはIGF−IIまたは血清)溶液を添加して、10ng/ml IGF−I、または20ng/ml IGF−II、または0.04〜10%血清の最終濃度にした。いくつかの実験では、EM164抗体を添加する前に、細胞をまず、IGF−Iで15分間刺激するか、またはIGF−IおよびEM164抗体の両方を一緒に添加した。次いで、細胞をさらに2〜3日間増殖させた。次いで、MTT(3−(4,5)−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;25μlのPBS中の5mg/ml溶液)を添加し、そして細胞を2〜3時間、インキュベーターに戻した。次いで培地を取り除き、そして100μl DMSOと交換し、混合し、そしてプレートの吸光度を545nmで測定した。いくつかのヒト腫瘍細胞株は、IGF−IまたはIGF−IIまたは血清を添加すると、増殖反応および生存反応を示し、これはEM164抗体によって有意に阻害され、この阻害には、抗体をIGF−Iの前に添加するか、またはIGF−Iを抗体の前に添加するか、またはIGF−Iおよび抗体を一緒に添加するかどうかは関わりなかった(表1)。
【0110】
表1. IGF−Iが刺激する腫瘍細胞の増殖および生存の、EM164抗体による阻害
【0111】
【表1】
【0112】
a5〜10μg/mlのEM164抗体を含有する血清不含培地中、10ng/mlのIGF−Iに反応した細胞の3〜4日間の増殖/生存のMTTアッセイ。
b対照(血清を含むが抗体を含まないもの)との比較に基づいた、MTTアッセイまたはコロニー形成アッセイによる、5〜10μg/mlのEM164抗体の存在下の1.25〜10%血清中の細胞増殖の阻害;細胞による自己分泌/パラ分泌IGF刺激を計上するため、対照(血清を含まないが抗体を含むもの、および血清を含むが抗体を含まないもの)に基づいて、MCF−7細胞、NCI−H838細胞およびSK−N−SH細胞に関して、阻害の度合いを定量的に測定した。NDは、データがないか、または染色が困難であるため、データが劣っていることを示す。
[132]EM164抗体は、IGF−Iまたは血清が刺激する、乳癌MCF−7細胞の増殖および生存を強く阻害した(図7および図8)。別の実験において、EM164抗体は、IGF−IIが刺激する、MCF−7細胞の増殖および生存を強く阻害した。IR3抗体などの商業的に入手可能な抗体を用いた先の報告では、血清が刺激するMCF−7細胞の増殖および生存を、こうした抗体が弱くしか阻害しないことが示されており、これは、IR3および1H7抗体に関して、図7で確認したとおりである(Cullen, K.J.ら, 1990, Cancer Res., 50, 48−53)。対照的に、EM164抗体は、血清またはIGFが刺激するMCF−7細胞の強力な阻害剤であった。図8に示すように、EM164抗体は、広い範囲の血清濃度(0.04〜10%血清)に渡って、MCF−7細胞の増殖および生存を阻害するのに同等に有効である。
【0113】
[133]細胞を計数することによって、EM164抗体によるMCF−7細胞の増殖阻害を測定した。したがって、12ウェルプレートにおいて、10μg/mlのEM164抗体の存在下または非存在下、10%のFBSを含むRPMI培地中に、約7500の細胞をプレーティングした。増殖5日後、未処理対照試料の細胞数は20.5x104細胞であり、対照的に、EM164抗体で処理した試料では、わずか1.7x104細胞であった。EM164抗体で処理すると、5日間で、MCF−7細胞の増殖は、約12倍まで阻害された。EM164抗体によるこの阻害は、MCF−7細胞の6日間のアッセイにおいて、IR3抗体を用いて報告された2.5倍の阻害より有意に高かった(Rohlik, Q.T.ら, 1987, Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 276−281)。
【0114】
[134]IGF−Iおよび血清が刺激する、非小細胞肺癌株NCI−H838の増殖および生存もまた、対照抗B4抗体に比較して、EM164抗体によって、強く阻害された(図9)。血清不含培地において、EM164抗体で処理すると、NCI−H838細胞およびMCF−7細胞の両方に関して、未処理試料より小さいシグナルが生じ、これはおそらく、EM164抗体が、これらの細胞の自己分泌およびパラ分泌IGF−IおよびIGF−II刺激も阻害したためであろう(図7および図9)。EM164抗体で処理すると、HT29結腸癌細胞のコロニーサイズもまた、非常に減少した。
【0115】
[135]EM164抗体は、したがって、MCF−7細胞およびNCI−H838細胞などの腫瘍細胞の、血清が刺激する増殖を80%を超えて阻害するのに有効である点で、すべての既知の抗IGF−I受容体抗体の中でもユニークである。
【0116】
[136]EM164抗体は、細胞周期のG0/G1期で細胞増殖停止を引き起こし、そしてIGF−Iの分裂促進効果を無効にした。細胞周期解析のため、MCF−7細胞を、EM164(20μg/ml)の存在下または非存在下、IGF−I(20ng/ml)で1日間処理し、そして次いでヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリーによって分析した。図25に示すように、EM164の非存在下、IGF−I刺激に反応した細胞のサイクリング(細胞の41%がS期にあり、そして50%がG0/G1期にあった)は、EM164処理細胞で抑制された(細胞の9%のみがS期にあり、そして77%がG0/G1期にあった)。
【0117】
[137]細胞増殖の阻害に加えて、EM164抗体処理によって、細胞のアポトーシスが生じた。アポトーシス測定のため、EM164の存在下または非存在下、IGF−Iまたは血清と1日間インキュベーションしたNCI−H838肺癌細胞において、カスパーゼによるサイトケラチンCK18タンパク質の切断を測定した(図26)。EM164の非存在下、IGF−Iまたは血清を添加すると、IGF−Iがない対照に比較して、カスパーゼ切断されたCK18のシグナルはより低く、IGF−Iおよび血清が、カスパーゼの活性化を妨げることが示された。EM164の非存在下よりEM164の存在下で得られる切断CK18のレベルがより大きいことから示されるように、EM164で処理すると、IGF−Iおよび血清の抗アポトーシス効果が抑制された。
【0118】
F.他の細胞傷害性剤および細胞分裂停止剤と併用した、EM164抗体による、ヒト腫瘍細胞増殖および生存の相乗的阻害
[138]タキソールとEM164抗体を併用投与すると、タキソール単独よりも、非小細胞肺癌Calu6細胞の増殖および生存に、有意により阻害性になった。同様に、カンプトテシンとEM164抗体を併用すると、結腸癌HT29細胞の増殖および生存に対して、カンプトテシン単独よりも、有意により阻害性になった。EM164抗体単独では、有機化学毒性薬剤と同程度に細胞に毒性であるとは期待されないことから、EM164抗体の主に細胞分裂停止効果および化学毒性薬剤の細胞傷害性効果の間の相乗作用は、臨床設定における併用癌療法において、非常に有効でありうる。
【0119】
[139]EM164抗体と抗EGF受容体抗体(KS77)の併用効果は、HT−3細胞、RD細胞、MCF−7細胞、およびA431細胞などのいくつかの腫瘍細胞株の増殖および生存に対して、EM164抗体またはKS77抗体単独のいずれより、有意により阻害性であった。したがって、IGF−I受容体およびEGF受容体などの2つの増殖因子受容体の中和抗体を併用した相乗効果もまた、臨床的癌治療に有用でありうる。
【0120】
[140]表1に示すような多様なヒト癌細胞株の増殖および生存を阻害する際の単一剤としてのEM164抗体の効力に基づいて、EM164抗体と他の抗癌療法剤を併用して、さらなる効力研究を行った。多様な癌細胞株に対するこれらの研究において、EM164抗体および他の抗癌療法剤の併用治療によって、EM164または他の療法剤単独のいずれよりもさらに高い、抗癌効力が生じた。したがって、EM164と他の療法剤のこれらの併用は、癌細胞の増殖および生存を阻害する際に非常に有効である。抗癌効力を改善するため、EM164と併用可能である療法剤には、腫瘍学治療に用いられる多様な剤が含まれ(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、エポチロン、並びに細胞傷害性薬剤および細胞表面受容体に対する抗体のコンジュゲートがある。
【0121】
