説明

指紋照合機能付き電子機器

【課題】 指紋入力によって実行可能な動作数を増やす。
【解決手段】 動作と指紋情報との対応関係を登録するにあたり、ユーザに指紋入力を促して指紋検出手段から2以上の指紋情報を得、1動作に2以上の指紋情報の組み合わせを対応づけて記憶手段に登録する。登録後、指紋入力が検出されると、2以上の指紋情報の組み合わせに対応する動作を上記登録された対応関係から呼び出し、該呼び出した動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋照合結果に基づいて動作を行う電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、指紋を検出して指の種類を判別し、その指に応じた動作を行うカメラが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−296576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では1動作に1つの指紋を対応づけているため、指紋入力によって実現可能な動作数が限られ、使い勝手が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る指紋照合機能付き電子機器は、所定の検出部に置かれたユーザの指の指紋を検出し、指紋情報を出力する指紋検出手段と、指紋検出手段から出力された2以上の指紋情報の組み合わせに対応する動作を予め登録された対応関係から呼び出し、該呼び出した動作を実行する制御手段とを具備する。
請求項2の発明は、動作と指紋情報との対応関係を登録するにあたり、ユーザに指紋入力を促して指紋検出手段から2以上の指紋情報を得、1動作に2以上の指紋情報の組み合わせを対応づけて記憶手段に登録する登録手段を更に備えるものである。
請求項3の発明は、任意の指紋情報の組み合わせをパスワードとして登録可能とし、制御手段は、パスワードとして登録された指紋情報の組み合わせが指紋検出手段から出力されると、機器の本来の使用を許可するものである。
請求項4の発明は、特定の操作部材を操作しながら前記検出部に指を置くことで、指紋による動作の実行が許可されるよう構成したものである。
請求項5の発明は、特定のモードが設定された状態で検出部に指を置くことで、指紋による動作の実行が許可されるよう構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、指紋入力による動作の実行にあたり、2以上の指紋情報の組み合わせによって動作を選択できるようにしたので、指紋入力によって実現可能な動作数を大幅に増やすことができ、利便性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図4により本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本実施形態における電子カメラのブロック図である。カメラ動作部1は、主として撮影関係の機能を果たす種々の回路(撮像回路、露出制御回路、画像処理回路、画像記録回路、フォーカス回路など)から構成され、各回路は制御部2からの指令に応じて作動する。
【0008】
表示部3は、液晶モニタなどの表示装置とその表示駆動回路とから構成され、制御部2からの指令に応じて画像などを表示する。例えばカメラで再生モードを設定すると、既に撮像され記録されている画像を読み出して表示部3に表示させることができる。また表示部3にメニュー画面を表示させ、ここで種々の設定を行うことができる。メニューは、再生メニュー、撮影メニュー、カスタムメニューなどに分かれ、例えば撮影メニューの設定項目としては、画質モード、画像サイズ、ホワイトバランス、ISO感度などがある。本実施形態は、これらの項目設定を指紋入力で行えることを特徴としているが、その詳細は後述する。
【0009】
指紋検出部4は、指紋センサ部4aを介して指の指紋を検出するもので、検出された指紋の特徴を表す情報(以下、指紋情報)が指紋照合に用いられる。指紋照合のアルゴリズムとしては、パターンマッチング法、マニューシャ法(特徴点抽出照合法)、周波数解析法などが知られている。パターンマッチング法は、指紋の画像を指紋情報として登録しておき、検出された指紋の画像を登録画像と照合し、一致/不一致を判定する。マニューシャ法は、指紋の隆線の端点や分岐点の属性とそれらの相対的な位置関係を指紋情報として登録し、また周波数解析法は、指紋紋様の横断面を波形として表したデータを指紋情報として登録する。いずれも検出された指紋情報と登録された指紋情報とを照合して結果を出す。カメラは、これらいずれかの指紋照合アルゴリズムを持ち、指紋検出部4はそのアルゴリズムに対応した方法で指紋情報を検出する。
【0010】
次に、カメラにおける指紋照合の一例を説明する。
<指紋登録>
