説明

捲回型電極群、それを備えた電池、および電池の製造方法

【課題】巻芯を有する、電解液の吸収性および保持性に優れた、小型化可能な低コストの捲回型電極群を提供する。
【解決手段】本発明は、導電性を有する巻芯、巻芯に巻きつけられる第1電極および第2電極、ならびに第1電極と第2電極との間を隔離するセパレータを備える捲回型電極群に関する。第1電極は、帯状の第1集電体、および第1集電体に形成される第1活物質層を有し、第2電極は、帯状の第2集電体、および第2集電体に形成される第2活物質層を有する。第1活物質層の算術平均粗さRaは0.5〜10μmであり、第1活物質層の厚みは20〜60μmである。第1電極および第2電極は、第1集電体または第2集電体が露出する部分Aを有し、部分Aは、巻芯に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する巻芯を有する捲回型電極群を備えた電池に関し、より詳しくは、捲回型電極群の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯型電子機器の小型化の要求に伴い、これらの駆動用電源である電池に対し、より一層の小型化、高エネルギー密度化が要求されている。
従来、捲回型電極群を備えた電池では、電極群を構成した後、電極群の中心部から巻芯を抜き取るため、電極群の中心部は空洞であった。この電池を小型化するため、巻芯を抜き取らずに集電体として用い、正極または負極のいずれか一方を巻芯に電気的に接続して電極群を構成した円筒型電池が開発されている。
【0003】
このような電池は、巻芯の一方の端部は電池の外部に露出し、その露出部分が外部端子を兼ねる。このため、集電体を外部端子に接続する工程が不要であり、工程を簡略化できる。外部端子を接続するためのスペースが不要であり、電池を小型化し易い。
その反面、電極群の中心部には巻芯があり、電池ケース内にて空間を充分に確保できないため、電極群を電池ケース内に挿入した後、電池ケース内に充分な量の電解液を注入することは困難である。電解液を注入できたとしても、電解液が電池ケース外に溢れないように少しずつ注入する必要があり、電解液の注入工程で長い時間を要する。
よって、従来、このような電池では、電池ケースに電解液を注入した後、電極群をケースに挿入していた。しかし、安定かつ良好な電池特性を得るために必要な電解液量を電池ケース内に予め注入した後、電極群を電池ケースに挿入すると、電極群が電解液を速やかに吸収し難いため、電解液が溢れて電池ケースの外部へ流出する場合があった。
電解液が溢れないようにするには、電池ケースの内容積に対する電極群が占める体積割合を低減することが考えられるが、活物質量が減少し、電池容量が低下するという不具合を生じる。
【0004】
巻芯を有する捲回型電極群への電解液の注入に関して、様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1では、第1電極、第2電極、および前記第1電極と前記第2電極との間にセパレータを介在させて捲回した電極群を備えた電池において、第1電極および第2電極の少なくとも一方とセパレータとの間に電解液を供給する空隙を形成するための部材を、第1電極および第2電極の少なくとも一方の表面に配置することが提案されている。部材には、例えば、線材が用いられる。これにより、電解液を速やかに注入でき、電池特性を改善することができる。
【0005】
特許文献2では、上記の巻芯を有する捲回型電極群を備えた非水電解液二次電池において、負極を巻芯と溶接するために、負極にて集電体が露出する部分を設け、その部分に電解液を保持するための孔を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−52678号公報
【特許文献2】特開2008−243704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の電池では、空隙を形成するための部材を配置するため、十分な容量を得るために必要な電極群が占める体積割合を確保することが難しい。電極群が占める体積割合(活物質量)の減少により、容量低下する場合がある。特に、電極群の直径が20mm以下(特に、10mm以下)の小型電池では、電池ケースの内容積に対する電極群が占める体積割合が高くなるため、空隙を形成する部材を配置することは極めて困難である。
電極群が占める体積割合を確保するため、部材を小さく(線材を細く)すると、電解液を供給する空隙が小さくなり、電解液を速やかに注入することが困難となる。特に、小型の電池では、特許文献1記載の部材を用いることは困難である。
また、空隙を形成するための部材を別途用い、部材を配置する工程が必要となるため、製造工程の数が増え、製造コストが増大する。
【0008】
特許文献2では、負極にて集電体が露出する部分に形成された孔により、電極群の捲回中心部における電解液の保持性は向上する。しかし、電極群全体の電解液の吸収性および保持性は不十分である。また、集電体が露出する部分に孔が形成されていることにより、集電体における孔付近の部分は、強度が低下し、破断し易い。さらに、この集電体が露出する部分は、巻芯に溶接する部分の面積および孔の大きさを考慮して、比較的大きくしておく必要がある。そのため、負極活物質を充填する領域が減少し、負極容量が低下する場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、巻芯を有し、電解液の吸収性および保持性に優れた、小型化可能な低コストの捲回型電極群を提供する。
また、充分な量の電解液を含む捲回型電極群を備え、高い信頼性を有する、小型化可能な低コストの電池を提供する。
さらに、捲回型電極群に充分な量の電解液を迅速に含ませることが可能な、高い信頼性を有する、低コストの電池の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の捲回型電極群は、導電性を有する巻芯、前記巻芯に巻きつけられる第1電極および第2電極、ならびに前記第1電極と第2電極との間を隔離するセパレータを備え、
前記第1電極は、帯状の第1集電体、および前記第1集電体の表面に形成される第1活物質層を有し、
前記第2電極は、帯状の第2集電体、および前記第2集電体の表面に形成される第2活物質層を有し、
前記第1活物質層の算術平均粗さRaは、0.5〜10μmであり、
前記第1活物質層の厚みは、20〜60μmであり、
前記第1電極および前記第2電極の一方は、前記第1集電体または前記第2集電池体が露出する部分Aを有し、
前記部分Aは、前記巻芯に溶接されていることを特徴とする。
【0011】
前記第1集電体の算術平均粗さRaは0.5〜10μmであり、前記第1活物質層は、蒸着法により形成されているのが好ましい。
