説明

排ガス浄化装置および排ガス浄化方法

【課題】エンジン始動時、電力消費に頼ることなく、触媒自体の酸化反応により効率よく該触媒を発熱させることにより、該触媒の暖機を促進させ、該触媒の浄化機能を発揮させる排ガス浄化装置および排ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】本発明による排ガス浄化方法は、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する担体と、該担体に担持されている少なくとも一種の貴金属触媒とを有する触媒が排気系に設けられたエンジンから排出される排ガスを浄化する方法である。該方法は、エンジン始動時において、上記触媒のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を酸化させることで該複合酸化物を発熱させて上記触媒を暖機するために、該触媒に導入する排ガスを酸化性にし、該酸化性の排ガスを上記触媒に供給することを特徴とする。なお、ここで開示した排ガス浄化方法は、本発明による排ガス浄化装置で好適に実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置および排ガス浄化方法に関する。特に、エンジンの始動直後のように触媒の温度が低く活性化温度に達していない場合の触媒暖機の促進に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンから排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分が含まれる。この有害成分を浄化するための排ガス浄化装置技術の一つとして、触媒を排ガス流路中に設置し、排ガス中の有害成分を浄化させる排ガス浄化装置がある。
【0003】
かかる排ガス浄化装置に関する課題の一つとして、上記エンジンの始動直後において、触媒の温度が低く、所望の触媒活性を発現することができず触媒が浄化機能を十分に発揮していないことが挙げられる。そのため、エンジン始動時、速やかに触媒の温度を上昇させ活性化させる工夫が従来よりなされてきた。例えば、特許文献1には、導電材料から成る触媒担体に通電することにより該触媒担体を昇温させる電気加熱式触媒装置が記載されている。かかる特許文献1に記載の発明では、触媒担体に局部的に通電可能に接続された局部発熱部が設けられているため、これによって、局部的な発熱が行われ、該局部発熱部の熱によって触媒自体が加熱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−054644号公報
【特許文献2】特開2003−073123号公報
【特許文献3】国際公開第2008/093471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電材料から成る触媒担体に通電することにより触媒を昇温させる電気加熱式触媒装置は、電力を用いて上記触媒の暖機を促進するため、燃料消費率の悪化やコスト増加となる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、エンジン始動時、上記のような電力消費に頼ることなく、触媒自体の酸化反応により効率よく該触媒を発熱させることにより、該触媒の暖機を促進させ、該触媒の浄化機能を発揮させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、様々な角度から検討を加え、上記目的を実現することのできる本発明を創出するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
自動車等のエンジンから排出される排ガスが浄化される排ガス浄化装置では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分を浄化するために、三元触媒が広く用いられている。一般に三元触媒においては空燃比が理論空燃比(ストイキ)近傍で、上記有害成分を効率よく酸化・還元により浄化することが可能であり、空燃比がストイキ近傍の範囲から外れると触媒活性が低下する。そこで、酸素吸蔵物質を助触媒として併用することにより、触媒が活性を発現することができる空燃比範囲を拡張することが広く行われている。例えば、特許文献2では、触媒で必要とされる高い比表面積と高い酸素吸蔵放出能とが両立した排ガス浄化用触媒として、セリア(CeO)とジルコニア(ZrO)の複合酸化物である耐熱性の高いセリア−ジルコニア複合酸化物であって、結晶構造中にいわゆるパイロクロア相を含むパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物(以下、「パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物」と称する。)を用いることが開示されている。他方、特許文献3では、2つの触媒担体が排ガス流路の上流側と下流側に配置され、下流側の触媒担体にはパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を含有することにより、炭化水素濃度が変動する場合でも窒素酸化物に対して優れた浄化能力を発揮する排ガス浄化装置が開示されている。
【0008】
結晶構造中にキュービック相を含む通常のセリアは、酸素吸蔵放出能を持ち、以下の反応式:
4CeO←→2Ce+O (1)
で表わされるように、酸素を吸蔵放出する可逆反応を実現することができる。通常のセリアは、酸化状態(上記反応式(1)の左辺;CeO)で安定しており、還元処理をしてCeにしても常温で酸素と反応してCeOとなり、エンジン始動時、触媒担体は酸化状態から始動する。
【0009】
しかし、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物は、以下の反応式:
4CeZrO(κ相)←→2CeZr(パイロクロア相)+O (2)
で表わされるように、酸素を吸蔵放出する可逆反応を実現することができる。しかし、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物は、上述した通常のセリアとは異なり、酸素を吸蔵するのも放出するのもどちらも安定で、かつ反応速度も遅いため、還元処理をして比較的低温条件下(例えば、400℃以下)にすれば酸素を吸蔵しない。よって、エンジン停止時に還元状態のまま比較的低温条件下(例えば、400℃以下)にすれば、エンジン始動時から酸素を吸蔵することが可能である。従って、かかる吸蔵時の発熱反応を利用することにより、触媒の暖機を促進し、エミッションの低減を図ることができる。本発明は、かかるパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物自体の発熱反応を利用したものである。
【0010】
具体的には本発明は、上記目的を実現するための排ガス浄化装置を提供する。本発明にかかる排ガス浄化装置は、エンジンの排気系に設けられる排ガス浄化装置であって、排ガスが流れる排気管に配置される触媒部と、該触媒部に導入される排ガスの酸素濃度を制御する制御部とを備えており、上記触媒部はパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する担体と、該担体に担持されている少なくとも一種の貴金属触媒とを含む。
ここで、上記制御部は、上記触媒部に導入される排ガスによって、該触媒部内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱することにより実現する上記触媒部の暖機のために、エンジン始動時において、酸化性の排ガスを上記触媒部に供給するように構成されている。
【0011】
かかる構成の排ガス浄化装置をエンジンの排気系に設けることにより、エンジン始動時において、上述した従来の電気加熱式触媒装置で行われているような導電材料への通電による触媒暖機にかえて、上記触媒部に導入される排ガスと上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物とを酸化反応させ、該複合酸化物を発熱させることにより、上記触媒部の暖機を促進し、該触媒部の浄化機能を発揮させることができる。これにより、上記複合酸化物の酸化発熱反応による触媒暖機により、エンジン始動時のエミッションを低減することができる。
【0012】