本実施形態では、両手の指10本分の指紋をセットで登録することができる。カメラで指紋登録モードを設定すると、制御部2は図2のプログラムを起動し、ステップS1では指の種類を表示部3に表示し、その指の指紋入力を促す。登録者が表示に従って該当する指をセンサ部4aに接触させると、指紋検出部4によって指紋が検出され、その指紋情報が指の種類と対応づけられてメモリ5に登録される(ステップS2→S3)。例えば「右人差し指」と表示された場合には、右手の人差し指をセンサ部4aに接触させることで、その指の指紋情報が右人差し指の指紋情報として登録される。ステップS4では10指全てに対して登録が完了したかを判定し、肯定されると処理を終了し、否定されるとステップS1に戻る。ステップS1では次に登録すべき指を表示し、以降その繰り返しとなる。
【0011】
なお、10指を1セットとして複数セット、つまり複数人分の指紋登録が可能である。各セットに対し、誰の情報かが分かるようにユーザ名などの特定情報をも登録できるようにすることが望ましい。
【0012】
<動作と指紋との対応づけ>
従来カメラでは、種々のカメラ動作を操作ボタンや操作ダイアルなどの操作に従って行うのが一般的であったが、それらの操作を指紋入力に代えることで、操作部材を大幅に減らすことができる。例えばレリーズボタンやその他の一部の操作部材のみ残しておけば、機能設定やメニュー操作用の操作部材の多くは廃止してもよい。これを実現するには、事前にカメラ動作と指紋とを対応づけ、その対応関係を登録しておく必要がある。対応づけが可能なカメラ動作としては、上述したメニュー項目の設定や、露出モード設定、フォーカスモード設定、再生モード時の動作などが挙げられる。
【0013】
カメラで指紋対応づけモードが設定されると、制御部2は図3のプログラムを起動する。ステップS11ではモード解除操作がなされたか否かを判定し、肯定されると処理を終了させ、否定されるとステップS12に進む。ステップS12では、ユーザの選択操作によって対応づけを行うべき動作が決定されるのを待ち、決定されるとステップS13で指紋入力を促すメッセージを表示部3に表示する。指紋入力は1動作に対して複数回(ここでは2回)要求される。最初にユーザがいずれかの指をセンサ部4aに接触させると、指紋検出部4が指紋を検出しその指紋情報を記憶するとともに、もう一度指紋入力を促す。ユーザがいずれかの指をセンサ部4aに接触させると、指紋検出部4が指紋を検出しその指紋情報を記憶する。
【0014】
ステップS14では、入力された2個の指紋をメモリ5の指紋登録情報(図2の処理で登録されたもの)と照合する。ステップS15で照合結果を判定し、少なくともいずれか一方の入力指紋がが登録指紋のいずれとも一致しなければ、ステップS16で一致せずの警告メッセージを表示して処理を終了させる。双方とも一致するものがあった場合には、指紋登録情報からいずれの指の指紋かを特定し、ステップS17で確認メッセージを表示する。例えば、「右人差し指と左中指でいいですか?」のような表示とする。
【0015】
ステップS18でOKの入力があった場合には、ステップS20で2つの指紋情報と当該動作とを対応づけてメモリ5に登録する。登録がなされるとステップS11に戻り、次の動作の登録処理が可能となる。ステップS19でNGの入力があった場合には、ステップS13に戻って改めて指紋入力を待つ。
【0016】
以上の手順により指紋と動作の対応づけをユーザが自由に行える。具体例を挙げると、例えばホワイトバランス設定における複数の設定項目(「晴天」,「曇天」,「白熱灯」,「蛍光灯」など)から「晴天」を選択して設定するという動作に、例えば右人差し指と左中指との指紋の組み合わせを対応づけて登録することができる。あるいはホワイトバランス設定画面やその他の設定画面に移行するという動作に対しても、それぞれ特定の指紋の組み合わせを対応づけることができる。
【0017】
ここで、対応づけの登録の際、2つの指紋の入力順序も分かるようにすれば、2種類の指紋に2動作の対応づけが可能となる。例えば「先に右人差し指、次に左中指」と「先に左中指、次に右人差し指」とで互いに異なる動作を対応づけることができる。なお、必ずしも入力順序は加味せずともよく、この場合は2種類の指紋に1動作のみのが対応づけ可能となる。また、「先に右人差し指、次も右人差し指」のように同一の指紋に動作を対応づけることも可能である。
【0018】
<指紋入力による動作実行>
動作と指紋との対応づけが登録されれば、指紋入力によって動作を指示することができる。カメラが通常の使用モードにあるときに単に指紋入力を行うことで動作指示がなされるようにしてもよいが、意図しない指紋入力を防止するために、何らかの操作部材を押しながら指紋入力を行ったり、指紋入力モードを設定した上で指紋入力を行うようにしてもよい。
【0019】
いずれにせよ指紋入力が可能な状態でセンサ部4aに指が接触されると、制御部2は図4のプログラムを起動する。ステップS31では検出した指紋情報を指紋情報Aとして記憶し、ステップS32で再度の指紋入力を促す。ステップS33で再度の指紋入力がなされると、ステップS34でその指紋情報を指紋情報Bとして記憶する。ステップS35では、記憶した2つの指紋情報に対して照合を行う。ここでの指紋照合とは、指紋情報A,Bの組み合わせに対応する動作が登録されているか否かを検出する動作を指す。ステップS36で対応する動作があると判定されると、ステップS37でその動作を選択し、ステップS38で実行する。一方、対応する動作がなければ、ステップS39で警告メッセージを表示して処理を終了させる。
