説明

排気システム中の粒子フィルターの再生が容易になることを目的としたディーゼルエンジンの運転方法

【課題】粒子フィルターが取り付けられたディーゼルエンジンまたは希薄燃焼エンジンの運転方法を提供する。
【解決手段】粒子フィルターに捕集された煤煙粒子を燃焼させることができる温度を低下させることができ、鉄化合物から実質的になる、または鉄化合物およびセリウム化合物から実質的になる添加剤を含有する燃料をエンジンに供給すること、ならびにエンジン中の燃料の燃焼によって生成した排気ガスを通過させるために使用される粒子フィルターが、触媒フィルターであり、この触媒が、煤煙の粒子の燃焼を促進する。本方法によって、特に低温における煤煙燃焼の動力学の改善が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに取り付けられている排気システム中に搭載された粒子フィルターの再生が容易になることを目的としたディーゼルエンジンまたは希薄燃焼エンジンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル油がディーゼルエンジン中で燃焼すると、炭素含有生成物が、環境および健康の両方に対して有害であると考えられている煤煙を形成しやすくなることが知られている。これらの炭素含有粒子、これは明細書の後段で「煤煙」として知られるようになるものを削減する技術が、長い間探求されている。
【0003】
これを行うために最も一般的に採用されている技術は、種々の燃料の燃焼によって発生した煤煙のすべてをまたは大部分を停止することができる粒子フィルター(PF)を排気経路中に取り付けることである。
【0004】
しかし、フィルター中に煤煙が徐々に蓄積すると、最初に煤煙によって圧力低下が生じ、次にフィルターが詰まり始め、それによってエンジン性能が低下する。従って、これらのフィルターによって集められた煤煙を燃焼させる必要が生じる。「フィルター再生」として知られるこの作業を定期的に行う必要がある。
【0005】
煤煙が燃焼することができる温度(約650℃)は排気ガスの温度よりもはるかに高く、従ってこのことは、この再生を行うためには、この温度に到達する、またはこの温度を下げるための技術の実施が必要であることを意味することに留意されたい。
【0006】
例えば、特に燃料中の添加剤として、500℃未満の温度でこの煤煙を自己発火させることができる触媒を煤煙中に導入することができる。
【0007】
エンジンの膨張行程中にエンジンのシリンダーに燃料を定期的に後噴射することによって再生を行うことも可能である。この後噴射は、排気ガスの温度を上昇させ、排気ガス中に含有される炭化水素量を増加させる効果がある。これらの炭化水素はPFの上流に配置された酸化触媒コンバータ上で発熱反応によって変換され、それによって、排気ガスがPF中の煤煙層に到達したときに煤煙が燃焼するのに十分高い温度まで排気ガス温度が上昇する。
【0008】
これらの再生の頻度および時間を減少させることができ、再生をより低温で行うこともできれば好都合となることは理解できるが、この理由は、一方では、これによって、後噴射行程で消費される燃料が少なくなるため乗り物の燃料消費が減少するからであり、他方では、炭化ケイ素などのように高温抵抗性を有する必要がなく、従ってより安価な材料をPF材料中に使用できるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記要求を満たすことができるディーゼルエンジンまたは希薄燃焼エンジンの運転方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のための、本発明の方法は、粒子フィルターが搭載された排気システムが取り付けられたディーゼルエンジンまたは希薄燃焼エンジンの運転方法であり、この方法は、粒子フィルターによって保持された煤煙の粒子の燃焼温度を低下させることができ、および鉄化合物から実質的になる、または鉄化合物およびセリウム化合物から実質的になる添加剤を含有する燃料をエンジンに供給すること、ならびにエンジン中の燃料の燃焼によって生成した排気ガスが通過する粒子フィルターとして、触媒フィルターが使用され、この触媒が、煤煙の粒子の燃焼を促進する触媒からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の方法によって、特に450℃未満の温度などの低温において煤煙の燃焼を加速することができる。排気ガスが少なくとも240℃の温度を有する特定の運転条件下で、本発明の方法により、煤煙が連続的に燃焼することが可能となり、それによってPFが詰まるのが遅くなり、そのため再生の頻度が減少する。
【0012】