また、ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい一態様では、上記触媒部よりも上記排気管の上流側の排ガス中の酸素濃度を測定するメイン酸素センサを備えており、上記制御部は、上記メイン酸素センサと電気的に接続している。
そして、上記制御部は、エンジン始動時において、上記メイン酸素センサにより測定された酸素濃度に基づいて、上記触媒部のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱可能になるように、エンジンに供給される混合気の空燃比(A/F)を酸化雰囲気側に制御して、該混合気の燃焼によって生じる酸化性の排ガスを上記触媒部に供給するように構成されている。
【0013】
本明細書において「酸化雰囲気」とは、上記反応式(2)において右辺から左辺への反応が優勢となる雰囲気をいう。他方、本明細書において「還元雰囲気」とは、上記反応式(2)において左辺から右辺への反応が優勢となる雰囲気をいう。
また、本明細書において、「酸化性の排ガス」とは、触媒部において酸化雰囲気を形成可能な排ガスをいう。典型的には、空燃比がリーンの混合気を燃焼することによってなる排ガス(以下、「リーン排ガス」ともいう。)をいう。他方、本明細書において、「還元性の排ガス」とは、触媒部において酸化雰囲気を形成可能な排ガスをいう。典型的には、空燃比がリッチの混合気を燃焼することによってなる排ガス(以下、「リッチ排ガス」ともいう。)をいう。
【0014】
かかる構成の排ガス浄化装置をエンジンの排気系に設けることにより、エンジン始動時において、上記混合気の空燃比を酸化雰囲気側(典型的には、ストイキ比よりもリーン側)に制御することで、上記触媒部に導入する排ガスを酸化性にすること(即ち、酸化可能な酸素を含有すること)ができる。これにより、上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を積極的に酸化反応させることができ、該酸化反応により該複合酸化物が発熱し、上記触媒部の暖機を促進し、該触媒部の浄化機能を発揮させることができる。
【0015】
また、ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい他の一態様では、上記触媒部よりも上記排気管の上流側にエアインジェクション(AI)を備えており、上記制御部は、上記AIとさらに電気的に接続している。
そして、上記制御部は、エンジン始動時において、上記メイン酸素センサにより測定された酸素濃度に基づいて、上記触媒部のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱可能になるように、上記AIから酸素含有ガスを噴射させ、該噴射によって生じる酸化性の排ガスを上記触媒部に供給するように構成されている。
【0016】
かかる構成の排ガス浄化装置をエンジンの排気系に設けることにより、エンジン始動時において、上記排ガスに酸素含有ガスを噴射することで、上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を積極的に酸化反応させることができ、該酸化反応により該複合酸化物が発熱し、上記触媒の暖機をより促進することができる。また、上述の排ガスの混合気の空燃比を酸化雰囲気に制御する処理と、上記排ガスに酸素含有ガスを噴射する処理とを同時に行うことも可能である。同時に行うことで、さらに速やかに上記触媒部の暖機を促進することができ、該触媒部の浄化機能を発揮させることができる。
【0017】
また、ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい他の一態様では、上記触媒部よりも上記排気管の下流側の排ガス中の酸素濃度を測定するサブ酸素センサを備えており、上記制御部は、上記サブ酸素センサとさらに電気的に接続している。
そして、上記制御部は、エンジン停止要求時において、上記サブ酸素センサにより上記触媒部の下流側の排ガスの酸素濃度を測定して、該酸素濃度に基づいて上記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、上記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合は、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側(典型的には、ストイキ比よりもリッチ側)に制御することにより、エンジン停止前に上記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にする。一方、上記判定によって、上記触媒部の雰囲気が還元雰囲気と判定された場合には、上記空燃比を酸化雰囲気側に制御し、上記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気に転じた後、再度、上記空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に上記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にするように構成されている。
【0018】
かかる構成の排ガス浄化装置によると、エンジン停止要求時において、上記制御部が還元性の排ガスを上記触媒部に供給することにより、該触媒部の雰囲気を還元雰囲気にしてエンジンを停止することができる。このように、上記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にすることによって、触媒部内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を還元状態(すなわち、上記反応式(2)の右辺に示す化合物にしておくこと)にしてエンジンを停止することができる。そして、次回のエンジン始動時に、還元状態の上記複合酸化物に酸化性の排ガスを供給することができる。従って、該酸化性の排ガスに基づく酸化反応によってパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が発熱し、速やかに上記触媒部の暖機をすることができる。
【0019】
また、ここで開示される排ガス浄化装置の好ましい他の一態様では、上記触媒部よりも上記排気管の下流側の排ガス中の酸素濃度を測定するサブ酸素センサを備えており、上記制御部は、上記サブ酸素センサとさらに電気的に接続している。
そして、上記制御部は、エンジン停止要求時において、上記サブ酸素センサにより上記触媒部の下流側の排ガスの酸素濃度を測定し、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御し、上記酸素濃度に基づいてエンジン停止要求時の上記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、上記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合は、上記混合気の還元雰囲気側の制御を上記触媒部の雰囲気が還元雰囲気に反転するまで継続することにより、エンジン停止前に上記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にする。一方、上記触媒部の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合は、上記サブ酸素センサにより酸素濃度の出力値または出力値の変位を測定し、該測定の値があらかじめ設定されたエンジン停止が許容可能であるレベルの還元雰囲気の判定条件に至ったときに、エンジンを停止するように構成されている。
【0020】
かかる構成の排ガス浄化装置によると、エンジン停止要求時において、混合気を還元雰囲気側へ制御し、触媒部の雰囲気が還元雰囲気である場合は、該触媒部内をエンジン停止が許容可能であるレベルの還元雰囲気にしてエンジンを停止することができる。かかる制御によると、上述した上記サブ酸素センサにより上記触媒部の雰囲気を還元雰囲気と判断した場合には、上記制御部が上記触媒部の雰囲気を酸化雰囲気にしてから還元雰囲気にする制御を省くことができるため、より早くエンジン停止までの制御ができる。
【0021】
また本発明は、上述した目的を実現するための他の側面として、以下の排ガス浄化方法が提供される。
即ち、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する担体と、該担体に担持されている少なくとも一種の貴金属触媒とを有する触媒が排気系に設けられたエンジンから排出される排ガスを浄化する方法である。
