説明

接着性樹脂組成物、カバーレイ、接着性フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板

【課題】吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れる接着性樹脂組成物、カバーレイ、接着性フィルム、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)熱可塑性樹脂とを含み、エポキシ樹脂が、キレート変性エポキシ樹脂を1〜50質量%の割合で含有し、硬化剤が、エポキシ樹脂100質量部に対して30〜175質量部の割合で配合され、熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、熱可塑性樹脂が、エポキシ樹脂100質量部に対して50〜300質量部の割合で配合されていることを特徴とする接着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性樹脂組成物、カバーレイ、接着性フィルム、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、屈曲性に優れるため、その優れた屈曲性能を生かして、ハードディスクドライブのヘッド部分における回路基板や、携帯電話に内蔵される回路基板としてよく用いられている。
【0003】
フレキシブルプリント配線板は一般に、金属張積層板とカバーレイとを熱圧着することによって得ることができる。ここで、金属張積層板は、ポリイミドなどからなるべースフィルム上に銅などからなる金属層を設けてなるものであり、カバーレイは、ポリイミドなどからなる絶縁フィルム上に接着剤層を設けてなるものである。なお、金属張積層板には、金属箔とベースフィルムとの間に接着剤層が介在されることがある。
【0004】
上記接着剤層に用いられる接着性樹脂組成物として、例えばエポキシ樹脂、カルボン酸で変性された架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴム、硬化剤、硬化促進剤および無機充填剤を含有してなる接着剤組成物が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−169446号公報(実施例4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フレキシブルプリント配線板用の接着剤組成物には一般に、吸湿後の半田耐熱性および絶縁性に優れることが求められる。またフレキシブルプリント配線板を、ハードディスク装置に用いられる磁気ヘッドのアームのような可動部品に取り付けて使用する場合には、上記の特性に加え、高温での摺動屈曲特性に優れることも要求される。
【0007】
しかし、上述した特許文献1記載の接着剤組成物は、吸湿後の半田耐熱性および絶縁性に優れるものの、高温(例えば80℃)での摺動屈曲特性が不十分となる場合があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れる接着性樹脂組成物、カバーレイ、接着性フィルム、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記特許文献1に記載の接着剤組成物中に柔軟成分として配合されているカルボン酸変性架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴムが高温摺動屈曲特性を低下させる要因となっていることを突き止めた。そして、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、柔軟成分として、カルボン酸変性架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴムの代わりにこれとは異なる特定の熱可塑性樹脂を用い、エポキシ樹脂中に所定割合のキレート変性エポキシ樹脂を配合するとともに、エポキシ樹脂に対する硬化剤及び熱可塑性樹脂の配合量を所定の範囲とすることによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)熱可塑性樹脂とを含み、前記エポキシ樹脂が、キレート変性エポキシ樹脂を1〜50質量%の割合で含有し、前記硬化剤が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して30〜175質量部の割合で配合され、前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、前記熱可塑性樹脂が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して50〜300質量部の割合で配合されていることを特徴とする接着性樹脂組成物である。
【0011】
この接着性樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れる。
【0012】
また本発明は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が、上記の接着性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とするカバーレイである。
【0013】
このカバーレイによれば、接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着性樹脂組成物を用いて形成される。このため、本発明のカバーレイを金属張積層板に貼り合せて製造されるフレキシブルプリント配線板に、電子部品等を半田で実装する場合、接着剤層の膨れを抑制したり、絶縁フィルムからの接着剤層の剥離を十分に抑制したりすることができる。また接着性樹脂組成物は、高温摺動屈曲特性にも優れるため、フレキシブルプリント配線板の高温時の屈曲寿命を延ばすことができる。また接着性樹脂組成物は絶縁性にも優れるため、本発明のカバーレイを金属張積層板に貼り合せて製造されるフレキシブルプリント配線板において、回路間のショートを十分に防止することができる。