前記第1活物質層は、SiOx(0<x<2)の層からなるのがより好ましい。
前記第1電極が、前記第1集電体が露出する部分Aを有するのが好ましい。
【0012】
本発明の電池は、一端が閉じられた略円筒状の電池ケースと、前記電池ケースに収容される上記の捲回型電極群と、前記捲回型電極群に含まれる電解質と、を備え、
前記巻芯の一端が、電極端子として、前記電池ケースの外部に露出していることを特徴とする。
前記電池の公称容量は、5〜100mAhであるのが好ましい。
前記第1電極および前記第2電極の他方は、前記第1集電体または前記第2集電体が露出する部分Bを有し、前記部分Bは、前記電池ケースと直接接触しているのが好ましい。
前記電池ケースの外径は、10mm以下であるのが好ましい。また、電池ケースの高さは40mm以下が好ましく、さらには、30mm以下が好ましい。
【0013】
本発明の電池の製造方法は、
(1)上記の捲回型電極群を構成する工程と、
(2)前記捲回型電極群に電解液を含ませる工程と、
(3)前記工程(2)の後、前記電解液を含む前記捲回型電極群を電池ケース内に挿入する工程と、
(4)前記工程(3)の後、前記電池ケースを封口する工程と、
を含むことを特徴とする。
前記工程(1)は、蒸着法により、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1集電体の表面に、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1活物質層を形成して、第1電極を得る工程を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、巻芯を有し、電解液の吸収性および保持性に優れた、小型化可能な低コストの捲回型電極群を提供することができる。
また、充分な量の電解液を含む捲回型電極群を備え、高い信頼性を有する、小型化可能な低コストの電池を提供することができる。
さらに、捲回型電極群に充分な量の電解液を迅速に含ませることが可能な、高い信頼性を有する、低コストの電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である円筒型電池の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、導電性を有する巻芯、前記巻芯に巻きつけられる第1電極および第2電極、ならびに前記第1電極と第2電極との間を隔離するセパレータを備える捲回型電極群に関する。そして、本発明は、前記第1電極は、帯状の第1集電体、および前記第1集電体の表面に形成される第1活物質層を有し、前記第2電極は、帯状の第2集電体、および前記第2集電体の表面に形成される第2活物質層を有し、
前記第1活物質層の算術平均粗さRaは、0.5〜10μmであり、
前記第1活物質層の厚みは、20〜60μmであり、
前記第1電極および前記第2電極の一方は、前記第1集電体または前記第2集電体が露出する部分Aを有し、
前記部分Aは、前記巻芯に溶接されている点に特徴を有する。
部分Aは、集電体の両面に活物質層が形成されない部分であり、巻芯側に配される、第1電極の長手方向の一方の端部に形成される。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601−2001に準拠する、表面の粗さの程度を表す数値であり、数値が大きい程、表面が粗いことを示す。
【0017】
捲回型電極群を構成した際に、第1活物質層の算術平均粗さRaが0.5〜10μmである粗面とセパレータとの間に電解液を保持する微小な空隙が多数形成されるため、捲回型電極群の電解液の吸収性および保持性が改善される。特に、電解液を吸収および保持し難い、サイズの小さい捲回型電極群(電池)に対して有効である。本発明は、例えば、電池ケースの最大外径が3〜20mm、および巻芯の最大径が1〜10mmである小型の電池に好適である。
また、別途部材を用いることなく、第1活物質層の表面形態を利用して、電極群の電解液の吸収性および保持性を改善することができるため、コスト面で有利である。
【0018】
第1活物質層の算術平均粗さRaが0.5μm未満であると、第1活物質層とセパレータとの間にて微小な空隙を多数形成するのが難しくなり、電極群の吸収性および保持性が充分に得られない場合がある。第1活物質層の算術平均粗さRaが10μm超であると、電極群内にて空隙が占める割合が過度に大きくなり、活物質層中の活物質の充填密度が低下し、電池容量が低下する場合がある。
【0019】
第1活物質層の算術平均粗さRaは、2μm以上であるのが好ましい。この場合、特に電解液を吸収および保持し難い、巻芯に近い領域(例えば、電極群の軸方向に垂直な面における曲率半径が3mm以下の領域A)でも、電解液が迅速に吸収され、電極群全体において、優れた電解液の吸収性および保持性が得られる。
【0020】
特に、捲回により、巻芯に近い領域(例えば、電極群の軸方向に垂直な面における曲率半径が2mm以下の領域B)では、電極の内側に配される活物質層の圧縮応力が大きくなるため、第1活物質層の算術平均粗さRaは、5μm以上であるのがより好ましい。電極が捲回されて、領域Bにおける電極の内側の活物質層が圧縮されたとしても、活物質層の算術平均粗さRaを0.5μm以上に確保することができ、電極群全体において、優れた電解液の吸収性および保持性が得られる。
【0021】
第1活物質層の厚みは、20〜60μmである。第1活物質層の厚みが60μm超であると、電池の小型化が難しい場合がある。第1活物質層の厚みが20μm未満であると、第1活物質の充填量が減少し、電池容量が低下する場合がある。
【0022】
第1集電体の算術平均粗さRaは0.5〜10μmであり、第1活物質層は、蒸着法により形成されているのが好ましい。第1活物質層の表面形態を、第1集電体の表面形態に追従させることができ、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1活物質層を容易に形成することができる。
【0023】
第1電極は、第1集電体が露出する部分Aを有するのが好ましい。部分Aは、第1集電体の両面に第1活物質層が形成されない部分であり、巻芯側に配される、第1電極の長手方向の一方の端部に形成される。
これにより、第1電極の表面全体を、算術平均粗さRaが0.5〜10μmの粗面とすることができる。すなわち、第1集電体が露出する部分Aおよび活物質層の両方の算術平均粗さRaを0.5〜10μmとすることができる。電極群全体の電解液の吸収性および保持性がさらに改善される。特に電解液を吸収および保持し難い、電極群の巻芯に近い部分において、電解液の吸収性および保持性が大幅に改善される。