該方法は、エンジン始動時において、上記パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を酸化させることで該複合酸化物を発熱させて上記触媒を暖機するために、該触媒に導入する排ガスを酸化性にし、該酸化性の排ガスを上記触媒に供給することを特徴とする。
【0022】
かかる排ガス浄化方法によれば、上述した従来の電気加熱式触媒装置で行われているような導電材料への通電による触媒暖機にかえて、上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物の酸化反応による発熱を利用することで、エンジン始動時の上記触媒を暖機することができる。上記複合酸化物の酸化発熱反応による触媒の暖機により、エンジン始動時のエミッションを低減することができる。なお、ここで開示した排ガス浄化方法は、上述した排ガス浄化装置で好適に実現することができる。
【0023】
また、ここで開示される排ガス浄化方法の好ましい一態様では、エンジン始動時において、上記排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度に基づいて、上記触媒のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて、該触媒が発熱可能になるように、エンジンに供給される混合気の空燃比(A/F)を酸化雰囲気側に制御し、上記混合気によって生じる酸化性の排ガスを上記触媒に供給することを特徴とする。
【0024】
かかる排ガス浄化方法によれば、上記混合気の空燃比を酸化雰囲気側に制御することで、上記触媒に導入する排ガスを酸化性にすることができる。これにより、上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を積極的に酸化反応させることができ、該酸化反応により該複合酸化物が発熱し、上記触媒の暖機を促進することができる。また、上記複合酸化物の酸化発熱反応による触媒の暖機により、エンジン始動時のエミッションを低減することができる。
【0025】
また、ここで開示される排ガス浄化方法の好ましい他の一態様では、エンジン始動時において、上記排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度に基づいて、上記触媒のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて、該触媒が発熱可能になるように、上記排ガスに酸素含有ガスを供給(典型的には、AI等の機構を用いて空気等の酸素含有ガスを排気管内に噴射させること)させて生成した酸化性の排ガスを上記触媒に供給することを特徴とする。
【0026】
かかる排ガス浄化方法によれば、上記排ガスに酸素含有ガスを外部から供給することにより、上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を積極的に酸化反応させることができ、該酸化反応により該複合酸化物が発熱し、上記触媒の暖機を促進することができる。
【0027】
また、ここで開示される排ガス浄化方法の好ましい他の一態様では、エンジン停止要求時において、上記触媒の酸素濃度を測定して、該酸素濃度に基づいて上記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、上記触媒が酸化雰囲気であると判定された場合は、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に上記触媒の雰囲気を還元雰囲気にする。一方、上記判定によって、上記触媒の雰囲気が還元雰囲気と判定された場合には、上記空燃比を酸化雰囲気側に制御し、上記触媒の雰囲気が酸化雰囲気に転じた後、再度、上記空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に上記触媒の雰囲気を還元雰囲気にすることを特徴とする。
【0028】
かかる排ガス浄化方法によれば、エンジン停止要求時において、上記触媒の雰囲気を還元雰囲気(上記触媒内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を還元状態にしおくこと)にしてエンジンを停止することができる。このように、上記触媒の雰囲気を還元雰囲気にすることによって、上記触媒内の上記複合酸化物を還元状態にした後にエンジンを停止することにより、次回のエンジン始動時に、上記触媒内の還元状態の上記複合酸化物に対して酸化性の排ガスを供給することができる。従って、該酸化性の排ガスに基づく酸化反応によって上記複合酸化物が発熱し、上記触媒の暖機をすることができる。
【0029】
また、ここで開示される排ガス浄化方法の好ましい他の一態様では、エンジン停止要求時において、上記触媒の酸素濃度を測定し、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御し、上記酸素濃度に基づいてエンジン停止要求時の上記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、上記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合は、上記混合気の還元雰囲気側の制御を上記触媒の雰囲気が還元雰囲気に反転するまで継続することにより、エンジン停止前に上記触媒の雰囲気を還元雰囲気にする。一方、上記判定によって、上記触媒の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合は、上記混合気の還元雰囲気側の制御を継続し、あらかじめ設定されたエンジン停止が許容可能であるレベルにまで触媒内の還元雰囲気が進行した段階でエンジンを停止することを特徴とする。
【0030】
かかる排ガス浄化方法によれば、エンジン停止要求時において、混合気を還元雰囲気側へ制御し、触媒の雰囲気が還元雰囲気である場合は、該触媒内をエンジン停止が許容可能であるレベルの還元雰囲気にしてエンジンを停止することができる。かかる制御によると、上述した触媒の雰囲気を還元雰囲気と判断した場合には、上記触媒の雰囲気を酸化雰囲気にしてから還元雰囲気にする制御を省くことができるため、より早くエンジン停止までの制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置が構成されるエンジン排気系を模式的に示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置に設けられる制御部を模式的に説明した図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る触媒部の構成を模式的に示す全体図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置の制御を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る排ガス浄化装置の制御を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る排ガス浄化装置の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。
【0033】
<排ガス浄化装置>
先ず、図1および図2を参照しながら本発明の一実施形態にかかる排ガス浄化装置100について説明する。図1および図2に示すように、排ガス浄化装置100は、エンジン部1、制御部30および触媒部40を備えている。
【0034】
A.エンジン部
図1に示すように、本実施形態にかかる排ガス浄化装置100では、エンジン部1は、自動車のガソリンエンジンを主体として構成されている(エンジン部1には、エンジンを駆動するためのアクセルやその他の操作系を含む。)。以下、かかるガソリンエンジン1の構成を簡単に説明する。なお、以下に説明するガソリンエンジン1は、エンジン部1の一例に過ぎない。本発明にかかる排ガス浄化装置100は、エンジン部1としてガソリンエンジン以外のエンジン(例えばディーゼルエンジン等)を用いることもできる。
【0035】
エンジン部1には、シリンダブロック12上にシリンダヘッド13が連結されており、シリンダブロック12に形成された複数のシリンダボア14にピストン15がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック12の下部にクランクシャフト(図示せず)が回転自在に支持されており、各ピストン15はコネクティングロッド16を介してこのクランクシャフトにそれぞれ連結されている。以下では、一つの気筒についてのみ説明する。
