説明

排ガス環流式乾燥方法およびその装置、並びに金属切削屑のリサイクル方法およびそのシステム

【課題】乾燥用熱源として使用する燃焼排ガスの熱効率を高めると共に、環境負荷の低い乾燥技術およびこれを用いたリサイクル技術を提供する。
【解決手段】乾燥用熱源として乾燥機に燃焼炉からの燃焼排ガスを導入すると共に、乾燥排ガスを燃焼炉に環流し別途供給される燃焼用空気および適宜燃料と共に燃焼させるものであって、乾燥排ガスを乾燥機の出口側に設けた排気ファンによって強制排気することで乾燥機内を負圧とした後、乾燥排ガスを燃焼用と還元用とに分流し、燃焼用に係る乾燥排ガスを燃焼炉に環流して燃焼させる一方、燃焼排ガスのうち、負圧により誘引可能な量の燃焼排ガスを還元用に係る乾燥排ガスと混合して乾燥機に導入すると共に、残部の燃焼排ガスは燃焼用空気から分岐供給される二次空気によって二次燃焼させた後、大気に放出する。また、燃焼用に係る乾燥排ガスおよび燃焼用空気は燃焼排ガスと熱交換した後、燃焼炉に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばアルミニウムを切削加工する際に発生する、水分、油分および鉄などを含むアルミダライ粉を再生原料として、均質で純度の高いアルミニウム原料を回収するのに使用する乾燥方法およびその装置、並びにこれらを用いたリサイクル方法およびそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミダライ粉からアルミニウムを回収するリサイクル方法はいくつか提案されているが、同伴する他種金属や油分等の不純物の分離が難しく、純度の高いアルミニウムを効率的に回収することができないなどの多くの課題がある。
【0003】
アルミダライ粉からアルミニウムを回収する技術として、加工の際に使用される切削油や切削の際に混入する鉄粉などの不純物の除去や分離技術が知られている(特許文献1〜4参照)。
【0004】
【特許文献1】特公昭52−19180号公報
【特許文献2】特公昭59−37337号公報
【特許文献3】特開平8−165527号公報
【特許文献4】特開平9−31561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のアルミダライ粉は多くの不純物を含んでおり、上述した公知技術は何れも純度を高めるためには多大なエネルギーを必要とし、また、形状も異なるアルミダライ粉が多い場合には作業性に難点があり煩雑な工程が必要となる。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、乾燥用熱源として使用される燃焼排ガスの熱効率を高めると共に、環境負荷の低い乾燥技術およびこれを用いたリサイクル技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明の乾燥方法では、被乾燥原料に含まれる水分および油分を蒸発および熱分解するための乾燥用熱源として乾燥機に燃焼炉からの燃焼排ガスを導入すると共に、当該乾燥機の乾燥排ガスを前記燃焼炉に環流し別途供給される燃焼用空気および適宜燃料と共に燃焼させる乾燥方法であって、前記乾燥排ガスを乾燥機の出口側に設けた排気ファンによって強制排気することで前記乾燥機内を負圧とすると共に、乾燥排ガスを燃焼用と還元用とに分流し、燃焼用に係る乾燥排ガスを前記燃焼炉に環流して燃焼させるという手段を用いる。この手段によれば、乾燥排ガスの一部を燃焼炉に供給し、これに含まれる可燃成分を燃焼させることで燃焼炉に係る燃料の消費を抑制しつつ、当該燃焼後に発生する燃焼排ガスを熱源として再び乾燥機に環流することで燃焼排ガスの熱効率を高めることができる。
【0008】
また、燃焼炉から排出される燃焼排ガスのうち、前記負圧により誘引可能な量の燃焼排ガスを前記還元用に係る乾燥排ガスと混合して前記乾燥機に環流するから、大気に放出する燃焼排ガスの量を低減でき、また、燃焼排ガスを負圧誘引により乾燥機に導入するため熱損失が小さく、燃焼排ガスを高温のまま乾燥機に導入することができる。
【0009】
しかも、乾燥機への環流分を除く残部の燃焼排ガスは二次空気によって二次燃焼させた後、大気に放出するから、大気放出分の燃焼排ガスは完全燃焼したものとなり、且つ、前記二次燃焼によって炉内の火炎温度も安定するから窒素酸化物等の大気汚染物質の発生も抑制される。なお、二次空気は燃焼用空気と供給源が異なってもよいが、燃焼用空気から分岐供給することが合理的である。