また、第1集電体が露出する部分Aは粗面を有するため、部分Aは、巻芯と、安定した溶接部を形成することができ、第1電極と巻芯とを強固に接続することができる。第1電極と巻芯との接続をより強固にするためには、第1集電体の算術平均粗さRaは、2〜10μmがより好ましい。
【0024】
さらに、第2電極(第2活物質層および第2集電体)の算術平均粗さRaが0.5〜10μmでもよい。
【0025】
本発明は、上記の捲回型電極群を備えた電池に関する。すなわち、本発明の電池は、一端が閉じられた略円筒状の電池ケースと、前記電池ケースに収容される上記の捲回型電極群と、前記捲回型電極群に含まれる電解質と、を備え、
前記巻芯の一端が、前記電池ケースの外部に露出し、第1電極または第2電極の外部端子として用いられる点に特徴を有する。
これにより、充分な量の電解液を含む捲回型電極群を備え、高い信頼性を有する、小型化可能な低コストの電池を提供することができる。
本発明の電池は、公称容量が5〜100mAhの小型電池であるのが好ましい。
本発明の電池は、一端が閉じられた略円筒状の電池ケースの外径が3〜20mm、および略円柱状の巻芯の径が1〜10mmである小型の円筒型電池であるのが好ましい。更なる小型化の観点から、より好ましくは、一端が閉じられた略円筒状の電池ケースの外径が3〜10mm、および略円柱状の巻芯の径が1〜5mmである。
【0026】
第1電極および第2電極の他方は、第1集電体または第2集電体が露出する部分Bを有し、部分Bは、電池ケースと直接接触しているのが好ましい。部分Bは、電極の長手方向の一方の端部(電極の最外周部に対応する部分)において、第2集電体の一方の面(電池ケースと対向する面)に第2活物質層が形成されない部分である。
これにより、電池ケースを、第1電極および第2電極のいずれか他方の電極の端子として用いられる。
電極群を電池ケース内へ圧入することにより、部分Bの表面を電池ケースの内面に密着させることができ、部分Bと、電池ケースとの間で良好な接触状態が得られる。よって、第1電極および第2電極のいずれか他方を、電池ケースと電気的に安定して接触させることができる。
電極の一部と電池ケース内面とを直接接触させることによる集電であり、電極と電池ケースとをリード等の部材を用いて溶接する必要がない。このため、電解液を含む電極群を電池ケースに挿入する場合や、電池を小型化する場合に有効である。
【0027】
第2電極が、第2集電体が露出する部分Bを有し、部分Bの算術平均粗さRaは0.2μm以下であるのが好ましい。部分Bは、第2電極の長手方向の一方の端部(電極の最外周部に対応する部分)において、第2集電体の一方の面(電池ケースと対向する面)に、第2活物質層が形成されない部分である。
部分Bの表面が、算術平均粗さRaが0.2μm以下の平滑面である場合、電池ケースに挿入し易く、電池ケースへの挿入工程における歩留まりが高くなる。第2集電体露出部の表面と電池ケースの内面との間の接触状態がさらに改善され、接触抵抗を大幅に低減することができる。
【0028】
第1電極が、第1集電体が露出する部分Bを有する場合、第1集電体において、部分Bのみを算術平均粗さRaが0.2μm以下である平滑面とし、部分B以外の領域を、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである粗面とすることが好ましい。
【0029】
本発明は、上記の捲回型電極群を備えた電池の製造方法に関する。すなわち、本発明の電池の製造方法は、
(1)上記の捲回型電極群を構成する第1工程と、
(2)前記捲回型電極群に電解液を含ませる第2工程と、
(3)前記第2工程の後、前記電解液を含む前記捲回型電極群を電池ケース内に挿入する第3工程と、
(4)前記第3工程の後、前記電池ケースを封口する第4工程と、
を含む点に特徴を有する。
【0030】
第1工程では、電解液の吸収性および保持性を改善するための部材を別途用いずに電極群を構成するため、工程を簡素化することができ、コスト面で有利である。電極群捲回時に部材がずれる等の不具合を生じることがない。
捲回型電極群は、電解液の吸収性および保持性に優れている。このため、第2工程にて、捲回型電極群に充分な量の電解液を迅速に含ませることができる。
また、第3工程にて、電池ケース内に電極群を挿入する際に、電極群から電解液が流出するのが抑制される。電池ケースの内面と、第1集電体または第2集電体が露出する部分Bとを密着させるために、電極群に電解液を含ませた状態で、電池ケース内に電極群を圧入することが可能である。
よって、信頼性に優れた電池の製造方法を提供することができる。
【0031】
第1工程は、蒸着法により、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1集電体の表面に、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1活物質層を形成する工程を含むのが好ましい。第1集電体の粗面を利用して、第1活物質層の表面に粗面を容易に形成することができる。
別途部材を用いることなく、第1電極の表面形態を利用して、電極群の吸収性および保持性を改善することができるため、コスト面で有利である。
【0032】
以下、本発明に係る電池の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、負極が粗面を有する場合を説明する。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、有底円筒形の電池ケース11、電池ケース11内に収容された捲回型電極群12、および電池ケース11を封止する絶縁ガスケット31を備えている。電池ケース11の外側面は絶縁カバー34で覆われている。
電極群12は、導電性を有する巻芯14と、第1電極としての負極15と、第2電極としての正極16と、負極15と正極16との間を隔離するセパレータ17とを備えている。この電極群12には、非水電解質が接触している。
【0033】
電極群12の最外周には、正極16が配され、電池ケース11の内側面と電気的に接触する。電池ケース11の底面および側面は、外部に露出し、外部正極端子として用いられる。
巻芯14の一端32は、電池ケースの外部に露出され、負極端子として用いられる。巻芯14の一端は、絶縁ガスケット31の孔に圧入されている。巻芯14の他端には、電池ケース11と短絡しないように、絶縁キャップ33が取付けられている。
【0034】
電池ケース11の内底面に絶縁板を配置する場合、絶縁キャップ33を用いなくてもよい。
また、以下の場合、絶縁キャップ33を用いなくてもよい。セパレータの電池ケース側の一端部が突出するように電極群を構成した後、セパレータの突出部を熱凝縮させて、電極群の一端面をセパレータで覆う。その電極群の一端面が電池ケースの内底面と対向するように電極群を電池ケース内に収容する。