[141]これらの併用療法のため、アルキル化剤、白金剤、ホルモン療法、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗微小管剤、分化剤、抗血管新生療法または抗血管形成療法、放射線療法、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のアゴニストおよびアンタゴニスト、細胞表面受容体に対する阻害性抗体または小分子阻害剤、並びに他の化学療法剤(Reference:Cancer, Principles & Practice of Oncology, DeVita, V.T., Hellman, S., Rosenberg, S.A., 第6版, Lippincott−Raven, フィラデルフィア, 2001)などの、多様な作用機構の抗癌剤1以上と、EM164を併用する。1つの例において、LHRHアンタゴニストであるアンチド(0.1〜10マイクロモル濃度(micromolar))およびEM164抗体(0.1〜10ナノモル濃度(nanomolar))を併用すると、EM164またはアンチド単独のいずれよりも、MCF−7乳癌細胞の増殖が有意に阻害された。白金剤との併用療法の例において、EM164抗体(10マイクログラム/ml)およびシスプラチン(0.1〜60マイクログラム/ml)の併用治療によって、EM164抗体またはシスプラチン単独のいずれかによる阻害に比較して、MCF−7乳癌細胞の増殖および生存が、より多く阻害された。
【0122】
[142]EM164抗体と他の療法剤とのこれらの併用は、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む、いくつかの種類の癌に対して有効である。EM164抗体および療法剤を、同時にまたは連続して、癌療法のために投与することも可能である。
【0123】
[143]IGF−I受容体を過剰発現する腫瘍に、細胞傷害性薬剤をターゲティング搬送する際、EM164抗体と細胞傷害性薬剤とのコンジュゲートもまた有用である。IGF−I受容体を過剰発現する腫瘍の治療および画像化に、EM164抗体と放射標識または他の標識のコンジュゲートを用いることも可能である。
【0124】
G.免疫不全マウスにおけるヒト癌異種移植片中、単一剤としてのまたは抗癌剤と併用した、EM164処置の効果
[144]1x107 Calu−6細胞を皮下注射することによって、免疫不全マウスにおいて、ヒト非小細胞肺癌Calu−6異種移植片を確立した。図10に示すように、処置群あたり5匹のマウスを用いて、確立された100mm3 Calu−6異種移植片を含有するこれらのマウスを、EM164抗体単独(0.8mg/マウスを1週2回で6回、静脈内注射)で、またはタキソール単独(2日ごとに、タキソールを5回、腹腔内注射;15mg/kg)で、またはタキソールおよびEM164抗体処置併用で、またはPBS単独(200μl/マウスを1週2回で6回、静脈内注射)で処置した。PBS対照に比較して、EM164抗体処置によって、腫瘍増殖は、有意に遅延された。マウスの体重測定に基づくと、EM164抗体の毒性はまったく観察されなかった。タキソール単独処置は、第14日までは有効であったが、その後、腫瘍は再び増殖し始めた。しかし、タキソールおよびEM164抗体の併用処置群では、タキソール単独処置群に比較して、腫瘍増殖は有意に遅延された。
【0125】
[145]PBS中の107 BxPC−3細胞を皮下注射することによって、5週齢メスSCID/ICRマウス(Taconic)において、ヒト膵臓癌異種移植片を確立した(第0日)。次いで、5つの処置群各々で、5匹のマウスを用いて、確立された80mm3の腫瘍を所持するマウスを、EM164単独(第12日、第16日、第19日、第23日、第26日、第29日、第36日、第43日、第50日、第54日、第58日、第61日および第64日に、側面尾静脈に0.8mg/マウスを13回、静脈内注射)で、ゲムシタビン単独(第12日および第19日に、150mg/kg/マウスを2回、腹腔内注射)で、上記スケジュールにしたがってゲムシタビンおよびEM164併用で、PBS単独で、そして対照抗体単独(EM164と同じスケジュールにしたがって)で処置した。図27に示すように、EM164単独処置、またはゲムシタビンとの併用処置によって、EM164処置群では、5匹の動物のうち4匹で、そして併用処置群では5匹の動物すべてで、腫瘍異種移植片の完全な退行がまず生じた。測定可能な腫瘍再増殖は、EM164群では第43日、そして併用処置群では第68日になってようやく、1より多い動物で見られ、第74日に対照処置群と比較すると、有意に小さい平均腫瘍体積を生じた(それぞれP=0.029および0.002;両側T検定;図27)。別の研究において、EM164抗体処置(単独または抗EGF受容体抗体との併用;腹腔内注射)は、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片の増殖を阻害した。
【0126】
[146]ネズミEM164およびヒト化EM164抗体は、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片増殖の同等の阻害を示しており、したがって、ヒト化EM164の効力が、in vivoで、ネズミEM164の効力と同等であることが立証された。EM164抗体の異なる投与様式を比較すると、EM164抗体の腹腔内投与および静脈内投与はどちらも、マウスにおいて確立されたBxPC−3異種移植片増殖の同等の阻害を示した。別の異種移植片研究において、マウスにおいて確立されたA−673ヒト横紋筋肉腫/ユーイング肉腫異種移植片をEM164抗体で処置すると、増殖が有意に遅延された。
【0127】
H. EM164抗体の軽鎖および重鎖のクローニングおよび配列決定
[147]EM164ハイブリドーマ細胞から総RNAを精製した。4〜5μgの総RNA、およびオリゴdTプライマーまたはランダム六量体プライマーのいずれかを用いて、逆転写酵素反応を行った。
【0128】
[148]Coら(J. Immunol., 148, 1149−1154(1992))に記載されるRACE法を用いて、そしてWangら(J. Immunol. Methods, 233, 167−177(2000))に記載されるような縮重プライマーを用いて、PCR反応を行った。RACE PCR法は、第一鎖cDNAの3’端にポリGテールを付加する中間工程を必要とする。RT反応物をQianeasy(Qiagen)カラムで精製し、そして50μlの1xNEB緩衝液4中に溶出した。溶出液に対して、1xNEB緩衝液4中、0.25mM CoCl2、1mM dGTP、および5単位の末端転移酵素(NEB)で、dGテール付加反応を行った。混合物を37℃で30分間インキュベーションし、そして次いで、反応物の1/5(10μl)を、PCR反応に直接添加して、テンプレートDNAとして利用した。
【0129】
[149]RACEおよび縮重PCR反応は、プライマーおよびテンプレートが異なることを除いて、同一であった。RACE PCRテンプレートには末端転移酵素反応を直接用い、一方、縮重PCR反応には、RT反応混合物を直接用いた。
【0130】
[150]RACE反応および縮重PCR反応両方において、同じ3’軽鎖プライマー:
【0131】
【化7】
【0132】
および3’重鎖プライマー:
【0133】
【化8】
【0134】
を用いた。
[151]RACE PCRにおいて、1つのポリC 5’プライマー:
【0135】
【化9】
【0136】
を重鎖および軽鎖両方に用い、一方、縮重5’端PCRプライマーは、軽鎖に関しては:
【0137】
【化10】
【0138】
であり、そして重鎖に関しては:
【0139】
【化11】
【0140】
の等量混合物であった。
【0141】
[152]上記プライマー配列において、混合塩基は以下のように定義される:H=A+T+C、S=g+C、Y=C+T、K=G+T、M=A+C、R=A+g、W=A+T、V=A+C+G。
【0142】
[153]以下のプログラムを用いて、PCR反応を行った:1)94℃3分間、2)94℃15秒間、3)45℃1分間、4)72℃2分間、5)工程2に戻って29周期、6)72℃10分間の最終伸長工程で終了。
【0143】
[154]PCRプライマーによって生成した制限酵素を用いて、pBluescriptII SK+(Stratagene)にPCR産物をクローニングした。
[155]慣用的手段によって、いくつかの個々の軽鎖クローンおよび重鎖クローンを配列決定して、ポリメラーゼが生成しうる配列エラーを同定し、そして回避した(図12および図13)。Chothia規範的(canonical)分類定義を用いて、3つの軽鎖および重鎖CDRを同定した(図12〜図14)。