【0014】
また本発明は、上記接着性樹脂組成物を用いて形成される接着剤層を含む接着性フィルムである。
【0015】
この接着性フィルムは、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れる。
【0016】
さらに本発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が、上記の接着性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする金属張積層板である。
【0017】
この金属張積層板によれば、接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着性樹脂組成物を用いて形成される。このため、本発明の金属張積層板をカバーレイに貼り合せて製造されるフレキシブルプリント配線板に、電子部品等を半田で実装する場合、接着剤層の膨れを抑制したり、ベースフィルムからの接着剤層の剥離を十分に抑制したりすることができる。また接着性樹脂組成物は、高温摺動屈曲特性にも優れるため、本発明の金属張積層板をカバーレイに貼り合せて製造されるフレキシブルプリント配線板の高温時の屈曲寿命を延ばすことができる。また接着性樹脂組成物は絶縁性にも優れるため、本発明のカバーレイを金属張積層板に貼り合せて製造されるフレキシブルプリント配線板において、回路間のショートを十分に防止することができる。
【0018】
さらにまた本発明は、上記のカバーレイと、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板とを、前記カバーレイの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板である。
【0019】
このフレキシブルプリント配線板によれば、接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着性樹脂組成物を用いて形成される。このため、本発明のフレキシブルプリント配線板に電子部品等を半田で実装する場合、接着剤層の膨れを抑制したり、絶縁フィルム又はベースフィルムからの接着剤層の剥離を十分に抑制したりすることができる。また接着性樹脂組成物は、高温摺動屈曲特性にも優れるため、本発明のフレキシブルプリント配線板の高温時の屈曲寿命を延ばすことができる。また接着性樹脂組成物は絶縁性にも優れるため、本発明のフレキシブルプリント配線板において、回路間のショートを十分に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れる接着性樹脂組成物、カバーレイ、接着性フィルム、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【図3】実施例及び比較例で線間絶縁抵抗の測定に使用する片面板に形成した銅回路パターンを示す平面図である。
【図4】実施例及び比較例で高温摺動屈曲特性の評価に使用する片面板に形成した銅回路パターンを示す平面図である。
【図5】実施例及び比較例に係るプリント配線基板に対し高温摺動屈曲試験を行っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の好適な実施形態を示す断面図である。図1に示すように、フレキシブルプリント配線板100はベースフィルム1を備えている。ベースフィルム1の表面1a上には接着層2が設けられ、接着層2上には回路を形成する金属層3が設けられ、接着層2の上には、金属層3を覆うように接着層4が設けられ、接着層4上には絶縁フィルム5が設けられている。
【0024】
一方、ベースフィルム1の裏面1b上には接着層6を介して補強板7が設けられている。補強板7はステンレス、ポリイミドなどから構成されている。
【0025】
次に、フレキシブルプリント配線板100の製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【0026】
まず図2に示すように、カバーレイ10と、金属張積層板20と、補強板7と、金属張積層板20及び補強板7を貼り合わせるための接着剤シート30とを準備する。
【0027】
カバーレイ10は、絶縁フィルム5上に接着剤層14を設けてなるものであり、接着性樹脂組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム5上に塗布し乾燥することにより得ることができる。ここで、接着剤層14は、接着剤組成物を用いて形成されており、一部が硬化した状態、例えば半硬化の状態となっている。絶縁フィルム5としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等からなる厚さ3μm〜50μm程度のフィルム等を用いることができる。
【0028】
金属張積層板20は、ベースフィルム1上に接着剤層22および金属層3を順次設けてなるものであり、接着性樹脂組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層22上に金属層3を貼り付けることによって得ることができる。ここで、接着剤層22は、接着剤組成物を用いて形成されており、一部が硬化した状態、例えば半硬化の状態となっている。ベースフィルム1としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。金属層3は銅箔等からなる。
【0029】
接着剤シート30も、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなる基板上に接着性樹脂組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥した後、基板上から剥離することにより得ることができる。
【0030】
そして、補強板7の上に、接着剤シート30、金属張積層板20、カバーレイ10を順次配置する。このとき、金属張積層板20のベースフィルム1と接着剤シート30とを対向させた状態とし、カバーレイ10の接着剤層14と金属張積層板20の接着剤層22及び金属層3とを対向させた状態とする。