これらの場合、絶縁キャップ33が無くても、電池ケース11の底部と、巻芯14との間の短絡を防止することができる。
【0035】
負極15の一端部は、巻芯14に溶接されている。これにより、負極15は、巻芯14と、電気的に接続されている。
負極15は、帯状の負極集電体、および負極集電体の両面に形成された負極活物質層を有する。負極15の総厚みは、35〜150μmが好ましい。
負極15の一端部に、集電体21の両面において負極活物質層が形成されず負極集電体が露出する部分Aが形成されている。この部分Aが、巻芯14に溶接されている。
負極集電体には、使用される負極活物質の充放電時の電位範囲において化学変化を起こさない材質が用いられる。
【0036】
負極集電体は、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである粗面を有する。負極集電体の粗面は、負極集電体の両面(セパレータと対向する面)の全体に形成されている。
粗面である部分Aと、巻芯との間で良好な溶接部を形成することができる。
負極集電体の算術平均粗さRaが0.5μm未満であると、負極における電極群の曲率半径が小さい領域(巻芯に近い部分)において、負極活物質層と負極集電体との密着性が低下する場合がある。また、蒸着法により、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである粗面を有する負極活物質層を形成するのが難しい。
負極集電体の算術平均粗さRaが10μm超であると、電極群内にて空隙が占める割合が過度に大きくなり、活物質層中の活物質の充填密度が低下し、電池容量が低下する場合がある。また、蒸着法により、算術平均粗さRaが10μm以下である粗面を有する負極活物質層を形成するのが難しい。
好ましくは、負極集電体は、算術平均粗さRaが2〜10μmである粗面を有する。
【0037】
電池の小型化および負極集電体の強度の観点から、負極集電体は、厚み8〜50μmが好ましい。
【0038】
負極集電体には、金属箔を用いるのが好ましい。金属箔としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、銅を含む合金、およびチタンの箔が挙げられる。
金属箔の表面に、カーボン、ニッケル、チタンなどの層を形成してもよい。
粗面を有する負極集電体の作製方法としては、例えば、めっき法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法、凸部を構成する材料と基材とを焼結する焼結法が挙げられる。
特に、負極集電体としては、銅が好ましく、銅箔に粗面を形成する方法としては、例えば、銅箔を溶液に浸して化学的にエッチング処理する方法や、銅箔に銅粒子を電着させる方法が用いられる。
【0039】
負極活物質層は、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである粗面を有する。負極活物質の粗面は、負極活物質層のセパレータと対向する面の全体に形成されている。
なお、この算術平均粗さRaは、負極活物質が不可逆容量を有する場合、負極活物質層に予め不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵させた時点での負極活物質層の算術平均粗さRaを指すが、そのリチウムを吸蔵させる前における負極活物質層の算術平均粗さRaとほぼ同じ値である。
【0040】
負極活物質層の表面に微細な凹凸が形成されるため、電極群における電解液の吸収性および保持性が向上する。負極活物質層は粗面を有するため、負極活物質層の表面積が増大し、負極でのデントライトの生成が抑制される。
負極全体(負極活物質層および負極集電体が露出する部分A)が粗面を有するため、電極群全体において優れた電解液の吸収性および保持性が得られる。
【0041】
負極活物質層の粗面は、負極集電体の粗面に追従するように形成されている。
負極活物質表面の負極集電体表面の凹凸への追従性の観点から、(負極活物質層の算術平均粗さRa)/(負極集電体の算術平均粗さRa)は、0.90〜1.10が好ましく、1.00がより好ましい。
負極活物質層内での電解液の拡散およびエネルギー密度の観点から、負極活物質層(不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵後)の空隙率は、20〜35%であるのが好ましい。
負極集電体の凹部および凸部の表面に、それぞれ、厚みが略同一の負極活物質層が形成され、負極集電体の凹部および凸部の表面にて、それぞれ同形状の凹部および凸部を有する負極活物質層が形成されている場合、空隙率は、20〜29%であるのが好ましい。
なお、上記における厚みが略同一とは、凹部の表面に形成される負極活物質層の厚みAと、凸部の表面に形成される負極活物質層の厚みBとの比:厚みA/厚みBが、0.85〜1.15の範囲であることをいう。
【0042】
算術平均粗さRaが0.5〜10μmである負極集電体の凹凸を負極活物質層の表面に追従させ易くするためには、蒸着法により形成する負極活物質層(不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵する前)の厚みは、0.5〜40μmが好ましい。
【0043】
このような粗面を有する負極活物質層は、一般的な成膜方法を用いて、負極集電体の表面(粗面)に負極活物質の膜を形成することにより得られる。成膜方法としては、例えば、蒸着法(真空蒸着法、CVD法)、スパッタリング法、ガスデポジション法、めっき法が挙げられる。作業の容易性の観点から、これらの中でも、蒸着法が好ましい。
【0044】
負極活物質層の算術平均粗さRaが0.5μm未満であると、電極群の電解液の吸収性および保持性が不十分となる場合がある。負極活物質層の算術平均粗さRaが10μm超であると、電極群内にて空隙が占める割合が過度に大きくなり、負極活物質層中の負極活物質の充填密度が低下し、電池容量が低下する場合がある。
【0045】
負極活物質層の算術平均粗さRaは、2μm以上であるのが好ましい。この場合、特に電解液を吸収および保持し難い、巻芯に近い領域(例えば、電極群の軸方向に垂直な面における曲率半径が3mm以下の領域A)でも、電解液が迅速に吸収され、電極群全体において、優れた電解液の吸収性および保持性が得られる。
【0046】
特に、捲回により、巻芯に近い領域(例えば、電極群の軸方向に垂直な面における曲率半径が2mm以下の領域B)では、負極の内側に配される負極活物質層の圧縮応力が大きくなるため、負極活物質層の算術平均粗さRaは、5μm以上であるのがより好ましい。この場合、負極が捲回されて、領域Bにおける負極の内側に配される負極活物質層が圧縮されても、領域Bにおいて、負極活物質層の算術平均粗さRaを0.5μm以上に確保することができ、電極群全体において、優れた電解液の吸収性および保持性が得られる。