本発明のその他の特徴、詳細および利点は、以下の説明、および本発明の説明を意図した種々の具体的で非限定的な実施例を読めばより十分明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ディーゼルエンジンまたは希薄燃焼ガソリンエンジン(濃度としても知られる燃料/酸化剤比が理論混合比よりも低い。)に適用される。これらのエンジンには、公知の方法で、PFが組み込まれた排気システムまたはマフラーが取り付けられる。従来、これは、コーディエライトまたは炭化ケイ素などでできた濾過セラミック壁を有する種類のフィルターであり、このフィルターを排気ガスが通過する。しかし、このフィルターはちょうど簡単に、金網の1つ以上のスクリーン、またはセラミックフォームもしくは繊維状材料型のフィルターであってもよい。
【0014】
本発明の方法の第1の特徴によると、PF中に保持された煤煙の燃焼温度を低下させることを意図した触媒を含有する燃料がエンジンに供給される。実際このこと自体は、既に前述した公知の技術であり、「燃料媒介触媒反応」またはFBCとして知られており、この技術では、燃料がエンジン内で燃焼した後で、煤煙中に取り込まれ、煤煙が通常燃焼する温度よりも低温で煤煙の燃焼を開始させることができる触媒添加剤を燃料が含んでいる。
【0015】
本発明の場合、燃料中に存在するこの添加剤は、鉄化合物、または鉄化合物およびセリウム化合物の組み合わせのいずれかから実質的になる。「から実質的になる」は、添加剤が、鉄化合物以外、または鉄化合物およびセリウム化合物以外に触媒作用を有する化合物を含有しないことを意味する。従って、この添加剤は他の化合物を含有することができるが、含有する場合、それらの化合物は触媒機能を有さず、煤煙が燃焼するときの温度の低下に全く寄与しない。
【0016】
鉄化合物としては、例として、フェロセン型化合物、アセチルアセトン第一鉄および第二鉄、ナフテン酸鉄、オレイン酸鉄、オクタン酸鉄、ステアリン酸鉄、ネオデカン酸鉄、鉄アルケニルおよびアルキルスクシナート、ならびにより一般的にはC6−C24カルボン酸の鉄塩を挙げることができる。
【0017】
セリウム化合物としては、同様に例として、アセチルアセトンセリウム、ナフテン酸セリウム、オレイン酸セリウム、オクタン酸セリウム、ステアリン酸セリウム、ネオデカン酸セリウム、セリウムアルケニルおよびアルキルスクシネート、ならびにより一般的にはC6−C24カルボン酸のセリウム塩を挙げることができる。
【0018】
この添加剤は、鉄化合物もしくはセリウム化合物の水溶液または有機溶液の形態であってよい。
【0019】
この添加剤は、鉄化合物またはセリウム化合物の有機コロイド分散体の形態であってもよい。この場合、この鉄化合物またはセリウム化合物は、特に鉄またはセリウムの酸化物および/または水酸化物および/またはオキシ水酸化物であってよい。
【0020】
本明細書の説明における「コロイド分散体」という表現は、液相中の安定な懸濁液中の鉄化合物またはセリウム化合物を主成分とするコロイド寸法の微小固体粒子からなるあらゆる系を意味し、さらに前記粒子は場合により、例えば硝酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、もしくはアンモニウムイオンなどの残量の結合または吸着したイオンを含有することができる。コロイド寸法とは、約1nmから約500nmの間で構成される寸法を意味する。上記粒子は、特に最大約250nm、特に最大100nm、好ましくは最大20nm、より好ましくは最大15nmの平均サイズを有することができる。このような分散体中、鉄化合物またはセリウム化合物は、好ましくは完全にコロイドの形態であってもよく、またはコロイドの形態および部分的にイオンの形態であってもよいことに留意されたい。
【0021】
本明細書で前述され本明細書の残りの部分でも記載される粒度は、特に明記しない限り、従来方法で、あらかじめ乾燥させ、銅格子上に支持された炭素膜上に配置した検査材料に対する透過型電子顕微鏡法(TEM)によって行われる。
【0022】
ここで、鉄化合物がセリウム化合物と併用される本発明の実施形態の場合、これは第一にこれらの化合物の混合物、例えばセリウム塩と混合された鉄塩であってよく、または鉄化合物のコロイドおよびセリウム化合物のコロイドを含有するコロイド分散体であってもよいことに留意されたい。複合型化合物、即ち鉄およびセリウムが同じ化学種中にともに存在する化合物であってもよい。例えば混合鉄およびセリウム塩、またはコロイドが鉄およびセリウムの混合酸化物であるコロイド分散体であってもよい。
【0023】
さらに、鉄化合物がセリウム化合物と併用される実施形態の場合において、鉄およびセリウムの比率は、0/100から80/20の範囲の比率で変動することができ、この比率はCe元素のFe元素に対するモル比である。この比率は特に10/90から50/50の間で構成されてよい。
【0024】
本発明の特定の一実施形態によると、本発明の方法は鉄化合物のみを実質的に含む添加剤を使用して実施される。
【0025】
本発明のさらなる特定の一実施形態によると、本発明のコロイド分散体は、有機相;非晶質形態の鉄化合物の粒子、および少なくとも1種類の両親媒性物質を含有する分散体である。