【0036】
燃焼室17は、シリンダブロック12とシリンダヘッド13とピストン15により構成されており、燃焼室17の上部、すなわち、シリンダヘッド13の下部に吸気ポート18および排気ポート19が対向して形成されている。吸気ポート18および排気ポート19に対して吸気バルブ20および排気バルブ21の下端部が位置している。従って、吸気バルブ20および排気バルブ21が所定のタイミングで上下移動することにより、吸気ポート18および排気ポート19を開閉し、吸気ポート18と燃焼室17、燃焼室17と排気ポート19とをそれぞれ連通することができる。
【0037】
そして、吸気ポート18には、インテークマニホールド22を介して吸気管23が連結されている。吸気管23の空気取込口にはエアクリーナ24が取付けられると共に、エアクリーナ24の下流側にスロットル弁25が設けられている。また、インテークマニホールド18には、各吸気ポート18に燃料(エンジン)を噴射するインジェクタ26が装着されており、シリンダヘッド13には、燃焼室17の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ27が装着されている。
一方、排気ポート19には、エキゾーストマニホールド28を介して排気管29が連結されている。
【0038】
B.触媒部
次に、触媒部40について詳細に説明する。
触媒部40は、上記エンジン1に連通する排気管29に設けられており、具体的には図1に示すように、排気管29の下流側に設けられている。
【0039】
触媒部40よりも上流側の排気管29には、メイン酸素センサ50aが配置されている。このメイン酸素センサ50aは、触媒部40よりも上流側の排気管29に流れる排ガスの酸素濃度を測定するためのものであり、メイン酸素センサ50aの配置位置は、上記排ガスの酸素濃度を測定できれば図1に図示される位置に限定されるものではない。また、触媒部40よりも下流側の排気管29には、サブ酸素センサ50bが配置されている。このサブ酸素センサ50bは、触媒部40よりも下流側の排気管29に流れる排ガスの酸素濃度を測定して、触媒部40内の酸素濃度を推定するためのものであり、サブ酸素センサ50bの配置位置は、触媒部40内の酸素濃度を推定できれば図1に図示される位置に限定するものではない。また、かかるメイン酸素センサ50aおよびサブ酸素センサ50bは、排気管29の酸素濃度を検出できればよく、その具体的な構成は本発明を特に限定するものではない。例えば、メイン酸素センサ50aおよびサブ酸素センサ50bは、通常の自動車の排ガス系に使われるジルコニア酸素センサを用いることができるが、これに限らず酸素濃度を測定できる他の手段でも代用可能である。
【0040】
触媒部40よりも上流側の排気管29には、エアインジェクション(AI)52が配置されている。このAI52は、触媒部40よりも上流側の排気管29内に酸素含有ガスを噴射し、酸化性の排ガスを触媒部40内に流すためのものである。そのため、AI52の配置位置は触媒部40内に酸素含有ガス(典型的には、エア)を流すことができれば図1に図示される位置に限定するものではない。
【0041】
ここで開示される触媒部40は、基材、該基材上に担持されている担体および該担体に担持される貴金属触媒(典型的には、白金族に属する金属触媒)とから構成されている。
【0042】
基材としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材および形態のものが使用可能である。例えば、高耐熱性を有するコージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成されたハニカム構造を備えるハニカム基材などを好適に採用することができる。一例として、図3に示すように、外形が円筒形状であるハニカム基材42であって、その筒軸方向に排ガス通路のセル(貫通孔)46が設けられ、該セル46を仕切るリブ壁44に排ガスが接触可能となっているものが挙げられる。基材の形状はハニカム形状の他にフォーム形状、ペレット形状などとすることができる。また、基材全体の外形は円筒形状の他に楕円筒形状、多角形筒形状を採用することができる。
【0043】
本実施形態にかかる触媒部40の触媒担体として、少なくともパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する。パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物は、酸素を吸蔵するのも放出するのもどちらも安定で、かつ反応速度も遅いため、還元処理をして比較的低温条件下(例えば、400℃以下)にすれば酸素の吸蔵が困難となる。よって、エンジン停止時に還元状態のまま比較的低温条件下(例えば、400℃以下)におかれると、エンジン始動時から酸素を吸蔵することが可能である。従って、かかる吸蔵時の発熱反応を利用することにより、触媒の暖機を促進することができる。なお、本発明の実施にあたっては、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を少なくとも担体として有していればよく、その他、機械的強度の向上等を目的として他の担体(例えば、アルミナ(Al))を併用することもできる。
【0044】
上記触媒担体に担持される貴金属触媒は、酸化触媒能力または還元触媒能力を有する金属触媒粒子で構成されている。かかる金属触媒粒子としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)などの金属触媒粒子や、該金属触媒粒子を含んだ複合粒子などを好適に用いることができる。
本実施形態において、触媒部40は、いわゆる三元触媒で構成されていることが好ましい。三元触媒を構成する金属粒子としては、例えば、還元触媒能力が強いロジウム(Rh)と酸化触媒能力が強い白金(Pt)および/またはパラジウム(Pd)を組み合わせて使うことが好適例として挙げられる。
【0045】
C.制御部(ECU:Engine Control Unit)
制御部(ECU)30は、主としてデジタルコンピュータから構成されており、排ガス浄化装置100の稼働における制御装置として機能する。制御部30は、例えば、読み込み専用の記憶装置であるROM、読み書き可能な記憶装置であるRAM、任意の演算や判別を行うCPU、入力ポートおよび出力ポートを有している。
図2に模式的に示すように、制御部30は、エンジン部1、メイン酸素センサ50a、サブ酸素センサ50bおよびAI52の間の制御を行うユニットであり、エンジン部1、メイン酸素センサ50a、サブ酸素センサ50bおよびAI52とは電気的に接続している。
【0046】
メイン酸素センサ50aおよびサブ酸素センサ50bからの出力信号は、それぞれ対応するAD変換器(図示せず)を介して制御部30の入力ポートに入力される。一方、制御部30の出力ポートは、対応する駆動回路を介してインジェクタ26、スロットル弁25の駆動用ステップモータ、点火プラグ27およびAI52等に接続されている。これにより、制御部30は、インジェクタ26の燃料噴射タイミングや点火プラグ27の点火時期等を制御することが可能であり、検出した吸入空気量、スロットル開度(またはアクセル開度)、エンジン回転数等のエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期等を決定する。
【0047】
図1に示す構成の排ガス浄化装置100では、制御部30は、メイン酸素センサ50aで検知された触媒部40の上流の排ガスの酸素濃度に基づいて、エンジン部1で燃焼される混合気の空燃比(A/F)を推定できる。また、制御部30は、サブ酸素センサ50bで検知された触媒部40の下流の排ガスの酸素濃度に基づいて、触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気であるか還元雰囲気であるかを判定できる。
【0048】
なお、上述したような制御部30自体の構成は本発明を特徴付けるものではなく、従来この種の内燃機関(自動車エンジン)で採用されるものでよく、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0049】