【0047】
負極活物質層の厚み(片面あたりの厚み)は、20〜60μmである。なお、この厚みは、負極活物質が不可逆容量を有する場合、負極活物質層に予め不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵させた時点での負極活物質層の厚みを指す。
負極活物質層の厚みが60μm超であると、電池の小型化が難しい場合がある。また、蒸着法により負極活物質層を形成する場合、負極集電体の表面形態を、負極活物質層の表面形態に充分に反映させ難くなる場合がある。負極活物質層の厚みが20μm未満であると、負極活物質の充填量が減少し、電池容量が低下する場合がある。
【0048】
小型電池にて高容量化するためには、負極活物質層の容量密度は、1000mAh/cm3以上であるのが好ましい。なお、この容量密度は、負極活物質層1cm3あたりの容量(可逆容量)(mAh)を指す。
蒸着法にて負極集電体の表面に容量密度の高い珪素を含む薄膜を形成する場合、容量密度が1200〜1300mAh/cm3程度の高い負極活物質が得られる。小型電池でも、高エネルギー密度化により、高容量を有する電池が得られる。
【0049】
容量密度が高いため、負極活物質は、珪素、珪素を含む合金、珪素酸化物が好ましく、特に珪素酸化物が好ましい。珪素を含む合金、珪素酸化物は、充放電の際の膨張収縮が比較的大きいが、電池が小型化するほど、膨張収縮の絶対値が小さくなるため、その影響が小さくなり、小型電池に対して好適に用いられる。
珪素酸化物は、SiOx(0<x<2)が好ましい。xが小さいほど活物質の容量が大きくなるが、充放電時の活物質の膨張収縮による体積変化が大きくなる。また、xが大きいほど充放電時の活物質の膨張収縮による体積変化が小さくなるが、不可逆容量が大きくなる。本発明の小型電池では、活物質の体積変化による影響が比較的小さい。よって、小型電池での活物質の体積変化および可逆容量の観点から、0<x≦1.1が好ましい。
珪素を含む合金は、珪素と、鉄、コバルト、ニッケル、銅、およびチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素との合金が好ましい。
【0050】
また、負極活物質には、錫、錫を含む合金、錫酸化物、リチウムを含む合金を用いることができる。錫を含む合金は、錫と、鉄、コバルト、ニッケル、および銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素との合金が好ましい。リチウムを含む合金は、リチウムと、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素との合金が好ましい。
錫酸化物は、SnOx(0<x<2)が好ましい。xが小さいほど活物質の容量が大きくなるが、充放電時の活物質の膨張収縮による体積変化が大きくなる。また、xが大きいほど充放電時の活物質の膨張収縮による体積変化が小さくなるが、不可逆容量が大きくなる。本発明の小型電池では、活物質の体積変化による影響が比較的小さい。よって、小型電池での活物質の体積変化および可逆容量の観点から、0<x≦1.1が好ましい。
【0051】
巻芯14は、負極15に電気的に接続されるため、使用される負極活物質の充放電時の電位範囲において化学変化を起こさない材質を用いればよい。具体的には、巻芯14としては、ステンレス鋼(SUS)、銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、ニッケル、パラジウム、金、銀、白金が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
巻芯14は、負極集電体21と、材質が同じであるのが好ましい。巻芯14は負極15との溶接に適した形状であればよい。巻芯14は、棒状であるのが好ましい。棒状の巻芯14は、長手方向に沿って平坦部を有するのが好ましい。平端部で電極と面接触させることができる。
【0052】
正極16は、正極集電体、および正極集電体の両面に形成された正極活物質層からなる。正極16の総厚みは、80〜300μmが好ましい。
正極16は、電極群の最外周部において、正極集電体の内周側の面には、正極活物質層が形成され、正極集電体の外周側の面には、正極活物質層が形成されない片面塗工部(正極集電体が露出する部分B)が設けられている。正極集電体が露出する部分Bの表面が、電池ケースの内面に密着している。このようにして、正極16は、電池ケース11と電気的に接触している。
【0053】
電池ケースへの挿入に対する信頼性および正極活物質層との密着性の観点から、正極集電体は、算術平均粗さRaが0.1〜5μmが好ましい。
正極集電体は、部分Bの領域では、算術平均粗さRaが0.2μm以下である平滑面を有し、部分B以外の領域では、算術平均粗さRaが0.5〜5μmである粗面を有するのがより好ましい。部分Bの算術平均粗さRaが0.2μm以下の場合、電池ケースにより挿入し易く、電池ケースへの挿入工程における歩留まりが大幅に高くなる。正極集電体露出部の表面と電池ケースの内面との間の接触状態がさらに改善され、接触抵抗を大幅に低減することができる。正極集電体は、部分B以外の領域(正極活物質層を形成する部分)において、算術粗さRaが0.5μm以上であると、正極活物質層と正極集電体との間において優れた密着性が得られる。特に、正極における電極群の曲率半径が小さい部分(巻芯に近い部分)において、正極活物質層と正極集電体との間の密着性が大幅に改善される。
【0054】
電池の小型化および正極集電体の強度の観点から、正極集電体は、厚み10〜50μmが好ましい。
正極集電体には、帯状の金属箔が用いられ、好ましくは、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。
【0055】
電池の小型化および正極容量の観点から、正極活物質層(片面あたりの厚み)は、厚み30〜100μmが好ましい。
正極活物質層は、正極活物質を含み、さらに必要に応じて、正極導電剤および正極結着剤を含んでもよい。
【0056】
正極活物質は、リチウムイオン二次電池で使用可能な材料であればよく、特に限定されない。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、およびマンガン酸リチウム(LiMn24)のようなリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