【0026】
このような分散体は、特許出願WO03/053560A1に記載されており、この文献の教示を参照することができ、この文献の実質的な特徴は以下にまとめられている。
【0027】
この分散体の粒子は、好ましくは非晶質であってよい鉄化合物を主成分とする。この非晶質の性質はX線分析によって示すことができ、この場合に実際に得られるX線図は顕著なスパイクが見られない。
【0028】
鉄化合物は、鉄の酸化物および/または水酸化物および/またはオキシ水酸化物である。この鉄は実質的に酸化状態3で一般に存在する。
【0029】
別の一形態によると、粒子の少なくとも85%、特に少なくとも90%およびさらに特に少なくとも95%が一次粒子である。一次粒子とは、完全に個別化されており、任意の他の粒子と互いに凝集していない粒子を意味する。この特徴は、TEMを使用して分散体を検査することによって示すことができる。
【0030】
さらなる好都合な別の一形態によると、このコロイド分散体中の粒子は、微細な粒度、即ち1nmから5nmの間、特に3nmから4nmの間で構成されるd50を有することができる。
【0031】
前述したように、コロイド分散体中の粒子は、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素またはそれらの混合物から選択することができる有機層中に懸濁している。
【0032】
両親媒性化合物は、一般に10から50個の炭素原子、好ましくは15から25個の炭素原子を含有するカルボン酸であってよく、線状または分岐の酸であってよい。これはアリール酸、脂肪酸またはアリール脂肪酸から選択することができる。
【0033】
例として、トール油、大豆油、獣脂、亜麻仁油、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸およびこの異性体、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ヘキサン酸、トルエンスルホン酸、トルエンホスホン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリルホスホン酸、パルミチルスルホン酸およびパルミチルホスホン酸の脂肪酸を挙げることができる。
【0034】
両親媒性化合物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートから、またはその代わりにジポリオキシエチレンアルキルホスフェート、もしくはポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボキシレートから選択することもできる。
【0035】
本発明の状況において使用可能なセリウムのコロイド分散体として、EP−A−671205に記載されているものを挙げることができる。この分散体は、酸化セリウムの粒子、両親媒性酸化合物、および本明細書で前述した種類の有機相を含み、粒子が最大200ナノメートルのd90を有することを特徴とする。この分散体は以下の特徴の少なくとも1つも有する。(i)酸化セリウムの粒子が微結晶の凝集体の形態であり、これらの微結晶の凝集体は、光度計の計数(高解像度透過型電子顕微鏡法)によって測定されるd80、好都合にはd90が最大5ナノメートルであり、凝集体の90(質量)パーセントが1から5個、好ましくは1から3個の微結晶を含有する、(ii)両親媒性酸化合物が、少なくとも1種類の酸であって、11から50個の炭素原子を含み、酸性水素を有する原子に対してα位、β位、γ位またはδ位において少なくとも1つの分岐を有する少なくとも1種類の酸を含有する。
【0036】
WO97/19022の教示を参照することもでき、この文献には、鉄のコロイド分散体と併用することができるセリウムのコロイド分散体が記載されているが、鉄およびセリウムの混合化合物のコロイド分散体も記載されており、従ってそれ自体を本発明に使用することができる。WO97/19022に記載されている分散体は、セリウムおよび/または鉄の化合物の粒子、両親媒性酸化合物、および本明細書で前述した有機相を含有し、a)少なくとも1種類の可溶性塩、通常は酢酸セリウムおよび/または塩化セリウムを含有する溶液を調製するステップ;b)この溶液を塩基性媒体と接触させ、それにより形成された反応混合物を塩基性pHで維持するステップ;c)形成された沈殿物を霧化または凍結乾燥の使用により回収するステップを含む方法によって上記粒子が得られることを特徴とする。
【0037】