【0010】
上述した基本的構成において、より熱効率を高める手段として、燃焼排ガスの排熱を利用する。つまり、燃焼用に係る乾燥排ガスおよびその燃焼用空気を燃焼排ガスと熱交換した後、燃焼炉に供給することで、燃焼排ガスの熱効率が高まり、さらに燃料消費量を抑制することができる。また、当該排熱回収による燃焼排ガスの温度低下は、上述した二次燃焼によって回避され、燃焼排ガスを適正な高温に維持することができる。
【0011】
このように本発明は、乾燥排ガスを燃焼炉で燃焼させ、その燃焼排ガスを熱源として再び乾燥機に環流することを基本とするため、乾燥排ガスと燃焼排ガスとは相互に依存する関係にある。当該相関関係に加え、乾燥(リサイクル)の対象である被乾燥原料の含水量や含油量によってもこれら排ガスの性状が変化する。したがって、燃料の消費量を節減しつつ、被乾燥原料から良質の原料を安定して回収するためには、種々条件に対応して、排ガスの量、温度および酸素濃度を調節する必要が生ずる。
【0012】
このような観点から、本発明では、次のような制御手段を採用する。
【0013】
(1)混合ガスの導入量制御
還元用乾燥排ガスと熱源用燃焼排ガスを混合した混合ガスの乾燥機に対する導入量を制御するため、排気ファンの消費電力量または電流量、および乾燥機に導入される混合ガスの圧力を計測して、当該それぞれの計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、還元用に係る乾燥排ガスおよび燃焼用に係る乾燥排ガスの流量を制御する。
【0014】
(2)混合ガスの温度制御
混合ガスの温度を制御するため、乾燥排ガスの分流前の温度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、乾燥機に誘引される燃焼排ガスの流量を制御する。
【0015】
(3)燃焼炉の燃焼制御
乾燥機に誘引される燃焼排ガスの酸素濃度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、燃焼用空気の供給量を制御する。
【0016】
(4)燃焼炉の二次燃焼制御
大気に放出する燃焼排ガスの温度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、二次空気の供給量を制御する。
【0017】
他方、本発明では、上述した乾燥方法を用いて金属切削屑をリサイクルするために、水分、油分および鉄粉を含んだ金属切削屑を粉砕する粉砕工程と、粉砕後の金属切削屑から所定サイズ以上を除去する分級工程と、分級後の金属切削屑を被乾燥原料として上述した方法による乾燥工程と、乾燥後の金属切削屑から磁選機により鉄粉を除去する磁選工程とにより、リサイクル方法を構築することとした。
【0018】
なお、本発明の乾燥方法やリサイクル方法を実施する装置やシステムは、燃焼炉と乾燥機の間に当該方法で示した通りに排ガスや空気を流通させる供給路等を設けることで構成される。また、温度や酸素濃度等の各種計測には、対応する計測器を採用すると共に、排ガスや空気の流量制御は流量調整弁によって行う。
【0019】
特に、本発明の乾燥装置においては、燃焼炉の具体的構成として、その炉壁を内壁と外壁の二重壁で構成すると共に、その間をガス流路とし、さらに、前記ガス流路を二分割して、該分割後の二つのガス流路それぞれを乾燥排ガスおよび燃焼用空気の排熱回収部とすることで、燃焼炉に排熱回収部を一体的に設けた構成とすることができる。
【0020】
さらに、乾燥機をロータリーキルンによって構成することが好ましく、この場合、ロータリーキルンの撹拌作用によって被乾燥原料を均等に乾燥させることができる上、被乾燥原料同士の伝導伝熱および機内における乾燥排ガスの対流伝熱が相乗的に作用して、高速乾燥が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の乾燥方法および乾燥装置によれば、乾燥用熱源として酸素濃度の低い燃焼排ガスを利用すると同時に、乾燥機内で油分や有機物が気化及び熱分解して発生した一酸化炭素や炭化水素ガスを含む還元性の乾燥排ガスを乾燥機内に循環させるため、被乾燥原料の酸化を防止できる。