【0020】
本実施形態によれば、種々の動作を指紋入力で行うことができる。一例としてホワイトバランス設定を行う場合には、特定の組み合わせの指紋入力を行うことで、通常の手順を踏まずにホワイトバランス設定画面を一気に呼び出すことができる。そして、その画面で選択可能な複数の項目に対し、設定したい項目に対する指紋入力(2回)を行うことで、その項目(例えば、「晴天」)を選択することができる。特に本実施形態では、1動作に複数の指紋の組み合わせを対応づけることで、1動作1指紋の場合と比べて多くの動作を指紋入力で行うことが可能となり、利便性が増す。
【0021】
ところで、動作に対応する指紋の組み合わせをユーザが忘れてしまったときに備え、所定の確認操作を行うことで、それらの対応関係を例えば一覧形式で表示できるようにすることが望ましい。本実施形態では、指紋登録(図2)の際に指紋と指の種類とを対応づけて登録しているので、各々の動作がいずれの2指に対応づけられているかをユーザに報知することができる。
【0022】
特定の指紋の組み合わせをパスワードとして登録することもできる。この場合、制御部2はカメラの電源オンに伴って指紋によるパスワード入力を促し、予めパスワードとして登録された指紋入力(複数回)を確認して初めてカメラ動作を許容する。また、例えば上述した指紋登録とユーザ名との対応づけを利用し、ユーザがカメラの使用にあたって指紋入力を行うことで、制御部2はその時々のカメラ使用者を特定することができる。例えば、撮影によって生成される画像ファイルは、Exif情報などの付加情報を含んでいるが、その付加情報のひとつである「撮影者」に上記特定した使用者のユーザ名を自動的に書き込むようにすれば、後に誰が撮影した画像かが分かり、便利である。
【0023】
なお、動作に対応づける指紋は指3本以上の組み合わせであってもよい。あるいは動作に応じて指1本、2本、3本のように組み合わせ本数を変更できるようにしてもよい。また電子カメラにて説明したが、携帯電話機やその他の電子機器にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態における電子カメラの制御ブロック図。
【図2】指紋登録の処理手順を示すフローチャート。
【図3】指紋と動作の対応づけの処理手順を示すフローチャート。
【図4】指紋入力による動作実行の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0025】
1 制御部
4 指紋検出部
4a センサ部
5 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出部に置かれたユーザの指の指紋を検出し、指紋情報を出力する指紋検出手段と、
該指紋検出手段から出力された2以上の指紋情報の組み合わせに対応する動作を予め登録された対応関係から呼び出し、該呼び出した動作を実行する制御手段とを具備することを特徴とする指紋照合機能付き電子機器。
【請求項2】
前記動作と前記指紋情報との対応関係を登録するにあたり、ユーザに指紋入力を促して前記指紋検出手段から2以上の指紋情報を得、1動作に該2以上の指紋情報の組み合わせを対応づけて記憶手段に登録する登録手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の指紋照合機能付き電子機器。
【請求項3】
任意の指紋情報の組み合わせをパスワードとして登録可能とし、前記制御手段は、該パスワードとして登録された指紋情報の組み合わせが前記指紋検出手段から出力されると、機器の本来の使用を許可することを特徴とする請求項2に記載の指紋照合機能付き電子機器。
【請求項4】
特定の操作部材を操作しながら前記検出部に指を置くことで、前記指紋による動作の実行が許可されるよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の指紋照合機能付き電子機器。
【請求項5】
特定のモードが設定された状態で前記検出部に指を置くことで、前記指紋による動作の実行が許可されるよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の指紋照合機能付き電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−80021(P2007−80021A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268059(P2005−268059)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】