次に、上述した排ガス浄化装置100において実行される排ガス浄化方法の一実施形態について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。かかる排ガス浄化装置100においては、エンジン始動時に、上述した従来の電気加熱式触媒装置で行われているような導電材料への通電による触媒暖機にかえて、触媒部40内の触媒担体のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物の酸化発熱反応により、触媒部40の暖機を促進することができる。
【0050】
図4に示すように、かかる排ガス浄化装置は、「エンジン始動要求の判定(S10)」、「エンジン始動(S11)」、「混合気の空燃比制御(酸化雰囲気側)開始またはAI−ON(S12)」、「混合気の空燃比制御終了またはAI−OFF(S13)」の各工程を含む。以下、各工程について説明する。
【0051】
1−A.エンジン始動要求の判定(S10)
先ず、本実施形態にかかる排ガス浄化装置100では、ステップS10において、エンジン始動要求の判定をする。制御部30がエンジン始動要求信号を受信した場合は、「エンジン始動要求あり」と判定(YES)し、ステップS11を実施する。一方、制御部30がエンジン始動要求信号を受信していない場合は、「エンジン始動要求なし」と判定(NO)し、以下の制御を実施せずに制御プロセスが終了する。
【0052】
1−B.エンジン始動(S11)
上記ステップS10の判定結果がYESになると、エンジンを始動する。制御部30はエンジンを始動するためのエンジン始動信号をセルモータ(図示せず)に送信し、エンジンを始動する。
【0053】
1−C.混合気の空燃比制御(酸化雰囲気側)開始またはAI−ON(S12)
上記ステップS11を実施後、制御部30は、触媒担体のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物の酸化発熱反応により触媒部40の暖機を行うために、触媒部40の上流に流れる排ガスを酸化性(即ち、触媒部40において酸化雰囲気を形成可能な排ガスをいう。)にして、触媒部40内に該酸化性の排ガスを導入する処理をする。すなわち、エンジンに供給される混合気の空燃比を酸化雰囲気側に制御して、該混合気の燃焼によって生じる酸化性の排ガスを触媒部40に供給する。または、AI52により酸素含有ガスを排気管29に供給し、該供給によって生じる酸化性の排ガスを触媒部40に供給する。
【0054】
ここで「混合気の空燃比を酸化雰囲気側に制御する」とは、混合気の空燃比を強制的にリーンに制御することをいう。該制御により、リーン排ガスを触媒に供給することができる。排ガス浄化装置100では、リーン制御が実行されると、制御部30はリーン制御信号を作成し、該リーン制御信号がインジェクタ26、スロットル弁25等に送信される。このとき、インジェクタ26は燃料噴射量を減少することで吸気ポート18へ供給する燃料を減少させる。また、スロットル弁は開度が大きくなり、吸気ポート18へ供給される空気量が増加する。これにより、エンジン1に供給される混合気の空燃比がリーン、すなわち酸化雰囲気側になる。
【0055】
1−D.混合気の空燃比制御終了またはAI−OFF(S13)
上記ステップS12により酸化性の排ガスを触媒部40内に供給開始し、所定時間が経過して該供給による触媒の暖機が完了後、制御部30は、上記ステップS12により実施された混合気の空燃比の酸化雰囲気側への制御を停止する。または、上記ステップS12により実施されたAI52による酸素含有ガスの排気管29への供給を停止する。
【0056】
以上、本発明の一実施形態にかかる排ガス浄化装置100において実行される排ガス浄化方法について説明した。次に、上記構成の排ガス浄化装置100によって実行可能な排ガス浄化方法の他の実施形態について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5では、エンジン停止要求時において、触媒部40内の雰囲気を還元雰囲気にすることによって、触媒部40内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を還元状態(上記反応式(2)の右辺に示す化合物にしておくこと)にしてエンジンを停止する。そして、次のエンジン始動時において、触媒部40内の還元状態の上記複合酸化物に対して、酸化性の排ガスを供給することにより、該酸化性の排ガスに基づく酸化反応で上記複合酸化物が発熱し、速やかに触媒を暖機させることができる。
【0057】
図5に示されるように、かかる排ガス浄化装置100において実行される排ガス浄化方法は、「触媒の酸素濃度測定(S20、S23、S26)」、「触媒の雰囲気判定(S21)」、「混合気の空燃比制御(酸化雰囲気側)開始(S22)」、「触媒の酸化状態判定(S24)」、「混合気の空燃比制御(還元雰囲気側)開始(S25)」、「触媒の還元状態判定(S27)」、「エンジン停止(S28)」の各工程を含む。以下、各工程について説明する。
【0058】
2−A.触媒の酸素濃度測定(S20)
先ず、ステップS20では、触媒部40内の雰囲気が還元雰囲気であるか、または、酸化雰囲気であるかを判定するために、制御部30は、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の下流側の排ガスの酸素濃度を測定し、触媒部40内の酸素濃度を決定する。例えば、サブ酸素センサ50bとして、ジルコニア酸素センサを用いるときは、上記酸素濃度は電圧値で表される。
【0059】
2−B.触媒内の雰囲気判定(S21)
ステップS21では、上記ステップS20により得られた触媒部40の酸素濃度に基づいて、触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気であるか、または、還元雰囲気であるかを判定する。
具体的には、触媒部40内の雰囲気に対する所定値があらかじめ設定されており、上記酸素濃度(電圧値)が上記所定値を上回ったか否かを判定する。例えば、上記サブ酸素センサ50bとして、ジルコニア酸素センサを用いるとき、還元雰囲気である場合は、該酸素センサの測定値(出力電圧値)は高くなる。一方、酸化雰囲気である場合は、該酸素センサの測定値(出力電圧値)は低くなる。この場合、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回った場合には、触媒部40内の雰囲気は還元雰囲気であると判定し、次にステップS22を実施する。一方、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を下回った場合には、触媒部40内の雰囲気は酸化雰囲気であると判定し、ステップS25を実施する。
【0060】
2−C.混合気の空燃比制御(酸化雰囲気側)開始(S22)
上記ステップS21より、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合、該触媒部40の雰囲気を酸化雰囲気にし、該触媒部40の雰囲気が酸化雰囲気に転じた後、再度、該触媒部40の雰囲気を還元雰囲気側に制御する必要がある。
このように制御するのは、実際の触媒部40の雰囲気とサブ酸素センサ50b(ジルコニア酸素センサ)の測定値との間に時間的な遅れがあるからである。換言すれば、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の下流側の排ガス、すなわち触媒部40を通過した排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度から触媒部40の下流側の排ガスの雰囲気を判定することにより触媒部40の雰囲気を決定しているためである。すなわち、触媒部40の下流側の排ガスの雰囲気が還元雰囲気であっても、必ずしも触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であるとは限らない。例えば、触媒部40の下流側の排ガスの雰囲気が還元雰囲気であっても、触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気である可能性がある。
よって、ステップS22では、先ず、触媒部40の雰囲気を酸化雰囲気にするために、エンジンに供給される混合気の空燃比を酸化雰囲気側に制御する処理を行う。具体的には、制御部30は、混合気の空燃比を強制的にリーンに制御し、該制御により、リーン排ガスを触媒部40に供給する。
【0061】
2−D.触媒の酸素濃度測定(S23)