また、乾燥排ガスの一部を燃焼炉に供給し、これに含まれる可燃成分を燃焼させるため、燃焼炉に係る燃料の消費が節減され、当該燃焼後に発生する燃焼排ガスを熱源として再び乾燥機に循環するため、燃焼排ガスの熱効率を高めることができる。さらに、負圧により誘引可能な量の燃焼排ガスを前記還元用に係る乾燥排ガスと混合して前記乾燥機に環流するから、燃焼排ガスの大気放出量を低減でき、また、燃焼排ガスを負圧誘引により乾燥機に導入するため、燃焼排ガスの熱量損失が小さく、高温のまま乾燥機に導入することができる。しかも、大気に放出する燃焼排ガスは、二次燃焼により完全燃焼されているため、大気汚染物質の発生も抑制され、環境負荷が小さくすることができる。
【0022】
さらに、燃焼排ガスの排熱を燃焼用乾燥排ガスおよび燃焼用空気の加熱用として回収するため、燃焼排ガスの熱効率がより向上し、燃料消費量を大幅に抑制することができる。
【0023】
また、アルミダライ粉など、被乾燥原料中の水分や油分の割合が大きく変化する場合にも、乾燥排ガスの乾燥機への循環量を自動制御し、乾燥排ガス温度が所定の最適値で一定になるように燃焼炉へ供給する乾燥排ガス量を制御することにより乾燥用熱源として乾燥機に誘引される燃焼排ガス量を自動制御できるため、安定した運転を維持できる。
【0024】
また、本発明の乾燥装置において、燃焼炉の炉壁を二重壁としてガス流路を設けたものにあっては、排熱回収部を燃焼炉に一体的に構成でき、排熱回収率を高めると共に、乾燥装置あるいは乾燥システム全体を小型化することができる。さらに、乾燥機としてロータリーキルンを採用するので、その撹拌作用により高速乾燥が可能となる。
【0025】
一方、本発明のリサイクル方法およびシステムによれば、金属切削屑を微細化することで、熱風との接触面積が増大して乾燥速度を高速化でき、乾燥物から鉄粉を除去する磁選機の効率を高めると同時に、回収したアルミニウム原料の充填密度を高めることができる。このため、乾燥機や磁選機の容積だけでなく回収した原料の体積をコンパクトにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面にしたがって説明する。先ず、図1は本発明に係る金属切削屑のリサイクル方法を工程順に示したフローチャートであり、水分、油分および鉄粉を含んだ金属切削屑を粉砕する粉砕工程と、粉砕後の金属切削屑から所定サイズ以上を除去する分級工程と、分級後の金属切削屑を排ガス環流式乾燥方法に基づき乾燥する乾燥工程と、乾燥後の金属切削屑から磁選機により鉄粉を除去する磁選工程とからなる。
【0027】
図2は、当該リサイクル方法を実施するシステムの回路図であり、ブロックA〜Dが上述の各工程に対応している。即ち、ブロックAは粉砕工程に係る構成で、剪断式破砕機(例えば一軸剪断破砕機)や衝撃式破砕機(例えばハンマークラッシャ)などの粉砕機1によって構成される。ブロックBは分級工程を構成するもので、振動式櫛などの分級機2によって構成される。ブロックCは乾燥工程に係るもので、分級後の金属切削屑を機内で乾燥させる乾燥機3を好ましくはロータリーキルンによって構成すると共に、該乾燥機3と燃焼炉4の間で互いの排ガスが環流するように乾燥装置を構成したものである。ブロックDは磁選工程に係る構成で、ここまでの工程で水分や油分等の有機物が気化分離された微細な金属切削屑から鉄粉を磁性吸引により分離可能な磁選機5が該当する。このうちブロックCは、本発明の乾燥装置に相当するものであるから、上記リサイクルシステムは乾燥工程の構成手段として本発明の乾燥装置を組み込んだものと言い換えることができる。なお、6は金属切削屑を次工程に移送するフィーダである。
【0028】
そこでブロックC(乾燥装置)の構成を説明すると、乾燥系として乾燥機3の出口側(下流側)にサイクロン式集塵機7を介して乾燥排ガスを強制排気(負圧誘引)する排気ファン8を含み、燃焼系として燃焼炉4のバーナ部4aに燃焼用空気および灯油等の燃料を供給する送風ファン9および給油ポンプ10を含む。また、燃焼炉4の下流二箇所には排熱回収部11a・11bを設け、最終的には燃焼排ガスの一部を煙突12から排出する。
【0029】