【0144】
[156]NCBI IgBlastデータベースを検索すると、抗IGF−I受容体抗体軽鎖可変領域が、おそらく、マウスIgVk Cr1生殖系列遺伝子に由来し、一方、重鎖可変領域が、おそらく、IgVh J558.c生殖系列遺伝子に由来することが示された(図15)。
【0145】
[157]ネズミEM164抗体のタンパク質配列決定を行って、図12および図13に示す配列を確認した。精製したEM164抗体の重鎖および軽鎖のタンパク質バンドを、ゲル(SDS−PAGE、還元条件)からPVDF膜にトランスファーし、PVDF膜から切り出し、そしてタンパク質配列決定によって分析した。軽鎖のN末端配列は、エドマン配列決定によって:DVLMTQTPLS(配列番号20)であることが決定され、これは、EM164ハイブリドーマから得たクローニング軽鎖遺伝子のN末端配列にマッチした。
【0146】
[158]重鎖のN末端は、遮断されていてエドマン・タンパク質配列決定が不能であることが見出された。ポストソース分解(PSD)を介して、マス1129.5(M+H+、モノアイソトピック)の重鎖のトリプシン消化ペプチド断片を断片化し、そしてその配列は、GRPDYYGSSK(配列番号21)であることが決定された。ポストソース分解(PSD)を介して、マス2664.2(M+H+、モノアイソトピック)の重鎖の別のトリプシン消化ペプチド断片もまた断片化し、そしてその配列は:SSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYFAR(配列番号22)であることが同定された。これらの配列はどちらも、EM164ハイブリドーマから得られるクローニング重鎖遺伝子のCDR3およびフレームワーク3(FR3)のものに完全にマッチする。
【0147】
I. EM164抗体の組換え発現
[159]軽鎖および重鎖の対配列を単一の哺乳動物発現ベクターにクローニングした(図16)。ヒト可変配列のPCRプライマーは制限部位を生成し、この制限部位によってpBluescriptIIクローニングベクター中にありつつ、ヒト・シグナル配列が付着することが可能になり、そして軽鎖または重鎖に関して、それぞれ、EcoRI部位およびBsiWI部位またはHindIII部位およびApaI部位を用いて、哺乳動物発現プラスミドに可変配列をクローニングした(図16)。軽鎖可変配列を、ヒトIgK定常領域上にインフレームでクローニングし、そして重鎖可変配列を、ヒトIgガンマ1定常領域配列中にクローニングした。最終発現プラスミドにおいて、ヒトCMVプロモーターは、軽鎖および重鎖のcDNA配列両方の発現を駆動した。当該技術分野に周知の方法にしたがって、組換えマウスEM164抗体の発現および精製を進めた。
【0148】
(実施例2)
EM164抗体のヒト化バージョン
[160]療法剤または診断剤として適切なヒト化バージョンを提供するため、EM164抗体の表面再構成を、一般的に、米国特許5,639,641に開示される原理および方法にしたがって、そして以下のように、進めた。
【0149】
A.表面予測
[161]解明された構造を持つ抗体セットの可変領域残基の溶媒アクセス可能性を用いて、ネズミ抗IGF−I受容体抗体(EM164)可変領域の表面残基を予測した。127のユニークな抗体構造ファイル・セットのアミノ酸溶媒アクセス可能性(表2)をMCソフトウェア・パッケージで計算した(Pedersenら, 1994, J. Mol. Biol., 235, 959−973)。127の構造のこのセットから、配列並列によって、10の最も類似の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を決定した。各可変領域残基に関して、平均溶媒アクセス可能性を計算し、そして30%を超える平均アクセス可能性の位を表面残基と見なした。2つの同一な隣接残基を持つ構造に関してのみ、個々の残基のアクセス可能性を計算することによって、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を持つ位をさらに調べた。
【0150】
表2−抗IGF−I受容体抗体(EM164)の表面を予測するのに用いた、Brookhavenデータベース由来の127の抗体構造
【0151】
【表2】
【0152】
B.分子モデリング:
[162]オックスフォード分子ソフトウェア・パッケージAbMを用いて、ネズミEM164の分子モデルを生成した。最も類似のアミノ酸配列を持つ抗体の構造ファイル、軽鎖の2jel、そして重鎖の1nqbを用いて、抗体フレームワークを構築した。非冗長解明構造を含有するC−α構造データベースを検索することによって、非規範的CDRを構築した。CDRから5Å以内に位置する残基を決定した。
【0153】
C.ヒトAb選択
[163]ネズミEM164の表面位を、Kabatデータベース中のヒト抗体配列の対応する位と比較した(Johnson, G.およびWu, T.T.(2001)Nucleic Acids Research, 29:205−206)。抗体データベース管理ソフトウェアSR(Searle 1998)を用いて、天然重鎖および軽鎖ヒト抗体対から抗体表面残基を抽出し、そして並列させた。CDRから5Å以内に来る位を特に考慮して、最も同一の表面残基を持つヒト抗体表面を選択して、ネズミ抗IGF−I受容体抗体表面残基を置換した。
【0154】
D. PCR突然変異誘発
[164]ネズミEM164 cDNAクローン(上記)に対してPCR突然変異誘発を行って、表面再構成ヒトEM164(本明細書においてhuEM164)を構築した。huEM164のすべての試験されるバージョンに必要な8アミノ酸変化を作成するため、プライマーセットを設計し、そしてこれとは別に2つの5Å残基変化を作成するため、さらなるプライマーを設計した(表3)。以下のプログラムを用いて、PCR反応を行った:1)94℃1分間、2)94℃15秒間、3)55℃1分間、4)72℃1分間、5)工程2に戻って29周期、6)72℃4分間の最終伸長工程で終了。対応する制限酵素でPCR産物を消化し、そして上述のように、pBluescriptクローニングベクターにクローニングした。クローンを配列決定して、望ましいアミノ酸変化を確認した。
【0155】
表3−4つのヒト化EM164抗体を構築するのに用いたPCRプライマー
【0156】
【表3】
【0157】
E.可変領域表面残基
[165]Pedersenら(J. Mol. Biol., 235, 959−973, 1994)およびRoguskaら(Protein Eng., 9, 895−904, 1996)に記載される抗体表面再構成技術は、ネズミ抗体可変配列の表面残基を予測することから始まる。表面残基は、総表面領域の少なくとも30%が水分子にアクセス可能であるアミノ酸と定義される。
【0158】
[166]127の抗体構造ファイル・セット中、10の最も相同な抗体を同定した(図17および図18)。これらの並列配列に関して、各Kabat位の溶媒アクセス可能性を平均し、そして各残基の相対的アクセス可能性の分布を図19に示した。軽鎖および重鎖の両方が、少なくとも30%の平均相対アクセス可能性を持つ26の残基を有する(図19):したがって、これらの残基は、EM164の予測される表面残基であった。いくつかの残基は、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を有し、そして残基の両側に隣接する2つの残基が同一である抗体のみを平均することによって、これらをさらに調べた(表4および表5)。このさらなる解析後も、上に同定する表面残基の元来のセットは変化しないままであった。
【0159】
表4−EM164抗体の軽鎖および重鎖の可変配列の表面残基および平均アクセス可能性
【0160】
【表4】
【0161】
表5
【0162】
【表5】
【0163】
検討中の残基の両側に隣接する2つの残基が同一である抗体サブセットを平均することによって、25%〜35%の間の平均アクセス可能性を有する残基を、さらに解析した。これらのボーダーライン表面位およびその新しい平均アクセス可能性を提供する。NAは、10の最も類似の抗体において、同一の隣接残基がない残基を指す。
【0164】
F.どの残基がCDRから5Å以内に収まるかを決定する分子モデリング