上記ステップS22により、混合気の空燃比の酸化雰囲気側への制御が実施されている間、ステップS23では、触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気であるかを判定するために、制御部30は、サブ酸素センサ50b(例えば、ジルコニア酸素センサ)により触媒部40の下流側の排ガスの酸素濃度(電圧値)を測定し、該酸素濃度により触媒部40内の酸素濃度を決定する。
【0062】
2−E.触媒の酸化状態判定(S24)
上記ステップS23により得られた触媒部40の酸素濃度の測定値に基づいて、触媒部40の雰囲気が酸化雰囲気になったか否かを判定する。具体的には、制御部30に触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気であると判定する所定値(電圧値)をあらかじめ設定しておき、上記サブ酸素センサ50bの測定値(電圧値)が上記所定値を下回ったか否かを判定する。上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を下回った場合には、触媒部40内は酸化雰囲気であると判定(YES)し、次にステップS25を実施する。一方、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回った場合には、触媒部40内はまだ還元雰囲気であると判定(NO)し、再度ステップS23を実施する。
【0063】
2−F.混合気の空燃比制御(還元雰囲気側)開始(S25)
上記ステップS21または上記ステップ24により、触媒部40の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合、制御部30は、触媒部40の雰囲気を還元雰囲気にするために、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御する。
【0064】
ここで「混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御する」とは、混合気の空燃比を強制的にリッチに制御することをいう。該制御により、リッチ排ガスを触媒に供給することができる。排ガス浄化装置100では、リッチ制御が実行されると、制御部30はリッチ制御信号を作成し、該リッチ制御信号がインジェクタ26、スロットル弁25等に送信される。このとき、インジェクタ26は燃料噴射量を増加することで吸気ポート18へ供給する燃料を増加させる。また、スロットル弁25は開度が大きくなり、吸気ポート18へ供給される空気量が減少する。これにより、エンジン1に供給される混合気の空燃比がリッチ、すなわち還元雰囲気側になる。
【0065】
2−G.触媒の酸素濃度測定(S26)
上記ステップS25により、混合気の空燃比の還元雰囲気側への制御が実施されている間、ステップS26では、触媒部40内の雰囲気が酸化雰囲気であるかを判定するために、制御部30は、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の下流側の排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度により触媒部40内の酸素濃度を決定する。
【0066】
2−H.触媒の還元状態判定(S27)
上記ステップS26により得られた触媒部40の酸素濃度の測定値(電圧値)に基づいて、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気になったか否かを判定する。具体的には、制御部30に触媒部40内の雰囲気が還元雰囲気であると判定する所定値(電圧値)をあらかじめ設定しておき、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回ったか否かを判定する。上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回った場合には、触媒部40内は還元雰囲気であると判定(YES)し、次にステップS28を実施する。一方、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を下回った場合には、触媒部40内はまだ酸化雰囲気であると判定(NO)し、再度ステップS26を実施する。
【0067】
2−I.エンジン停止(S28)
上記ステップS27により、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合、制御部30は、エンジン1にエンジン停止信号を送信し、エンジンを停止する。
【0068】
以上、本発明の一実施形態にかかる排ガス浄化装置100において実行される排ガス浄化方法について説明した。次に、本発明の他の一実施形態にかかる排ガス浄化装置100によって実行可能な排ガス浄化方法について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
かかる排ガス浄化方法によれば、エンジン停止要求時において、混合気を還元雰囲気側へ制御し、触媒の雰囲気が還元雰囲気である場合は、該触媒内をエンジンの停止が強要可能であるレベルの還元雰囲気にしてエンジンを停止する。かかる方法によると、上述した排ガス浄化方法で行われている、触媒部40の雰囲気を還元雰囲気と判断した場合の制御である、触媒の雰囲気を酸化雰囲気にしてから還元雰囲気にするという制御を省くことができるため、より早くエンジン停止までの制御ができる。
【0069】
図6に示されるように、本実施形態にかかる排ガスを浄化する方法は、「触媒の酸素濃度測定(S30、S33)」、「混合気の空燃比制御(還元雰囲気側)開始(S31)」、「エンジン停止要求時の触媒の雰囲気判定(S32)」、「触媒の還元状態判定(S34)」、「触媒の酸素濃度の出力値測定または触媒の酸素濃度の出力変位測定(S35)」、「触媒の還元状態判定(S36)」、「エンジン停止(S37)」の各工程を含む。以下、各工程について説明する。
【0070】
3−A.触媒の酸素濃度測定(S30)
先ず、ステップS30では、エンジン停止要求時の触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であるか、または、酸化雰囲気であるかを判定するために、制御部30は、サブ酸素センサ50b(例えば、ジルコニア酸素センサ)により触媒部40の下流側の排ガスの酸素濃度(電圧値)を測定し、触媒部40の酸素濃度を決定する。
【0071】
3−B.混合気の空燃比制御(還元雰囲気側)開始(S31)
上記ステップS30を実施した後、ステップS31では、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であるかまたは酸化雰囲気であるかに関わらず、まず触媒部40の雰囲気を還元雰囲気にするために、制御部30は、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御、すなわち混合気の空燃比を強制的にリッチに制御し、該制御により、リッチ排ガスを触媒部40に供給する処理を開始する。
【0072】
3−C.エンジン停止要求時の触媒の雰囲気判定(S32)
上記ステップS31により、混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御した後、上記ステップS30で得られた触媒部40の酸素濃度の測定値(電圧値)に基づいて、エンジン停止要求時の触媒部40の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定する。
具体的には、制御部30に触媒部40内の雰囲気に対する所定値があらかじめ設定されており、上記サブ酸素センサ50bの酸素濃度の測定値(電圧値)と上記所定値とを比較する。例えば、サブ酸素センサ50bとして、ジルコニア酸素センサを用いるとき、還元雰囲気である場合は、該酸素センサの値(出力電圧値)は高くなる。一方、酸化雰囲気である場合は、該酸素センサの値(出力電圧値)は低くなる。この場合、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回った場合には、触媒部40内の雰囲気は還元雰囲気であると判定し、次にステップS35を実施する。一方、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を下回った場合には、触媒部40内の雰囲気は酸化雰囲気であると判定し、ステップS33を実施する。