さらに、ブロックCにおける排ガスの流路を詳述すると、乾燥機3から排出される乾燥排ガスと燃焼炉4から排出される燃焼排ガスのそれぞれは、何れも2系統に分岐している。即ち、図3の簡略化回路図に示したように、乾燥機3からの乾燥排ガスは排気ファン8による強制排気の後、燃焼炉4に供給する燃焼用(燃焼用供給路13a)と再び乾燥機3に環流する還元用(循環用導入路13b)とに分岐する一方、燃焼炉4からの燃焼排ガスは煙突12から大気に放出する途中を分岐して、燃焼排ガスの一部を乾燥機3に環流する熱源用導入路14を設けている。ここで熱源導入路14に係る燃焼排ガスは、排気ファン8によって乾燥機3に負圧誘引され、当該熱源導入路14に乾燥排ガスの循環導入路13bを合流させることで、燃焼排ガス一部と乾燥排ガス一部を混合した混合ガスを乾燥機3に導入している。また、送風ファン9によって燃焼炉4のバーナー部4aに供給される燃焼用空気の供給路9aには当該燃焼用空気の一部を分流する分岐供給路9bを設け、該分流空気を二次空気として、燃焼炉4内の燃焼排ガスが二次燃焼可能な領域に供給するようにしている。
【0030】
さらに、上述した排ガスの流路のうち、乾燥排ガスの燃焼用供給路13aおよび燃焼用空気の供給路9aは、図2に示したように、それぞれ排熱回収部11a・11bを介して燃焼炉4に接続している。
【0031】
上記構成のリサイクルシステムによれば、乾燥工程の前処理として、金属切削屑を粉砕した上、オーバーサイズを除去するので、微細化された金属切削屑を乾燥処理するにあたり、熱風との接触面積が増大し、乾燥効率が高まる。また、乾燥工程の後処理として、磁選機により鉄粉を除去するため、純度が高い再生金属原料を回収することができる。
【0032】
そして、乾燥工程では、乾燥機3に導入する乾燥用熱源として酸素濃度の低い燃焼排ガスを利用すると同時に、乾燥機内で油分や有機物が気化及び熱分解して発生した一酸化炭素や炭化水素ガスを含む還元性の乾燥排ガスを混合して乾燥機内に循環させるため、金属切削屑の酸化が防止できる。また、燃焼排ガスの一部のみが大気に放出されるから、排煙量が少なく、しかも、当該燃焼排ガスは二次燃焼により燃焼炉で完全燃焼してから大気へ放出されるため、窒素酸化物やダイオキシン、さらに臭気の発生が抑制できる。さらに、燃焼炉に供給する乾燥排ガスや燃焼用空気を燃焼排ガスと熱交換して加熱するため、その燃焼効率や熱効率が高く、燃料の消費量を抑制できる。
【0033】
ところで、金属切削屑の具体例としてアルミダライ粉から上記リサイクルシステムを使用してアルミニウムを回収する場合、上記乾燥工程では、アルミダライ粉に含まれる水分を蒸発させると共に、油分を熱分解して気化分離する必要がある。これと同時に、アルミダライ粉に含まれるアルミニウムが溶解しないことも条件となる。乾燥工程でアルミニウムを溶解させると、融点が高い鉄粉を溶解アルミニウムが包み込んでしまい、次の磁選工程で鉄粉の除去が困難となるからである。そして、これらの条件を満足するには、乾燥機に対する導入ガス(燃焼排ガスと乾燥排ガスの混合ガス)を600℃以下に制御することが好ましく、乾燥機内でアルミダライ粉の酸化を防止するには、導入ガスの酸素濃度が5〜10%であることが好ましい。
【0034】
こうしたガス温度や酸素濃度は、アルミダライ粉の性状や乾燥機3に投入する量が一定である限り、基本的には変更する必要がないのであるが、アルミダライ粉の含水量や含油量が変化すれば、これに伴って当然に乾燥排ガスの性状も変化する。しかも、乾燥機と燃焼炉で排ガスを環流させる乾燥装置では、乾燥排ガスの可燃成分量や温度等が変化すれば、これを燃焼して得られる燃焼排ガスの温度や酸素濃度も変化し、以降、当該変化が無限連鎖することになるから、乾燥環境を安定維持することが困難な場合がある。
【0035】
そこで、乾燥環境を安定維持する構成を、図2に従い説明する。
【0036】
(1)乾燥機3に対する混合ガスの導入量制御