[167]AbMソフトウェア・パッケージで生成した上述の分子モデルを分析して、どのEM164表面残基が、CDRから5Å以内にあるかを決定した。ネズミEM164抗体の表面を再構成するため、CDR外の表面残基はすべて、ヒト対応物に変化させなければならないが、CDRから5Å以内の残基はまた抗原特異性にも寄与しうるため、特に気をつけて扱われる。したがって、これらの後者の残基を同定し、そしてヒト化プロセス全体に渡って、注意深く検討しなければならない。表面再構成に用いたCDR定義は、重鎖CDR2に関してAbM定義、そして残りの5つのCDRに関してKabat定義を組み合わせている(図14)。表6は、EM164モデルの軽鎖または重鎖の配列いずれかにおいて、CDR残基いずれかから5Å以内にあった残基を示す。
【0165】
表6 CDRから5Å以内にあるEM164抗体フレームワーク表面残基
CDRから5Å以内のEM164表面残基
【0166】
【表6】
【0167】
G.最も相同なヒト表面の同定
[168]抗体データベースに対して、特定される残基位のみの検索の手はずを整えるSRソフトウェアを用いて、Kabat抗体配列データベース内で、EM164を表面再構成する候補ヒト抗体表面を同定した。天然対形成を保持するため、軽鎖および重鎖両方の表面残基を一緒に比較した。Kabatデータベースの最も相同なヒト表面を配列同一性の順位で並列させた。トップの5つの表面を表7に提供する。次いで、これらの表面を比較して、このうちどれがCDRから5Å以内に最小の変化しか必要としないかを同定した。白血病B細胞抗体、CLL1.69は、最少数の表面残基変化(総数10)しか必要とせず、そしてこれらの残基のうち2つのみがCDRから5Å以内に存在した。
【0168】
[169]EM164の全長可変領域配列もまた、Kabatヒト抗体データベースに対して並列させ、そして再び、CLL1.69が最も類似のヒト可変領域配列と同定された。総合すると、これらの配列比較によって、ヒト白血病B細胞抗体CLL1.69は、EM164のヒト表面として好ましい選択と同定された。
【0169】
表7−Kabatデータベースから抽出されたトップの5つのヒト配列
【0170】
【表7】
【0171】
SR(Pedersen 1993)によって並列を生成した。CDRから5Å以内にあるEM164表面残基を下線で示す。
【0172】
H.ヒト化EM164遺伝子の構築
[170]上述のようなPCR突然変異誘発技術を用いて、EM164の10の表面残基変化(表7)を作成した。CLL1.69の表面残基のうち8つは、CDRから5Å以内にはないため、ヒト化EM164のすべてのバージョンで、これらの残基をネズミからヒトに変化させた(表8および表9)。CDRから5Å以内の2つの軽鎖表面残基(Kabatの3位および45位)をヒトに変化させるかまたはネズミのままにした。総合すると、これらのオプションによって、構築したEM164の4つのヒト化バージョンが生成される(図22および図23)。
【0173】
[171]4つのヒト化バージョンのうち、バージョン1.0は、10のヒト表面残基をすべて有する。CDR近傍の変化に関して、最も保存的なバージョンは、バージョン1.1であり、このバージョンは、CDRから5Å以内にあるネズミ表面残基の両方を保持した。4つのヒト化EM164抗体遺伝子を、一過性トランスフェクションおよび安定トランスフェクションに使用するため、抗体発現プラスミドにクローニングした(図16)。
【0174】
表8−ヒト化EM164抗体のバージョン1.0〜1.3の残基変化
【0175】
【表8】
【0176】
I.全長IGF−I受容体への、そして一部切除IGF−I受容体アルファ鎖への結合に関する、ネズミEM164抗体とヒト化EM164抗体バージョンの親和性の比較
[172]上述のように、ビオチン化全長ヒトIGF−I受容体またはmyc−エピトープタグ化一部切除IGF−I受容体アルファ鎖を用いた結合競合アッセイを通じて、ヒト化EM164抗体バージョン1.0〜1.3の親和性を、ネズミEM164抗体のものと比較した。ヒト胚性腎臓293T細胞において、適切な発現ベクターの一過性トランスフェクションによって、ヒト化EM164抗体試料を得て、そして精製したヒト化抗体標準を用いたELISAによって抗体濃度を決定した。ELISA結合競合測定のため、ヒト化抗体試料および多様な濃度のネズミEM164抗体の混合物を、間接的に捕捉されたビオチン化全長IGF−I受容体またはmyc−エピトープタグ化一部切除IGF−I受容体アルファ鎖とインキュベーションした。平衡化後、ヤギ抗ヒトFab’2抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲートを用いて、結合したヒト化抗体を検出した。理論的には傾き=(Kd ヒト化Ab/Kd ネズミAb)を持つ直線を生じる、([結合したネズミAb]/[結合したヒト化Ab])対([ネズミAb]/[ヒト化Ab])のプロットを用いて、ヒト化抗体およびネズミ抗体の相対的親和性を決定した。
【0177】
[173]典型的な競合アッセイを図11に示す。Immulon−2HB ELISAプレートを、ウェルあたり100μlの炭酸緩衝液中、5μg/mlストレプトアビジンで、周囲温度で7時間コーティングした。ストレプトアビジンでコーティングしたウェルを、200μlのブロッキング緩衝液(TBS−T緩衝液中、10mg/ml BSA)で1時間ブロッキングし、TBS−T緩衝液で洗浄し、そしてビオチン化IGF−I受容体(ウェルあたり5ng)と、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、間接的に捕捉したビオチン化IGF−I受容体を含有するウェルを洗浄し、そして100μlのブロッキング緩衝液中、ヒト化EM164抗体(15.5ng)およびネズミ抗体(0ng、または16.35ng、または32.7ng、または65.4ng、または163.5ng)の混合物と、周囲温度で2時間インキュベーションし、そして次いで、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、ウェルをTBS−T緩衝液で洗浄し、そしてヤギ抗ヒトFab’2抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート(100μl;ブロッキング緩衝液中、1μg/ml)と1時間インキュベーションし、その後、洗浄し、そしてABTS/H2O2基質を用いて405nmで検出した。
【0178】
[174]([結合したネズミAb]/[結合したヒト化Ab])対([ネズミAb]/[ヒト化Ab])のプロットは、0.52の傾き(=Kd ヒト化Ab/Kd ネズミAb)を持つ直線(r2=0.996)を生じた。したがって、ヒト化抗体バージョン1.0は、ネズミEM164抗体より緊密にIGF−I受容体に結合した。全長IGF−I受容体への、または一部切除IGF−I受容体アルファ鎖への結合に関して、ネズミEM164抗体とヒト化EM164抗体のバージョン1.0、1.1、1.2および1.3の競合に関して、約0.5〜0.8の範囲の勾配の類似の値が得られたことから、EM164抗体のヒト化バージョンがすべて類似の親和性を有し、これはすべて、親ネズミEM164抗体のものより優れていたことが示された。重鎖中に92F→C突然変異を持つEM164抗体のキメラバージョンは、ネズミEM164抗体との類似の結合競合において、約3の傾きを示したことから、EM164の92F→C突然変異体が、IGF−I受容体への結合に関して、ネズミEM164抗体より3倍低い親和性を有することが示された。ヒト化EM164 v1.0抗体は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ネズミEM164抗体と同様の阻害を示した(図24)。血清が刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ヒト化EM164 v1.0抗体による阻害は、ネズミEM164抗体による阻害と同様であった。
【0179】
表9
【0180】
【表9】
【0181】
EM164Abの異なるバージョンの軽鎖および重鎖の可変領域ポリペプチドに関して、Kabat番号付け系を用いる。アミノ酸残基は、ポリペプチド鎖における位にしたがって、フレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)にグループ分けされる。
【0182】
Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, 1991, NIH Publication No.91−3242から採用。
【0183】
J.本明細書記載のネズミ抗体配列およびヒト化抗体配列から出発して、改善された抗IGF−I受容体抗体を提供するプロセス