鉄のコロイド分散体と併用することができるセリウムのコロイド分散体としてであるが、それ自体を本発明に使用することができる鉄およびセリウムの混合化合物のコロイド分散体として、WO01/10545に記載のコロイド分散体を挙げることもできる。これらの有機コロイド分散体は、セリウム化合物の粒子、および場合によっては鉄化合物の粒子を含有し、酸化物として表されるFe+Ce元素の全モル数に対するセリウムの比率が好ましくは少なくとも10mol%、特に少なくとも20mol%、さらに特に少なくとも50mol%である。これらの分散体は、少なくとも1種類の酸、好ましくは両親媒性酸、および少なくとも1種類の希釈剤、好ましくは非極性希釈剤を含有し、これらは前述した種類のものである。これらの分散体は、粒子の少なくとも90%が単結晶である分散体である。これらの粒子は1から5nmの間、好ましくは2から3nmの間で構成されるd50を有することもできる。
【0038】
添加剤は、予備タンク中に収容し、公知の手段によって必要量を燃料に加えることができる。この量は、燃料の質量に対する金属鉄元素の質量として表され、例えば0.5ppmから25ppmの間、特に2ppmから15ppmの間、およびさらに特に2ppmから10ppmの間で構成されることができる。
【0039】
本発明の方法の第2の特徴によると、エンジンからの排気ガスは触媒PFに通される。
【0040】
このフィルター中の触媒は、煤煙の粒子の燃焼を促進する触媒からなる。「からなる」とは、触媒が煤煙の燃焼を促進すること以外の機能を有さず、PFがあらゆる他の触媒を含有しないことを意味する。
【0041】
この煤煙の燃焼の促進は、触媒が燃焼温度を低下させることによってこの燃焼を促進することができる限りにおいては直接的であってよく、PF上に堆積した煤煙層全体で煤煙の燃焼が開始する領域からの高温の伝播に触媒が寄与する限りにおいては間接的であってもよい。
【0042】
このPF触媒は、白金、またはパラジウムなどの白金族の金属から選択される少なくとも1種類の金属を主成分とする触媒であってよい。当然ながら、白金およびこれらの金属を併用することもでき、またはそのかわりにこれらの金属の互いの組み合わせを使用することもできる。
【0043】
触媒の金属は、公知の方法でフィルター中に組み込む、またはフィルター上に堆積することができる。この金属は、例えばフィルター上にそれ自体が堆積されるコーティング(ウォッシュコート)中に含まれてもよい。このコーティングは、アルミナ、酸化チタン、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリケート、結晶リン酸アルミニウムまたはそれらの混合物から選択することができる。特にアルミナを使用することができる。
【0044】
PFの触媒が煤煙の燃焼を促進する触媒である限り、この触媒はフィルター上に比較的少量で存在し、即ち一般に最大70g/フィート(2.5g/dm)の量で存在する。この量は、PFの体積に対する金属元素の質量、例えば白金の質量として表される。この量は特に最大60g/フィート(2.1g/dm)、およびさらに特に最大50g/フィート(1.8g/dm)であってよい。この量は、例えば20g/フィート(0.7g/dm)から50g/フィートの間、特に20から40g/フィート(1.4g/dm)の間で構成されてよい。
【0045】
本発明の別の一形態によると、PFの上流(ガスが流れる方向に関して)に配置されたディーゼル酸化触媒コンバータの上に排気ガスを通すことが可能である。このような触媒コンバータの機能は、ガス中に含有される炭化水素およびCOをCOおよび水蒸気に変換することである。この機能を果たすことが可能な触媒コンバータは公知であり、一般に白金、パラジウム、ロジウムおよびそれらの混合物を主成分とし、これらの金属は、純粋またはドープされた形態のアルミナ、酸化チタン、シリカ型の担体上に堆積される。
【0046】
本発明の方法は低温で行うことができるため、脱NOx型の窒素酸化物(NOx)還元システムを含む排気システムが取り付けられたモーター上で本発明の方法を実施することが可能である。第1の代替形態によると、このシステムは、例えばアンモニアで処理することなどによって窒素酸化物を選択的に還元する手段を含むことができる。この場合、このシステムは、酸化チタン型の担体上のバナジウムを主成分とする種類、またはゼオライト中の鉄もしくは銅型の金属を主成分とする種類の触媒コンバータを含む。第2の代替形態によると、このシステムは、低濃度媒体中でNOxを貯蔵し高濃度媒体中でNOxを還元するNOxトラップを含むことができる。これらのNOxトラップは、例えばアルミナ担体上のバリウムおよび白金を主成分とする組成物である。このシステムは、脱NOx触媒コンバータを通過するガスがおそらくは最高温であるのでPFの上流およびエンジン付近に配置することができるし(直動システム)、またはPFを離れるガスの温度が、特に再生中に、従来技術のシステムよりも下がるのでPFの下流に配置することもできる。
【0047】
これより実施例を示す。
【実施例1】
【0048】
この実施例は、2460cmの排気量、128kWの最大出力、および400nmの最大トルクの直接噴射ターボチャージ付き(TDI)5気筒ディーゼルエンジンが搭載されたツーリング車に対して得られた結果に関する。