先ず、本発明のような排ガス環流式の乾燥装置では、金属切削屑の投入量等に基づいて乾燥条件が設定され、そのための燃焼条件が設定された後は、大気放出分を除き、ほぼ一定量の排ガスがシステム内を循環することがシステム制御の前提となる。このような前提条件の下、乾燥機3に導入する熱源用燃焼排ガスと還元用乾燥排ガスの混合ガスは、被乾燥原料である金属切削屑の量や性状に応じて、その温度や導入量が決定されるが、仮に金属切削屑の量や性状に変化がないものとすれば、同一量の混合ガスを乾燥機3に導入することで乾燥環境が安定する。ここで、還元用乾燥排ガスは乾燥機3を循環するものであるから、混合ガスの導入量は、熱源用燃焼排ガスの導入量によって決定される。そして、この熱源用燃焼排ガスは、上述の通り、負圧誘引により乾燥機3に導入されるため、当該導入量は燃焼用供給路13aに係る燃焼用乾燥排ガスの供給量とほぼ同じとなるから、当該供給量を制御することで、熱源用燃焼排ガスの導入量が調節できる。具体的には、還元用乾燥排ガスの循環量を制御する手段として、電力計または電流計などの負荷計測器15によって排気ファン8の負荷(消費電力または電流の増減)を監視しておき、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、循環用導入路13bに設けた流量調整弁16を制御すると共に、熱源用燃焼排ガスの導入量を制御する手段として熱源用導入路14と循環用導入路13bの合流部分に係る混合ガスの圧力を圧力計17で監視しておき、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、燃焼用供給路13aに設けた流量調整弁18によって燃焼炉4に対する燃焼用乾燥排ガスの供給量を制御することで、混合ガスの導入環境を安定させることができる。
【0037】
(2)混合ガスの温度制御
乾燥条件には、上述した混合ガスの導入量の他、温度もある。つまり、混合ガスは、アルミダライ粉の投入量に応じた導入量とすると同時に、性状に応じた温度に設定する必要がある。そして、アルミダライ粉の性状、即ち含水量や含油量は、乾燥排ガスの温度変化を監視することで知得できる。含水量や含油量が異なれば、その蒸発潜熱や熱分解に係る出熱も変化し、結果、乾燥排ガスの温度が変化するからである。ここで、混合ガスの温度は、上述した導入量と同様に、熱源用燃焼排ガスの導入量によって制御することができる。そこで、混合ガスの温度を制御する具体的手段として、乾燥排ガスの温度を温度計19で監視しておき、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、熱源用導入路14に設置した流量調整弁20によって熱源用燃焼排ガスの流量を制御する。
【0038】
(3)燃焼炉の燃料制御
上記乾燥条件を安定して満足するには、燃焼炉の燃焼条件を安定させる必要がある。これは、燃焼排ガスの温度を温度計21で監視しておき、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、給油ポンプ10とバーナー部4aの間に介装した流量調整弁22によって燃料の供給量を制御することで実現できる。
【0039】
(4)燃焼排ガスの酸素濃度制御
燃焼排ガス中の酸素濃度を酸素濃度計測器23で計測して、これが予め定めた設定値の範囲(例えば5%〜10%程度)となるように、燃焼用空気の供給量を流量調整弁24で制御することで、燃料の消費量を必要最小限にすることができると共に、乾燥機3に熱源として導入される燃焼排ガスの酸素濃度も適正に保たれるため、乾燥機3内でアルミダライ粉が酸化すること、および、熱分解ガスが燃焼することを同時に防止することができる。
【0040】
(5)二次燃焼制御
本発明では、二次空気により二次燃焼させた燃焼排ガスを大気に放出すると共に、その排熱を排熱回収部11a・11bで燃焼用乾燥排ガス・燃焼用空気と熱交換させることにより回収している。したがって、燃焼炉の熱効率が高まり、燃料を節減できるが、二次燃焼後の燃焼排ガスの温度が低ければ、思うように熱効率が上がらない反面、逆に二次燃焼後の燃焼排ガスが不用意に高温となった場合、これに伴って燃焼用空気の温度も上昇して、結果、炉内で火炎温度が局所的に上昇するいわゆる高温燃焼を生起し、窒素酸化物など大気汚染物質が発生する。こうした不都合を回避するため、二次燃焼に係る燃焼排ガスの温度を温度計25で監視し、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、分岐供給路9bに設けた流量調整弁26によって二次空気の供給量を調整する。
【0041】
上述した各計測器と調整弁の作動により、アルミダライ粉の性状や量が変化した場合にも乾燥装置が適正に維持されるが、アルミダライ粉の水分量が増大した場合についても、その適性維持プロセスを説明すれば、アルミダライ粉の水分量が増大すると、水の蒸発潜熱による出熱が増大して乾燥排ガス温度が低下する結果、乾燥排ガスの温度計19の出力と熱源用燃焼排ガスの流量調整弁20の開度が大きくなって、結果、乾燥機3への燃焼排ガスの誘引量が増大することになり、水の蒸発潜熱量をカバーできる熱源が補給されて乾燥排ガスの温度低下を防ぎ所定の温度に復帰させることができる。