[175]抗IGF−I受容体抗体EM164およびそのヒト化変異体のアミノ酸配列および核酸配列を用いて、改善された特性を有し、そしてやはり本発明の範囲内である、他の抗体を作成した。こうした改善された特性には、IGF−I受容体への親和性増加が含まれる。いくつかの研究によって、最初の抗体配列の知識に基づいて、抗体配列の多様な位で、1以上のアミノ酸変化を導入した際の、結合および発現レベルなどの特性に対する影響が調査されてきている(Yang, W.P.ら, 1995, J. Mol. Biol., 254, 392−403;Rader, C.ら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 8910−8915;Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539)。
【0184】
[176]これらの研究において、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、エラープローンPCR、DNAシャッフリング、または大腸菌のミューテーター株などの方法を用い、CDR1、CDR2、CDR3、またはフレームワーク領域において、重鎖および軽鎖の遺伝子配列を変化させることによって、最初の抗体の変異体が生成された(Vaughan, T.J.ら, 1998, Nature Biotechnology, 16, 535−539;Adey, N.B.ら, 1996, 第16章, pp.277−291, “Phage Display of Peptides and Proteins”中, Kay, B.K.ら監修, Academic Press)。最初の抗体の配列を変化させるこれらの方法により、標準的なスクリーニング技術の使用を通じて、親和性が改善された第二の抗体が生じている(Gram, H.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3576−3580;Boder, E.T.ら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 10701−10705;Davies, J.およびRiechmann, L., 1996, Immunotechnolgy, 2, 169−179;Thompson, J.ら, 1996, J. Mol. Biol., 256, 77−88;Short, M.K.ら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 16365−16370;Furukawa, K.ら, 2001, J. Biol. Chem., 276, 27622−27628)。
【0185】
[177]抗体の1以上のアミノ酸残基を変化させる類似の指定戦略によって、本発明記載の抗体配列を用いて、機能が改善された抗IGF−I受容体抗体を作成することも可能であり、例えば療法剤の付着に用いる、共有修飾のための好都合な付着点にある未結合(free)アミノ基またはチオール基など、適切な基を有する抗体がある。
【0186】
K.ネズミ抗体、キメラ抗体および他の抗IGF−I受容体抗体のための代替発現系
[178]ヒト化抗体(上記)を発現するのに用いたものと類似の哺乳動物プラスミドから、ネズミ抗IGF−I受容体抗体もまた、発現させた。発現プラスミドは、軽鎖カッパ配列および重鎖ガンマ−1配列を含むネズミ定常領域を有することが知られる(McLeanら, 2000, Mol Immunol., 37, 837−845)。単純な制限消化およびクローニングによって、抗体可変領域いずれか、例えばネズミ抗IGF−I受容体抗体を受け入れるように、これらのプラスミドを設計した。通常は、発現プラスミド中のものと適合する制限部位を生成するため、抗IGF−I受容体抗体のさらなるPCRが必要であった。
【0187】
[179]全長ネズミ抗IGF−I受容体抗体を発現する別のアプローチは、キメラ抗IGF−I受容体抗体発現プラスミドのヒト定常領域を置換することであった。可変領域のカセット、並びに軽鎖および重鎖両方の定常領域のカセットを用いて、キメラ発現プラスミド(図16)を構築した。制限消化によって、抗体可変配列をこの発現プラスミドにクローニングしたのとちょうど同じように、別の制限消化を用いて、定常領域配列いずれかにおいてクローニングした。例えば、抗IGF−I抗体可変領域のクローニングのため、本明細書に記載するRNAなど、ネズミ・ハイブリドーマRNAから、カッパ軽鎖cDNAおよびガンマ−1重鎖cDNAをクローニングした。同様に、Kabatデータベースにおいて入手可能な配列から、適切なプライマーを設計した(表10を参照されたい)。例えば、RT−PCRを用いて、定常領域配列をクローニングし、そしてこれらの断片をキメラ抗IGF−I受容体抗体発現プラスミドにクローニングするのに必要な制限部位を生成した。次いで、このプラスミドを用いて、CHO細胞株などの標準的哺乳動物発現系において、全長ネズミ抗IGF−I受容体抗体を発現した。
【0188】
表10−それぞれ、ネズミ・ガンマ−1定常領域およびネズミ・カッパ定常領域をクローニングするため設計したプライマー
【0189】
【表10】
【0190】
Kabatデータベースにおいて入手可能な配列からプライマーを設計した(Johnson, GおよびWu, T.T.(2001)Nucleic Acids Research, 29:205−206)。
【0191】
寄託の記述
[180]ネズミEM164抗体を作成するハイブリドーマを、ブダペスト条約の条項のもとに、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、PO Box 1549, Manassas, VA 20108に、2002年6月14日に寄託し、そしてATCC寄託番号PTA−4457を割り当てられた。
【0192】
[181]特定の特許および印刷刊行物が本開示において言及されており、これらの解説は、本明細書にそれぞれ完全に援用される。
[182]本発明は、詳細に、そして特定の態様に関連して記載されてきているが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な変化および修飾が実行可能であることが明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】[35]図1は、ヒトY1251F IGF−I受容体またはヒト・インスリン受容体を過剰発現する細胞に対する精製EM164抗体の特異的結合の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す。
【図2】[36]図2は、ビオチン化ヒトIGF−I受容体に対するEM164抗体の結合に関する結合滴定曲線を示す。
【図3】[37]図3は、ヒト乳癌MCF−7細胞に対するビオチン化IGF−Iの結合の、EM164抗体による阻害を示す。
【図4】[38]図4は、MCF−7細胞においてIGF−Iが刺激するIGF−I受容体の自己リン酸化の、EM164抗体による阻害を示す。
【図5】[39]図5は、MCF−7細胞においてIGF−Iが刺激するIRS−1リン酸化の、EM164抗体による阻害を示す。
【図6】[40]図6は、SaOS−2細胞においてIGF−Iが刺激するシグナル伝達の、EM164抗体による阻害を示す。
【図7】[41]図7は、MTTアッセイによって評価されるような、異なる増殖条件下でのMCF−7細胞の増殖および生存に対するEM164抗体の効果を示す。
【図8】[42]図8は、多様な濃度の血清存在下、MCF−7細胞の増殖および生存に対するEM164抗体の効果を示す。
【図9】[43]図9は、IGF−Iが刺激するおよび血清が刺激するNCI−H838細胞増殖および生存の、EM164抗体による阻害を示す。
【図10】[44]図10は、マウスにおけるCalu−6肺癌異種移植片の増殖に対する、EM164抗体、タキソール、またはEM164抗体およびタキソールの組み合わせでの処置の効果を示す。
【図11】[45]図11は、ヒト化EM164抗体(v.1.0)およびネズミEM164抗体の結合の間の競合を示す。
【図12】[46]図12は、ネズミ抗IGF−I受容体抗体EM164の軽鎖のリーダー領域および可変領域のcDNA配列(配列番号49)およびアミノ酸配列(配列番号50)を示す。矢印はフレームワーク1の始まりをマークする。Kabatにしたがう3つのCDR配列を下線で示す。
【図13】[47]図13は、ネズミ抗IGF−I受容体抗体EM164の重鎖のリーダー領域および可変領域のcDNA配列(配列番号51)およびアミノ酸配列(配列番号52)を示す。矢印はフレームワーク1の始まりをマークする。Kabatにしたがう3つのCDR配列を下線で示す。