電池の小型化および高エネルギー密度化の観点から、正極活物質には、一般式:LixNiy1-y2(式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、SbおよびBからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、0<x≦1.2、0.5<y≦1.0)で表されるリチウム含有複合酸化物を用いるのが好ましい。
また、電池の小型化および高エネルギー密度化の観点から、正極活物質には、一般式:LixNiyCoz1-y-z2(式中、Mは、Mg、Ba、Al、Ti、Sr、Ca、V、Fe、Cu、Bi、Y、Zr、Mo、Tc、Ru、Ta、およびWからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、0.9≦x≦1.2、0.3≦y≦0.9、0.05≦z≦0.5、0.01≦1−y−z≦0.3)で表されるリチウム含有複合酸化物を用いるのが好ましい。
【0057】
正極結着剤としては、例えば、フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸、またはポリフッ化ビニリデンが用いられる。
正極結着剤を用いる場合、正極活物質中の正極結着剤の含有量は、正極活物質100重量部あたり1〜5重量部であるのが好ましい。
【0058】
正極導電剤としては、例えば、グラファイト類、カーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維、または導電性を有する有機材料が用いられる。
正極導電剤を用いる場合、正極活物質中の正極導電剤の含有量は、正極活物質100重量部あたり0.5〜5重量部であるのが好ましい。
【0059】
非水電解質は、溶質および非水溶媒を含む。
溶質は、非水溶媒に溶解する支持塩である。支持塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロ硼酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO22)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C25SO22)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)(C25SO2))、またはリチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(LiC(CF3SO23)が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、γ‐ブチロラクトン(γ‐BL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、プロピレンカーボネート誘導体、またはテトラヒドロフラン誘導体が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水電解質としては、例えば、液状電解質、ゲル状電解質、固体状電解質(高分子固体電解質)が挙げられる。
【0061】
セパレータ17としては、例えば微多孔性の薄膜、織布、または不織布が用いられる。これらは、イオン透過度が大きく、適度な機械的強度および絶縁性を有することが好ましい。セパレータ17の材質としては、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンのようなポリオレフィンが挙げられる。
特に、ポリオレフィンからなる微多孔性の薄膜は、耐久性に優れ、一定の温度に上昇すると孔が閉塞する、いわゆるシャットダウン機能を有するため、リチウムイオン電池などのリチウムイオン二次電池用のセパレータとして好適に用いられる。
【0062】
セパレータの厚みは、一般的に10〜300μmであるが、好ましくは40μm以下、より好ましくは5〜30μmである。セパレータは、1種の材料からなる単層膜でもよく、2種以上の材料からなる複合膜または多層膜でもよい。
【0063】
絶縁ガスケット13の材質には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、パーフルオロアルコキシエチレンの共重合体が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらを、無機繊維などのフィラーと組み合わせて用いてもよい。絶縁ガスケットは、電池の気密性を高めるために、シール材でコーティングしてもよい。
【0064】
本発明の電池10の製造方法は、例えば、
(1)捲回型電極群12を構成する第1工程と、
(2)捲回型電極群12に電解液を含ませる第2工程と、
(3)第2工程の後、電解液を含む捲回型電極群12を電池ケース11の内に挿入する第3工程と、
(4)第3工程の後、電池ケース11を封口する第4工程と、
を含む。
【0065】
蒸着法により、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである帯状の負極集電体の両面に、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである負極活物質層を形成し、負極15を得る。このとき、負極15の長手方向の一方の端部には、後述する巻芯14と溶接する部分として、負極集電体の両面に負極活物質層を形成しない部分Aを設ける。
【0066】
正極活物質、導電剤、および結着剤に、N−メチル−2−ピロリドン等の分散媒を加えた正極スラリーを、帯状の正極集電体の両面に塗布し、塗膜を形成する。この塗膜を乾燥させて、正極活物質層を形成し、圧縮し、正極を得る。このとき、正極の長手方向の一方の端部には、正極集電体の一方の面に正極活物質層を形成しない部分Bを設ける。
【0067】
負極15の部分Aと、巻芯14とを、重ね合わせる。次いで、針状の第1の抵抗溶接電極と、平板状の第2の抵抗溶接電極とを、負極15と巻芯14とを介して互いに対向させる。このとき、第1の抵抗溶接電極を負極15の表面に接触させ、第2の抵抗溶接電極を巻芯14に接触させる。こうして、第1および第2の抵抗溶接電極間に電流を印加し、巻芯14の軸方向Xに沿った複数の箇所で、負極15と巻芯14とを、抵抗溶接により接合する。その後、負極15を、セパレータ17および正極16とともに、巻芯14の周りに巻き付ける。このようにして、図1に示す捲回型電極群12を得る(第1工程)。このとき、電極群12の最外周部の側面に部分Bが配される。
負極15、正極16およびセパレータ17を巻き付けた後には、その最外周を、例えば、ポリプロピレン製などの絶縁性テープで固定する。さらに、巻芯14の一端32には、絶縁ガスケット13を貫通させ、他端には、絶縁キャップ33を取り付ける。
【0068】
その後、捲回型電極群12は、電解液を蓄えた所定の容器に浸し、電解液を含浸させる(第2工程)。このとき、減圧下(例えば、容器の内圧:600Torr以下)で電解液を含浸させるのが好ましい。短時間で第2工程を実施することができる。