【0042】
これに伴って、乾燥排ガス量が増大すると、乾燥機13内のガス流速が適正値以上になるが、これは、乾燥排ガスの排気ファン8の電力量等を負荷計測器15で計測して、循環用乾燥排ガスの流量調整弁16の開度を小さくして、当該循環量を低下させることで、適正値に戻る動作となる。このことは、乾燥機13へ導入する熱源用燃焼排ガスと循環用乾燥排ガスの混合割合を変化させて、混合ガスの温度を高める結果になり、乾燥排ガス温度の低下を早期に復帰させることにも寄与する制御動作となる。
【0043】
さらに、燃焼炉4に送風する乾燥排ガスが増量すれば、燃焼炉4での燃焼温度を低下させる結果となるが、これを温度計21で計測し、燃料の流量調整弁22の開度を大きくして、給油ポンプ10の吐出量を増やすことにより、燃焼炉4での燃焼温度の低下を防止して適正に維持することができる。
【0044】
また、燃料量の増大に伴う適正な燃焼用空気の供給については、乾燥機3での大気からの漏洩空気量の影響もあることから、最終的には、燃焼排ガス中の酸素濃度を適正値に維持する方法で空気量を供給する必要がある。このため、酸素濃度計測器23の計測値が適正値(酸素濃度で5〜10%)より低下した場合には、燃料用空気の流量調整弁24の開度を大きくして、送風ファン9により燃焼炉4への送風量を増大させて、空気不足を解消させる動作となる。
【0045】
ここまでの結果、乾燥機3や燃焼炉4周りの排ガス量の増大し、これに伴って、乾燥系の圧力が増大することになるが、乾燥機3への導入部に設けた圧力計17の計測値が上昇し、流量調整弁18の開度を大きくすることで、システム全体を適正な負圧に維持することができる。
【実施例】
【0046】
図4は、図2に示したリサイクルシステムによりアルミダライ粉をリサイクルしたときの物熱収支を示したものであり、具体的には図2のa〜iの各部について計測したものである。この物熱収支表から本発明のリサイクルシステムによれば、燃焼排ガスの約半分が乾燥機3の熱源として使用されるから大気放出分が少なく、また排熱回収によって熱効率が高いことと判断できる。なお、当該物熱収支表に記載の流体名称は便宜的なものであり、上述の実施形態で使用した名称と必ずしも一致させていない。
【0047】
続いて、図5は、本発明に係る乾燥装置の実施形態として、図2のブロックCを具体的な装置として示したものである。なお、図2と対応する構成要素については同じ符号を付している。そして、図5における乾燥装置の特徴は、第一に乾燥機3として回転ドラムの内壁に羽板3aを設けたロータリーキルンを採用したことである。この構成によって、金属切削屑が機内で掻き上げられるから、熱風の伝熱効率が高く、しかも、均質な乾燥が可能となる。
【0048】
また、第二の特徴点は、燃焼炉4の炉壁を内壁4bと外壁4cの二重壁とし、且つ、内壁3aと外壁3bとの間隙をガス流路として上下二分割し、下部ガス流路を燃焼用乾燥排ガスの排熱回収部11a、上部ガス流路を燃焼用空気の排熱回収部11bとしたことである。これら排熱回収部11a・11bは炉内において燃焼排ガスと熱交換するものであり、この実施形態の場合、下部の排熱回収部11aは、炉底において開口し、熱交換後の乾燥排ガスを火炎の還元炎付近に噴き出している。また、上部の排熱回収部11bは、一旦、炉外を経由して熱交換後の燃焼用空気を燃焼炉4のバーナー部4aに供給している。
【0049】
さらに、燃焼用空気から分流される二次空気の分岐供給路9bは、燃焼炉4内の二次燃焼可能な領域に挿入され、図6に示すように、複数の開口から二次空気を炉内中心に向けて噴き出すように構成している。
【0050】
このように、この実施形態の乾燥装置では、排熱回収部11a・11bを燃焼炉4に一体的に構成したため、別体として構成するよりも、排熱の回収率が高まり、且つ、乾燥装置全体を合理的に小型化することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば排熱回収部11a・11bをセラミックハニカムなどの蓄熱体を内蔵した熱交換器により燃焼炉4と別体で構成するなど、適宜変更して実施することができる。また、二次空気も燃焼用空気から分流せず、燃焼用空気とは別個独立の供給源から燃焼炉4に供給する態様であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明リサイクル方法の工程を示したフローチャート