【図14】[48]図14は、Chothia規範的クラス定義によって決定されるような、抗体EM164の軽鎖および重鎖のCDRアミノ酸配列を示す。重鎖CDRのAbMモデリング・ソフトウェア定義もまた示す。軽鎖:CDR1は配列番号4であり、CDR2は配列番号5であり、そしてCDR3は配列番号6である。重鎖:CDR1は配列番号1であり、CDR2は配列番号2であり、そしてCDR3は配列番号3である。AbM重鎖:CDR1は配列番号53であり、CDR2は配列番号54であり、そしてCDR3は配列番号55である。
【図15】[49]図15は、Cr1(配列番号56)およびJ588.c(配列番号57)遺伝子の生殖系列配列と並列させた、抗IGF−I受容体抗体EM164の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を示す。ダッシュ記号(−)は配列同一性を示す。
【図16】[50]図16は、組換えEM164キメラ抗体および組換えヒト化EM164抗体を構築し、そして発現するのに用いたプラスミドを示す。A)軽鎖クローニングプラスミド、B)重鎖クローニングプラスミド、C)哺乳動物抗体発現プラスミド。
【図17】[51]図17は、EM164の表面残基を予測するのに用いた構造ファイル・セットにおいて、127の抗体からスクリーニングした10の最も相同な軽鎖アミノ酸配列を示す。eml64 LC(配列番号58)、2jel(配列番号59)、2pcp(配列番号60)、1nqb(配列番号61)、1kel(配列番号62)、1hyx(配列番号63)、1igf(配列番号64)、1tet(配列番号65)、1clz(配列番号66)、1bln(配列番号67)、1cly(配列番号68)、コンセンサス(配列番号69)。
【図18】[52]図18は、EM164の表面残基を予測するのに用いた構造ファイル・セットにおいて、127の抗体からスクリーニングした10の最も相同な重鎖アミノ酸配列を示す。em164 HC(配列番号70)、1nqb(配列番号71)、1ngp(配列番号72)、1fbi(配列番号73)、1afv(配列番号74)、1yuh(配列番号75)、1plg(配列番号76)、1d5b(配列番号77)、1ae6(配列番号78)、1axs(配列番号79)、3hfl(配列番号80)、コンセンサス(配列番号81)。
【図19】[53]図19は、10の最も相同な構造からの、(A)軽鎖および(B)重鎖の可変領域残基各々の平均アクセス可能性を示す。数字は、Kabat抗体配列位番号を示す。
【図20】[54]図20は、ネズミEM164(muEM164)およびヒト化EM164(huEM164)抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列を示す。muEM164(配列番号82)、huEM164 V1.0(配列番号83)、huEM164 V1.1(配列番号84)、huEM164 V1.2(配列番号85)、huEM164 V1.3(配列番号86)。
【図21】[55]図21は、ネズミ(muEM164、配列番号87)およびヒト化EM164抗体(huEM164、配列番号88)の重鎖可変領域アミノ酸配列を示す。
【図22】[56]図22は、軽鎖(DNA、配列番号89、アミノ酸、配列番号90)および重鎖(DNA、配列番号91、アミノ酸、配列番号92)両方のhuEM164 v1.0の可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図23−1】[57]図23は、ヒト化EM164 v1.1(DNA、配列番号93;アミノ酸、配列番号94)、v1.2(DNA、配列番号95;アミノ酸、配列番号96)およびv1.3(DNA、配列番号97;アミノ酸、配列番号98)の軽鎖可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図23−2】[57]図23は、ヒト化EM164 v1.1(DNA、配列番号93;アミノ酸、配列番号94)、v1.2(DNA、配列番号95;アミノ酸、配列番号96)およびv1.3(DNA、配列番号97;アミノ酸、配列番号98)の軽鎖可変領域DNAおよびアミノ酸配列を示す。
【図24】[58]図24は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞の増殖および生存の、ヒト化EM164 v1.0抗体およびネズミEM164抗体による阻害を示す。
【図25】[59]図25は、IGF−Iが刺激するMCF−7細胞のサイクリングを、EM164が抑制することを示す。
【図26】[60]図26は、IGF−1および血清の抗アポトーシス効果を、EM164が抑制することを示す。CK18タンパク質の切断レベルが増加していることによって立証されるように、EM164で処理すると、アポトーシス細胞死が生じる。
【図27】[61]図27は、免疫不全マウスにおけるヒトBxPC−3膵臓癌異種移植片の増殖に対する、EM164抗体、ゲムシタビン、またはEM164抗体およびゲムシタビンの組み合わせでの処理の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはそのエピトープ結合性断片であり、そして前記抗体または前記断片がインスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し:
(i)マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片、
(ii)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有する表面再構成(resurfaced)抗体、またはそのエピトープ結合性断片、
(iii)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有するヒトまたはヒト化抗体、あるいはそのエピトープ結合性断片、
(iv)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有する抗体の機能上の同等物、またはそのエピトープ結合性断片、
(v)ネズミ抗体EM164と比較して少なくとも1つのヌクレオチド突然変異、欠失または挿入を有し、そしてネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有するネズミ抗体EM164の変異体、またはそのエピトープ結合性断片、および
(vi)マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164、またはそのエピトープ結合性断片
からなる群より選択される、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第一の療法剤が、約1mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの投薬量で患者に投与され、そして第二の療法剤が、約10mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの投薬量で投与される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第一の療法剤が、約10mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの投薬量で患者に投与され、そして第二の療法剤が、約50mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの投薬量で投与される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
請求項1記載の組成物および薬学的に許容しうるキャリアーまたは希釈剤を含む、薬剤組成物。
【請求項7】
(a)第一の療法剤であって:
【化1】
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含む抗体または抗体断片である、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項8】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、少なくとも1つの重鎖可変領域および少なくとも1つの軽鎖可変領域を含む、抗体または抗体断片であり、前記重鎖可変領域が、それぞれ配列番号1〜3:
【化2】