【0049】
この自動車の排気システムは、白金(110g/フィート(3.9g/dm))およびアルミナ系ウォッシュコートを含有する1.2リットルのコーディエライトモノリスで構成されたディーゼル酸化触媒コンバータを備えている。2.9リットルの体積を有する炭化ケイ素PF(200cpsi)が排気システムのディーゼル酸化触媒コンバータの下流に搭載されている。このPFは、この濾過壁上に、40g/フィート(1.4g/dm)の含有率の白金、およびPtを分散させてフィルターに付着させるためのアルミナを含有するウォッシュコートを有する。
【0050】
上記自動車でいわゆる「都市」走行サイクルを行うことによって試験を行い、試験中、エンジン速度は1500rpmに制限することで、PFに入る平均ガス温度を240℃にした。合計44分間持続する走行サイクルでは、この時間のちょうど8%で、PFに入る排気ガスの温度が300℃以上に達した。システムの動作に許容される最大圧力低下のパーセント値として表される、PFを通過する際の特定の圧力低下に到達させるために、この走行サイクルを15回行い、これは11時間の運転となった。
【0051】
煤煙の燃焼を触媒する添加剤(FBC添加剤)を含有しないディーゼル油燃料を使用して1つの試験を行い、FBC添加剤として、金属鉄が質量基準で7ppmの量の鉄のコロイド分散体を含有するディーゼル油燃料で別の試験を行った。この分散体は金属鉄10重量%、Isopar L中のイソステアリン酸を含有し、WO03/053560の教示に従って調製した。
【0052】
以下の表1は、PF充満のパーセント値を示しており、100%は、システムの運転に適合する最大圧力低下に対応する。
【0053】
【表1】

【0054】
排気ガスの温度が依然として低い間の、望ましくない条件下、即ち都市サイクルにおいては、本発明の方法によって、フィルター中の煤煙の蓄積を約50%遅くすることができ、そのためフィルター再生作業を遅らせることができることが分かる。本発明の方法による煤煙のより速い燃焼によって、ガスの温度がこの最高温であるサイクルの短期間中に、比較例の方法で燃焼するよりもはるかに多くの煤煙を燃焼させることが実際に可能となる。
【実施例2】
【0055】
この実施例では、エンジンによって煤煙が発生するのと同じ速度でシステムが煤煙を燃焼させることができる温度として定義される平衡点を測定するために、エンジン上に試験リグを取り付けたことを除けば、実施例1と同じエンジンを使用して行った試験結果を示す。この平衡点は、PFの間の圧力低下を安定化させるためにPFへの入口に適用する必要がある温度から求められる。
【0056】
この場合の排気システムは、実施例1に記載のPFのみからなる。この触媒フィルターを使用して、FBC添加剤を含有しないディーゼル油燃料を使用する第1の試験、およびFBC添加剤を含有する、即ち実施例1で使用したものと同じコロイド分散体からの金属鉄を質量基準で5ppm含有する燃料を使用する第2の試験の2つの試験を行った。FBC添加剤(同じ分散体を使用して金属鉄を質量基準で5ppm)を含有する同じ燃料を使用し、触媒材料を含有しない炭化ケイ素PFを使用して、第3の試験を行った。
【0057】
平衡点を測定するために以下の手順を使用した。煤煙の16gに相当する、94mbarの背圧が3つすべてのシステムで得られるように約8時間フィルターを充満させた。200℃のフィルター入口温度に相当する3000回転/分のエンジン速度、40Nmのトルクを使用して充満を行った。
【0058】
フィルターが一杯になってから、エンジン速度を2000回転/分まで低下させ、次に、フィルターの圧力低下が平衡状態になるまで(平衡点に到達するまで)15分ごとにトルクを45Nmから段階的に増加させた。
【0059】
表2は、3つの試験で測定した平衡点温度を示している。
【0060】
【表2】

【0061】
本発明による方法によって、より低温の平衡点が得られ、この結果、低温での煤煙の燃焼の優れた有効性が得られることが分かる。
【実施例3】
【0062】
この実施例では一定のPF入口温度における煤煙の再生速度の測定結果を示す。
【0063】
FBC添加剤を含有しないディーゼル油燃料を使用する第1の試験、およびFBC添加剤を含有する、即ち実施例1で使用したものと同じコロイド分散体からの金属鉄を質量基準で5ppm含有する燃料を使用する第2の試験の2つの試験を触媒フィルターを使用して行った。同じコロイド分散体を使用して金属鉄を重量基準で5ppmを添加剤として含有する同じ燃料を使用し、触媒材料を含有しない炭化ケイ素フィルターを使用して、第3の試験を行った。
【0064】
燃焼速度を以下のように測定した。煤煙の16gに相当する、94mbarの背圧が3つすべてのシステムで得られるように約8時間フィルターを充満させた。200℃のフィルター入口温度に相当する3000回転/分のエンジン速度、40Nmのトルクを使用して充満を行った。PFを取り外し、煤煙充満ステップの前後で秤量することで、再生前にフィルター中に存在する煤煙量を測定した。充満の前後のフィルターの質量差から、充満段階中に蓄積された煤煙の質量が求められる。