充分に電解液を含浸した電極群を取り出し、電池ケース11内に挿入する(第3工程)。このとき、電解液を含む電極群を、速やかに電池ケース内に挿入するのが好ましい。電解液が電極群外へ流出することなく、電解液を含む電極群12を電池ケース11内に圧入することができ、部分Bを電池ケースの内面に密着させることができる。
その後、電池ケース11の開口端31を絶縁ガスケット13の上部にかしめつけ、電池ケース11を封口する(第4工程)。このようにして、図1に示すリチウムイオン電池10を得る。
【0069】
上記実施形態では、負極は巻芯に電気的に接続され、電池ケースは正極の外部端子を兼ねるが、本発明はこれに限定されない、正極が巻芯に電気的に接続され、電池ケースは負極の外部端子を兼ねてもよい。
上記実施形態では、リチウムイオン二次電池を例に挙げたが、本発明はリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池に限定されない。本発明は、リチウム電池などの非水電解質一次電池や、アルカリ性または中性の水系電解液を用いた一次電池および二次電池への適用も可能である。また、電極材料および電解液の組成は特に限定されず、公知の材料および組成を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
《実施例1》
以下の手順に従って、図1に示すリチウムイオン電池10を作製した。
【0071】
(1)負極の作製
負極活物質としてSi(純度99.9999%のケイ素単体(高純度化学研究所製))を用い、電子ビーム(EB)加熱手段を具備する蒸着装置((株)アルバック製)を用いて、純度99.7%の酸素ガスを導入し、帯状の銅箔(厚さ30μm、幅12mm、および長さ28mm)からなる負極集電体の両面に負極活物質層を形成し、負極15を得た。
得られた負極活物質層はSiOxであり、含まれる酸素量を燃焼法により定量した結果、ケイ素と酸素とを含む化合物の組成はSiO0.5であった。また、負極活物質層の厚みは40μmであった。
次に、アルバック社製の抵抗加熱蒸着装置を用いて、負極活物質層にリチウム金属を蒸着した。このとき、リチウム金属は負極活物質層内へ吸蔵された。このようにして、SiO0.5からなる負極活物質に、不可逆容量に相当する量のリチウムを、予め補填した。
不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵した後の負極活物質層の厚みは60μmであった。この負極活物質層の空隙率は、30%であった。なお、集電体上に形成した活物質層の見かけ体積から真体積を除いた体積を空隙の総体積とし、見かけ体積に対する空隙の総体積の比率を、空隙率として求めた。
なお、帯状の負極の一方の端部(長手方向に沿った長さ4mmの領域)に、負極集電体の両面に負極活物質層を有しない領域(負極集電体が露出する部分A)を設けた。
【0072】
上記負極作製時において、電解法により、負極集電体(銅箔)の算術平均粗さRaを、0.5μm、1μm、2μm、5μm、および10μmと変えた。これらの負極集電体を用いて、算術平均粗さRaが0.5μm、1μm、2μm、5μm、および10μmである負極活物質層を有する負極を、それぞれ作製した。なお、不可逆容量に相当する量のリチウムを吸蔵後においても、負極活物質層の算術平均粗さRaは変わらず、それぞれ0.5μm、1μm、2μm、5μm、および10μmであった。算術平均粗さRaの測定は、JIS B 0601−2001に基づいて行った。
【0073】
(2)正極の作製
正極活物質としてコバルト酸リチウム90重量部、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、および結着剤としてポリフッ化ビニリデン5重量部に、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを正極集電体に塗布し、塗膜を形成し、正極前駆体を得た。正極集電体には、厚さ20μm、幅10mm、および長さ33mmの帯状のアルミニウム箔(算術平均粗さRa0.1μm)を使用した。正極活物質の塗布量は450g/m2であった。
正極前駆体を乾燥機内に入れ、塗膜からNMPを除去し、正極活物質層を得た。次いで、正極活物質層を圧縮し、正極16(厚み0.16mm)を得た。なお、正極作製時に、正極の一方の端部(長手方向に沿った長さ12mmの領域)における正極集電体の一方の面(電極群の最外周にて電池ケースと対向する面)に、正極活物質層を有しない領域(正極集電体が露出する部分B)を設けた。
【0074】
(3)電極群の作製
電池構成部材である絶縁ガスケット13、巻芯14、負極15、正極16、セパレータ17、電池ケース11を100℃の真空下で放置し、各部品を乾燥させた。その後、露点−50℃以下の雰囲気下で、以下のように電池を作製した。
巻芯14には、ステンレス鋼製の丸棒(直径1mm)を使用した。負極15における負極集電体が露出する部分Aと、巻芯14とを、重ね合わせ、針状の第1の抵抗溶接電極と、平板状の第2の抵抗溶接電極とを、負極15と巻芯14とを介して互いに対向させた。第1の抵抗溶接電極を負極15の表面に接触させ、第2の抵抗溶接電極を集電体14に接触させ、第1および第2の抵抗溶接電極間に電流を印加し、巻芯14の軸方向Xに沿った複数の箇所で、負極15と集電体14とを、抵抗溶接により接合した。
その後、負極15を、セパレータ17および正極16とともに、集電体14の周りに巻き付け、図1に示す捲回型電極群12を得た。セパレータ17には、厚み20μmのポリエチレン製の微多孔膜を用いた。負極15、正極16およびセパレータ17を巻き付けた後には、その最外周に、ポリプロピレン製の粘着テープを貼り付け、電極群が緩まないように固定した。さらに、巻芯14の一端32には、絶縁ガスケット13を貫通させ、他端には、絶縁キャップ33を取り付けた。
【0075】
(4)電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒に、LiPF6を溶解させて、非水電解液を得た。ECおよびEMCの重量比は、1:1とした。非水電解液中のLiPF6の濃度は1.0mol/Lとした。
【0076】
(5)円筒型リチウムイオン電池の作製
プラスチック製の容器内に、電極群12を静置した後、容器内に電解液を入れ、電解液中に電極群12を浸漬した。その後、容器をデシケータ内に静置し、デシケータ内の内圧を525Torrで、60秒間維持し、減圧下で電極群12に電解液を含浸させた。