に示されるアミノ酸配列を有する3つの連続した相補性決定領域を含み;そして前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号4〜6:
【化3】
に示されるアミノ酸配列を有する3つの連続した相補性決定領域を含む、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項9】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはその断片であり、前記抗体が、配列番号7:
【化4】
に示されるアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項10】
前記重鎖可変領域が配列番号7に示される前記アミノ酸配列に、少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記重鎖可変領域が配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9の組成物。
【請求項12】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはその断片であり、前記抗体が、配列番号8:
【化5】
に示されるアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項13】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に示される前記アミノ酸配列に、少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する、請求項12の組成物。
【請求項15】
(a)第一の療法剤であって:
【化6】
からなる群より選択される配列を有する軽鎖可変領域を含む、抗体またはその断片である、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項16】
(a)第一の療法剤であって、配列番号13:
【化7】
に示される配列を有する重鎖可変領域を含む、抗体またはその断片である、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項17】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項7〜16のいずれか1つの組成物。
【請求項18】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項7〜16のいずれか1つの組成物。
【請求項19】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞と請求項1の組成物を接触させることを含む、前記方法。
【請求項20】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項1の組成物の有効量を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項6の薬剤組成物の有効量を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記癌が、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫からなる群より選択される癌である、請求項19〜21のいずれか1つの治療法。
【請求項23】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、
(b)第二の療法剤、および
(c)使用説明書
を含む、キット。
【請求項24】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を:
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
癌を有する患者を治療する方法であって、前記患者に有効量の:
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記細胞を、前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤と同時に接触させる、請求項24の方法。
【請求項27】
前記細胞を、前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤と、連続して、そしていずれかの順序で接触させる、請求項24の方法。
【請求項28】
前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤を同時に投与する、請求項25の方法。
【請求項29】
前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤を、連続して、そしていずれかの順序で投与する、請求項25の方法。
【請求項30】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項24または25の方法。
【請求項31】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項24または25の方法。
【請求項1】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはそのエピトープ結合性断片であり、そして前記抗体または前記断片がインスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合し:
(i)マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片、
(ii)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有する表面再構成(resurfaced)抗体、またはそのエピトープ結合性断片、
(iii)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有するヒトまたはヒト化抗体、あるいはそのエピトープ結合性断片、
(iv)ネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有する抗体の機能上の同等物、またはそのエピトープ結合性断片、
(v)ネズミ抗体EM164と比較して少なくとも1つのヌクレオチド突然変異、欠失または挿入を有し、そしてネズミ抗体EM164と同じ結合特異性を有するネズミ抗体EM164の変異体、またはそのエピトープ結合性断片、および
(vi)マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164、またはそのエピトープ結合性断片
からなる群より選択される、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド(antide)、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第一の療法剤が、約1mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの投薬量で患者に投与され、そして第二の療法剤が、約10mg/平方メートル〜約2000mg/平方メートルの投薬量で投与される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第一の療法剤が、約10mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの投薬量で患者に投与され、そして第二の療法剤が、約50mg/平方メートル〜約1000mg/平方メートルの投薬量で投与される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
請求項1記載の組成物および薬学的に許容しうるキャリアーまたは希釈剤を含む、薬剤組成物。
【請求項7】
(a)第一の療法剤であって:
【化1】
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含む抗体または抗体断片である、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項8】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、少なくとも1つの重鎖可変領域および少なくとも1つの軽鎖可変領域を含む、抗体または抗体断片であり、前記重鎖可変領域が、それぞれ配列番号1〜3:
【化2】
に示されるアミノ酸配列を有する3つの連続した相補性決定領域を含み;そして前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号4〜6:
【化3】
に示されるアミノ酸配列を有する3つの連続した相補性決定領域を含む、前記の第一の療法剤、並びに
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項9】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはその断片であり、前記抗体が、配列番号7:
【化4】
に示されるアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項10】
前記重鎖可変領域が配列番号7に示される前記アミノ酸配列に、少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記重鎖可変領域が配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9の組成物。
【請求項12】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が抗体またはその断片であり、前記抗体が、配列番号8:
【化5】
に示されるアミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項13】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に示される前記アミノ酸配列に、少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する、請求項12の組成物。
【請求項15】
(a)第一の療法剤であって:
【化6】
からなる群より選択される配列を有する軽鎖可変領域を含む、抗体またはその断片である、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項16】
(a)第一の療法剤であって、配列番号13:
【化7】
に示される配列を有する重鎖可変領域を含む、抗体またはその断片である、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を含む、組成物。
【請求項17】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項7〜16のいずれか1つの組成物。
【請求項18】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項7〜16のいずれか1つの組成物。
【請求項19】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞と請求項1の組成物を接触させることを含む、前記方法。
【請求項20】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項1の組成物の有効量を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
癌を有する患者を治療する方法であって、請求項6の薬剤組成物の有効量を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記癌が、乳癌、結腸癌、卵巣癌腫、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌腫、膵臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、および横紋筋肉腫からなる群より選択される癌である、請求項19〜21のいずれか1つの治療法。
【請求項23】
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、
(b)第二の療法剤、および
(c)使用説明書
を含む、キット。
【請求項24】
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記細胞を:
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
癌を有する患者を治療する方法であって、前記患者に有効量の:
(a)第一の療法剤であって、前記の第一の療法剤が、マウス・ハイブリドーマEM164(ATCC寄託番号PTA−4457)に産生されるネズミ抗体EM164と同じアミノ酸配列を有する抗体、またはそのエピトープ結合性断片であり、前記抗体または前記断片が、インスリン様増殖因子I受容体に特異的に結合する、前記の第一の療法剤、および
(b)第二の療法剤
を投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記細胞を、前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤と同時に接触させる、請求項24の方法。
【請求項27】
前記細胞を、前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤と、連続して、そしていずれかの順序で接触させる、請求項24の方法。
【請求項28】
前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤を同時に投与する、請求項25の方法。
【請求項29】
前記の第一の療法剤および前記の第二の療法剤を、連続して、そしていずれかの順序で投与する、請求項25の方法。
【請求項30】
前記の第二の療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、トラスツズマブ(ハーセプチン)、カペシタビン、タモキシフェン、トレミフェン、レトロゾール、アナストロゾール、フルベストラント、エクセメスタン、ゴセレリン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、デキサメタゾン、アンチド、ベバシズマブ(アバスチン)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エトポシド、トポテカン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エストラムスチン、ミトキサントロン、アバレリクス、ゾレドロネート、ストレプトゾシン、リツキシマブ(リツキサン)、イダルビシン、ブスルファン、クロラムブシル、フルダラビン、イマチニブ、シタラビン、イブリツモマブ(ゼバリン)、トシツモマブ(ベキサール)、インターフェロン・アルファ−2b、メルファラン、ボルテゾミブ(ベルケード)、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロニチブ(タルセバ)、抗EGF受容体抗体(セツキシマブ、Abx−EGF)、およびエポチロンからなる群より選択される、請求項24または25の方法。
【請求項31】
前記の第二の療法剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびカンプトテシンからなる群より選択される、請求項24または25の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23−1】
【図23−2】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23−1】
【図23−2】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2008−502589(P2008−502589A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543832(P2006−543832)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/038230
【国際公開番号】WO2005/061541
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/038230
【国際公開番号】WO2005/061541
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】
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