【0065】
フィルターが充満されてから、エンジン速度を2000回転/分まで低下させ、次にPF入口温度を425℃に到達させるためにトルクを170Nmに設定した。これらの条件を1時間維持した後、PFを取り外し、再び秤量して425℃における再生中に燃焼した煤煙量を求めた。再生終了時の煤煙の質量(即ち燃焼しなかった煤煙の質量)は、再生終了時に測定したフィルター質量と、充満前の試験開始時のフィルター質量との間の差に相当する。
【0066】
再生開始および終了の間で計算される再生中に燃焼した煤煙量は、以下の式を使用して燃焼煤煙のパーセント値として表される。
【0067】
燃焼煤煙%=(充満中に蓄積された煤煙の質量−再生終了時の煤煙の質量)/充満中に蓄積された煤煙の質量×100。
【0068】
表3は、3つの試験に関するこれらの値を示している。
【0069】
【表3】

【0070】
従って、本発明の条件下で燃焼した煤煙量は50%であり、一方、同じフィルターで燃料中に添加剤を含有しない場合にはわずか8%であり、添加剤を含有する燃料を使用し非触媒フィルターを使用した場合には30%であることから、本発明の方法によって、比較例の方法よりも煤煙燃焼速度を改善することが可能であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子フィルターが搭載された排気システムが取り付けられたディーゼルエンジンまたは希薄燃焼エンジンの運転方法であって、粒子フィルターによって保持された煤煙の粒子の燃焼温度を低下させることができ、鉄化合物から実質的になる、または鉄化合物およびセリウム化合物から実質的になる添加剤を含有する燃料をエンジンに供給すること、ならびにエンジン中の燃料の燃焼によって生成した排気ガスが通過する粒子フィルターとして、触媒フィルターが使用され、この触媒が、煤煙の粒子の燃焼を促進する触媒からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
燃料添加剤として、鉄化合物の、または鉄化合物およびセリウム化合物の水溶液もしくは有機溶液が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料添加剤として、鉄化合物の、または鉄化合物およびセリウム化合物の有機コロイド分散体が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機相;非晶質形態の鉄化合物の粒子、および少なくとも1種類の両親媒性物質を含有するコロイド分散体が使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
鉄化合物またはセリウム化合物が、鉄もしくはセリウムの酸化物、水酸化物、またはオキシ水酸化物であるコロイド分散体が使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
燃料添加剤中の鉄およびセリウムの比率が、0/100から80/20の範囲内の比で構成され、この比はFe元素に対するCe元素のモル比であり、特に10/90および50/50であることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
粒子フィルターの触媒が、白金、または白金族の金属から選択される少なくとも1種類の金属を主成分とする触媒であり、前記金属が、フィルター上に堆積されるコーティング(ウォッシュコート)中に最大70g/フィート(2.5g/dm)の量で含まれることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
触媒の量が最大50g/フィート(1.8g/dm)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
粒子フィルターの上流に配置されたディーゼル酸化触媒コンバータを排気ガスが通過することを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化窒素還元システムを含む排気システムがエンジンに取り付けられることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−107625(P2012−107625A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−282763(P2011−282763)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2009−552173(P2009−552173)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】