電解液を含む電極群12を、容器から取り出し、これを有底円筒形のアルミニウム製の電池ケース(外径4mm、高さ20mm)内へ挿入した。電池ケース11の開口に絶縁ガスケット13を配し、電池ケース11の開口端31を、絶縁ガスケット13の上部にかしめつけて、電池ケース11を封止した。このようにして、公称容量が18mAhである小型のリチウムイオン二次電池(直径4mm、高さ20mm)を得た。
上記において、負極集電体および負極活物質層の算術平均粗さRaを0.5〜10μmの範囲で変えた負極を用いて、それぞれサンプル11〜15の電池を作製した。
【0077】
《比較例1》
負極集電体に、粗面化処理しない銅箔、すなわち、算術平均粗さRaが0.1μmである銅箔を用いた以外、実施例1と同様の方法により、電池を作製した。これをサンプル21とした。
【0078】
[評価]
(A)電解液の含浸時間の測定
実施例および比較例の電極群12を10個ずつ構成し、電極群12が十分に浸漬できる容器に、電極群12を静置した。さらに、電解液を注液し、電極群12を浸漬した。これらをデシケータ内に静置し、デシケータ内の内圧が525Torrになり、電極群から残存するガス(空気)が出なくなるまでの時間を計測した。これを含浸時間とした。表1に10個の平均を示す。
【0079】
(B)電池特性の評価
実施例および比較例の電池を10個ずつ作製し、これらの電池を、下記(1)〜(4)の順に充放電した。
(1)0.05Cの定電流で4時間充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.05Cの定電流で放電した。
(2)電池の閉路電圧が4.1Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
(3)電池の閉路電圧が4.1Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
(4)電池の閉路電圧が4.2Vに達するまで0.1Cの定電流で充電した後、電池の閉路電圧が2.5Vに達するまで0.1Cの定電流で放電した。
なお、Cは時間率を表す。設計容量cに相当する電気量を時間tで流す場合、電流値はc/tと表される。
上記(4)の放電において、放電電圧をモニタリングし、放電容量を確認した。この時、放電電圧が安定し、放電容量が理論容量の95%以上である電池を良と判断した。
以上の評価の結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示すように、本発明の実施例であるサンプル11〜15では、電解液の含浸時間が短く、いずれの電池も良であった。
一方、比較例であるサンプル21では、電極群への電解液の含浸に要する時間が増大した。比較例であるサンプル21では、60秒で必要な量の電解液を含浸させることが困難となり、電池特性にばらつきが生じ、不良が発生した。また、比較例であるサンプル21の不良品のうちの1個では、電極群構成時に剥離したと考えられる、巻芯と集電体との間の接続不良が1個含まれていた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の電池は、各種の電子機器、特に、各種の携帯型電子機器における電源として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 リチウムイオン二次電池
11 電池ケース
12 電極群
13 絶縁ガスケット
14 巻芯
15 負極
16 正極
17 セパレータ
31 電池ケースの開口端
32 巻芯の一端
33 絶縁キャップ
34 絶縁カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する巻芯、前記巻芯に巻きつけられる第1電極および第2電極、ならびに前記第1電極と第2電極との間を隔離するセパレータを備え、
前記第1電極は、帯状の第1集電体、および前記第1集電体の表面に形成される第1活物質層を有し、
前記第2電極は、帯状の第2集電体、および前記第2集電体の表面に形成される第2活物質層を有し、
前記第1活物質層の算術平均粗さRaは、0.5〜10μmであり、
前記第1活物質層の厚みは、20〜60μmであり、
前記第1電極および前記第2電極の一方は、前記第1集電体または前記第2集電体が露出する部分Aを有し、
前記部分Aは、前記巻芯に溶接されていることを特徴とする捲回型電極群。
【請求項2】
前記第1集電体の算術平均粗さRaは、0.5〜10μmであり、
前記第1活物質層は、蒸着法により形成されている請求項1記載の捲回型電極群。
【請求項3】
前記第1活物質層は、SiOx(0<x<2)の層からなる請求項2記載の捲回型電極群。
【請求項4】
前記第1電極が、前記第1集電体が露出する部分Aを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の捲回型電極群。
【請求項5】
一端が閉じられた略円筒状の電池ケースと、前記電池ケースに収容される請求項1〜4のいずれかに記載の捲回型電極群と、前記捲回型電極群に含まれる電解質と、を備え、
前記巻芯の一端が、電極端子として、前記電池ケースの外部に露出していることを特徴とする電池。
【請求項6】
前記電池の公称容量は、5〜100mAhである請求項5記載の電池。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極の他方は、前記第1集電体または前記第2集電体が露出する部分Bを有し、
前記部分Bは、前記電極群の最外周において前記電池ケースと直接接触している請求項5または6記載の電池。
【請求項8】
前記電池ケースの外径は、10mm以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
(1)請求項1〜4のいずれかに記載の捲回型電極群を構成する第1工程と、
(2)前記捲回型電極群に電解液を含ませる第2工程と、
(3)前記第2工程の後、前記電解液を含む前記捲回型電極群を電池ケース内に挿入する第3工程と、
(4)前記第3工程の後、前記電池ケースを封口する第4工程と、
を含む電池の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)は、蒸着法により、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1集電体の表面に、算術平均粗さRaが0.5〜10μmである第1活物質層を形成して、第1電極を得る工程を含む請求項9記載の電池の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−216297(P2011−216297A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82724(P2010−82724)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】