【図2】本発明リサイクルシステムの一実施形態を示した回路図
【図3】同システムの乾燥装置を抽出した簡略化回路図
【図4】本発明リサイクルシステムの一実施例に係る物熱収支表
【図5】本発明乾燥装置の一実施形態を示した説明図
【図6】同装置の要部を示した燃焼炉の断面図
【符号の説明】
【0053】
1 粉砕機
2 分級機
3 乾燥機
4 燃焼炉
5 磁選機
6 フィーダ
7 集塵機
8 乾燥排ガスの排気ファン
9 燃焼用空気の送風ファン
9a 燃焼用空気の供給路
9b 二次空気の分岐供給路
10 給油ポンプ
11a・11b 排熱回収部
12 煙突
13a 乾燥排ガスの燃焼用供給路
13b 乾燥排ガスの循環用導入路
14 燃焼排ガスの熱源用導入路
15 負荷計測器(排気ファン用)
16 流量調整弁(乾燥排ガスの循環用)
17 圧力計(混合ガスの導入用)
18 流量調整弁(乾燥排ガスの燃焼用)
19 温度計(乾燥排ガス用)
20 流量調整弁(燃焼排ガスの熱源用)
21 温度計(燃焼排ガス用)
22 流量調整弁(燃料用)
23 酸素濃度計測器(燃焼排ガス用)
24 流量調整弁(燃焼用空気用)
25 温度計(燃焼排ガスの二次燃焼用)
26 流量調整弁(二次空気用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥原料に含まれる水分および油分を蒸発および熱分解するための乾燥用熱源として乾燥機に燃焼炉から燃焼排ガスを導入すると共に、当該乾燥機の乾燥排ガスを前記燃焼炉に環流し別途供給される燃焼用空気および適宜燃料と共に燃焼させる乾燥方法であって、前記乾燥排ガスを乾燥機の出口側に設けた排気ファンによって強制排気することで前記乾燥機内を負圧とすると共に、乾燥排ガスを燃焼用と還元用とに分流し、燃焼用に係る乾燥排ガスを前記燃焼炉に環流して燃焼させる一方、当該燃焼排ガスのうち、前記負圧により誘引可能な量の燃焼排ガスを前記還元用に係る乾燥排ガスと混合して前記乾燥機に導入すると共に、残部の燃焼排ガスは二次空気によって二次燃焼させた後、大気に放出することを特徴とした排ガス環流式乾燥方法。
【請求項2】
燃焼用に係る乾燥排ガスおよび燃焼用空気は燃焼排ガスと熱交換した後、燃焼炉に供給する請求項1記載の排ガス環流式乾燥方法。
【請求項3】
排気ファンの消費電力量または電流量、および乾燥機に導入される混合ガスの圧力を計測して、当該それぞれの計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、還元用に係る乾燥排ガスおよび燃焼用に係る乾燥排ガスの流量を制御する請求項1または2記載の排ガス環流式乾燥方法。
【請求項4】
乾燥排ガスの分流前の温度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、乾燥機に誘引される燃焼排ガスの流量を制御する請求項1、2または3記載の排ガス環流式乾燥方法。
【請求項5】
乾燥機に誘引される燃焼排ガスの酸素濃度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、燃焼用空気の供給量を制御する請求項1〜4のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥方法。
【請求項6】
大気に放出する燃焼排ガスの温度を計測し、当該計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、二次空気の供給量を制御する請求項1〜5のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥方法。
【請求項7】
水分、油分および鉄粉を含んだ金属切削屑を粉砕する粉砕工程と、粉砕後の金属切削屑から所定サイズ以上を除去する分級工程と、分級後の金属切削屑を被乾燥原料として請求項1〜6のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥方法に基づき乾燥する乾燥工程と、乾燥後の金属切削屑から磁選機により鉄粉を除去する磁選工程とからなることを特徴とした金属切削屑のリサイクル方法。