【0073】
3−D.触媒の酸素濃度測定(S33)
上記ステップS32により、エンジン停止要求時の触媒部40の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された後、ステップS33では、触媒部40が還元状態であるかを判定するために、制御部30は、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の下流側の排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度に基づいて触媒部40の酸素濃度を決定する。
【0074】
3−E.触媒の還元状態判定(S34)
ステップS34では、上記ステップS33により得られた触媒部40の酸素濃度の測定値(電圧値)に基づいて、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気になったか否かを判定する。
具体的には、触媒部40内の雰囲気が還元雰囲気であると判定する所定値(電圧値)をあらかじめ設定しておき、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回ったか否かを判定する。上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を上回った場合には、触媒部40内は還元雰囲気であると判定(YES)し、次にステップS37を実施する。一方、上記サブ酸素センサ50bの測定値が上記所定値を下回った場合には、触媒部40内はまだ酸化雰囲気であると判定(NO)し、再度ステップS33を実施する。
【0075】
3−F.触媒の酸素濃度の出力値測定または触媒の酸素濃度の出力変位測定(S35)
一方、上記ステップS32により、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合には、制御部30は、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の酸素濃度の出力電圧値を測定する。または、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の酸素濃度の出力電圧の変位を測定する。
【0076】
3−G.触媒の還元状態判定(S36)
上記ステップS35により、サブ酸素センサ50bにより触媒部40の酸素濃度の出力電圧値、または、触媒部40の酸素濃度の出力電圧の変位を測定後、触媒部40の還元状態の判定を行う。換言すると、触媒部40内の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気(すなわち、エンジン停止が許容可能であるレベルにまで触媒部40内の還元雰囲気が進行した段階)であるかの判定を行う。
このうちエンジン停止可能か否かの判定条件として出力電圧値を採用した場合は、触媒部40内の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気であると判定する出力電圧の所定値(以下、「出力電圧所定値」ともいう。)を制御部30にあらかじめ設定しておき、上記出力電圧値が上記出力電圧所定値以上か否かを判定する。該出力電圧値が該出力電圧所定値以上の場合は、触媒部40内の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気であると判定(YES)し、次にステップS37を実施する。一方、上記出力電圧値が上記出力電圧所定値を下回る場合は、触媒部40の還元雰囲気がまだエンジン停止を許容可能にする還元雰囲気ではないと判定(NO)し、再度ステップS35を実施する。
【0077】
一方、エンジン停止可能かどうかの判定条件として出力電圧の変位を採用した場合は、例えば、サブ酸素センサ50bとして一般的な自動車で使用されるジルコニア酸素センサを用いるとき、該ジルコニア酸素センサの時間的遅れが生じる性質を利用する。換言すれば、実際の触媒部40の雰囲気とサブ酸素センサ50b(ジルコニア酸素センサ)の測定値との間に時間的な遅れが生じるため、その性質を利用する。該ジルコニア酸素センサは、実際の触媒部40の還元状態に追随し、時間的に遅れて反応して値が上昇するため、該値の上昇の度合い(すなわち、出力電圧の変位)により触媒部40の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気になったか否かを判定することができる。
【0078】
この場合、触媒部40内の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気であると判定する出力電圧の変位の所定値(以下、「出力電圧変位所定値」ともいう。)を制御部30にあらかじめ設定しておき、上記出力電圧の変位が上記出力電圧変位所定値以上か否かを判定する。該出力電圧の変位が該出力電圧変位所定値以上の場合は、触媒部40内の還元雰囲気がエンジン停止を許容可能にするレベルの還元雰囲気であると判定(YES)し、次にステップS37を実施する。一方、上記出力電圧の変位が上記出力電圧変位所定値を下回る場合は、触媒部40の還元雰囲気がまだエンジン停止を許容可能にする還元雰囲気ではないと判定(NO)し、再度ステップS35を実施する。
【0079】
3−H.エンジン停止(S37)
上記ステップS34または上記ステップS36により、触媒部40の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合、制御部30は、エンジン1にエンジン停止信号を送信し、エンジンを停止する。
【0080】
以上、本発明にかかる排ガス浄化装置および排ガス浄化方法の好適ないくつかの実施形態について詳細に説明した。
かかる本発明の排ガス浄化装置100により、エンジン始動時において、制御部30は混合気の空燃比を酸化雰囲気側に制御する、または、AI52により酸素含有ガスを排気管内に供給するにことで、触媒部40に導入する排ガスを酸化性にすること(即ち、酸化可能な酸素を含有すること)ができる。これにより、触媒部40内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を積極的に酸化反応させることができ、該酸化反応により該複合酸化物が発熱し、触媒部40の暖機を促進し、触媒部40の浄化機能を発揮させることができる。
【0081】
また、本発明の他の一実施形態にかかる排ガス浄化装置100では、エンジン停止要求時において、制御部30がエンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御して、触媒部40の雰囲気を還元雰囲気にすることによって、触媒部40内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を還元状態にした後にエンジンを停止することができる。これにより、次回のエンジン始動時に、触媒部40内の還元状態の上記複合酸化物に対して、酸化性の排ガスを供給することにより、該酸化性の排ガスに基づく酸化反応で上記複合酸化物が発熱し、速やかに触媒を暖機させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン
12 シリンダブロック
13 シリンダヘッド
14 シリンダボア
15 ピストン
16 コネクティングロッド
17 燃焼室
18 吸気ポート
19 排気ポート
20 吸気バルブ
21 排気バルブ
22 インテークマニホールド
23 吸気管
24 エアクリーナ
25 スロットル弁
26 インジェクタ
27 点火プラグ
28 エキゾーストマニホールド
29 排気管
30 制御部
40 触媒部
42 ハニカム基材
44 リブ壁(隔壁)
46 セル(貫通孔)
50a メイン酸素センサ
50b サブ酸素センサ
52 AI
100 排ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系に設けられる排ガス浄化装置であって、
排ガスが流れる排気管に配置される触媒部と、
該触媒部に導入される排ガスの酸素濃度を制御する制御部と、
を備えており、
前記触媒部は、パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する担体と、該担体に担持されている少なくとも一種の貴金属触媒とを含み、