【0031】
そして、補強板7、接着剤シート30、金属張積層板20及びカバーレイ10を熱圧着する。これによりカバーレイ10の接着剤層14は硬化して接着層4となり、金属張積層板20の接着剤層22は硬化して接着層2となり、接着剤シート30は硬化して接着層6となる。こうしてフレキシブルプリント配線板100が得られる。
【0032】
ここで、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22及び接着剤シート30に使用される接着性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)熱可塑性樹脂とを含んでいる。エポキシ樹脂は、キレート変性エポキシ樹脂を1〜50質量%の割合で含有しており、硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して30〜175質量部の割合で配合されている。また熱可塑性樹脂はポリビニルアセタール樹脂で構成され、熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂100質量部に対して50〜300質量部の割合で配合されている。
【0033】
この接着性樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性に優れる。このため、フレキシブルプリント配線板100は、電子部品等を実装する際、半田を溶融するために加熱されても、膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。また接着性樹脂組成物は、高温摺動屈曲特性にも優れるため、フレキシブルプリント配線板100の高温時の屈曲寿命を延ばすことができる。また接着性樹脂組成物は絶縁性にも優れるため、回路間のショートを十分に防止することができる。従って、フレキシブルプリント配線板100は、作動により高温下に晒されるハードディスク装置に用いられる磁気ヘッドのアーム等の可動部品用のフレキシブルプリント配線板として極めて有用である。
【0034】
次に、上記接着性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
【0035】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、キレート変性エポキシ樹脂を1〜50質量%の割合で含む。ここで、キレート変性エポキシ樹脂とは、基本骨格、側鎖又は末端にキレート形成基を有するエポキシ樹脂をいう。キレート形成基としては、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などの造塩能を有する酸性基や、アミン類、カルボニル基などの配位能を有する原子団をもったものを用いることができる。中でも、接着性を向上させる観点から、カルボニル基が好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂中のキレート変性エポキシ樹脂の含有率が1質量%未満では、キレート変性エポキシ樹脂のもつ低い吸湿性が十分に発揮されず、吸湿後の半田耐熱性が顕著に低下する。一方、キレート変性エポキシ樹脂は不純物を取り込みやすいため、エポキシ樹脂中のキレート変性エポキシ樹脂の含有率が50質量%を超えると、絶縁抵抗が低下し、絶縁性が低下する。エポキシ樹脂中のキレート変性エポキシ樹脂の含有率は、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性により優れることから、好ましくは3〜20質量%である。
【0037】
エポキシ樹脂は、キレート変性エポキシ樹脂のほか、キレート変性されていないエポキシ樹脂を含有する。このようなキレート変性されていないエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。臭素化エポキシ樹脂等は、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。また、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)は、感光性を有するので、エポキシ系樹脂組成物に光硬化性を付与するために有効である。また、これらのエポキシ樹脂は、架橋反応するノボラック型フェノール樹脂、ビニルフェノール樹脂、臭素化ビニルフェノール樹脂等と共に用いることもできる。
【0038】
(B)硬化剤
硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化に用い得るものであれば、特に制限なく使用することが可能であるが、例えば、脂肪族アミン系硬化剤、脂環式アミン系硬化剤、第2級もしくは第3級アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール化合物、トリアジン構造を有するフェノールノボラック樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して30〜175質量部の割合で配合される。硬化剤の配合量が上記範囲を外れると、吸湿後の半田耐熱性が低下する。
【0040】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、吸湿後の半田耐熱性をより向上させることから、50〜150質量部であることが好ましい。
【0041】
(C)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するものであり、熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂が用いられる。ポリビニルアセタール樹脂は、分子内にビニルアセタール基を有する重合体であれば特に制限されないが、下記の化学式(1)のように、(a)ビニルアセタール単位、(b)ビニルアルコール単位および(c)酢酸ビニル単位からなる樹脂であることが、接着性及び耐熱性を向上させることから好ましい。
【化1】

【0042】
熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂100質量部に対して50〜300質量部の割合で配合されている。熱可塑性樹脂の配合量が50質量部未満では、高温摺動屈曲特性が低下する。一方、熱可塑性樹脂の配合量が300質量部を超えると、吸湿後の半田耐熱性が低下する。熱可塑性樹脂の配合量は、吸湿後の半田耐熱性及び高温摺動屈曲特性の両方を同時に向上させることから、エポキシ樹脂100質量部に対して100〜250質量部であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、シランカップリング剤、イミダゾール等が挙げられる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、フレキシブルプリント配線板100は、補強板7及び接着剤シート30を用いて製造されているが、これらは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。また金属張積層板20に使用される接着剤層22も省略が可能である。
【0045】
また上記製造方法では、補強板7、接着剤シート30、金属張積層板20及びカバーレイ10を重ね合わせて一括して接着剤層14,22及び接着剤シート30を硬化させているが、フレキシブルプリント基板100を得るためには、接着剤層14,22及び接着剤シート30を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば補強板7、接着剤シート30及び金属張積層板20を重ね合わせ、接着剤層22及び接着剤シート30を硬化させ、積層体を得た後、この積層体と、カバーレイ10とを重ね合わせ、接着剤層14を硬化させてもフレキシブルプリント配線板100を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1〜13及び比較例1〜7)
以下のようにして接着性樹脂組成物を調製した。
【0048】
即ち、エポキシ樹脂A、キレート変性エポキシ樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bを表1〜3に示す配合で有機溶媒に溶解、分散させて、固形分(エポキシ樹脂A、キレート変性エポキシ樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂B)の濃度が20%の接着剤溶液を調製した。なお、有機溶媒については、各実施例及び比較例において、メチルエチルケトン、キシレン、シクロヘキサノン1−メトキシ−2−プロパノールのうち少なくとも1種を適宜選択して使用した。
【0049】
なお、表1〜3において、特に指定しない限り、数値の単位は質量部を表す。また上記エポキシ樹脂A、キレート変性エポキシ樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bとしては、具体的には下記のものを使用した。
エポキシ樹脂A:フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC3000)
キレート変性エポキシ樹脂:アデカ社製ADEKA EP−49−23
硬化剤:フェノール樹脂(群栄化学社製PSM−4326)
熱可塑性樹脂A:ポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業社製デンカブチラール#6000−CS)
熱可塑性樹脂B:アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR、日本ゼオン社製ニポール1072)
【0050】
[評価]
(吸湿後の半田耐熱性)
厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に、乾燥後の厚さが10μmとなるように、上記で作製した接着剤溶液を塗布し、この接着剤溶液を乾燥して接着層を形成した。
【0051】
次いで、このポリイミド樹脂フィルムに形成された接着層の接着面に、厚さ18μmの圧延銅箔を貼着して、片面板を得た。
【0052】
次いで、別の厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に、乾燥後の厚さが20μmとなるように接着剤溶液を塗布し、乾燥することにより、接着層が形成されたカバーレイを得た。
【0053】
次いで、このカバーレイの接着層を、上記の片面板の銅箔に貼り合わせ、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスして、プリント配線基板を作製した。
【0054】
このプリント配線基板を25mm×25mm角に切り出し、吸湿後半田耐熱性評価用サンプルを作製した。
【0055】
この評価用サンプルを、40℃、90%RH(相対湿度)に保たれた湿熱オーブン中に4日間放置し、オーブンから取り出した直後に、260℃の半田浴に1分間浮かべた。結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3においては、1分間で接着層の膨張や剥離が生じなかった場合を「◎」と表示し、10秒以上60秒未満で接着層の膨張や剥離が生じた場合を「○」と表示し、10秒未満で接着層の膨張や剥離が生じた場合を「×」と表示した。なお、「◎」は、吸湿後の半田耐熱性が極めて高いと評価し、「○」は吸湿後の半田耐熱性が高いと評価し、これらを合格とした。一方、「×」は吸湿後の半田耐熱性が低いとし評価し、不合格とした。
【0056】
(絶縁性)
厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に、乾燥後の厚さが10μmとなるように、上記で作製した接着剤溶液を塗布し、この接着剤溶液を乾燥して、接着層を形成した。
【0057】
次いで、このポリイミド樹脂フィルムに形成された接着層の接着面に、厚さ18μmの圧延銅箔を貼着して、片面板を得た。
【0058】
次いで、この片面板の銅箔上に、図3に示すような銅回路パターンを形成した。図3に示す寸法の単位はmmである。
【0059】