【請求項8】
燃焼用空気と燃料を混合して燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉の燃焼排ガスを熱源として機内に導入し被乾燥原料を乾燥させる乾燥機と、前記被乾燥原料に含まれる水分および油分を前記燃焼排ガスにより蒸発および熱分解させた乾燥排ガスを前記乾燥機から強制排気する排気ファンと、該排気ファンを介して前記乾燥排ガスを前記燃焼炉に供給可能に設けた乾燥排ガスの燃焼用供給路と、該燃焼用供給路から前記乾燥排ガスの一部を分流し前記乾燥機に再び導入可能に設けた乾燥排ガスの循環用導入路と、前記燃焼排ガスの一部を前記排気ファンの負圧誘引により前記循環用導入路と合流して前記乾燥機に導入可能に設けた燃焼排ガスの熱源用導入路と、前記燃焼排ガスの残部が二次燃焼可能な領域に二次空気を供給する二次空気の供給路とからなることを特徴とした排ガス環流式乾燥装置。
【請求項9】
燃焼用供給路の乾燥排ガスおよび燃焼用空気を燃焼排ガスと熱交換させる排熱回収部を備えた請求項8記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項10】
燃焼炉は、炉壁を内壁と外壁の二重壁で構成すると共に、その間をガス流路とし、さらに、前記ガス流路を二分割して、該分割後の二つのガス流路それぞれを乾燥排ガスおよび燃焼用空気の排熱回収部とした請求項8または9記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項11】
燃焼用供給路および循環用供給路に乾燥排ガスの流量調整弁を設けると共に、排気ファンの電力計または電流計と、循環用導入路と熱源用導入路の合流部分に圧力計を備え、それぞれの計測値が予め定めた設定値の範囲となるように前記流量調整弁を制御する請求項8、9または10記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項12】
熱源用導入路に燃焼排ガスの流量調整弁を設けると共に、燃焼用供給路に乾燥排ガスの温度計を備え、前記温度計の計測値が予め定めた設定値の範囲となるように前記流量調整弁を制御する請求項8〜11のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項13】
熱源導入路に燃焼排ガスの酸素濃度計を備えると共に、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように、燃焼炉に対する燃焼用空気の供給量を制御可能な流量調整弁を備えた請求項8〜12のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項14】
二次空気の供給路に二次空気の流量調整弁を設けると共に、二次燃焼後の燃焼排ガスの温度計を備え、その計測値が予め定めた設定値の範囲となるように前記流量調整弁を制御する請求項8〜13のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項15】
乾燥機は、ロータリーキルンである請求項8〜14のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥装置。
【請求項16】
水分、油分および鉄粉を含んだ金属切削屑の粉砕機と、粉砕後の金属切削屑から所定サイズ以上を除去する分級機と、分級後の金属切削屑を被乾燥原料とした請求項8〜15のうち何れか一項記載の排ガス環流式乾燥装置と、乾燥後の金属切削屑から鉄粉を除去する磁選機とからなることを特徴とした金属切削屑のリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144994(P2009−144994A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323622(P2007−323622)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(507042305)株式会社ニチコン製作所 (5)
【Fターム(参考)】