ここで、前記制御部は、前記触媒部に導入される排ガスによって、該触媒部内のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱することにより実現する前記触媒部の暖機のために、エンジン始動時において、酸化性の排ガスを前記触媒部に供給するように構成されている、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記触媒部よりも前記排気管の上流側の排ガス中の酸素濃度を測定するメイン酸素センサを備えており、
前記制御部は、前記メイン酸素センサと電気的に接続しており、
ここで、前記制御部は、エンジン始動時において、前記メイン酸素センサにより測定された酸素濃度に基づいて、前記触媒部のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱可能になるように、エンジンに供給される混合気の空燃比(A/F)を酸化雰囲気側に制御して、該混合気の燃焼によって生じる酸化性の排ガスを前記触媒部に供給するように構成されている、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒部よりも前記排気管の上流側にエアインジェクション(AI)を備えており、
前記制御部は、前記AIとさらに電気的に接続しており、
ここで、前記制御部は、エンジン始動時において、前記メイン酸素センサにより測定された酸素濃度に基づいて、前記触媒部のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて発熱可能になるように、前記AIから酸素含有ガスを噴射させ、該噴射によって生じる酸化性の排ガスを前記触媒部に供給するように構成されている、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記触媒部よりも前記排気管の下流側の排ガス中の酸素濃度を測定するサブ酸素センサを備えており、
前記制御部は、前記サブ酸素センサとさらに電気的に接続しており、
ここで、前記制御部は、エンジン停止要求時において、前記サブ酸素センサにより前記触媒部の下流側の排ガスの酸素濃度を測定して、該酸素濃度に基づいて前記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、前記触媒部が酸化雰囲気であると判定された場合は、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に前記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にし、一方、前記判定によって、前記触媒部の雰囲気が還元雰囲気と判定された場合には、前記空燃比を酸化雰囲気側に制御し、前記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気に転じた後、再度、前記空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に前記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にするように構成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記触媒部よりも前記排気管の下流側の排ガス中の酸素濃度を測定するサブ酸素センサを備えており、
前記制御部は、前記サブ酸素センサとさらに電気的に接続しており、
ここで、前記制御部は、エンジン停止要求時において、前記サブ酸素センサにより前記触媒部の下流側の排ガスの酸素濃度を測定し、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御し、前記酸素濃度に基づいてエンジン停止要求時の前記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、前記触媒部の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合は、前記混合気の還元雰囲気側の制御を前記触媒部の雰囲気が還元雰囲気に反転するまで継続することにより、エンジン停止前に前記触媒部の雰囲気を還元雰囲気にし、一方、前記触媒部の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合は、前記サブ酸素センサにより酸素濃度の出力値または出力値の変位を測定し、該測定の値があらかじめ設定されたエンジン停止が許容可能であるレベルの還元雰囲気の判定条件に至ったときに、エンジンを停止するように構成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を有する担体と、該担体に担持されている少なくとも一種の貴金属触媒とを有する触媒が排気系に設けられたエンジンから排出される排ガスを浄化する方法であって、
エンジン始動時において、前記パイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物を酸化させることで該複合酸化物を発熱させて前記触媒を暖機するために、該触媒に導入する排ガスを酸化性にし、該酸化性の排ガスを前記触媒に供給することを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項7】
エンジン始動時において、前記排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度に基づいて、前記触媒のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて、該触媒が発熱可能になるように、エンジンに供給される混合気の空燃比(A/F)を酸化雰囲気側に制御し、前記混合気によって生じる酸化性の排ガスを前記触媒に供給することを特徴とする、請求項6に記載の排ガス浄化方法。
【請求項8】
エンジン始動時において、前記排ガスの酸素濃度を測定し、該酸素濃度に基づいて、前記触媒のパイロクロア構造セリア−ジルコニア複合酸化物が酸化されて、該触媒が発熱可能になるように、前記排ガスに酸素含有ガスを供給させて生成した酸化性の排ガスを前記触媒に供給することを特徴とする、請求項6または7に記載の排ガス浄化方法。
【請求項9】
エンジン停止要求時において、前記触媒の酸素濃度を測定して、該酸素濃度に基づいて前記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、前記触媒が酸化雰囲気であると判定された場合は、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に前記触媒の雰囲気を還元雰囲気にし、一方、前記判定によって、前記触媒の雰囲気が還元雰囲気と判定された場合には、前記空燃比を酸化雰囲気側に制御し、前記触媒の雰囲気が酸化雰囲気に転じた後、再度、前記空燃比を還元雰囲気側に制御することにより、エンジン停止前に前記触媒の雰囲気を還元雰囲気にすることを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載の排ガス浄化方法。
【請求項10】
エンジン停止要求時において、前記触媒の酸素濃度を測定し、エンジンに供給される混合気の空燃比を還元雰囲気側に制御し、前記酸素濃度に基づいてエンジン停止要求時の前記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であるかまたは還元雰囲気であるかを判定し、該判定において、前記触媒の雰囲気が酸化雰囲気であると判定された場合は、前記混合気の還元雰囲気側の制御を前記触媒の雰囲気が還元雰囲気に反転するまで継続することにより、エンジン停止前に前記触媒の雰囲気を還元雰囲気にし、一方、前記判定によって、前記触媒の雰囲気が還元雰囲気であると判定された場合は、該混合気の還元雰囲気側の制御を継続し、あらかじめ設定されたエンジン停止が許容可能であるレベルにまで触媒内の還元雰囲気が進行した段階でエンジンを停止することを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載の排ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113227(P2013−113227A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260938(P2011−260938)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】