次いで、別の厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に乾燥後の厚さが20μmとなるように接着剤溶液を塗布し、乾燥することにより、接着剤層が形成されたカバーレイを得た。
【0060】
次いで、このカバーレイの接着層を、上記の銅回路パターンが形成された片面板の銅箔面に貼り合わせ、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、絶縁抵抗測定用のプリント配線基板を作製した。このプリント配線基板に、常態において、500Vの直流電圧を印加し、1分間保持し、図3に示した銅回路パターンの間の絶縁抵抗を測定した。結果を表1〜3に示す。なお、線間絶縁抵抗は1.0×1010Ω以上であれば絶縁性が高いとして合格とし、線間絶縁抵抗は1.0×1010Ω未満であれば不合格とした。
【0061】
(高温摺動屈曲特性)
厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に、乾燥後の厚さが10μmとなるように上記で作製した接着剤溶液を塗布して接着層を形成し、この接着層の面に、厚さ18μmの圧延銅箔を貼り合わせて片面板を得た。
【0062】
次いで、この片面板の銅箔上に、図4に示すような銅回路パターンを形成した。銅回路の末端には、端子を設けた。図4に示す寸法の単位はmmである。
【0063】
次いで、別の厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に乾燥後の厚さが20μmとなるように接着剤溶液を塗布し、乾燥することにより、接着層が形成されたカバーレイを得た。
【0064】
次いで、このカバーレイの接着層を、上記の銅回路パターンが形成された片面板の銅箔面に貼り合わせ、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、高温摺動屈曲特性の評価に用いるプリント配線基板31を作製した。
【0065】
次いで、図5に示すように、プリント配線基板31を、互いに平行に配置された固定冶具32と可動冶具33とに屈曲半径rが2mmとなるように取り付けた。さらに、プリント配線板の各端子に電線34を取り付け、抵抗測定装置により80℃の雰囲気中で各端子間の初期抵抗値Rを測定した。次いで、80℃の雰囲気中で可動冶具33を固定冶具32に対して平行な方向に、ストローク量が20mm、往復運動が1000回/分で繰り返し往復運動させながら、各端子間の抵抗を測定し、抵抗上昇率が10%以上となった回数を高温摺動屈曲回数とした。ここで、抵抗上昇率とは、所定の回数を屈曲させた時の抵抗をR、初期抵抗をRとした場合、下記式:
抵抗上昇率[%]=100×(R−R)/R
で表される。なお、高温摺動屈曲回数が5000万回以上であれば高温摺動屈曲特性に優れると評価し合格とした。高温摺動屈曲回数が5000万回未満であれば高温摺動屈曲特性に劣ると評価し不合格とした。
【表1】

【表2】

【表3】

【0066】
表1〜3に示す結果より、実施例1〜13の接着性樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性は合格基準に達しており、線間絶縁抵抗が高く、高温摺動屈曲回数も極めて多いことが分かった。これに対し、比較例1〜7の接着性樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性、線間絶縁抵抗、高温摺動屈曲回数のいずれかの点で、合格基準に達しないことが分かった。
【0067】
以上のことから、本発明の接着性樹脂組成物によれば、吸湿後の半田耐熱性、絶縁性及び高温摺動屈曲特性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0068】
1…ベースフィルム
2…接着層
3…金属層
4…接着層
5…絶縁フィルム
6…接着層
7…補強板
10…カバーレイ
14…接着剤層
20…金属張積層板
22…接着剤層
30…接着剤シート
100…フレキシブルプリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)熱可塑性樹脂とを含み、
前記エポキシ樹脂が、キレート変性エポキシ樹脂を1〜50質量%の割合で含有し、
前記硬化剤が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して30〜175質量部の割合で配合され、
前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して50〜300質量部の割合で配合されていること、
を特徴とする接着性樹脂組成物。
【請求項2】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着性樹脂組成物を用いて形成されたものであること、
を特徴とするカバーレイ。
【請求項3】
請求項1に記載の接着性樹脂組成物を用いて形成される接着剤層を含む接着性フィルム。
【請求項4】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、
前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、請求項1に記載の接着性樹脂組成物を用いて形成されたものであること、
を特徴とする金属張積層板。
【請求項5】
ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項2記載のカバーレイとを、前記カバーレイの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなること、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241294(P2011−241294A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114289(P2010−114289)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】